ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前々回の続きです。

※今回のキングヘイローの母、ビワハヤヒデ、ナリタブライアンの下の姉妹らに関する描写は大まかには史実を元にしております。特にキングヘイローの母に関する描写は少々オーバー気味ですが、大まかにはアプリ版での描写を元にしました。


第二百七十一話「幕間その13 聡明なゴルシ2」

――キュアドリームらの死闘ぶりは日本の治安当局にも伝わっており、プリキュアである故に、ショッカーの系譜の組織とも戦う宿命を背負っている彼女らの立場を尊重するしかなかった警察関係当局。ヒーロー達の戦闘行為の法的位置づけの議論が泥沼化している間に、軍隊が身辺警護の名目でプリキュアを囲い込んだわけだ。実際、警察は90年代初頭の時に持っていた重装備の数々が廃棄処分とされた影響で、学園都市の能力者への対抗手段を失っていた。俗に言う『無くしたら、後で必要になって泣く』ケースであった。プリキュア達は誘拐事件で表ざたになった『学園都市の周辺地区の治安悪化』に警察が見て見ぬ振りを決め込むのに憤慨し、日本連邦評議会へ直談判。仲裁に入った銀河連邦(宇宙刑事ギャバンのツテで連絡がいった)の厚意で、宇宙刑事と同等の権限を『銀河連邦として容認する』こととなり、現地の警察業務の代行を任された。そのため、プリキュア達はススキヶ原周辺の治安維持、ウィッチ世界の守護、遠征の三つにチームを分けて対応した。戦闘は戦闘力が高めの者が振り分けられ、治安維持は持ち回りとなった。基本的に戦闘行為はプリキュア達が担当するが、ちょっとした泥棒や痴漢行為などはウマ娘たちも自主的に協力した。ゴールドシップは実質的にお互いの折衝役となり、(ルーデルの記憶を共有していた事もあり、日本連邦の政治的事情にも配慮できた)口では自由奔放を装ってはいるが、その実は意外に聡明であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――意外なことだが、ビワハヤヒデの引退表明でナリタブライアンが荒れてしまった。小学生である彼女らの下の妹(三女)の『ビワタケヒデ』が姉たちの姉妹対決を楽しみにしていたからだ――

 

「……姉貴!!あいつに……タケヒデに、どう申し開きをする気だ!!」

 

声を荒げる事はめったに無いナリタブライアンだが、今回ばかりは下の妹(ただし、ビワタケヒデは姉たちのような才能を持っていない凡庸なウマ娘であるのだが)が見たがっていた夢を潰す気か激怒している。ただし、同時に半泣きであるため、姉が引退を表明するのを翻意させたいようだった。

 

「私は心が折れてしまったのだ、ブライアン…。だが、タケヒデの夢は叶えてやる。それがお前とタケヒデたちへの罪滅ぼしだ」

 

「ふざけるな!!そんな言い訳……認めるか!!」

 

涙声になっていくブライアン。さすがの彼女も実姉がシニア級に入る前に引退を表明するのは予想外だったのだろう。

 

「……後はお前に託す。タケヒデやタイテイにできない事をお前はやれる」

 

「姉貴……まさか…?」

 

「……なんとでも解釈してくれていい。チケットとタイシンには、『すまない』と伝えておいてくれ。どうか、私の最後のわがままを聞いてくれ」

 

「私はアンタの背中を追ってきたんだぞ……!これから誰を……」

 

「私がいなくなっても、好敵手たちがいる。お前は走り続けてくれ。……私の分もな。タケヒデにも謝っておくよ。引退レースが決まったら伝える。トレーナー君と相談しなければならんからな」

 

ビワハヤヒデはブライアンが泣いていることに気づき、そう言って慰める。実家にいる下の妹達(この時点でビワタケヒデ、ビワタイテイ、ビワビーナスの三人が実家にいる)タイテイとビーナスはまだ乳児であるため、長姉の活躍を『物心がつく年頃』で見れたのはタケヒデのみとなる。また、下の妹達に才能がないことを見抜いていたのか、ブライアンに全てを託すような口ぶりであった。

 

「姉貴はいつも勝手に決める……!テイオーに負けたのなら、その次で……!!」

 

「すまない……」

 

ブライアンは声を震わす。いつもは勝気な彼女も、実姉の引退を撤回させられないことに打ちのめされたのだ。ブライアンが泣いている事に、ハヤヒデも気づいたか、こう続ける。

 

「……お前は、私たち家族の誇りだ。……私と大成の叶わぬ妹達の分も大レースで走ってくれ」

 

「待て!!このまま勝ち逃げする気か!?私はどうすればいいんだ!?姉貴!!」

 

「私の引退レースで共に走ろう。それがターフでお前と肩を並べる最後の機会になるだろう」

 

「ちくしょう……、勝手ばかり言いやがって……ズルいぞ……!」

 

ハヤヒデは下の妹達に待ち受ける残酷な未来を予期していたのか、ブライアンに全てを託す。ブライアンはその想いを受け継ぎ、姉の無念を晴らすことを目標にしたため、史実のように落ち目を迎えずに復活。トウカイテイオーのシニア級三冠への最大の障害として立ち塞がることになる。シニア級はここより二強(二人に伍す実力を持つメジロマックイーンが治療ということで、数年間は出走しなかったため)時代を迎えていく。個人としてはテイオーとの仲は悪くないが、ターフの上では好敵手の関係となっていく。

 

 

 

 

 

――そのテイオーはゴールドシップの手ほどきで、ウマ娘としての力の本質を覚醒させた。ルドルフの模倣から、自身の魂に刻まれた性質である『不死鳥』へと変質させたのである。後のレース中の他のウマ娘から『翼が生えた』ような幻覚が見えたと証言するほどに――

 

「ゴルシ。どうして、あーやが言ってたトレーニング法を知ってんの?」

 

「あいつに聞いといたんだよ。とはいえ、ウマ娘向けにアタシがアレンジを加えてる。昨日のカラオケの後に問い合わせた。シニア級は上の世代ともやることになるからな」

 

テイオーはシニア級初参戦である。この時期のシニア級はドリームシリーズに移籍した者達以外のウマ娘達がしのぎを削る場であり、海千山千である。大物はドリームシリーズへ移籍していく事が当たり前となったが、エアグルーヴ、サイレンススズカなど、ドリームシリーズへの移籍を先延ばしにして、シニア級に籍を残している者もいる。ゴールドシップはこの頃から、自身も現役でありながら、テイオー、タイシン、チケットらの『出先でのトレーナー代わり』をし始める。ゴールドシップは気乗りさえすれば、G1レースを余裕で勝てるため、周りの面倒を優先し始める。親友のジャスタウェイいわく、『ゴルシは面倒見いいから』とのこと。

 

「グラスはお前の敵じゃないから、まぁ、ほとんど考えなくていい」

 

「なんで?」

 

「ほら、スペが早くにドリームシリーズにいっちまった上、エルコンドルパサーが海外遠征行ってたろ?あれで燃え尽き症候群なんだと」

 

「あー~……」

 

本来の実力はテイオーに伍するはずのグラスワンダーだが、この頃には親友のスペシャルウィークがドリームシリーズへ移籍してしまい、エルコンドルパサーも海外遠征してしまったために燃え尽き症候群を発症。ここ数戦は『掲示板は外さないが、入賞程度の着順』に留まるなど、本来の実力からは程遠い状態へ落ちていた。そのため、ゴールドシップからも『ほとんど考えなくていい』とされる扱いであった。(本人が聞けば、薙刀を持ち出すだろうが)

 

「スペちゃんとエルコンドルパサーがいないからねぇ」

 

「エルコンドルパサーが国内に復帰すれば、少しは違うだろうが、今のあいつはスペのドリームシリーズへの移籍にショックを受けて、ヤケ食いしたのか、太ってるからな。お前の敵じゃねぇよ」

 

ゴールドシップからそういう扱いなところに、グラスワンダーが落ち目になっている事が表れていた。実際、レースでの彼女はここ数戦は精彩を欠いており、落ち目になったと周囲に見られていた。ウマ娘の能力は精神状態に左右されるところが大で、闘志を無くした時期のトウカイテイオーが連敗したり、有馬記念にて、治療間もない身で肉体の潜在能力を解放したりしたのは、精神コンディションが大きく関係している。そして、因果から開放させるのに、ゲッターエネルギーの力が必要であるあたりに、ウマ娘という存在に刻まれし因果の強さがわかる。ゲッターエネルギーの強大さは光子力に比肩するが、部分的にはそれをも超える。ゴールドシップをして『本能に身を委ねれば…』と言わしめるほどの魔力があるのだから。

 

「ゴルシ、トレーナーみたいだよ」

 

「お前らの面倒を頼まれたんだよ。トレーナー連中に。タキオンのトレーナーなんて、タキオンが置いてた薬をジュースと間違って飲んで、今頃は人間ミラーボールだぜ」

 

「え、何それ」

 

「タキオンお得意の調合だよ。中等部のスイープトウショウから魔女だって思われてんだぞ、あいつ」

 

「え~!?」

 

「人聞きの悪い。モルモット君で実験をしているだけだよ」

 

「出やがったな、マッドサイエンティストめ」

 

「私なんて、敷島博士に比べれば……」

 

「あれは一種のキ○ガイだ」

 

「つーか、スイープトウショウって、好きなの?そういうの」

 

「あの子は純真に育てられたらしくてねぇ。子供の夢というのは……私とて、軽はずみに壊したくはないからね」

 

「えらくまともな理由だね」

 

「私とて、分別はあるつもりだよ、テイオー君」

 

アグネスタキオンは真のマッドサイエンティストである敷島博士比だが、一応の分別はあるらしい。タキオンの友人(一応)のマンハッタンカフェが聞いたら、間違いなく腰を抜かすだろう。また、スイープトウショウという中等部のウマ娘には『夢を壊さないように』接しているなど、一定の良心もあるらしい事がわかる。自分のトレーナーで人体実験を繰り返し、その成果を自分に反映させて、自分の脆弱な足を改善したいというウマ娘本来の願望を持つ。ゲッターエネルギーは『エンジンだけが立派なオンボロ車』と自嘲しているアグネスタキオンには最後の希望であった。また、素直に自分を慕うダイワスカーレットには無償で良質の薬品を手渡すなど、後輩に優しい側面もある。(もっとも、ダイワスカーレットは史実のアグネスタキオンの子供だが)タキオンはゲッターエネルギーを浴びることで、ウマ娘の存在そのものの真理に迫ろうとしていた。

 

「君は何が欲しい?」

 

「春秋のシニア三冠。次期会長に推された以上、相応しい実績は必要でしょ。残されたG1レースを連覇して、天皇賞でリベンジする。そうすれば、エアグルーヴだって、ボクを認めるはずだよ」

 

テイオーはクラシック級時代の半年とシニア級の初年を棒に振っている。そのため、シンボリルドルフの『職位のテイオーへの継承』の発表には非難が起こっている。エアグルーヴも難色を示している。ここ数代の会長には、G1を四勝以上している者が選ばれているが、ルドルフの偉大な戦績の前では、成績の浮き沈みが激しいテイオーでは『格落ち』は否めないからだ。とは言え、本来の歴史では、テイオーの後輩にあたる年齢であるべきナリタブライアンが『ウマ娘としては先輩にあたる』という変則的状態なのだ。協会も黄金世代の群雄割拠ぶりから、テイオーの会長職就任を認め、学園の理事長も人事を容認した。

 

「エアグルーヴ君は会長の言うことであれば、私的な感情は持ち込まないよ。会長が君を後継者にしたがっているというのは、マルゼンスキー先輩から聞かされ、知っているはずだ」

 

「大丈夫かなぁ…」

 

「それより、エアグルーヴ君も直に担当トレーナーが変わるはずだ。その方が心配だ。リギルは解体に向かうからね。会長は抵抗しているが、彼女自身の海外遠征の失敗、エルコンドルパサー君の凱旋門賞の惨敗は東条トレーナーの名声を落とすのに充分だ。チームの形骸化は避けられまい」

 

――チーム・リギルはチーム・スピカの中興により、存在意義が希薄化。シンボリルドルフ、マルゼンスキー、ミスターシービーが一線を退いて久しい上、エルコンドルパサーが期待を背負って遠征しても、凱旋門賞でブロワイエに惨敗した事、同一チーム内でも、ルドルフの台頭で名声が低下したミスターシービーのケアが充分に出来ていなかった事が槍玉に上がり、彼女は協会の直接介入で、せっかく育て上げたチームを引き裂かれてしまったわけだ。この時を以て、『チーム・リギルの一強時代』は幕を閉じたとされる。キングヘイローの失踪事件の混乱もあり、ルドルフは現学期いっぱいは会長職にある事が正式に決まった。

 

「ゴルシ、キングヘイローの事件の進展は?」

 

「執事の取り調べが始まったことくらいだ。ただ、あいつのお袋、世間的に叩かれるの当然な振る舞いをしてたそうだからな。下手すりゃ、両親は離婚だ」

 

「えぇえええ!?」

 

「ニュースをタブレットで見てみろ。世間の非難を浴びまくってるぞ」

 

 

キングヘイロー事件の進展そのものは判明から数日経ってもなかったが、母親のグッバイヘイローを銃撃した執事への取り調べが始まり、『娘がいくら勝っても、まったく褒めないという姿勢に我慢がならなかった』という事が報じられ、グッバイヘイローへの非難がますます増大。(史実よりキングヘイローはレースに勝っており、その中にはG1レースも含まれていた)社会的に追い詰められていた。彼女は史実のダンシングブレーブ(キングヘイローの父)の役目も担っていたため、『天才故に、子の勝利を出来て当然と思っているのでは』という中傷も吹き出ていたが、精神的に打ちのめされ、ショック性の失語症になってしまった彼女は反論できず、サンドバッグ状態になっていた。また、夫との仲も亀裂が生ずるなど、それまでの報いかのように不幸が重なった。夫は三行半を兼ねての最後通告を手渡す。『娘を褒めろ。あの子の努力を認めてやれ!実行しなければ、私は離婚も辞さない』という趣旨の内容であった。グッバイヘイローはその時になって初めて、自分の想いを筆談で告白した。

 

『あの子は優しすぎる。だから、勝負の世界から離したかったのに、望んでもいないのに、あの子は私の才能を僅かでも受け継いでいた……。精神的に潰れないうちに引退させようとしたのに、あの子はレースに勝ってしまう。私は間違っていたのだろうか…?この事は娘の人生をコントロールしようとしたことの報いなのでしょうか…?』

 

 

――彼女は子が自分のようになれない事を危惧するあまり、子の可能性を摘もうとした。皮肉な事に、娘を勝負の世界から守ろうとした事が、逆にそのことへの反発となり、キングヘイローを勝負の世界にどっぷり浸からせる事になった。その事実を認め、夫に許しを乞う。外聞をかなぐり捨てて。彼女は気づくべきだったのだ。子を褒めずにいると、逆に認められようと躍起になるという一つの事実に。そして、信頼していた執事にさえ愛想を尽かされてしまう事を。取り返しがつかないところに来てしまったと後悔するグッバイヘイロー。彼女はこの一連の騒動で往年の名声を失い、精神的ショックもあり、屋敷に引きこもるようになってしまう。

 

「キングヘイローの母親、社会的に抹殺される勢いだね……」

 

「懺悔の手記を発表したくらいでは、非難は収まないだろう。おそらく、キングヘイローくんが戻ったとしても、廃人同然になっているだろう」

 

「理事就任要請も撤回されたようだし、あの家、傾くよ?」

 

「親父さんの資産とキングヘイローの収入で、食っていく分には困らんだろうが、家庭環境は気まずくなるだろうよ。下手すりゃ、母親は精神病院から出られなくなるぞ」

 

「日本人は叩く側に回ると、社会的抹殺も躊躇しないからね。例えば、太平洋戦争の戦争指導者たちの係累を負けた途端に村八分にしたように」

 

アグネスタキオンも、ゴールドシップもグッバイヘイローの精神状態を『精神病院から一生出られないかもしれない』とまで悲観する。彼女は良くも悪くも、娘がそうであるように、不器用過ぎたのだ。その不器用さが破滅を招いたのは揺るぎない事実。この事件によるキングヘイローの失踪の責で、シンボリルドルフはトレセン学園理事長の座を追われる事になる。ルドルフ自身には非がないので、同情論や慰留論も強くあり、その論調との兼ね合いが『新学期を以ての代替わり』であり、『ルドルフの子飼いであり、政策の路線を継承する事が確実視される』トウカイテイオーへの継承なのだ。

 

「キングヘイロー君の母親は周りに自分以上の化け物がいた時期があり、評価してもらえない・勝てないの二重苦を味わいつつも、偉大な功績を成した。その苦しみがトラウマになっていたのだろうが、それが自分自身の子を勝負の世界にどっぷりと浸からせたという皮肉がある。どんなに言葉を重ねても、傍から見れば『毒親』にしか見えない。それが今回の事件の根本であり、互いに鏡合わせの気質を持つ母娘の悲劇だろう」

 

アグネスタキオンはそう総括する。グッバイヘイロー、キングヘイロー母娘は鏡合わせの気質を持ち、グッバイヘイローは『娘が走ることそのものを嫌ってしまう』ことを恐れ、自分が憎まれ役になることで、そうならないようにしたかった。だが、実際は娘は不屈の精神とトレーナーの献身、僅かでも受け継いだ才覚でレースを勝っていった。その事が彼女の行為は徒労である証明であった。アグネスタキオンをして、ここまで同情するところに、キングヘイロー親子の悲劇が如何に世間を揺るがしたかの証明があった。

 

「かいちょーは在任中に、有名な生徒が失踪した事の責任を…?」

 

「そうだ。あいつは名家の出だ。それもあって、会長は責任を取ったんだ。テイオー。これからはお前が生徒会をまとめていくんだ。皇帝を継ぐ『帝王』として」

 

「わかってる。だけど、かいちょーのことはかいちょーって呼び続けるよ。ボクにとって、かいちょーはかいちょーだもん」

 

「会長も、トウショウボーイさんをかいちょーって呼んでるから、そこは『親子』だな」

 

「からかうのやめてよー!ゴルシだって、マックイーンに絡んでるじゃんー!」

 

「いいんだよ、可愛い孫がじっさまに甘えてんだから。それによ、前世だと、マックイーンが死んでから生まれっからさ、アタシ。それにスペとスズカだって、兄弟同士でつるんでるようなもんだ」

 

「うーん……」

 

「エアグルーヴだって、子孫に大物がいるんだぜ?それを思えば、アタシとマックイーンは可愛いもんだぜ」

 

「……子孫かぁ……」

 

エアグルーヴは知る由もないが、アドマイヤグルーヴは史実では子、孫はドゥラメンテを輩出する。テイオーに続く子が出なかった(G1馬がいないわけではないが、自身と父に比肩する才覚を持つ者は現れなかった)ため、直系の子孫が続くか不透明なシンボリルドルフとは対照的であった。マックイーンにはゴールドシップという孫がいる。サンデーサイレンス旋風が吹き荒れ、90年代前期以前の名馬の血統のいくつかは淘汰され、絶えてしまったという歴然たる事実。サンデーサイレンスの血統はキングカメハメハ系と並び、90年代後期以降の日本競馬を支配したが、ある意味では『血統の大規模な淘汰』も起こったことの証明でもある。ゴールドシップはそれらの事実を知った故か、どこか寂しそうでもあった。また、種牡馬時代に精神が荒んだのか、若き日に聡明で温厚だったとは思えないほどの暴れ馬に変貌してしまったスペシャルウィークの史実のこともあり、ゴールドシップは自身が暇な時は、テイオーらのトレーナー代わりになっていく。ゴールドシップなりのチームメイトへの気づかいでもあり、リギルからの移籍組や、担当トレーナーがいない環境に置かれた者たちを『トレーナーの不在』に慣れさせるための特訓を兼ねており、意外に堅実なトレーニング法を指示するところに、ルーデルの記憶の有無が関係している。ゴールドシップが聡明になったもうひとつの理由はそこにあった。

 

 

 

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