ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回の幕間はナリタタイシン×ゴールドシップの組み合わせです。


第二百七十三話「幕間その14 ナリタタイシンの思い」

――日本連邦は実働の開始までに紆余曲折があった。扶桑では現役である金鵄勲章を日本連邦として廃し、瑞宝章で統一しようとする動きも根強かった。しかし、これは扶桑軍人らの反発で頓挫し、危険業務従事者叙勲に組み込まれた。結局、日本が頼りにしていた技術力の差も、扶桑は別口で解消できる事がわかったために『出し惜しみは意味をなさない』事に気が付き、むしろそれを活用する事にした。学園都市の暗部の解体で周辺地域の治安が極度に悪化していたが、日本警察は見て見ぬ振りしていたからだ。ウマ娘たちも結果的にドラえもん世界のこうした動きの当事者になり、ノビスケの送迎を曜日ごとに持ち回りで担当していた――

 

 

「ちょっとした送り迎えで、アタシらがついてく意味あんの?」

 

「この界隈は治安わりーんだよ、タイシン。ゴロツキ共がうろついてやがんだ。あたしらなら、そんじょそこらのチンピラは余裕で相手できるだろ」

 

「あんた、どこで覚えたのよ。軍隊式の格闘術なんて」

 

「知り合いに教わったんだよ」

 

ゴールドシップは同位体であるルーデルの記憶を参照し、瞬く間に軍隊式の格闘術をモノにしていた。護身のためであるが、そもそも、ゴールドシップのパワーはウマ娘でも随一を誇るので、常人では骨の数本は確実に折れる。それに耐えられる『チームスピカのトレーナー』は充分に超人である事を証明している。

 

「何気に、顔広いわね」

 

「マックイーンと元から遠戚だった関係もあるけどな。お前も護身に剣の居合を教わってんだろ?」

 

「多少オーバーかもしれないけど、この世界の法律はどうなってんのよ」

 

「平行世界の日本同士で連邦組んだ都合で、法律が多少変わったんだ。厳格な許可制だけど、自衛用の武器の保有がある程度は認められた。子供でも買えるような暴漢撃退グッズなんて、超能力者には効かないからな」

 

のび太夫婦は仕事とスポーツ目的の事項を使う事で、武器を持っている。ノビスケが無断立ち入りを強く戒められている部屋こそが武器庫であり、多くの実弾と共に火器が置かれており、ゴールドシップはそれを知っている。

 

「ここらのゴロツキは超能力持ってるし、持ってなくても、学園都市から流れた銃で武装してたりしてるから、のび太も強力な銃を常に携帯してるそうだ。アタシも脅し目的だけど、オートマグの改造型を持ってる」

 

「何よそれ……」

 

「ここらの界隈、タチのわりぃ連中は普通にP220とか持ってんだと。警察も学園都市の治安維持組織を解体させて、自分たちが担当するように仕向けたら、途端に発砲事件が急増してな。マスコミに叩かれるの嫌がって、警察が動かないことの方が多くなっちまったんだと。それで、プリキュア達が仮面ライダーやスーパー戦隊の加盟する警備会社と協力して、治安維持に乗り出したわけ。学園都市の周りの地区の治安の悪さがアメリカ並になっちまってるから、日本の普通の警官の手に負えねぇケースの方が多いそうだ」

 

「だからって、あんな大仰なマグナム弾を使う銃を見せるわけ?」

 

「ハッタリだよ。タイシン。ウマ娘の身体能力なら、その気になりゃ、普通は大男が両手で態勢取って使うマグナムも片手で撃てるって事は知れ渡ってるから、懐に忍ばしてるのをチラッと見せるだけでいい。相手はブルって逃げるよ」

 

ゴールドシップはウマ娘の身体能力の高さが知られ始めたのを上手く利用し、大口径拳銃を『チラ見せ』し、ゴロツキを『戦わずして撃退する』事を始めたと、ナリタタイシンに言う。また、往年の少女漫画で有名である『ホモの貴族に好かれている、NATO軍の少佐』よろしく、ウマ娘の中でも、ヒシアケボノには及ばないものの、かなりの長身である事を活かしての『ハッタリを効かせた自己証明』をし始めた事を冗談めかしながら示唆した。もっとも、彼女はルーデルの記憶を持つため、その気になれば、容易く重機関銃をも扱えるが。

 

「それ以前に、そんな状況、滅多に起きないでしょうが」

 

「備えるに越したこたぁないぞ。会長も、キングヘイローの失踪事件で世間からブーイング受けたけど、先手を打って、任期満了での辞任を打ち出しただろ。あれで世論も混乱してるそうだ。キングヘイローの捜索は当局の発表待ちだけど、会長の辞任は『長期政権の終わり』を意味するからな」

 

シンボリルドルフの政権はエアグルーヴの入学以前には始まっており、オグリキャップとタマモクロスらの世代が現役の時代はその極初期にあたる。当時はトウショウボーイから引き継いで間もない時期であるため、マルゼンスキーは生徒会に在籍していた。トウショウボーイは卒業する際、自身の後輩のマルゼンスキーにルドルフの補佐を依頼。エアグルーヴやナリタブライアンが入学し、生徒会メンバーに収まるまでの時期はマルゼンスキーが事実上の副会長職にあった。そのため、エアグルーヴとナリタブライアンが副会長に収まっていた時間は意外に長くはないと言える。ルドルフは異例の若年かつ、現役中に生徒会長に就任した数少ないケースだが、現役時代末期に就任したため、オグリキャップ世代が台頭した時代には引退済みであった。ドリームシリーズで走っていたとは言え、現役時代と頻度がまるで違うので、スタミナが往年よりだいぶ低下していた。それをゴールドシップとの競り合いで自覚したのも、テイオーへの政権継承の動機である。

 

「備えあれば憂いなしって奴だ。使わないにしても、精神的優位があるってのは気が楽になる」

 

「そういうもん?」

 

「お前がオンラインゲームで良いスキル持ってる時に安心すんのと一緒だ」

 

「なんで知ってんのよ!?」

 

「お前がゲーマーだってのを、このゴルシちゃんが知らねえとでも?」

 

「ぐぬぬぬ……」

 

「課金はほどほどにな。稼ぐとはいえ、な」

 

「にゃああああ!?」

 

ゴールドシップはタイシンを課金要素でちょっとカマをかけたが、本当にそうだった。タイシンはオンライン系のゲームでのランカーで、課金前提のアイテムも多数持つからだ。また、アーケードの音楽ゲームでフルコンを狙うなど、インドア系の遊びのプロであった。体が病弱であった関係もあるが、そもそもはインドア派だったからだ。

 

「あ、あんた……なんでそれを!?」

 

「トレーナーから聞き出した」

 

「~~~ッ!!あのバカ!!帰ったら、絶対蹴ってやる!!」

 

「いや、お前のトレーナー、うちのトレーナーに弟子入りして、ジム通い出したぞ?」

 

「はぁ!?」

 

「ほれ」

 

ゴールドシップが見せたスマホの画像には、スピカのトレーナーがタイシンのトレーナーをジムに連れて行って、二人で汗を流す様子が写っていた。なんでも、大学の先輩後輩の関係らしい。

 

「ウマッターにも上がってるぜ。お前のトレーナー、うちのトレーナーとは大学の後輩で、久しぶりに会えたから、ジムに行くってことに」

 

「なんでそうなんのよ!?」

 

「アタシのキックに耐えられるように、トレーナーはジムに通ってるからな。その関係でジムを紹介したんだと」

 

「ゴルシ……あんた」

 

「あたしのせいじゃねーって」

 

ナリタタイシンはゴールドシップを睨みつけるが、ルーデルの記憶を共有したおかげで、ますます肝っ玉の座ったゴールドシップはびくともしない。

 

「あ~~~~~!なんで、よりによって!!アンタにバレるのよぉぉぉ~~……!!」

 

「あ、お前がトレセン近くのゲーセンで出した音ゲーの点数、行く前にテイオーが塗り替えてたぞ」

 

「えーーーーー!?」

 

「ライブの場数はテイオーのほうが多いからなー」

 

「あんにゃろぉぉぉ~~!アタシが3日かけて出したのにぃ……!」

 

「ガチかよ、お前……」

 

ゴールドシップも流石に引く。ナリタタイシンは音ゲーなどでは、フルコンを目指すような『ガチ勢』であるが、一見であろうテイオーに一発で抜かれたことで闘志を燃やす。

 

「でも、あの人たち(真田や佐渡)がいる世界って、この時代からせいぜい200年くらいでしょ?そんな短い時間で、恒星間移民なんてできんの?」

 

「宇宙人が技術を与えたり、落とし物を再利用したりした結果だそーだ。それで、内輪もめが馬鹿らしくなったんだが、旧東側諸国やナチの残党が宇宙コロニーへ移民した連中を操って、戦争を起こした。その後の時代だよ」

 

ジオンが無謀な戦争に踏み切った理由の裏に反統合同盟とナチス・ドイツの残党の影があった事は、ネオ・ジオン解体後に流れた極秘書類で確認されている。つまり、反統合同盟は裏で組織の影響下にあり、日本を聖地視していたのである。それはかつて、大首領が人類の文明の進歩を促すための拠点としていたのが日本列島だったからである。

 

「恒星間航行ができるようになっても、内輪もめし続けてんの?」

 

「文明人の性だよ、タイシン。あたしらの世界でも、会長が強すぎて退屈だって言われた時代もあるし、ミスターシービーはトウショウボーイさんにコンプレックスを持ってるからな」

 

ゴールドシップは知っていた。ルドルフが現役時代の前期頃は『トウショウボーイの正統な後継者であるミスターシービーを差し多いて選ばれた』と陰口を叩かれ、ミスターシービーもキャリアが全盛期にあった時期に台頭してきたシンボリルドルフを返り討ちにしようとしたが、地力で負けていたために歯が立たず、トウショウボーイに才能の限界を悟られて見限られてしまうという苦難に遭い、お互いにバツの悪い思いを抱えてきた。ルドルフは現役前期においては、『ミスターシービーを超えなくてはならない』という責任感で、現役後期は『世間の期待に応えるため』に走っていた。そのため、自身を慕い、学園に入学してきたトウカイテイオーを『我が子のように』可愛がったが、別世界では実際に自分の子供である事がわかり、素が出るほど喜んだ。まさに溺愛だ。

 

「でもさ、ルドルフ会長もなんか、ひどいショックを受けてたわよ?」

 

「テイオーやお前等がターフを去った後は、サンデーサイレンス時代になる。アタシもその一員だが、お前の血統やハヤヒデの血統は絶えてる。ブライアンは早世しちまったし、あの人の血統も、テイオーが種牡馬としては出来がな……」

 

ゴールドシップのいう通り、2000年代をすぎる頃には、ビワハヤヒデやナリタタイシンの血統は絶えており、唯一、ウイニングチケットのみがひ孫の大成を自分の生存中に見届けている。また、テイオーはクワイトファインが辛うじて血をつないでいるが、自分自身は種牡馬としては、ストロングポイントなどの数頭のG1馬を出す(GⅡ馬などにも目をむければいるが)に留まった事から、種牡馬としては大成しなかったと言われる。ゴールドシップもそこは多少、言葉を濁す。テイオー自身も記憶の覚醒で『会長の後を継げなかった』と自嘲気味になっているところがあるからだ。

 

「スペやアタシ、スズカはサンデーサイレンスの血を持つ。いや……90年代後半以降の競走馬の主流って言っていい。それはある意味、ウマ娘には残酷かもしれねぇが、あと百数十年もすりゃ、この世界は戦争続きになっちまう。そのほうが残酷な未来かもな」

 

「どうして、そうなるのよ」

 

「日本が飛躍的に科学をこれから発達させて、ドラえもんの同族が思いっきり作られる。だけど、自己意思を持つロボットは西洋の連中からすれば、『人類にいつ反乱するかわからない連中』でしかなかった。それが不幸の始まりらしい。その戦争が終わった途端に、宇宙移民と地球住まいの間で戦争が起きて、そうしたら次はガチの宇宙戦争だそうだ。だから、この世界は戦争じゃない時代のほうが珍しくなっちまう。だけど、文明はそれで発達するから、陽陰、どっちでもあるってことだ。あたしらの前世も、悪くいえば、人間の勝手で走らされて、用を果たせなくなったら…って感じだしな」

 

ゴールドシップは聡明なところナリタタイシンに見せる。ルーデルの記憶を参照できるようになったからか、ドラえもん世界に待ち受ける『残酷な未来』や、競走馬の世界の厳しさを深く考えるなど、メジロ家の血が由来と思われる思慮深さを見せる。タイシンはそれまでのゴールドシップへの印象を吹き飛ばされたようで、呆気にとられる。

 

「あんた……」

 

「お前も前世の記憶は見ただろ」

 

「う、うん…。最後はライスシャワーに引導を渡されて……。だけど……ライスは…。あんな光景……、教えられないし、知ってほしくない…」

 

ナリタタイシンはライスシャワーの最期が自身の競技生活に引導を渡されたその日に起こった事を知ってしまったため、涙目になる。普段は勝気な物言いで虚勢を張っている面があるからか、自身が心を開いた者に何かがあると、途端に取り乱すという脆さを持つのが顕になった。

 

「あの子も見ちゃうのかな……ゴルシ……」

 

「その事はスズカにも言えることだ。だけど、スズカは運命を超えられた。スペやトレーナーの適切な処置もあるが、スズカは生きてる。ライスにも同じ事が言えるはずだ。……そんな顔すんなって。だけど、似た出来事はどこかで起こっちまうはずだ。お前がその場に居合わせたら……助けてやれ」

 

ナリタタイシンはひょんなことから、ハルウララやライスシャワーから慕われるようになっていた。その関係で、ライスシャワーが自分に引導を渡したレースで非業の最期を遂げてしまう史実に恐怖していた。タイシンにとって、ライスシャワーは『放っておけない友人』だからだ。無意識にゴールドシップの手を握っているのも、ライスシャワーを待ち受ける運命に恐怖してしまったからだ。

 

「大丈夫だ。テイオーも、スズカも運命を超えたんだ。ライスに出来ねぇ道理はないぜ。それはお前にも言えるはずだ。……あの子に見せてぇんだろ?」

 

「……ズルい。それをいうなんて……」

 

「事実だろ?お前にもやりがいが出来たってことで良かったじゃねぇか。たとえ、ハヤヒデがターフからいなくなっても、お前らが三強って騒がれた事実は残る。この世界でのお前らは『競馬ファンが振り返る歴史の一ページ』に過ぎなくなったが、お前自身はここにいるんだ。『史実』のライスやスズカの無念を晴らしたいのなら、この世界でやれる事を精一杯するんだ。あの子に『勝つ姿』を見せたせりゃな」

 

周囲に反発して生きてきたナリタタイシンだが、『BNW』の残りのメンバーは言うに及ばず、ライスシャワーとハルウララ、自身のトレーナーがそうであるように、『下心なく自分に接する』者には心を開く。ノビスケも野比家男子の特徴を程よく受け継いでいためにタイシンが嫌うものが彼にはなく、言うことは心からの言葉であった事、家庭環境が幼少の頃の自身によく似ていた事で、子供は好きではないとするタイシンも、ノビスケには心を開き、『良き姉貴分』として振る舞っていた。タイシンはノビスケに見せたいのだ。自身が大レースで勝つ姿を。この頃にはハヤヒデとの能力差が顕著になり、クラシック級時代には皐月賞しか勝てていない事から、一部のファンなどからは見限られていた。タイシン自身も内心で限界を感じていたが、今回の出来事で闘志を取り戻した。そして、本来の優しさの発露の仕方を会得したと言っていい。表情にも余裕が感じられるようになり、以前は策略を破るなど、反抗していたゴールドシップにも本音を言うなど、かなりの軟化を見せている。

 

「あいつには、今からスタミナがつくもんを食わせねぇと。スポーツは腹減るかんな」

 

「そう?アタシはそうでもないんだけど?」

 

「お前は腹持ちがいいかんな。とは言え、近頃のコンビニ弁当は質が良くなったぞ?ご飯がすすむくんだ」

 

「アンタはどこがおすすめなのよ」

 

「トレーナーの金持ち次第。マックイーンはスイーツ食うわ、スペは学園トップ3の大食いだしよ…」

 

「……凄い切実」

 

「そりゃ、レースでそれなりに稼いでるが、結構な金額が食事代に消えてんかんな、うちのチーム」

 

切実な財政事情を抱える『チームスピカ』。その関係上、食事は楽しみの一つとは言え、トレーナーの給料日前はマックイーンの実家のツテを使わざるを得ない事も多いという。

 

「でも、まぁ……おにぎりはどこも質はそれほど変わらなくなってきてるぜ?味のバリエーションで店ごとの特色は出してるけどよ」

 

「そりゃ、どこのコンビニだって、改良は続けてんでしょ。子供の頃、母さん(タイシンリリィ)が買ってきてくれた『シーチキンマヨネーズ』が美味しくてさ。それで好きなんだ……今でも」

 

「オーソドックスだな。明太とか食うタイプだと思ったけど」

 

「なにそれ。たらこのおにぎりは食わないし!おにぎりはシャケとかおかかとか……もっとこう……食べてて面白いっていうか……その……」

 

コンビニのおにぎりには母であるタイシンリリィとの思い出があるからか、思い入れがあるらしいナリタタイシン。ちょっと膨れた顔を見せる。

 

「ハハッ、お前もそんな面すんだ」

 

「る……、うるさいっ!ほら、店入るよ!?」

 

「へいへい」

 

二人はノビスケを学校へ送った帰りにコンビニに寄った。服装はトレセン学園の制服ではなく、勝負服である。ジャージがその前日のトレーニングと訓練で汗まみれになり、洗濯中であった上、学園が存在しない世界で制服を着ていいのか?という議論が年長組の間であったためだ。二人がこうした日常を楽しんでいる頃、トレセン学園はエアグルーヴが過労で入院しての療養に入らざるを得なくなり、テンポイントとグリーングラス(ルドルフとトウショウボーイの不在中の学園の管理を任されている。更に折悪く、理事長も出張に入った)も窮した。そこで名乗りを挙げたのがナイスネイチャ、マンハッタンカフェ、エイシンフラッシュであった。

 

「ん?スぺからだ。……何ぃ、こういう時に限って、理事長は海外出張ぉ!?で、エアグルーヴが過労で入院だぁ!?」

 

「え!?」

 

「テンポイントさんとグリーングラスさんは緊急で生徒会を回せる人材を募集した。で、マンハッタンカフェとナイスネイチャ、エイシンフラッシュの三人が臨時で生徒会を手伝う事になったって。エアグルーヴめ、無理するからだ。自分の疲労くらい、わからないわけじゃないだろうに。……無茶しやがって。入院じゃ、本末転倒だぞ…」

 

「あのエアグルーヴ先輩が入院?嘘でしょ?」

 

「スズカからも入った。エアグルーヴが食堂で倒れたから、病院まで付き添ったそうだ。ここんとこの騒動で体力使ってたんだな……」

 

サイレンススズカからのメールによれば、エアグルーヴが食堂で高熱を出して倒れた後、病院まで付き添ったこと、その日は関西に出向いていたで東条トレーナーは憔悴した声だったという。エアグルーヴは救急車の中で、ルドルフの信頼を勝ち取れ切れていない自らを恥じていた事、母のダイナカールに許しを乞うような一言も漏らすなど、うなされていたという。

 

「スズカは救急車の中で、ずっと手を握ってやってたそうだ。会長の辞任と『儀式』はエアグルーヴには相当に堪えたんだろうよ」

 

エアグルーヴに同情するゴールドシップ。エアグルーヴはルドルフの助けにならんと粉骨砕身の努力をしてきたが、自分に相談なしに辞任の決断を下された上、自分から見て『青二才』であるはずのテイオーに政権を継承する意思を公の場でテイオーに伝えたこともショックであったのか、うなされる程になってしまった。しかも、ここ数代の生徒会長に許されていた『由緒ある』継承の儀式を公の電波に乗せるというルドルフの行為は『ルドルフの助けになる』事に喜びを見出すほどであったエアグルーヴに精神的な意味でのショックを与えてしまったのは容易に推察できる。スズカは元・チームメイト(サイレンススズカはリギルからスピカへ移籍した)であると同時に、同期の友人・ライバルでもあったため、エアグルーヴに付き添っている。サイレンススズカからのメールには『エアグルーヴは会長に認めてもらうのが喜びって、いつも言ってたわ。それが相談なしに辞任だもの…』と、ルドルフの行為を軽率だと、暗に非難している。このようなところで芯が強く、友人を気遣えるのがサイレンススズカであり、彼女がスペシャルウィークの憧れであり続けている所以であり、ルドルフの辞任表明は生徒会を含めた、学園の生徒たちに相当な衝撃を与えていたのだ…。

 

 

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