ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前々回の続きになります。


第二百七十八話「幕間その20 ゴルシの聡明と、レビル将軍の悟り」

――ノビスケの運動会襲撃事件は誘拐事件のおおよそ半年後に発生していた。野比家が反ジオンに転じたのを恨んだジオンの残党がタイムマシンを強奪して引き起こした大規模襲撃事件であった。ジオン残党はモビルアーマー『グロムリン』を投入してまで、のび太親子の抹殺を目論んだ。グロムリンは、のび太親子の救援に駆けつけた三人のプリキュア達、七人ライダーも消し飛ばそうとしたが、流竜馬の差し向けた、彼の実子『流拓馬』の駆るゲッターロボアークの登場で粉砕された。その事件の教訓で、のび太は常に武器を持つことにし、プリキュア達もさらなる特訓に励んだ。一年戦争の未成兵器を完成させてまで行った、過去の世界へのテロは結局、ジオン共和国の命脈を断つ大義名分を地球連邦へ与えるだけに終わったわけだ。地球連邦はこの行為に危惧を覚え、過去の時代の日本に戦力を置く事にした。Gフォースを隠れ蓑にして。ジオン残党がとうとう、『過去改変』に手を染めたことは23世紀世界でも大々的に報じられ、残党軍の狂信的な側面が顕になった。この事件はジオン共和国の解体の進行が早められる原因となり、残党軍の生き残りらが相次いで、21世紀の時点からの改変を実行してくる端緒となってしまった。のび太が相次いで、預かっていた機動兵器を全て稼働状態にするきっかけともなった。――

 

 

 

 

――2021年――

 

「そんな事件があったんですの、ゴールドシップ」

 

「誘拐事件の半年後に起こったし、しかも、幼稚園の運動会を白昼堂々と、実物のザクやドム、モビルアーマーが襲ってきたんだぞ。悪の組織より悪の組織してやがるよ。ほれ、彼がスクラップしてる『当時の新聞記事』だ」

 

「『ジオン軍そのままの巨大ロボ、ススキヶ原と福岡市に襲来も、ガンダムとゲッターロボによって撃退さる!』……現実味ありませんわね」

 

「表向きは学園都市の暗部組織の生き残りの中のジオン軍かぶれが起こした事件って風に取り繕ったが、本当にジオン軍の連中だから、実際は23世紀の法律で裁いたそうだ。21世紀にいない連中だから、21世紀の法律じゃ裁けねえからな」

 

いくつかの新聞社は『RX-93ν2』の写真をでかでかと載せる一方で、知名度のないゲッターロボアークの写真は小さく載せるのみだった。ゲッターロボと言うと、初代、G、真の三つが著名だが、そのどれでもなかったからだが、アークはその最新型である。その事を知っている記者のいる新聞社では『ゲッターロボの最新型、ジオン軍をぶちのめす!!』というセンセーショナルな記事を出している。骨川コンツェルンが提供した歴代ゲッターロボの画像と共に。

 

「しかし、すごくタイムパラドックスのような?」

 

「それが大丈夫だから、面白いんだよ。ドラえもんのした事からして、歴史改変だし、それに、未来を知った上で動けば、ある程度はいい方向に変えられるって結論になる。とある英霊には耳の痛い話だろうけど」

 

「誰ですの?」

 

「ジャンヌ・ダルク。過去の英霊も蘇ってくるのがこの世界のおもしれぇとこでよ。ジャンヌ・ダルクは敬虔なクリスチャンだから、頭が硬くてな。他の英霊には、転生先がプリキュアだった奴もいるってのに」

 

ジャンヌ・ダルクは先代黄金聖闘士らの説得で考えを変えた。自分からして、『ルナマリア・ホーク』という人物の存在を事実上は乗っ取るようなものであるからである。アストルフォなど、転生先であるキュアミューズとしての仕事をこなしつつも、ガリアの特別公使という形で『公務員』として就職している。シャルル・ド・ゴールの愛国政策に睨みを効かせるというご意見番的なポジションに落ち着いている。ジャンヌは自身を魔女扱いして処刑しておきながら、しばらく経った後に聖人扱いで持ち上げる祖国の姿勢に嫌気が差したため、ド・ゴールへのお情けで、ご意見番にはなったが、アストルフォほどは精力的には活動していない。そのため、普段はルナマリア・ホーク同様に『地球連邦のMSパイロット』である。ちなみに、アルトリア・ペンドラゴンは転生先の都合で、カールスラント帝国空軍の将校(下位の王位継承権持ち)となり、この時期には日本連邦の義勇兵となっている。

 

「英国の有名な英雄がドイツに転生しちまったんで、外交問題になったってのもニュースになったそうだ。だから、あたしらウマ娘なんて、まだ幸せだぜ?」

 

「それは誰ですの?」

 

「アーサー王だよ。それも、実は女でしたー的なパターンの世界からの。王位経験者だから、イギリスとドイツが揉めたらしい」

 

アルトリア・ペンドラゴンは王位経験者であるが、古代の頃の王である。従って、王権の意味合いも近世以後のものとは異なる。長い年月の間に英国の王朝も断絶による交代を何回も重ねているため、彼女自身、ブリタニアの王位に戻るつもりはないし、カールスラントの王位にも興味はない。とは言え、ハインリーケへ禊を立てるため、カールスラント空軍将校かつ、貴族であることは受け入れている。

 

「でしょうね。それで、件の聖剣は?」

 

「バッチリ持ってる。だから、外交問題になったんだよ。王位経験者だから、ドイツも無碍に扱えねーよ。世界中にファンが多いからな」

 

そのため、アルトリア・ペンドラゴンは『ハインリーケが改名した』体裁で生きることになり、大佐に昇進している。ハインリーケの持っていたナイトウィッチとしての技能はあまり使わないが、聖剣の存在などで一騎当千の強者と見做されている。

 

「そいつらも加わって、日本全体をパトロールするようになったそうだ。ジオン残党はその気になりゃ、日本全体を電撃的に空挺降下で襲えるから。当然、実物のザクやドムの正面装甲は21世紀の戦闘車両の武器で貫くのは至難の業だ。特にドムはシルエットからして、デブッチョに見えんだろ?」

 

「言えてますわね…。陸上自衛隊は動きましたの?」

 

「現地部隊が事後承諾の形で、偵察名目で動いたよ。だけど、九州の敵はドムが主力だったらしいから、損害出たんだと」

 

「書かれてますわね。福岡市では、ホバークラフトでスイスイと移動する巨体に、人力装填の砲と、装輪式の機動戦闘車では陣地転換の間に被害が生じたと」

 

「装輪戦車の速力は100キロ台だ。それが、いくらデブッチョとは言え、ホバークラフトでよ、新幹線より100キロ以上速く走れる奴から逃れられるかよ。ウサギとカメだぜ」

 

16式機動戦闘車はこの時期にはかなりの数が配備されており、福岡市防衛のために出動している。だが、相手が未来兵器たるドムでは分が悪く、砲撃陣地の転換のための移動時の隙を突かれ、天蓋に90mmマシンガンを撃ち込まれてしまい、スクラップにされる車両も複数生じている。とは言え、進路妨害などの足止めや武装の破壊などで戦果を挙げ、奮戦してもいる。特に『第42即応機動連隊』所属の車両は部隊の意地にかけても『巨大な敵』からの防衛戦で奮戦しており、損害は出しつつも、ジオン軍の足止めに貢献。HI-νガンダムの到着後は連携して戦闘に応っている。奇跡的に部隊の死傷者は少数で済んでおり、練度の高さも証明している。歴史に埋もれる形にはなるが、彼らが『初めて、ドムと戦った』部隊となった。 (87式偵察警戒車の25mm機関砲はMSにとっては豆鉄砲であるが、武装やセンサーの破壊などに効果は見込めた)

 

「自衛隊は横合いからの狙撃や脚部のホバーを破壊することを目指したらしいが、ドムがあの図体でスピードスケートの要領で動くから、苦労したって書いてあんだろ?その上、ザクとは比べ物にならねえ正面装甲だ。ジャイアント・バズを持ってなかったのが救いだぜ。戦艦の主砲と同じくらいの弾丸を打たれたら、自衛隊の連隊なんて、街の区画ごと消し飛ぶかんな」

 

残党軍は弾丸の補充が難しいジャイアント・バズを持たせず、汎用性のある最終型のザク・マシンガン(ドラムマガジン式ではないもの)を使い回す事が常態であった。この型式はガンダムタイプ以外には効果が見込めるほどの高威力でありつつ、取り回しがいいことから、ドム系にも持たせる事が常態化していた。21世紀の兵器相手では、戦闘車両は愚か、艦艇にも脅威となる(90ミリ弾は戦後型艦艇の船殻を余裕で撃ち抜く)。そのため、襲撃の際に、偶然、港に停泊していた海保の巡視船は破壊されてしまっている。事件の後に回収された90ミリ弾の薬莢は自衛隊・海保を震撼させた。第二次世界大戦や朝鮮戦争期の重戦車の主砲と同口径の弾丸が高初速で高低差から撃ち込まれるのでは、如何な戦闘車両も、戦後型艦艇もひとたまりもないからだ。そのため、ザク・マシンガンを撃ち込まれても余裕で弾くガンダリウム合金や合成鋼Gの頑強さが際立った。この事件は日本政府に『戦後型、もしくは弱装甲の艦艇の脆弱さによる人命損失の可能性』を認識。日本政府が扶桑の空母建艦計画を全て白紙に戻させ、戦後型大型空母に一本化させる理由付けにされた。ただし、戦後型空母は大型高性能化と引き換えに『量産性』が犠牲になっており、扶桑海軍を狼狽させた。結局、扶桑軍は大鳳までの八隻を使い倒す羽目となり、大鳳は書類の改竄で『翔鶴型航空母艦三番艦』として生きることになった。大鳳は徹底した再工事で内部配管などが高品質のものへ取り替えられ、燃料タンクも史実の信濃同様の対策が取られた。ウィッチ運用の必要は無くなったため、甲板の魔術再処理は取りやめられたなど、近代化の大改造が施されている。そのため、第一線空母の数は甚だしく不足しており、雲龍型の復帰を増やす事が決議されるなど、グダグダであった。この事件では、機動戦闘車が無残に破壊されたのに批判が飛んだが、90ミリ砲を高低差から撃ち込まれることなどは想定外もいいところ。MBTとて、高空から90ミリ砲弾を受ける事は想定外である。

 

「そんでもって、自衛隊は財務省から非難轟々だったらしいが、兵器の性能差にしては健闘できたほうだぜ。数百年の差があるんだから」

 

「21世紀の兵器で、よく損傷を負わせられましたわね?」

 

「自衛隊もプロだ。財務省に嫌味言われるのを覚悟で戦えば、それなりの成果は出せる。この時の戦闘で機動戦闘車のかなりを壊されたが、相手が相手だから仕方ないって結論になったそうだ」

 

16式機動戦闘車はあくまで、歩兵支援用の車両だ。しかし、実際は戦車の代替として使わざるを得なかったところに悲劇がある。ジオン残党のマゼラ・アタックの攻撃にも耐えられないことは問題視されたが、マゼラ・アタックは主砲口径に限れば、175ミリもの大口径。当たれば、21世紀のどんな戦車もスクラップ行きである。装輪式の装甲車両に履帯式と同等の防御力は持たせられないが、政治的観点から『死傷者が出た事』を問題視され、16式は調達数を減らされる見込みになったため、場当たり的に装甲強化型というべきマイナーチェンジ型が新規に開発される事となった。21世紀日本の悪い点が出た形だ。

 

「結局、この時点で奮戦した自衛隊の部隊の司令官は左派から死傷者が出たことを叩かれた。だけど、『未来人の襲撃』で被害を最小限で食い止めたには違いないから、出世を容認した。この事件の裏はこんな話ばっかだ」

 

「日本は戦後、事なかれ主義が蔓延っていますから。どの分野でも。私達のレースのルール改定にさえ、世論の突き上げと前例が必要でしたのですよ?」

 

「マルゼンさんとオグリさんなー。あの二人は世代の中心なのに、日本ダービーに出られなかった。マルゼンさんは同期の尽くが引退後に不幸になったから、呪いじみた噂が立ったから、協会も引き入れるのを嫌がっててな。今のご意見番的ポジに落ち着かせてる感がある。オグリさんは存在自体が、地方と中央の対立の根源になってる。だから、キングヘイローの奴の失踪で、会長が辞任する事になったんだ」

 

オグリキャップは笠松の星にしたかった関係者、中央で成功したのにも関わらず、日本ダービーに出さなかった(協会の意向だが)ことで、シンボリルドルフがスケープゴートにされてしまうのは本意でないと釈明する中央のすれ違いと対立はキングヘイロー失踪でついに極限に達した。シンボリルドルフは当時の責任をも負う形で生徒会長を辞任する。テイオーへの政権継承はトレセン学園の方向性が変わらないことを願う者たちにはもってこいであった。この政権交代の混乱でチーム対抗戦である『アオハル杯』の開催は延期となったが、生徒会長の権限が強化され、理事長不在の際の学園の運営決定権をも握る事になる。これは協会からの干渉が及ばないようにするためで、協会も在籍経験者たちが主導権を握った事で、『今後、学園への干渉は避け、スターウマ娘が生まれれば、それをバックアップする』方針に転換していく。グラスワンダーが遅かれ早かれ、引退するであろうことは容易に想像はついていたが、『せめて、もう一花咲かせてくれ』というのが協会の本音である。

 

「グラスさんのことで、協会が揉めていると聞きましたが?」

 

「スペがそれで文句言われてんだ。グラスには海外遠征に行かせて、スターにする計画があったんだが…、スペがクラシック級を終えた途端にドリームシリーズへいっちまったからか、あいつは全盛期のキレを無くした」

 

 

「ええ。なんでも、燃え尽き症候群とか…?」

 

「それが問題なんだ。マルゼンスキーの再来って評判なのに、そのマルゼンさんほどの実績はない。足はスズカほどじゃない、かと言って、勝ったレースはみんな右回りのレースとくらぁ…。おまけに、怪我した後に激太りしたそうだから、精神的要因が大きいにしても、こりゃまずい。スペとエルが同じターフからいなくなった反動がこれじゃ、協会も見限るよ」

 

「彼女はどうなるんですの?」

 

「自分でも、年貢の納め時はわかってるはずだ。次で往年の走りを取り戻したのを見せてから、引退したいと考えてるはずだ。ドリームシリーズへの移籍には充分な実績を積んできているが……ここ最近の醜態からの挽回には、数年はいるだろう。世間が認めねーよ」

 

ゴールドシップの言う通り、グラスワンダーはここ数戦の醜態がひどく、自己管理にも失敗する有様であるため、ドリームシリーズへの移籍は『マルゼンスキーの再来』という異名が過去のものでないことの証明をしてからになることは明らか。ドリームシリーズそのものが元々、『引退したスター達の福利厚生費捻出を兼ねた興行』の意味合いで始められたものなため、スペシャルウィークのように『シニア級を経ないで移籍する』ことは異例中の異例であった。スペシャルウィークはシニア級に挑む気はなかったため、早々に移籍したつもりであったが、それがドリームシリーズに一石を投じ、遂にはグラスワンダーの不振の要因を作ってしまったため、協会から睨まれることは確定している。それは競走馬のスペシャルウィークが顕彰馬になれなかったことの再現であったとも言える。

 

 

「ああ、そうだ。お前には言っとく。スペはたぶん、顕彰ウマ娘にはなれんだろう。あいつには悪いが、『余力を残したまま』でドリームシリーズに移籍しちまったのが、協会に睨まれる原因だ。ドリームシリーズったって、周りは引退して久しい連中だ。それを、ついこの間まで、バリバリの現役だったあいつが走ってみろ。ぶっちぎっちまうよ」

 

「確かに。ドリームシリーズの皆さんは福利厚生のために走らせてもらってるという感じですもの。スペシャルウィークさんの選択は……」

 

「愚行だ。シニア級にいかなかったからな。マルゼンさんは怪我で断念したが、あいつはダービー目的で走ったと誹りを受けるくらいに早すぎる。せめて、シニア級を一、二レースくらい走っときゃ…」

 

スペシャルウィークはダービーとクラシック級の有馬記念で燃え尽きたのか、シニア級のレースには出走しなかった。その事が協会に睨まれる要因だと、ゴールドシップは断言した。この事は後にメジロマックイーンがそれとなく伝え、ショックを受けたスペシャルウィークは、自身の名声をドリームシリーズの完全なリーグ化の後押しに使っていく。また、自分がグラスワンダーの不振に関係していると気づいた後は気まずくなったのか、しばらくはグラスワンダーと会わなかったという。

 

 

 

 

 

 

 

――21世紀世界の倫理観が現地世界の倫理観を淘汰することで、ウィッチ世界の文化面は大きく進んだものの、同時に扶桑皇国農村部のパニックを誘発した。そのため、農業高校などを設けたり、家庭の事情ごとに学費の免除を認めるなどするため、事実上の公営となった。1940年代当時の農村の人間には、高等教育機関に払えるだけの財力はないからだ。この一連の問題は統合士官学校に至るまでの問題となり、統合士官学校は『七年の勤務義務を終えれば、統合士官学校の学費を免除する』という項目が設けられることで、財源を得たい日本側、人数を得たい扶桑側とで妥協された結果である。こうした社会規模での変革が起こったことで、軍部はなり手不足に陥っているため、64Fに過剰な期待が寄せられるのである。また、急激に電子化・高性能化される航空機や戦車は操縦士の再訓練を必要とし、育成費用の高額化と育成課程の練り直しを必要とした。人型兵器は他兵器のいくつかを統合した働きをこなせるため、パイロット育成費の節約になると判断され、積極的に転科が進められた。第一期から第三期までの育成課程応募者は全員が元は騎兵科か、機甲科の軽戦車装備部隊の要員であった。自衛隊はGフォース用の名目で、ダグラムの量産品『DAM』(ダム)、ヘイスティを購入。(流石にコケただけで爆発しかねないラウンドフェイサーは没った)。コンバットアーマーは21世紀の整備員でも『手に負える』動力を使っているからである。ジオン残党の襲撃事件で在来型兵器の限界を悟った自衛隊は人型兵器を『重機』の名目で購入。極秘裏に運用試験を開始する。この時のデータが回り回って、ジオンのMS開発に応用され、ザク系を産み出す事となり、そのザクの解析データがガンダムを産み出すのだ。また、それに関連し、地球連邦軍では、『RX-78-8』の型式番号を持つガンダムの行方が捜査されていた。RX-78の正確な製造数は23世紀でも不明で、仕様がどの程度に渡って派生したのか。その正確な記録も残っていない。RX-78-7は戦後の残党狩りで使用された記録がかろうじてあるが、その後の番号のRX-78シリーズの存在は不明瞭である。一年戦争中期の『RX-78は初期仕様で8機が製造された』という記録が根拠だが、ホワイトベースには三機しか回されず、一号機は処分された。三号機はホワイトベースから降ろされた後、マグネットコーティング処理の試験機にされ、残存。(現存する唯一の初期のRX-78でもある)。四号機、六号機は実戦で破壊された(修復は戦後)。五号機、七号機は戦後も保管され、デザリアム戦役の際に再投入されている。八号機がどういう計画の機体なのか?それは永遠の謎であった。地球連邦軍において、ガンダムマークⅡすら退役済みの時代においては好事的な物事であったが、RX-78を客寄せパンダとして使い始めた地球連邦軍にとっては一大事でもあった――

 

――23世紀 ギアナ高地――

 

「RX-78の正確な製造数は不明だと?」

 

「うむ。あの戦争で申請があったものは通したからな。おそらく、セカンドロット機だけでも確実に三機は存在する」

 

「サナリィが横浜の施設で発見したものは?」

 

「おそらく、アムロ・レイ機の予備機を造ろうとして集めていたが、RX-78系そのものの意義が変化した後は放置されていたものだろう。どれも良好な状態だったそうだ」

 

レビルとゴップは横浜で発見された物資がRX系の予備パーツの山であった事を話し合っていた。サナリィが再構築を試みているため、欠けたパーツを現用品で補い、新規のムーバブルフレームに載せている。そのため、『RX-78のフォルムを持つ新式ガンダム』に等しい手間がかかっている。

 

「それで組み立ては?」

 

「あと数ヶ月で完了するそうだ。21世紀の日本で現地の立像と入れ替えて、実働テストを行う。この時代では、ジオン残党が最後の悪足掻きでテロを起こしまくっとるから、デラーズ紛争の二の舞になりかねんよ」

 

「連中は分別を弁えてはおらんからな。過去の時代で自らの鬱憤を晴らしたところで、何になるというのだ」

 

「連中は自分達を拒んだ世界をリセットしたいのだろう。だが、無駄なことだ。ゲッターエンペラーが30世紀に現れる以上、運命は決まっているというのに」

 

「ゲッターエンペラー…。最大最強のゲッターというが」

 

「あれは一種の機械神だ。ゲッターアークチームの見たものは一つの結果でしかない。別の可能性もあるはずだ。そうでなければ、アークチームの存在を許すはずはない」

 

ゴップはゲッターエンペラーを機械神と位置づけて考えており、ゲッターエンペラーが目指すのは空間支配能力の会得であり、それを会得し、ゲッターエンペラーが『真ゲッターエンペラー』になるための進化を起こすための触媒にゲッターアークチームを使っているのでは?と考えられている。

 

「つまり、彼らが見たゲッターエンペラーは進化の袋小路に入りつつあり、それを打破するため、アークチームを取り込まずにいるわけかね?」

 

「おそらくな。拓馬君が垣間見たという、真ゲッターロボとゲッターエンペラーの中間体こそ、ゲッターエンペラーの幼体だろう。ゲッター1に真ゲッターのエッセンスを混ぜたような姿、皇帝を思わせるゲッターウイング。筋づまは合う」

 

「さらなる飛躍のために、別の道を探す…。ゲッターエンペラーは何をしようとしているのだ、レビル」

 

「わからん。だが、流拓馬の見た『苛烈で、選民思想に染まった人類』はゲッターも望んでいるものではないのだろう。大いなる目的のためにも」

 

「大いなる目的とはな」

 

「神々がゲッターに与え、我々に与えた目的は闘争だ。同胞同士で食い合い、進化する戦闘的な種…。この宇宙の外にある空間すら覆い尽くす『時天空』を倒すため……」

 

レビル将軍はその存在を知っていた。そして、地球人に髪が与えし役目が『時天空を倒すための生物兵器』。ビッグバンでさえ、足止めにしかならないほどの時天空をどうにかして倒すための。そのための力がゲッターエンペラーなのだと。

 

「その進化を始めた段階のゲッターが、巨大・近代化したようなゲッター1だと?」

 

「推測が正しければ、それはゲッターエンペラーの幼体期における一つの形態だろう。真ゲッターロボとゲッタードラゴンの融合体が成体のエンペラーなのだからな」

 

拓馬が見たという、『火星に現れた、ゲッター1とゲッターエンペラーの中間のような姿をしたゲッターロボ』。流竜馬の『声』を媒介にしての活動をする、ゲッター1系統の姿である点で、ゲッターエンペラーとの共通点を見いだせる。ゲッターエンペラーは『真ゲッターロボとゲッター聖ドラゴンの融合進化体』というのは、地球連邦政府と軍の首脳部に至るまでの認識になっていた。真ゲッターロボが進化したゲッターは『神ゲッターロボ』があるが、それとは異なる進化のゲッターであるので、仮に『聖ゲッター1』と呼ぶことになった。

 

「ジオン残党が知ったら、どんな顔をするかな」

 

「絶望するさ。自分達は地球人という一つの種を宇宙に適応させるために生まれる『当て馬』などと知れば」

 

「言い得て妙だな」

 

「ゲッターエンペラーはジオン残党の行為そのものを、釈迦が孫悟空を試す時のように楽しんでいる。ジオンが『自分達は釈迦の掌の孫悟空である』とわかってくれればいいのだが」

 

レビル将軍はその一言で会話をまとめた。それはゲッターエンペラーとう未来で生まれた機械神の戯れとも言える行為。過去改変に一縷の望みを託すジオン残党は『釈迦の掌で頑張る孫悟空』に例えられる。ゲッターエンペラーは何のために、アークチームの行動を許容しているのか。アークチームの知るゲッターと違う進化を辿った真ゲッターロボと真ゲッタードラゴン。そして、ゲッターエンペラーが目指す『真なる皇帝』(真ゲッターエンペラー)とは?謎が謎を呼ぶ会話であった。

 

 

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