――烈風。紫電改に本来の制空戦闘機としての立場を奪われ、万一の僥倖で登場できたとしても、『最強のレシプロ艦戦』たるF8Fベアキャットに蹴散らされるだけだと評される『零式艦上戦闘機の正統後継機』である。ウィッチ世界では45年に登場できたが、基礎設計が1940年前後のものから手直しされないままであったことから、完成機でのロール性能が『紫電改』に決定的に劣っていた。その点で前線部隊の不評を買い、本来の制空戦闘機としてではなく、機体構造を強化された上で『戦闘爆撃機』として運用され、レシプロエンジン搭載型は1948年に一線を退いた。ダイ・アナザー・デイを担った後は操縦性の良さから、非武装機が練習機として使用された時期もある。末期はターボプロップ化された型が製作され、非武装型は日本にスポーツ機として輸出された。烈風は21世紀では一機も現存しておらず、その実力も『1945年の戦闘機としては格落ち』と断じられている悲運の機体であるため、ダイ・アナザー・デイでの活躍は溜飲を下げる思いであった。野比家も『スポーツ機』名目で、紫電改と共に数機を保有していた。――
「レシプロ機もあるんだ」
「烈風か。まさか、実機を拝めるなんてな」
「烈風?」
「大抵の場合だと、東南海地震でトドメを刺された『零戦の正統後継機』って奴だな。ジェットに切り替えが始まったんで、向こうの世界じゃ退役が始まってんだ」
ゴールドシップがテイオーに解説するように、烈風はウィッチ世界では実戦に使われたが、戦闘爆撃機扱いで固定されたまま、軍用機としての生涯を終えつつある。そこはコスモタイガーⅡに対するコスモタイガーⅢのようなものだろう。
「表向きはスポーツ機で登録してるが、武装は撤去してねえな。機銃がついたままだろ?」
「そういえば…」
「向こうの世界で払い下げたのを、そのまま持ってきたんだな。レシプロ機の時代は1年半でモデル寿命がきたそうだから」
「それにしても、機銃をそのままつけたのがよく輸出されたね」
「あれこれと輸入の時に言い訳したんだろうさ。カウンターウェイトとか、バラスト代わりとか。しかも、機銃弾も装填されてるようだぜ」
「うへぇ」
「デモフライトで需要があるんだよな、戦中のレシプロ戦闘機は。日本機は飛べるのがないし、大抵はゼロ戦飛ばしてりゃいいし。だから、貸し出し用に持ってるんだと」
零式艦上戦闘機はウィッチ世界では早期に引退させる計画だったが、ダイ・アナザー・デイで『数を揃える』必要から、史実の五二型、五四型の生産がなされ、アグレッサー任務用の四三型は直ちに生産中止の指令がなされ、ほとんどの個体が五二型か五四型(史実では六四型だが、五四型を増産するという意義から、型番の変更はなかった)へ改造され、実戦に供された。ダイ・アナザー・デイで、根本的な次世代機のF6F、F4U、F8Fと戦った影響で、ダイ・アナザー・デイ後は各型合わせても200機に満たない数しか稼働状態では残らなかった。日本がダイ・アナザー・デイ後に『産業遺産』の名目で残存機の多くを領収していったため、扶桑皇国海軍は紫電改、烈風を暫定的な主力にしたのだが、ジェット時代の訪れで混乱状態に陥った。(斜銃搭載型もまとめて退役させられたため、邀撃部隊が大混乱となった)1949年次はF-8、F-4EJ改からF-14単座型への更新を控えているものの、大多数は烈風や紫電改がターボプロップ化で現役のままだ。
「貸し出し用?」
「エアレースのデモンストレーション用だよ。日本機は横方向の運動性が欧米製の比じゃねえから、人気あるんだよ」
ゴールドシップの言う通り、日本機は伝統的に巴戦での機動力を至上としてきたため、F8Fやシーフューリー以外の機種には優位を誇っている。ダイ・アナザー・デイでは高高度迎撃の必要がない(高高度はジェット機に任せる)ため、得意高度で大暴れした。シーフューリーやF8Fはウィッチ世界の他国からすれば高性能機そのものであり、ろくに配備も済んでいないが、日本連邦はレシプロをダイ・アナザー・デイで使い潰したため、早期にジェット機へ更新できたが、今度は要員教育が短期間に連続する機種更新に追いつかないという有様で、64Fにおんぶに抱っこの状態なのだ。
「だから、俺らは仕事量がパネェんだ。異世界まで股にかけて戦うからな。お前等もいざとなったら、ここにある機体は好きに使え。ノビスケの事件の教訓で、全てを稼働状態にしてある。ゲッタードラゴンを使えれば、大抵の機体は動かせる」
「それにしても、試験前の奴まで管理してんのか?」
「向こうの世界はやたらと強奪事件が多いからな。過去の時代に持ってきた方が良いんだと。中には、サイズを縮小して持ってこられた物がある。これだ」
「……えーと、ガンバスターか?」
「その後継機、グレートガンバスターだ。元のサイズは300m。地上で各種テストなんて、とてもできねえから、ユング・フロイト大統領がガリバートンネルでサイズを縮小して、テストをしてきたんだと。噂の銀河中心殴り込み艦隊が帰って来たんで、地球連邦政府も再編の手助けにしてる。残存兵力とは言え、2400隻と数万のバスターマシンが残ってるからな」
銀河中心殴り込み艦隊は地球圏に帰還してからは『軍司令部直轄』扱いでアースフリートに組み込まれた。相変わらずの内輪もめの地球圏には呆れていたが、異星人との宇宙戦争時代に突入していたため、彼らも地球連邦軍の再編指令に従った。ユングは先行して帰還した後、地球連邦の改革のために、前任者の任期満了に伴う大統領選に立候補。元・トップエースの一人という知名度もあり、見事に当選。デザリアム戦役後から正式に政府首班の業務に就いている。元・前線部隊の士官出身の大統領としては通算で三人目である。一次テストを終えた段階でユングが退役し、大統領になったため、二次テストの日取りなどは未定となった。そのため、野比家で保管される事になったのだが、元のサイズは戦艦大和以上に大きいので、直立状態では格納不能。分離しても、駆逐艦級の大きさでかさばるため、機体のサイズを縮小して格納している。
「なるほどな」
「ルドルフだが、まるでガキに戻ったみてぇだが、問題は三冠馬としてのブライアンとしての後継で、前世でのお前のオジキであるディープの存在が確認されていないことだ。ミスターシービーは往年の力はもう出せない。ルドルフが昇り龍だった頃、既に落ち目になっていた。トウショウボーイも、その時に見切りをつけたと思うぜ」
「ああ。シービーは表向きは自由人な風に装ってるけど、会長が昇り龍だった頃には『自分の全盛期が終わっていた』事に悩んでたからな。一時は血縁関係がある事もあって、前会長の後継者の有力候補だったから」
「あ、それはかいちょーも前に言ってたよ。自分がシービーを差し置いて、後継に選ばれた時は『怖かった』って」
「うちの生徒会長の座は代々の最強か、当代のダービー制覇経験者……。そのいずれかのウマ娘が担ってきたからな。会長は皐月賞を制した段階でその座を約束された。故に、孤独になった」
ゴールドシップは知っていた。ルドルフの現在の振る舞いは『仮面』であり、本質は『ルナ』のままである事、『皇帝になった』故に、同世代のウマ娘からは遠ざけられ、幼馴染で、ダービー制覇経験者であるはずののシリウスシンボリですら、ルドルフから離れていったと。それ故に、かつて、自分と似た境遇にあったマルゼンスキーと友人になり、エアグルーヴの入学までの時期はトウショウボーイの言いつけもあり、マルゼンスキーが実質の副会長として振る舞っていたのだ。
「だから、お前の存在があの人の拠り所になったんだよ。小学校の時、お前、あの人の前で啖呵切ったろ?容貌が自分に似てることもあって、すごく嬉しかったらしい。それで、お前が大成することを誰よりも願った。だけど、実際はそうはならなかった。あの人の現役時代のトレーナーとオンラインゲーム仲間だから聞いたんだが、お前が日本ダービーで骨折した事がわかった時、青ざめてたそうだ。」
「だろうね」
ルドルフはテイオーの大成を願ったが、三冠も、無敗の夢も打ち砕かれ、心が折れかけたテイオーの手助けになれなかったことを悔やんでいる。ミスターシービーとも微妙な仲になってしまったため、テイオーとの絆を拠り所にしている節があるルドルフ。
「お前はあの人の救いになったからな」
「マルゼンスキーしか友人がいなかったからな。エアグルーヴはあくまで、会長としてのルドルフを慕ってるんであって、個人として理解してるとは限らんからな」
ゴールドシップと黒江の言う通り、ルドルフは真の意味での友人がいないのが悩みであった。黒江もそれを悟っていた。エアグルーヴはけして、ルドルフ個人を理解しているとは限らない。それがルドルフに隠された悩みであった。そして、タマモクロス、オグリキャップ、シンボリルドルフ、ナリタブライアンと言った歴代の雄を過去の遺物へと変えてしまうほどの実力を誇り、歴代の傑物では、サイレンススズカのみが対抗できると目されたディープインパクトの存在に触れられた。前世における血縁関係はゴールドシップから見れば『おじの一人』にあたり、サンデーサイレンスの子世代で最強を誇ったとされる。そのディープインパクトが現れれば、サイレンススズカ以外に対抗できる者はいないだろうというのが、黒江とゴールドシップの共通認識であった。また、ルドルフが現役時から通しての『寂しさ』を抱えており、敢えて過去の振る舞いに戻ることで、それを少しでも紛らわそうとしているのに、ゴールドシップは理解を示している。そこもルドルフが得た『良き後輩』たる所以だろう。また、時代が進んだことでの価値観の変容で、自分が過去に『協会の代弁者』であった事が異常に叩かれるようになったことに強いストレスを感じている表れでもあるため、ルドルフは協会の高慢さの犠牲者と言えた。また、オグリキャップのキャリアの全盛期はタマモクロスが落ち目を迎えるのと同時期であり、ルームメイトながら、お互いに全盛期は微妙にズレていることを、会長として、先輩として、強く思いやっているルドルフだが、後世にオグリキャップの名が『有馬記念の有終の美』と共に語り継がれているのと対照的に、シンボリルドルフという存在、自身が得た『三冠馬の誉ある栄光』も一時のもので、21世紀には、世間から半ば忘れ去られていることがショックであることを隠しきれていないなど、精神的にものすごく打たれ弱い面があるところも、テイオーの『父』らしかった。
――遠征組はシリアスに戦っていた。プリキュアタブーをも破らなくてはならないほどの敵であったからだ――
「敷島のジジイ特製の拳銃型散弾銃だぁ!くらえぇ!」
キュアドリームAはのび太から渡されていた『拳銃型散弾銃』を使う。敷島博士が恐竜帝国との戦いで製作していたものの改良タイプであり、六連装リボルバーを模した外見である。一見すると、かの有名なM29と同型なように見えるが、威力は段違い。サイボーグやホムンクルスを用いる組織の戦闘員であっても必殺の威力であった。
「ふう。変身してるってのに、手が痺れる。あのジジイ、トンデモな銃を作りやがって」
愚痴るキュアドリームA。荒い口調なのは、デザリアム戦役で精神が復調した後の特徴で、転生先の『中島錦』の特徴が混ざったためである。そのため、以前より銃器の使用に躊躇いはない。
「敷島博士もとんでもないものを作るものだ」
「そうなんですよ。若い頃は対消滅兵器の研究までしてたとか、あのジジイ」
キュアドリームAは以前よりパワーアップしているのだが、それでも相当な反動がくるようで、手がしびれたとぼやく。二号ライダーとV3もこのコメントだ。
「しかし、並の怪人なら倒せそうな銃だな。上位の怪人は俺たちのキックに耐えるから、あまり効かなさそうだが」
「単純なライダーキックって、意外に効かないんですね」
「強い怪人はライダーキックを躱したり、弾き返すからな。俺も経験があるが、そういうケースで編み出したのが、ドリルキックやポイントキック系の技だ」
二号ライダーはパワーにおいては一号以上であるが、強力な怪人相手ではライダーキックを躱されたり、弾き返されたケースが一号共々にどこかであったらしい。
「綾ちゃんやケイちゃんはマジンガーやゲッターの技を度重なる転生で撃てるようになっているが、君からすれば不思議だったろ?」
「ええ。あたし達の技を素で超えてくるんですから、驚きましたよ」
「ストロンガーの薫陶を受けてるからな、あの子たちは。素で君たちを超えるパワーを持つし、対軍・対界宝具も持つ。単純な戦力なら、君たちより数段は上だ。俺たちに追いつくために長年の鍛錬を重ねた成果といえる」
「先輩達はどれだけの時間を?」
「通算で500年近い時間をかけている。その長い年月を見守ってきたのが、彼らだ」
のび太とドラえもんは一種の特異点と言える存在でもあり、黒江たちが転生を重ねても、それ以前の友情を保つ。のび太は23世紀の記録によれば、93歳でその生涯を静かに閉じるが、末裔のノビ・ノビタダに転生する。そのため、のび太は今回の歴史においては『転生』をいつからか、決意していたのが窺える。そして、それを公言していることも。
「我々が彼女たちとの記憶を引き継いだのは、後輩の仮面ライダーJのおかげだ。Jの起こす奇跡で、我々は彼女たちとの協力関係を再構築でき、今や銀河連邦警察とも公式な関係を築いている。組織はウィッチのみならず、プリキュアなどにも研究対象を広げている。キュアルージュの前世の世界での戦いはその行動の結果、起こったんだろう」
二号ライダーは兵士を蹴散らしつつ、そういう。プリキュアオールスターズは『ある世界』でチームそのものが自然消滅するほどの被害を受けており、少なからずが激しい戦いでシェルショックを患い、二度と戦える精神状態では無くなった事をキュアルージュから聞いていたのだ。その教訓がどこかで他世界の自分自身に影響を及ぼしているのでは?とする考察もなされている。出現したプリキュア達の多くが抵抗なく『軍へ入隊する』のは、本人たちに自覚はないが、その戦いで『精神的には敗北も同然だった』事への悔しさが平行世界の自分自身の思考に影響を及ぼしたのでは?と、ウマ娘のアグネスタキオンは分析している。組織がA-1スカイレーダーの基本設計を入手し、戦闘機に用途変更して生産したのがスカイサイクロンにあたる。
「その戦いの様子がわかれば、対策もできるんですけど、話したくない子もいて、無理に聞き出せないのが」
「ルージュの言によれば、相当に壮絶だったそうだからな。いつか話してくれるのを待つしかない。なに、時間はたっぷりあるさ」
「あまり笑えないですけどね」
「君たちも、人々の願いがその身を不滅にしているのだから、個人の意志はあまり関係無くなるだろう。ゲッターエンペラーのように」
ゲッターエンペラー。ゲッターロボの究極進化とされる最大最強のゲッターロボである。ゲッターエンペラーの意志は流竜馬の意志が他の意思を束ねていると推測されており、流拓馬はその存在に納得していないようだが、父親の流竜馬は『ゲッターの意志が進化を目指すのなら、人の望む進化にすればいい』と構えている。プリキュアも世界が『不滅』を願ったからこそ、転生したり、他世界からランダムに選ばれたと推測される。また、ゲッターエンペラーは『地球連邦主体の文明をリセットしようとするジオン系勢力』がどこからから得た情報で『ターンエーガンダム』を極秘裏に建造しようとしていた事を拠点ごと潰しており、ゲッター線はその目的のためなら、介入も辞さないのである。つまり、その時点でターンエーガンダムの『月光蝶』はゲッターエンペラーの手で世に出る前に拠点ごと葬られたわけだ。また、23世紀の人間を操り、ガンダムでの文明リセットを目論んだジオン系の過激派を『文明の進歩を否定するアナクロニズムな連中』と仕立て上げ、徹底的に殲滅するように仕向けた。ゲッターエンペラーにとって、『タウ・リン』は『文明リセット派を殲滅するための体の良い悪役』として仕立てあげられたピエロであったと言える。
「あのゲッターは何が目的なんですか?」
「今のところは断言はできんが、人の進歩を自分の目的のためにコントロールしているかもしれん。行き過ぎた文明を壊す事を志向したジオン軍は、タウ・リンに利用されて破滅したが、そのタウ・リンを資金源にする形で『月光蝶』というシステムを積むガンダムを、元ティターンズ系のネオ・ジオン残党が造ろうとしていたが、原因不明の事故で拠点ごと吹き飛んでいる。高濃度ゲッター線が観測されている事から、エンペラーの介入を我々は睨んでいる」
「月光蝶……?」
「ナノマシンを使って、現在の文明を滅ぼそうとする研究の産物だそうだが、そんな事を『皇帝』が許すはずはない。ゲッタービームで吹き飛ばされたんだろう。拠点ごとね」
その『ターンエーガンダム』は拠点ごと葬られたかに見えたが、後にナノマシンの力で再生しており、数年後の調査の際に、爆心地から回収がなされる。デビルガンダム細胞を応用したナノマシンによる自己進化能力で、動力源がブラックホールエンジンへ進化を遂げていた事も判明。ただし、月光蝶システムはゲッターの力で根本から改変されており、過剰な破壊を引き起こすのが不可能にされていたという。また、ティターンズを源流に持つジオン残党が『ガンダム』で地球連邦を否定しようとしたことはジオンやティターンズの政治的命脈を完全に断つのみならず、ゲッターエネルギーが人を何の目的で進化させるのかという議論をも呼ぶ事になる。
「跡形もなく、ですか?」
「わずかなナノマシンが生き残って、そのガンダムを再生させるだろうが、おそらくはゲッターの力で何らかの措置はされているだろう。人の営みを同族が否定するなど、傲慢だよ」
V3はシャア・アズナブルなどがしようとした行為を『傲慢』と切り捨てる。未来に無条件で希望を見出せた時代の人間達が未来の人間の絶望を『傲慢』と切り捨てるという事が、23世紀には起こっている。人々の願いが『かつての伝説』を蘇らせたように。『誤った文明はリセットすればいい』という答えは『科学者や思想家の傲慢』。20~21世紀の人間達に存在そのものの意義を否定されたジオン公国やネオ・ジオン、ティターンズの残党は地球連邦の名家として知られる『ススキヶ原の者たち』を過去改変で消し去ろうと、遂には組織と手を組んだ。それ故に、ジオン、ティターンズ、ザンスカールなどの残党は歴代昭和ライダーからも『不倶戴天の敵』と見做されたのである。
「これから、あなた達はどうするつもりなんですか?」
「組織はジオンやその他の歴代勢力の残党を取り込み、のび太君らの街を襲うようになった。俺たちは平行世界を股にかけて戦うさ。人間の自由のためにね」
二号ライダーはバダンが23世紀で地球連邦に敗れ去っていった歴代勢力の残党を取り込み、肥大化したのを悟っており、それを倒すために戦うと明言した。また、平行世界の敵勢力とも手を組み始めており、その強大化を防ぐため、全ライダーによる総力戦に移行するとも告げる。
「お客さんだぞ、二人共」
「今度は……ああ、あの野郎か。あたしと、りんちゃんに屈辱を味あわせた…。ここはあたしに。あの時の借りを今回はあたし自身が返します」
キュアドリームAは現役時代の敵組織『エターナル』の幹部の一人であった『ムカーディア』がこのB世界では生存している事を確認すると、二号とV3の前に進み出る。そして。
「ハァッ!!」
気合を込め、気と小宇宙の複合した可視化されたオーラが彼女を覆い、自己意思でシャイニングドリームへの二段変身を敢行する。柔和なイメージの強い同形態だが、デザリアム戦役の際には『通常形態で限界までパワーアップしていた』ためか、タウ・リンへの『限界を超えた怒り』をキーに自己意思での変身をし、そこからマジンガーゼロと融合することで『エターニティドリーム』へ更に進化している。また、シャイニングドリームは概ね、後輩プリキュアの最終フォームに相当する基礎能力を持つため、それに『鍛えた能力』を+した場合、以前の同形態を遥かに超える強さを持つ。
「久しぶり。まだ生きてたんだ、アンタ」
「その口ぶり。別の世界の貴方自身ですか?キュアドリーム」
「あの時の借りを返そうと思ってね、ステゴロでさ。この世界のあたしには別のことをさせてるから、丁度いいってこった」
たぎるオーラ。時よりオーラに紫電の光が迸っている事もあり、ハッタリも随分と効いていた。その名の通り、ムカデの怪人であるムカーディアは無駄にイケメンボイスであるものの、予想外の変化を見せたドリームに驚愕しているのを隠しきれておらず、語尾に震えがあった。
「その姿は……」
「そっか。あんたは知らないんだったね?教えてあげる。この姿はあたしが得た『思いの光』の一つ。想いを咲かせる光、シャイニングドリームさ!」
ドリームはこの時期の自分が到達していない境地の一つをムカーディアへ見せつけた。以前、クイズで幼稚園児並とバカにされ、弄ばれた借りを返すためか、空中戦を含めての格闘戦を繰り広げた。
「百壱式・朧車!!」
プリキュアとしての個人技はエターナルの幹部級には通じない事を知っているドリームAは草薙流古武術を主体にしての格闘を見せた。錦がウィッチ世界での継承者として会得していた都合上、その存在と統合したキュアドリームも使えるわけだ。パワーアップのため、青い炎を出すようになっている。要は跳ねながら回し蹴りを二連続で放ち、踵落としで叩き落すだけだが、全身を青い炎で焼かれる上、基礎パワーが通常時と桁違いに上がっている形態で放たれる都合、凄まじい威力を誇る。
「百式・鬼焼き!」
起き上がったところに肘を打ってから、裏拳のように腕を伸ばし、炎を燃え上がらせつつ舞い上がる追撃も連続で披露する。プリキュアとしての個人技に強い耐性があるムカーディアも、それとまったく無関係な『草薙流古武術』相手では圧倒されていく。
「なんだ、その炎は!?」
「悪いな、千年以上の歴史がある古武術を継承した世界線の存在なんでね、あたしは」
ムカーディアは距離を取るが、二撃だけで大ダメージである。そして、シャイニングドリームは挑発するかのように煽る。
「エターナルとは歴史が違うんだよ。それに、アンタじゃ燃えねえな」
声のトーンが普段の高いものではなく、ドスの利いた低めの声になっている事もあり、柔純白のコスチュームと天使の羽根を持つ柔和な姿と裏腹の烈火の如き激しさという相反する二つの姿が際立っていた。
『伍百伍拾伍式・神威!!』
拳を地面に打ち付け、巨大な爆炎を噴出させる技だが、スーパープリキュア形態のパワーに草薙流古武術の炎を上乗せしているため、通常時よりも遥かに巨大な炎が噴出する。一言で言えば、凄まじい威力であった。見届け人の二号とV3も関心するほどの炎の柱が迸った。
――この爆炎は別行動中ののぞみBとりんBのいるところからも見えた――
「あ、蒼い炎ぉ!?向こうのあんた、なんで炎が使えんのよぉ~!?あたしのアイデンティティがぁ~!」
のぞみBの胸ぐらを掴み、取り乱すりんBだが。
「りんちゃん、気持ちはわかるけど、ほら、学園のみんなを助けないと」
「ハート、あんたは知ってんでしょ、教えなさいよ!」
「せつめーがややこしい上に、ながーくなるから、今はパス。あたしが変身してれば、のぞみちゃんたちがプリキュアだって、ばれないでしょ?」
「そりゃそーだけど」
キュアハートはパルテノンモードになっている。こちらも転生時の基礎パワーの向上と特訓を重ねた事で自己意思での変身を可能にしたが、こちらも未来世界では、現役時代と一転して、苦戦率は高い。基礎能力が向上しただけでは勝てないのが、海千山千の世界の掟だということだ。
「出血大サービスで最強フォームになってるから、護衛は任せてよ~。」
「あんた、どこの世界でもポジティブね」
「そうでないとやってらんないって。元の世界(転生先の戦車道世界)じゃ、高校の部活の立て直しを理事長とかから命令されてさー。一年でできることしないと」
「あんた、まだ学生だったの?」
「ありすとあたしは高校生になってんだ、これが。後で詳しく話してあげるよ」
「あの人達はなにしてんの?」
「色々。八人がそれぞれの役目を果たしてる。あの人達は、一人一人が『ピンで世界を救える』実力を持つからね」
仮面ライダー達を『ピンで世界を救える』と形容するキュアハート。彼らに救われ、彼らの強さを目の当たりにした者としての率直な感想であった。第二世代プリキュアの最強候補の一人である彼女がそう断言する事により、仮面ライダーの強さはどれだけなのだろうかと、二人は圧倒された。強化変身に他者の祈りの力(ミラクルライト)が必要である二人にとって、自己意思で最強フォームになれるようになったキュアハートは羨望の的だが、そのキュアハートが更に尊敬の念を全開で熱く語る仮面ライダーという存在はどんなヒーローであろうか?
「その姿のマナちゃんがそこまで興奮するのかぁ」
「当たり前だよ!あの人達は本当のヒーローだよ、ヒーロー!ラブちゃんなんて、鼻血出しながら悶絶する勢いでさ。やよいちゃんに電話で自慢してた」
「想像つくわ―…」
桃園ラブ、黄瀬やよいの両名は実は幼少期からヒーロー大好きっ子だが、ラブのほうが年季が入っており、地球戦隊ファイブマンのファイブイエローが憧れだったと公言している。また、幼少期に忍者戦隊カクレンジャーや五星戦隊ダイレンジャーをビデオで視聴していたとも述べており、格闘の心得は実は元からあったりする。そこがやよいと『格が違う』点だ。りんBはラブがヒーロー好きなのを聞いていたのか、ちょっと引き気味だ。
「いいなー、マナちゃんにラブちゃん。本物のヒーローと一緒に仕事してて」
「あんたねぇ…」
のぞみBは素直に羨ましがるが、呆れ顔のりんB。
「フェリーチェ――はーちゃん――なんて、あの姿で大学生活送ったからね?」
『ええぇえええ!?』
二人のハモった絶叫が響き渡る。『バットで思いっきり殴られたような』衝撃だったとは、後日のりんBの談。