――過去の人間たちにその罪を断罪されたジオン残党やティターンズ残党は、ついに過去改変に手を染めるに至った。それを阻止すべく、地球連邦軍はその兵力を国連軍の名目で、過去の世界の各地に駐留させた。しかし、ジオン残党は21世紀世界をその超兵器で蹂躙。それに対抗するため、地球連邦軍も超兵器で以て対抗。その結果、『ジオンが過激派のレッテルを貼られて消滅していく』未来を自分たちの手で確定させてしまう。また、ターンエーガンダムで文明をリセットすることを目論んだティターンズ残党はゲッターエンペラーの意思で粉砕され、残されたターンエーガンダムも機能を改変されていたという。また、一つの文明は1万年で滅びるという論調を20世紀~21世紀の人間たち(のび太達)が否定し、ジオンの行いを悪行と断じ、異星人であるデザリアム人にさえ『スペースノイドというものは、スペースコロニーだけで文明を維持できると思いこんでいる』と嘲笑されるに至り、ジオン残党の目論んでいた『サイド共栄圏』なる思想は地球連邦の星間国家化で否定され、また、平行世界で『地球連邦の空洞化で歯止めがかからなくなったスペースノイド達はスペースノイド同士の争いで文明を崩壊へ向かわせる』光景が起こった事が明らかとなり、急速にスペースノイドの自治意識は薄れていった。サイド3とスゥイート・ウォーターの者たちは尚もジオニズムを信奉していたが、その求心力は度重なる派閥抗争で薄れており、ネオ・ジオンの解体で遂に移民船団として、地球圏から別れを告げることを選択。コロニーの移民船化が完了次第、地球圏を離れることになった。それを棄民と見なした残党軍たちは次々と過激な手段に打って出た。それはウマ娘たちも義憤に駆られるほどの残虐さであった――
――ウマ娘達の速力は一流と言われる者で、65~70キロ前後。パワーアップしたテイオーの最大速度はそれを一段上回るが、スタミナ不足が課題であった。それを鍛えるのも、ゴールドシップの真の目的でもあった。ゴールドシップはトレーニング面でふざけはするものの、質は高いトレーニングをするようになった。ルーデルのストイックな側面がゴールドシップにも影響を及ぼしたらしく、牛乳を愛飲するようになっていた――
「ゴールドシップ、あなた。いつから牛乳を?」
「んなこたぁ、気にすんな。また太るぞ」
「わたくしが太りやすいと!?」
「そこまで言ってねぇだろ!?」
メジロマックイーンはスイーツに目がない。オグリキャップやスペシャルウィークと違い、
底なしの胃袋があるわけでも、消化効率も高い方ではないため、太りやすい。それを地味に気にしているため、メジロマックイーンの沸点はそこを突かれると、意外に低めである。
「まったく……これでも節制はしているつもりですのに」
とはいうものの、メジロマックイーンは根本的に甘党である。人間の十倍もの運動量を発揮するウマ娘だが、メジロマックイーンは少量のエネルギーで一流といえるだけのポテンシャルを発揮できるため、そこは立派な才能ではある。しかし、いる世界が『素でウマ娘をも軽く超える者』が複数いる世界であるため、相対的に霞んでしまうのも事実だ。
「この世界はどうなってますの?素でウマ娘の能力を超えてくるなんて」
「あたしらの驕りだぜ、それは。エイシンフラッシュも言ってたが、普通の人間が勝てるわけがないってのはな。極限まで鍛えた人間の力は時として、種族間の優劣を吹き飛ばすんだ」
流竜馬、拓馬の親子もそうだが、身体能力がウマ娘を超えていた者は意外と多い。ドモン・カッシュや東方不敗マスターアジアに至っては、『素手で鉄筋コンクリートの高層ビルそのものを蹴り上げた』噂もあるほどだ。
「高層ビルを素で蹴り上げられるバケモンに比べりゃ、あたしらなんて、カワイイほーだぜ」
「そんな事、ウマ娘でもできるわけが……」
「やれちまうんだよ、それが」
ガンダムに乗らないほうが強い説まであるのがシャッフル同盟の面々だが、素のスペックが最高レベルの者を改造したのが仮面ライダー達であるのも事実だ。また、ウマ娘の力はスクーターや原動機付自転車程度の乗り物であれば、突進を受け止めた上で押し返す事も可能である。それを更に超えるなど、マックイーンには想像もつかなかった。
――ウィッチ世界では、扶桑海軍で優勢となりつつあった航空主兵論が史実の大敗北で否定されてしまった結果、潜水艦戦力の拡充と近代化に予算が注がれるかに見えたが、補助艦艇の充実に予算が注がれたため、戦闘艦艇のみならず、航空戦力の不足をも招いた。軍はあの手この手で兵力を拡充・近代化を行っていたが、それでも兵力不足は否めなかった。日本側もそれは認識していた。質で量はカバーできない事は史実の第二次世界大戦で証明されているからだ。しかし、日本の政治的都合で精鋭部隊の質を物的・人員的意味で極限まで強化する事が望ましいと判断され、人型兵器の配備に行き着いたわけだ。日本系国家は人海戦術を取れないし、物量作戦も取れない。その結果が『技術チート上等!!』なのは、日本系国家特有の悲哀によるものだ。また、他国で疎まれた艦娘達も受け入れたため、日本連邦海軍は多国籍艦隊の様相を呈した。特に、カールスラントはビスマルクやプリンツ・オイゲン、グラーフ・ツェッペリンが『祖国に居場所はない』と、日本連邦に亡命したのだ。ビスマルクと微妙な関係にあった実艦の艦長経験者の『エルンスト・リンデマン』大佐は『戦闘艦を女性名詞で呼ぶべきでないといっただけで、ここまでの大事になるとは……』と半泣き状態であったが、時既に遅し。カールスラント系の艦娘たちが祖国に戻ることはなかった。艦娘達は1949年時点で『第七』までの独立艦隊として配置されており、大和・武蔵・長門・陸奥の四名はその第一艦隊の中核にあり、外国系の艦娘は第五以降の艦隊に配置されていた。彼女らの奮戦こそが、日本連邦海軍が戦線の均衡を保っている理由であった――
――ウィッチ世界の留守番組は様々な世界からの来訪者の応対も仕事の内であった。そして。説明が大変なのが、D世界のシンフォギア装者らへの応対であった。A世界の装者が別にいる上、A世界の立花響は『キュアグレース』に覚醒しており、そちらの方が多忙となってしまったのだ――
「と、いうわけなんだ」
「どーいう事デスカ!?」
「映像見てよ。その方が手っ取り早いし」
A世界の調は切歌との関係が一度リセットされたため、他世界の切歌から見ると『つれない』ようだが、邪険にしているわけではないので、そこもA世界で至った二人の新たな関係性が窺える。
『ゲッタァァァァ!!シャァァイィィンッ!!』
調Aはデザリアム戦役で『ゲッター線の制御』に成功したため、シャインスパークやストナーサンシャインを太平洋戦争の時期には撃てるようになっている。ギアに特段の形状変化は起こってないように見えるが、流竜馬がしているようなマフラーが首にあるのが違いであった。
『シャイィィンスパァァァァク!!』
高濃度のエネルギーを『歌わずに』制御し、それを纏い、超高威力のエネルギー光弾としてエネルギーを放つ。原理はそれだけだが、超高密度のエネルギーを『歌無しで』起こす事が信じられないような『D世界の装者』達。
「なんデスカ!?エネルギーを纏って突撃して……エネルギーだけをぶつけたのデスカ!?」
「うん。フォニックゲインとはまったく違うエネルギーで起こしたものだから、真似は出来ないと思う」
「あれが調ちゃんの切り札?」
「引き出しの一つとだけ言っときます、響さん。他にもありますから、技は」
『束ねるは星の炎、これこそは道を切り拓く烈火……エクスカリバーぁぁ……フランベルク!!』
次は調が得た『聖剣のカタチ』。エクスカリバーとシュルシャガナ(炎剣)を組み合わせて生まれた『一つのカタチ』。ギアに特段の変化を起こさず、完全聖遺物相当の力をリスク無しに奮うという事実は皆を圧倒した。
「エクスカリバー……アーサー王伝説の聖剣とシュルシャガナ本来の力を組み合わせたというの?」
「うん。鋸は本来の姿じゃないからね。シンフォギアのもとになったり、完全聖遺物って、言われてたのは、先史文明時代に本物の宝具を模して生まれた超兵器か何かだったんじゃないかな?そうでないと、対消滅なんて起こらないはずだし。この推測をこっちの響さんに言ったら、やたら取り乱してね。自分の拠り所を壊されるか、否定されると思ったのかな?それがもとで、一時は気まずい関係になっちゃって」
表現を抑えているが、その推測は調Aと響Aの仲を一時は険悪にしてしまった一因であった。宝具が別にある事を鑑みての『単なる推測』なのだが、響Aは短絡的に自分の拠り所を否定するのだと捉えてしまい、身勝手な善意の押し付けとも取れる言葉を『売り言葉に買い言葉』で言ってしまい、それが調Aの琴線に触れ、迷っていた『誘い』に乗る直接的要因になった。もちろん、その場の勢いで言ってしまっただけだが、『取り返しのつかない出来事を招いた』のには変わりない。自分にも非があるのを自覚したので、調Aは表現の度合いを抑えたのだ。
「それで、あなたは自分の世界から離れる事に?」
「異世界で騎士生活を長くしてたから、今更、元鞘に収まれないのはわかってたし、『借り物』の立場でいるのは嫌だったんだ。それで誘いを受けたの」
調Aはギアを展開した姿で生活している事が大半になった。最初は異世界転移の副作用のようなものであったが、いつしか『身体保護と鍛錬のため』にそのままにしただけである。元の世界との交流を再開した後はエルフナインに定期メンテを頼んでいる。他世界と違って、顕著な形状の変化は起こさなかったが、マフラーが追加されている。のび太と初めて出かけた時に巻いてもらった事がその由来であるが、秘密にしている。青春時代の甘酸っぱい思い出だからだ。
「それで、肉体の外見はともかく、精神的には有に三十路を超えてるんだ」
「ふぇ!?」
「異世界で10年、のび太の世界で20年近く過ごせばね。肉体は歳を食わなくても、精神は成熟するからね」
「しかしだ。そちらでは、魔法少女事変の後の戦いの根は断たれたのか」
「ええ。師匠の仲間たちが火種を摘んでくれたんで。あなたのお父さんも存命です。ただ、おじいさんは黒幕だとわかったんで、処刑されましたが」
「…そうか」
D世界がどの時間軸かは釈然としないが、少なくとも、魔法少女事変は終了済みであるらしい。A世界では『アテナの黄金聖闘士』の介入で、パヴァリア光明結社が本格決起前に殲滅させられているため、そこで他世界と本格的に分岐した。また、シンフォギアの絶対性に疑問符がつけられた世界がA世界であり、他の力を受け入れることでの『進化』を選んだ結果、調はその身に魔力を宿し、ゲッター線を制御する術を身に着け、聖闘士にもなった。立花響は別人格とは別に、彼女固有の力を覚醒させ、『キュアグレース』となった。
「何事も絶対ってことはないことは、何十年の生活と戦いで学びました。切ちゃんとは、しばらく後に和解しました。今は働く場所がお互いに変わったんで、たまにしか会ってませんけど、連絡は入れてます」
「ギアが好きに使えるのは、なんでなのデス?」
「前に言ったけど、S.O.N.Gの所属じゃないから。元の世界で暮らしてないから、現地のルールの範囲で使ってるだけだよ」
調Aはサラッと言う。その通り、彼女はこの時点では『地球連邦宇宙軍/日本連邦空軍の中尉』であり、立派な軍の将校である。聖闘士となったことで、シンフォギアがかける負担を気にしなくて良くなった(絶唱の負荷にも耐えられる事でもある)事、空軍の軍服がまだ正式に決まっていない+合うデザインのフライトジャケットがなかなか見つからないなどの都合もあり、シンフォギアが事実上の仕事着になっていた。
「関係は維持したが、正式に抜けたのか?」
「協力関係にはあるんですけど、私たちは特殊な立場にあるので」
調と切歌は聖闘士に転じ、立花響はヒーリングっどプリキュアに事実上の復帰扱いになったためと、S.O.N.G自体が『完全に平和になった』ために『政治利用を避けるために』解体も検討されていたため、シンフォギア関連の法規は運用停止も視野に入っていたが、結局、『平行世界の脅威への対抗策』ということで『当面の運用継続』が決まった状況下なので、シンフォギアは定期メンテナンスの時以外は各人が平時でも保有するようになっている。異世界への派遣が常態化する一方で、自分たちの世界で纏うことは激減したからでもある。
「そっちの世界のこいつと喧嘩になったのはわかった。だけど、なんで、そんな事に?」
「お互いのボタンの掛け違いって言うべきかも。響さんに悪意はないのは、クリス先輩も知ってるでしょう?私も子供じみた事しちゃったんで…」
自嘲地味なのは、お互いに意地を張りあった結果だという自覚があるからだと、調Aは明言した。のび太やのぞみに、ダイ・アナザー・デイの際に諭された結果でもある。
「そちらの私は歌女(うため)としての役目に専念しているのか?」
「歌手って素直に言ったほうが。異世界への派遣があるのは変わりないので、今までより増えた程度です。マリアとデュエットしてますし」
表向きは『ツヴァイウイング』のデュエットパートナーでもあった天羽奏の死後はソロ活動をしていた風鳴翼だが、マリア・カデンツァヴナ・イヴが仲間に加わった後は彼女とデュエットするようになった。そこは同じである。調が出奔したのは、黒江が築いたものに『タダ乗り』することへの罪悪感と後ろめたい気持ちが拭えなかったからである。そのため、A世界での調は元の世界では『一身上の都合で通信課程に切り替えた』のが公式記録で追える最終的な消息となっている。また、黒江が滞在中に調べ、後に自分でも確信が持てた『自分の本来の出自』は『月読神社の宮司の行方不明になった孫娘で、母親と思われる人物の旧姓は南條である』が、これはあくまでA世界での出自。他世界と共通する事項とは限らないため、D世界の人間たちに詳しく告げる事は(この時点では)なかった。
「別の世界の私たちは、ここで何をしているのだ?」
「公式の戦闘任務です。ただし、装者として正式に動いてるのは、翼さん、マリア、クリス先輩の三人です。響さんは『プリキュア戦士』を兼任するようになったので、今はそちらに専念していますし、私と切ちゃんの今の仕事は聖闘士ですから。最も、敵はこの世界のアメリカ軍というよりは、その背後にいる者達です」
「裏で糸を引く者がいると?」
「ええ。驚きますよ」
「もったいぶらずに言えよ。じれったい」
「まぁまぁ。信じられないと思いますよ。背後にいる黒幕は……ナチスの残党ですから」
「ナチスの残党……!?そんな、70年代までのフィクションじゃあるまいし」
「第二次世界大戦で負けたような連中に、そんなことできんのか!?」
「できるんですよ。ナチスの残党はヒトラーを影で操っていた超常の存在……私たちは仮に『大首領』と呼んでいますが…がその力を貸す形で」
バダンが『大ショッカー』として平行世界に魔手を伸ばし、やがて『仮面ライダーディケイド』を生み出し、ゴルゴムと反目しあい、時には戦った。やがて、共通の敵『仮面ライダー』が現れると、二つの組織は仮面ライダー打倒を目的に手を組んだ。大首領は『バダン総統』、あるいは『ジュド』とも名乗り、ある世界の日本を拠点にし、人々の文明の進歩を強く促した『神』。神としての名は『スサノオノミコト』。その事を伝える。
「その世界では、その神が家畜のように人々を殺すと…?」
「そうなります。彼は宇宙で生まれたサイボーグのような生命体であり、日本を『ヤマト』と呼んでいます。最も、オリンポス十二神も別にいますし、ティターン神族、北欧神話の神々もいるので、世界はかなり混沌としてますよ。私はその内の善神である、オリンポス十二神の一柱『アテナ』に仕えていますから、スサノオノミコトは敵と言うことに」
凄まじい単語がズラリであるため、D世界の一同は圧倒される。
「でも、なんで、その私たちと会わせないようにしてるの?」
「同じ人物が二人もその場にいると、双子ならいい方で、悪くいくと、『ドッペルゲンガー』って思うでしょう、普通。それに、平行世界の同一人物同士が会う事で、以前に職場でトラブルが起こったんで、その教訓です」
調Aの言う通り、芳佳Bが起こしたトラブルは深刻なもので、既に戦える状態にない黒江Bと智子Bの心をひどく傷つけてしまった。(芳佳Bに悪気はなくとも、ウィッチであったのに『何もしない』(できない)事を謗る物言いであった)これ以降、64Fでの『平行世界の同一人物同士の接触』は第三者の立ち会いのことで行われるようになったのは言うまでもないが、芳佳B、それを擁護したリーネBと黒江B、智子Bとの間に禍根が残ってしまったのは事実であった。
「会うにしても、私達の立ち会いのもとに行う形になりますね。話に聴いたトラブル、平行世界同士の立場の違いを弁えない子が年長者と揉めたんですよ」
「ありそうな話ね」
マリアDがもっともな感想を述べる。
「世界が違えば、立場が違うのは当たり前だから」
「私たちも、そのような事に心当たりがないわけではない。その点は弁えているつもりだ」
「安心しました。こっちだと、響さんがかなり荒れちゃったんですよ。私の師匠が私と姿も入れ替わったの知ったの、フロンティア事変が片付いたあたりだったし、響さん、私の帰る場所を守ろうとするあまりに、突っ走っちゃって」
翼Dにぶっちゃける。調Aの姿とギアを『事故で入れ替わった他人が使っていた』事に響Aが憤慨したのは事実である。黒江は(事前にマリア・カデンツァヴナ・イヴから頼まれていたにしろ)響の剣幕に折れる形で、しばしの間は『演技』をしていた。精神が破綻寸前にあった切歌を慮るばかりに、黒江の都合も聞かずに『自分が最善と思う選択』を押し付ける形であったために、クリスや翼、未来も彼女を咎めたが、『調が戻る場所と、切歌を守るため』という使命感で突っ走る響を制止するには至らなかった。この『自覚のない、一方的な善意の押しつけ』こそ、騎士道精神を会得していた調Aの反論からの口論、出奔の原因であるが、調Aは響Aの立場に配慮し、第三者に説明するにあたっては、相当に気を使っていた。
「気持ちはわかる。立花が暁とお前の事情を知れば、帰る場所を守ろうとするのは自明の理だからな。ただ、立花は他人が踏み込んでほしくない領域に自覚なしに触れてしまう。その難点が悪い意味で働いてしまったのを考えるのは容易なことだ」
「うん。私も初めて会った時に、ね」
「あ、やっぱり。そっちもか」
「うん。子供じみた反発だけど、あの時はカチンと来たのは本当」
調と響のファーストコンタクトは最悪の部類で、当時の調の琴線に触れる事を無自覚に言ってしまっている。ただし、A世界では、次に遭遇した時には『入れ替わっていた』ため、第一印象はぶっ飛び、『豪快な子』という印象にすり替わっており、当人もその事は忘れていた。それほど、黒江のキャラが立っていた証だった。
「ギアはマフラー以外は形状に顕著な違いはないんだね」
「心象変化でギアを用途に変形させなくても良かったし、ギアのスペックにあまり頼らなくなったから、そっちでいう『心象変化』の実験はしてないんだ。プリキュアの皆さんの支援も時々してるけどね」
「あの変身ヒロイン連中か。戦いに向いてなさそうな恰好なのもいるってのに、なんでガチでつえーんだよ!?」
「うーん。強さは経験則によるところも多いし、格闘戦向けじゃない人達もいるけどなぁ」
とは言え、多少のスペックの差は個人単位の努力などで埋められるため、皆が格闘戦で装者と対等に渡り合うポテンシャルを通常形態で持つ。個人の資質に左右されるが、ギアを纏った立花響相手に、彼女の得意レンジである『格闘』で優勢になれる者も少なからずいる。キュアピーチ/桃園ラブ、キュアドリーム/夢原のぞみ、キュアブルーム(キュアブライト)/日向咲、キュアラブリー/愛乃めぐみ、キュアハート/相田マナの五大ピンクがその代表だが、意外なところでは、キュアアクア/水無月かれんがパワーで『ガングニールのギアを纏った立花響』を上回り、背中のスラスターを全力噴射した状態からのジャッキアップパンチを通常形態の掌で受け止め、そこからベアハッグ(わかりやすく言えば、鋼鉄ジーグの『ジーグブリーカー』のもとになったプロレス技)に繋げ、力任せに締め上げ、昏倒させた。『知性の青き泉』という名乗りフレーズには不似合いなパワーファイターぶりで、観戦していたA世界の装者たちの腰を抜かせていたりする。
「属性が頭脳派の色だけど、悪役みたいなプロレス技で締め上げて、響さんを気絶に追い込んだ人もいるからなぁ」
そこまで言って苦笑いの調A。
「えぇ!?」
「そうなんですよ。その人、元が深窓の令嬢なのに、妙にプロレス技に詳しくて…」
驚く響Dだが、水無月かれん(キュアアクア)はどういうわけか、変身後は普段の『清楚で公平な人柄』の生徒会長と同一人物と思えないほどの荒々しさを見せる事があり、現役時代は単独で他の四人が敵わなかった幹部を撃退した武勇伝持ちであり、のぞみ(キュアドリーム)が覚えているだけでも、『延髄斬り』、『アックスボンバー』、『パイルドライバー』、『ジャーマンスープレックス』という技を現役時代後期、敵へ使っていたらしい。そのため、『ガングニールを纏った状態の響』の意識を容易く持っていくほどのパワーを見せても不思議ではない。(かれん曰く、音楽家である父親が子供の頃からのプロレスファンであったからだと釈明しているが)
「ベアハッグで締め上げられてましたね。あっという間に落ちてました」
「嘘ぉーーー!?なに、何、なんなのその人!?」
「それが…あの人なんですよ、ほら、水無月かれん医務大尉」
「あ、あの優しそうな軍医さん!?」
「あの人、医者してますけど、戦う時は意外に万能でして」
響Dは身体検査の際、かれんと『軍医と患者』という形で会っていたため、温和なやり手の軍医と、歴代プリキュアでも五指に入るパワーファイターのイメージが噛み合わないようだが、戦う時は勇猛果敢。徒手格闘ではパワーファイターに属するなど、深窓の令嬢かしらぬ逞しさを持つ。プリキュア界の『三代目にして、中興の祖』であるプリキュア5は伊達ではないのだ。彼女を皮切りに、生徒会長の座にある者がプリキュアになる事が時たま見られるようになったが、その元祖である彼女からして、武勇伝持ちなのだ。(他には、キュアサンシャイン、キュアハートが生徒会長経験者である)
「深窓の令嬢、侮りがたしですよ。本当に」
調は聖闘士になった後に、模擬戦でキュアアクア、キュアサンシャイン、キュアロゼッタ、キュアマーメイドの四人と戦ったが、見事にシメられた。その後は『深窓の令嬢』を侮っていたと自戒しているのは言うまでもない。その中で最も攻撃面で恐れさせたのが、キュアアクアだったのは想像に難くない。響Dは『想像を絶する』レベルで強くなった調Aが心底からびびっているというキュアアクア(水無月かれん)の強さを想像し、震えあがるのだった。