ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

394 / 788
今回はウマ娘のタマモクロスが主役です。


第二百八十二話「幕間その25 復活の白い稲妻。その名もタマモクロス」

――民間軍事会社の肥大化に歯止めをかける風潮は21世紀日本でも、23世紀世界でも起こった。23世紀においては『自衛目的以外の強大な戦力を民間が持ってはならない』という風潮が世論の主流になり、民間軍事会社へ法的規制が入ったために、民間軍事会社は軍に取り入り、『外郭独立部隊』の体裁で部隊を存続させる手を用い始めた。有事に地球連邦軍の本隊が動けないことが続いたため、軍の信用が落ちていたためだ。ケイオスやS.M.Sなどの民間軍事会社の肥大化に歯止めをかけようとする世論の意向が強く働いたわけだ。そのため、廃止の方向で進んでいた元帥位の運用継続などが決まり、民間軍事会社のエース部隊の軍編入が相次いだ。21世紀においては、ウィッチ世界での海援隊の存廃に関してのものだったが、海援隊が民間軍事会社としては、あまりに軍などと癒着していたために、解体が叫ばれたが、関連企業も入れれば、100万人規模の組織になっていたこと、退役軍人(ウィッチ含む)の雇用の受け皿であったことが問題であった。例として、ウィッチ世界での東郷平八郎は日本海海戦(相手は怪異であったが)後に退役し、海援隊へ属していたからだ。――

 

 

 

 

 

――結局、海援隊は日本の意向で連合艦隊・海上護衛総隊に編入、シーレーン防衛の最前線に立たされた。装備も護衛艦型の船に刷新されたが、世代が進みすぎて、今度は再教育の手間がかかるという事態に陥った。また、海援隊は太平洋共和国(ウィッチ世界でのハワイ王国の後身で、日本系勢力が主流となった後に改名)の海防を担っていたため、今度は戦艦や空母などの大型艦が必要になるなどのシッチャカメッチャカとなり、連合艦隊の戦闘艦艇は顕著な不足ぶりを呈した。太平洋共和国の日本連邦への編入により、より膨大な数の戦闘艦艇や航空戦力が必要となったからだ。日本側は扶桑の軍拡に難色を示したが、結局、太平洋共和国の防衛に足る戦力の補完という名目が成立したためもあり、日本連邦評議会は予算を承認。大型戦闘艦艇の補充に勤しむ事となり、全てが出揃うまではゲリラ戦を継続することになった。旧式艦艇の性急な処分が『数的意味の兵力の確保』には仇となったわけだ。巡洋艦以下の入れ替えを含めると、10年単位の時間が必要となるため、敵艦の鹵獲も積極的になされる。米軍艦は基礎防御力が戦前型日本艦艇より数段上だからで、そこも扶桑海軍艦政本部には最大の屈辱であった。艦政本部はこの時代に防御力重視の思想を学び、超合金と対ビームコーティングやバリア機能の研究を行っていくわけである。ウィッチの価値が『時代が変わるごとに』低下と向上の繰り返しだったのは、ウィッチ装備のレベルが周りの技術レベルに追いついたり、画期的な新技術がウィッチの軍事的価値を低下させたりするのを定期的に繰り返したからだが、1940年代の終わりはこの循環でいうところの『低下期』に相当する時代であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――一方、ウマ娘達のうち、タマモクロスは短期間に肉体を酷使した事で、早期にガタが来てしまい、オグリキャップがキャリアの全盛期を迎えた頃には落ち目になってしまい、オグリに追いつけなくなったことが引退の契機になった事をルドルフに告白した。

 

「会長はん。ウチはやっぱ、あの時のジャパンカップが悔いや。あの時、あいつがウチの作戦に乗ってれば勝てたはずや。あいつ、どうなったんや。その後」

 

「うむ…。ペイザバトラーだが、その後は勝てなかったようだ。君には伝えないようにしていたよ。君を負かした者が、本国では惨敗の連続などと…」

 

「なんやと……!ウチは、ウチとオグリンは……そんな相手に負けたんか…!?」

 

愕然となるタマモクロス。ジャパンカップで自分とオグリを負かせた者が『万一の僥倖で、日本のスターに勝っただけ』と嘲笑されていたという事実は、タマモクロスのプライドをズタズタにするには充分すぎた。

 

「君がこれを知れば、トゥインクル・シリーズに残るだろうと思った。だが、君はその時には『輝き』を喪失していた。それは見るに忍びない…」

 

「ウチに情けをかけよったんかい!?ウチは……ウチは……腐っても……腐っても……『白い稲妻』や!!そんな情けをかけられまうのなら……!うちは走れなくなって構わへんかったのに!!」

 

「そんな事など、オグリキャップもイナリワンも、スーパークリークも望みはしない!!確かに、君はペイザバトラーに負けた。だが、君にはまだ見ぬ未来がある!!……なら、ドリームシリーズを再構築するのに力を貸してくれ!絶頂の頃の走りを取り戻せた今なら、往年の渾名に違わぬ走りを見せられる。今一度!!」

 

ルドルフはタマモクロスがこみ上げてくる感情のままに叫び、猛るのを諌める。タマモクロスはオグリキャップ世代の四巨頭の一角であり、全盛期には『平成三強と謳われた者たちと対等に戦える唯一のウマ娘』とされていた。その誇りがあったため、自分がジャパンカップで負けたウマ娘が『日本でしか勝てなかったウマ娘』と謗られる存在であった事に強い屈辱を感じたのだ。一時は世代最強を謳われた身であるからこそだった。ルドルフもタマモクロスの全盛期の強さを認めていたからこそ、足を完全に潰さないように仕向けたのだ。

 

 

「……あんたを超えられるって確信もあったんや、一時は。天皇賞を二度取った時や。だけど、ウチの体はジャパンカップの後に壊れてしもうた…。だけど、今は完全に天皇賞の時の状態に戻っとる。ドリームシリーズをリハビリ代わりに思っとる連中なんか、あっという間に抜けるで」

 

タマモクロスには、その確信があった。往年の実力が戻り、オグリキャップを凌ぐとされたトップスピードが出せると。ドリームシリーズに出場している大半の者達をごぼう抜きにできる自信と共に。シニア級を捨てて、ドリームシリーズを選んだスペシャルウィークしか対抗できる者はいない。

 

「スペシャルウィークがいるが?」

 

「いい度胸や。シニアも走っとらん、青っちろい小僧なんかに、白い稲妻のウチは負けへん」

 

タマモクロスはスペシャルウィークを『青っちろい小僧』と表現した。輝しい実績を持つものの、シニア級に出走していない事を指して『小僧』と断じた。実際に競走馬としても、スペシャルウィークはオグリキャップ世代の10年後の頃に全盛期であったため、タマモクロスからすれば『小僧』であった。それを考えれば、史実の因果関係がウマ娘としての関係に影響を与えないのは嘘ではない。ダイワスカーレットに対してのみは、普段のマッドサイエンティストとしての行いが出来ない(なんとなく気が引けるのは、ダイワスカーレットが史実では実子だからだ)アグネスタキオン、マルゼンスキーがウイニングチケット、ライスシャワー、スペシャルウィークを可愛がる(この三人は史実では、マルゼンスキーの実孫にあたる。なお、ウイニングチケットの曾孫が2020年代の競走馬であるレイパパレなので、レイパパレはマルゼンスキーの末裔でもあるのだ)ようなものだ。

 

「帰ったら、みんなに見せたるで。白い稲妻は復活したってな。もし、機会があれば、模擬レースで『若い子』と走らせてくれへんか?いつも、うち……」

 

「わかっている。スーパークリークだろう?」

 

「おお!!クリークのせいで、ウチ、後輩からも舐められるんや~!」

 

スーパークリークは世話焼きな性分である事もあり、ルドルフからは『グリーングラス先輩の後継』扱いされていた。往年のグリーングラスは大器晩成型であった事などから、現在におけるスーパークリークと共通点が多い。彼女の優しさが『新人~若手時代のルドルフの拠り所』であったためもあるのか、スーパークリークの行為を止めていない。

 

「あの手は諦めろ。私も若い頃、グリーングラス先輩になぁ……ははは……」

 

「か、会長はん…!!」

 

遠い目をするルドルフ。若かりし頃にグリーングラスに甘えていた思い出があるため、クリークのような手合に弱いらしいことを窺わせた。タマモクロスはこの時、何かを察したのか、諦めの表情だ。

 

「君の伯母上も、君と同じ異名を誇った。その再来が君だ。期待しているよ」

 

ルドルフはかっこよく決めたつもりであるが、直前の話が話だけに、どうにもしまらない。伯母というのは、史実ではタマモクロスの実父にあたる『シービークロス』のことである。ウマ娘世界では、伯母にあたるらしい。伯母は繋靭帯炎で引退を余儀なくされ、その後に発症した脳腫瘍で世を去ってしまった。タマモクロスが生まれる前のことである。

 

「オバちゃんと会ったことないんや。ウチが生まれた頃にはもう亡くなってたし、オバちゃんの功績を知ったのは、入学後のことやし。だから、再来と言われてもなー」

 

自身の伯母も全盛期に『白い稲妻』と呼ばれていたこと、自分は『伯母の後継者』という意識はないと明言するタマモクロス。しかし、自分の復活の証明のために、帰還の暁には『当代最速級のウマ娘』を手配するようにと頼み込む。『平成三強』世代は未だ健在であることを衆目に示すための肥やしとして。

 

「私も処置を受けたよ、今後のために。ドリームシリーズを『引退したウマ娘の福利厚生のためのお遊び』、『功労ウマ娘達のお遊び』と見下す者たちに見せつけてやろう。スペシャルウィークには悪いが……我々の復活の狼煙を上げるための噛ませ犬になってもらおう」

 

「ええのかいな?」

 

「彼女を疎んじる者たちを満足させるためだ。彼女もそれは感づいているはずだ。グラスワンダーの不振でね」

 

「ああ…。スペとエルがいなくなった途端にコケよったからのぉ、グラスは」

 

「燃え尽き症候群という診断結果が通知されている。東条トレーナーでは対処できんと、協会が判断した。リギルは形骸化しつつある。オペラオーは勝っていても、スター性に欠けるのでな…」

 

テイエムオペラオーは黄金世代の一期下であること、自身の『芝居かかった振る舞い』が災いし、実は世間での人気はない部類に入る。これは同世代のウマ娘で対抗できる者が『メイショウドトウ、それと他の数名しかいない』故の不幸で、『示し合わせたようなレース展開』に世間が飽きていたからだ。

 

「オグリンは良くも悪くも、世間のスターやったものな。笠松出身やし。オペラオーは……北海道生まれやけど、地方で走ったわけやないしなぁ」

 

テイエムオペラオーはシンボリルドルフ、オグリキャップ、タイキシャトルらの持っていた最多重賞連勝記録を塗り替えているのだが、世間がそれを褒め称える事はない。その屈辱がオペラオーの精神バランスを見えないところで狂わしていると言え、彼女はトウカイテイオーやナリタブライアンのカムバックの肥やしにされていく。テイエムオペラオーが『全盛期の光を取り戻す』のは、自身が比較対象にされる黄金世代の『影』を振り払い、『覇王』としての真の誇りに目覚める時であり、今しばらくの時間を必要とした。

 

 

 

 

 

 

 

――オペラオーがなぜ、不振に陥っていくのか?それはこの時のタマモクロスとシンボリルドルフの契約が理由であった。それは自身の会長としての進退を理事長が正式に承認するために、一度、ルドルフが学園に戻る必要があったからである。それにタマモクロスは随行し、エアグルーヴらの前で『往年の実力が戻った』ことを示すため、模擬レースの相手にテイエムオペラオーが選ばれたからである。(ビワハヤヒデが引退を表明していたための代打であった。)レース展開は現役かつ、『油が乗っている』オペラオーが優位にあった。ゴールが視認できる距離になり、オペラオーも模擬レースでの勝利を確信した。――

 

 

――だが。その瞬間にまばゆい紫電の光がターフに散った――

 

「なっ……なん……!?」

 

オペラオーはそれだけいうのが精一杯だった。一瞬で『雷が走った』としか思えない紫電が散り、気がついた時には、ゴールにタマモクロスが立っていた。往年に『白い稲妻』と言われたように。オペラオーの表情が余裕から驚愕へと見る見るうちに変わる。

 

「アンタは疾い。だけど、『遅い』で。テイエムオペラオー?」

 

往時に天皇賞を制覇し、頭角を現しつつあった時期のオグリキャップをもねじ伏せた『稲妻』の如き俊足。スペシャルウィークやトウカイテイオーらが活躍する時期には『過去のもの』と見られ、タマモクロス自身の肉体からも失われたはずの実力。

 

「……ウチの勝ちや」

 

「そんな、そんな馬鹿な……!!このボクが視認できない速さなんて……!!」

 

取り乱すオペラオー。当代最強級を謳われる現役のウマ娘が、『往年の名ウマ娘とは言え、何年も全力で走っていない者』に差されたのだ。さぞかし屈辱だろう。普段の芝居かかった余裕はどこへやら、本気で愕然としていた。

 

「まさか……まさか!?」

 

「現役ん時、うちの異名はなんていうた?おぉん、いうてみ?」

 

関西弁でわざと煽るため、どこか粋がってるヤンキー、あるいはチンピラっぽさも感じるものの、現役時代以外は評される事が少ない『強者』感を精一杯出そうと頑張っているタマモクロス。オグリキャップが最後の有馬記念、キャリアそのものの最盛期に見せていた『黄金色のオーラ』に加え、それに稲妻が上乗せされた強烈なオーラを纏っており、かつての全盛期をも超える境地に至ったであろうことが子供にもわかる状態で示されている。

 

「し……白い稲妻……」

 

「いつか、ドリームシリーズで対戦を楽しみにしとるで、テイエムオペラオー」

 

往年の白い稲妻としての力が戻った事を衆目の面前で示すタマモクロス。往時の勝負服、現在においては、すること自体が珍しくなった『シリアスな表情、往年の勝負師としての威圧感』。往時のタマモクロスを第三者として知る者がマルゼンスキー、シンボリルドルフなど、学園内でごく数名程度にまで減っていた事もあり、どよめきがレース場を覆った。

 

「そんな、そんな馬鹿な……」

 

放心状態でうわ言を呟き続けるほど打ちのめされたテイエムオペラオーはライバル兼盟友のメイショウドトウが連れて行く。行き先はマチカネフクキタルの占い場である…。

 

「タマモクロス……馬鹿な、お前の足は『潰れていた』はず!往年の最速タイムを更に更新する『神速』など出せるはずが……!!」」

 

「会長はんから聞いてないんかい?エアグルーヴ」

 

「まさか、貴様……!?」

 

「そうや。治療を『受けた』とだけ言っとくで。何なら、お前さんともやっていいで?」

 

「……いいだろう。この私が、お前の実力が本当に往年のそれに戻っているのか、大言壮語でないのか、確かめてくれる!」

 

エアグルーヴはサイレンススズカの一期上であるので、現時点ではトゥインクル・シリーズの現役選手である。更にオークス、天皇賞を制した経験を持つため、後輩たちが台頭した時代でも『強豪』と評される。ウォーミングアップを終え、対戦した。オペラオーより遥かに格上との対戦の場数を踏んでいた事、ルドルフを補佐する一方、現在でもストイックに鍛錬を続けていたため、良好なポテンシャルを維持出来ていた。

 

(もらった!!)

 

エアグルーヴは最終コーナーで最終加速をつける。サイレンススズカ以外に、彼女が『影も踏めなかった』ウマ娘はいない。模擬レースとは言え、現状の全力を出したわけであるが。

 

「さすがはエアグルーヴ。オークスと天皇賞の制覇は伊達やないってことかいな。んじゃま、見せたるか」

 

タマモクロスは不敵に笑うと、往年のように急加速する。タマモクロスの末脚は『オグリキャップが若手時代は勝つことが出来なかった』として伝説になったほどの代物。エアグルーヴはオペラオーと違い、タマモクロスに追従は出来た。スズカに食らいつける力が精神面である故であった。

 

「……クッ……加速が…!馬鹿な…何故、あれだけの…!?」

 

エアグルーヴは同世代の中で最速級の実力者だが、最終加速の度合いに差があったため、遂に差が開き始めた。

 

「タマモクロスゥゥゥゥゥ――ッ!」

 

エアグルーヴは絶叫し、残り体力のすべてを費やしての最後のスパートをかける。

 

「もう一丁、盛大にいってるでぇ!!」

 

だが、タマモクロスはトップスピードに一気に加速。『稲妻』となる。こうなってしまえば、如何にエアグルーヴと言えども、為す術はなかった。オグリキャップを以てしても、現役時代は一度しか勝てなかったほどの実力が復活した事をこれ以上ない形で示した。エアグルーヴはオペラオーほどにはぶっちぎられはしなかったが、それでも数馬身の差があった。ひとえに精神力の問題であったが、エアグルーヴは百戦錬磨であるからこそ、タマモクロスにどうにか食らいつけたのだ。

 

「この私が追いつけんとは……!だが……何故…!?」

 

「なかなかの力やな。さすがはエアグルーヴ。オペラオーより精神力があるで」

 

「私はオークスを制している。オペラオーは半ば勢いで皐月賞を勝っていたが、私は実力と鍛錬でオークスを勝ったのだ。心構えが違う」

 

「オペラオーは世代最速級やけど、切磋琢磨できる同期がほとんどいないのが不幸や。まだ、スペシャルウィークのほうが幸せやと思う」

 

「奴は恵まれているからな。会長も羨ましがられるほどに。あの方は『強すぎた』が故に孤立していたからな…」

 

ルドルフは頭角を現してきた頃には『孤独』になってしまった。故に、それも一種の敵であった。故に、自身と似た境遇のマルゼンスキーと『年の差を超えた友人』になり、自身を慕うトウカイテイオーを可愛がっているのだ。

 

「テイオーの大成が、会長はんの生きがいのようなもんになっとったからのぉ。今となっては『春秋シニア三冠』がテイオーが立場上、取れる『最後の名誉』や」

 

「しかし、ハヤヒデを引退に追い込んだ以上、ブライアンからは目の敵にされるぞ」

 

「覚悟の上やろ。会長はんほどの実績はそう積めへんし、スター性も会長の地位には必要や。テイオーにはその資格があるで」

 

タマモクロスはテイオーの『ルドルフの後継者』としての推薦人に名を連ねている。世間からどう思われているか。そこもトレセン学園生徒会長には必須の事項である。テイオーはルドルフの施策をそのまま引き継ぐ可能性が高い事もあり、『無難な』人選であるのは確かであった。また、ルドルフはこの頃から『テイオーの親』として振る舞う事も増え始める。別世界では、テイオーは自分の実子であることが『他人のような気がしない』とする奇妙な感覚の正体であるとわかり、精神的に拠り所としたからだ。

 

「大丈夫だろうか」

 

「なら、留任すればええ。テイオーもお前さんとブライアンには残留してほしいって言っとる」

 

「そ、そうか……うむ、奴もなかなかどうして……」

 

そこで微笑うエアグルーヴ。なんだかんだで、テイオーに頼られるのは保護者の一人として、素直に嬉しいらしい。

 

「次期政権の人選やけど、ゴールドシップが関わっとるで」

 

「なにィ!?ゴールドシップの奴が!?ええい、テイオーは正気か!?あれか、『やっちゃいかんもの』を大量にキメていたのか!?ゴールドシップを入閣させるなど、正気とは思えん!!」

 

「そこまでいうんかい……。二人が怒るで」

 

ゴールドシップの名を聞いた途端に、『デリカシーが宇宙へぶっ飛んだ』かのような、素っ頓狂な反応。ゴールドシップが如何に自由人であったかの表れだが、ルーデルの影響なのか、意外に堅実な人選をしており、親友のジャスタウェイを通し、ナイスネイチャに『副会長補佐』への就任を打診している。また、メジロマックイーンもレースからしばし離れるにあたり、『副会長補佐』への就任をテイオー本人に伝えており、会長の代替わりに伴って、会長・副会長の事務作業を補佐する役職が増やされる見込みなのが窺える。また、有無を言わせない実績を誇ったルドルフと違い、テイオーには『ルドルフの選んだ後継者』以外の箔がない事、ルドルフほどの威圧感がないことを自分でも自覚しているため、ルドルフと違い、現役選手を続けていく(ルドルフは生徒会長に就任した時には、選手生活の最晩年であった)のは暗黙の了解でもあった。

 

「あいつ、意外とお硬い仕事しとるで?」

 

「タマモクロス……、何の冗談だ?アメリカンジョークならやめておけよ」

 

「あいつが聞いたら、メチャ怒るで?メジロマックイーンとナイスネイチャに新役職への就任を打診してるで。自分も書記か何かで生徒会に入閣するとか?」

 

「じ、ジャスタウェイを連れてこい!本気なのか、ヤツを通して問いただせ!!」

 

ゴールドシップの親友のジャスタウェイを呼ぼうとするほど、ありえない勢いで狼狽するエアグルーヴ。自由人で鳴らすゴールドシップが急に生徒会の役職を求めるなど、『風邪でおかしくなったのか』と言いたいらしい。ゴルシが聞いたら、その場でキックは確実だろう。タマモクロスは信用のないゴールドシップを『自業自得』と嘆息しつつ、ゴールドシップが急に聡明になった理由を知っている身としては、覚醒後の『有能な仕事ぶり』もあり、すっかり、『ぶっ飛び野郎』、あるいは『昔の少年ジャ○プの漫画の主人公みたいに、予想だもしない方向でハジケるヤツ』扱いに同情もするタマモクロスだった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。