ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。後半が物語のメインです。


第二百八十四話「幕間その27 運命とは2」

――日本の皇室は21世紀には『先細りする』のみであったため、最終手段として『扶桑皇室から養子を迎える』手段が取られた。既存の旧宮家の復帰を認めない者が多かったためだ。『70年も一般人してるから、絶対にスキャンダルだらけだ。そんな糞どもは誰も尊敬しないだろ!』とする否定的な意見が70代以上で圧倒的多数であったためで、扶桑皇室から養子を取るというのは、まさに日本が取れるものとしては『最終手段』であった。養子にあたっては、日本ではとうに絶えていて、戦後期の醜聞が一切存在しない『有栖川宮』の系統が特に好まれた。扶桑での有栖川宮系の男子は分家含めて、皇室軍人が多かったため、その方面の問題が議論されたりしたが、扶桑はブリタニアの影響が古来より強く、前線に出る皇室軍人も多かった。特に有栖川宮系の宮家は昭和期には軍人をしている者が女子含めて多かったため、その面で職業的な問題が起こったりしたものの、日本側の妥協でつつがなく行われた。扶桑に『新領土』の治安維持を丸投げしていた事が決め手であった。その政治取引により、扶桑は21世紀水準の民生技術を得ることが出来た。その技術はさっそく、扶桑全体の『国土強靭化』に使われ、太平洋戦争中に早くも成果が出始める。戦時中というのは、良くも悪くも、一つの目標が定まれば、それに向けて邁進できる環境なのだ――

 

 

 

 

 

――21世紀前半の日本は表向きは平和であるが、実際は言うほどに平和でもなく、未来世界の勢力同士の戦闘も生起するようになっていた。日本政府が国際的な表ざたになることを避けるため、公文書などへの記載を避けたからである。もっとも、アメリカ軍は在日米軍を通して情報を得ており、兵器の実戦データ取りのための肥やしとして、戦闘を利用していた。特にF-35は当時の最新鋭機であり、日本はそれを大量に導入していたので、アメリカ軍は表向きは運用に協力しつつ、裏で戦闘データを回収していた。(特に、ステルス性が意味をなさない有視界でのドッグファイトでの性能を図るため、偵察機などでデータを収集していた)その戦闘データを同機の性能実証実験代わりにし、改善の参考にしていた。同機は表向きは西側諸国の最新鋭機だが、Gフォースでは表ざたにならないのをいいことに、セイバーフィッシュ、ワイバーン、コスモタイガーなどの未来戦闘機を運用しており、見かけがいまいちで『精悍さに欠ける』F-35よりも、『Gフォースに志願して、未来戦闘機を乗り回したほうがいい』と部内で大人気であった。ダイ・アナザー・デイで活用されたそれらは『学園都市暗部部隊の残党狩り』用に使用が継続されているが、撮影禁止を条件に、基地祭で展示されてもいた。セイバーフィッシュは一年戦争期の機体だが、当時の最新鋭機に属していた事もあり、残存数は多い。受領数も飛行隊単位であったため、Gフォースの機材ではもっともメディア露出の多い機種の一つだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

――セイバーフィッシュは一年戦争後にワイバーンとのエンジン統一が図られ、更にVFの普及後はVFとの統一が図られ、一部は尚も現役である。Gフォースはその個体を有している。通常の自衛隊の部隊と別枠で予算を分配されるため、財政が切迫している三自衛隊よりよほど余裕があった上、学園都市の兵器も真っ青な兵器を有しているため、こぞって志願する自衛官は多かった。最高幹部層が扶桑軍の高級将校が自衛官を兼務している者であることは問題視されたが、実戦経験が皆無な幹部自衛官に実戦経験豊富な扶桑軍士官を統率する事は実質的に不可能であるので、結局は黙認された。特に黒江の一派は豊富な実戦経験を有する将校・士官らが集まっており、下手な飛行時間の空自の自衛官よりよほど強い。黒江と赤松は飛行教導群の腕利きを逆に叩きのめした武勇伝を持つ。(ただし、飛行教導群のその時の幹部が政治家の早合点で僻地に飛ばされそうになったが。そもそも、飛行教導群と言えど、本当の実戦経験を有する者に勝てるはずはない。その時の幹部達はこう述懐している。『加藤隼戦闘隊と厚木空の猛者に勝てるわきゃねーだろ!!』と。地上管制要員も『機体の限界を攻めてくる上、旧軍よろしく、逆にスレスレまで突撃してくるなんて、ジェット時代のセオリーから外れてるんだけど…』とぼやいている)実際にダイ・アナザー・デイでは文字通りに一騎当千で、ある日は50機の敵ジェット機を少数で全滅させたため、日本側の防衛官僚からは『エ○ア88かよ……』と恐れられている――

 

 

 

 

 

 

 

――Gフォースの航空戦力の戦闘力は21世紀の時点では最強と言えた。幹部級パイロットの練度は平均で2000時間を超え、部隊長自らの出撃もごく当たり前である。何より、幹部級のパイロットに現役のプリキュアが含まれているという宣伝効果抜群の要素もある上、完全に実戦本位の部隊である事は、友好国である旧・西側諸国をも恐れさせた。下手な国のアグレッサー部隊が霞む平均技量を有するからだ。詳細不明の機材(コア・イージーやセイバーフィッシュなどの機体のみならず、23世紀での現行機種である『コスモタイガーⅡ』も含む)を有しつつ、それらを独自に調達・整備する権限を持つ。三自衛隊とは独立した指揮系統を持つ事もあり、米軍も詳細を調査中の部隊とされる。機材が問題だからか、詳細は同盟諸国にも隠されている。表向きは自衛隊の基地のどこかがホームベースとされているが、実際は野比家の地下が実質的な本拠地である。多くの有能な扶桑の青年将校が属しているのは、64Fがその母体であったり、クーデター鎮圧後の日本警察による『青年将校狩り』と揶揄された思想調査での苛烈な尋問を逃れるためでもあった。特に陸軍は近衛師団の廃止と人員の前線送り、皇宮警察の拡充の議論に巻き込まれ、騎兵や軽戦車部隊の行方が不明であったからである。また、軍の牧場で育成が完了していた適齢期の軍馬の扱いにも困っていたため、『軍役に就いている馬の世代交代は牧場の用途転換がなるまでは認める』という方向で妥協された。史実アメリカほどの機械化を実現させるには、運転免許証持ちの人数からして、圧倒的に足りないからだ。扶桑はそんな不安定化した兵科、もしくは兵器の人員から、優先してGフォースに派遣していた――

 

 

 

 

 

――そもそも、その理由の一端である空母航空団の再育成に扶桑が手間取っている理由はいくつかある。一つは『最速で半年ごとに新型機に更新された』ほどの『ウィッチ世界では異常なハイペース』で機種が更新されていったこと、もう一つはプロペラ機からジェット機への世代交代で、旧来の軽空母や特設空母が使い物にならなくなり、日本側の判断で一律で軍役を解かれた後に続く船が一向に開発されない事による量の不足、ジェット機の世代交代ペースが早すぎて、船の世代交代が追いつかない事、空軍にベテランが取られたことで迅速な再教育が行えなかったことが原因であった。『短絡的に空母決戦を挑んだ結果があ号作戦だから、空母航空団は温存する』方針を採択したためでもあるが、空母航空団が張子の虎も同然の惨状なのは政治的には不味いため、空軍を載せて対処したものの、空母航空団の再建には『機種がコロコロ変わった』事が災いし、想定外の月日を費やす事となってしまう。これは統合運用を推進する日本側には好都合だが、海軍航空としてのプライドが高かった者たちには屈辱と取られた。その折衝で、坂本や若本は気苦労を強いられ、見かけより遥かに精神が老成していくのだった。――

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦としての軍事体制の構築には、日本側の色々な派閥抗争もあり、2010年代後半の五年ほどを費やした。扶桑内務省と日本警察庁の派閥抗争、扶桑の軍事体制の近代化に月日を費やしたからだ。特に、扶桑の現地産業への配慮と殖産興業の都合もあり、軍需産業の近代化は必須であった。また、現地住民の心情に配慮する必要もあるため、当初の予定であった海軍の任務部隊制は立ち消えになり、往時の通りに連合艦隊が存続した。航空戦力の空軍への一本化も模索されたが、結局、もろ他の都合と予算上の理由で海軍航空隊が残った。そのため、空母航空団の再建は遅れ、日本側の2021年秋当時には、機種転換に遅れが出ている有様(信濃型航空母艦がウィッチ世界では存在しないため、ジェット機が載る国産空母が少ない)。64Fが酷使されているのは、信濃が戦艦として存在するという『予想外の出来事』に対応するためという名分もあるが、あまりに日本の政治家達の横槍が酷かったからだ――

 

 

 

 

 

 

――そもそも、信濃と甲斐(大和型戦艦の四番艦)はウィッチ世界でも空母になる公算のほうが大きかったが、ウィッチ母艦の体裁が強く、世間の間で『大型ウィッチ母艦』の必要性の是非を問う声が多かったこと、1944年の呉軍港襲撃事件での『モンタナ級戦艦の脅威ぶり』(当時の時点で艦齢10年以内の新しい戦艦であった紀伊型戦艦を短時間で屠った)が衆目に示されたことで『紀伊の仇討ちは戦艦で!!』とする圧力が生まれたため、信濃らは工事の進捗状況も鑑み、戦艦として生まれた。だが、モンタナ級への能力不足が指摘されたため、戦艦の造船の主流は超大和型戦艦へ移行した。大和型戦艦の砲撃力増強にも限界があるからだ。また、護衛艦として構想されていた超甲巡の『復活』と量産にも紆余曲折があり、外観の大和型戦艦との統一(水上機の陳腐化で、水上戦闘機を積む必要が無くなったための変更)という設計変更が整備途中で決まるなど、造船界隈の混乱は大きかった。日本型巡洋艦は水雷戦を前提に作られたが、怪異との戦闘では不要と見なされて外され、ダイ・アナザー・デイとM動乱で必要になり、水雷装備を装備し直すなどの混乱、既存艦の艦齢進行という現実問題、軽巡洋艦という艦種そのものの陳腐化もあり、超甲巡は『ミサイル装備とイージスシステムを内部に積む容積の余裕がある』ことから、計画の存続が決まった。そんな混乱は扶桑海軍の第一線級戦闘艦艇の数の不足に繋がり、戦艦の酷使に繋がっていた。空母の整備が長期化する上、潜水艦の刷新にも年月を要するからだ。――

 

 

 

 

 

 

 

――『お飾りの置物』と航空主兵論者から揶揄されていた大和型だが、1944年のモンタナ級の出現で既存艦型が『時代遅れ』にされ、『史実情報』で航空主兵論が破綻した事から、一気にワークホースへ登り詰めた。艦政本部は『大和型戦艦は量産に向いてないから、簡略版を用意する』としたが、モンタナ級の存在で大和型戦艦はフルスペックで量産され、更にその上位艦種まで作られるに至った。初期艦の船体疲労の蓄積への懸念もあり、大和型戦艦の建造は続けられている。また、他国の多くがダイ・アナザー・デイを契機に戦艦への興味を無くし、相次いで廃艦にしていったことで『戦艦の保有数の二桁維持』が命題になってしまったことも航空主兵論への逆風になった。航空雷撃や急降下爆撃といった既存の攻撃の方法の殆どがミサイルの登場、レーザー兵器やビーム兵器の登場で時代遅れとなり、基地航空が空軍に取られることを懸念した一部の航空兵科の青年将校らが『海軍航空の伝統を守る』と反対運動を展開し、旧陸軍航空に敗れ去るなどの経緯で海軍の政治力は衰退し、空軍が『緊急展開軍』(宇宙軍への将来的発展を見越して)という位置づけとなり、実質的な主力と位置づけられた。扶桑の有能な青年将校の大半は空軍に属し、空軍に歴代プリキュア戦士の前世持ちの者も多数が在籍している。そんな空軍に人気で対抗できる唯一の部署が戦艦部隊であり、戦艦の地位は皮肉なことに、航空主兵論の破綻で持ち直したことになる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ある日。ルドルフは親類かつ、幼馴染であったシリウスシンボリの事を話した。シリウスはダービーを制した経験があるウマ娘だが、気質はヤンキーで、エアグルーヴでは相手にされないほどの威厳を誇る『不良の大将』。しかし、彼女はオグリキャップ以前のウマ娘であり、海外遠征後には全盛期を過ぎており、その時代に全盛期に向かいつつあったオグリキャップには手も足も出ずじまい。そして、ルドルフが七冠を達成してしまったのと、自身のダービー制覇は『本命で、シンザンの後継者のミホシンザンがいなかったから』などと言われてしまう程度の実力しかなく、若き日のオグリキャップには手も足も出ない有様であったと――

 

 

 

「仕方ねーよ。シリウスはミホシンザンが怪我でいなかったおこぼれに預かっただけだ。オグリキャップに手も足も出ないのは当たり前だ。それに、レジェンドテイオーとダイナギャロップを怪我させたことでしか後世に名前が伝わってない上、世間から忘れられたも同然だよ。もっとも、それはお前もそうだ」

 

黒江は残酷だが、事実を告げる。シンボリの栄光はオグリキャップという強烈すぎる光に上書きされた上、ルドルフ自身の最高傑作のトウカイテイオーは彼自身の後を真の意味で出すことが出来ぬままに世を去った。オグリキャップは世代代表と謳われ、なおかつ、ライバルに恵まれた競走生活を送った事、引退レースの有馬記念で有終の美を飾り、競馬史に燦然と輝く栄光を刻んだが、彼自身の子孫らは大成せず、血統は絶える寸前である。

 

「ルドルフ。お前はテイオーを遺したが、テイオーは優秀な子を残せないままで逝った。いくつかGⅠ制覇経験がある奴はいたが、それだけだった。だから、テイオーは古馬GⅠの三冠を目指すのを決めた。お前の後を継ぐのなら、古馬GⅠを完全に勝たないといかんからな。」

 

「ブライアンはなんと?」

 

「公私はわきまえると言っとる。あいつも、史実では晩年の成績は見る影もなく落ち込んだ上、史実通りに姉が引退を選んだ上、あいつの下の妹たちは『大成できない』事を知ってしまったから、余計に辛いはずだ。多分、近くの河原で泣いてると思うぜ」

 

「人前では涙は見せないつもりでしょうか」

 

「昔は臆病だったのを何らかの形で克服したらしいからな。泣く姿は見せたくないんだろうよ」

 

黒江はブライアンが姉の引退の意志が固いことにショックを受けているのを、ルドルフに教えた。本格復帰は遅れていた。また、予定されたレースをマヤノトップガンが回避(故障し、療養をせねばならなくなったため)した事もあり、ブライアンは野比家に滞在を続けている。また、姉の引退、妹たちに告げなくてはならぬ『残酷な未来』。その事実に打ちのめされ、ナリタブライアンは一人で泣いていた。幼少期は臆病だったので、その名残りか、河原で泣くことにしていた。

 

「姉貴のバカヤロウ……」

 

黒江の言う通り、ナリタブライアンは泣いていた。普段が風来坊かつ粗野で、番長的な雰囲気を持っているため、泣いているところを見られたくないため、のび太達が小学生時代に使っていたグラウンド近くの河原で泣いていた。いつかレースで抜くことを夢見ていた、姉・ビワハヤヒデ。その姉と正式なレースで戦える機会が失われてしまったことがショックを受け、河原で石を投げていじけていた。どこか子供っぽさが残るが、本質が姉思いの少女だからだった。

 

「やっぱ、ここか」

 

「タイシン……!戻ってきていたのか?」

 

「レースも終わったし、今年の単位はほぼ取ったから」

 

ナリタタイシンは年齢的に、母のタイシンリリィから『引退後の事』を考えるように言われだしているが、タイシンは当面の間は現役を貫く決意であった。また、学園を卒業した後は野比家に下宿するつもりであるのか、いくつかの私物を置いたままにしている。買ったばかりのバイクに乗っている事から、バイクも持ってきたらしい。

 

「オートバイだと?お前、オートバイをいつ?」

 

「戻った時に買った。やたらと、ウォッカに羨ましがられてさ」

 

「だろうな。あいつは原動機付自転車から始めようかと漏らしているのを聞いたことがある。お前、それは250だろ?日本では、ナナハンからが大型だというが…」

 

「バッカ。ドシロートがナナハンなんて扱えないしょーが。まずは250からよ。トレーナーにわざわざ聞いたんだから」

 

「ふむ…」

 

そこで、ブライアンが笑顔に戻る。タイシンのトレーナーは若かりし頃はオートレーサー志望だったが、ある時にトレセン学園に就職し、トレーナー業で食べていくことになった。以前はミホシンザンを見ていた事があるといい、ミホシンザンが病弱さで『大成しきれなかった』事が悔いになったという。そのことから、タイシンを担当している現在は、担当ウマ娘の健康には人一倍に気を使うが、ミホシンザンの経験で押しに弱く、タイシンが無理を押して、菊花賞に出たのを止められなかった(結果は惨敗)。とは言え、オートレーサー志望だった名残りで、かなりの排気量のオートバイを保有している。(本人曰く、若い頃の夢への未練との事。)タイシンを慰めるため、横浜までツーリングしにいったとのことで、この頃には、トレーナーに気をかなり許していた。(しかしながら、タイシンは高等部の『卒業』が見え始める年齢であり、その時はゆっくりと近づいていた)

 

「お前、そろそろ高等部の卒業が見え始めるだろ。どうするつもりだ?」

 

「マルゼンさんと同じで、そのまま大学まで繰り上がる。G1勝ってるから、推薦は取れるから」

 

マルゼンスキーは年齢的に高等部からも卒業しているが、実は少数派である『付属大学』にそのまま進学している。付属大学はマルゼンスキー世代の悲運が契機になって設立されたが、元々がマルゼンスキー世代を学園で食わすために設立されたが、当のマルゼンスキー世代は他大学へ流出したり、家の都合で進学を断念するなどの都合で、大学へ殆どが行かなかった。その次の世代であるルドルフ世代、オグリキャップ世代が直に大学進学の時期を迎える。それも付属大学が賑やかになるとされる理由だ。なお、付属大学は比較的近年に設立された上、その当初の目的故に軽んじられている面が多いが、ルドルフがそろそろ大学へ進学するために意義が見直され、ルドルフ世代とオグリキャップ世代の受け入れを準備している。

 

「そのまま進学するんだな」

 

「今更、普通の大学には行けないし、レースで名前売れてると、協会への就職がマルゼンさんの代の後からは規定事項みたいになってるから。そもそも、なんでそうなったの?」

 

「私も、マルゼンさんからの受け売りなんだが……」

 

ナリタブライアンとナリタタイシンはウマ娘世界においては親類であり、学園を離れた場所ではタメ口(立場上、ブライアンは公の場では、タイシンに敬語を使う)である。マルゼンスキーが現役時代、あまりに突出して強かったために、同世代のウマ娘達がGⅠを制しても、世間から二流扱いされ、引退後も『マルゼンスキーの補欠で勝てた』と誹謗中傷されて、まともに就職できなかったり、若いうちに悲劇的な死を遂げた事から、それを改善するため、功労年金制度がルドルフの現役時代に創設されたし、大学部からの協会への就職ルートが開拓された。マルゼンスキーはその経緯上、協会から腫れ物に触るように扱われ、大学生という形で学園に在籍を続けていると。

 

 

「なんか、グダグダじゃん」

 

「そもそも、マルゼンさんで世間から、オグリキャップの件で地方から睨まれた中央は落ち目になった私に代わる『三冠ウマ娘』を求めているんだよ」

 

「ゴルシの言う、ディープインパクト?」

 

「そもそも、サンデーサイレンスがいるかどうかも分からんのに、その最高傑作のディープが都合よく『来る』と思うか?私は最後の意地を見せるつもりだ。最後の非サンデーサイレンスの三冠馬としてな」

 

ナリタブライアンはサンデーサイレンスの系統に属さない馬としては、最後の三冠馬(ディープインパクト、その次代の三冠馬であるオルフェーヴル、コントレイルはサンデーサイレンスの系統に属するため)である。協会から『すでに全盛期は終わった』と見切りをつけられ始めたナリタブライアンは記憶の覚醒もあり、最後の意地を春秋シニア三冠で示そうとしている。ディープインパクトやオルフェーヴル、コントレイルら『サンデーサイレンス系』の三冠馬がウマ娘になるまでに、自分の意地を見せる。それがルドルフ超えという期待を裏切った自分ができる最後の償いであり、大成できない宿命を背負った妹たちへの手向け。そして、史実の運命と戦うことになったマヤノトップガンへの激励。

 

「もし、マヤノの奴に会ったら、伝えといてくれるか?」

 

「アンタも、そういう感情あるんだ。気持ちはわかるから、今度の時に伝えとく。テイオーがルームメイトだし、そこからでもいいけど、あいつも忙しくなるから」

 

マヤノトップガンはトレーニング中に屈腱炎を発症し、療養に入るしかなかった。競争ウマ娘としては、ほぼ致命的な故障であったため、マヤノトップガンのトレーナーは引退届を出そうとしたが、ルドルフ、テイオー、マルゼン、トウショウボーイの根回しで治療を受けることになり、引退を免れた。ナリタブライアンが無気力になりかけたのは、自分の衰えに協会が失望し、見切りをつけたことへのショック、拠り所であった姉のビワハヤヒデの引退、マヤノトップガンの怪我による出走回避というショックな出来事が連続したことによる。

 

「ほら、乗りな。元の世界でメットも買っといたから」

 

ウマ娘世界では、ウマ娘という種族がホモサピエンス(ヒト)と共存共栄しているため、オートバイのヘルメットも、ウマ娘用が存在する。ゴールドシップはそれを持っており、タイシンにアドバイスしている。(この頃には、かなり親しい関係になっている)タイシンはヘルメットを投げ渡し、ブライアンはそれを受け止める。

 

「あ、ああ」

 

戸惑いつつ、バイクの後部座席にまたがるブライアン。

 

「ちょっと飛ばすよ。法定速度は守るけど」

 

「あ、あまり飛ばすなよ…?」

 

「あんた、もしかして、自分が運転とかしてないとさ、ブルるタイプ?」

 

「そ、そういうわけじゃないっ!オートバイは始めてなんだよ。親父も乗らんし、おふくろは車しか乗らないからな…。姉貴も興味ないし」

 

「ハヤヒデ、そういう分野に興味ないんだ」

 

「レースに怪我は禁物…。姉貴はそういうのが、ガキの頃の口癖だったからな」

 

「あいつ、理詰めのくせに、妙にストイックなんだな」

 

親友の妙なところに関心しつつ、ナリタタイシンはオートバイを発進させる。彼女がどのメーカーのオートバイを購入したかは定かでないが、トレーナーのアドバイスに素直に従い、250ccの排気量のオートバイを購入したのは確かである。オートバイは2010年代では趣味としての需要が低下しており、その市場も相対的に縮小しており、タイシンもオートバイの購入にそこそこ苦労したという。競走ウマ娘に怪我は禁物であるため、二輪に手を出さない事が多いが、ウォッカは父の影響で、オートバイに憧れている。最も、漠然とそれに憧れているにすぎず、専門的な知識は殆どないが。

 

「ウォッカが羨ましがるんじゃないか?」

 

「すごくキラキラした目で見られたけど、そういうの苦手なんだ…。困ったから、対応はトレーナーに丸投げしたけど」

 

「あいつ、父親の影響でハーレーとか乗りたいらしいが」

 

「運転免許証取り立ての奴に、ハーレーは無理だって。トレーナーも言ってたけど、漠然とした憧れで手を出すおっさんや年寄りが多いけど、日本には向かないのよ、大きさが。ああいうのはアメリカで乗り回す乗り物だって」

 

ウォッカの志望動機に呆れるナリタタイシン。トレーナーが若かりし頃にオートレーサー志望で、サポートがバッチリの彼女も250ccからにしたので、ウォッカの試みは無謀であると断じる。

 

「それに、仮面ライダーだって、基本は250から400くらいの車格のシャーシに原子力エンジン積んでるんだから」

 

仮面ライダーたちも大排気量のバイクをベースにする事は少ない。大排気量化・大型化となったネオサイクロン号は改造サイクロン号の中枢部を他のシャーシへ積むことで生まれる例外的な存在であるので、新サイクロンに始まり、RXのアクロバッター(バトルホッパー)に至るまで、250ccから400ccの車格である。

 

「さっ、帰るよ」

 

タイシンはアメリカンなオートバイを日本向けではないとし、自身は中排気量のオートバイから始めることで、オートバイライフを始めたのである。その表情や声は刺々しかった以前より遥かに柔らかく、優しげな雰囲気であった。彼女の担当トレーナーと、ノビスケの存在がタイシンを変えたことが、ナリタブライアンからも容易にわかった。この時はトレセン学園の制服姿だが、勝負服でも普段着に近いため、彼女はそれでうろつける。ストリート系のファッション風味であったからで、そこも利点である。タイシンは自身の『史実』という壁に立ち向かうため、野比家に住み着いた感があった。

 

 

 

 

 

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