――結局、ウルスラ・ハルトマンの思いと裏腹に、ダイ・アナザー・デイは技術が加速度的に進化し、博覧会の様相を呈した。爆撃機もB-17が最終的にB-36になり、空母もミッドウェイ級が史実改装後の姿で現れるなど、トンチ合戦の様相であった。扶桑はF6FとF4Uには紫電改と烈風で対応し、F8Fには陣風、ジェット機にはF-86以降の世代のジェット機で対抗した。パイロットの殆どは元・日本帝国陸海軍将兵だったり、元・自衛官であった人材で賄われた。日本側の基準で『実戦に耐える』と判定される基準が異様に高いレベルであり、末期には600時間に緩和されたが、扶桑生え抜きパイロットにはそこまで高いレベルの航空兵は存在せず、この禍根がクーデターへの加担になった。ダイ・アナザー・デイを契機に、カールスラント空軍は兵器が軒並み『時代遅れ』となり、更にドイツ主導の軍縮で人材が流出。ドイツが取りやめた時には、教官資格のある古参兵の八割方が日本連邦空軍のヘッドハンティングに応じている有様であった。また、ドイツお得意の水冷エンジンが航空分野で衰退してしまい、日本連邦とキングス・ユニオンが航空機のジェット化を民間機に至るまで完了すると、水冷エンジンの需要は自動車や既存機の修理の需要しか無くなり、メーカーは不良在庫を多く抱えることになった。21世紀で現存する機体を動態保存化する需要、エアレースでの需要で血路を開くことになった。もっと困ったのは、既に生産されていたカールスラント第一世代・第二世代のジェット機の行き場であった。部隊配備を見越し、既に各機種で200機以上が本国で生産されていたのだが、ドイツ連邦がダイ・アナザー・デイに殆ど関わらなかったこと、本土奪還作戦が棚上げされ、軍縮の時代に入ってしまった事、レシプロ機の代替が堅実な『米国製戦闘機の生産』にされたことで、ドイツ連邦は一気に自主開発能力を失った。日本連邦が高度な自主開発能力を再興させつつ、アメリカという最大の取引先に配慮し、主力機はライセンス生産にしているのとは事情が違うのだ。――
――日本連邦はレシプロ機の中での高性能機はターボプロップ化で延命しつつ、ジェット機の配備を急いだ。だが、日本が明確な戦時体制下への移行をダメ出ししたためと、軍需省設立を潰したこともあり、扶桑は地下の秘密工廠をフル稼働させざるを得なくなり、その拡充も行われた。その結果、表向きの工廠で働く人数より、地下工廠で働く人数が多くなるという本末転倒となった。空母の加速度的な大型化と価値の向上は却って量産の阻害になったため、イージス戦艦の量産で補うことになった。この時期になると、51cm砲が主流になったものの、46cm砲の改善も進み、55口径で長砲身化が妥協される一方で、粘着榴弾の配備が進む。この大艦巨砲主義の再来は皮肉なことだが、航空装備、潜水艦関連装備の高額化と重要姓の向上が招いたのである。日本連邦の財力が戦艦十隻以上の体制の維持をなし得たが、それは国際的圧力の為せる業でもある。ウィッチ世界は長引いた戦乱でどの国も財政が危機的状況であり、軍縮にも大義名分があった。――
――野比家――
「あーやも戦いにいくの?」
「おりゃ、隊の責任者だからな。最終的には出征しなければならんのだ」
黒江も最終的には、遠征への出征が決まったようである。その準備を始めたのだ。21世紀では死語になっていた『出征』だが、この頃には、Gフォースの要員に限ってだが、使われることが増えていた。戦闘はこの頃には全国規模で行われており、本来は全自衛隊で対処すべき問題だが、野党が応戦した自衛隊の現地部隊を非難する有様であるため、Gフォースは部隊総指揮官を兼任する黒江に至るまでが有事即応部隊の様相を強めたからだ。
「ノビスケへのジオン残党の襲撃事件以降、全自衛隊が臨戦態勢だったが、野党の連中がその指示を出した統合幕僚長の更迭を叫んでな。結局、日本政府もうちの部隊に有事即応の任務を丸投げしやがったんでな。結局はゲッターD2の量産機、イチナナ式を九州と北海道に回す羽目になった。動力を秘密にしてな」
ノビスケへのジオン残党の大規模襲撃は自衛隊に衝撃をもたらし、時の統合幕僚長は有事を想定した臨戦態勢を指示していたが、その事を言語道断と断じた野党からの猛批判キャンペーンで、彼の自主退職という形になってしまった。だが、現実問題、未来兵器のモビルスーツとモビルアーマーに正面切って対抗できる部隊は、21世紀の軍隊には殆ど存在しない。そのため、早乙女研究所で量産が開始されたゲッターD2、光子力研究所で量産されだしたイチナナ式がジオン残党に襲撃され、被害が生じた九州と北海道へ配備されることになった。人型兵器に対して、在来式兵器では代償が大きかったからだ。だが、2020年代前後の技術では、モビルスーツの装甲を正面から撃ち抜ける火力を持つものは殆ど作れない。そのため、Gフォースに対応を委ねる事になり、部隊が拡充されたのだ。
「ええの?」
「仕方ねえよ。退役途中のナナヨンでザクやドムと戦えなんて、ロクイチでゴジラやキングギドラと戦えっていうようなもんだ。最新鋭のヒトマル式は少数で、ダイ・アナザー・デイに持ち出させるのに、関係各位が骨を折った程だし」
往年の俊足が戻ったためか、タマモクロスは後輩に先輩風を吹かすようになった。実家が託児所であるスーパークリークのおかげで、タマモクロスは外見が幼い部類に入るので、『かわいい保護対象』扱いが定着したが、ウマ娘としての本来の実力が戻ったため、タマモクロスも意識して、後輩へ先輩風を吹かしている。その俊足は全盛期のルドルフと対等に競り合えるほどとされ、『オグリキャップよりも一段上の実力』を現在でも維持している。その事から、オグリキャップの実力は『同世代の中では抜きん出ているものの、全盛期のタマモクロスには一歩劣る』程度であるのがわかる。そのタマモクロスも研究され尽くした結果、ジャパンカップに勝てず、そこで精神的に燃え尽き、肉体も限界を迎え、オグリとのその次の対戦の際には能力が減衰していた。その悔恨があるため、ドリーズシリーズの盛り上げに協力することにし、一時帰還の際に、自身の復活のアピールのため、学内の若手の実力派であるテイエムオペラオーを『体の良い噛ませ犬』として利用した。テイエムオペラオーほどの実力者を噛ませ犬にできる点で、彼女が如何に全盛期には速かったかの証明だ。
「俺らが戦場に行ってる間、ノビスケの面倒を頼む」
「それはわかったけど、あんたら、まるでエリア88みたいなマネしおるのな。つか、なんで伏せ字風に言ってたんや?」
「まぁ、名前を出すと、色々と政治屋に言われんだよ。もののたとえってもんも理解せんし、政治屋共は。それに、俺はこの世界の日本の出身じゃないんだよ、実は。仕事先だからいるけど」
「んじゃ、あんたも本当は別世界の出身なん?」
「戦中の頃の20代。つまり、この時代に普通にいれば、ヨボヨボだよ」
「え!?あーやって、そんなおばあちゃんなの!?」
「生まれた時代が関東大震災が起こった年より前なだけだ。そもそも、俺の世界じゃ起きてねぇさ」
黒江は生まれた時代は大正後期だが、異世界を行き交う内に感性が現代ナイズされているため、扶桑軍でも異端の部類に入る。その割に、Gフォースを率いる立場なのだから、戦功で出世するタイプなのがわかる。
「そいや、オグリもだけど、タマ。お前が出たジャパンカップん時、相手の英語わかったのか?」
「ウチはおかーちゃんが英語喋れたからなー。オグリンはちんぷんかんぷんやったそうや」
「だろーな。英語わからそうだもんな、オグリ」
「今からして思えば、あそこでうちは一回、終わったのかもしれへん。だから、今度は全力で後輩たちをちぎるで」
タマモクロスはここで明確に『後輩たちをちぎる』とした。既にトゥインクル・シリーズを去っているため、模擬レースの相手役に登録するという意味だろう。
「マルゼンは何しとるんや?かわいい後輩が泣いとるつーに」
「あいつ、今は学内で権限持ってないご意見番みたいなポジだから、苦しいらしい」
「かー!物見遊山しとる場合かぁ!!」
タマモクロスは物見遊山に徹するマルゼンスキーに怒った。史実での実孫であるスペシャルウィークが泣いてるというのに、何も手を差し伸べない気かと。
「それに、リギルのトレーナーが事実上の失脚する事は協会の意志だから、いくら元スターでも、一介のウマ娘でしかないあいつにはどうする事もできん。あいつは大人だから、そこのジレンマに苦しんでるのさ。スペシャルウィークのような精神的な意味の若さは無くして久しいからって言ってたぞ」
「諦めるの早すぎや!せめて、スペシャルウィークに声くらいはかけてやれや!あいつはマルゼンを慕っとるんやぞ!」
「お前らからも言ってやってくれ。ゴルシも言ったそうなんだが、言葉を濁しやがったらしい」
「なんやて!?ウチがどついたる!!」
息巻くタマモクロス。マルゼンスキーはここにきて、どっちつかずの態度を見せたからだが、実のところは表立っての権限のない『ご意見番』であるが故に、自分で動くわけにもいかないというジレンマを抱えていた。史実での孫であるスペシャルウィークを助けたくても、下手に自分が動けば、協会に学園への介入の名目にされてしまう。そんな恐怖がある故に、一連の騒動に口を挟むことはなかったのだが、それがゴールドシップとタマモクロスの義憤を呼んだのだ。ものすごい音が他の部屋で響いた。ゴールドシップがマルゼンスキーに全力の蹴りを入れたのだ。
「な、なに!?」
驚くテイオー。すると、怒髪天を突いた『猛獣ゴルシ』炸裂と思われるゴールドシップの怒声が聞こえてきた。ゴールドシップの渾名の一つは『猛獣ゴルシ』なのだ。
「お前がやるまでもなく、ゴルシがマルゼンスキーをどついたみたいだな。あの様子じゃ、タイムふろしきか復元光線を持っていく必要があるようだな、あの音じゃ、壁の一、二枚じゃすまんだろう」
「えーと、どの引き出しに入ってんの?」
「そこから二番目に入ってるはずだ」
「わかった~。でも、チタン合金セラミック複合材の壁だって言ってたよね、それをぶち抜いたのかな、ゴルシ」
「奴のパワーを考えると、ガンダリウムγ製にすべきだったな、のび太は。εの完成で型落ちモデルになったから、民生使用が本格化したから。ゴルシの蹴りは急降下爆撃だからな」
「なにそれ」
「お前らのトレーナーがそう言っとったぞ、テイオー」
「は、ははは~……」
ややあって、ゴルシの怒鳴り声が響いてきた。完全にキレているようで、ややあって、急降下爆撃もかくやの破壊音も響いた。マルゼンスキーの『ひえええええ!?』という悲鳴も聞こえてきた。どうやら、ゴールドシップはドロックキップで壁、もしくはドアをぶち壊したらしい。ウマ娘でも有数の馬力を誇るゴールドシップのパワーなら、壁のぶち抜きは容易い。テイオーも心当たりがあるようで、乾いた笑いが出るのだった。
――遠征側はまさに死闘であった。のぞみBは通常時の姿で学園の皆を助けに行ったのだが、そこで自分の後輩にあたるキュアハートの強さを目の当たりにした。――
「ここはあたしが引き受けるよ!」
キュアハートは現状での最強フォーム『パルテノンモード』で怪人達と戦った。現役時代の最強モードという基礎に数年間の訓練と実戦経験を上乗せした結果、並のショッカー怪人程度では足止めにもならないほどの強さを見せる。仮面ライダーディケイドのルートで『ドラゴンライダーキック』と『クリムゾンスマッシュ』を会得していた事もあり、一般のショッカー怪人程度のスペックでは、相手にならなかった。
「うへぇ……。あの怪人を一撃で……」
「仮面ライダーからの借り物だけどね。っていっても、こっちののぞみちゃんは生身で炎出せるわ、剣に炎の波動を乗せて撃ち出せるよ」
「それって、あの双炎斬って技?」
「そそ。ココが人間に生まれ変わった後に、サムライトルーパーって戦士の資格を得た時に会得した技で、基本技。こっちののぞみちゃんは炎に適性があったから、割合早くに覚えられたんだ。ちょっと複雑だけど」
のぞみAは経緯上、『別人として生まれ変わり、別の人生を歩んでいたところから、夢原のぞみとしての二度目の生を選んだ』という複雑極まりない道を辿った。転生先の人物としてではなく、夢原のぞみとしての二度目の生を生きるわけだが、転生先の人物のついていた職業をやめたわけではない(やめられなかったともいう)事、軍隊で正式に士官になっているプリキュアの最初のケースでもあった事も大きい。
「え~!?」
「それがね、生まれ変わった先の家が炎を使う古流拳法を伝承してた名家でね。のぞみちゃんの転生先になってたのがその家の次女で、次期継承者だったみたいなんだ。そんなところに転生しちゃったもんだから、プリキュアへの再覚醒が刺激になって、秘めた素質が開花したらしくてさ」
錦が職業軍人として体を鍛えていた事、元から『その世界における草薙流古武術の次期正統伝承者候補』だったおかげで、現在におけるキュアドリームAの強さの基礎が形作られた。正確には伝承者候補であったが、プリキュアへの覚醒で素質が目覚めたことで、その座に選ばれた。中島錦としては無名であったが、夢原のぞみとしては有名人である事、戸籍上の名と仕事での名が違う事はままあるという理屈で、夢原のぞみを名乗る現在の形に落ち着いた。初期のプリキュアであったため、本来は自力でのフォームチェンジ能力はなかったが、既に通常フォームの限界まで強くなっていたため、強い感情をキーにシャイニングドリームへの自力変身、その先の領域に達した。
「おまけに、肉体と通常フォームの限界まで強くなってたから、あるきっかけで限界を超えてね。二個くらい。最近の傾向的に、もう一段は上がありそうって、咲さんやラブちゃんも言ってる」
「えぇ~!?」
「まぁ、あたしの一個前の代からはフォームチェンジの回数が増えたしね」
キュアハートは苦笑交じりだが、フォームチェンジが増えたのが2010年代以降のプリキュアの傾向である。ミラクルライトを介さない自力でのフォームチェンジも増えてきたので、嘘ではない。だが、プリキュア達の力は基本的に浄化に特化してきているため、純粋な破壊力の観点から言えば、歴代仮面ライダーやスーパー戦隊に劣るのは否めず、古参であるほど、組織と戦える可能性が増す。そのことが、咲、のぞみ、ラブ、シャーリー(北条響)の四名が中心と見なされる理由である。
「ところで、そっちのわたし、どういう世界に生まれ変わってたの?魔法がある戦前の世界って言われてもねえ」
「それは本当だよ。あたしみたいに、殆ど変わんない世界に生まれ変わったりしたけど、のぞみちゃんは時代も違うから。1945年で17歳位だから、昭和2、3年の生まれだって。太平洋戦争も、関東大震災も起きなかった世界だから、至って平和だったらしいよ」
「し、昭和初期ぃ!?」
「その世界の名家の次女だって。武士系の。だけど、戦争が起こったから、日本軍に入った。それから数年経った時に覚醒したって聞いてる。とはいえ、時代的にプリキュアの格好が受け入れられにくいから、世界を渡り歩く部隊のスカウトを受けて、行った先でココの生まれ変わりと会って、数年で結婚したよ」
「えーーーーー!?話は聞いてたけど、本当だったのぉ!?」
「う、うん」
のぞみAは1949年の時点では、既婚者である。のび太の養子であるコージの妻であるため、のび太と姻戚関係にある。扶桑にいないのは、いくらウィッチでも『既婚者は家を守るべき』とする風習が強いため、感性が21世紀のそれである彼女はウィッチ世界に定住する事はなかった。皮肉なことに、扶桑は時代の急激な変化で社会の変革が起こったが、プリキュア達が定住を避けたことがきっかけであった。
「向こうのあたしって……ん?」
「おまたせ~!」
仮面ライダー二号とV3が愛車を颯爽と駆り、現れる。その内のハリケーン号の後部座席にキュアドリームAが乗っていた。シャイニング形態である。
「敵の十字砲火を突破してきた。ちょっと苦労したがな」
二号とV3のマシンを以てしても、十字砲火を突破するにはかなりの苦労があったらしい。そして、無事に突破に成功したのだ。
「あれ、のび太くんは?」
「一旦、家に戻ったよ。ノビスケくんの様子は?って奥さんからメールが入ったみたいで」
「子持ちは大変だねえ」
「のび太くんとこは共働きだしねぇ」
ドリームとハートはのび太の状況を伝え合う。のび太は家庭の事情で家に戻ることが多くなっている。一人息子なので、しずかが心配するのだ。特に、幼稚園時に二度も事件に巻き込まれているからだ。ものすごい事に、子孫が『ジオンと手を切ったから』という理由で、未来のスペースノイドに命を狙われるというSFな出来事を経験しているため、しずかが心配になるのはわかる。
「ジオン残党もSFチックな真似するし、しずかさんが心配になるのはわかるけど、あの人、その割に公安部の人間なんだよね」
「仕方ないよ。キャビンアテンダント志望の時期があったから、マルチリンガルだってんで、公安部に引き抜かれたんだから」
しずかはメカトピア戦争後、キャビンアテンダント志望であった時期が長かったが、のび太が2000年代前半期にカミングアウト前の黒江のことで捜査されていたことを知ってからは、招来の志望が警察官になり、少なくとも、ノビスケが生まれて間もない頃に『語学堪能、技能優秀』を理由に、公安部に回されたようである。成人後のしずかが家を留守にしているのはこのためで、公安部はのび太の自衛隊との癒着を疑い、しずかに調査を命じていたなどの非道ぶりを見せつけ、黒江が警察庁長官と公安委員会に圧力をかけ、公安部はのび太への捜査を撤回し、捜査資料を破棄している。のび太が扶桑で爵位を得た上、黒江が扶桑軍ルートで警察庁・公安委員会へ直接・間接的に圧力をかけたのだ。そして、しずかは21世紀の人間として『地球連邦政府擁護派』であり、メカトピア戦争直後の表彰式で『ジオニズムの矛盾と、地球にある過去の遺産を躊躇なく壊すスペースノイドの暴虐』を糾弾している。ジオン系の人間達は野比家の子孫をテロリズムで殺戮を目論んだが、阻止されたことで『タイムマシンで本人を殺しに行く』という方法を実行するに至った。しかし、21世紀には『スペースノイドが地球連邦政府の統制を抜け出した結果、際限なく争いを続け、地球の文明をゴミへ変えてしまう』結果を提示した物語も存在する。『スペースノイドは地球連邦政府という枷がなくなると、手前勝手に争い続けていく』という仮想はジオンには都合が悪いため、その物語を消すこともジオン残党の目的だったが、ゲッターロボアークに粉砕された。
「おまけに、こいつらにも狙われてるっていうから、大変だよね」
「彼女は時代的に専業主婦は柄じゃないからな。それに、シャーリーちゃんもだが、おおらかなイメージだから、苛烈なところはウケ悪いからな」
「シャーリーは複雑ですからね」
シャーリー(シャーロット・E・イェーガー)はおおらかなイメージが浸透していたため、紅月カレンのガサツさ、麦野沈利の『ぶっ飛んでる』一面を持つことは大いに話題となった。さらに、キュアメロディの姿で『紅蓮』系のナイトメアフレームを操ることもあって、複雑な人物像となっている。また、現役時代と言動は異なり、紅月カレンと麦野沈利寄りのガサツで荒々しい口調である。また、紅蓮特式を使わずに紅蓮聖天八極式を小改良した機体を使う理由は燃費である。紅蓮特式はゲリラ運用向きでない上、火焔光背の性能が中途半端と見られたからである。(未来世界ではフルアーマーの研究も進んでいるため)また、64Fはゲリラ戦も行うため、紅蓮聖天八極式の直接改良を選んだほうが都合が良かったのだ。
「あの子はなにをやっているんだい?」
「あー、メロディなら、今頃は紅蓮聖天八極式でドンパチしてますけど、サイズが違うから、苦労してるかも。それに、輻射波動機構に耐性あるから、グリプス戦役以降のモビルスーツは」
ドリームはキュアメロディが紅蓮聖天八極式を使っているが、ティターンズやジオン残党が独自の改良でマイクロ波加熱に強い耐性を備えていた上、装甲材も熱耐性が通常のチタン合金セラミック複合材より高いガンダリウムγな上、機体の排熱機能を強化したものであるため、輻射波動の効果が低いことを心配した。実際にそうで、キュアメロディは想定外の苦戦を強いられていた。
「クソ、こいつら!輻射波動に耐性がありやがる!!想定外だ、ちっくしょう!!」
輻射波動があまり効果がないことにうろたえるキュアメロディ。輻射波動の効果が薄ければ、紅蓮は決定力を減じてしまう。機動力で勝っていても、MSはナイトメアフレームより攻撃力が総じて高いため、要注意である。そして、バーザムの一機が本来は備えていないはずの武装を用い、紅蓮を捕縛する。ヒートロッドのマイナーチェンジ版である『ヒートワイヤー』であった。
「なに!?ヒートロッドぉ!?」
気がついた時には、ヒートワイヤーがしっかりとグルグル巻きに巻かれていた。キュアメロディは機体のパワーを全開にし、引きちぎろうとするが、ヒートワイヤーの強度は一年戦争中の重量級MSを拘束したり、自機の運搬に使えるほどの強度を元から備えていた上、一年戦争後の技術で改良されたことで、紅蓮にエナジーウイングの展開は愚か、自慢の輻射推進型自在可動有線式右腕部の射出すらさせないほどの拘束力を見せた。
「エナジーウイングが展開出来ないッ……右腕の射出も!?嘘だろ!?」
バイク型操縦席で必死にアクセルを吹かし、輻射推進型自在可動有線式右腕部の射出を何度も試みるが、ヒートワイヤーは完全に紅蓮の体にグルグルに巻き付いており、エナジーウイングを展開状態にする動作が阻害され、右腕前部の射出も封じられる。そして、グフ系統しか持っていないはずの電撃機能がご丁寧に発動し、コックピットにまで高圧電流が伝わり、もだえ苦しむ羽目となった。
「な、コックピットまで電撃が伝わるのか!?う、うわぁああっ!」
コックピットに伝わった高圧電流はかなりのパワーで、プリキュア化していたにも関わらず、シャーリーはもだえ苦しんだ。機体もシンクロするようにだえ苦しむようなアクションを見せ、電撃によるショックか、紅蓮のカメラアイが点滅を繰り返す。
『ったく、世話を焼かせやがる。トマホゥゥゥク・ブゥゥゥメラン!!』
ヒートワイヤーが、どこからか飛んできたゲッタートマホーク(初代と同型の片手斧タイプ)に切断され、落下する紅蓮だったが、瞬時に『黒い初代ゲッター1タイプ』に救出される。
「ブラゲ……いや、新型!?」
『読み間違ったな、シャーリー』
「すまねぇ、アタシのミスだ…。ケイさん、そのゲッターは…?」
『ノワールGのゲットマシン一号機を変形させたもんだ。こいつはゲットマシン単体でも、通常サイズのゲッターの形態を取れるからな』
ゲッターノワールは単騎行動も可能なように、ゲットマシン単体で『ゲッタードラゴンに近い戦闘力のゲッターロボ』になれるようになっている。一号機は『ゲッター1がガンマンのようなガンベルトを巻いて、二丁拳銃を持つ』姿を取る。圭子はその機能をお披露目したわけだ。
『ほれ、ワイヤーは取ってやった。輻射波動の効果が薄いのなら、あたしの援護に回れ。正面切っての戦闘は任せろ』
器用に紅蓮に巻き付いたワイヤーを取ってやったゲッターノワール一号機(正確には、圭子の記憶を元に製作されたレプリカ機だが)はホルスターから『ゲッタードラグーン』を引き抜く。
――圭子は元来は狙撃型のスタイルであったが、のび太と流竜馬の指南で、近接戦でのガンファイトに開眼している。ゲッタードラグーンはその名の通りに、かの有名な拳銃『コルトM1848』の愛称を継承したゲッターサイズのリボルバー拳銃。ミサイルマシンガンと違い、回転式拳銃を普通にスーパーロボットの手持ちサイズに拡大させたものだ。圭子は空中元素能力で次弾装填の際にシリンダーごと交換するという荒業で装填のタイムロスを短縮している。ロボット越しでの弾の装填し直しは多少の時間を要するためだ――
『ガンファイトォォォォ・ハリケェェェン!!』
その叫びと共に、ガンカタ的な乱舞攻撃を見せるゲッターノワール一号機。戦闘用ゲッターロボらしい迅速な機動、ゲッタードラゴンと同レベルの機体動作速度。戦闘用ゲッターロボとしての一線級の水準を満たす機体性能を持つ事が鮮やかに示される。また、キュアメロディは今生においては『アメリカ人』なので、西部開拓時代のガンマンのような二丁拳銃を撃ちまくるゲッターノワール一号機はものすごくカッコよく見えた。腰にホルスター付きのガンベルトをつけ、ベルトにはちゃんと薬莢も入っている。ゲッターカッターを織り交ぜたガンカタは『ゲッターは固定武装と斧の一本槍』と認識していたキュアメロディ(シャーリー)には衝撃だった。サイズが異なるMS相手にも情け容赦なく、蜂の巣ないしはバラバラにしてゆくゲッターノワール一号機の勇姿。数度の人生を生きる内に、ゲッターに選ばれ、その使者になっていたとはいえ、圭子のゲッター操縦技術は一文字號と同等の水準に達した事を示し、前世で黒の騎士団最強を自負していたキュアメロディ(シャーリー)もその荒々しさに舌を巻くのだった。