ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前半はストライクウィッチーズがメイン、後半はウマ娘ですが、ゴールドシップの親戚にあたる、オリジナルウマ娘(ただし、史実馬モデル)が登場します。


第二百八十六話「幕間その29 ウィッチ世界の一幕と、三冠を継ぐウマ娘」

――日本連邦は紀伊型戦艦以前の戦艦を第一線艦から外すつもりであったが、紀伊型戦艦は建造費の節約で1920年代の基礎設計を流用しただけで、実際は1930年代の建造であったため、紀伊型戦艦は二線級扱いで現役に留まり、航空戦艦化された。加賀型戦艦は空母改装が検討されたが、既にジェット機の時代である事から、上陸支援艦艇に変更された上での運用とされた。艦齢が高かったこと、土佐の状態が思わしくなかったのが理由であった。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑は戦艦を大和型戦艦とその血族に統一した。そして、適宜の近代化を施し続けた結果、リベリオン以外に太刀打ちできる戦艦部隊がいなくなるに至った。未来で無人戦闘機より強い有人戦闘機が作られ、無人戦闘機がBC兵器同然に扱われている事を知った日本側は狼狽した。AIの暴走の危険性も伝えられたため、日本はAIに感情を持たせる研究に邁進するが、それは統合戦争でリセットされてしまう。ドラえもんの時代の繁栄を取り戻したい地球連邦、過度の発達を抑制したいスペースノイドらの対決がネオ・ジオンの敗北で終結へ向かっているのがデザリアム戦役後の地球連邦だ。コロニー出身のスペースノイドはデザリアムにさえ『阿呆』と断じられたため、過激派の多くは行き場を無くし、過激なテロリズムに縋っていった。ノビスケ襲撃もその一端である。更に多くの残党がバダンに流れていったことも、ジオン共和国の命脈を断ち切った理由である。皮肉なことに、ウィッチ世界はジオン・ティターンズ残党の過激派などが集まっていく結果、太平洋戦争の長期化は必至となっていく。扶桑が当初に見込んだ短期決戦は否定され、史実通りの凄惨な戦いになっていく。兵器の異常発達で、ウィッチが変革を遂げなくてはならぬ時代となったわけだ。そして、ウィッチ世界のウィッチは世代交代スパンが短すぎた結果、体系だった魔法はほとんど存在していないため、魔法以外の力に対しての脆弱性を露呈し、行き場は縮小しつつある。また、1943年以降に入隊した世代は近接格闘の技能も持たない有様であり、『使い物にならなかった』。64Fでは比較的に若めのセラや宮部大佐にしても、入隊は1938年から40年までの前後であるため、近年の入隊である世代は一部の例外を除き、前線には配置されなくなった――

 

 

 

――芳佳Bはダイ・アナザー・デイの情報を閲覧していた。自分たちの力だけではどうにもできなくなった戦い。ビーム兵器、レーザー兵器も平気で飛び交い、自分がウィッチの力だけでは戦えず、プリキュアの力も複合させても、まだ足りない局面があった事、未来兵器や怪異もねじ伏せる機械の神々。まさに驚異の光景である。更に過去の英雄たちの蘇りとその宝具の奇跡。それでも、敵軍の撃退で精一杯だったという一つの事実。敵軍はシャーリーの故郷であるリベリオン合衆国。その工業力が本気を出した場合の圧倒的物量。扶桑が全作戦機を供出してさえも足りないほどの差。そして。彼女にはショックな『ウィッチへの強烈なバッシング』。――

 

 

 

 

 

「そんな……」

 

ダイ・アナザー・デイで司令部の指令に従わず、怪異とだけ戦うと宣言した部隊は多かった。その分、64Fに負担がのしかかることになり、64Fがほぼ単独で戦線を支えた事はサボタージュの参加部隊の予想を遥かに超えていた。そして、戦場で猛威を奮った『魔導殺し』の鉛の弾頭。実弾への耐久性を犠牲にして、攻撃を躱す機動力を重視していたウィッチたちはひとたまりもなかった。ウィッチの死傷率は魔導殺し弾が投入されだすと跳ね上がり、ウィッチ用のストライカーに応急処置的に『防弾装甲』がつけられるようになった。ここ5年の風潮から逆行するようだが、弾丸の傷で『飛べなくなる』ウィッチが大勢出たことの戦訓であった。

 

「これがこの世界のロマーニャの戦いなの…?」

 

「ロマーニャというよりは、イベリア半島だ。あそこが欧州戦線の最終決戦の地だった」

 

「バルクホルンさん」

 

「お前らの様子を見に来た。今月は私が応対の担当になってな」

 

芳佳Bは揉め事を起こした後は自分の行いに自問自答する事が増え、ふさぎ込み気味であった。自業自得であるが、芳佳B本人は善意で言ったのであるが、それが悪意と取られるのは予想外すぎたのだ。『全てのウィッチが自分のような奇跡を起こせるとは限らない』。ごく当たり前の事だが、芳佳は501という事実上の最高の場所にいた故に、感覚が麻痺していたのだ。

 

「私は間違ってるんですか、バルクホルンさん」

 

「一般論として、お前はエクスウィッチに配慮しなかった。そこは反省するべきだ。あの方達は、お前や私が小さい頃に世界を守った。役目を果たし終えたのだ。それをこの世界での業績だけで判断した。それは愚行だ」

 

「世界が違えば、辿った道も違う。それを認識するべきだったのだ、宮藤軍曹」

 

「ルーデル大佐……」

 

ルーデルがやってきた。万年大佐と揶揄されているが、現場の取りまとめ役として存在感を放っている。また、ゴールドシップの同位体でもあるため、記憶を共有している。

 

「あなたは…?」

 

「私はハンナ・U・ルーデル。バルクホルンやミーナの上官だよ」

 

「えぇ!?」

 

ルーデルは大佐であるため、往時のミーナよりも階級が上である。B世界では1945年前後に退役し、養護施設の経営者に転じていたが、A世界では『ウォーモンガー』ぶりが好まれた事もあり、大佐のままで現役である。最近はゴールドシップと記憶を共有するようになったので、更におかしくなったと、もっぱらの評判だ。

 

「ここからは私が話そう。構わんな、少佐」

 

「ハッ」

 

ルーデルは椅子に座り、話し始める。顔に傷を持つ強面気味の容貌だが、実際には人使いが荒いところを除けば、人のいい姉簿肌の人物である。芳佳Aの医官の勉強に一肌脱ぎ、部下のガーデルマン少尉を送り込むほど面倒見が良い。ルーデルは語りだす。この世界で何が起きた結果、ウィッチの権威が失墜したのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――21世紀の世界では、ウィッチ世界との貿易で経済が奇跡的に復活の兆しを見せた日本。だが、未来世界からの襲撃に対抗するだけの力は日本国と自衛隊にはないため、Gフォースに丸投げされた。襲撃を受けた地の復興は扶桑の財政援助で促進されていたが、ジオン残党の襲撃に対応した自衛隊の部隊指揮官が野党に『独断専行』とイチャモンをつけられ、証人喚問を要求されるなど、現場の士気はだだ下がりだったからである。また、扶桑軍が一味の裁判などを代行し、軍事裁判として執行したことも議論を呼んだが、21世紀の日本には『軍事裁判に関する規定』が存在しないが、ジオン残党は軍事裁判での裁きを強く望んだ故の兼ね合いであったため、この議論はすぐに沈静化した。Gフォースはこうした、日本の政治的事情で有事即応部隊の体裁が強まり、その拡充が急速に行われた。選抜は黒江、武子の両名が行い、自衛隊でジオン残党と交戦した部隊の自衛官達が相次いで転属していった。防衛省はジオン残党との交戦ノウハウを全国に広めたかったが、被害を政治利用した野党にまんまと潰された形である。残骸から回収された超鉱スチール合金は、自衛隊の演習場での試射による計測では、21世紀の並半端な火器では傷すらつかない有様で、更に精錬技術が上である地球連邦製のチタン合金セラミック複合材は一定の厚さを超えてしまうと、21世紀のいかなる重火器でも完全破壊は不可能であった。そんな中、現場の自衛官たちはよく勇戦奮闘したと言える。Gフォースは野党に疎まれた『ジオン残党と交戦した自衛官たちの行き場』となり、練度は21世紀の軍隊でも最高峰と言えるほどになった。それは実戦経験豊富な扶桑軍人が指揮官層を占めているからでもあった。――

 

 

 

 

 

 

――扶桑の1940年代中盤から後半期の青年将校たちは人材の宝庫でもあったが、ウィッチとしては本来は高齢になるため、世代間闘争を招いてしまった。だが、1941年以降の入隊組は急速促成教育を受けた世代にあたり、兵器の高度化についてこれない、軍事的ロジスティクスの重要性を理解できないという実務上の不都合が生じてしまった。軍事的ロジスティクスを真に理解するウィッチ系将校があまりに少ないため、ダイ・アナザー・デイ中にウィッチ達の実階級を下げ、現階級を『勤務階級』とする試みがされたが、現場の反発とサボタージュを招いた結果、年長組のRウィッチを参謀と兼任させる形で勤務させ、再教育に抵抗が強い世代の中堅と若手は現場で使い倒すという妥協案が取られた。そのため、自前で物資を調達できる64Fは参謀本部に重宝がられた。特に、自前で宇宙戦艦の艦隊を編成可能なほどの能力は太平洋戦争での敵海軍への抑止力となっている。とはいえ、物量では絶対的に不利なのには変わりはないので、敵を一箇所に惹きつけて集め、包囲殲滅という方法が取られる様になった。敵は相当量の兵器を内陸持久戦略を取る扶桑軍との戦闘で喪失していたが、それを瞬く間に補充してしまうため、戦略爆撃機と大陸間弾道ミサイルによる敵地攻撃の検討が本格的になされていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑で一般ウィッチの戦略的価値が大きく下落したため、扶桑初の戦略爆撃機である富嶽及び、その後継機達は戦略爆撃機/空中給油機/電子戦機/輸送機などの任務に専念するようになった。富嶽はダイ・アナザー・デイ後も現役に留まり、戦略爆撃機としての任を果たしていた。減勢の時代を迎えたが、元々の調達費が高価だったため、用途を変更され、ターボプロップ機化されて延命された機体は多く、完全な退役は1960年代の後半であったという。空軍が主力化していくにつれ、予算の都合で一点豪華主義化していくようになり、『少ない予算で一騎当千の機体を作れ』という命題が突きつけられる。日本側は戦争後を見越して要求するが、扶桑は既存機の全模倣では限界があるとし、機銃をパルスレーザーとの混載に切り替えてゆく。ダイ・アナザー・デイで実弾機銃の弾数を遥かに超える敵機と交戦したケースが多かったためである――

 

 

 

 

――装甲空母というジャンルそのものが一過性で終わった事を知った扶桑は大鳳の姉妹艦の建造を全キャンセル。代わりに戦後型超大型正規空母の生産を行った。しかし、日本側の予算面と政治的配慮と言う名の妨害もあり、建造開始は予定より二年遅れになった。超大型空母は数を持つようなものでもないため、予算確保にも苦労する。結局、ミッドウェイ級相当の中型空母が数年後に調達される。雲龍型の大きさでは、コア・ファイターを用いても、まともな航空打撃力たり得ないと判断されたからだ。また、64Fにお鉢を取られ続ける連合艦隊の空母航空団のプライドも大きかった。とはいえ、日本側は空母の大量調達を強く拒絶しているため、日本を動かすには他国からの圧力が必要なため、これまた遅延。結局、連合艦隊は戦艦を主軸にしたゲリラ戦を延長せざるを得なくなった。大和型戦艦の予備艦が予算計上された理由は、このゲリラ戦での酷使での船体疲労への懸念である。扶桑はウィッチ戦・怪異戦に特化しつあったため、通常の戦争への適応に却って苦労を強いられていたわけだ。攻撃型潜水艦の建造も妨害を受け、飛龍型航空母艦の改装もテロで遅れてしまい、艦の放棄まで検討されるに至っている。この事もあり、64Fは宇宙空母も複数を調達し、地球連邦軍から人員も借用して運用している。怪異が再度の活動活発期に入るのは1950年代中頃と見込まれているため、それまでに全世界のどこにでも、すぐに部隊を送り込める体制を作りたい連合軍参謀本部の意向でもあった――

 

 

 

 

 

――芳佳BとリーネBのした事は考えの押しつけにすぎず、芳佳Bはそれを主導したため、結局、自分の世界の黒江と智子に謝る羽目になり、その後も完全な和解には至ってはいない。芳佳が無知であった故に、智子が最も塞ぎ込んでしまったためで、A世界の智子(精神的に大人になっているので、遥かに寛容な精神を持つ)でさえ憤慨するレベルの罵声を浴びせたためで、坂本Bが腹を切ろうとしたほど事態を悪化させた。芳佳に悪気がまったくなく、『自分は父親との約束を守っているだけだ』と述べたのも、坂本らを困らせた。芳佳はエクスウィッチにもそれを要求してしまう悪癖があり、坂本を引き合いに出すため、黒江B、智子Bは追い詰められたわけだ。運悪く、A世界では『絶対的存在』であった事も不幸であった――

 

 

 

――南洋のホテル――

 

「こちらの宮藤さんが起こした騒動、改めて詫びるわ。まさか、あの子……」

 

「良くも悪くも、宮藤はお父上の遺言を絶対視している。リーネもそれに同調した。故に、エクスウィッチにとってはもっとも辛辣な言葉だ。過去に実績があれば、ある程に。あの二人は、私が新兵の頃に世話になったご先輩方だ。そちらの私が腹を切ろうとした気持ちはわかるだろう?」

 

「ええ……。宮藤さんはこちらの世界が戦争中なのに、彼女たちもウィッチなのに、物見遊山を決め込んでいるのに納得がいかなかったそうだけど、昔はウィッチだったというだけで、戦えはしない。そんな状態のウィッチに『何もしない』と罵声を浴びせれば……」

 

「こちらでの出来事はそちらでは起こっていない。宮藤はそこをわからなかった。そこに今回の不幸があるよ。今はルーデル大佐殿が面会しておられる」

 

「大佐が?こちらでは、とうに退役して、養護施設の経営者になっているのだけど……」

 

「こちらでは現役バリバリだ。片足が戦闘で吹き飛んで、義足になっておられるがな」

 

B世界では1945年に退役し、ペリーヌの友人になって、養護施設の経営者に転じているルーデルだが、A世界では軍人のままである上、ウォーモンガーぶりに磨きがかかったと評判である。また、この頃にはプライベートで、ゴールドシップを連想させるようなはっちゃけぶりを見せるようにもなっており、自身がゴールドシップの同位体であることを自覚しだした節があると、ハルトマンの談。

 

「カールスラントも大変だ。戦争に負けた世界の住民がその理屈を持ち込んで、戦前からの軍人を追放しようとしたんで、内乱だ。第三国の介入で収まったが、煽ったそいつらの物言いがひどい。『カールスラント皇室を潰すつもりはなかった!!軍から好戦的な右派思想だけをなくすつもりだったんだ!!こんな内乱になるなんて!!』だと。結局、カールスラント皇室は第三国の特殊部隊が救出して、全員が国外に逃れた。そして、カールスラントはその後に第三国(NATO諸国)の軍政下に置かれた。行政機能も崩壊していて、自国民同士で殺し合いを始めていたからな。圧倒的な力でねじ伏せるしかなかった」

 

カールスラントは皇室が国外に逃れ、NATO軍の軍政下に置かれた。NATO軍の軍事力で噴出した対立を潰すしかなかったのだ。カールスラントは今後、史実の東西対立などが噴出した上、大量の失業軍人を抱えることになり、それらが不良債権化し、長く経済的低迷に苦しむことになる。

 

「軍政からいつ?」

 

「わからん。国民の人心がカールスラント政府と軍から離れた以上、数十年は軍政下に置くしかあるまい。だから、有能な軍人は国外に逃れているのだ。扶桑も、できたばかりの空軍を整えるのに人がいるからな」

 

扶桑もカールスラントの衰退でアジア太平洋地域の安全保障を一手に引き受ける羽目となり、連合艦隊の拡充を否応なしに行わざるを得なかった事、失業対策の面が大きかった陸軍をより近代化せざるを得なくなり、戦闘ヘリの導入などを進めた結果、騎兵が牧場の失業対策でしか無くなったとも説明する。また、B世界でようやく普及し始めた『75ミリ砲搭載の戦車』はとうに時代遅れになり、120ミリ砲搭載の戦車すら現れている事、カールスラント空軍が予測していた『ジェット機による高速の一撃離脱戦法』は机上の空論であり、ジェット機同士のドッグファイトが当たり前となったことを語る坂本A。

 

「そう…。技術屋の予想と違って、現実は非情ね」

 

「我々も幸せなほうだ。昭和20年にそれまでのすべてが崩れ去る世界のほうが当たり前だと知ってしまったからな。それで、民需が軍需に優先されるようになったから、肩身は狭いがな」

 

坂本Aは『昭和20年の八月を境に、軍に関わった人間が悪しき者と見られ、周囲に『穀潰し』扱いされていく史実を知っているため、現在の扶桑においての風潮に寂しさを感じているようで、ノンアルコールワインを煽った。ミーナBは悟った。幼少から軍に人生を捧げてきた坂本は軍の世界しかわからない。それ故に、軍が疎んじられる時代は居心地が悪いのだろう。

 

 

「政治屋は我々に一騎当千を求める。急激な科学の発達で、我々の費用対効果が疑問視されているからな。それに、501が三度に渡って怪異の巣を叩いた世界があることがわかり、他の統合戦闘航空団を維持するのに疑義が生じてな。結果、501にほぼ統一されたが、隊員も四年前の戦闘で次第に淘汰されてな。今や、残っている他国出身者はわずかだ」

 

多くの外国出身者は戦闘での後送や異動で淘汰されたため、64Fに残留した外国出身者は腕が本当にいい者たちのみ。更に、再教育の必要有りとされた者も離脱したので、隊員の多くは扶桑とカールスラントの歴代の腕っこきに絞られた。リベリオン出身者も、シャーリー以外には、旧506B部隊の者が残るのみ。それも再教育の途上だという。

 

「人同士の戦争に命をかけることに疑問を感じるのは勝手だが、責務を果たさんで、後方で美味い飯を食うのは言語道断だ。あの時期の若い連中はウィッチの存在意義を履き違えていた。だから、穀潰し扱いされるのだ」

 

「穀潰し……。ひどいものね」

 

「扶桑には、村八分という言葉があるのでな。それで、陰湿な社会構造の田舎を見捨てて、進んだ社会を持つ都会に出ていく若者が続出している。四年前の戦闘の情報が開示されんと、傾向は緩和されんと思う」

 

「寂しそうね」

 

「私は親父に『ウィッチとしての最大の幸福は軍に入り、国に奉仕することだ』と散々言われたのでな。時代の変化についていけん年寄りと笑ってくれて構わんよ」

 

坂本はガチガチに愛国教育を受けた関係もあり、軍に奉仕することを最大の幸福と考えているが、封建時代の名残りでもあるため、急速に淘汰されつつある考えである。実際にこの時期の10代後半以降の軍のウィッチは『欧州戦線従軍記章』なしには、軍服や戦闘服で外を出歩けなくなっていた。欧州戦線従軍記章はダイ・アナザー・デイ終結後、サボタージュが世に知られると、連日連夜、死闘ぶりを報道されていた64F以外の部隊のウィッチたちは社会的な掌返しを一挙に受けることになった。この憂慮すべき状況を収めるために『従軍記章の新設』は必要であったのだ。日本側は『防衛記念章のように、欧州戦線従事記念章を作って、略綬形式で着用させればいいではないか』としたが、そうもいかないのが世の中なのだ。欧州戦線従軍記章は予定より遅れること、二年ほどで対象者に授与された。実際は部内で等級があり、色が銅である者は『従事予定部隊が評議会の都合で、寄港地にて任務を解除されたために、情報漏洩防止のため、そこに軟禁された者か、口封じに別戦線の補充に送られた者』へのお情け、銀が『サボタージュを行ったが、ダイ・アナザー・デイ後半から一定の活動はしていて、一定の戦功がある、ないしは土壇場で64Fに加勢した部隊の在籍者』、金が『一貫して欧州戦線で戦い続けた者』。金は『受賞者が一貫して活動をしていた数部隊の者に限られた上、金鵄勲章と付随して授与された』ため、部内では容易に見分けがついた。空軍の設立前からの戦であったため、元・陸軍航空隊の人間には『陸軍武功徽章』も合わせて授与された。同章が空軍関係者に授与されたのは、ダイ・アナザー・デイが最初で最後であった。1949年にはだいぶ落ち着いてきたが、記憶が新しい頃には『従軍記章を見せないと、故郷で穀潰し扱いされる』事も珍しくなく、ウィッチになった者たちが都会に出ていく契機になった。これがウィッチ世界の扶桑におけるストロー現象の始まりであった。この問題は新しい教育制度が全国に行き渡り、更にダイ・アナザー・デイの情報が開示され、当時の現役ウィッチへの白眼視が収まるまで、扶桑の社会問題であり続ける。坂本Aはそんな『心変わりの早い』社会に愛想を尽かしているようだが、それは転生前の悲しい経験によるものであり、坂本は軍人であることそのものが生きがいと化してしまったという哀しい人物であるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

――1949年。ブリタニア連邦は軍縮の時代を迎え、海軍も縮小を始め、予備装備として保管されていた『ダイヤモンド級戦艦』の解体が始まっていた。その一方で、『黄金の七隻』と呼ばれる新戦艦は維持され、軍縮の中でも象徴とされていく。センチュリオン戦車がベストセラーになり、他国にも輸出していくため、その儲けで維持していると、もっぱらの陰口であったが、空母の増勢も大型化で難しくなってしまった故の妥協であった。そのため、日本連邦に義務を負わせることで『財政負担を軽くする』ことを選んでいく。連合軍と言っても、有名無実化が進んだ時代だからだ。とはいえ、リベリオン本国に近い位置にあるため、戦略爆撃機の猛爆を受ける身であり、完全に臨戦態勢が解かれたわけではない。ジェット機の配備が進んだのは、リベリオン軍の高性能戦略爆撃機の存在が大きい。迎撃網にミサイルを組み込めたのは、この時点では日本連邦のみであり、他は次善策として、高性能ジェット戦闘機を配備するしかなかったのだ。アメリカはウィッチ世界に戦闘機の生産ライセンスを売りさばくことで貿易収支を改善させていくが、『その時期がアメリカの栄えた最後の時代』とされていく。2020年代はその時代に片足を突っ込みつつある時代であった。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ウマ娘世界。キングヘイローの失踪後、ふさぎ込むスペシャルウィーク。それを励まそうとするも、無力感に打ちのめされるサイレンススズカ。ビワハヤヒデがターフを去ろうとしている。世代交代の足音が聞こえてきたトレセン学園。そこに現れたのは――

 

「ゴルシからの連絡があったから、なんやと思ったけど……まさか、アンタがキタサンブラックより後に入学してくるなんて、予想外やで、ディープインパクト」

 

「ここで従兄弟達や甥っ子たちが世話になってると聞けばな。私と戦えるのは、スズカ兄貴だけだよ、タマモさん」

 

タマモクロスが会っていた新入生こそ、かのサンデーサイレンスの最強の遺産にして、サンデーサイレンス系統の繁栄を更に拡大させた功労者『ディープインパクト』の魂を持つウマ娘であった。他のウマ娘と違い、前世の記憶が最初からあるようで、ゴールドシップを甥っ子と表現した。

 

「私の力はよく知っているだろう?私が戦いたいのは、最強を謳われた連中さ。スズカの兄貴には敵わんがね」

 

「そいや、スズカの前世の死因は……」

 

「速さが馬の骨格の耐久限界を超えてしまったからだと言われている。兄貴はあまりに速すぎたのさ」

 

ディープインパクトは自身が及ばないと認めている者として、自身の従兄弟であるサイレンススズカを挙げた。タマモも納得する。最盛期のサイレンススズカは『ディープインパクト登場後であろうと、絶対的な速さであった』のをタマモクロスは知っているからで、現役時代の騎手は『全盛期のトウカイテイオー、ナリタブライアンでも余裕でちぎれた』という予測をサイレンススズカの死後に述べている。

 

「あんたは凱旋門賞で三位に入着してから、早期に引退しおったからのぉ」

 

「まあ、馬主の判断だからな。こうなったからには、子供や甥、姪達のためにも暴れていこうと思う。アーモンドアイ、コントレイル、ドゥラメンテらのためにも。前世では会えなかった子も多いからな」

 

ディープインパクトは自身の後を継いでいった者達のためという使命感、前世では会うこともなかった従兄弟たち(ディープインパクトはサンデーサイレンスの遺した最後の大物であり、サイレンススズカ、スペシャルウィーク、フジキセキ、エアシャカール、キタサンブラックなどと直接の血縁がある)との対戦を楽しみにしてるさ」

 

「前世の記憶をデフォで持っとるんやね」

 

「ああ。私は歴史を変えたからな。神様も少しは考えてくれたんだろう。まさか、甥のキタサンブラックよりも後になるとは思わんだ…」

 

ディープインパクトはウマ娘として転生したら、まさか前世の甥にあたる(キタサンブラックはディープインパクトの子供世代であり、サンデーサイレンスとサクラバクシンオーの孫である。ちなみにキタサンブラックの父はディープインパクトの兄にあたる)キタサンブラックより下の世代のウマ娘になるとは思いもしなかったようだ。

 

「もう一人の甥のゴルシはどうしてる?」

 

「でかい顔しとるで」

 

「スマホ貸してくれ。驚かしてやる」

 

ちょうど、野比家で暴れていたゴールドシップのもとに電話がかかり……

 

『なんだよ、タマさん。電話なら後にしとく……』

 

『でかくなったな、ゴルシ』

 

『!?だ、誰だ!テメェ!?』

 

『ディープインパクト。そういえば分かるな?』

 

『お、オジキ!?』

 

史実では色々な違いで、面識はなかったが、ウマ娘としては同じサンデーサイレンス系という存在故の賜物か、『以前からの知己か、親戚』のような口ぶりであった。さすがのゴールドシップも、偉大な叔父(ゴールドシップはサンデーサイレンスの子の一頭である『ステイゴールド』の子である)の前では畏まるようだった。ウマ娘としては年下だが、前世の記憶のためか、ディープインパクトはゴールドシップを甥と認識している。ゴールドシップも『オジキ』と呼ぶ。

 

『待て待て待て!!なんで、お、オジキがいんだよぉ!?』

 

『キタサンブラックの一学年下で入学したからだ。ルドルフさんも驚くだろうよ』

 

『なんだよそれぇ!?つか、早すぎだろ!?』

 

『ナリタブライアンの後は私が継ぐ。そういう運命だからな』

 

『オジキが来たんじゃ、エアグルーヴは腰抜かすぞ?オジキが来る可能性は伝えといたから』

 

『エアグルーヴさんか。スズカ兄貴に勝てなかったという、女帝様か……。会ってみたいがな』

 

『エアグルーヴやスズカには前世の記憶はねーぞ?』

 

『わかってる。接し方は考えるさ。それはそうと、ゴルシ。ステイゴールドの奴が心配しているが、お前、さっきまで何していた?』

 

『オヤジが!?クソ、なんで……』

 

『五秒以内に答えろ。マックイーンさんに教えて、パイルドライバーだぞ。それとも、シャイニング・ウィザードか?』

 

『う、う……マックイーンのこと持ち出すの卑怯だぞぉ、オジキ~!!』

 

ゴールドシップはこの後、マルゼンスキーに怒りの『ジャーマン・スープレックス』をかけた事、『騒動に物見遊山を決め込んでいたから、かけた』ことを告白され、ディープインパクトは叱る羽目になった。ディープインパクトは自分がナリタブライアンに代わる三冠ウマ娘になる運命を背負っていることを自覚している。史実では現役期間は短い部類だったが、ウマ娘としては未知数である。ウマ娘に転生すると、前世の関連性は殆ど受け継がれないが、ディープインパクトとゴールドシップは特異なケースであった。また、クラシック三冠ウマ娘の称号を受け継ぐ宿命を背負っていると発言する一方、自身の従兄弟であったサイレンススズカには敵わないとするなど、前世での実力差の評を意識している節もある。ルドルフ、ブライアンの後継になるべき資格がある彼女。若いウマ娘でありながら、あのゴールドシップを不思議と従えさせる力はどこにあるのか?後日、トレセン学園を騒がすことになる。そして、テイオーの要請で副会長に留任することになったエアグルーヴは新入生の名簿に、噂の『ディープインパクト』の名があることに盛大に腰を抜かす羽目に陥り、素っ頓狂な声を挙げてしまう。そのエアグルーヴの動揺に、心配して声をかけたウマ娘こそ、ディープインパクトが唯一、勝てないと見込んでいる『サイレンススズカ』。エアグルーヴの親友にして、前世ではディープインパクトのいとこに当たる存在であった。

 

 

 

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