ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百八十八話「幕間その31 タマモクロスの回想と、ウマ娘たちに立ちはだかる者とは」

――扶桑は八八艦隊計画の終了後は航空主兵論が優勢であったが、航空戦力そのものの近代化・高額化、空軍設立で逆に破綻してしまった。残された空母航空団は極めて惰弱な集団であり、結局、手違いで移籍させた空母航空団の構成部隊を旧任務に専従させ、お茶を濁した。日本側の手違いであったが、海軍から単独の作戦遂行能力を奪うという目的は達した。海軍は戦艦部隊が最先端の装備を持つ一方、空母は技術革新による世代交代についてこれなくなり、無線通話などで英語が必須となってしまった。それまで搭乗員の主力を占めていた下士官層で、語学などで再教育を要する人数が膨大になってしまった事から、この頃から次第に(色々な兼ね合いもあり)航空隊の主力を占める者達が高度な教育を受けた士官に様変わりし始める。ウィッチもR化の容易さが認知されたことで、20歳を超えても在籍する者が増え始める。同時に、10代前半で軍に入る道が閉ざされていくことには反対である論調は健在であったが、高度な技術が必要とされ、一定の語学力も必要とされる時代を迎えたため、次第に消えていく。扶桑はこの頃から、敵方で完成が予想された『原爆』への報復手段として『反応弾』を選定。第三世代のものは対消滅反応を用いた物であり、日本側の懸念する核兵器ではないため、扶桑は巡航ミサイル型の物を戦略爆撃機部隊に配備している。もし、リベリオン軍が原爆を使用した場合、リベリオン本土のどこかの都市を消滅させ、その力でリベリオン本国に休戦を迫ろうとしたわけだ。あくまで、最終手段である。そもそも、ウィッチ世界では、リトルボーイが完成した段階で『怪異への効果』が疑問視され、ファットマンができるのを以て、予算が打ち切られているはずである。つまり、核兵器の物理的破壊力に着目した誰かの推進で、威力のあるファットマン型が増産されるにしても、1940年代の技術では、半年で数発程度。日本連邦はそれを見越し、迎撃網を異常発達させたわけだ――

 

 

 

 

 

 

――南洋島の日本には知らされていない『秘密武器庫』では、日本へは公に出来ない報復用の反応兵器が納入され、厳重に管理されている。その威力は一つの大都市を跡形もなく消し去るには一発で充分なものだ。扶桑も『使うことがない』ことを祈っているのだが、敵は躊躇なく、原爆をどこかで使うだろうという悲観的予測は常にあった。その報復攻撃用に用意されたのが『反応弾』である。扶桑が『戦略爆撃機の迎撃』に血道を上げる理由は『核兵器で吹き飛ばされる』危険が常に伴っているからで、ある意味、その恐怖が『史実では、防空網整備が一歩遅れたままに負けた』軍隊を律したと言えるため、史実の敗戦の情報はネガティブなことだけを起こしたわけではなかったのだ――

 

 

 

 

――ただし、憲兵についてはマイナスイメージが強いため、自衛隊風の『警務隊』に組織そのものが改編され、ガリア国家憲兵に範を取っていた部分は完全に無くなった。その兼ね合いで余剰人員が多く生じ、リストラするわけにもいかないため、士官層は一部が司法部門に移された他、数の多い下士官以下は再教育の後に他兵科に転科させられ、前線の補充要員代わりにされた。これは職域の縮小で警務業務に大人数が必要無くなったためであり、5万を超えた人数の憲兵の少なからずは他兵科に転科を余儀なくされたり、退役して数ヶ月して、警察官に転職する者が続出した。志願人数が大きく目減りしていた扶桑軍は余剰の人員を転科させるなどの方法を用いていたが、無理がある事は自覚しており、結局は一部の精鋭部隊に一騎当千を求めていくわけである。日本連邦は人的被害を毛嫌いする傾向が強いため、即戦力になる義勇兵を重宝していく。これが教導部隊の危惧を起こし、日本からのリクルートを増やしていくのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

――2021年頃、手記のまとめという形で出版されたキュアアクア/水無月かれんの回想録。それはオールスター戦を主にしたものであった。かれんの世界では『プリキュア5』はまだ現役であったためであったが、史実と異なる結果を辿ったオールスターズDX三部作の内の二つを中心にまとめあげていた。特に、DX2は特に変化が大きいことに紙面が割かれている。百鬼帝国やミケーネ帝国、デーモン族、バダンも介入しての超大規模な戦いとなった結果、その戦いでの本来の新人枠であったハートキャッチプリキュアの二人は申し訳程度に活躍はしたが、戦闘の指揮は(中身が入れ替わっていた事もあり)ドリームとピーチが行い、阿修羅の如き活躍で実質的なリーダーとなっていた事、駆けつけた他のヒーローやスーパーロボット軍団とも対等に肩を並べていた事が、当事者として好意的に記されていた。プリキュアだけが世界を守っているわけではないという事実は、その戦いに参戦していた者らにある種の希望をもたらした。そして、仮面ライダー一号/本郷猛が切った『世界が……時代が望む限り、俺たちは死なん!!!』という啖呵はその後にプリキュアオールスターズの精神的支柱となっていった事も記されていた。昭和という『過ぎ去った過去』の時代から世界を守ってきた男たちの背中は、その時のプリキュアオールスターズには大きく見えたと、水無月かれんは手記に記していた――

 

「あれ、この本は?」

 

「私達の仲間が今年に出版した回想録ですよ。写真付きですから、読みやすいかと」

 

ナリタタイシンと入れかえロープで入れ替わっているキュアフェリーチェがウイニングチケットに薦めた本棚の本こそ、まさにそれであった。ウイニングチケットが開いてみたページには、仮面ライダー一号、バルイーグル(二代目)、宇宙刑事ギャバンの三名がプリキュアたちを守るかのように立ち、敵に立ち向かっていく背中を見守るしかない様子を写したもので、この時に多くのプリキュアが自分の『弱さ』と向き合ったことが発端になり、その後のプリキュア達が特訓に明け暮れていく理由となった。仮面ライダー達の中でも、最強とされる五人(ディケイド、ストロンガー、ZX、RX、一号)の勇姿はもちろん、伊達男じみているV3の振る舞いなども印象に残り、キュアハートが現在でも真似している。その時にキュアピーチ(中身は智子)がカイザーブレードを召喚し、キュアドリーム(中身は黒江)がエンペラーソードを召喚するなど、ある意味ではやりたい放題をしたものの、近年のプリキュアが忘れがちである『戦士』としての側面がクローズアップされた一戦であった。これがきっかけとなり、少しづつ、プリキュアオールスターズは次元を股にかける戦いに巻き込まれていった――

 

 

「こんなことがあったんだ。あたしたちが知らないとこで」

 

「一つの世界で起こっていることは、別の世界からは観測出来ませんからね。よほどの技術がない限り」

 

キュアフェリーチェ(外見はタイシン)はそう注釈をつける。プリキュアオールスターズは少しづつ、アニメ通りからは外れ始め、違う道を歩んだドリームが介入し始めたことが運命の分水嶺であった。フェリーチェもDX2への介入後はDX3などにも単独で介入。ストナーサンシャインやシャインスパークを披露し、ハルバードタイプのゲッタートマホークを担いで、戦場を駆ける様は『鬼神』、あるいは『天使の顔をした悪魔』とも例えられた。本来の因果を奪われたフェリーチェは、ゲッターに見いだされることで『戦う力』を取り戻したので、ある意味での必然であった。

 

「それと、ここが貴方方のひ孫、あるいは玄孫がいてもおかしくない時代であるほうを注目すべきでは?」

 

「実感ないんだよね。あたしらが別の生き物な世界じゃ、現役時代は昔に終わってて、21世紀には、あたしのひ孫が走ってるなんてさ」

 

タイシンの姿になっていても、タイシン本人より基本的に温和な性格であるため、優しそうな雰囲気が前面に出ているフェリーチェ。また、ウマ娘としての体に宿っていても、魔法は使えるなど、双方の特性もそのままである。フェリーチェ本人は20年近くの時の多くを鍛錬に費やしたため、G1ウマ娘であるナリタタイシンの要求に充分に応えられる肉体を持つ。また、タイシンは史実と異なり、反骨心が史実を超える可能性をもたらした(かつてのオグリキャップら平成三強、タマモクロスが到達していた『感覚』に到達している)。サンデーサイレンス系のウマ娘らはその境地にデフォルトで達しているため、平均レベルはグンと高い。故にスペシャルウィークやトウカイテイオーらの世代は『黄金世代』と呼ばれている。BNWはその一世代前のウマ娘だが、デビューは比較的に遅めであった。また、三人のいずれも不振に陥った時期が長く、かつての平成三強(オグリ、クリーク、イナリ)のような『時代を担う三強』にはなれずじまいであった。

 

「ねえ、あたし達は……他の世界じゃ、どう評価されてるの?」

 

「知りたいですか?」

 

「……うん。」

 

「あなたはダービーで精根尽き果て、ビワハヤヒデさんは一時は最強と讃えられますが、ナリタブライアンさんの台頭と入れ違いにターフを去り、ナリタタイシンさんはライスシャワーさんに引導を渡されますが、ライスシャワーさんはそのレースで亡くなります。総合するに、貴方方は先代の平成三強ほどの名声は得られず、時代の中心たり得なかったのです」

 

平成三強。オグリ、クリーク、イナリの三頭(三人)を指す通称であり、タマモクロスの引退後にレースを盛り上げた強豪とされる。タマモクロスが足の酷使と自身が慕う人物の死で肉体と精神が限界に達し、早期にターフを去った後、オグリとその二人が中心になり、界隈を盛り上げた。BNWはその再来を期待されたが、そうはならなかった。ウイニングチケットとナリタタイシンがクラシック時代に不振に陥ったからだ。だが、史実では、新旧の平成三強のいずれも、自身のようにG1で勝てるような子孫に恵まれずじまい。自分たち一代きりの突然変異的な高能力であったことの証明となっている他、いずれも、サンデーサイレンスの血統がそれまでの馬たちの血統の多くを淘汰していく流れに飲み込まれていった。それはシンボリルドルフの血統であろうとも例外でなく、クワイトファインが辛うじて繋いでいるに過ぎない。

 

「幸いにも、レイパパレという競走馬がいます。あなたのひ孫であり、マルゼンスキーさんの末裔です」

 

「えぇ~~!?」

 

マルゼンスキーは史実ではウイニングチケットの祖父である。従って、ウイニングチケットのひ孫であるレイパパレはマルゼンスキーの末裔ということになる。更に、自分と数歳ほどの差であるスペシャルウイークとは、競走馬としては年が離れていた事、マルゼンスキーを介する形で親戚筋にあたる(ライスシャワーもマルゼンスキーの孫世代の一頭)事も知らされ、これにも腰を抜かす。ウイニングチケットは不思議な縁を感じ、以後、スペシャルウイークと交友を深めていく。また、日本ダービー後に燃え尽きてしまったという別の自分の事を『夢』という形で見たためか、ハヤヒデの引退は衝撃であり、タイシンも口に出さないが、傷ついているはずだということには気づいており、自身もシニア戦線には興味はあまりなかったが、ハヤヒデが引退してしまった事が逆に発奮の要因になり、後日、シニア戦線に正式に参戦。日本ダービーの際の走りが見事に蘇るのである。

 

「あたし、ハヤヒデやタイシンとずっと一緒にいられると思ってた。ずっと一緒に走っていられるって。だけど、あたし達の中で一番に強くて、カッコよかったハヤヒデが怪我で……こんなのってないよーーーー!!」

 

それがウイニングチケットの本音だった。日本ダービーは勝てたものの、自分はハヤヒデには及ばないという自覚があり、密かに目標にしていた。それが有馬記念でトウカイテイオーに敗北した後のスランプで精彩を欠く日々の果てに『怪我で引退』(実は怪我は治療で治っていたが、精神面で立ち直れなかった。理論派であったのが、却って仇となった。そもそも、彼女は才能が妹に及ばないのを強く自覚していた故に、論理的・合理的な思考で一流を目指したため、怪我で衰えていたはずのトウカイテイオーが全盛期以上の脚力で自分を抜いたことで、自らの論理に破綻をきたしたことで、彼女の根幹も崩れ去った)した事は強いショックだったのが窺える。ナリタタイシンも、そのことでハヤヒデと電話口で口論になってしまい、ゴールドシップに諌められていたので、BNWの筆頭と言える存在であった『ビワハヤヒデの引退は』『BNW』の終焉と『黄金世代の時代』の真の意味での訪れであった。

 

「運命は、時として残酷なものです。ですが、時代の流れは新しい英雄を生み出す。その申し子がまもなく、あなた方の学園に入学してくるでしょう」

 

「時代の申し子……」

 

「ええ。その名は――……」

 

フェリーチェはそのことを知っていた。ウイニングチケットは自分たちの世代に代わる次世代のウマ娘の台頭を知らされ、複雑な気持ちになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――タマモクロスはかつての現役時代、早期に引退せざるを得なかったことの裏返しか、一時帰還の滞在中、後輩たちとの模擬レースの相手を引き受けていた。しかし、能力が全盛期のそれから更に強化されていたため、学園の有力な後輩達の殆ども相手にならない強大ぶりを見せた――

 

「タマモ先輩、何故、引退したんです?」

 

「足が限界やったんや…。今の技術じゃどうこうできるものでもなかったのもあるし、知り合いのおっちゃんが倒れてな…。それでなぁ」

 

その模擬レースを見ていたサイレンススズカにはぼかしたが、その知り合いが亡くなった事、その遺族に自分の早期引退を強く責められ、ライバルのオグリキャップがショックで不振に入った責任を問われるなど、不運な時期があったのは示唆した。その反省で、ドリームシリーズの選手として現役に戻ったのである。

 

「うちも……病気にかかりよってなぁ。それが治ったのは、オグリのキャリアが後半に入った頃なんや。悪いことしたと思っとる。だから、現役に戻ったんや。これはオグリへの償いやと思っとくれ、スズカ」

 

タマモクロスも母親の死などが重なり、ジャパンカップ後はレースへの情熱を失い、自身の母の突然の病死、自身の病気への罹患(現在は完治)を決定的要因に、ターフを去った。それがオグリに強い精神的悪影響を及ぼしたのは痛恨の極みだった。

 

「タマモさん、お迎えに上がりました」

 

「おう。荷造りするさかい、待っときや」

 

「わかりました」

 

航空自衛隊の制服を着た少女がタマモクロスを迎えに来た。調である。彼女は日本連邦空軍の軍籍があるため、他世界では『航空自衛隊の二尉』で通している。

 

「あなたは?」

 

「月詠調。航空自衛隊の者です。彼女らの合宿先での警護は私どもが行っております」

 

サイレンススズカに自分の身分を説明する調。自衛隊の制服姿は珍しいが、公職についているので、着る時は着るのである。

 

「どうして、自衛隊が?」

 

「貴方方の存在は他の世界のあらゆる国家、機関にとり、興味本位も含めての研究対象になり得ますので、私どもが警備しています。本来なら警察の仕事なのですが、相手が警察では対処不能な装備を持ち出す事もあり得ますので、さる政府高官が総理を説得しまして」

 

さる政府高官というのはぼかした言い方だが、実は扶桑政府の中枢部にいる重臣たちが日本の総理大臣を説得したのである。野比家周辺は警察では対処不能な重犯罪も多発しているため、自衛隊が対処するしかないという現実がある。そのため、航空自衛隊が数的主力である『Gフォース』が野比家周辺地域の治安維持の代行に正式に就いた。批判はあれど、戦闘機も落とせそうなガトリング砲を持ち出す犯罪者に拳銃と警棒一本で立ち向かえと言うのは、戦中のバンザイ突撃と何ら変わらない。そのため、自衛隊の通常指揮系統からは外れている『Gフォース』にお鉢が回ってきたのである。

 

「こう見えても、防衛大は出ていますので、20の後半です」

 

「それにしては若く見えますよ?」

 

「先祖代々の童顔なもので」

 

と、それらしく言い繕う調。見かけは出奔時とあまり変わっていない。元から童顔であった事もあるが、肉体的加齢と無縁になったためもあり、第三者からは未だに『10代半ば』に見えると言われるくらいに若々しいが、精神的には既に30代相当に達している。その反映で、物言いは大人の女性のそれである。とはいえ、肉体的には若々しいため、他の世界で名乗る場合には、申告する年齢を『23~25の間』ということにしている。嘘も方便というやつだ。ウマ娘世界の者たちは基本的に、深く関わる者、そうでない者に分かれている。更に、戦争には基本的に関わらないという方針のため、ナリタタイシンとゴールドシップ、トウカイテイオーは思いっきり例外的な存在なのがわかる。

 

「マルゼンスキーさんからのスペシャルウイークさんへの伝言を預かっています。あなたからお渡ししたほうがいいでしょう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

調はやることをすます。本当なら、ウマ娘世界を見て回りたいが、前線への召集もかかったので、そうもいかないのだ。

 

「すまんすまん~。クリークから、オグリ宛のおにぎりを渡されてしもうての」

 

「うわっ……なんですかこれ」

 

「オグリは、よく食いおるからのぉ。あれでも、現役時代から減ったほうやで」

 

『え!?』

 

「二人でハモんなや…。オグリは笠松時代から食いしん坊でのお。笠松の分校の貯蔵庫をすっからかんにしおった事もあるんや。中央もそれで貯蔵庫を増やしたんや。オグリが全盛の頃はそれも危ないくらい減りよってたけどな」

 

タマモクロスはオグリキャップはキャリアの全盛期に『トレセン学園に襲来したブラックホール』と裏で言われるほどの勢いで食べまくっていた事、引退後はレースでエネルギーを使うことも殆ど無くなったため、最近は太り気味疑惑がある。とはいえ、処置を受けた後は全盛期の走りに戻ったため、ゴールドシップとほぼ互角のスタミナに戻っている。調も、オグリが滞在中に大食いチャレンジ荒らしをしているのを目撃していたため、タマモクロスの言うことは信じられないようだ。

 

「なんの冗談ですか?」

 

「オグリの大食いに関しては、ジョークじゃないで。未だかつて、オグリを超えるのはおらへん」

 

調が真顔で聞いてきたので、タマモクロスは本気で答える。オグリキャップの大食いは全盛期に比して落ちたとはいえ、未だにタイキシャトル、スペシャルウイークの更に倍以上の胃の容量を誇っている。全盛期には、笠松のトレセン学園分校の食料庫をすっからかんにし、料理長を恐れさせ、中央移籍後も増設が行われたという逸話を持つ。

 

「タイキやスペちゃんも、オグリ先輩には及びませんでしたからね…。オグリ先輩は合宿先で何を?」

 

「暇な時は大食いチャレンジを荒らしとった。この間、100人前相当の中華鍋を数分でたいあげて、店主の心を折りよった…」

 

ウマ娘は上位の者では、高速巡航中の自動車と同じ速さとなる。従って、それを食物エネルギーで賄う以上は必然的に大食いとなる。そのため、メジロマックイーンやナリタタイシンのような『少ないエネルギーで長距離を走れるウマ娘は大変に貴重である。オグリは歴代屈指の実力者であったが、そのエネルギーを補うのに必要とされる食事の量は膨大。物の例えだが、オグリなら、五トントラック一杯分を一〇分で食えるという言い伝えが残るほどだ。

 

「オグリさんって、バケモノですか?」

 

「怪物や。ターフの上でも、大食いでも。あんたの年齢じゃ、知らへんやろうからなー。オグリが現役ん時の世間のフィーバーを」

 

オグリキャップは時代を作ったウマ娘(競走馬)であり、ハイセイコー以上に世間から愛され、その死に涙した人間も多い。オグリキャップは平凡な血筋から突然変異的に生まれた名競走馬であり、ウマ娘であった。同世代で最強の一角を担い、落ち目と見られていたはずの有馬記念で有終の美を飾ってみせたという伝説。調もそれを知ったのは、のび助(のび太の父・ノビスケの祖父)がある年の有馬記念を見ていて、オグリキャップの往年の勇姿を思い出し、皆に『若い頃のいい思い出』と思い出話を語った時のこと。タマモクロスやサイレンススズカにはつい最近(エアグルーヴとサイレンススズカが入学するちょっと前の時期がタマモクロスやオグリキャップの全盛期にあたる)のことだが、競馬にまったく興味がなく、野比家に来た時で既に2000年代であった調にとっては、オグリキャップの全盛期は遠い昔のことだ。サイレンススズカは不思議そうだが、調当人は図星なので、苦笑交じりであった。

 

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