ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百八十九話「幕間その33 1949年の状況と、ディープインパクトの台頭」

――扶桑陸軍・近衛師団は史実の宮城事件を鑑み、徹底的な解体の予定であった。だが、扶桑の人々が度重なる反乱で警察を宛にしていなかったことで組織の存続を願ったため、結局は皇宮警察の拡充と近衛師団の連隊への縮小改編となった。これは日本と扶桑が妥協しあった結果であった。近衛連隊は儀仗目的の部隊に完全に特化する案もあったが、連隊への縮小と引き換えに、緊急時に皇室の指揮で動ける護衛という位置づけに落ち着いた。事変当時のクーデターの記憶が色濃い扶桑国民への配慮であった。空軍は陸海の良質な将校・下士官らを集めて構築されたが、宇宙艦艇も有したため、事実上の緊急展開軍の地位を獲得。未来兵器の配備比率が最も高い軍隊となった。怪異との交戦前提の軍隊から人同士の戦争に対応できる軍隊へ脱皮しつつあった。ウィッチ兵科はこの頃に兵科として維持するほどの価値はないと見なされたものの、雇用の問題などが絡み、結局は太平洋戦線の終結後に議論するとされた。ウィッチ達が一時は嫌悪していた第二世代理論に縋ったのは、超音速機相手に通用する火力を求めた結果である。そこに歴史の皮肉がある――

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦の防衛戦略は基本的に『後退配備・内陸持久主義』である。この防衛ドクトリンは一年戦争に至るまで受け継がれる。リベリオン軍の対人戦争ドクトリンは全く洗練されていない前近代的なものを手直ししたものに対し、日本連邦は史実の多くの戦争で洗練・完成されたドクトリンであるため、リベリオン軍はウィッチ世界最高の医療技術とウィッチによる治療体制がなければ、一回の戦闘で万単位の人間が死傷していることになる。大日本帝国陸海軍との差はそこにあった。更に、常に三倍から五倍、ひどい時は十倍もの敵軍を撃退せねばならない都合上、兵器の質を強化せねば追いつかない日本連邦は当時最強の重戦車である『コンカラー』、『ファイティングモンスター』(実はM103重戦車に正式な愛称はなかったが、日本の自衛官がそう呼んでいたのが逆輸入された)をMBTの配備までの繋ぎを目的に多用した。リベリオン軍は対抗すべく、戦車の更新を急いだものの、ウィッチ閥や戦車駆逐大隊の反対で新式戦車の配備は遅延。上層部がM4中戦車の使用が正式に差止めた時には、戦車隊の壊滅はざらにある出来事になっていた。M26重戦車は太平洋戦線では不評で、足回りを改良したM46がようやく主力になりつつあったが、M4中戦車が依然として数的主力であり、数を減らしつつも、戦車戦になれば『壊滅』は日常茶飯事だった。これは日本戦車隊が『全滅』するのが当たり前であった史実の裏返しであり、コンカラーやM103重戦車に戦車大隊が蹂躙され、無為に屍を晒すことになった。中戦車であるセンチュリオンにも伍することができずに壊滅していく姿は同情を誘うと同時に、チハやチへと言った以前の国産戦車との差を自覚し、自戒する戦車兵は多い。また、人型兵器も公然と使用されており、コンバットアーマーやモビルスーツは戦場ではよく見かける兵器となっていた。捕虜になった敵兵はコンバットアーマーやモビルスーツを見て、『こんな大きいがあるなんて、卑怯だ』とぼやき、扶桑兵を笑わせたという――

 

 

 

 

 

 

 

――一方、航空戦力はクーデター後の人事処分、機材の入れ替えで、佐官級の司令官・参謀の極度の不足、機材の不足に常に悩まされていた。これはクーデターで大量の育成途上の人員、量産検討中の試作機を失う羽目になった上、機材のジェット機への世代交代で古参パイロットも退役していったことが響いていた。日本側がターボプロップ機化した日本型レシプロ戦闘機などを一線で使うのを選んだのは、それら古参パイロットの囲い込みも兼ねていた。また、怪異が人々の遺伝子に刻まれている『恐怖』の感情を読み取り、『怪獣型怪異』を生み出す危険が懸念された事もあり、人型機動兵器の導入は急務とされ、急速に配備が進んだ。そのため、64Fがスーパーロボットをも運用することに反対論が出ることは無くなった。サイコフレームとバイオセンサーも結局は道具にすぎない。扱う者次第でいくらでも使い道はあるのだ。遠征は表向きは『人型機動兵器の評価試験』も兼ねているわけで、プリキュア5の世界はその世界の人々の知らぬところで『戦場』になっていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

――こちらはウマ娘世界。テイエムオペラオーは精神的に打ちのめされた状態でレースに出走したことにより、絶好調であったアグネスデジタルによって、最終的に自身の大記録達成を阻止されてしまった――

 

 

「ば、馬鹿な……このボクが……負ける……!?馬鹿な!!何故だ!?」

 

取り乱すテイエムオペラオー。前年度の王者かしらぬ無様な姿であった。

 

「まさに、心ここにあらずでしたよ、オペラオーさん。そんな状態じゃ、あたしには勝てませんよ」

 

実生活でオタクであるアグネスデジタルは、ゴールドシップを含めて、周りから常に『イロモノ』扱いされているが、実のところ、その実力については本物である。テイエムオペラオーとドドウがレースを支配する時代へ引導を渡したのは彼女であった。イロモノ扱いされてきた彼女だが、ゴールドシップに言わせれば、『あたしと同等以上の実力を隠してやがる……』との事。ゴールドシップは既に強豪として名を馳せていたため、その重みは予想以上であった。

 

 

 

 

――覇王・テイエムオペラオー、オタクウマ娘『アグネスデジタル』によって遂に討ち取られる!!――

 

 

 

 

 

翌日のスポーツ新聞にそんな見出しが踊り、テイエムオペラオーの才能の限界を論う記事があちらこちらに載り、心が折れたオペラオーはこの日以後、長い不振を迎え、檜舞台の主役の座から転落していく。代わって、アグネスデジタル、マンハッタンカフェ、アグネスタキオンらの世代が台頭してゆく。そして、顕彰ウマ娘による興行としか見られていなかった『ドリームシリーズ』が生まれ変わったことの象徴として祭り上げられたのが、『蘇りし白い稲妻』との煽り文句が踊るタマモクロスであった。タマモクロスの往年の実力が蘇った事は『ウマッター』(ウマ娘世界のTwitter)に上がった動画などで知れ渡っていた。

 

――『いったい何故、タマモクロスは昔年の力を取り戻したのか』――

 

 

学園のウマ娘達が上げた模擬レースの映像には『快調に飛ばすテイエムオペラオーをタマモクロスが往年のように、その身に稲妻を纏って抜き去る』様子が撮影されており、シンボリルドルフ引退後の第一世代(実は親友のオグリキャップはタマモクロスの一期下の世代だが、世間では同世代扱いである)ウマ娘の中で最速を謳われた実力を存分に見せている。その走りは自身の黄金時代と比較しても、遜色ないもの。速力については、サイレンススズカとほぼ同レベルに達しているなど、却って向上している。

 

「タマモクロスは何故、往年の走りを取り戻したのだ?ゴールドシップ」

 

「異世界の進んだ医療のおかげだ。それだけいりゃ充分だろ」

 

「ゴルシ、オペラオーさんだが……」

 

「オジキか。どうだった?」

 

ディープインパクトが入ってきた。なんと、ディープインパクトは新入生でありながら、『ゴールドシップの前世での叔父であり、2000年代半ばでの日本最強の競走馬』という箔を持つため、ゴールドシップの推薦で生徒会の次期メンバーに選ばれていた。

 

「ありゃダメだな。完全に心が折れてる。アグネスデジタルさんにとどめを刺されたな。もう、あの人の時代は終わった」

 

「あのオタク野郎、実力は本物だからな。オペラオーはこれから、坂を転げ落ちていくだろうな…かわいそうに」

 

「貴様にしては、ずいぶんと直球だな?ゴールドシップ」

 

「事実だろ、エアグルーヴ。これからはオジキの一個上のキタサンブラックとサトノダイヤモンドの二人が台頭していく。順序が入れ替わっちまったな、オジキ」

 

「ああ。甥に先を越されるとは」

 

「待て。お前らの会話を聞いていると、頭が混乱しそうだ」

 

「あんたの生まれたばかりの妹のアドマイヤグルーヴだが、前世だと、あんたの子だ」

 

「!?★※」

 

「おまけに私の従兄弟でもある。それに、あんたの孫にあたるドゥラメンテが強く育ってる。怪我で早期に引退をせざるを得なくなったがな」

 

「更にいえば、そのまた子供のタイトルホルダーが菊花賞取ったぞー」

 

「そりゃ朗報だな」

 

ディープインパクトはゴールドシップより目上の立場(前世でのおじ)である。エアグルーヴは自分の三代後の子孫の活躍を聞かされる形となり、大いに狼狽え、言葉も出ない。

 

「ゴールドシップ、お前。何のために戻った?」

 

「オジキに会うためさ。電話口だけじゃ、真偽の確かめようがないからな」

 

「フッ、そういうとこは気の回る奴だ。お前の親父のステイによく似ている」

 

「親父はスペのしっぽ噛んだことあるって聞いたけど?」

 

「ステイの奴は気が荒いからな」

 

「でもよ、言うべきかね?」

 

「ほら、エアグルーヴの子孫が別世界で菊花賞勝ったこと」

 

「さっきのタイトルホルダーだろ?」

 

「待て!先程から、何を…、何のことを言っている!?」

 

「あんたのかわいいひ孫だよ、エアグルーヴちゅぁ~ん」

 

「……ひ……ひ孫だとぉ!?」

 

ゴルシの繰り出した『ひ孫』というパワーワードに、思いっきり腰を抜かし、狼狽えるエアグルーヴ。ステイゴールドはトレセン学園に来た際はとある事情で『キンイロリョテイ』という偽名を使ってきたが、ゴールドシップとの接触後は本名に戻している。ゴールドシップの史実での父である通りに気が荒く、シリウスシンボリの側近とのこと。エアグルーヴは次々と突きつけられる事実に頭の処理が追いつかず、史実での関係を前提に会話をするゴールドシップとディープインパクトに置いてけぼりにされていた。

 

 

 

 

 

 

――黒江はその飽くなき向上心と貪欲なまでの闘争心、人心掌握の巧みさが売りだが、それが仇になり、成り行きで『敵を作る』ことも多い。自衛隊で立身出世するのにも苦労を伴ったのは周知の事実だが、元の世界では『実戦に出れる年齢ではない』とミーナに早合点され、冷遇されていたし、シンフォギア世界では仕方ないとはいえ、切歌に命を狙われ、響との衝突を避けるためと、マリアの願いに応えるためとはいえ、他人をしばし演ずる羽目になるなど、ここ最近の出来事だけで本を書ける勢いであった――

 

「あーやが出かける前だから、聞くけどさ」

 

「なんだ?」

 

「本当の姿って、どういう時に取ってんの?」

 

「式典の時とかだな。普段は仕事の都合で、調の姿を借りてることが多い。あいつはシンフォギアを纏う姿は有名でも、普段の姿は知られてないからな。俺の素はタイシンみたいな感じだよ」

 

「へ~」

 

トウカイテイオーはこの日、生徒会長の後継に指名されたことを正式に報告するためのビデオ撮影があったため、制服姿であった。黒江は普段遣いの容姿は仮のものであること、素の容姿はナリタタイシンに近いイメージであることを教える。素でも充分に美人だが、仕事上の都合で別人の姿を取るしかないのも、『大組織で若くして出世してしまう』ことの弊害であった。

 

「軍隊みたいな大組織で、若くして出世してしまうって事は敵も多くなる。いくら有能でもな。俺は戦場で手柄を立てて出世してきたから、余計にな。どっかの銀河帝国の皇帝だって、暗殺されそうになったこと多いだろ?俺本人だけならいいが、周りに危害が及ぶからな」

 

「へー」

 

「お前もこれから大変だぞ?生徒会長の称号に恥じない走りを見せねえと」

 

「先々代からも釘を差されたよ。シンザンさん以前は、ダービーさえ取れてれば良かったそーだけど」

 

「その頃とは時代が違うだろ。おそらく、お前が非サンデーサイレンス系のウマ娘では最後の生徒会長になりそうだしな」

 

「ブライアンは史実だと、晩年は成績が落ち込んでる上、三冠取った時が絶頂だったもんねぇ」

 

「おい、言わせておけばだな。」

 

「ブライアン。生徒会長って柄でもないっしょ?それに、號と翔に手も足も出ないじゃん」

 

「あいつらはどうなっている!?三冠ウマ娘なんだぞ、私は!?」

 

「そういうの、噛ませが言う台詞だぜ?」

 

「ぐぬぬぬ……」

 

「ゲッターのパイロットが普通の人間で務まるか?あいつらは選ばれた超人さ」

 

一文字號と橘翔はゲッターチェンジに耐えられ、なおかつ爬虫人類を素手で叩き殺せる豪腕の持ち主。特に號は、爬虫人類でも頑丈さで鳴らすチリュウ人をも撲殺できるという流竜馬の本気に余裕で耐えられる肉体を持つ、元・闇プロレスのチャンプ。ガンダムファイターもその気になればこなせる。ウマ娘は一般的な人間に比べれば、圧倒的に能力が上だ。だが、次元世界全体を見まわせば『かわいい方』に分類されるのだ。

 

「ウマ娘に人間が勝てるわけがないって、誰が言った?」

 

「エイシンフラッシュだよ」

 

「なら、エイシンフラッシュに会ったら、こう言っとけ。そういう高慢と偏見は身を滅ぼすってな。んなだから、ジャスタウェイとオルフェーヴルにボロ負けすんだよ」

 

黒江自身、ウィッチの力を超えるモノに出会うことで、ウィッチであることでの高慢を捨てた経験から、そう断言する。改造人間になろうと、その性能に溺れたが故に、高性能怪人が仮面ライダーに敗れ去るケースは多い。つまりは単純な基礎能力差に驕っていると、今度は自分を超える者に力の差を思い知らされるという因果応報な目に遭うと。実際、競走馬としてのエイシンフラッシュは日本ダービーと天皇賞の勝利経験があるが、騎手の乗り替わりも激しかったり、オルフェーヴルに敗れ去ったりするなど、負けたレースのほうが多いことでも知られている。

 

「どういうことだ?」

 

「史実だと、オルフェーヴルって奴に負けてるんだよ、エイシンフラッシュは。そのオルフェーヴルでも、凱旋門賞は勝てなかったがね」

 

「ブライアンの二代後の三冠馬だね」

 

「そうだ。ゴルシの悪友にジャスタウェイがいるが、あいつにも六馬身もちぎられて、フルボッコされてるからなぁ」

 

エイシンフラッシュは散々な言われようであった。トレーナーにしか言っていないはずの一言が『ウマ娘の高慢と偏見』の例にされていること、エイシンフラッシュの前世での戦績は、ダービー馬としては『強くない』部類に入ってしまうことを解説されてしまうのは、本人が聞いたら卒倒ものだろう。

 

「エイシンフラッシュが聞いたら、卒倒もんだよ。あーや、なんで知ってんの?」

 

「ゴルシが『ジャスタウェイからきーた』とか言ってたんだよ。ジャスタウェイ、実際にエイシンフラッシュをちぎった経験あんだろ?」

 

「うん。前に『六馬身はぶっちぎった』って。エイシンフラッシュって、ダービーウマ娘だよね?」

 

「一応な。だが、ジャスタウェイはそれ以上の器だ。史実でも、安田記念、天皇賞・秋、ドバイのレースを勝った逸材だ。そこで既にエイシンフラッシュを上回る。だから、俺が身を滅ぼすって言ってんのは、『力に頼る者は力によって滅ぼされる』って格言があるからだ」

 

エイシンフラッシュがトレーナーに言ったという『ウマ娘に人間が勝てるわけがない』という一言。本人の預かり知らぬところで、『高慢と偏見』の見本のように言われてしまっている上、エイシンフラッシュ自身が実力で格上(ただし、その当時はまだ頭角を現す前であり、エイシンフラッシュはそれまで歯牙にもかけなかったが…)のジャスタウェイに敗れ去っているという事実も追い打ちになっていた。

 

「エイシンフラッシュは自分の走りに自信があるようだが、ジャスタウェイに六馬身もちぎられて負けてる。ジャスタウェイは競走馬としては、当時の最強牝馬『ジェンティルドンナ』すら倒した経験を持つからな…。それを知ってるからこそ、高慢と偏見があるって言ったんだ」

 

「たぶん、ジャスタウェイを侮ったあげくに、惨めに負けたのは引きずってると思うよ。前にシービーも言ってた。ブランクがある上に、全盛期の三分の二の速力も出せないはずの自分にも勝てなかった事があるって。だから――」

 

「あいつはムラが大きすぎるんだよ。端正な体をしてる割に、負けレースのほうが多かったっていうし。まー、擁護するなら、ジャスタウェイは秋天で、同世代最強の牝馬として鳴らしてたジェンティルドンナ、そして、その前の年に勝っていたエイシンフラッシュを四馬身はちぎって、余裕で勝った猛者だ。格が違うよ、格が」

 

ジャスタウェイはこの時点では、GⅠ六勝ウマ娘であるゴールドシップと並び称される、れっきとした一流のウマ娘であり、途中加入ながら、スピカのエース格の一人として君臨している。史実を知る黒江からも『格が違う』と断じられるほどのポテンシャル差がエイシンフラッシュとはある。

 

「そこまでいうのか」

 

「オルフェーヴルやボクみたいに、自分は強くても、子孫はまるで走んないってのもあるからね。オグリ先輩もそうだし、かいちょーとボクの血筋も……」

 

強い馬の子孫が強いとは限らない。親の才能が受け継がれ、名声を得たケースは、シンザンのミホシンザン、シービークロスのタマモクロス、マルゼンスキーのサクラチヨノオー、トウショウボーイのミスターシービーなどが有名だが、多くの場合、子には親の才は引き継がれない。オグリキャップの子や孫たちが大成できなかったり、『BNW』の子孫は絶えていき、曾孫がGⅠ馬であるウイニングチケットの系譜以外は絶えている事、近年の三冠馬であるオルフェーヴルも、子に親の才が引き継がれていない。テイオー自身、種牡馬としても、ルドルフより落ちる成績しか出せぬままに、サンデーサイレンス旋風に飲み込まれていった事は強い悔恨であるのか、自嘲気味な物言いであった。

 

「エアグルーヴはいいよ。子もそこそこ強いし、孫はドゥラメンテ、ひ孫はタイトルホルダーだよ?」

 

「あの血筋はエアグルーヴの親の代から強いからなー。21世紀まで輝いてる血筋だ」

 

エアグルーヴはひ孫のタイトルホルダーに至るまで、コンスタントにG1馬を輩出してきている。ダイナカール以来、親子五代でのG1勝利を達成し、良血の血統として、21世紀にも健在である。テイオーは母方の遠い先祖のヒサトモ(日本初のダービー優勝牝馬)の力がルドルフの血と合わさった結果、突然変異的に蘇り、テイオー自身の資質と合わさり、栄光をもたらしたという皮肉がある。それ故、自分の子は優秀ではない者のほうが多い。テイオーはその事を強く気にしており、21世紀までコンスタントに優秀な子孫を輩出してきたエアグルーヴの血が羨ましいようだった。実際に、テイオー自身の子孫で、G1優勝経験持ちはたった数頭のみ。自身の後継種牡馬になったのはクワイトファイン。テイオーの末子のキセキノテイオーは『見世物』代わりにされているのを鑑みると、エアグルーヴがどうしても羨ましくなる。テイオーも母方でヒサトモの末裔であるため、ある意味では長い年月を重ねて生み出された『ヒサトモの血統の改良の集大成』であるが、テイオーは父と自分の能力を子に伝えられなかった。そこがコンプレックスになったのだろう。

 

「三冠馬で、子孫が21世紀まで続いてるのは?」

 

「有名なのは、ディープインパクトだな。オルフェーヴルは子供が走んないと来てるし、ディープインパクトはサンデーサイレンス系だから、子も後に三冠馬になったしな」

 

「ふむ…。いくら異世界とはいえ、エアグルーヴの四代後の子孫まで名前がわかるとは。あいつ、うろたえるぞ」

 

「自分の血がルドルフの血統を差し置いて、すごく繁栄しているから、複雑になるだろうよ」

 

「ボクの末の子なんて、一種の美談みたいにされてるけど、ある意味じゃ、見世物にされてるようなもんさ。長年、乗馬だった子がだよ?ボクの血を継いでるからって引っ張り出されて。勝てるわけがないのにさ。それでも、あの子は頑張ってる。だから、シニア戦線を戦い抜くつもりになったんだ」

 

異世界での末子『キセキノテイオー』の境遇に同情したトウカイテイオーは、匿名でいくらかの寄付金を送りつつ、自身はレースへの本格復帰を目指している。

 

「今度はいつ会える?」

 

「それはショッカーに聞いてくれ。だが、勝つしかないのが、俺達の仕事だ。今度は当分の間は帰れんだろう。部下を時々、行かすから、その時はよろしく頼む」

 

黒江は戦場に赴くことを改めて告げる。今回は正式な赴任であり、当分の間は戻れない。ショッカーに代表される悪の組織はTVよりも遥かに強大なのだ。

 

「そうそう。ナリタタイシンだが、あいつ、キュアフェリーチェと試しに入れ替わってるぞ」

 

「へー、あのタイシン先輩が……って、ブライアン?」

 

「ダメだ、腹がよじれて痛い……は、はははは……」

 

タイシンの子供の頃を知っているナリタブライアンは笑いをこらえきれずに、盛大に吹き出す。ブライアンは普段はクール寄りの粗野なキャラなので、顔を真赤にする勢いで大笑いするのを堪らえようとしたようだが、無駄な努力であった。

 

「あいつ、普段はつっけんどんだが、意外にかわいいのに目がなくてな。姉貴のダチだから、一時は敬語を使って接してたんだが、今は親戚同士でタメ口さ」

 

「プリキュア、そっちにもあるのか?」

 

「ある。ウチの学園の後輩のカワカミプリンセスがそのフリークと言おうか、オタクと言おうか…。鍛えすぎて、学園の建物を盛大に壊しまくる。ギャグ漫画のようにな。それで、エアグルーヴの悩みのタネになっている。たしか、スマホにその時のやりとりの録音が……」

 

『カ~ワ~~カ~ミぃ~~!!』

 

ナリタブライアンはエアグルーヴの最近の悩みのタネが後輩のカワカミプリンセスが施設を壊しまくることであり、その際のやりとりが『ナースのお仕事』を連想させるようなものであったことをスマホの音声再生で教えた。

 

「90年代に流行ったドラマみたいなやりとりだな?」

 

「あんたもそう思うか?」

 

「イントネーションも完璧だぜ。カワカミプリンセスは子供の頃に、プリンセスプリンセスを見てたクチだな、こりゃ。キュアフローラは喜ぶだろうがな」

 

「いるんだ、キュアフローラ」

 

「つい最近な。まだ療養と訓練中で、仕事には出せんがな。一応、アラモード以前なら、殆ど揃ってることになる。事実上のリーダーがSSと5の両巨塔で、その補佐がスイートとフレッシュ、裏方メインが魔法つかいだな。戦慣れしてる代だから」

 

「へー」

 

その物言いから、プリキュアオールスターズの内、最も戦い慣れしている『初期世代』が戦線の主力を担い、後輩らはその補佐役がメインであることはトウカイテイオーも察した。とはいえ、必ずしも、その通りではない事もある。SS、あるいは5の主力が不在の時の主力は第二世代との混合チームになるからだ。

 

「ボクたちも、レースでいいとこ見せられるようにしないとね」

 

「ああ。ゴルシの言う、ディープインパクトなどという青二才に舐められてたまるか。『三冠の冠』は錆びついていないことを思い知らせてやる。たとえ、相手が歴史的には私の後継になろうかというヤツだろうがな。サンデーサイレンスの血統だかなんだか知らんが、私にも意地がある。ブライアンズタイムの娘としてな」

 

「となると、史実でのハヤヒデの父親のシャルード、お前ら姉妹の共通した母親のパシフィカスはブライアンズタイムに統合されてることになるのか?」

 

「端的に言えば、そうなる。おふくろの名はブライアンズタイムだ」

 

「おいぃぃぃ!!ややこしすぎだ!競馬ファンが腰抜かすぞ!!」

 

ブライアンズタイム、それは史実でのナリタブライアンの父。ウマ娘世界ではウマ娘である都合で、ビワハヤヒデとも実の親子である事から、史実では別人である『パシフィカス』、『シャルード』の役目も統合されていると思われ、そこが史実の血縁との差異だろうと、黒江は考えた。そして、ナリタブライアンは史実では出会うこともなかった、自分の死後に『三冠馬』として君臨したディープインパクトとの対決に備え、静かに闘志を燃やすのだった。

 

 

 

 

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