――ラプラスの箱も、その呪いは過去の人間達によって、噂が独り歩きして生まれたものに過ぎないことが暴かれ、ジオン残党が期待した効力は発揮せずに終わった。その事も、ジオン残党が『邪悪な過激派』へ堕ちた理由である。地球連邦が星間国家へ発展し、銀河の星々へその版図を広げていく時代になると、ジオニズムも過去の遺物と化していく。それを嫌ったジオン残党は遂に『過去にさかのぼって、連邦の重要人物の先祖を殺す』という重大な罪を犯していく。ジオン残党に残された最後の抵抗はあまりにも重大な罪を犯すものである。ノビスケはそのターゲットにされた形だが、流竜馬の送り込んだ『ゲッターロボアーク』に粉砕されたわけである――
――黒江は出立する前に、トウカイテイオーとナリタブライアンに聞いてみた。『軍馬の生まれ変わりはいるのか』と。
「……いたのか?」
「たぶんね。そういう人たちはトレセンには入らないから、トレセン学園の記録には残らないんだよ」
「すると、記録がある限りのウマ娘で辿れるのは、古のレースウマ娘ってことになるのか」
「そういうことになるな。テイオーのこの世界での先祖が、この『ヒサトモ』と血縁があるとは限らないからな。エイシンフラッシュのことだが、あんた、あれは言い過ぎなところもあった。ちゃんと、自分でもフォローはしろよ?」
「ああ。わかってるさ。ジャイアンの一族にジムを経営してる奴がいるから、エイシンフラッシュの鍛え方を聞いとくさ。この戦いが終わったら、ルドルフに言って、臨時トレーナーのバイトでもしてみる」
この言葉を守り、黒江は遠征後の休暇を使い、トレセン学園の補助トレーナー職のアルバイトに『フリーター』という触れ込みで(公務員は兼業禁止なので、一応は伏せた)応募。見事に合格し、その時期に担当トレーナーが通勤中の事故で入院してしまったエイシンフラッシュの再起に一役買うことになる。エイシンフラッシュとはその時に気心の知れた仲となる。また、担当トレーナー達たちとコミュニケーションを取ることで、問題の把握と解決法の模索に役立ち、黒江自身の成長にも繋がっていく。また、黒江の言葉から、剛田家の一族は多くが格闘家、ジムのトレーナー、自衛官、あるいは住職などの肉体系中心の分野で働く者が多い事、小売業界で一定の成功を収めたジャイアンの父、その路線で財を為したジャイアン(剛田武)はむしろ珍しいのがわかる。
「それじゃな。定期便が直に出るし、のび太と合流する手筈なんでな」
「いってらっしゃい~」
「私はスマートファルコンに送る、エイシンフラッシュのフォローの文面を考えてくる。副会長としての仕事をせねば、エアグルーヴがうるさいからな」
ナリタブライアンは無頼的な雰囲気を好むが、全盛期に入る少し前、チームメイトであったルドルフのスカウトに応じ、副会長職に就いた。意外なことに、その任命日はエアグルーヴよリ前だという。無頼然としたブライアン、後に頭角を現したエアグルーヴがルドルフの弱点を補い合ったというのがわかる。また、黒江の真意をそれとなく伝え、緩衝剤の役目を担うなど、ビワハヤヒデと同じ血を引いているところを見せる。
「なんだかんだで、やっぱり姉妹だね」
「おふくろや親父には、そういう方面は厳しく教育されたからな。もちろん、姉貴にもな」
ナリタブライアンはかつて、シャドーロールの怪物という異名で名を馳せた。その異名が一人歩きした感が強いが、実像は肉大好き、家族思い、後輩の面倒見もいいウマ娘なのだ。
「私達は本来、裏方に回る事も考え始める年齢だからな。だが、もう一度、輝けるチャンスが与えられた。そう考えればいい。ルドルフも次のドリームシリーズのレースに勝つことを考えればいいんだろうが、あいつは、お前を後継者に教育することに燃えているからな」
「ハハ……。それはなんていうか……かいちょーに悪いな」
「そう思ったのなら、少しはルドルフを楽にしてやれるようなウマ娘になれ」
「はぁ~い」
ブライアンもなんだかんだで、テイオーの才能を認めていた。骨折の連続でテイオーの心に影が差していた時期には、もどかしい気持ちがあったが、今は出会って間もない時期の関係に戻っている。共通の『目指すべき場所ができた』からでもある。『魂に刻まれた運命』を超え、『その先』に至るため。友情と絆、本人の努力で『運命を超えた先』に至ったサイレンススズカのことは意識せずにはいられなかった。テイオーとブライアンは怪我で不振に陥り、有り体に言えば、世間から見放されかけた時期がある。これはオグリキャップも経験がある。だが、そこから這い上がってきたという自負がある。エイシンフラッシュの再起は『世間から見放されかけた』経験があるウマ娘としては、手助けしなくてはならない事柄であった。
「でもさ、誰かが悪役になるしかないって、どうなのさ?あーや、悪者扱いされるよ、とーぶん」
「私達がやれば、それはそれで、別の問題を引き起こすだろう?ルドルフの辞任は、奴がオグリさんへ昔に言った『中央を無礼るなよ』という発言が原因の一つという噂だ。オグリさん、イナリさんと言った『地方の雄』を引き抜くことで、中央は地方から恨まれたという話だ。私達はターフの上で白黒つけたほうが早いが、周りはそうはいかんからな」
仕方ないが、誰かがファンの不満を代弁しなければ、不満が当人に伝わらない事もあるし、重大な事態と認識出来ない事があるため、どうしても『悪役が必要な時』がある。例えば、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケが査問の際に、事の重大さを強く認識した最大の要因は『ジョージ・パットンの怒り狂う様子』であったように、誰かが辛辣なほどの言葉を浴びせるなどの行為をして、当人に『事の重大さ』を認識させる必要があるのだ。
「私達がちょっと口喧嘩する分には問題はないが、度が過ぎれば大問題になるのと同じだ。昭和末期や平成の始めと違って、この頃はうるさいご時世だからな」
「それは言えてるね」
「これからはマスコミ対応も気をつけろ、テイオー。ちょっとした発言で揚げ足を取られる事は普通にあるだろうからな」
「ブライアンはあまり上手くないもんね、そういう人たちへの応対」
「苦手なんだよ、当たり障りないことを白々しく言うのは。昔、アメリカに名選手だけど、すごく素行が良くなかった人がいたっていう話をアマさん(ヒシアマゾンの事)から聞いた事があってな。姉貴も口には気をつけろと言っているからな」
その選手は野球のメジャーリーグの歴史に燦然と輝く功績を残したが、悪評も大きいことで有名な『タイ・カ○ブ』の事であった。ヒシアマゾンとビワハヤヒデは彼のことを知っていたからこそ、学園入学時は粗暴な物言いであったが、武道を習うことで礼儀正しさを身に着けたウマ娘(オグリキャップの同期)であるヤエノムテキにアドバイスを請い、ナリタブライアンを指導してきたのだろう。
「歯に衣着せぬって奴だね」
「そういうことだ」
歯に衣着せぬ発言は時として、凶事を呼び込む。例えば、サスロ・ザビ(ザビ家次兄。戦前に謀殺される)は妹を鋭く咎めたのが運の尽き、恨みに思ったキシリア・ザビに爆弾で謀殺されている。テイオーも引退を公言してしまったことで、一時的にキタサンブラックと気まずくなった(自暴自棄になって、キタサンブラック手製のお守りを『受け取れない』と発言してしまったため)ため、以後は口には気をつけている。
「ボクも、キタちゃんのおかげで、自分の言葉が相手を傷つける事があるんだって学んだ。かいちょーも、そういう経験があるのかな」
「あいつは当たり障りないことをもっともらしく聞こえさせると言おうか、周囲を動かす力を持つ。カリスマって奴だな。だが、親と兄弟に厳しくしつけられたのと、あまりに強すぎるが故に、同年代に友人がなかなか出来なかった。みんな、『皇帝』だの『最強のウマ娘』などという色眼鏡で見るからな。マルゼンさんや前会長らからは可愛がられていたというが。今のお前のように」
ルドルフはある意味、近接する世代のウマ娘の多くをその俊足で抜き去り、日本の歴代の名ウマ娘の血縁者を『トレセン学園の生徒会長』の座につくのを蹴落とす形で、生徒会長へ抜擢された点が罪とされることがある。シンザン、トウショウボーイ。その二人の血縁者であると同時に、当代の強豪であったウマ娘達(ミホシンザン、ミスターシービー)はルドルフの前に敗れ去り、結果として、ルドルフの引き立て役となってしまった。とは言え、ルドルフが絶対無敵であったわけではない。合計で三度ほどは敗北がある。国内では、カツラギエース、ギャロップダイナ。この二名のみが全盛期のルドルフを下した経験を持つ稀有なウマ娘である。
「あいつとて、国内で二人くらいに負けているし、現役最後の頃の海外遠征は怪我もあって、全盛期の力は出なかった。そこをひっくるめて、評価すべきだよ、ルドルフは。」
「うん。かいちょーはボクが学園に入って来た時、本当に嬉しかったって言ってた。小学校の頃、かいちょーに撫でてもらったの、TVの映像に残ってるのは恥ずかしいけどさ」
ルドルフが全盛期を迎えていた頃のあるレースの後、テイオーは記者会見場に乱入。ルドルフへ啖呵を切るという形で出会い(マルゼンスキーもその場にいた)、ルドルフと知己を得た。小学校在学中は一ファンとして、入学後はルドルフの後継者を目指し(史実を考えると、数奇という表現が似合う)、邁進してきた。ルドルフは自分を純真一途に慕い、自分の背中を追おうとしたテイオーを可愛がった。テイオーも日本ダービーまではその期待に応えられたが、ダービー後の怪我が全てを変えてしまった。
「あの時の怪我がなかったら、かいちょーに誇らしく胸を張れたのにって、時々思うよ。ボクは折れかけたからね。それはマックイーンもだけどね」
「運命の神様って奴は時として、残酷なんだよ。人は持ち上げるだけ持ち上げ、落ち目になったら、イナゴのようにサッと去っていく。怪我でベストパフォーマンスが出なくなることなど、アスリートにはありがちなことだろう?」
「うん」
「世界はある意味、残酷なんだ。あいつ(黒江)も勝てない相手が何人かいて、それで『泣かないために』異能に手を出していったそうだ。私達も、挫折しかけた事はある。せっかく機会をもらった以上は、どこまでいけるか試す。ディープインパクトがなんだ、オルフェーヴルがなんだ、アーモンドアイがなんだ。この心はいつでも、未来に進むために燃えている!」
「トレセン学園の恐ろしさ、新入生に思い知らせようよ、ブライアン!」
「おう!!」
お互いに怪我で不振に陥った経験と、身近な者の跡継ぎを期待されている者としての共通点がシンパシーを感じさせたか、意外なところで意気投合したトウカイテイオーとナリタブライアン。雰囲気のまったく異なる二人だが、怪我を経ての再起の経験があるという共通点が二人を(注・友情で)結びつけた。意外にブライアンもノリがいい(ウイニングチケットや姉の影響か)のがわかる。二人はこの日より、気合を入れ直し、猛然と練習に励み、ゴールドシップの予言した『2000年代以降の活躍馬達の中でも、大物の時代の本格化』に備えていく。先達としての意地もあるが、パワーアップした自身の限界を探る目的も多分にあった。
「そういえば、マルゼンは?」
「マルゼンさんなら、今頃はスペシャルウィークに連絡を取ってるだろう。ゴルシが出かける前にシメたっていうからな」
「ゴルシ、何したのさ」
「お得意のドロップキックさ。それで、マルゼンさんを二日ばかりノックアウトだ」
「ゴルシのあの蹴り、そこまで威力あったの?」
「チタン合金セラミック複合材の壁をぶち抜きやがったからな…。もし、壁で威力が減衰してなかったら、マルゼンさんは数本は確実に折れてただろうよ」
「ひぇ~……」
「今度から、もっと硬いガンダリウムγ合金製に変えるそうだ」
「ぴぇ……すっごーい」
のび太は出立前、ゴールドシップが盛大にぶち抜いた壁を見るなり、『今度からガンダリウムγに変えとこう……』とぼやいたという。つまり、ゴールドシップの蹴りの本気パワーは標準的なジムタイプに使われている『チタン合金セラミック複合材』をぶち抜けるというわけだ。
「しかし、違う世界に来て、やることはトレーニングと自衛の訓練だけか?」
「うーん。この世界の競馬場って、ボクらの世界のレース場と違って、一見のさ、それも中高生くらいの若者は行きづらいっていうか、なんていったらいいのか…ねぇ」
競馬は大人の娯楽であるため、ファミリーで楽しむというような雰囲気はない。数十年おきのムーブメントは起きるが、その中心になった馬が引退すれば、フィーバーは終わるものである。ハイセイコー、オグリキャップといった二世代の競馬ブーム、ディープインパクトの圧倒的レース、ハルウララの頑張り…。三冠などの名誉よりも、時には、馬の生き様が後世の人々の記憶に残る事も多い。オグリキャップの生き様がそうであったように。ある世代の競馬ファンは『ギャルや主婦にも、その名が知られるスター』と、オグリキャップを形容している。引退レースを勝利で飾ったことでも、その名を歴史に刻んだ稀代の名馬。
「こっちの世界のオグリ先輩の引退レースの映像がネットにアップされてるから、それでも見よう」
オグリキャップ。ウマ娘としては『シンデレラグレイ』の異名でも知られた『稀代の傑物』。その引退レースを見、チームスピカの次世代エースとして、チームの物語を紡いだのが、メジロマックイーンとゴールドシップ。タマモクロスから続いた『芦毛最強伝説』の継承者でもある。そのオグリキャップの競走馬としてのレースを二人は目の当たりにする。当時は絶不調で、世間からは『オグリは終わった』と言われるほどであった。その逆風を跳ね返すレース展開をしてのけたのは、言うまでもない。
「運命か……どこまで因果が繋がってるんだろうな。怖いくらいだ」
「確かにね。ボクたちには未来があると信じたいけど、スズカは競走馬としてはだけど、あの時に…。そのことを思うと、ゾッとする。だけど、本当なら、戦うことはなかったスペちゃん達の世代と戦えたから、ボクとしては満足してるよ」
そう。トウカイテイオーやメジロマックイーンは史実では、ゴールドシップから見れば、祖父母の世代であり、スペシャルウイークなどの世代は(テイオーやマックイーンから見て)子供世代に相当する。同じターフに立って戦う事はありえない。(トウカイテイオーの活躍した時期は、父の引退からそれほど経っていない、平成初期の数年。オグリキャップの引退後に現れた『皇帝の後継者』という触れ込みであった。)ドラえもん世界に来てから、サイレンススズカやライスシャワーの『悲劇』を調べたらしい。
「その先を見てみたいってのは、同じようだな」
「まぁね♪」
テイオーとブライアンはこれからは同じ生徒会(ブライアンとエアグルーヴは留任するため)のメンバーである。通常は会長の代替わりと共に、他のメンバーも刷新されるが、テイオーはルドルフの妹分であっても、生徒会のメンバーとしての実務能力に不安があるのも事実である。そこで、エアグルーヴとブライアンはルドルフの頼みもあって、留任した。これはルドルフが生徒会長になって間もない時期はトウショウボーイの命で、マルゼンスキーがお目付け役(エアグルーヴらの入学前には、マルゼンスキーは事実上の副会長でもあった)の地位にあったようなものだ。二人はオグリキャップの史実の引退レース(1990年の有馬記念)をネットの動画で見るための準備を始めつつ、エイシンフラッシュのフォローのための手立てを行うのだった。
――23世紀、その歴史に終止符が打たれようとしていた『ジオン』という国家とその根幹である『ジオニズム』。ウッソ・エヴィンが地球育ちでありながら、ニュータイプとしての素質を開花させたこと、地球連邦という抑えが消えた場合、スペースノイドは手前勝手に争いあい、ついには地球の文明そのもののを『ゴミ』にし、遂には、ターンエーガンダムの手で文明そのものが『埋葬』されたという平行世界の存在が明らかとなったため、人々はもはや当初の理想が消え失せ、連邦への復讐の方便と化していたジオニズムに興味を無くし、徐々にスペースノイドの権利を拡大させていく。(地球連邦という仕組みの中で)宇宙開拓時代を迎え、銀河系、その外へと手を伸ばそうとする(半分は宇宙怪獣の襲撃への生存率を上げるためだが)時代にあっては、地球という惑星と月という衛星のラグランジュポイントに建設されたスペースコロニーにこだわる理由は失せていたのだ。それに抵抗しようとするジオン残党らは最大派閥のネオ・ジオンの解体後も抵抗を尚も続けていた――
――なぜ、シャア・アズナブルやミネバ・ラオ・ザビがジオンの解体を宣言しても、ジオンのコミュニティがその結束力を失わないのか。なぜ、MSによるテロ行為が収まることがないのか?その真の理由が、どこかの小惑星帯に身を潜んでいた、グワーシャ級戦艦(ネオ・ジオンの記録には殆ど残されていないが、グワダンのさらなる後継として、ザビ派が独自に建造したグワダンの発展型戦艦)の二番艦の執務室に鎮座する人物にあった――
「『総帥』、ネオ・ジオンは消え失せ、姪御様もどこかへ隠匿生活に入ったようです。よろしいので?」
「わが姪は表舞台から身を引いたのだろう?しばらく経った後に、我が艦隊は行動を開始する。何しろ、私は公には死人なのだからな、連邦の法規で裁くことはできんよ」
執務室にいたその人物は『総帥』と呼ばれていた。ジオンの歴史の中でそう呼ばれた人物は二人いた。一人はシャア・アズナブル。そして、ギレン・ザビ。その人物はギレン・ザビと瓜二つの容貌を持っている。残党が試みていたクローンによる複製ではない。ドロスが爆散する前に持ち出された彼の死体(頭を撃ち抜かれていた)を残党の一派が白色彗星帝国が残した医療技術で蘇生させたのだ。
――かつて、地球と死闘を繰り広げた白色彗星帝国は人的被害を低減させるため、医療技術が異常発達。死体の蘇生すら可能であった。(ただし、科学的には完璧であろうと、生に執着がなければ生き返る事はないと、ズォーダー大帝の言。)その技術を『統合戦争期の反テクノロジー派が祖である』ジオンがかつての政治指導者の蘇生に使ったという事実そのものが歴史の皮肉であった。また、『死人』であることをいいことに、ジオンの主流派であった『ザビ派』の残存部隊、ティターンズの一部残党などを極秘裏に取り込み、ネオ・ジオンが倒れ、連邦が安心しきるのを待っているギレン。皮肉なことに、内輪揉めで散々、自滅してきたジオン残党はギレン・ザビ(要人Gというコードネーム)の復活で、ネオ・ジオンに与しなかった派閥がまとまっていく他、自分らを切り捨てたことに憤るティターンズ残党などの他組織の残党も協力体制を本格的に引いていく。ミネバ・ラオ・ザビの願いは自身も把握しておらぬ『生き還った伯父』のカリスマ性により、最悪の形で裏切られようとしている――
「本日はデラーズの何回忌だったか?」
「ハッ……本日で……」
彼は蘇生後は多少の人間性を得たか、かつての部下(親衛隊の隊長)であり、自らの腹心であったエギーユ・デラーズを日本風に弔うなど、若かりし頃から日本趣味に傾倒していたことがわかる。また、顔にキシリアに撃たれた傷跡が残っている。姪のミネバ・ラオ・ザビへは情を見せるなど、意外に親族へは親愛がある(ただし、生前は妻との仲は冷え込んでいたが)。これはガルマ・ザビが生前に述べていた通りだ。彼は極秘裏に蘇った肉体で何を為すつもりなのか?それはまだわからない。ティターンズ残党やギガノス帝国残党との取引で、工廠をいくつか火星に持っている。人員はどこから集めたのか?そこも謎があるのだ。また、地球連邦の関心が薄い小惑星帯に如何程の兵力が残っていたのか。彼らはネオ・ジオンではなく、真にジオン公国の残党が中心である事から、正真正銘、最後のジオン残党軍。俗名を『オールズモビル』。この頃から散発的に目撃されだした『旧ジオン軍MSを模した機体』は彼らのもの。ジオンは未だ健在。それを示すかのように、ジオン公国軍の往年の軍旗が小惑星帯に隠れている宇宙戦艦らには掲げられていた。地球連邦軍はまだ気づいていない。ジオン系組織は無数の派閥に分かれていた事、ミネバを嫌い、往年のギレン・ザビを崇拝する派閥がまだ生きていることに。