――M動乱は、大和型戦艦が単艦では負けそうな大戦艦の存在に艦政本部が紛糾した戦であった。艦政本部は日本と連邦を組んだ後は生存性と万能性の向上に主眼が置かれていく現状にため息であったが、海軍予算がどんどん削減されたため、仕方ない変革であった。その中で戦艦に要求されたのが、『単艦で400機以上の航空攻撃を突破できる生存性を持つ事』と、対潜攻撃力の保有であった。これを達成するには23世紀の超技術を使うしか方法がなく、外見を偽装しつつ、超技術をふんだんに使用したバケモノが製造された。仮想戦記まがいの要求仕様は『扶桑に戦艦保有を諦めさせるための一種の実現不能なもので、戦艦を放棄させるための方便』であったが、扶桑が超技術で以て、名目上の要求仕様を見事に達成してしまい、日本側は引っ込みがつかなくなった。また、敵が史実より強い軍艦を持っている以上、既存の戦艦は役に立たない。その懸念と恐怖心が日本側を新戦艦の保有へと動かしたのである――
――51cm砲は後のペガサス級強襲揚陸艦の初期艦に積まれた記録が残るほどのもので、アンドロメダ級のショックカノン砲塔のラインを使って(アースのアンドロメダは超ヤマトを目指して作られたため、大口径砲を積んでいた)製造されたそれが播磨型の主砲とされた。播磨型は大和型の代替を意図されたため、サイズその他は一応は常識の範疇に入るが、51cm砲を三連装で四基以上備える。艦橋その他の外観は大和型戦艦のデザインがそのまま採用されており、日本受けする外観である。量産型であるが、戦闘能力はリベリオンの改モンタナ級を凌いでおり、必要十分である。竣工時は45口径であった主砲もダイ・アナザー・デイ時に50口径に換装されており、元から主砲強化を考慮した大きめのターレットを備えていた――
――日本は敵がモンタナ級を量産してきた事に腰を抜かし、大和型戦艦の強化を提案した。だが、大和型戦艦は扶桑では『ワークホースとしての使用を考慮していない』とし、増産に反対する声が大きかった。だが、呉軍港の襲撃事件で紀伊型『紀伊』が無残な敗北を喫したことで腰を上げ、未来技術での近代化と、その姿での増産、上位艦の開発を決意した。世論が扶桑海軍を動かしたわけだ。長門型『長門』、『陸奥』の代艦として『三笠』、『富士』が生産され、艦隊へ配備されたが、次型の『敷島』共々に移動司令部を兼ねるものであるため、艦隊としては扱いに困る代物であった。播磨型は史実の大和型戦艦が担うはずであった『主力戦艦』としての責を負うものとして、三笠型から機能を削ぎ落とす形で設計されたが、予定数は1949年までには揃い、日本連邦の打撃群の主力を担う存在へ成長した。内部構造も完全戦闘用に洗練されており、扶桑においては『大和型戦艦より遥かに扱いやすい』と評判であった――
――播磨型はダイ・アナザー・デイが実質の初陣であったわけだが、予定通りの打撃力を発揮。数で負ける空母機動部隊を補うだけの活躍を見せ、世代交代をアピールした。しかしながら、皮肉なことに、日米が大戦艦の建造にしのぎを削ることで、欧州諸国は維持費のかかる戦艦の実用的な保有に興味を無くしていった。日本の楽観的な願望は脆くも崩れ去った。ウィッチ世界の欧州の大半が戦艦の世代交代を諦めたからで、日英同盟が戦艦の保有を大規模に続ける必要が生じた。その一方で、空母機動部隊の整備・維持費の高等が起こったため、日本連邦はリベリオンに対抗できる大規模海軍の維持を義務付けられてしまう。空母機動部隊の近代化が遅れた理由の一つだ。旧来の軽空母・特設空母が無用の長物となり、雲龍型も良質の個体のみがコア・ファイター搭載で辛うじて運用されているにすぎず、頼みの大型正規空母は建造が遅れ、更に数は減らされる(それでも、大戦型が寿命を迎える70年代までには、六隻の整備は取り付けたが)始末。更に、ウィッチ達の反対で攻撃型潜水艦の整備にも支障をきたす有様で、戦艦の華やかな活躍は、平時の頭でしか軍事行政を見れない日本の防衛官僚、自分達が『花形』だと自負する扶桑ウィッチの妨害工作などが絡み合っての結果だった――
――ウィッチはダイ・アナザー・デイでのウィッチ・ハンティングとサボタージュで、一気に見る目が世界的に冷却化。更に一部の急進的な将校のクーデターで、扶桑においては『穀潰し』も同然に扱われるまでに堕ちた。自分達の存在意義が近代兵器に奪われるのを恐れた一部のウィッチたちはクーデターを起こしたが、鎮圧された。軍の古参ウィッチたちはそんな世間に嫌気が差し、戦地で戦ういくつかの部隊に分かれて所属するのを選んだ。その内の更に良質のウィッチ達の行き場が64Fであった。特に、実戦経験豊富な生え抜きの職業軍人ウィッチほど、64Fを選んだため、同部隊に腕利きの八割方がいるとまで謳われるに至った――
――1940年代後半に平行世界の芳佳が起こした揉め事は、当人の思うよりも大事になった。芳佳Bは『父との約束』を錦の御旗のように振りかざし、ホテルで隠棲生活に専念する黒江Bと智子Bを糾弾し、これにリーネBも同調した。坂本AとBの仲裁とその後の模擬戦で芳佳Bは叩きのめされたわけだが、本人が『何かやらせてくれ!!』と強く懇願したため、実戦の空気を体験させた後は、顔を隠しての医療班への従事で決着した。芳佳Aは『空の宮本武蔵』と渾名される撃墜王であり、『キュアハッピー』でもあるので、顔が世間に広く知られている上、その時点で少佐になっていたからである。リーネBは美遊・エーデルフェルトが『A世界の自分の転じた姿』であると悟り、リネット・ビショップとしての影武者となった。二人の精神的欲求不満は解消されたものの、A世界の英雄としての自分、あるいは同一存在(圭子はよく似た別人というほうが正しいからだ)に干渉しない選択を取っていた黒江B、智子Bは精神的に傷つけられた。(芳佳Bに悪意がないのも厄介だった。そこを指して、『あいつは父上の言葉を信奉するあまりに、ウィッチの実情を知らなすぎる』と坂本A・Bの双方を嘆かせた。力を失った者へ、自覚なしにあまりに残酷な言葉をぶつけた。つまり、芳佳の『思い込んだら、周りを顧みない』傾向が悪い方向で発露してしまった)治療を兼ねて、二人にもなにかかしらの仕事を与える事が検討されだしたが、A世界では既に司令官級の階級になり、『英雄』として世間に知られている分、やれる仕事を探すのも一苦労であり、芳佳の純朴さが周囲に大きな悪影響を及ぼしてしまった初の例になってしまった――
――芳佳Bが何故、このような真似をしたのか?ミーナBは坂本Aにこのような推測を話した――
――新京(南洋の実質的な州都)市内のホテル――
「宮藤さんは、プリキュアにある種の嫉妬を抱いたのかもしれないわね」
「ふむ」
「あの子たちの力は、ウィッチより多くの点で優れている。それでいて、変身になにかかしらの制限があるわけでもない。力を開放すれば、容易に超音速で飛翔できる。ウィッチが不要って見られるのが怖かったのよ、おそらくは」
「だからといって、無知が原因とはいえ、私の恩人をああも責め立てるのは筋違いだ。おかげで、二人をカウンセリングせねばならなくなった」
「宮藤さんの悪いところは、自分が正しいと思ったことを、無理に押し通すことで生ずる弊害が考えられないところよ。よく言えば純真、悪くいえば、世間知らずなのよね」
ミーナBはレストランで雑談の形で、数年前からの問題を坂本Aと話し合っていた。芳佳は良くも悪くも頑固な一面があり、それが弊害を招いた例は多いと、坂本Aに教える。A世界では、狡猾に上層部と渡り合うやり手の士官となっているが、B世界では、彼女本来の道を辿っている。それ故に、二人を強く責め立てたことの重大さを理解できなかった。坂本Aはわざわざ『みっちゃん』(芳佳の従姉妹の山川美千子のこと)に連絡を取る羽目に陥った。(A世界の山川美千子は進学予定の師範学校が新制大学へ改組されたため、進路に混乱が生じたものの、無事に教育学部へと進んだという)
「あの後、どうしたの?」
「二人のことを宮藤のいとこに解説してもらったりして、どうにか納得させた。私の恩人ということもな。こちらでは現役バリバリのエースだからな。それも、戦域の司令官級の階級でありながら、一戦士に徹している。だからこそだったんだろうが、こちらでの二人は『特別な存在』だ。そこをわからせるべきだったな。それと、プリキュアもな」
歴代のプリキュアの因子があった者は芳佳自身を含めても、精鋭中の精鋭ウィッチが大半。無名であった錦にしても、元は504統合戦闘航空団の一員。ウィッチとしては無名だが、プリキュアチームでは実質的な次席の一人にあたる。その威光も、芳佳Bを焦らせたのは事実だろう。また、ミーナはカールスラントの軍事的凋落に触れた。
「カールスラントの凋落は急激に起こったの?」
「ああ。連合軍にも、殆ど戦力を置いていないほどだ。と、いうより、戦力を外国に売却してしまい、内乱すら自力で収められなくなったがね」
この頃のカールスラントは殆ど『人材派遣センター』と揶揄される状況で、三軍は殆ど有名無名と化していた。戦艦ビスマルクとティルピッツも『軍港の肥やし』と化している上、ティルピッツは数年前の敵の爆撃で着底しているまま。そのため、カールスラント軍は『腐乱死体』と呼ぶべき惨状に陥っていた。ドイツは掌返しで再建を認めたものの、多くの熟練兵や有能な士官が引き抜かれてしまい、三流と笑われるレベルにまで落ちた上、兵器の自力開発能力さえも失われつつある。要するに、急激な軍縮と民需転換の失敗例となってしまったわけだ。ウルスラが帰国した頃には、このような惨状になっていたわけだ。そのため、ストライカー開発の最前線は日本連邦に移ったと言っていい状況であった。
「ウィッチもここ数年で花形から転落してな。その点も、そちらの宮藤が我慢できなくなった理由かもしれんな」
「確かに、ウィッチを通常戦闘機が狩り、それを更に異能が駆逐する様を見せられればね」
ミーナBは顔を曇らせる。ダイ・アナザー・デイでは、ウィッチのシールドを無効化する純鉄の弾丸が使われ、空戦ウィッチの脆さを露呈させた。実弾への備えを捨て、軽量化に邁進していたツケであった。デューク東郷をして『脆いな…』と言わしめるほど、死傷率は高くなり、プリキュアに転じた者も、自前のシールドはアテにしなくなっていった。そして、先立っての戦闘でのキュアドリームの圧倒的存在感。ウィッチ世界では芳佳が戦局を左右してきたが、A世界では『敵味方の異能と超科学の産物が戦況の行方を左右するようになり、戦争はトンキチバトルへと変質した』。異能の中でも複数のモノを組み合わせ、強力な力を行使できる者が英雄となる。そのことに焦りを感じたのだろうか?今となってはわからない。
「仕方あるまい。本来なら、100年近くも後の時代に出てくるような代物が持ち込まれてきてるんだ。ウィッチ本来の技能だけでは生き残れないような状況になれば、必然的に異能か、超科学に頼るしかない。私達はその双方を使うことで、欧州戦線を戦い抜いた」
「貴方はどうなの」
「私は欧州戦線で引退したが、烈風斬に頼る必要はなかったのでな。それに、飛べるだけの魔力は残されたからな」
微笑ってみせる坂本A。基本世界では、引退後はヘアスタイルをセミロングヘアに変えているが、このA世界では前線から退いただけな上に転生者であるため、魔力は維持している。眼帯もしたままである。
「それで、私達の知る姿のままなのね」
「ただし、子持ちだがな。」
「こ、子持ち!?」
「ああ、去年くらいに一人目が生まれてな。この世界じゃ、ウィッチそのものの研究もだいぶ進んでな。結婚して子供を産もうが、魔力は維持される。それで、一気に恋愛も解禁された。私はそのまま、土方と結婚し、子供を生んだ。それだけさ。お前にとっては残酷なようだが、あくまでも、この世界での摂理だ。お前の世界でそうとは限らん」
フォローを入れつつ、年相応の振る舞いとして、飲酒をする坂本A。
「すまんが、明日の帰りはタクシーで駅まで頼む。国の法律が厳しくなってな、飲酒運転はご法度になったんだ」
「わかったわ。ハイヤーでも手配してもらうわ」
「頼む」
大人のディナータイムを楽しみつつも、仕事の事で情報交換をし合う。どこの世界でも、二人は気心の知れた仲。その利点が生かされたのである。
――プリキュアの力は確かに強力だが、それだけでは戦局に影響はない。仮面ライダー三号は遥かに強大であり、二号、V3、そしてパワーアップを重ねたキュアドリームの三人がかりでも、三号は対等に渡り合った――
「なに…!?ぐああっ!?」
三号のパンチが二号のガードを崩し、そのまま強烈なアッパーカットを見舞い、二号を吹き飛ばす。三号は同じ『三号』である『V3』の『V3スクリューキックを弾き返し、エターニティドリームの脇腹へ強烈な蹴りを見舞う。
「げ、ゲホぉぇ……」
蹴りの威力で嘔吐する。それほどの破壊力を持っている。三号は更にベルトの脇にあるつまみを操作し、なんと、二号とV3が視認できない速度に加速し、二人を圧倒しだす。
「これは……クロックアップか!?」
「不味い、今の我々では、この動きに…!」
クロックアップ。所謂、高速移動系統の能力としては究極に近いもので、仮面ライダー555のアクセルフォームが対抗できるともされるが、原理的には怪しいと言われている。昭和ライダーは原理は解析できたものの、自身の加速装置に機能を本格的に組み込むまでの段階にはまだ到達していなかった。そのため、歴戦の猛者である二人も翻弄されてしまう。(昭和ライダーで、クロックアップ系の能力に『素で対抗できる』のは南光太郎/BLACKRXのみだ)
「ここはあたしが!……三号がクロックアップしたのなら、同じ世界に入ればいい!」
ドリームはこれに対抗すべく、自身がZEROとの融合で得た『クロックアップ』と同等の能力を発動させ、三号に対抗した。三段変身で攻撃力と機動力は互角に達しているものの、防御力は先程の通りに見劣りするため、攻撃を受け流すようにする。プリキュアとしての経験の長さがこの時は吉と出たのである。二人は通常の時間を超えた領域で戦った。格闘は三号のほうが優勢ではあったが、三号はあくまで仮面ライダー新一号の純粋な発展型であるオーソドックスな『ホッパータイプ』。V3以降の仮面ライダーたちのように、特筆されるほどの特殊能力は持ち合わせていない。そこにつけ入る点を見出したキュアドリームは三号が猛然と殴りかかる一瞬で『サンダーブレーク』を放つ。イチかバチかの賭けであった。」
『サンダーブレーク!!』
三号は大抵の攻撃に強い耐性を持つが、流石にエレクトロファイヤーよりも威力が高い超高圧電流であるサンダーブレークを叩き込まれてはたまらず、大きくのけぞる。
「今だ!!」
その一瞬を、ドリームは突いた。
「たぁああああっ!!」
乾坤一擲、仮面ライダーカブトの世界における仮面ライダーと同じように、タキオン粒子を蹴り先に込めた、上段回し蹴りを放つ。タキオン粒子を込めた攻撃は、並の金属ならば粉々に砕け散るほどの打撃力であったが、仮面ライダー三号の頑強な装甲は耐えてみせた。攻撃が上手くいって、ほっとするキュアドリーム。小手先の攻撃は通用しない上、仮面ライダータイプの改造人間のタイフーンが炎のエネルギーを吸収できることを知らされていたため、草薙流古武術は『使いたくとも、使えない』上での戦術を取らればならなかった。そのため、クロックアップ中に、乾坤一擲の『プリキュアキック』を当てることを第一としたのだ。
「さっきのお返しだよ、三号。先輩の分も、このあたしが借りを返すよ!」
「ほう、お前は……あの娘の後輩か。これは面白い」
扶桑軍人としては、覚醒の時点で、本当に航空士官学校で黒江の後輩であった。その関係で、のぞみは黒江のことを『先輩』と呼ぶ。デザリアム戦役以降は本当の意味で『先輩』と呼び慕うようになっていたからだ。仮面ライダーストロンガーから、『黒江が聖闘士になったきっかけ』を聞き、その上で、三号へ借りを返したかったのぞみ。別の自分と、キュアハートが学園の皆を助け出すのに必要な時を稼ぐという目的があったにしろ、目的を遂行していた。過去、ウィッチとしては限界域に到達していたものの、常人の域から抜け出せていなかった頃の黒江と違い、ハイパープリキュアというべき『プリキュアを二段階超えた』境地に達していたので、曲がりなりにも、まともに戦えたのだ。二人のクロックアップが終了したのを見計らい、二号とV3もダブルパンチを三号へ食らわせた…。
――クロックアップ能力がある者相手には、事前に動きを予測しての罠を仕掛けるか、広範囲の超高圧電流で動きを止めるか、同じ世界に立つこと。この三つが代表的な対処法だが、かなりの難度を伴うため、同じ世界に入り込むことが手っ取り早いとされる。黒江はシンフォギア世界に転移した時期には、この能力を会得していた。切歌のイガリマのアームドギアを用いた攻撃が通用しなかったからくりの一つである。黒江は、戦友の一文字號が『ゲッターサイト』の使い手であったり、ガンダムデスサイズヘルの記録映像を何度も見ていたり、弟子の一人のフェイトが鎌を使っていた(成長してからは、剣使いに転じたが)ため、鎌の特徴と弱点は既に熟知していた。当時の切歌は実戦経験の浅さ、ギアの適合率の低さ(切歌はフロンティア事変時点では、適合率がLINKERを用いても、天羽奏以下の基礎数値でしかなかった。その上、未熟さもあり、アームドギアの大きさの変更などの高度な戦術は取れるはずもなかった)などの要因で圧倒され通し。二課(後のSONGの母体になった日本政府の組織)の装者たちも、数少ない交戦機会のほぼ全てで圧倒されている。通常の時間の流れを超える領域で動くため、魔法少女事変でも、依然として有効であった。黒江が危機を脱するのに使用し、キャロル・マールス・ディーンハイムも『広範囲の錬金術』を用いないと、『気がついたら、懐に飛び込まれている』と恐怖するほどであった。邪神エリスとの戦いでは『ハイパークロックアップ』を使用したが、神が相手では、速度で互角に持ち込むので精一杯であった。そのため、『一定水準以上の強敵相手では有効にはなりきらないが、神相手にも、意表を突ける方法』として重宝されていた――
――ウマ娘達の中でも、特に走行能力が際立って高い者の持つ『境地』はクロックアップ、あるいはアクセルフォーム。そのどちらかに近いのでは?という推測が為されていた。例として、速力の基礎値が際立って高く、高い才能で境地の開花に至ったナリタブライアンは、マヤノトップガンとの競り合いで、怪我をする前のそれから変質した『境地』を手に入れている。古くはシンザン、ハイセイコー、TTGなど。並み居る往年の名ウマ娘。最近では、シンボリルドルフ、オグリキャップ、タマモクロス。それぞれの時代で最強を謳われるほどの実力を持つ、限られたウマ娘のみが到達しえる『潜在能力の解放』と推測されていた。しかし、80年代後半以降のG1競争馬の魂を持つウマ娘達が現れると、『境地に達している』人数が一挙に増加。一転して、トレセン学園の黄金時代を迎えたわけだ。その中でも、特に強力なものを開眼させた者のみが一流と呼ばれる時代が訪れた。その中でも、サイレンススズカはトップスピードとその維持に特化したものであったため、その速度に彼女自身の肉体が耐えられなかった。サイレンススズカは自分で、自分の骨格の耐久限度を超えてしまったわけだ。また、ナリタブライアンは『限界を越えようとする意志が体を突き動かすし、心の炎がエネルギーとなる感覚が体を突き抜け、光が目の前に奔る』というもので落ち着き、気の炎を纏うように見える。そのことから、雷などの光、あるいは闘志を象徴する炎が心象の投影として可視化し、ウマ娘の潜在能力を引き出しているのでは?という推測が成り立つ。テイオーは挫折を味わうことで、『ルドルフの模倣』ではない固有のものに変わる過程で『不死鳥の翼を纏う』ようになった。一見して、クロックアップと何の関連性も無さそうだが、境地が発動する一瞬、『時間が止まった』感覚を覚える者が多いことから、『境地』は一種の超集中能力が異常に発達し、クロックアップに近いものになった結果では?という推論もなされている。それは、これからの調査次第だが、とにかく、クロックアップは原理さえ分かれば、比較的容易に再現できる能力。昭和ライダーも自身の加速装置を改良することで到達しようとしているが、タキオン粒子の制御に手間取っていた。ウマ娘達の達する境地の調査も行われているが、クロックアップとの関連が取り沙汰されるほど、共通点があったのだ。――