ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第二百九十七話「幕間その41 ウマ娘達の近況3」

――太平洋戦争では、日本の政治家の横槍で、教育部隊から要員を引き抜くことがタブーにされた上、軍への新規志願数も低下したため、義勇兵の外国からの募集などで補充要員を賄うことが常態化した。これに現場から異議は唱えられていたが、日本の政治家らは『大量の死者が生じ、それが政権批判に使われる』ことを恐れていたため、1949年(日本側での2021年)になっても、前線要員の酷使は解消される事はなかった。そのため、64Fは規模が肥大化していき、1949年度には、『腕利きの八割方は同部隊に集まっている』とまで評判が立つ。これは日本側による、教導部隊がクーデターに加担した事への懲罰を意図した人事であったが、64Fの肥大化を招いていると批判もあった。しかし、扶桑軍航空参謀の多くは同位体の行いで、日本軍出身者に不信を買っている場合が多い。その兼ね合いで、同位体に空自の幕僚長の経歴がある源田実は重宝された。(大西瀧治郎が閑職で飼い殺しされたため。旧軍の佐官級や将官級の高官らは日本の政治家に『無能』扱いされているほうが多いため、空自の初期の頃の高官になっている佐官級を中心に添えるしかなかった)源田実はウィッチ世界では人望が史実よりあったため、64Fの『神輿』と見られていたのも事実だが、旧軍のパイロット出身の参謀の中で、ある程度の優秀さが保証されていたのも考慮されている。史実より若い年齢で空軍司令官に登りつめた源田だが、黒江達の後ろ盾で出世できた事はよく自覚しており、史実より思慮深い人物となっていた――

 

 

 

――日本 安全保障会議――

 

「源田司令、貴方は扶桑軍の育成枠を広げたいと?」

 

「小官と致しましては、64の後方支援が可能な練度の部隊の設立が急務であると考えております」

 

「64Fに手柄が集中するのは、確かに全体の士気としては好ましくない。だが、先のクーデターで『いい塩梅になりつつあった』世代がごっそり抜けてしまったため、練度が両極端になってしまった」

 

「新人を育成し直すにしても、長丁場になってしまいました上、語学力を鍛えなくてはならない。我が隊は末端に至るまで、統合戦闘航空団、あるいは統合飛行隊所属経験のある者で固めたので、問題はありませんが…」

 

64Fはプリキュアを含めて、最低でも英語を話せる者が多い。また、いざという時のために、ドラえもんのほんやくコンニャクもあるため、意思疎通の面は問題ない。のぞみも転生先の都合で、数カ国語をネイティブに話せるので、事情を知らぬ者達からは驚かれる。

 

「機材の世代交代期に起こった事が、全ての不運の始まりとしか言えませんな。ジェット戦闘機の搭乗員は、1940年代の方々の考えるような急速養成では賄いきれませんし、プロペラ機より育成費も高額です」

 

航空幕僚長の言う通り、ジェット戦闘機の搭乗員は育成費もレシプロ機時代よりかかかる。コース別になるとはいえ、ジェット時代にふさわしい練習機も用意しなければならない。そこも日本連邦軍の航空部門の頭痛の種であった。会議は航空要員の確保と育成が新たな段階に突入したことも議題となり、どの時代の練習機の生産が適切か、議論が交わされることになった。

 

 

――さて、留守番組の実質的なリーダー格となったのが、キュアピーチとキュアミラクルであった。キュアミラクルは現役時代、魔法を抜きにしての素の戦闘力は、けして高くはなかった。だが、蘇生後にロボアニメのオタクになった事が、いい方向に働いたというべき状況になっていた――

 

「フローラ、ここは任せて!!」

 

「え……な、なにそれぇ!?」

 

どことなく中国風の両手剣を召喚したので、キュアフローラを驚かすミラクル。この日はフローラの復帰戦でもあったため、久しぶりに生身で戦っている。陰陽師が使うような符を媒介に、剣とする。魔法とはまったく関係がない術を使ったとしか思えないため、狼狽するフローラ。

 

「フローラ。貴方の復帰祝いに、派手に行くよ!」

 

キュアミラクルは素のダイヤスタイルのままだが、魔法に頼らないファイトスタイルを趣味の延長線で編みだすに至った。プリキュアとしてののイメージを思いっきり壊しているが、本人曰く『まるっきりがアニメどおりだと、本人としては面白くないよ』とのこと。

 

『雷火の顎よ、敵を討て!!』

 

空高くジャンプし、そこから急降下の勢いで切り下ろす形で必殺技を放つ。

 

『龍王破山剣・逆鱗だぁーーーんっ!!』

 

剣から奔った炎の斬撃が、空域の突破を目論んだ怪異を一刀両断し、その炎で焼き尽くす。剣を『龍王破山剣』と呼んでいることなどから、のび太の持っているTVゲームのスーパーロボットの必殺技を再現してみたものだ。扶桑に伝わる陰陽道の秘術、23世紀世界で発掘された書物に記されていた古代中国の秘術などを色々と組み合わせた結果、為し得た必殺技という側面もある。ただし、ある一定の修行さえ積めば、会得のハードルは比較的に低い部類の術であるため、この年までには、数人のプリキュアが会得済みである。

 

「ふう…。こんなもんかな」

 

「剣って、プリキュアが使っていいんだっけ!?」

 

「ドリームは持ってるよ、フルーレを。あたしたちの世代は武器っていっても、たいていがステッキ型だからね。剣タイプの武器なのは、プリキュア5が唯一。とはいえ、全部がアニメどおりだと、アニメで敵に技を研究され尽くしてるからねぇ。意表を突く必要があるんだ」

 

キュアミラクルの言う通り、プリキュアは基本スペックがアニメという形で世の中に知れ渡ってるため、既存の技だけでは敵に勝てない。それどころか、チームの合体技を気合でかき消す行為をしてくる超人も、未来世界にはままいるため、プリキュアという枠内に捕らわれない技を身につける必要があったわけだ。その一端が『プリキュア以外の何かを得ること』である。元はシンフォギア世界で、黒江が『シンフォギア姿で、聖闘士としての技を使った』事例をヒントにして、その後に推進された事柄である。事の起こりは『シュルシャガナのギアは他のシンフォギアと比較した場合、単体での性能に劣る』ことを認識した黒江が『ギアの性能を宛にしない戦い方』を模索する内に定着した使用法であった。その後、キュアフェリーチェが修行の過程で『持ち合わせていた能力に依存しない戦い方』を見出したことが判明した後、ダイ・アナザー・デイの際に『敗北したプリキュアたちを鍛え直す方法』として提案され、デザリアム戦役頃に、その指南法が完成した。

 

「つまり、プリキュアって先入観を持ってちゃ、これからは勝てないってこと?」

 

「平たく言えばね。例えば、初撃を躱されたら、脆いなんて評判の剣術もね、世の中にはある。その対処法を昔の人は考えたわけだけど、あたし達の技も、それと一緒。引き出しは多いほうがいいってわけ。ドリームは大蛇薙の炎を使えるようになってるけど、他の手段も持ってる。ピーチも、最近は超能力に近いもの(アギトの力)を使い分けることで、戦法に変化をつけてる。第一世代のみんなに任せっきりじゃ、近年のプリキュアのあたしたち、世の中に後ろ指差されるからね」

 

キュアミラクルは自分達は『第三世代』という自覚が強いようだ。第三世代のプリキュアは『魔法つかい』を最後に、オールスターズ戦の経験に乏しいという特徴があり、それは『ヒーリングっど』、『トロピカ~ジュ』に至るまで変化はない。ただし、ヒーリングっど以降は『歴代チーム単体との共闘の経験がある』事が違いだろう。

 

「だから、法術を?」

 

「陰陽術や古代中国の秘術とかを組み合わせた結果だよ、この剣は。秘術だから、怪異なんてのは物の数じゃない。だけど、ビジュアル的にインパクトあるから、平行世界の芳佳ちゃんが焦ってね」

 

「想像つくよ」

 

「ウィッチ以外の力が、怪異を一方的にめちゃんこにできるなんて、あの子達にはショックだろうからね。必要とされなくなることを危惧して、焦るあまりに、同じ世界の『引退して久しい人たち』と揉め事まで起こしてね。参ったね」

 

芳佳Bは芳佳本来の一途で一本気な性格のまままだが、それがもろに裏目に出てしまい、場の空気を凍りつかせるわ、エクスウィッチを否定するような言動をしてしまうなどの悪手を打ってしまった。『父との約束』を錦の御旗のように振りかざし、エクスウィッチを『力を無くしたって言って、何もしない』と感情的に否定してしまうという『愚行』は結果的に自身の首を締める事になった。この経緯はは良くも悪くも、『父親との約束を果たそうとしているだけ』と考えていた芳佳Bの見識の狭さを知らしめる結果となり、坂本Aが『そちらの私の教育不足だぞ』と釘を指すことに繋がっている。

 

「で、魔法も使えて、普通にステゴロでも強いあたしがいるもんだからね…」

 

「あー……」

 

「あの子、お父さんが戦争で行方不明になってね。それで、『力がある者は何かを為すべき』っていう強迫観念に捕らわれちゃって。力を無くした人に、自覚なしにキツイ言葉を浴びせたんだ。そこのへんで、周りと揉めて、一騒動あったんだ」

 

芳佳Bは、騒動後には流石に自省したものの、自分の世界の黒江たちがA世界の同一人物とは『似て非なる』存在だという事を、正しく認識できなかったことは彼女の頑迷さを際立たせる結果になってしまった。とはいえ、リーネBの必死の擁護で、ミーナBから飛行禁止の処分などの重度の懲罰が下される事はなかった。芳佳の言葉に『悪意はない』事は彼女が一番によく知っていたし、下手に罰を与えても、何かがあれば、独断専行をしてでも、敵と戦うタイプなのは、ミーナBも知っていたからだ。

 

「あの子、自分が正しいって思ったことを、何がなんでも押し通そうとするから。まあ、あたしらも昔はそうだったから、懐かしくはなったけど」

 

「あれ、ミラクル、元の世界じゃ……」

 

「大学に入って、間もない時期だったからね。現役の時から、数年は年取ってたよ。今は若返ってるけどね。国際学部に行ってた」

 

朝日奈みらいは現役を終えた後は国際学部のある大学に進学していた。その頃の時間軸で襲撃を受けたため、見かけより精神年齢は5~6歳前後は高い状態である。また、高校と大学で語学を勉強していたため、素で数カ国語に堪能となっていた。その関係もあり、平時には、プリキュア代表で各国大使と公的な場で会うことも多い。近年のプリキュアの中では、『最終決戦から数年は力を失った状態であった』という珍しいパターンである。また、大学生の状態でプリキュアに変身して、マジンガーZEROと戦った事も暗示していた。

 

「だから、年食った時の記憶持ってるんだ。のぞみちゃんも、ラブちゃんもね」

 

「えーーー!?」

 

「後で話すよ、それは。のぞみちゃんの辿った一つの過去にまつわる話も絡むからね」

 

キュアフローラは現役当時の時間軸で戦いに巻き込まれたため、キュアドリームが辿った一つの結果は知らない。その関係上、春野はるかとして本来辿るはずの道とは枝分かれしたことが明確となった。

 

その時、花火に似た音が辺りに響く。

 

「ん?花火?」

 

「いや、海のほーで戦艦大和が主砲を撃ったんだよ。何海里も先で撃ったけど、46cm砲だしね」

 

「ほえー……」

 

「アメリカの戦艦じゃ、戦艦大和とその姉妹艦の主砲には耐えられないからね。戦艦同士の殴り合いで、日本の新戦艦の右に出る者はいないよ」

 

戦艦同士の殴り合いを真の意味で考慮している、二大海軍国がその贅を尽くした戦艦による殴り合いは、史上最大級の砲を持つ、日本連邦の優位で推移している。日本側が21世紀以降の技術で改造した事も手伝い、正面からの殴り合いでは、依然として優位を維持していた。21世紀以降の技術知識での本格的改善ができないリベリオンと違い、思う存分に改造できる日本側は史実の弱点を改善した上、ミサイル兵装も施した。その結果、ミサイルへの対応手段をまともに持たぬリベリオン艦艇は『ウィッチの人的資源枯渇で、ウィッチによる防御が取れない』事もあり、艦隊戦の主導権を握る事はできないままである。リベリオンはようやく46cm砲を装備し始めたが、用兵側はともかく、事務方には不評であり、未だ切り替えは済んでいない。

 

「あれ?戦艦がまだ残ってるの?」

 

「史実ほど潜水艦と魚雷も発達してないし、飛行機も、たいていの国で、史実よりモデルチェンジが遅れてるからね。その関係」

 

日本連邦とリベリオン、キングスユニオンが並外れて異常なだけで、他の国はまだ史実1940年代前半期水準のレシプロ機すら満足に行き渡っていない。水雷装備も史実より15年以上も遅れている。日本側がダイ・アナザー・デイで誘導魚雷を緊急生産させつつも、酸素魚雷の装備を急がせたのは杞憂であったと言える。日本側が旧式と揶揄した酸素魚雷でさえ、ウィッチ世界の水準では超高性能な部類なのだ。

 

「田舎に行けば、一次大戦と大差ないような複葉機がまだ飛んでるからね。この世界、ジェットは先進国の中でも、金持ちの国の特権だから」

 

「へー」

 

ウィッチ世界は通常科学兵器の発達が史実より遅れていたので、大国でも、田舎の基地では複葉機が普通に飛んでいる。600キロ台の速力がある大戦中期以降の水準の高速機は日本連邦、リベリオン、キングス・ユニオン、カールスラントのみが保有している。ましてや、ジェット戦闘機などは贅沢品だ。

 

「日本やアメリカみたいに、専門の輸送機隊を持てるのは『金持ち』ってことだよ。古いゼロ戦だって、フィンランドが買うっていうくらいだからね」

 

日本連邦は輸送機の刷新も行ったが、あまりに飛躍しすぎて、扱う側の教育に難儀している。地球連邦軍の厚意で、地球で暇を囲っていた輸送部隊が動員され、日本連邦の補給線を支えている。旧式のミデアであっても、21世紀の如何なる輸送機を遥かに超える輸送量を持つため、ダイ・アナザー・デイ以降は地球連邦空軍の輸送部隊がウィッチ世界に駐屯し、輸送任務を遂行している。太平洋戦争では、補給量の増加した日本連邦の戦線を支えている。扶桑の輸送機部隊が機材刷新の関係でトラブルを起こしているためでもある。

 

「さて、次のとこに行くよ。箒に乗って」

 

「目立つよ?」

 

「この世界じゃ、気づかれないって」

 

キュアミラクルはちゃんと箒に乗って、飛行する。古典的な魔女っ子的な要素を持つため、『しずかが子供の頃に出会っていれば、いい友達になれただろう』とは、のび太の談。実際、花海ことはとはいい友人関係であるためだ。

 

「でもさ、ミラクルって、どうやって変身してるの?」

 

「仕事に入る前に、リコに頼んでる。モフルンとリコいないと、あたしは変身できないからね」

 

「た、大変だね……」

 

「うちのチーム、はーちゃんしか、単独で変身できないからね。最近は、プリキュアの姿が仕事着みたいになってるよ。みんな」

 

「えーーー!?」

 

「一種の正装みたいな感じだよ。トワちゃんも、最近はスカーレットの姿で仕事してるしね」

 

二人は戦域を箒で飛ぶ。キュアフローラはこの時に、皆の事情を改めて知らされたのである。そんな二人の更に上空を通過するマジンカイザーの姿があった。その操縦者はもちろん、兜甲児。

 

「あ!あのロボット!前に、あたしたちを助けてくれた……」

 

「そっか、甲児さん、前に『君等の友達を助けた』って言ってたな」

 

マジンカイザーはZEROに対抗するための改修が施されているため、胸にあった金のモールドが廃され、全体的にグレートマジンガーに近い印象になっている。ゲッター炉を補助動力装置として組み込んだ関係である。また、キュアフローラは『マジンカイザーの助太刀をどこかで受けていた』ことが語られる。キュアドリームも居合わせたため、史実でいう『春のカーニバル♪』相当の出来事にミケーネ帝国残党が介入し、その阻止のため、マジンカイザーとマジンエンペラーGが更に介入し、その場にいたプリキュアオールスターズを救ったらしい。次の戦域に向かう二人はその話で盛り上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――21世紀のススキヶ原では、オグリキャップが街の大食いチャレンジの尽くを制覇していた。オグリキャップは元の世界では『昆虫の災害』に例えられるほどにトレセン学園の周辺を荒らしまくり、出入り禁止にされている店も多い。そのため、ススキヶ原の大食いチャレンジは幸せそのものであった――

 

「ふう」

 

オグリキャップは食欲でも怪物であり、ススキヶ原のレストランのシェフ達がギネスブック狙いで作った『600人前のお好み焼き』、『500人前のビーフステーキ』を容易に食べ尽くすなど、バケモノであった。

 

「ああ、スペシャルウィークか?私だ。テイオーから聞いたが…。よければ、こちらへ来ないか?……そうだ。タイキにも伝えてくれ」

 

オグリキャップは『トレセン学園の大食い三銃士』の渾名も持ち、スペシャルウィーク、タイキシャトルとトリオ扱いされている。芦毛の怪物という往年の異名は、若い世代には『教科書や過去の映像の中でのもの』と言われるに至っている。また、往年の俊足も『措置』で完全に戻っており、往年のアイドルホースとして、競馬中継のゲストに呼ばれる予定だが、本人は口が上手いほうではないため、口八丁のタマモクロスとのセットを要望している。

 

「タマが戻るはずだから、それに同行すると言ってくれ。私から先方に話を通す」

 

オグリキャップはそう電話をしつつ、大食いチャレンジを難なく完了する。オグリキャップは『前世』でも大食いであったため、ウマ娘としても当代最強の大食いである。また、大食いチャレンジで共に名を馳せるようになってからは連絡を取り合う仲であるのが窺える。

 

「トレーナーのことは気に病むな。お前のせいじゃない。マルゼンさんには、お前に仕送りするように頼んである。あの人なりの詫びと思え。あの人も立場的に苦しいからな、そこはわかってやれ」

 

オグリキャップは、マルゼンスキーがスペシャルウィークのために動けない立場をわかっていた。そのため、ブチギレ状態のゴールドシップを諌め、マルゼンスキーを慰めるなど、中間世代としての面目躍如であった。現役時は周囲の支えと、自分の才覚で一流に登り詰めたオグリキャップだが、引退後は後輩を精神的にサポートする事も行うなど、年相応に成長した面も見せている。電話しながら、『50人前のハヤシライス』を空にする。洋食店の店主はその圧倒的な食いっぷりに言葉もない。

 

「店主、勘定を頼む。支払いはカードでいいか?現役の頃の蓄えがあるんだ」

 

「あなたの前世の活躍は見てました。忘れもしない、31年前…、まだ若い頃にあなたの引退レースである有馬記念に居合わせました」

 

「そうだったのか…。」

 

オグリキャップは前世の記憶が蘇っていたため、洋食店店主が若かりし頃に、自身の引退レースに居合わせていたと告白したことに感慨深さを感じつつ、競走馬として生き、ターフから引退した『1990年』という時間から四半世紀以上の時が経過したことを実感した。

 

「店主、これを受け取ってくれ」

 

「この写真は?」

 

「現役の頃に、『中央』での友達と撮ったものだ。タマモクロス、イナリワン、スーパークリーク。現役の頃に、私とライバル関係にあった友達だ。あなたなら、意味が分かるだろう」

 

「ありがとうございます」

 

日付はオグリキャップが中央で名を馳せ始めた頃で、タマモクロスは既に引退していたが、他の二人は現役の座にあった。オグリキャップは記念にと、その写真を店主にプレゼントしていった。オグリキャップはアイドルホースであった関係で、大食いチャレンジを挑まれた店主と仲良くなる事も多かった。平成三強の人気は伊達ではないのだ。そこがシンボリルドルフが得られなかった『大衆人気』(対照的に、シンボリルドルフはターフの王者であったが、アイドル的な意味の人気は得られなかった)を誇った名残りであった。大食いチャレンジの達成者となった記念に、写真を飾られるに至る。中山競馬場の限度である17万人を集めた伝説もある。全盛期には国民的スターと謳われたことの記憶が蘇ったため、以前より『現役時の名声』を活用し始める。元の世界では出禁を食らった飲食店が多いため、別の世界で欲求不満気味の食欲を完全に満たすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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