ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第三百一話「幕間その45 やまとは国のまほろば 2」

――結局、ダイ・アナザー・デイで対戦車能力(対装甲貫徹力)の高い戦車こそが正義と判定され、旧来の軽戦車ないしは旧式の装甲車、三式以前の旧式中戦車の製造は停止され、続くクーデターで既存装甲車両の在庫は殆ど残らなかった。その点が扶桑全体の装甲戦闘車両の不足に繋がり、太平洋戦線以外の戦線に戦闘車両が全く回されなくなるという弊害が生ずる事態になった。南洋は装甲戦闘車両の活躍する場がある地であるため、瞬く間に105ミリ砲搭載の大型戦車が花形となった。敵もM4からM46に更新を始めていたため、日本側は74式への切り替えを模索していたが、74式以前の戦後日本の戦車は待ち伏せを前提に作られており、大戦期のような運動戦に向いていないという難点が部内で指摘されており、配備は更に遅延。

結局、扶桑では、入手難度の低いセンチュリオンやチーフテンの独自改良型が戦場で好まれるに至る。これを危惧した国産派重視の派閥が、強固な信念で10式戦車の配備を進めていく。皮肉なことに、日本連邦が緊急処置で大量に戦闘車両を購入したことで、キングス・ユニオンの財政の改善に光が見え始める。扶桑の現地司令官が独自判断で購入した車両も多数に登るからだ。これは『数合わせ』で使用が予定されていた旧式車両が処分されてしまったためで、扶桑は前線の機甲戦力の不足ぶりに悩み、日本側は現地将兵からの猛抗議に困惑した。結局、一部のエリート部隊が『人型機動兵器を独自判断で買い揃える』ことが大規模化。かつての騎兵部隊がヘリコプターやメタルアーマー、コンバットアーマーを買い揃え始めるなど、兵器不足への対処の仕方で統制が取れなくなっていた。これに狼狽した日本側は74式戦車の製造促進を認め、89式装甲戦闘車の生産を許可するなどの施策を慌てて実行した。人型兵器に装甲戦闘車両の需要が奪われるのは、予定外だったからだ。その施策は50年代以降に効果が現れるだろうが、49年現在での装甲戦闘車両の不足ぶりは深刻で、末端の部隊は九七式中戦車すら保有しない有様であった。史実と違い、九五式軽戦車を主力とするドクトリンは早期に破棄されていたが、生産数の多さと騎兵部隊の要望で、末端の部隊にはかなりが残っていた。だが、この時代には『斥候目的でも非力となったガラクタ』でしかない。『最強の軽戦車』こと、M41が敵味方ともに採用されたからだ。同車は軽戦車と言っても、以前の軽戦車より格段に大型化されていた事から、元の騎兵部隊などからは不満が呟かれた。とはいえ、ダイ・アナザー・デイでの主敵である『M4中戦車』に匹敵する火力を奮える事から、火力面では好評であった。自由リベリオンの工廠はフル稼働で供給に務めているが、亡命政権故の限界もあり、扶桑も含めての全需要を満たすだけの生産数は不可能であった――

 

 

 

 

 

――戦線では(敵味方ともに、同種の機甲兵器を使う事も多いため)鹵獲が組織的に推奨され、ある部隊は鹵獲のために、先祖が忍者の家系であった将兵で構成する『特務班』を作ったほどであった。また、この頃には、カールスラントが日本連邦の制裁で軍事的に有名無実化が進み、連合軍という枠組みそのものも各国の軍縮で有名無実になりつつあった頃でもあったため、太平洋戦争は殆ど『日米戦争』であった。史実と異なり、大義名分は日本側にあるものの、何もかも不足しており、一騎当千の強者による掃討が推奨され、それと同時に、敵兵器の鹵獲が軍単位で行われている。これは敵味方ともに同規格の兵器を使うが故だが、国産兵器のシェアが侵されることを恐れる者達はなんとかして、国産兵器の配備数を拡大させたかったが、現実は非情。結局は外国産兵器が前線で多数派である事は覆し難い状況になっていた。とはいえ、航空ストライカーに関しては、日本連邦製が主力である。欧州では不要とされた『長い活動時間』が太平洋戦争の広大な戦域にはうってつけだったからである。(一時の『活動時間を切り詰め、他の能力の向上に割り振る』取り組みは欧州が戦域から外れたこと、太平洋地域が戦域になったことで切り捨てられた)とはいえ、最後の第一世代理論式ストライカーである『F-86ストライカー』も瞬く間に旧式化の進行に遭い、第二世代理論式の普及が待たれた――

 

 

 

 

 

 

 

 

――1949年になると、連合艦隊は一大攻勢を企図した。しかし、肝心要の航空戦力の再建が進んでおらず、空軍に頼るしかなかった。連合艦隊の航空戦力の再建はジェット化に伴って遅延しており、最低でも、1953年以降でないと組織的な実働は不可能と言われていた。これはクーデター後にジェット化や、航空無線符号の近代化で不適当な人材を振い落したら、逆に人材不足に陥ったという経緯だったためだ。とはいえ、攻勢に備え、整備されている航空戦力は第四世代ジェット戦闘機が中心である。この当時としてはオーバーテクノロジー気味だが、レシプロ機が減勢に入った時代、『いち早く、敵空母を攻撃するためのジェット機』が必要とされた。当時、各国海軍は怪異対策で艦艇の高射砲(両用砲)、機銃を増備していたが、日本連邦のような『高度な防空システムで統制された防空網』には至っていない。これは怪異が『規則的な行動で散発的に艦艇を襲撃してきた』からで、日本連邦のような『対多数機の襲撃が前提の艦隊防空システム』はキングス・ユニオンでも、ブリタニア側の保守性が理由で、その普及に至っていない。そして、64F本隊に運び込まれた機体が……。

 

「鳥人戦隊ジェットマンの遺産。デザリアム戦役の後、ヒーローユニオンが再整備のために領収したと聞いているけど」

 

「はい。結局、鳥人戦隊ジェットマンの本格的参戦は見送られましたが、メカは貸与してきました」

 

ダイ・アナザー・デイに現役当時のメンバーが厚意で参戦したものの、継続的参戦は見送られた鳥人戦隊ジェットマン。しかし、解散後に野比一族が管理していた格納庫に秘匿していた保有メカの一部の貸与を認めたという。

 

「まあ、彼らにも各々の事情があるから、文句は言えないわ。ジェットマンはブラックコンドルさんが戦いを終えてから数年後に、亡くなっているもの」

 

「ええ。1995年頃、忍者戦隊カクレンジャー、もしくは超力戦隊オーレンジャーの時代の新聞記事に訃報が載っているのを確認しました」

 

鳥人戦隊ジェットマンのブラックコンドル/結城凱は戦いを終えて数年後の1995年、20代の若さで亡くなっている。死因はレッドホーク/天堂竜の結婚式へ出席する途中、ひったくり犯に胸を刺された事によるもの。これ以降、鳥人戦隊ジェットマンの活動は確認されていない。(ヒーローユニオンの記録による)野比一族は22世紀までに、彼らのメカを何らかの理由で引き取り、ヒーローユニオンの管理で秘匿していたらしい。

 

「それにしても、戦力となるロボに、神話のイカロスの名を冠させるなんて。当時のスカイフォース(ジェットマンは公的には地球守備隊の特殊部隊で、電撃戦隊チェンジマンの後継的位置づけであった)のネーミングセンスはどうなっていたのかしら」

 

武子は呆れ半分だ。イカロスはギリシア神話で、蝋の羽を使って飛び、太陽に接近したために羽が溶け、墜落死した人物であるため、『意図はわかるが、縁起が悪い』という事だろう。とはいえ、地球防衛に貢献した事は認めている。大決戦の際、アカレンジャーの判断で『ジェットイカロス』と『バードガルーダ』が持ち込まれ、現場判断で『機動兵器搭乗技能があるプリキュア』が動かした。その際、ドリーム(中身は黒江であったが)が当然のように『合体・グレートスクラム!!』と号令を発し、『グレートイカロス』へ合体させた事は語り草だ。

 

「イカロスは伝説では、人類で最初に飛んだ人物ですからね。その側面を重視したのでしょう。ま、まぁ…、大決戦で、ドリームの人物像は多少なりとも誤解されましたが」

 

苦笑まじりに言うフェリーチェ。大決戦で黒江が普段の調子で戦ったため、キュアドリームの人物像は大いに誤解されているところがある。のぞみ本人は涙目だったが、デザリアム戦役で、肉体の素体であった錦の攻撃性が表面化した際は、黒江と大差ない『物騒な物言い』であったため、人のことは言えなくなっているが。

 

「大いに、と訂正すべきね。とはいえ、この大きさは『抑止力』としても使えるわね」

 

「ええ。80m近い巨体ですから。上位のマシーン兵器よりは小型ですが、それでも、大抵のスーパーロボより大型です」

 

格納庫で改修を受けるグレートイカロス。鳥人戦隊ジェットマンの遺産であるため、当面は存在そのものを『抑止力』にすると、武子は示唆した。各部の本格的改良に時間がかかるためだろう。オールズモビルがネオ・ジオンに代わる、ジオン残党最大勢力に登り詰め、テロ活動を始めていたからでもある。ミネバ・ザビは隠遁生活へ入る前、ザビ家の内輪もめが、そのまま国家規模になったことがジオンの敗戦の理由、ひいては残党の派閥抗争の原因となったことを嘆いたという。

 

「ジオン残党は派閥が多すぎよ」

 

「元々、規模は一年戦争の頃であろうと、大きくない軍隊だったはずですが、連邦軍に敗れた他組織を取り込むことで、生き永らえたようなものです。オールズモビルの兵の殆どはティターンズ出身という噂がありますから」

 

「皮肉ね」

 

「そういうものですよ。日本の政治家たちの派閥抗争がスケールアップしたようなものなのですよ、ジオンの派閥抗争は」

 

ジオンは派閥抗争で自滅していくため、地球連邦軍からは『日本軍とドイツ軍の悪いところを煮詰めたような存在』と揶揄されている。とはいえ、地球連邦軍にもそういう側面は存在していたため、目くそ鼻くそだが。

 

「地球連邦も似たようなものじゃ?」

 

「まだマシですよ、連邦は」

 

二人は鳥人戦隊ジェットマンの遺産を抑止力として運用する事を取り決め、改修(レストアに近いが)を急ぐ。その頃……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――自由リベリオン軍は本国の管理から離れたことが幸いし、ダイ・アナザー・デイからは体制の構築と兵器更新に務めることに専念でき、1948年中には、M48パットン戦車の配備にこぎつけていた。自由リベリオンは本国からは『反逆者』扱いであるため、生き残るためには、兵器の質を強化するしか道が無く、1950年代に『M60パットン』への更新を控えているほどである。カールスラントの並みいる機甲兵器が旧式化したのは、それらが戦後型の105mmライフル砲を備えていたからである。カールスラントが一部の次期重戦車に装備させ始めていた『105mmライフル砲』が新型戦車のスタンダードとなってしまい、更には『120ミリ砲』に至ってしまった結果、戦中型の兵器は軒並み、旧式化した。特に重装甲で鳴らしたティーガーが容易に撃破される時代を迎えてしまった事へのショックは大きく、ティーガーⅡよりも総合性能がいい『レーヴェ』が唯一、色々な兼ね合いで退役を免れた。軽量型エンジンに換装され、戦後型105ミリ砲を装備した後期型は『レオパルト1までのつなぎ』の名目と、戦車工場に仕事を与える目的で、ここから15年以上も現役に留まる。そこは地球連邦軍のジム改と似た道であった。――

 

 

 

――扶桑軍は結局、史実の行いがもとで、せっかく育成が終わっていた若手参謀たちを理不尽に追放され、更に司令官自らが戦場で有能でなければならなくなったため、一部の有能な司令官に手柄が集中する事態が頻発していた。64Fが重宝されている理由は、上層部の指令無しで動ける上、たとえ準備なしに数個師団と遭遇しても、一部隊で返り討ちにできるからである。日本軍が独断専行で国を滅ぼしたことの教訓で軍隊の行動を強く縛ったことが、別の有事で悪手となった典型的事例であった。64Fの地位が揺るぎないものになったのは、正規部隊の行動が控えられていた時期でも、戦線の要になっていたからである。結局、64Fがなんでも屋とならなければならないところに、日本系国家のグダグダさが表れていたといえる――

 

 

 

 

 

 

――シンボリルドルフは自分を超える逸材が史実では、自分が世を去って、更に8年後に現れた事は嬉しがったが、今は後ろ盾が消えた途端に始まったマスコミの手のひら返しにうんざりしていた。タマモクロスも、オグリの最初の不振の遠因である事で、マスコミに叩かれたため、一時はマスコミ嫌いになっていた。オグリキャップは中央移籍後、日本ダービーという目標を奪われているため、ルドルフは『擁護しなかった』と叩かれ始めていた。既にオグリの世代はターフを去っており、大昔に解決したことをほじくり返す形での騒動化は予想外であった。(中央と地方の対立が極限に達したため)結果、協会は前政権に全責任を負わせる形になった。ドリームシリーズの改革は、顕彰ウマ娘のお遊びだという批判を躱すためもあり、急激に改革を進め、使用する勝負服も、トゥインクルシリーズでの現役当時のものを着用するように変更された。タマモクロスの復活を宣伝に利用して。そのタマモクロスは、自身の早期引退がオグリキャップの晩年期の不振の遠因になったことを気に病むようになった。オグリのルームメイトを引き受けたり、普段の面倒を見るのは、タマモクロスなりの贖罪であった。ルドルフはその心境を察しており、自身も次のドリームシリーズに出る事を明言した。

 

「ええの?」

 

「前会長たちは既に就職なされているからな。私とマルゼンが代わりに走る。いくら、天馬と言われた前会長と言えど、ブランクがありすぎる」

 

ルドルフとマルゼンは現役時の感覚を体がまだ覚えているため、その気になれば、すぐに戻せる。違うのは、トウショウボーイらである。就職して久しい世代のため、既に現役時の能力を喪失している。措置で全盛期に戻す事は検討中だが、事務作業が忙しい職なので、現時点では現実的ではないという。

 

「マルゼンも災難やな」

 

「ゴルシの怒髪天で完全に怯えていたからな。なんと言ったと思う、ゴルシの奴」

 

「なんや」

 

「スーツカの後部座席にくくりつけて、ドイツ空軍仕込みの急降下爆撃を体験させてやると」

 

「なんやそれ……」

 

引いているタマモクロス。なんとも言えない表情のルドルフ。ルドルフは生徒会長モードでは、普段知られている『大人びている口調』である。

 

「流石に止めたが、マルゼンは完全に怯えてしまってな。前会長が宥めていた。テイオーに政権は渡したから、夜にでも発つよ」

 

「ウチも、スペシャルウィークとタイキを連れて行くことになったで。エアグルーヴにはなんて?」

 

「近頃はカワカミプリンセスくんが校舎をぶち壊すからな。エアグルーヴを休ませてあげたいが…」

 

「あいつは真面目だからのぉ」

 

エアグルーヴはここのところ、カワカミプリンセスのハチャメチャな行動に頭を抱える日々である。それもあり、過労で倒れてしまったと、スズカから報告を受けているルドルフ。

 

「テイオー体制は一両日中にも発足する。そうすれば、私のごとき老兵は去りゆくのみさ。これからは楽に振る舞えるよ」

 

ルドルフは生徒会長の責から開放された関係か、以前より明朗快活な振る舞いになっていた。タマモクロスとは年が近いせいか、お互いに対等の口ぶりである。また、エアグルーヴは彼女らの後輩世代である故、タマモクロスもエアグルーヴを年下扱いである。テイオーは黄金期のルドルフを彷彿とさせる『帝王』に変わっていくが、逆に、ルドルフは『ルナ』へ立ち帰っていく。生徒会長の責務はそれほどのものだったのがわかる。

 

「とはいえ、うちらの前途は多難や。あんたは昔の発言が漏れて、大炎上。うちはオグリンの晩年期の不調の精神的原因ってんで、炎上や。マスコミってのは……」

 

「ゴシップ記事はそういう記事をわざとらしく書き立てる。だが、往々にして、そういう記事が命取りになる。我々にできる事は、オグリを認めている発言をしまくること、ドリームシリーズで往年の力を取り戻した事を示すことだ、タマモクロス。皇帝と稲妻は伊達ではないということをな」

 

「ドリームシリーズを総なめしたる。ドリームシリーズにいるウマ娘は大半が全盛期を過ぎとる。今こそ、うちらでトロフィーを総なめや!やるで、ルドルフ!!」

 

二人はこの後、ドリームシリーズを全盛期以上の能力で文字通りに席巻し、ドリームシリーズでの得意分野のレースのトロフィーを総なめしてしまう。更に、ゴシップ記事対策もあり、オグリを現役時代から認めていた事を公言する。二人はこの時点でネット上で炎上していたため、ゴルシに火消しのアドバイスを求め、ゴルシはそれに応じ、擁護する発言を公式にしだす。GⅠを六勝済みのホープであるゴルシの言葉の重みは、ルドルフらの助けになったのだ。同時に、日本ダービーに出れない立場の『アーモンドアイ』がルドルフ自身のGⅠ勝利数記録をあっさり超え、更に後輩の三冠馬を避けつけない圧倒的能力を見せることを教え、ルドルフにあった僅かな『驕り』を戒めた。三冠を取っても、アーモンドアイのように『最強であり続けた』者、コントレイルのように、『キャリア晩年に負けがこんでも、引退レースで結果を出す者』、ナリタブライアンのように『怪我で全盛期の能力を失ったまま、有終の美を飾ることも叶わない』ケースに分かれてしまうことを知ったルドルフは衝撃を受け、引退したばかりの、ブライアンの実姉でもある、ビワハヤヒデを通し、ささやかな援助をし始める。敵に塩を送るのと同義だが、同じ三冠の頂に立った者として、手を差し伸べずにはいられない。それがルドルフだ。ブライアンはプライドが高いウマ娘であるが、今回ばかりは好意を素直に受け取ったという――

 

 

 

 

 

 

 

――ナリタタイシンはレースに当面は参戦せず、休養に充てる事がトレーナーから連絡があり、当面は野比家に滞在することになった。なんだかんだで同様の処置がウイニングチケットにも取られたため、二人は処置を受けた後の調整期間をたっぷり取れることになった。同じく、滞在中のオグリキャップが処置を受け、全盛期の実力を取り戻した。オグリキャップの足の疾さそのものは『黄金世代』と比較した場合、それほど抜きん出たものではない。後輩らと比しての優位性は脅威のスタミナにある。得意距離であれば、黄金世代にも負けず、現役最強のステイヤーと名高いメジロマックイーンとも互角のスタミナを持つ。ウマ娘のスタミナは個人差が大きく、『継続的に自分のトップスピードを出せない』者も多い。オグリキャップは現役時代、スポーツ心臓を生まれながらに備えている事が話題になったが、オグリキャップのウマ娘としての才能の一端はこれを持つことである。ただし、オグリキャップは栄養吸収率が低いのと、胃袋の消化速度が当代一を誇るため、必要とするカロリーがウマ娘としても異常な数値に達する――

 

 

 

「どうした、マックイーン。食べないのか?」

 

「レース復帰に備え、節制していますの、オグリ先輩。良ければ」

 

「おお、そうか、恩に着る!!」」

 

オグリは好き嫌いもなく、出されたものは空にしてくれるため、マックイーンはこれをいいことに、スイーツを食うため、通常の食事をちょこっと減らしている。とはいえ、きちんと節制そのものはしている。オグリキャップの『チームのエース』としての地位を受け継いだのは伊達ではないのだ。

 

「さて、私もいずれはドリームシリーズに参戦せねばならん。タイシン達にも声をかけてくれ、走り込みをしておきたい」

 

「わかりました」

 

オグリキャップは現役時代の名声を用い、食料品の提供を、ススキヶ原中のスーパーやコンビニに約束させていた。ある意味、オグリキャップが現役時代の名声を初めて活用した事例であった。それで食料供給の目処をつけた後、ススキヶ原全体を二週程度するコースを練習コースと決めて、トレーニングを行っている。治安は悪いので、様々なアクシデントも襲いかかるが、それが却って刺激になる。近頃は街にいる、『オグリキャップ達の競走馬としての勇姿を覚えている』世代の者たちが応援の垂れ幕やら、旗を振ってくるため、地味に嬉しいポイントである。特にオグリは笠松時代を思い出すためか、そういうものには弱い。かつてのパートナーであった『往時の担当トレーナー』との思い出が蘇るからだ。また、現在において、学内で傍若無人に振る舞う『シリウスシンボリ』を現役時代に叩きのめした経験があるのは、オグリキャップなど、今となっては、ごく少数である。とはいえ、現役時代に、海外相手に勝てはせずとも、孤軍奮闘してきた自分がぽっと出の若造にあっさり抜かれ、置き去りにされた事はトラウマになっているようで、ルドルフは騒ぎを起こす『スケバン』のシリウスを黙らせるのに、『オグリキャップ』の名を使っているという。

 

「ところで、オグリ先輩。エアグルーヴ先輩が、シリウス先輩を大人しくさせるのに、貴方の名を出せと、会長から言われたそうですが…?」

 

「ああ、その事か。シリウスは、私がレースで倒したんだ。……毎日王冠での事だから、ずいぶん昔の話だ。シリウスを置き去りにしたことで、私はルドルフに完全に認められた節がある」

 

シリウスシンボリはルドルフの一年後にダービーを制したが、本命のミホシンザンがいなかったこともあり、そのポテンシャルの程度には疑問符がつく。とは言え、海外遠征帰りのダービーウマ娘のはずのシリウスを、その当時に全盛期に向かいつつあったオグリキャップは、その末脚で軽く置き去りにし、シンボリルドルフの心をへし折っている。オグリキャップはこの勝利で、ルドルフに完全に実力を評価された。その逆にシリウスの才能の限界が露呈してしまったため、ルドルフは彼女を純粋な『一人の競走ウマ娘』としては見限っている(親類・幼馴染としてはその限りでないが)。

 

「ただ、あの結果が原因で、シリウスはルドルフと距離を置き始めた。私のような青二才に、ダービーウマ娘が置き去りにされたんだ。……普通は心が折れるだろう?」

 

 

「会長はシリウス先輩の限界を?」

 

「そこで悟ってしまったんだろう。奴は元々、シリウスの振る舞いを快く思ってはいなかったからな。そこがルドルフとシリウスの間の不幸だろう」

 

現役引退後であるため、オグリキャップは現役時代より聡明であるところを見せる。シンボリルドルフとシリウスシンボリとの間に横たわる確執の原因が自分にあるとも言い、ルドルフが『競走者』として、シリウスを見限った事を悟ってしまったシリウスは以後、ルドルフと袂を分かった。ルドルフの失点があるとすれば…。

 

「ルドルフはあの頃はまだ、『日が浅かった』からな。親類だからと、シリウスのケアをおざなりにした。それが、あいつをスケバンにしたんだ」

 

ルドルフの過去における失敗談を教え、『ルドルフといえども、完全無欠ではない』ことを後輩のメジロマックイーンに教えるオグリキャップであった。

 

 

 

 

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