ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前々回の続きです。


第三百四話「幕間その47 やまとは国のまほろば 4」

――限界を超え、その先へ至ること。目的は違えど、やるべき事は同じである――

 

 

 

 

「何が正しかったんやろな…、ウチ」

 

タマモクロスは、自身の早期引退がオグリキャップの競技生活に多大な悪影響があったことを事後に叩かれ、大いに凹んでいた時期がある。オグリキャップが回想録で『その日の記憶がない』と記したことで、オグリが『目標とライバルを理不尽に奪われた』事がクローズアップされ、タマモクロスに批判が来たのだ。実際は足が酷使で潰れかけていた上、自分の恩師が生死の境を彷徨っていた(結局、程なくして死去)のが原因だが、言い訳にしかならず、タマモクロスは批判を浴び、精神的に衰弱してしまった。ルドルフの力で、やっと炎上が収まったものの、オグリを傷つけたということの重大さを理解したのは、お互いに引退した後。もはや手遅れであった。タマモクロスが、オグリの選手生活の晩年期から親友として振る舞い始めた理由は贖罪であった。

 

「君の決断は、その時点では最善だった。だが、オグリを突き放すべきではなかった。君はその時点で、道を間違ってしまったのさ、タマモクロス」

 

「若気の至りやのに…。あん時はナーバスになっとったから、つい……。オグリンは……一緒に切磋琢磨できる誰かを求めてたんかいな…?」

 

「オグリの晩年期の成績を見る限りは。クリークとイナリも、ターフからいなくなった時にガクンと不調に陥っている。君は自分の事に精一杯だったんだろうが、支えてやるべきだった。そうでなければ、今回の炎上はなかっただろう」

 

「手厳しいこった。ウチかて、あん時はなぁ…。おっちゃんがウチを見出してくれたんや、おっちゃんに見せられないレースの栄光なんて、これっぽっちもいらんかったんや。なのに、世間は手前勝手に叩きよる!!」

 

タマモクロスは道中、かつての現役引退の電撃発表がオグリの心に深い傷を刻んだことに罪悪感を強く感じている事、自分を見出してくれた亡き恩師の最期を看取りたかったといいう本音が、世間に『身勝手』と断じられたことへのショックが大きく、それがドリームシリーズには出走している最大の理由だと明言した。

 

 

「オグリには、悪かったと思っとるんや!そうでなきゃ、同室になるのを認めたり、オカンみたいに、あいつの面倒を見るもんかい!!!うぅ……」

 

涙目になりつつ、オグリへの罪悪感が現在における自分の原動力だと漏らす。

 

「マルゼンと似ているよ、タマ」

 

「どういうことや…?ルドルフ」

 

「そうか、お前の代は知らんか……いいだろう。マルゼンの世代について、前会長から聞かされていたことを話そう。マルゼンが触れたがらないほどのものだ」

 

ルドルフはここで初めて、後輩世代には詳細があまり伝えられていない『マルゼンスキーの同期達の悲運』を教えた。タマモクロスの代が入学した頃には、マルゼンスキー以外の全員が学園を去っていた事の本当の理由を。

 

「マルゼンは世代最強だった。同世代の他のウマ娘全員より圧倒的に格上の実力を持ち、万全であれば、前会長を超えられただろうと、当時は言われていた」

 

「待ちぃや。万全であれば?」

 

「今は治ったが、マルゼンは現役時代、怪我しやすくてな。その爆弾を抱えていたから、現役時代はその全力を出せなかった。出せなくても、当時の同期のウマ娘達とは比べ物にならない実力だった。あいつの現役時代のトレーナーは『あいつの体が頑健でさえあれば、ルドルフ。お前よりも速かったはずだ』と言っていた。東条トレーナーの世話になったのは、その人が学園を去ってからだ」

 

マルゼンスキーは当時の規定に阻まれ、クラシック戦線には参加できなかった。しかし、マルゼンスキーが腹いせに、それ以外のレースに出て、圧倒的に勝ってしまう事態が起こった事、同世代の強豪達とは比較にならない強さを『足が潰れる』寸前の状態で見せつけたという事実は、マルゼンスキーと同世代のウマ娘たちの引退後の進路を決定的に変えてしまった。プレストウコウは菊花賞ウマ娘でありながら、『マルゼンスキーの噛ませ』と謗られ続け、ついには学園を去っていった。既に引退間近であったはずの『TTG』にも歯が立たなかったことも、彼女が学園に居場所を失った理由であった。

 

「プレストウコウ先輩だけではない。ハードバージ先輩の悲惨な最期、ラッキールーラ先輩……」

 

マルゼンスキーの同期のウマ娘たちの中では、比較的に有力な三人も既に学園を去っている。その内の一人は、若くして亡くなっていることを示唆されるタマモクロス。ウマ娘競走協会が戦時中の出来事と並び、タブーとして封印している『黒歴史』。しかもそれが、ルドルフの小学生時代という近年に起こった。衝撃であった。

 

「ドリームシリーズが創設されたのは、ハマノパレード先輩とハードバージ先輩の『不幸』が報道されたことで、世間が協会を批判したことで、窮した協会が『顕彰ウマ娘たちの福利厚生費捻出のため』という理由が大きい。とはいえ、『盛りを過ぎたウマ娘たちの見世物にすぎない』という批判もある。だからこそ、我々が新設された『ドリームシリーズのトロフィー』を総なめするいい機会だ」

 

「スペシャルウィーク以外の連中は、能力が落ちてるのしかおらんしの。オグリがドリームシリーズに参加するまでに、連中で遊ぶのも、いい暇つぶしになるやろな」

 

「オグリには、私とクリークで君の真意を伝えておく。君は体を作るのが仕事だ。無論、次回は私も出るが」

 

「この間、マラソンで醜態見せよったからに」

 

ルドルフはマラソン大会で、ゴルシ、オグリという二大スタミナお化けと競り合ってしまい、見事にバテてしまい、お茶の間に醜態を晒したことを指摘され、たじろぐ。

 

「うっ…。エアグルーヴは……」

 

「知っとるで。それも、あいつが過労になった原因や。お前、エアグルーヴに気ぃ回せや。あいつがお前に尽くしている事は、学園じゃ周知の事実やぞ」

 

「……エアグルーヴに、なんと詫びればいい?」

 

「スズカに、それとなく伝えといたで。あとはスズカが上手くやってくれるやろ。お前も、ウチに付き合えや。お前が同期にハブられとったのは、誰もが知っとるしの」

 

ルドルフは『強すぎた』ことで同期から避けられ、切磋琢磨する好敵手が殆ど不在だった。それはルドルフの不幸でもあった。当代最強級の『違う世代のウマ娘たち』が友人と公言することは、裏を返せば、同世代に理解者がいないことでもある。ルドルフのそんな現状を卒業まで心配していたトウショウボーイは、一期後輩のマルゼンスキーに『ルドルフが育つまで、お前が補佐として支えてやれ』と言い残し、オグリキャップの現役期間中までは生徒会副会長も同然の立場にいた。マルゼンスキーの手を離れた後も、意外にルドルフ自身の強さと立場に原因がある凡ミスが多く、マルゼンスキーがお目付け役から退いた後は、オグリ、タマなどがミスをフォローし、テイオーの入学後は、テイオーにも手伝わせていたりする。エアグルーヴは飴と鞭の『鞭』を担当するイメージが強いが、寛大なルドルフといい対比である。最も、これはブライアンが役職にまったく無頓着なためでもある。とはいえ、対外的にはそれらしいこともできるのがブライアンの実力だが。

 

「負けたよ。さて、向こうに……」

 

「おわっと!!エアグルーヴとスズカ!?」

 

「お待ち下さい、会長。今回は私も同行します」

 

門のところに来たところを、エアグルーヴが待ち構えていた。過労から回復したようで、制服姿だ。

 

「しかし、君まで学園を不在にするのは」

 

「前・副会長らが引き受けてくださりました」

 

「えー!エアグルーヴとスズカもいくのー?まいったな、ドラケンじゃ乗せらんないよ~」

 

と、遅れてやってきたテイオーが愚痴る。

 

「仕方あるまい。先方にトムキャットを手配してもらおう。あれならば複座だ」

 

「待ってください、会長。何故、戦闘機の名を?」

 

「うむ。『彼ら』の手で異世界への門が設営されているが、それは航空機、あるいは船の類でいくことが前提なのだ。あいにく、定期便は出てしまったばかりでね。エアグルーヴ、君らを運ぶのに、複座の飛行機があと数機はいることになった。テイオーが乗ってきたものは単座機だからね」

 

「トムキャットねぇ。あれ、元は艦載機やったな。人気あるからのぉ」

 

「人気あるから、手配が先着順だというからね」

 

「あの、どういう事でしょうか」

 

「わからんへんか?お前らに飛行機は操縦できへんやろ?ハイヤーが必要なんや」

 

「だから、戦闘機の類をなぜ?」

 

「異世界の自衛隊などの手を借りるからさ。あいにく、全員が乗れる輸送機や飛行艇の定期便は出てしまったばかりだ。戦闘機で運んでもらうわけだよ」

 

「待ってください、私の記憶が正しければ、トムキャットというものは、アメリカ海軍が過去に使用していたはず。自衛隊ならば、F-15なのでは?」

 

「その部隊、門の先の世界での自衛隊の特殊部隊なんだって。それで、自衛隊の本隊が採用してない飛行機もあるんだって」

 

当たらずとも遠からずな説明で流すトウカイテイオー。Gフォースは実際には、扶桑空海軍の装備の評価試験を担当する。自衛隊の飛行開発実験団とは密な連携関係にあるので、彼らに『自衛隊が持たなかった戦闘機や、扶桑保有の大戦型レシプロ軍用機の試験データ』を提供している。1949年の時点では、扶桑海軍次期主力機に選定された『F-14』の評価試験中。64Fの本隊以外では、『第四世代相当のジェット戦闘機』を運用する能力を持つ唯一の部隊でもあった。

 

「何がなんだか…」

 

至極当然の反応なサイレンススズカ。

 

「スズカにはわかんないよね、こーゆー世界。マヤノなら、大コーフンものなんだけどさ」

 

「言えてるな。エアグルーヴ、彼女の具合はどうだい?」

 

「はい。トレーナーからの連絡によれば、マルゼンさんが手配した病院で治療を受け、ついこの間に退院したそうです。引退も考えたそうですが、病院の尽力で免れたと」

 

「それは良かった。迎えのハイヤーを手配した。テイオーはドラケンで先にいけ。私達は後から追う」

 

「ゴルシは?」

 

「生徒会の仕事の引き継ぎ作業が完了するのにあと一時間かかるから、先に行ってくれと連絡を受けた。奴なら問題あるまい」

 

「ゴルシだしね」

 

「ゴールドシップだものね」

 

「ゴルシのやつなら、問題あらへんわな」

 

口を揃えて、『ゴールドシップなら問題ない』と発言されたため、エアグルーヴは流石にたじろぐ。

 

「待て、お前達。何故、そう言い切れる?」

 

「エアグルーヴ、考えてみぃ。ゴルシやぞ?」

 

「ええ、タマモ先輩(実はサイレンススズカはエアグルーヴの一期下のウマ娘であるので、タマモクロスの後輩である)の言うとおりよ、エアグルーヴ。ゴールドシップなら、新幹線だろうが、運転やらかそうじゃない」

 

「……ありえる」

 

サイレンススズカにも、その認識であるゴールドシップ。エアグルーヴも否定しないところに、ゴールドシップの日頃の行いというのが疑い知れた。

 

「さて、ハイヤーが来たようだ。」

 

「んじゃ、ボクは先行くね」

 

「私が乗ってきた複座型の整備が終わっているはずだ。マヤノが待ち構えていた場合は、乗せてあげるんだ」

 

「わかった」

 

テイオーらの予測どおり、マヤノトップガンは治療後に長期休養に入っており、テイオーにくっついてく気満々であった。

 

「でもさ、オグリ先輩とブライアン、大丈夫かな?」

 

「ブライアンとオグリほどのウマ娘であれば、そんじょそこらのゴロツキ程度は問題ないだろう。ブライアンはああ見えて、腕っぷしもかなり強い。それに、ヒーロー達がパトロールを強化してくれたそうだからね」

 

ナリタブライアンは、並のゴロツキややくざ者程度であれば、容易く返り討ちにできるくらいの腕っぷしはあるが、『通達』の影響で控えざるを得なくなってしまった。ブライアンは幼少期、ものすごく臆病な性格であった。それを懸念した父が空手などをやらせた結果、現在の無頼風の性格となったという。武道は成長期のウマ娘の性格の改善のために薦められる事はままあり、オグリキャップの同期であった『ヤエノムテキ』がその好例であろう。ヤエノムテキは入学当初は問題児で、悪く言えば、スケバンじみていた。担当トレーナーが古風な武道家を兼ねている人物になった事、振る舞いが粗暴であるのを憂いた家族の勧めで武道を始めた事が転機となり、レースを走る頃には、現在の礼節を重んじる性格に変貌している。また、ルドルフはオグリとブライアンが居残るにあたり、ヒーローユニオンに警備の強化を公式に依頼したと明言した。

 

「面倒なことになったよね。自衛以外は現役中は喧嘩を控えろって」

 

「自衛であればいいそうだが、協会はこれ以上のスキャンダルを異常に恐れていてね。おそらく、シンザンさんの就任にあたり、予防線を張ったつもりなんだろう」

 

「エルコンドルパサーが言ってたけど、ビコーペガサスがすごく凹んでたって」

 

「あの子はヒーロー番組大好きだからね。さて、どうしたものか」

 

「タイシン先輩とタキオンのアイデアで、向こうのヒーローの動画を送ってやることにしたよ」

 

「それはいいアイデアだな。タキオンにしては、粋な計らいだ」

 

「この騒動、思ったより長引きそうだね」

 

「うむ。どのくらいまでがOKなのか、曖昧なところがあるからね。ビコーペガサスはそこがはっきりとわからずに混乱しているのだろうな」

 

 

ビコーペガサスはヒーロー大好きっ子であるが、通達で『ヒーローのような事ができなくなる!!』と落ち込んでいた。思わぬ反応に、協会のほうが困惑する事態になっている。タキオンはその話を聞きつけると、歴代仮面ライダーの変身をまとめた動画を、珍しく『厚意』で送った。ウマ娘も一人の少女。『仕方なく』拳を振るうしかない事は往々にして訪れる。協会の通達は、ウマ娘たちに一種の恐怖となって降り掛かったのだ。トレセン学園のウマ娘たちが文化祭で、スーパー戦隊もののモノマネ『ウマソルジャー5』を披露していたが、現役中の生活態度に明確に規則を設けるなど、旧ソ連邦の構成諸国でもしなかったことである。これはシンザン体制の発足前の前体制が最後っ屁のように設けた規則で、現役中のスキャンダル防止という題目で、キングヘイローの失踪を理由に、突然設けられた。このため、現役中の全ウマ娘がリーグを問わずにパニック状態に陥ってしまった。

 

「どうなるのでしょうか、会長」

 

「別世界での我々のアニメを基準に考えるべきだな。それで大まかな判断基準がわかるだろう」

 

ルドルフも『それ』に確証がないため、エアグルーヴの質問に、ぼやけ気味の回答しか示せない。

 

「カイチョー、答えになってなくない?」

 

指摘するテイオー。

 

「今回の通達は異例すぎる。何故、急にあのようなものを、前協会長は最後っ屁のように出したのか?皆目わからんのだ。破廉恥な格好は保護者会で問題視はされていたが、生活態度の規範までを明確に定めるなど、過去のロシア(旧ソ連)でも例がないはすだ。もちろん、あのナチスでさえ」

 

――前協会長は本当にこの通達を理事会にかけたのだろうか?ナチス・ドイツ、旧ソ連邦、そして、戦前の『大日本帝国』も、協会による、ウマ娘の生活態度への明確な介入は避けていたのに?――

 

ルドルフをしても、前協会長の体制の出した最後の通達の意図を図りかねていた。この騒動は『日本ウマ娘競走協会が混乱に陥った時代の最たる出来事』として記録された。(とは言え、協会の前体制の関係者らは『暴漢の撃退や、トレーナーへの仕返しなどの自衛行為は禁じていない!!』という趣旨の火消しに躍起になっている。曰く、本来は『破廉恥な服装などをさせない』ための規則だったが、ある古参理事の意見が通り、生活態度への戒めにまで及んだという)火消しに躍起になっている協会だが、トレーナーへのプロレス技かけ(エルコンドルパサーやメジロマックイーン、ゴールドシップがしていた)による仕返しもできなくなるのか?という質問が、多くのウマ娘から嵐のように寄せられる事態に発展していた。協会は後に、『努力義務である』、『生活態度を律させるために発表したが、ウマ娘たちに混乱を招いた事はお詫びする』という声明を発表。懸命に騒動の火消しを図るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

――さて、テイオーはルドルフらと別れ、ドラケンを隠してある駐車場へ行くと…――

 

「やっぱりぃ~。マヤノったら、そんなに鼻息荒くして待ってないでよぉ」

 

「ぶーーー!テイオーちゃんたちだけずるい~!マヤだって、ヒコーキ乗りたいもんー!」

 

案の定、マヤノトップガンが鼻息荒くして、テイオーを待ち構えていた。普段はテイオーが『まだまだお子ちゃま』と言われるが、この時はマヤノが『お子ちゃま』のように駄々をこねていた。

 

「あーもう!わーった!わかったから!早く後ろに乗りな。これはカイチョーが使った複座型だから、乗れるよ」

 

「わーい!」

 

コックピットのキャノピーは開いている。テイオーは操縦席に、マヤノは後部座席に乗る。

 

「あれ、テイオーちゃん、ヘルメットは?」

 

「オリジナルと同じ外見だけど、中身は相当に弄くられてるからね。ま、8000m以上の高高度をわざわざ飛ぶわけでもないし、与圧はされてるから、かぶんなくても大丈夫だよ」

 

「へー。」

 

「離陸するよ。カイチョーがフライトプランを出してくれてる」

 

「あれ、ドラケンって、確か……」

 

「そう。小さいし、軽いから、離陸に必要な距離が元から短いんだ。アメリカのデコレーションプレーンを見慣れてるマヤノには、非アメリカ機の渋さはわかんないかなー?」

 

アメリカの戦闘機を『デコレーションプレーン』と表現してみせるテイオー。ドラケンは古い世代の飛行機であるが、飛行性能面は後発の戦闘機にも劣らない。また、整備に必要なマンパワーは、同時期や後発の他国製戦闘機より遥かに少なくて済む。そこが23世紀の航空研究者らが戦後世代の装備てんこ盛りなアメリカ機を『デコレーションプレーン』と批評する理由の一つだ。

 

「むーー!!マヤだって、それくらいわかるもんー!!」

 

ぷくーっと、顔を膨れさせるマヤノトップガン。テイオーと同室ながら、目立った交流はなかったが、この時からが『ルームメイト』としての本当の意味での交流の始まりであった。

 

「上昇するよー」

 

「ん…っ!」

 

ドラケン(ハンドメイド改造機)の熱核タービンエンジンが唸りを上げ、軽量なドラケンの機体を良好な加速で上昇させていく。

 

「――ん…、行ったな」

 

二人の乗る機の機影を確認したルドルフは、どこかいたずらっ子のような微笑みを浮かべ、とりあえずは安堵の表情を浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1949年も下半期に差し掛かると、戦後の事が議論されだした。戦争が終われば、徴兵で集めていた兵士や戦時昇進の士官が不要になるからだが、銃後が軍人に冷酷になったことで、徴兵で入隊したものが戦後も残りたがる事、民間軍事会社を作る事が容易に予測された。21世紀日本は帰還兵問題などを知っているにも関わず、教育現場などに元軍人が入ることを禁じようとしたため、軍人の再就職問題が社会問題化。21世紀の倫理観を持っているはずののぞみすらも、教職への転職が駄目であったのがクローズアップされた結果、結局、多くの軍人は(民間軍事会社も天下り先と見做され、規制されたため)太平洋戦争後も軍に居残るのを希望。故郷を捨てる者も続出するわけだ。これに困ったのが農村部で、軍人に冷たくしたら、働き手となる若者達や働き盛りの年齢の者が帰ってこなくなったからだ。自業自得であったが、後に引けなくなったからと、謝れない日本人の悪い点が凝縮された結果で、複数の農村が数十年後に廃村となっていく。また、戦争が長く続いたため、関連企業で働く人間も膨大な人数に膨れ上がっていた事も、日本側が殖産興業の観点から困惑した要因である。日本側が対策として、どんどん軍事技術からの民需へのスピンオフを進めさせた結果、カールスラントの『技術立国』のブランドは完全に失墜。カールスラントは『昔の名前で出ています!』と言わんばかりのアメリカ合衆国の下請けに堕ちてしまう。日本連邦がドイツ系国家を史実の戦中のエピソードから、完全には信用していなかったのも、カールスラントには災難となった。カールスラントはゲーリングが主導して、扶桑へのボッタクリを指示したが、それが却って、政治的な命取りとなった。ジェットエンジンも米国製が主流となり、カールスラント軍からは独自開発機が消えつつある。ウルスラの必死の抵抗も虚しく、メッサーシュミットMe262やHe162サラマンダー(ウィッチ世界では、フォルクスイェーガーという名称は採用されていない)は、それより世代が違うレベルで高性能な米国製戦闘機『F-86』の前に、為す術もなく駆逐され始めている。日本連邦が異常な速度で機種を更新しているだけで、他国は史実の戦後第一世代ジェット戦闘機相当の機種への機種変更でさえ、四苦八苦しているのだ――

 

 

 

 

 

 

 

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