ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第三百八話「幕間その51 てんやわんや2」

――自由リベリオンは基本的に、派遣軍がそのまま扶桑に庇護を願ってきたのを亡命政権として成立させたものだ。本来はトルーマンをそのまま連れてくるはずだったが、それは叶わなかったため、首班をドワイト・アイゼンハワーが兼任している。扶桑に庇護されるものの、日本連邦の国民感情の問題で、リベリオン軍は常に最前線での献身を強いられた。議会での議決の必要がないに等しいため、新兵器の調達は早く、F-100やF-8などの兵器を1949年には戦力化できていたが、艦艇はそう補充が効かないため、殆どが移動司令部扱いであった。また、鹵獲も積極的になされ、戦艦はすでに五隻を入手していた。そのため、陸空軍が実質の主力と扱われていた。そこに属するシャーリーは、自由リベリオン最高のエースとして、プロパガンダに使われまくっていた。その関係で、プライベートの時間が殆ど確保できずにいた。最近はシャーリーとしてよりも、北条響としての活動が多い理由でもある。自由リベリオンは、日本人からは『裏切りそう』、『自分達のしてきたことを棚にあげてる』と散々な言われようであるが、血の献身については確かで、多くが自国の土を踏めないのを覚悟で戦っていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

――カールスラントは帝政の解体はなんとか免れたが、長い混乱期に突入してしまう。内戦が地球連邦軍とNATO軍の介入で終わったものの、21世紀ドイツの介入による公職追放令の影響は大きく、軍の有力な将校の大半が日本連邦のヘッドハンティングで引き抜かれるという珍事に遭い、軍の有名無実化が進んだ。ドイツ連邦が史実でも、戦前の支配層であった『プロイセン時代の貴族たち』の基盤を意図して壊そうとしたせいでもある。戦前からの職業軍人も名誉剥奪の上で、公職追放の対象になるという噂が飛んだのも、ヘッドハンティングに多くが応じてしまう理由となった。ドイツはコンドル軍団の出身者を主な標的にしたが、ドイツはウィッチ世界では、事情が根本的に異なるため、当事者の本人のみならず、それを慕う多くの若手・中堅将校、下士官・兵が部隊ごとヘッドハンティングに応じて、保有機材ごと国を去る事件が頻発。崩壊状態の政府が再建され、状況を把握した時には『有力な部隊が丸ごと、日本連邦の義勇兵となっていた』のである――

 

 

 

 

 

――特に、エルヴィン・ロンメル将軍などの有能な将軍も引き抜かれていた事は、カールスラント軍が1945年に夢想していた『本土奪還』を水泡に帰すのには充分であった。統合戦闘航空団という枠組みも事実上は有名無実となったため、1939年以来、カールスラントが持っていた『軍事面での主導権』は失われた。ドイツ主導で『外洋海軍』の夢も放棄させられたため、カールスラントは軍事面、経済面などで計り知れない打撃を被った。その代わりに、日本連邦に軍事的な国際貢献を求めるようになる。日本連邦はこうした、ウィッチ世界の外圧によって、『超大国』へと変貌し始めるのだ――

 

 

 

 

 

 

――日本連邦はリベリオンの大艦隊に正面切って対抗できる国と見なされ、巨大な軍事力の維持を義務づけられた。周りが軍事的に衰弱していった故のなりゆきでもあったが、結果的に扶桑軍の雇用維持には繋がった。日本側としても、扶桑の力で『長年の経済的低迷』を抜け出せたため、扶桑にあまり強く出られなくなっている。疫病への対処で、扶桑の戦争どころではないからでもある。カールスラントがドイツの強引な施策で急激に衰弱していったのを目の当たりにしたのも理由であった。扶桑の身分制、勲章や報奨制度などへの口出しは控えられるようになったのは、扶桑の力で、長年の諸問題を解決したからだ。その代わりに、自衛隊が旧軍から引き継いで研究していた超兵器の数々が日の目を見た。マジンガー以降のスーパーロボットは民間でその研究が独自発展した末の産物だが、その礎となるのだ――

 

 

――新野比家――

 

「ここが秘密の場所なんですか?」

 

「そうだ。両寮長及び、年長組には見せておくようにと、家主の野比のび太氏からの要請でな」

 

年長組のウマ娘達は地下格納庫に案内された。そこで目にしたのは。

 

「戦闘機やロボットの山ですね」

 

「地球連邦軍の重要な試作機や、彼と彼の一族が協力関係にある部隊の保有機材を預かっている。乗るのは許可されているが、手荒に扱うなよ」

 

 

釘を刺すトウショウボーイ。現役時代は長らく生徒会長であったため、現役の古参世代よりも目上である。ルドルフとマルゼンスキーにとっての先輩であるからで、マルゼンスキーが『先輩』と呼び、緊張を解かない点で、その立場が窺えた。

 

「休校になったとはいえ、節度はそれぞれでわきまえるように。まあ、普段の生活態度は不問に付すがな」

 

トウショウボーイはその全盛期に『天馬』と謳われ、ルドルフとマルゼンスキーの更に前の世代の筆頭格である。前世では、ミスターシービーの父親でもあった。そのため、シービーに生真面目さを加えたような容姿であり、良く似ている。これは前世で親子だったためだ。

 

「シービーによく似てますね」

 

「ルドルフとテイオー君のようなものさ。最も、シービーは私の従姉妹だが」

 

フジキセキの指摘に頷くトウショウボーイ。かつて、学園で三強と言われ、絶対的権勢を誇った強者。その後継がルドルフであったことは、ルドルフが引退した現在でも、外部からの詮索を生んでいる。

 

「前会長、あなたのかつての名声は存じております。ですが、一部の生徒達が反発しておりまして」

 

「それは想定内だ、グルーヴ。良かろう、久しぶりに見せてあげようじゃないか。ルドルフとシービーが子供の頃に魅了された『天馬』の走りをな」

 

微笑うトウショウボーイ。オグリ世代が子供の頃に引退間近であったため、その更に後の世代が第一線にいる時代では、『はるか昔』のウマ娘という感覚であった。トウショウボーイはルドルフのような三冠ウマ娘ではないし、かつての八大競走の内の二つしか制していない。だが、同格の二人のライバルとの死闘、一矢を報いた『クライムカイザー』など、人材が豊富で、上位のウマ娘にあまり格差がなかったこともあり、ハイセイコーがターフを去った後の『第一次黄金期のウマ娘たち』と評されている世代である。ルドルフとシービーは彼女たちに憧れ、学園の門戸を叩いたのだ。

 

(だ、大丈夫?カイチョー)

 

(ハハハ。な~に、昨日に『措置』を受けたからな。足は全盛期の状態だ。瞬間的な疾さはマルゼンより落ちるが、持久力は上だ)

 

心配して、耳打ちするルドルフに、自信満々に答えるトウショウボーイ。彼女は有馬記念を勝ち抜けるほどの持久力を誇り、全盛期においては『マルゼンスキーがトウショウボーイに勝るのは、スピードだろう』とされていた。また、時代を担ったウマ娘であるため、『境地』に到達済みでもある。同時代に境地に達したウマ娘はごく少数であり、彼女は『マルゼンが怪我しやすい体質でなければ、自分の後継に指名していた』というほど、マルゼンを評価していた。ルドルフにとっての『会長』はトウショウボーイであるのだが、やはりと言おうか、テイオーがこれまでしてきたことと同じ仕草なため、テイオーは苦笑し、ヒシアマゾンはなんとも言えない表情をしていた。

 

 

 

 

 

――と、いうわけで、現役世代の要請もあり、トウショウボーイは久方ぶりに、その走りを見せる事になった。観戦を選んだルドルフは子供のようにウキウキし、対戦相手を務めるマルゼンスキーとエアグルーヴは緊張を隠せない様子であった。

 

「マルゼンさん、あなたらしくもありませんね」

 

「だって、相手はトウショウ先輩だもの。私はシニア級を怪我で諦めたから、今回が初めてなのよ」

 

「フ……、現役時代はイキってたお前から、そのような殊勝な言葉が出るとはな」

 

「昔の事はやめてくださいよ、先輩」

 

「テンポイントが見たら、確実に大笑いされとるところだぞ」

 

「うぅ…」

 

トウショウボーイの口から、マルゼンスキーは若手時代、年相応に血気盛んで、先輩達に絡まれては、返り討ちにしてきた武勇伝を持っていた。しかし、シニア級に移る年に大怪我をし、そのまま引退を余儀なくされたという。そのため、TTGとの対戦経験がなかったのだ。

 

「さて、始めるとしよう」

 

往時の勝負服に身を包むトウショウボーイ。他の二人も勝負服を着ている。本気を出すには、勝負服は必須アイテムだからである。そして、フジキセキの合図で、三人はススキヶ原の街を駆け抜けていく。他はゴールドシップが設営したテントで、ドラえもんから借りたひみつ道具『スパイ衛星』で様子を確認する。

 

「フォーム自体はごくありふれたものだね」

 

「ああ。会長の世代までがよく使っていた古いタイプのフォームだよ。形は綺麗だけど、時代遅れ気味さ。なのに、なんで、現役張ってるエアグルーヴより速いんだい!?」

 

「先輩は天馬と謳われた。今は慣らしをしているだけだよ。それで、エアグルーヴより速いとはな」

 

「これで、舐めプをしているってのかい」

 

「ああ。先輩は当時としては優雅なフォームもそうだが、『境地』を会得している記録がハッキリあるウマ娘としては、最古の世代だ」

 

「ああ、今のウマ娘なら、多くが開眼するアレですか」

 

「そうだ、フジキセキ。だが、先輩の世代は同格の者が複数いたから、あまり知られていないが、当時としては抜きん出たウマ娘だったのは間違いない」

 

公正中立を装っているが、言葉の端々でトウショウボーイを持ち上げているルドルフ。自分の憧れだったからだろう。

 

 

 

――ススキヶ原は意外に広い。大規模な公園が街の圏内にあったり、裏山が残っているからで、東京都内の郊外に位置するとはいえ、かなりのどかな方だ。再開発が進む時期とはいえ、当初の計画よりかなり自然が残っている。環境保護の考えが世間に根付いてきた時代の流れだったが、裏山が東京に残された数少ない『自然』だったからでもあった。ウマ娘達の模擬レースは、瞬く間に街中の噂になった。エアグルーヴとマルゼンスキー、トウショウボーイの対決はまさに、世代を超えた夢の対決。競馬のオールドファンが一度は考えた組み合わせに近かった――

 

(クソ……、噛ませ犬は私のキャラではない!!だが……!!)

 

エアグルーヴは桜花賞を史実と違い、出走が叶い、それを制覇した『ダブルティアラ持ち』だが、全盛期のポテンシャルを取り戻したマルゼンスキーとトウショウボーイの前では、『格落ち』は否めなかった。一期下の友人であるスズカのみならず、既に第一線を退いたウマ娘である二人に負けるのは、現役世代の名折れとなってしまうため、必死に追従しようとする。

 

「ほう。その顔…、ダイナカールの子か。悪くない足を持っている」

 

「前会長は……母をご存知なのですか!?」

 

「奴は私とマルゼンの直接の後輩だ。引退後すぐに籍を入れ、子を儲けたと聞いていたが…、そうか、君がその子か」

 

トウショウボーイ、マルゼンスキーから見て、後輩の第一世代に属していた事が明言された「ダイナカール」。エアグルーヴの母である。ある年のオークスを制した経験があるウマ娘で、引退後すぐにエアグルーヴを儲けた。そのことから、マルゼンスキーが既に大学生相当の年齢に到達している事がわかる。

 

「母をご存知なのなら、話は早い。私とて、現任の副会長職にある身。黙って、貴方方の噛ませ犬になるつもりは毛頭ありません!!」

 

「いい目をしている。ダイナカールもいい子を育てたものだ」

 

トウショウボーイはそれだけ言うと、往時に三強を謳われし理由を見せる。

 

「久方ぶりに……駆けてみせよう!天を!!」

 

トウショウボーイが現役時代に達した『境地』は、テイオーとマックイーンが最終的に到達した境地の始祖というべきもので、『天翔けし閃き』と形容すべきパワー。テイオーとマックイーンがそうであるように、翼が生えたようなビジョンが周囲に幻視として現れ、一気に加速する。ミスターシービーのものと似ているが、それはウマ娘としても親類、前世では親であるが故である。

 

「先輩が加速した?……なら、こっちもトップギアよ!!」

 

マルゼンスキーはスーパーカーが加速するが如く、フルスロットルで対抗する。全盛期のマルゼンスキーは『TTGに正面切って対抗できたであろう、唯一無二のウマ娘』とされていたので、当然の流れである。エアグルーヴも負けじと、『女帝』の名にかけての全力疾走をしようとするが……。

 

(ばかな……足が……思うように……!?)

 

なんとかついていけているが、エアグルーヴ本来の走りではない。やはり、病み上がりの体では、フルポテンシャルを出せなかったのだ。

 

(病み上がりでは、これ以上の速度は無理か……なら、最後で差す!)

 

体の調子を悟ると、即座にレース戦略を切り替え、対応する。冷静でさえすれば、エアグルーヴはその名に相応しい頭脳派である。秋華賞の不運さえなければ、メジロラモーヌ以来のトリプルティアラも確実視されていただけの事はある。

 

 

 

「すごいですね、前の会長さん。マルゼンさんが本気を出して追うなんて」

 

「前会長は、現役時代に『天馬』の異名を誇ったウマ娘だ。マルゼンがシニア級に行けていれば、打倒を期待されたほどに一時代を築いた。伊達に学園の生徒会長を担われた方ではないよ、スペシャルウィーク」

 

「会長さんにとっての会長だぞ、スペ。当然、学園で一、二を争う実力を誇ってたわけで」

 

ルドルフとゴールドシップの解説に聞き入るスペシャルウィーク。トウショウボーイはルドルフとマルゼンにとっての生徒会長なのだ。当然、本来は既に成人済み。ウマ娘としてはとうに『盛りを過ぎた』年齢。だが、マルゼンスキーと共に当時の実力を取り戻したため、エアグルーヴが本調子でないにしろ、置いていかれないようにするので精一杯なほどの実力を見せる。スペシャルウィークはこの時に初めて、母のように慕う(初対面の出来事以来、スペシャルウィークはマルゼンスキーを慕っている)ウマ娘の『本気』を目の当たりにした。

 

「前の世代を舐めるなってことだ、スペ」

 

次の世代が前の世代を追い抜くことが当たり前の風潮に、一石を投じたわけだ。ルドルフの連勝記録を超える者が、史実ではアーモンドアイまで現れないように。ある時代に確立された記録を超えるのは容易いことではない。マヤノトップガンのレコードを抜き去ったのが、それから10年くらい後のディープインパクトであるように。

 

「ゴールドシップさん」

 

「さて、アタシは沿道の野次馬連中に焼きそば売ってくらぁ。マックイーンは連れて行くぞ」

 

「ち、ちょっとぉ!?」

 

「スペ、お前もだぞ」

 

「えぇ~!?」

 

 

ゴールドシップはメジロマックイーンとスペシャルウィークを強引に連れていき、自身の焼きそば売りを手伝わせるようだ。すでに沿道には、噂を聞きつけた野次馬が集まっている。ゴールドシップにとっては、格好の商売日和ということだろう。そんなゴールドシップだが、実は競走馬としては、二人より格上であったりする。ウマ娘としては、年長組に属するらしいが、その正確な年齢は不明である。(ゴールドシップはG1を六勝しており、実はルドルフとオペラオーらに次ぐ戦績を誇る)

 

「やれやれ。あれで、G1を六勝済みの強豪とはな」

 

「とはいえ、沿道に野次馬が集まっとるで。お前が統制せにゃいかんで、ルドルフ」

 

「…わかった、タマモ」

 

立ち上がるルドルフ。同世代に理解し合えるウマ娘がいなかったのが、彼女の現役時代における不幸である。友と呼べる者が同世代におらず、前後の世代の最強格のウマ娘にしか、その真意は汲み取れない。また、身近な者の好意に気づかない面もあるなど、朴念仁と思われる面もある。しかし、元来は表情豊かであり、新人時代~若手時代には、テイオーと同様のポジションにいたという証言もある。本心では同志を強く求めている節もあり、相手が年下でも、自分が認める実力があれば、フレンドリーに接する。タマ・オグリの二名がルドルフを名前呼びするのは、現役時代にルドルフが実力を認め、彼女らも時代を担った自覚があるからである。

 

「タマモ先輩。どうして、会長さんを名前呼びで?」

 

「ウチとオグリが現役の頃、ルドルフも生徒会長になって日が浅い上、同期からは避けられてもうて、同志を強く欲しがってたんや。ウチとオグリは眼鏡に適ったんや。意外にさみしがり屋なんや、コイツ」

 

「た、タマモ!」

 

「ええじゃないの。同期に友達がおらんでも、後輩には恵まれたんやし」

 

大笑するタマモクロス、照れるルドルフ。ルドルフは同期に友がおらず、強者としての苦しみを気安く漏らせないという立場でもあったため、後輩のウマ娘たちとの会話に安らぎを見出した。ルドルフの根底にあるものを理解したオグリとタマモは、お互いの引退後はルドルフの良き友人となっている。スペシャルウィークはここで、タマモクロスに『切磋琢磨できる同期に恵まれた自分は恵まれている』と示されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――その頃の日本連邦はカールスラントから得た莫大な賠償金を国民の福利厚生費に充て、軍事費には殆ど回そうとしない意見が大勢であったが、扶桑が戦争状態であることを鑑み、4割半ほどは軍事費に充てることで落ち着いた。扶桑にとっての太平洋戦争は国家存亡の危機であるからで、扶桑への配慮が働いたのである。その代わりに、技術供与は盛んに行われているため、1949年次の扶桑軍統合参謀本部では、21世紀水準のコンピュータとネットワークが普通に使われるに至り、軍の暗号もデジタル化されている。この利点は後々、アルジェリア戦争での圧倒的勝利に結びつく。史実で『米軍に比して、20年は遅れていた』という姿はなく、21世紀の先進国の軍隊と遜色ない光景が統合参謀本部にはあった。連合軍の高官たちはこの『時代を先取りした』光景に戦慄したが、ガリアの復興に邁進していたシャルル・ド・ゴールはそれを知る由もなかった。それが近未来でのガリアの『悲運』の伏線となる。統合参謀本部を視察したカールスラント軍の高官たちは、『日本連邦を怒らせると、こちらを数回は周回遅れにするまで、徹底的にやられてしまう』と悟り、事の発端(航空エンジンと燃料噴射装置のライセンス料金のぼったくり)を起こした高官『ヘルマン・ゲーリング』を軍中央から追放した事の正しさを痛感した。実際、カールスラントの技術は既に『時代遅れ』と化しており、機甲部隊の装備も殆どが時代遅れと扱われている。実際、日本連邦の主力艦はフェーズドアレイレーダーを標準装備とし、大型艦にはミサイル装備が行き渡りつつある。43年度にカールスラントが有線操縦で試行錯誤中であったものが、遥かに進んだ技術で以て完成・量産されたのは衝撃であった。しかし、それと比例して高額化するというのは予想外の結果で、『ミサイルは砲弾を置き換えるものではない』という結果も明らかになっている。また、特攻を目の当たりにして、その精神を病んだウィッチも多く、軍を多くが去った後の人員補充もままならない。義勇兵が見せた特攻が強いショックとなったのは言うまでもない。日本側の軍縮の要求、連合国側の軍拡の要求という、矛盾した要求を突きつけられた扶桑軍は、未来技術の活用を更に進める。その意味を悟れなかったシャルル・ド・ゴールとその取り巻き達は、後年に自分たちの失脚を招く紛争へと突き進む――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――彼らが『アルザス級戦艦の未成船体』を完工させると表明したのは、1949年のこと。ペリーヌ・クロステルマンはそれを止めようとするが、軍事力を復興させ、日本連邦の軍事的な突出を抑えようと考える世論も大きく、結局、工事の遅延工作で精一杯であった。戦争前に完成していた『リシュリュー級』の老朽化が現実問題となり始めたからで、日本連邦の大和型が連合国海軍の象徴扱いされるのにガリアの右派が激しく反発していたからだ。結局、アルザス級の工事は同年中に再開されるが、アルジェリア戦争前には完成せずに終わる。完成した時には、アルジェリア戦争の大勢は決していたり、日本連邦が大和型どころか、それを更に超える艦艇を送り込んできたことで、運用側が尻込みしたりしたせいである。結局、ガリアは陸海空軍の全てで、かつての強国の軍隊というイメージが崩壊してしまうが、アルジェリア戦争後に史実の『ミラージュ』戦闘機シリースを造れるようになるという恩恵はあり、それが慰めとなる。日本連邦の太平洋戦争での実情をあまり知らなかった故の悲劇とも言える。国土復興にあまりに情熱を燃やしていたペリーヌ・クロステルマンはアルジェリア戦争での敗戦の要因だと、世間から反感を買うが、公には『シャルル・ド・ゴールの失脚と同時に議員の地位から退き、慈善事業に傾倒していった』とされる。だが、実際にはその後は日本連邦に滞在し、『紅城トワ』として戦っていたのである。ペリーヌ・クロステルマンとしては、努力が目に見える形で報われる事は少なかったが、元々が旧・領主(かつての貴族)の出である故に、プライドが高いガリアという国を見誤っていた面もある。一方で、「紅城トワ」としては財を成すなど、強かなところもある。そこをひっくるめて『ガリアの悲劇』と後世では評されたという――

 

 

 

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