ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前半はシンボリルドルフ(ウマ娘)、後半はセシリア・オルコット(インフィニット・ストラトス)がメインキャラです。


第三百二十五話「ルドルフの素、セシリア・オルコットの新天地」

――シンボリルドルフは素では意外に子供っぽいところが残っており、そこも先輩たちからは子供扱いされる理由であった。家では三女という『意外な立ち位置』なので、子供っぽいところは存外に多い。仮面を脱いだ後はテイオーと大差ない振る舞いができると、ルドルフは期待していたが、エアグルーヴが現役時代同様に仕えてくるという『誤算』により、生徒会長時代同様の振る舞いを維持せざるを得なかった。ある日のこと――

 

 

 

「カイチョーも大変だね」

 

「責務を終えて、肩の荷が下りたと思ったら、エアグルーヴがな……」

 

「エアグルーヴの気が済むまでさせてあげな。エアグルーヴって、元々、入学した時は、カイチョーの二期目の選挙の対立候補だったんしょ?」

 

「ああ。随分前の事だ。オグリが引退する年だったかな。それで副会長に選んだ。ブライアンがあんな調子だったからな」

 

「ブライアンのほうが期間長いんじゃん」

 

「奴は肩書を有効活用しない無頼なウマ娘だからな。前会長の期間に直に手が届く」

 

ウマ娘たちの間では、引退後の人生において『現役時代の活躍具合による』社会的序列がある。一時代を築くレベルの活躍を残せれば、引退後も高収入の仕事が確実に約束される。この風潮はシンザン~ハイセイコーまでの世代に表面化したもので、マルゼンスキー世代の不幸ぶりで『引退後の年金生活』が国に保証されるようになったという結果に繋がった。マルゼンスキーは強すぎたことで『同期を不幸のどん底に叩き落とした』と批判されるが、マルゼンスキーとて『シニア期を怪我で断念している』のである。

 

「前会長かぁ。去年の秋くらいにあった『駿大祭』の資料にあった『天翔けるウマ娘』って、前会長のことだよね?」

 

「テンポイント先輩は華があったが、性格に難ありでな。それで、ハイセイコーさんは前会長をお選びになられたそうだ。前会長の頃までは指名制だからな。私は任期途中で選挙制に移行したが」

 

「そこのへん、聞いてないの?」

 

「昔にマルゼンから聞いただけだからな。テンポイント先輩はかわいがってはくれたが、子供心に怖くてな…。それでトウショウ会長のもとに入り浸るようになったんだ。今のお前のように」

 

ルドルフは恥ずかしそうだが、かつてはテイオーのポジションにあった時期もある。テンポイントのことは『怖い人』と見ており、それで温厚なグリーングラスや、現在のルドルフ自身のように、寛大なトウショウボーイに懐いていたと明確にする。

 

「グリーン先輩って、クリーク先輩みたいだよね?」

 

「グリーン先輩のほうが先達だがな。今で言うクリークのような人でな。ずいぶん世話になった。シニア級で真価を見せたり、温厚な性格だったり……。クリークの事を大目に見ているのはだな…」

 

「だいたいわかった」

 

 

グリーングラスに恩があるからか、似たタイプのウマ娘であるスーパークリークのことは大目に見ているらしいルドルフ。と、そこへ。

 

『ルドルフちゃん、そっちはどうかしら』

 

『ぐ、グリーン先輩!』

 

学園でルドルフ政権の残務処理をしている当人から電話がかかり、ルドルフは思わず直立不動になる。

 

『テンポイントちゃんがね、連絡を寄越せって』

 

『先輩。ど、どーにかできない?る、ルナ……』

 

『ダーメ。ちゃんとしなさいな。子供の頃から、あの子が苦手なのは変わってないのね』

 

『……テンポイント先輩、すごくこわいんだもん』

 

「あの子が聞いたら、間違いなしに泣くわよぉ~」

 

「うぅ。ルナ、こわぁ~い…」

 

グリーングラスの前では、言葉遣いが『ルナ』の時代に立ち帰るルドルフ。テンポイントの気性の荒さが子供時代はすごく苦手だった事も、ここで明確になる。何事も第一印象は大事なのがよくわかる。テイオーはそんなルドルフの『皇帝という仮面を脱いだ、一人のウマ娘としての姿』にニヤつきながら、そんな様子を楽しむのだった。

 

 

 

――なお、ルドルフの一期目まではその規則に則っての指名であったが、二期目からは選挙を経ている。理事長の代替わりによる方針転換などがあったからで、ルドルフは就任期間そのものは長いが、期に分けると、意外に二期目は短いのだ。また、ルドルフは表向きは『任期満了』とされたが、実際は不祥事の責任を取っての辞任である。しかし、協会の要職につける意向のあったシンザンは『任期満了による辞任』を取り繕うように通達し、学園もそう取り繕った。ルドルフは代えがたい人材と見られた故だった。そこにウマ娘競争協会内の派閥抗争と政治的思惑が見え隠れしていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑の兵器整備計画の狂いは航空母艦にも及び、35000トン級の大鳳の量産はジェット機時代を鑑みて放棄され、唯一完成した大鳳は翔鶴型の三番艦扱いとされた。その代わりに生産された『瑞龍型』は超大型空母であり、扶桑の要望で重装甲が船体にも施された。Iフィールド及び、ピンポイントバリア発生装置を組み込んだ関係もあって、建造は長期に渡ることになり、一番艦の就役は『早くて』1952年厳冬の見込みであった。これはアングルドデッキなどの新機軸に空母艦載機の搭乗員を慣れさせる必要があったからである。瑞龍型はキティ・ホーク級に範を取った艦型であるため、基本的には同級に酷似する。艦型の大型化は工期の長期化と空母機動部隊の量的低下を招いたが。ジェット機時代の空母は超大国であるアメリカ合衆国でさえ、11隻の分散配備が限度なのだ。そこで、日本連邦は航空戦艦や強襲揚陸艦の運用で『空母機動部隊を補う』事を行った。また、蒼龍は『制海艦』のプロトタイプにすることになり、強襲揚陸艦の制海艦運用のテスト艦となるため、実戦配備への復帰は叶わず。連合艦隊は自前のエアカバー力の不足に悩み続けることになり、空軍も内部の派閥抗争で、64F以外の部隊の殆どが有名無名な実態である事は大問題であり、Gフォースによる戦闘訓練名目で動員させる方法が取られるなど、グダグダ感が否めない実態であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑の軍需産業も再編成の時代を迎え、中小メーカーの航空部門の大半は三大最大手メーカーに吸収合併されていった。生産力向上のためである。その結果、リベリオンには及ばないまでも、往時のカールスラントの二倍の生産力に至った。これは工程の近代化などで自動化が進展したおかげである。鉄道分野でも、新幹線の導入が進み始め、南洋で先行運転が始まるなど、明るい話題も生まれていたが、軍人たちが銃後と戦線の落差についていけなくなるケースが増大したため、流石に戦線の状況に関する報道も許可された。当時は日本側が軍部への締め付けを強めた結果、新規入隊が雀の涙ほどになるというお粗末な状況になっており、結局、人命喪失が大きすぎると、司令官や参謀が政治的都合で更迭される公算が大きいため、自衛以外は基地から動かない部隊が続出。本来は『邪道』とされる精鋭部隊による一騎当千を是とせざるを得なくなっていた。そこも、64Fがブラック企業と揶揄されるほどに多忙な理由だった――

 

 

 

 

 

 

 

――航空機材の航続距離はそれまで、欧州用に切り詰められてきていたが、太平洋戦線の本格化で『伸ばせるだけ伸ばせ!!』に転換したため、欧州空軍からは『異常だ』と顰蹙を買うことになったが、太平洋戦線では航続距離の長さが生存率を左右するため、空中給油も始まる。ただし、空戦ストライカーは単純な空中給油で活動時間の延伸はできないため、第二世代理論以降は時空管理局の技術提供で『魔導タンク』が開発され、活動時間の延伸のために活用される。太平洋では、島々に少数機しか配備不能な基地の多数建設は現実的ではないからだ。第二世代宮藤理論式ストライカーは1949年には、64Fの脇を固める部隊への配備が完了しつつあったが、格闘戦を至上とするために、第二世代理論の重装備を嫌う者が多く、大々的には使われない有様であった。この時の要望が『第三世代宮藤理論』への開発に繋がるのである。その外観の参考にされたのが『インフィニット・ストラトス』(イメージソースとして)なので、そこも日本系国家らしいといえば、らしい結論であった。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そのインフィニット・ストラトスは23世紀の技術力であれば、装甲部の小型化は容易なことなので、代表候補生らの機体はその技術で改装されていった。実戦前提のセッティングにされたため、『本来の用途』向けには調整が必要となってしまったが、むしろ、そのほうが束の想定した用途でもあった。コアには自己意思があり、聖闘士のような『とんでもなく強い者のパワー』を感じ取ると、自己防衛機能が働き、全機能をオフにする。それは重大な問題でもあったので、束も自己防衛機能の一定程度の抑制装置を組み込み、意図せぬ解除の抑制に努めた。その内の一機『ブルー・ティアーズ』はIS世界で『なかったことにされた』姉妹機の開発ノウハウも組み込まれたものの、セシリア自身の資質が狙撃特化に近いため、『データの質が良くない』と、本国から指摘されてしまい、憤慨した彼女は自分から申し出る形で、23世紀の技術でさらなる改良を施すため、23世紀の野比家にいた――

 

 

 

「まさか……。こうなるとは」

 

デザリアム戦役後の野比家の本住所はフォン・ブラウン市に移っていた。戦役の戦禍から、日本も復興途上であるからである。セシリアはフォン・ブラウン上空を飛行していた。ISは本来、高機能の宇宙服という名目で発表されていたため、その名残りで宇宙空間でも飛行できる。MSのオールレンジ攻撃とその対抗手段(アンチ・ファンネルシステム)を目の当たりにし、実際にアンチファンネルシステムが稼働すると、ブルー・ティアーズを放てなくなるという問題が発覚したため、最近の装備は『ストライクガンナー』にしている。ブルー・ティアーズの機能を封印する代わりに、ラックに携行した状態で高機動バーニアにするという『本末転倒』なものだが、安全牌であるのと、バックパックにメインスラスターがあるため、通常仕様より移動軸線も安定している。

 

「月の裏は敵の基地があるというけれど、常にどこかかしらに隕石がぶつかるはず。居住地域にはぶつからないのか、それとも未然に防いでいるんでしょうか?」

 

月には『隕石が降ってこない』ポイントが存在するものの、そこにピンポイントで都市を建てられるのだろうか。セシリアにはそんな疑問があった。月面都市は元々、観測基地などが発展していった末に生まれたとはいえ、いくつもの階層を設けて住まうという点で、月面都市の発展には『土地ごとの上限』がある事が分かる。この頃にもジオン残党による騒乱は変わらずに続いている。MS以外の残存兵器(ジッコやガトルなど)での散発的な襲撃もあるからで、ノビタダが所用で旧ジオンの影響が残る『グラナダ市』に赴く際の護衛として飛行していた。

 

「でも、異星人と睨み合いをしているというのに、連邦の首都が置かれるという事は、このあたりは基本的には平和なのでしょうね…」

 

月にはベガ星連合軍の基地がまだ存在しているが、グレンダイザーのパワーアップや地球連邦軍側の機動兵器の高性能化に恐れをなし、最近は大人しくしている。グレンダイザーらによる完全決着作戦を恐れているのであろうか。それとも。

 

「こんなところで、本来の用途にハイパーセンサーを使うとは思いませんでしたわ」

 

ISは警護の時には展開したままにするのがセオリーになりつつある。デザリアム戦役の教訓で、治安が良いとされる月面でも『反連邦組織のテロは普通に起こる』事が痛感されたため、改良型ISは警護にもってこいであった。デザリアム戦役でネオ・ジオンは解体を迎えたが、旧ジオン残党そのものは未だ健在であるという状況であるからで、如何にジオンが一年戦争後の世界に禍根を残したかが窺える。(情報ネットワークが死にかけから復興するのに、従来技術によらない通信技術の確立を必要とするなどの経緯も大きい)また、情報ネットワークが一度死にかけた事の弊害で、国家や組織による情報操作が容易くなってしまった。これはザビ家が巧みに利用したところであるため、戦後に復興が急がれた。食料品生産が地下化されたのは、デラーズ・フリートのせいであるため、ジオン共和国としてははた迷惑そのものであり、ミネバには『長じた後も残党を統率してこなかった』罪がある――

 

 

「しかし……造山運動の賜物とはいえ、本当にムー大陸が出現するとは」

 

ブリティッシュ作戦の力は地球に造山運動を促すほどのもので、太平洋に『南洋島』相当の巨大大陸が出現することで決着を見た。未来世界では『ムー大陸』(位置の関係から)と本当に名付けられ、居住が始まっている。位置の関係で、日本州の管轄地域とされているが、故郷を失ったシドニー、キャンベラの元住人が移住し始めている。食料品製造プラントも同地に設けられ、実質的に北米の代わりに食料品生産を担うとされた。

 

『一年戦争のコロニー落としはオーストラリアの16%を消し飛ばすほどのパワーだった。そんなパワーを受けて、地球が傷を癒やすために起こした造山運動の産物さ』

 

23世紀以降の地球はムー大陸が新たな居住地域となる形で復興していく。オーストラリアからの移民が多いが、同地域の東部が荒廃し、居住可能地域では殆ど無くなったためである。

 

『今は開発始めの段階さ。たぶん、ニューシドニーやニューキャンベラは生まれると思う。オーストラリアやニュージーランドからの移民が多いからね。アジアやオセアニア地域全体からの移民の行き先になると思う』

 

ムー大陸と名付けられた新大陸はウィッチ世界で言う『南洋本島』に相当する。位置は造山運動の関係で、ウィッチ世界とはずれている。太平洋に巨大大陸が浮上したため、周辺の海流も変化し、日本列島は気候変動で北海道以外は完全に熱帯になってしまったが、仕方ないところである。

 

 

「それにしても、なぜ、払い下げの戦闘機で?」

 

『民間機に乗っても、そこでテロに遭う可能性が大きいからね。払い下げとはいえ、ジオンのMSよりは早く飛べる』

 

払い下げのブラックタイガーで飛行するノビタダ。ブラックタイガーはもはや旧型の航空機だが、ジオン軍の旧式MSや航空機より圧倒的に高速で飛べるからだ。

 

「直にグラナダだ。表向きは僕の親父(ノビカズ)がそこで工場の増設を指揮してるから、その視察。手続きは、僕とその警護ならフリーパスだから、軍用の港から入ろう」

 

野比一族はデザリアム戦役後はアナハイム・エレクトロニクスの新しい盟主になったため、軍用のゲートが使用できる。ノビタダが現役軍人でもあるため、使用できる根拠がある。

 

 

 

 

――グラナダ――

 

月面第二の都市『グラナダ』。旧ジオン軍の拠点であり、ネオ・ジオン時代に至るまで、一時期を除いて、親ジオンな世論が主流な都市である。ジオンはグラナダを『都合よく使える土地』としか見なしていなかった事が露見したため、グラナダもジオンを見限りつつあった。とはいえ、長年のよしみはなかなか解消できない都合上、ジオン系勢力にMSを卸し続けていた。

 

「まさか、IS姿でオートバイとは…」

 

「その装備じゃ、車は無理だろうからね。ま、この時代はエレカ化されて、操作が単純化されてるから、パワードスーツ姿でも運転できるよ」

 

「うぅ。こうなったら、やけくそですわー!」

 

ISを纏ったままで、別の乗り物を動かすというのは初体験だが、実のところ、銀河連邦では古くからある光景である。セシリアも代表候補生であるので、あらかたの乗り物の運転はできるようにしてある。(料理だけは家柄もあり、論外であるが)だが、本来は自前で飛行可能(それが前提)なISの脚部を細かく操作しての乗り物の運転は初めてであった。元はランディング・ギア代わりの役目しか果たしていなかったため、細かい動作はいらなかった。だが、機体の装甲部が人の四肢を覆う程度にまで小型化されたため、今後はこうしたことが増えてくる。セシリアは半ば『野となれ山となれ』な心境で、港に用意されたオートバイタイプのエレカにまたがり、工場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――セシリアらが向かう先にある工場では、ダブルゼータの大型化派生機『ジークフリート』の第三期生産分が製造されている。エゥーゴ時代には連邦系のMSを生産しているので、完全にジオンの工廠ではなく、連邦向けのMSも卸している。ガーベラ・テトラのジオン系風の外装はグラナダ工場製のものなので、モノアイを使うMSを得意とするのには代わりはないが。また、ガーベラ・テトラの真の姿と言える『ガンダム試作四号機』のレプリカが保管されている(GPシリーズでは最後発かつ、実機の製造が遅れた関係で、セミモノコック構造から『ムーバブルフレーム構造』に置き換わっている)ことから、それを引き取る目的もあった。ガンダムは意外に多くが造られたが、多くが政治に翻弄され、期待された働きを示せないまま、戦いが終われば、永久保存名目で秘匿されてしまう事が多かった。それが宇宙戦争時代には『エース専用機』として活用されるに至った。そのため、多くのガンダムが近代化改修の末に使われるに至った。とはいえ、有名機種はあらかたロンド・ベルが保有権を持っているため、他部隊の嫉妬を買っているのも事実であった――

 

 

 

 

 

 

 

――アナハイム・エレクトロニクスは一年戦争から、第二次ネオ・ジオン戦争期までのガンダムタイプについての保存を所管されていたため、その時期のガンダムは実機、ないしはレプリカを有している。ロンド・ベルの主力の機体の多くは『その時期に基礎設計がなされた』ものを近代化改修でアップデートしたか、設計図をもとに新造された機体である。下手な新造機より強かったりするのは、パイロットが最高レベルであったり、設計当時の想定を超えるポテンシャルを引き出せるほどに新規パーツが高性能化していたりするためだ。また、新造機にしても、既存のガンダムを基礎にするものが多く、Zプルトニウスにしても、Zガンダムから派生したものである。ガンダム試作四号機も、基本は先行する『ゼフィランサス』ないしは『フルバーニアン』に類似するが、ジオン系高機動型MSに影響を受けた箇所があるという。当時は可変MSは特務部隊、ないしは空挺部隊用に配備されていたが、正統なオーソドックスな『RX-78』の系譜』はエゥーゴ/カラバ、ティターンズの双方が計画した『ガンダムMk-Ⅱ』のマイナーチェンジ型(陸戦用に空間戦用の姿勢制御スラスターを廃したもの、装甲とフレームをガンダリウムにした上で、主兵装をジェガン用に替えたもの。エゥーゴ計画のものが採用された)がエース用に生産されているが、旧式化が進展している。そのため、発掘されたプロトタイプガンダムMk-Ⅱ(試作0号機とも)の設計を改善、リファインしてみる話もある。この時点でのガンダムMk-Ⅱは『旧式のMS』であるが、元は量産を前提にしていたため、ジャミトフ・ハイマンの意向で『予算が削減された』という。それを当初の案通りの『ワンオフモデルとして、正統なRX-78の強化型に差し戻す』試みの予算が軍から申請されている。ガンダムMk-Ⅱはエゥーゴの象徴扱いされ、そのまま連邦MSの歴史になったが、元はティターンズ開発のガンダムである。ティターンズに在籍していたが、その中での良識派であった将校は『ティターンズ系MSが忌み子のように扱われるのは我慢ならない』と意見具申している。元はティターンズ系MSであったガンダムMk-Ⅱを『当初の案』のように『ハイスペックを実現する』意味に差し戻す。それがティターンズ在籍経験者達が『エゥーゴ政権下での自分たちの意義を見出したい』とする願いであった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――ティターンズそのものは残党が各地でテロ行為を行っていたりするが、良識派の将校であれば、正規部隊に復帰できたケースもあるので、ガンダムMk-Ⅱの試作案での再開発は彼らが主導している。皮肉なことに、彼らが発掘した設計案には『ガンダム開発計画』の技術がふんだんに用いられているので、ティターンズの過去の行為の間違いが一つ証明されてしまうというオチがつく。そこまで見込んで、プロジェクトを承認した点で『ユング・フロイト』は遠謀深慮のできる女傑である事がわかる。伊達に銀河中心殴り込み艦隊のエースではなかったということだ――

 

 

――アナハイム・エレクトロニクス グラナダ工場――

 

「ここが、この時代の兵器工場ですの?」

 

「工程は自動化されてる箇所が多いから、手慣れた工員なら、プラモデル感覚で作れるそうな」

 

ノビタダは自身の名を出し、見学の案内を頼んだ。セシリアは『SP』という扱いである。彼らが目撃した工程は『ジークフリート』の組み立て工程で、35mを超える巨体(クスィーガンダムと比較しても、尚も巨大である)の機体がブロックのように組み上げられていく。機体は原型機と同じ『ムーバブルフレーム構造』だが、製造工程では、子供の玩具によくあるブロック玩具のような感覚で組み上げられていく。

 

「すごいですわね。あのような巨体をよく…」

 

「スーパーロボットに比べれば、かわいいもんさ、35m級は。とはいえ、元が20m級だから、だいぶ大型になってる。変形合体をさせる上で各部に充分な強度を持たせるためだね」

 

「変形合体……」

 

ジークフリートはZZと設計を共有するため、外観も酷似しているが、連邦軍の悲願だった『単機での城塞攻略』を主眼にしたため、サイズが合体型スーパーロボット級のものになっており、兵員輸送用のオプションまでも存在する特殊な機体だ。宇宙戦争時代、機動性に多大な問題を抱え、量産も頓挫した『デストロイド・モンスター』に代わり得る機体として、重MS部隊用に量産されている。モンスターはその後に『VB』(可変爆撃機)の系譜と交わる形で生き永らえたが、サイズが小型化した故の『火力への不満』が燻っていたのも事実。ジークフリートは立案当時の最新ガンダムであった『ZZガンダム』を城塞攻略用として再設計する形で生まれ、第二次ネオ・ジオン戦争前後から投入されだし、近年の紛争では『戦線の火消し役』か『火力にものを言わせての掃討役』として投入されている。ダブルゼータの量産機としての側面もあるが、戦場での運用は二次大戦中の『ティーガー重戦車』などに近く、そのあたりも指して、『モビルスーツ時代に相応しい形で生まれた重戦車』とされる。

 

「運用方法は大昔における重戦車に近いですが、コイツは一機で『陸軍の三個砲兵師団』以上の制圧力を持ちます。ダブルゼータを基にしたので、昔の重戦車にはない近接格闘能力もあります。あるとないのでは、まったく違いますから、戦線では好評ですよ」

 

アナハイム・エレクトロニクスの社員が説明する。一見して、『ダブルゼータガンダムをそのまま拡大しただけ』の機体だが、ダブルゼータの基本能力はそのままなので、昔の重戦車と違い、懐に飛び込まれても、高い自衛能力を持つという。

 

「元々、アメリカ陸軍とカナダ陸軍の末裔である北米方面軍が開発していた『デストロイド』という機動兵器があったんですが、人型の戦車の域を出ない代物でして。防空や警備などでは重宝するのですが、モビルスーツなどには不利な点が多いので、その代替となる兵器として計画されたのがコイツです。コイツ自身も重戦車じみてるので、生産数は普通の機体より少ないですが」

 

大艦巨砲主義じみている思想のもとで造られたためもあり、ジークフリートも通常機より圧倒的に生産数は少ない。戦略爆撃機や重戦車のような位置づけ。『スーパーロボットを使うまでもないものの、通常機では歯が立たない敵や城塞の粉砕に用いる』という目的で開発・運用される『マスプロダクションモデル』という点は画期的。『下手なモビルアーマーより費用対効果に優れる』とは連邦軍の評価である。

 

「なぜ、そのようなものを?」

 

「モビルスーツは技術発展の過程として、戦車の辿ったのと似た道を辿っていますが、戦車と違い、重戦車的な機体などに一定の需要があるのです。初期にあった砲撃支援用という分類が事実上、淘汰された後も、需要はあるので、それを代替する意味もあります」

 

セシリアの疑問に、社員は答える。支援用MSという分類が廃れた後も、需要はあり続けたため、原型機同様の重武装にしたのだと。実際に連邦系の支援用MSは『ジムキャノンⅡ』が未だに第一線で運用されている、これは後継機と目された『Gキャノン』がぱっとせず、ジムキャノンⅡの代替となれなかったのも関係している。(スタークジェガンは装備換装である)

 

 

「それに、連邦軍の本星軍がここ最近の紛争で人手不足でしてね。下手な量産機より、こうした特別機のほうが受けるんだそうです」

 

モビルドールの使用が規制された後、地球連邦軍はパイロットの数の不足に悩んでおり、『下手な量産機で蹂躙されるよりは、一騎当千の特別機に猛者を乗せて突っ込ませてから、味方を進軍させる』方法を推進している。これは地球連邦軍の直接の先祖たる日本連邦軍が多くの場合で取らざるを得なかったドクトリンである。地球連邦軍は『量産機が艦隊ごと少数精鋭のエースに蹂躙されてきた』ため、それを避けるためでもあるが、地球連邦軍の度重なる戦乱での人手不足が主な理由である。

 

「戦争続きですものね」

 

「無人機の使用が規制されてますからね。それもあって、エースはすぐに生まれますが、凡人と超人の差が顕著に現れます。モビルスーツなどの分野では特に。なので、連邦も頭が痛いのだそうで」

 

 

アナハイム・エレクトロニクスの社員も言うように、地球連邦軍は民間軍事会社のエースを軍に召集するほどに、本星では人手不足が顕著だった。ガトランティス戦役の痛手から回復する間もない戦乱の世、モビルドールや無人戦闘機の非人道性からの法的規制により、地球連邦軍は量産機での物量攻勢をするのが困難に陥っており、ロンド・ベルのような一騎当千の外殻独立部隊に有事即応を丸投げしている。一見して、再建が進むように見える地球連邦軍だが、実際の懐具合はお寒い限り。マクロス13、宇宙戦艦ヤマト、超時空戦艦まほろば、ヱルトリウムなどの一騎当千のエース艦に地球の衛星軌道の防空を依存するまでに落ちぶれている。ガトランティス戦の痛手から地上軍は立ち直る途中かつ、無人戦闘機の廃棄で戦闘機の実働数が下落している。

 

 

「戦闘機は残ってないのですか?」

 

「戦争続きで、生産が消耗に追いつかないのです。議会は新鋭機をゴリ押ししますが、現場は既存機の再生産を望んでいるのも」

 

皮肉にも、戦争続きな事が航空産業の息を完全に吹き替えさせたが、議会の議員の多数派は最新鋭の戦闘機(コスモパルサー、コスモファルコン、コスモ・ゼロ21などの新鋭機)の生産を望む一方で、現場はコスモタイガーⅡ、旧コスモ・ゼロ、ブラックタイガー、セイバーフィッシュなどの既存機種の再生産を要望する。そのせめぎあいが地球連邦軍を苦しめる。セシリアはこうした事情に、『いつの時代も、上級の役人は現場の苦労を顧みないものなのですね…』と漏らし、社員とノビタダはそれを聞いて、(現場側の人間な事もあって)思わず、苦笑いを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 


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