――結局、史実の行いで失脚したウィッチ世界の参謀級以上の軍人は数多かったわけだが、当然ながら『失敗を別世界で犯したのは認めるが、なぜ、その自分と似て非なる存在である自分らに名誉挽回の機会を与えないのか?』という反発が生じた。この抗議に難儀した日本は最前線に送り込むことで対処とした。ダイ・アナザー・デイでは、それに関連して、M4中戦車は陣営を問わずに大規模に投入されたが、空爆やGウィッチ、仮面ライダーやスーパー戦隊らによる攻撃などでゴミクズのように失われ、ダイ・アナザー・デイでの損耗率は非常に高かった。事後、あまりの残骸の多さで、各国が資源として再利用することが推奨されるほどの撃破数であった。ダイ・アナザー・デイ後半には、敵もM26などを相次いで投入したため、M4では正面から対抗不能になり、当時にブリタニアで試作段階にあった『センチュリオン』、『コンカラー』を投入し、急場を凌いだ。コンカラーの開発はセンチュリオンの発展性を理由に、存在に疑義を呈されたが、『自前の重戦車がある』という心理効果が重視され、配備にこぎつけたわけだ――
――カールスラント軍が急速に衰退したのは、カールスラント至上主義的な口ぶりを多くの古参兵が『他国軍人の実力を試す』のに使ったことが咎められるようになったことへの人事的制裁への恐怖があったためだ。古参兵はどこかで、それを必ずと言っていいほど使っていたからでもある。(ルーデルも例外ではない)また、戦前からの職業軍人を追放しようとしたドイツの施策も大いに影響した。それに救いの手を差し伸べたのが、のび太とドラえもんである。その関係で、日本連邦は労せずに良質の人材を得られたわけである。しかも、彼女らを慕う者らが、部隊ごとやってきたというおまけ付きである。整備員などにも、コンドル軍団以来の古参が多いからで、そこもドイツの誤算であった。内乱の一因は、旧・西ドイツ政府の後身である現・ドイツ連邦政府の急進派が史実での冷戦時代の記憶を前提に、東独地域相当の人間達のカールスラント政府とあらゆる組織の中枢からの排除と、軍人達の『合法的な死』を目論んでいたのが露見したからでもあり、ドイツは自らの業で、平行世界の同一国家を事実上の無政府状態へ追いやったわけだ。(これはあくまで、カールスラントの民主共和制化のための最終的な強行手段なだけだと、言い訳がましく述べたが、結局はカールスラント人の社会を不安に追い込み、秩序を崩壊寸前に追いやっただけであった)カールスラントは、このあらゆる分野での打撃から経済的に立ち直るまでに50年近くを要し、軍事的再建に明確な目処が立つまでにも、相当に長い年月を必要とした。カールスラントが『国の体を保つ』ためにも、カールスラント皇室は絶対不可欠と見なされ、史実と対照的に、その地位を(権限の縮小と『象徴』としての人身御供的変遷を辿るものの)保つ。ガリアが内部の派閥抗争にかまけたために、怪異に負ける様を記憶しているカールスラント人は立憲君主制を選んだのだ。ただし、国の体は保てたものの、軍事的には以前のような抜きん出る存在には、ついぞ戻れずじまいとなる。そんなカールスラントをまとめるための軍事的象徴が『戦艦ビスマルク』の系譜であったのは、艦娘ビスマルクを疎んじたカールスラント海軍にとって最大の皮肉な事実であった。
――地球連邦軍は移民星から供給される余剰の鉱物資源を、鉱物資源の減少したガリアに提供しようとしたのだが、最初から他力本願での物的復興を極端に嫌うペリーヌが丁重な物腰で断っていたのだ。だが、それがド・ゴール派の暴走の原因となる。ペリーヌはあまりに純朴すぎたといえる。それがド・ゴール派の暴走に大義名分を与えてしまう形になり、ペリーヌがそのことに気付くのは、日本連邦に渡った後。ガリアは史実同様に独自路線に突っ走ってしまい、アルジェリア戦争でそれが終焉するまで、独自勢力の維持と構築にに躍起になる。ペリーヌはその要因を作った責任を取るため、ド・ゴールの退任と同時期に、政界を去る。以後は登山や慈善活動に精を出すようになり、1966年頃に孤児院を開き、その経営者として過ごす。ペリーヌとしては、祖国の暴走を制止せず、派閥抗争に明け暮れる醜悪な祖国の政界に嫌気が差し、徐々に俗世の生活から離れていくが、紅城トワとしては、日本連邦軍人であり続ける。(ただし、ペリーヌが506統合戦闘航空団の隊長の打診を断ったのが、ガリアの混沌の始まりであるので、ペリーヌに非がまったくないわけではない)ペリーヌは国を愛しすぎ、自力での復興の理想を皆で共有できると信じすぎた。それが結果的には、愛する祖国の首を締めたわけだ。それがペリーヌの『功績であり、過ちでもあった』
――ちなみに地球連邦軍も一年戦争末期、ジオンを完全に潰そうというジャミトフ・ハイマン、グリーン・ワイアット率いるタカ派、スペースノイドに寛容で報いるべきとする、レビル率いるハト派に分かれ、醜悪な派閥抗争を行っていた。レビルの行方不明による混乱で最大勢力化した『中道派』が間を取ったわけだが、結果的に、ジオン残党による戦乱が続く事になった。度重なる戦乱と宇宙開拓時代の幕開けで、ジオニズムは『時代遅れ』となったが、アステロイドベルトには、生き返ったギレン・ザビ率いるオールズモビルが、ひっそりとその牙を研いでいる。地球連邦は国土復興を急ぐが、またもや、地球は侵略者に狙われる羽目となる。それはいささか未来の話になる。なお、ロンド・ベルは改革派と中道派の同意で編成が豪華となった経緯上、旧エゥーゴのアーガマ隊と、一年戦争時の第十三独立部隊を源流とするが、地球連邦軍の旧・衛星軌道艦隊のエース部隊の流れも汲んでいるという。つまり、地球連邦系組織のエース部隊構想の集大成と位置づけられたわけだ。歴史的には『64Fの流れを汲む』のもあり、64Fとの連携、同隊のロンド・ベルとの事実上の一体化は当然の流れであった――
――その遠征部隊は色々な苦労(奇妙な交戦規定の締結など)を強いられつつも、とりあえずは互角に戦えている。センチュリーガンダムがドム部隊を蹴散らし、教職員と生徒のとりあえずの安全は守られた。
「ふう。あとで工兵のジムⅡに運ばせよう」
「ドムのマイナーチェンジ型だったんですか、先輩」
「ああ。増槽を積んでたりするからな。元ジオン兵が組織に加わるようじゃ、世も末だな」
ドワッジでセンチュリーガンダムに太刀打ちできるはずがなく、瞬く間に撃破、あるいは無力化された。ジオンの源流になった国家の残党にジオン兵が加わる。なんという歴史の皮肉だろう。
「ジオンはナチスとも手を組むんですね」
「やったことは大差ないし、ジオンも事実上は独裁国家だった。こいつらにはお似合いの道だろうよ」
黒田は組織と手を組むほどに節操のない、ジオン残党に呆れ果てたようだった。要するに、世の中に復讐し、鬱憤を晴らせば、それでいいのだ。それがナチス残党軍に『体の良い使い捨ての駒』として利用される理由だ。ジオン残党も、グリプス戦役と二度のネオ・ジオン戦争の後は『本気でジオンの中興など信じていない』戦争屋が主流であり、中には『過去に脱走した連邦兵が、地球連邦への復讐の大義名分として、ジオン残党の看板を掲げている』とんでもない例すらも普通にあるのだ。地球連邦が情報ネットワークインフラの復興で、政府の自浄作用を取り戻すと、急速にジオンの名はその輝きを失った。祖国の亡国の果てに、縋りつくものが『ナチス・ドイツ』の亡霊というのも、歴史の大いなる皮肉である。
「だからって、ショッカーの上部組織に入るんですか?おかしくないですか?だって……」
「連邦に一泡吹かせられれば、なんでもいいんだろうよ。最近はジオン残党を捕縛したら、看板を使う連邦の脱走兵だった例も多いからな。うんざりするくらいさ」
地球連邦軍は宇宙開拓時代を迎えるまでは派閥抗争に明け暮れていたので、脱走兵もそれなりにいた。また、非合法なことをさせていた部隊の隊員がジオン残党を名乗るという『節操のない』顛末を迎えた部隊も多い。子供時代の静香たちがメカトピア戦争の終戦式典で述べた『地球連邦の存在の肯定』はそうした者達の憤激を招いた。過去の人間からすれば、地球連邦は理想の実現だからで、静香もメカトピア戦争終戦後の式典で、その事に触れている。とはいえ、軍閥が跳梁跋扈する時代の地球連邦は信頼に値しないとする者は多く、それが二十三世紀の野比家に少なからずの苦労を強いることになる。ジオン系のスペースノイドから憎まれているのみならず、グリプス戦役当時はエゥーゴのスポンサーの経験があるために、過激なティターンズ派からも敵視されているからで、二十三世紀の当主であるノビタダが連邦軍人を志した理由は、そこにある。その時代の地球連邦軍、とりわけ本国軍は、長い戦乱で深刻な人材不足を来たしている事から、『脱走兵は自分から投降すれば、新時代の到来に免じ、過去の罪を赦免する』という方針を打ち出し、懐柔を図っている。しかし、それでも、ジオン残党として散っていく『脱走兵』は多い。それは彼らなりのプライドでもあった。ノビタダは遠い祖母の性格に手を焼きつつも、自身の恋人の遠い先祖である事を再確認している。
「どうして、そんな事を?」
「のぞみ。まだ若いお前にはわからんだろうが、昔、南方の日本兵が戦後もジャングルに潜んでたって話があるだろう?それと同じだ」
黒田は自身が華族の看板を背負う立場である事から、ジオン残党の立場に一定の理解を示す。ジオン残党はかつての大日本帝国陸軍の敗残兵が南方に潜んでいたのと似た境遇の者も多いからだ。さらに、脱走兵にしてみれば『今更』というのが本音な事に理解を示す。
「先輩……」
「華族の看板を背負わされた身なんでな、あたしは」
黒田のシニカルな気持ちが機体の外部スピーカー越しに読み取れる。自身も『背負うつもりはなかったが、前当主の意向で、すべてを背負わせられた』経緯があるからだろう。
「ジオンの連中は、日本兵よりたちが悪い。共和国がそのせいで『なくなった』のにも悪びれないからな」
「たしかに」
「お、ケイ先輩からの連絡だ。ドリーム、お前のダブルエックスのオーバーホールを始めたそうだ」
「え~~~?」
「定期整備の時期だったろ。代替機はリ・ガズィ・カスタムだそうだ」
「あれですか?」
「増産にあたって、実働データを集めてくれって要請も来たそうだ」
「うーん、しゃーないか」
「大変だな、君も」
「まぁ、一応はエースパイロットの端くれですから」
二号ライダーが茶々を入れる。とはいえ、いずれも、地球連邦軍の最新鋭試作機だ。(とはいえ、リ・ガズィ・カスタムは元々、リ・ガズィのアムロ専用機として開発されていたのを、アムロがνガンダム系に乗り換えたため、エースパイロット用の上位機として転用した代物。その間に、構成技術の世代交代が起こったため、予定より高性能化したという)
「なるほどな。一機は予備パーツ扱いかい?」
「予備パーツの手配が遠征に間に合わなかったんで。本当は六機分のパーツを頼んでたそうなんですけど」
デザリアム戦役の後、初期生産のZプラスが老朽化してきたために、その代替機の一つに選ばれたという、リ・ガズィ・カスタム。純粋なZ系可変機の一つの集大成であるため、エースパイロットたちには好評である。(純粋な可変機に先祖がえりしたため、運用に柔軟性が戻った)。また、後発機のリゼルは大量生産を意図したため、限界性能は低い。それを嫌うエースパイロット用に回された。元々、アムロ用に開発されていたので、機体の限界性能目標がとんでもなく高かったからでもある。また、実質の実働が単機なのは、予備パーツの確保のためだ。
「……何話してるのか、ぜーんぜんわかんなーい!!」
ふくれっ面ののぞみB。専門用語の羅列で話にまったく入れないからだ。キュアハートも苦笑いである。
「こっちの仕事の話だよ。パイロットだもん、あたし」
「ぶーーー!わけわかんないってー!」
こちらは制服姿でぶーたれるのぞみB。のぞみAは軍人であるのと、素体の錦がテストパイロット畑のウィッチであったため、テストパイロットの仕事もこなせる。その関係上、新型機を任せられるのだ。
「そろそろ、結城が君たち(B世界のプリキュア5)にもわかりやすい敵機の見分け方表を作っただろうから、戻ろう」
「あたしは一応、周囲の索敵をしてから戻ります」
「頼む」
忘れられがちだが、ライダーマン/結城丈二の本分は『科学者』である。その側面がクローズアップされるわけだ。B世界のプリキュア5に『どういう形のロボが敵で、味方なのか』。それを正式に教えるためでもある。
「でも、わたし達に教えるったって、役に立てるかどうか」
「気の持ちようだよ。逃げるか、助けを求めるかの判断材料にはなるさ」
B世界では、改造人間に力負けしたり、シャドームーンに六人がかりでも、傷一つ負わせられないなどの苦戦が多かったためか、気落ちしているのぞみB。しかしながら、この頃には、A達との交流で少しづつ強くはなっているのも事実である。二号ライダーが励ますが、どうにも自分の中にある焦りを拭えないのぞみB。
「今度のはZガンダムの末裔だし、プラモ部の連中に見せてやりたいなぁ」
「へ、なんで?」
「あたし、前世で子供は数人できたんだけど、その真ん中の子が男の子でね。その頃に、この学校、共学に変わってさ」
「えー―――!?」
「その子は在学中にプラモ部でね。あれこれ強請られたよ。その頃には仕事も落ち着いてきてる年齢だったからね。この頃にもあったと思うよ、女子校としてのプラモ部」
のぞみAの『前世』では、第二子が長男であり、その子が学齢期に入る頃には、この学園は共学校に模様替えしていた事を教える。その頃に長男にねだられ、ガンダムのプラモをいくつか最初に買い与えた思い出を語る。
「その頃はメカなんて分かんないから、子供にテキトーに買ってやったら、動画とかでテクニック覚えて、在学中はプラモ部の部長にまでなってたな」
細かいことは定かでないが、Zガンダムとジェガンを買った記憶はあると延べ、完成した時は息子を褒めてやった記憶もあるという。
「自分がその実物を動かす立場になるなんて、全然思ってなかったよ。この時期なら、お台場は初代の立像があるかな」
「あれ、本当にできたの?」
「その世界に行って、パイロットしてるからね。そりゃ驚いたよー?漫画の中のメカの多くがそのまま実現してるし。しかも、ユーザーインターフェースは意外に簡単ときてる」
「ユーザーインターフェ…?」
「動かす操作機器の配置とかを差す用語さ。地球連邦系のユーザーインターフェースは共通してる規格のものだしね。スーパーロボットくらいか。独自のものは」
「ゲッターに乗った事あるんですけど、合体した後のあの重機みたいなレバーの多さには参りましたよ。まぁ、音声入力とボタンも併用なのは救いでしたけど」
「早乙女博士製のゲッターは熟練しないと、カカシだというからね」
二号も本職の一環で、ゲッターG以前の世代の古いゲッターの操縦席(合体時)を見た事があるが、クレーン車のような印象を受けたと延べ、真ゲッターロボ以降の機体はインターフェースを改善していくつもりだったと聞いている。流竜馬や一文字號レベルの人材など、20年に数人いれば御の字レベル。ゲッター線への親和性を考慮しつつ…となると、量産など夢物語だと、神隼人は語っている。パイロットの質を妥協し、数を揃える。それがゲッター軍団の始まりなのだ。ゲッターGタイプを量産のベースにするのは、基礎戦闘値の確保と操作性の向上のため。アークは元の世界では『Gから発達していったプロトタイプの一機が正式に完成し、真ゲッターロボの後継となった』位置づけだが、未来世界での構想でも『G型の後継機種』として構想はあった。
「拓馬には借りもあるんですよ。前に、アークで助けてもらったから。でも、竜馬さんの子にしては、礼儀正しいような」
「お袋さんがきちんと仕込んだんだろうな、あの子を。竜馬君が息子を持つなんて、俺は信じられんがね」
未来世界での竜馬は『ボロボロのコートとマフラーが私服だが、道着姿も見せる』バイオレンス・アクション男。二号は竜馬の道着姿を『破戒僧にしか見えん』とツッコミを入れたという。なお、のぞみは拓馬を呼び捨てで呼んでいる。拓馬が『生年月日の日付では年下』であったためである。
「竜馬さん、硬派な武道家に見えて、がめついところもありますからね。連邦軍の年金がなきゃ、道場を維持できないみたいで」
「どういう鍛錬したら、俺たちとまともに戦えるようになるんだ?仮にも、俺たちは戦闘用の改造人間なんだぞ?」
「ゲッターに聞いてくださいな、そういうの」
竜馬の身体能力は明らかに異常。生身で仮面ライダー達と戦え、プリキュア以上のパワーと反射神経、それでいて、真ゲッターロボ以上の『人智を超えた』ゲッターを動かせる胆力。更にいえば、黒江がウマ娘にそれほど凄いという意識を持たない理由の一つでもある。ゴルシが、エイシンフラッシュがこぼしたという『人間がウマ娘に勝てるわけがない』という言葉を、真意はどうであれ、不快感を顕にした理由でもある。ゴルシは知っているのだ。流竜馬や一文字號という男たちの存在を。
――竜馬はある日、道場に差し入れをもってきたのぞみにこう述べたという――
『俺や號は肉体のリミッター外れてるのとそれをコントロール出来るから改造人間に反応出来るのかもしれんな、修行でその辺会得したのが、ガンダムファイターの中の一部の連中だな』
……と。
――鉄人兵団の侵攻、デザリアムの侵攻は実は相互に関係しあっていた、『元々、両者は戦争中であった。互いに脅威視していた宇宙戦艦ヤマトの存在が、両者を地球に向かわせた』のだ。理由は違えど。ゴルシは知っていた――
――野比家――
「ゴルシ、この世界の未来は何故、戦乱期になった?いくらなんでも、戦争のしすぎだろう?」
ルドルフは疑問を口にした。
「地球連邦を造るための戦争が長引きすぎた上、スペースコロニー群の一つが野心を抱いた。それが不幸の始まりさ。更に、太陽系を含む銀河系の主要部を治めていた銀河連邦が、1980年代の半ばの動乱で弱体化していたから、大マゼラン雲や二重銀河からの侵略者、更に、古代の宇宙文明の遺産である戦闘用の人間の種族の生き残りの跳梁跋扈を止められなくなった上、知的生命体全ての敵って言える宇宙怪獣も現れた。そんな事が短時間に起こりまくった。そのおかげで、軍事系の科学は飛躍的に伸びたが、民需系は後退した分野も多いそうだ」
「後退だと?」
「色々な理由もあるそうだがな」
ゴルシはルドルフにいう。未来世界は科学の復興期に入ったところである。例を挙げれば、情報分野が20世紀末のレベルに一旦は後退しつつも、21世紀序盤レベルにまで戻りつつある頃にある。
「ただし、医療技術は進んだり戻ったりを繰り返した結果、ガンの治療法も確立されつつあるそうだ。その応用で、タイシンやチケット、ブライアン、テイオーの怪我が治ったんだ」
「でも、その割には、洋服を持参させたのは?」
「アホか、グラス。オーダーするにしても、お前らの体の寸法が分かんない事には作れないだろうが。ましてや、ウマ娘のいない世界だ。オーダーは出すつもりだったようだが、色々な出費が嵩んで、先延ばしにしてたんだよ、家主は。まあ、壁とかを改装するのは、カネと時間がかかるもんだ。アタシと会長が、スネ夫さんに学園の経費で、代わりにオーダーしといたから、お前らの私服と同じデザインなのが、一週間後くらいには来るだろう。」
「わかりました」
「会長、話の続きはまた今度にしてくれ。それはそれとして、ブライアンが喧嘩を売ったぞ」
「あの無頼気取りめ。だれだ?」
「オグリキャップ」
「オグリだと!?あのバカモノ……何を考えている!」
狼狽するルドルフ。ゴルシはPCの場面を切り替え、マンションのエントランス付近のカメラの映像を表示する。すると。
「オグリ先輩とブライアンさん、やる気ですね…」
「どちらも当代最高級だが……ブライアンは病み上がりなのと、精神的に荒れてる。平常時のポテンシャルを発揮できるかどうか」
ゴルシは冷静に分析する。ブライアンは姉の引退宣言で荒れていたのと、自身の股関節炎の治療間もないため、精神的に全盛期の実力を出せるかは不安視されている。一方のオグリは心身ともに全盛期の実力を取り戻しており、ドリームシリーズでは『タマモクロスとワンツーフィニッシュを飾るだろう』とされるほどに期待される状態である。病み上がりのブライアンが太刀打ちできるかはわからない。
「でも、ブライアンさんは三冠を取っているんですよ?」
「オグリも、もしも『許されていれば、それを確実視された』ほどの実力だ。タマモクロスにはトップスピードで及ばんが、持久力はあの世代で随一だ」
グラスワンダーはルドルフにそう言われ、ハッとなる。オグリキャップは『中央に最初からいれば、当代のクラシック三冠は確実』と夢想されるのが、引退後の現在でも常なほどの実力者。その一期下に『オサイチジョージ』がいる事は有名だが、その世代は総じて、『鳴かず飛ばずの代』であったため、その次の『テイオー/マックイーン』世代が『華の世代』と言われているのは周知の事実。エース世代の直後の代が小粒である事はままあるが、テイオー/マックイーン世代からは豊作であり、そを指して『黄金時代』と言われる。オグリキャップは一期上のタマモクロスと共に、その礎を築いた。
「オグリ先輩の肩をもちますね?」
「あたしは客観的な事実を言ってるだけだ。G1の六勝は伊達じゃないぜ」
オグリキャップの肩を持つように聞こえるためか、グラスワンダーは牽制する。ブライアンは彼女の元・チームメイトだからだ。それに動じないゴルシ。グラスワンダー以上の輝かしい実績を残しているからこそ、初めて言える言葉だった。
『いくぞ!!』
エアグルーヴがスタートの合図をし、二人は合図がなされたと同時に凄まじい瞬発力を見せ、駆け抜けていく。
「エアグルーヴ、私だ。どこを走るつもりだ、二人は」
「それが…、会長。ブライアンが学園都市を走るコースを持ちかけたと」
「学園都市だと?……二人のことだ、滅多な事では動じないと思うが……ゴルシ」
「アタシの名前で、銀河連邦警察に警備の強化を頼んどく。そんじょそこらの能力者は敵じゃねぇが、あそこは物騒だからな。治安もここ以上にわりぃし」
「待ってください、ゴルシ先輩。ツテあるんですか?」
「あるんですよ、グラスさん。ゴルシさんには」
「どういうことですか、調ちゃん?」
「見てればわかりますよ。ゴルシさん、ああいう性格だから、意外に顔広いですし」
「そう…なんですか?」
ウマ娘の身体能力は下手な学園都市製パワードスーツが霞むほどのものだが、身の安全を守るという意味では、学園都市は『よろしい環境』には程遠い。エアグルーヴも、そこがかなり気がかりだと述べた。とはいえ、ブライアンの性格上、決めたらてこでも動かないのは周知の事実。念の為、銀河連邦警察の高官になった『宇宙刑事ギャバン』へ連絡を取るゴルシなのだった。調ははぐらかしたが、ゴルシは実のところ、かなり顔が広いのである。