――扶桑は結局、文化財保護などにも財源を回す必要が生じたため、軍事費は必然的に減らされた。その関係上、戦場に一騎当千の部隊をいくつか置くしかないのである。皮肉なことに、戦略を戦術がひっくり返す事が度々証明されていく(ジオンはエースパイロットが一人いれば、連邦の小艦隊は皆殺しにできた)ため、エースパイロット部隊は戦史に存在を刻んでいく。統合戦闘航空団は存在そのものが政治利用と見なされ、編成そのものが凍結の憂き目にあったが、次第に、平時における『客寄せパンダ』としての役目を見いだされていく。統合戦闘航空団への所属が名誉とされた時期はあるが、ミーナの失策ですべてが御破算となっているためだ――
――ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケが数十年もの間、祖国に足を踏み入れる事がなかった理由は、扶桑で戦車道の開祖となったこともあるが、同期や先輩たちに睨まれていた事を自覚している事も関係している。カールスラントの苦難の根源が『元々の人格が黒江らを(個人的嫉妬が理由で)冷遇したことで、外交問題になりかけた』のが理由だと自覚していたからである。ミーナ自身も輝かしい実績を持つが、折り悪く、同僚の原隊である『JG52』の戦績に疑義が呈されている時代の情報が伝わり、ロシア連邦経由で『ドイツ空軍の戦中の戦績粉飾疑惑』が持ち上がったことで『ケチがついた』。更に、戦局そのものを左右した『七勇士』の事をミーナ(本来の人格)は『おとぎ話』と解釈していた。そんな不運の重なりが、ミーナの人格変化のトリガーとなったといえる――
――扶桑とカールスラントの外交問題の発端は、1940年代前半。当時に新戦闘機/戦闘脚の発動機に液冷エンジンを考えていた扶桑陸軍航空戦隊(陸軍航空隊)がカールスラントで名を馳せたメッサーシャルフ社(後に、史実通りの『メッサーシュミット』に改名する)の『Bf109』の動力『DB601』液冷エンジンのライセンス生産を持ちかけたことである。当時にカールスラント空軍の実権を握っていた『ヘルマン・ゲーリング元帥』は、いかに東洋の大国であろうと、自国との技術力差を鑑み、『ライセンス料を通常の三倍は請求しろ。東洋の田舎が背伸びしているのだ。都会の雰囲気で揉んでやれ』と内示を出し、扶桑の技術力を低く見積もった、カールスラントの各部品メーカーも重要部品のライセンス提供に難色を示した。当時はカールスラントそのものが南米大陸への疎開間もない頃で、各メーカーは資金が欲しかったため、この内示にまんまと乗っかった。燃料噴射装置のライセンス提供を拒んだボッシュ社もその一つ。そのしっぺ返しが来たのは、1945年。日本経由で『ライセンス料のボッタクリ』が世間に露見した上、日本連邦は史実の経験で航空レシプロエンジンを『手慣れた』空冷へ一本化し、ブリタニアに供給するマーリンエンジンなど以外の液冷エンジンのラインを閉じたのだ。更に、日本連邦が結成された後は急激に戦闘機のジェット化が促進され、日本連邦とその後援者である各勢力は後世の高性能ジェットエンジンのライセンスを各国に提供していき、米国製高性能ジェットエンジンがカールスラント製の拙い性能のジェットエンジンを市場から駆逐するのに、それほどの時間は必要としなかった。これがカールスラントの『悲劇の始まり』である――
――第二の悲劇となったのが、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケが『七勇士』に無知であったという事態で、連合軍上層部も想定外の事だった。501の司令であり、聡明とされたミーナが『七勇士』のメンバーを事もあろうに、冷遇した。これに激怒した昭和天皇は、カールスラント皇室に怒りの電話をしようとするなど、温厚な彼かしらぬ行為に及んだ。なんとか昭和天皇を宥めた扶桑外務省や駐在武官は、カールスラントに『帝はお怒りであられる』と緊急伝達を行い、連合軍総参謀本部も激震に見舞われた。エルヴィン・ロンメルはドワイト・アイゼンハワー直々の電話で『機密指定を解除する。中佐に事の重大さを理解させろ!!』と指令を受け、圭子に『全力でやってくれ。事は重大さを帯びた』と通達。圭子達も全力を発揮。その強さで隊を掌握した。ロンメルは圭子らの着任時に『君たちは後からやってきた新参者だ。自重してくれ』と懇願していたため、面子を潰されたも同然であった。同時に、扶桑出身の古参ウィッチのカールスラントの高慢さへの不満が『黒江の505での不当な扱い』が扶桑に伝わった事もあって、大爆発寸前に陥った事もあり、カールスラントはせっかく得た『501にまつわる運用管理権』を、日本連邦にほぼ無償で譲渡せざるを得なくなった。同時期にロシア連邦経由で『ドイツ空軍の戦中の戦績粉飾疑惑』が持ち上がったこともあり、カールスラント空軍は世間から『疑いの眼』で見られるようになった。これが第二の悲劇である――
――第三の悲劇は、ドイツ連邦がカールスラントに対して強権的に振る舞い、古参の職業軍人、史実でナチの治安当局にいただろう人間、東ドイツに与したであろう『東部出身の富裕層や中間層』を『危険思想者』という差別的なレッテルを貼り、強制的に公職追放をしようとした事である。この強権的振る舞いは、貴族や戦前からの軍人を一旦は追放した後、『好ましい人物のみを復帰させる』という思惑のもとにした。強引にでも『近代的な』民主共和制に変革させるためである。だが、逆にカールスラント民族の分断と疑心暗鬼を招く結果に終わった。ドイツ連邦はこの有り様に衝撃を受け、カールスラントに対する安易な介入を避けるようになり、現地に何ら利をもたらす事なく、事実上、緩やかな連邦という形の置き土産を残すのみで、事実上は手を引いた。その結果、日本連邦とキングス・ユニオンのみが『連邦』として成功を収め、日英両国の中興の要因となる。カールスラントは三つの悲劇で完全に世界的な軍事大国の地位から脱落せざるを得なくなり、ウィッチ世界の安全保障は事実上、日米英の三カ国の掌に収まった。――
――ガリアはこの流れで日本連邦を仮想敵国とし、後々のアルジェリア戦争で手痛い敗北を喫する。ガリアは太平洋戦線に関わらなかった事もあり、太平洋戦線を経た扶桑とガリアとでは空・海軍力の差が絶望的に開いていた事がわからなかったのだ。ガリアは初の超音速機『ミラージュⅢ』戦闘機の配備に、アルジェリア戦争の時点でこぎつけたに過ぎなかったが、扶桑はアルジェリア戦争時点では、遥かに強力なF-14とF/A-18、更に早期警戒機も行き渡っており、ガリア軍は殆どカカシも同然であった。ガリアの通常部隊は本国配置であろうと、大規模訓練がままならない状態である時代が続いたため、百戦錬磨となった日本連邦にまったく太刀打ちできず、史上稀に見るレベルの大敗を陸海で喫してしまうわけだ。ド・ゴール派はこれで自国での政治的立場を失い、ガリア内での主導的立場を喪失。以後は国際協調派が主導していく。ペリーヌにとっての救いは、ド・ゴール派に人身御供として利用されていたということで、アルジェリア戦争後に同情を誘ったという事だろう。ガリアは植民地からの資源供給を近代国家としての運営の前提にしていたため、それが無くなる場合を想定できなかったのだ。日本連邦が『地球からの鉱物資源の枯渇』を計算に入れ、宇宙開発を太平洋戦争開始前から視野に入れていたことに比べれば前時代的だが、ウィッチ世界では『外地を持つことで、内地の安全率を高めてきた』歴史が大国ではあるので、それほど間違っているとはいえない。ただし、世界が航空機や列車、自動車などの発達で狭くなるに従って、『怪異も進化した』ので、結局は『資源確保と避難地の確保』以外の意義は薄れつつあった。日本連邦でも、この問題は議論されたが、ウィッチ世界では『大国の庇護下にあるか、地の利がないと、すぐに滅亡する』。明朝や李氏朝鮮のように、その当時の世界では大国の部類に入ったが、ウィッチを軽視していた関係で、大地ごと滅んだ例もある。日本連邦はウィッチ世界唯一の極東の近代国家である(実は、かのモンゴル帝国やシャムが存続しているが、往時のような力はない)以上、いかなる難敵も倒さなくてはならないのである。――
――ダイ・アナザー・デイはその序章と言えた。副作用でカールスラントとガリア、ヒスパニアが衰退・衰弱したが、ブリタニアと扶桑は中興の時代を迎た。二つの国の最終目標は『世界を統べた上での宇宙開発、それを管理する政体たる地球連邦の樹立』だ。超極秘に密約が交わされたそれは、ウィッチ世界の地球人が未来まで生き残るために必要なものである。二つの国は明確な目標を得た事もあり、技術情報をどんどん吸収していく。他国ができぬことを肩代わりする必要があったのだ。特に、戦後の時代の先進兵器は小国の手に余る代物である。大国でさえ、戦闘機の単独での新規開発を躊躇するようになる時代が、21世紀には到来するからだ。その結果、カールスラントから亡命した技術者を比較的に多く獲得したオラーシャ帝国が1950年代後半から軍事的に復興し始め、隣国になったウクライナとの間で国境紛争を起こしていく。オラーシャはかつての大帝国の再建の夢を追い、ウクライナは民族自決を理由に、オラーシャに必死に抵抗する。その結果、『オラーシャ系戦闘機』が中小国の軍事マーケットで人気となり、史実通りにシェアを二分していく。扶桑とリベリオン合衆国は『講和』後も東西冷戦の盟主同士という形で睨み合い続けたが、次第に『扶桑との貿易で復興していく西海岸』、『ティターンズ影響下の監視社会化する東海岸』に分かれていき、ティターンズが自然消滅した『1991年』に急激に再統一へと向かう。この時に至り、未来世界行きの経験がある自由リベリオンの元軍人らは『ティターンズは自分たちに東西ドイツとソ連邦が辿るはずの道を演じさせていた』事に気づき、生存者らは一様に、その場に崩れ落ちたという――
――日本連邦は豊富な資金力を持つが、全てを軍事につぎ込めるわけではなくなっていくため、ダイ・アナザー・デイを契機に、『統合戦闘航空団に代わり得る精鋭部隊を数個ほど創設し、軍事費(主に人件費)を節約する事にした。その第一号として生まれたのが、『第64飛行戦隊』にあたる。64Fがダイ・アナザー・デイ以降に規模を加速度的に巨大化していくことを良しとしない者も多かったが、ウィッチが覚醒する頻度が激しく低下する土地の『休眠期』に突入していったり、戦闘の中で『精鋭』と評判の部隊が実は『世代交代』で弱体化していたり、『別の部隊の戦果をかっさらっていたに過ぎなかった』事例が頻発したため、64Fと切磋琢磨しあえる空軍部隊は1949年当時には指で数える程度な現実もあり、64Fの存在は容認された。64Fに続く者が一向に現れてくれないのが、扶桑軍上層部の想定外であった。そこも歴史的に『地球連邦軍のホワイトベース隊からロンド・ベル隊に至る系譜の祖』とされる理由である。(一般には、ジオンのキマイラ隊もその括りに入るが、キマイラ隊は『対ニュータイプ部隊』という本質を持っていたため、その陣容に戦果が伴っていない)ダイ・アナザー・デイでの孤軍奮闘が世間の感動と同情を呼んだのは言うまでもないが、同作戦で、64Fへの支援を『理由をつけて拒んでいた』部隊が世間にまとめて『鼻つまみ者』扱いされたため、そのレッテルを払拭しようと、64Fに転属を希望する者も多かった。かつての統合戦闘航空団を母体とした都合上、『実力はあるが、癖がある人材』の行き場としても重宝されていくため、ダイ・アナザー・デイ後も部隊拡充は続いた。1949年には『自前で宇宙艦隊を運用できる』ほどに拡大している。この強大な戦力が軍中央の指揮下に無い事を不満に思った参謀らが『間接的なコントロール』を目論んだが、そのための要員が戦死、あるいは裏切ったため、その事実は(彼らの保身のために)闇に葬られ、巧妙に隠蔽されたが、1990年代後半に明るみに出る。その頃には参謀本部側の当事者の大半が没していたものの、一部の生き残りが老いて懺悔をしだし、軍部のスキャンダルとして報道されるに至る――
――カールスラントはスキャンダルが内乱に発展し、長い暗黒時代に突入するわけだが、兵器マーケットでの需要は一定程度がなおも存在し続けたため、それで軍需産業の食いつなぎには成功した。定評のあった戦車は、史実の戦後ドイツ戦車『レオパルト1』の装甲厚の薄さが問題視されたため、しばらくは既に生産開始間もない段階であり、工場の生産ラインも無事であった『パンターⅡ』に各種改良を加えつつ、実質のMBTとして使用し続ける。また、ティーガー系の代替として、実戦テスト中であった『レーヴェ』戦車もコンカラーと比しての相対的な旧式化が目立つものの、戦後型に拮抗する火力を持っていた事から、装甲・足回りなどに改善が進められ、レオパルト1をさしおいて、数十年に渡って現役であり続ける。これは、『レオパルド1の装甲厚が戦中の重戦車に比べて薄かった』からである。ウィッチ世界での徹甲弾の発達速度は全体的に遅かったため、同車の薄い装甲は不評だったのだ。(日本連邦とキングス・ユニオンのみが21世紀型徹甲弾を使用したが)同車はドイツの要望もあり、ラインが破壊され、なおかつ旧式化したⅢ号やⅣ号戦車の代替車として使用されるが、どうにも不評は否めなかったという。(レオパルト2の実用化後は直ちに取って代わられたほど)航空機は主要な技術者の流出もあり、自主開発能力は失われていき、米国製のライセンス生産に甘んじていく。カールスラント純国産の航空機の掉尾はサラマンダーの練習機への改修型が飾ることになったが、それはジェット戦闘機の先駆者にしては、物寂しい最後であった――
――日本連邦はクーデター事件で多数の試作機が焼失したが、閃電や震電など、完全な焼失は免れたものも存在し、それらの改良・再設計型が国産機の系譜としての存在を許され、閃電は双ブーム式であった都合で、軍用機としての返り咲きはならなかったが、スポーツ用の軽ジェット機に鞍替えし、ヒットを記録する。震電はその構造が幸いし、ジェット戦闘機へ転身し、純粋な発展型『震電改一』が生産中止の秋水の代替の『邀撃機』として使用される。根本からの再設計機の『震電改二』は先進的な構造を有していたが、製造工場の体制構築と工員教育に時間がかかったため、本格生産は1950年にずれ込む。また、計器も先進的なグラスコックピット化されていたため、扶桑の搭乗員が戸惑う問題も発生。64Fが実戦テストと要員教育も引き受けざるを得なくなった。実戦部隊があれよこれよとやらされるのは間違っているが、日本連邦の『人件費削減の方針』で『少数精鋭化』が奨励された都合上、64Fは『戦況を覆す』ためにあらゆる権限が与えられていく。未来世界にそれをやってのけた事例があるからと、あれこれと一部隊にさせるのは、日本という国の悪例であった。変に人件費をケチるのも、ジオンの源流の一つとされる理由であった――
――ジオンはキマイラ隊を政治闘争と反乱抑止のために使い、プロパガンダでの『エース部隊』という題目に見合わない散々な結果を残した。皮肉なことに、彼らの存在は『目立ったエース部隊のいなかった』地球連邦軍に強烈なトラウマを埋めつけ、歴代のガンダムを要する部隊をそう仕立て、ジオン系の残党組織の尽くを打倒していった。ジオン上層部はニュータイプを一年戦争当時、『強大なので、戦争に利用すべき異人種』としか見なしておらず、数々のジオン残党の組織が『スペースノイドの力の証』という蜂起の旗印に利用したのと裏腹の実情があった。地球連邦軍は『ホワイトベース隊』という成功を期に、『アルビオン隊』、『アーガマ隊』と続き、『ロンド・ベル隊』に行きつく。64Fの主要メンバーは未来世界行きもある都合上、ロンド・ベル隊のメンバーとして登録されており、アナハイム・エレクトロニクスやサナリィと言った軍需産業の援助を受けられる。そのため、保有装備は地球連邦軍の中でも最新鋭かつ強力なものが揃っており、ロンド・ベル本隊が同隊名義で調達したものも含まれた――
――遠征中――
「リ・ガズィ・カスタムかぁ。整備終わりました?」
「バイオセンサーの増設中だ。ニュータイプパイロットも乗るからな、こいつは」
リ・ガズィの最終形態『リ・ガズィ・カスタム』。皮肉なことに、BWSを半ば放棄し、可変機に先祖帰りしている。Z系の一つの最終形態と言えるため、Zプラスの初期生産機の代替機の一つに選定されたという。
「なんか、SFの世界みたい…」
「半ばそうなった世界のものだしね。うちはその中でも高級品を揃えられてるほうだよ。アストナージさん、ダブルエックスのオーバーホールはどうです?」
「内部構造の摩耗チェックに入ったから、当分は使えんぞ。最適化されてる新造部品への取っ替えも多いからな」
「はーい」
作業中のアストナージに声をかけるキュアドリームA。のぞみBは壁紙秘密基地の内部で行われている様子に圧倒される。アストナージ・メドッソはエゥーゴ以来の歴戦のメカニックであり、Z系の整備にも定評がある。そのため、指導を兼ねて、本隊から出向中であった。
「色々と新型も送られて来てるが、俺達が整備要項を理解しないと、動かせんからな。ヘビーアームズの模倣品みたいなのも運ばれてきた」
「ああ、のび太くんが用意させてたっていう、ガンダムレオパルド?」
「本当はデザリアム戦役の時に使うはずだったんだが、インナーアームガトリングに不具合があったそうでな」
ガンダムレオパルド。プリベンターの持つ『ガンダムヘビーアームズ改』の模倣品と見なされているが、実際は『コンセプトが似ていると、形も似るもの』である。実はガンダムXより先にロールアウトしているが、当初のメイン武装の腕部ガトリング砲の着脱機構に不具合があり、手持ち式への変更を経ている。
「あれが?」
「かなり当初から変更されたから、『レオパルドデストロイ』って名前になったそうだ」
赤色主体のガトリング持ちのガンダムという事もあり、ヘビーアームズと被っている印象を受けるレオパルドデストロイ。のび太がアナハイム・エレクトロニクスの大株主である子孫に命じて試作させたものらしい。
「あいつの子孫、アナハイム・エレクトロニクスの大株主だそうだ」
「……本当ですか」
「そうでなきゃ、レイズナーやダブルエックスを、個人名義で発注できるか?それも、ビスト財団からアナハイム・エレクトロニクスを奪えるくらいの財力があるそうだ」
「うへぇ…」
のび太の末裔達は『野比財団』として、地球連邦に大きな影響力を得ている。のび太の残した功績をノビスケとその子が順調に活かし、財団を拡大させ、セワシが存命中の頃にアナハイム・エレクトロニクスの株主になり、マーサ・カーバイン・ビストの逮捕でビスト財団が失墜した後はそれに取って代わった。その関係上、その時期の財団で『相談役』扱いののび太は個人名義で機体を発注できる立場にある。地球連邦軍はビスト財団の負の影響力を強く嫌っていたこともあり、野比財団にすぐに靡いた。それもビスト財団の急激な衰退の一因(サイアム・ビストも『役目を終えた』財団の解体を容認していたため。だが、巨大組織化した財団は安々と解体できないため、野比財団に主要事業の譲渡を徐々に行うなどして、緩やかな最期を迎えていく)である。
「一応はお前の義父だろ?」
「まぁ……そうなんですけど、財団にはタッチしてないんですよ。旦那に任してあるんで…」
「自分の機体の開発プロジェクトの書類くらいは見ておけ。上層部には、お前の義父さんの私的プロジェクトが軍備計画に影響を与えるのを快く思わん連中も多いんだから」
戸籍上はのび太の義娘(夫がのび太の養子であるため)となっているキュアドリームA。苦笑混じりに答える。錦の気質が入ったので、現役時代よりは書類は確認するようになっているが、野比財団にはほぼノータッチであったらしい。
「のび太君、23世紀には、家が名家扱いなんでしたっけ」
「扶桑の爵位を持ってただろ?それが箔になったんだ。連絡が回復した後に、扶桑で昇爵の措置が取られたみたいでな。ブッホ・コンツェルンの連中が嫉妬してた噂もある。向こうはジャンク屋上がりで、家名を金で買ったに過ぎないが、お前の義父さんはきちんと正規の手順で叙爵されてるからな」
「貴族や華族なんてのは、先祖に偉いのがいた事の国からのお墨付きのようなもんだって、黒田先輩が言ってました。黒田先輩も、ウチに、家祖の黒田官兵衛や黒田長政との血の繋がりがあるかどうかって言ってますし」
「国家功労者と同じ家名ってのは、それほどの効果あるんだそうだ。お前の国のフジワラやミナモト、タイラ、ホウジョウ、アシカガ、オダ、トヨトミ、トクガワみたいに」
「確かに」
例に挙げられた、日本の歴代の権力者達の一族はその全盛期には、国の富を独り占めする勢いの栄華を誇った。フランスやドイツの貴族達の在りし頃もそうだが、代を経ていくと、どこかで暗愚な者が生じる。アストナージは一年戦争の前、まだ若かりし頃に、日本に滞在した事がある。
「でも、アストナージさん、日本を知ってるんですか?」
「学生時代の友人が日本にいたんだ。当時は滅多なことでは降りれなかったから、一ヶ月くらいしかいられなかったけどな」
「そうなんですか」
「地球環境が統合戦争で悪化していたからな。21世紀からは考えられないほど、初期の反応兵器も使われた」
アストナージは統合戦争末期、旧・ロシア連邦が『反応兵器で土地ごと自爆し、敵軍を殲滅する』小説じみた玉砕を行ったため、当時の国連軍も大打撃を蒙り、殆ど共倒れに近いながらも、アメリカが屈した後も最後まで抵抗したロシアを打倒した。自衛隊の超兵器の実物が23世紀に残っていないのも、統合戦争で殆どが破壊されたか、ロシアの最終兵器と共倒れになった説が有力視されている。
「21世紀の時点であった超兵器の殆どは、その時の戦闘で大半が失われたんだろう。あるいは、それに対抗できるレベルのロシアの最終兵器があったか。今となっちゃ、それはわからないが」
「ロシアにそれだけの兵器があります?」
「ラ級があれば充分だ。ソ連の時代に少なくとも、ソビエツキー・ソユーズは完成した記録がある。ほれ、去年か一昨年に鹵獲したあれだ」
ラ級戦艦は敗戦国である日独のほうが高性能である。これは戦勝国には核兵器というものがあり、ラ級に当初ほどの期待を持たなかったのと、枢軸国側は『一発逆転』をかけて造ったという環境の違いによるものだ。
「少なくとも、21世紀の兵器は『戦艦と戦う事は想定外』だからな」
「それじゃ、もう一隻が?」
「旧ソ連邦の記録は、一部が紛失しているからな。その当時にはあったと見るべきだろう。存命中のスターリンが五隻造れと言って、ソビエツキー・ソユーズができた以上、もう一隻は予備で持たなければいけない。軍艦の古来からの習わしだ」
ソビエツキー・ソユーズの同型艦がその当時にロシアにいたのか?それは統合戦争最大の謎の一つだ。とはいえ、発掘された第二次大戦と戦後の時期の記録に『戦艦二隻分の資材がどこかに運ばれていった』とある。ラ號にさえ、ペーパープランのみの『同型艦』が存在したのだから、戦勝国のソ連邦が造らないはずはないのだ。
「統合戦争の記録は?」
「殆どが散逸したらしい。なにぶん、長い戦争だったし、最後の方には、開戦の理由なんて、殆どが忘れていたって評判だ」
アストナージはそれで話を区切った。統合戦争は近代戦として史上最長であり、最後のアースノイド同士の戦争であった。その記憶は事故もあるが、半分は意図的に『忌むべき記憶』として封印されたと見るべきだろう。そして、地球連邦時代に突入していった。しかも、統合戦争は23世紀初頭から見て、『比較的最近の過去』まで続いたというのだから、その業は大きい。
「俺たちにとっては、それが過去だ。だから、地球連邦が期待されたが、その時代になっても、争いは続いた」
結局、色々な主義主張が勃興しては消えていったが、地球連邦と地球連邦軍はなんだかんだで存続している。それが大衆が選んだ道だ。
「だから、メカトピア戦争で、お前さんの義父さんと義母さんたちがした事は評判になったんだ。結果的に、その末裔たちは苦労するはめになったが、地球連邦に自浄作用を完全に戻したし、大衆に地球連邦の存在意義と当初の夢を思い出させたって」
皆が『子供である』が故に、その言葉に説得力があったのも事実で、地球連邦政府の求心力の復活、改革派の筆頭であったレビル将軍の復権に大きな力となった。同時に、スペースノイド達の団結力を削ぐ形になったため、四人の末裔達は少なからずの苦労を背負い込む事になった。
「それに、あいつらは大人になっても『通りすがりの正義の味方』ってことで、人助けするだろ?それがお前の後輩の心を救ったんだ」
「のび太くんたちの関係が羨ましいくらいですよ。大人になっても、子供の頃のままでいられるんですから」
「普通はそうならんからな。大人になれば、誰かどうかは変わってしまうもんだ。だが、お前らにも『苦楽を共にした』、『命を預けあった』思い出がある。普通の生活だとできないことだからな、それは」
ドラえもん達とプリキュアオールスターズには『命を預けあう戦場で、苦楽を共にした』思い出があるという共通点がある。ドリームAはハッとなる。そうして繋がった者たちは、下手な肉親よりも強く結ばれるという話が古来からある。前世ではそれが仇となり、今回の『生』では、逆にそれが自分を正気に戻したという自覚があるドリームA。
「あたしや、はーちゃんがどうして、ゲッター線に選ばれたんでしょう?」
「人間性と愛だろうな。お前らは愛を司る事が多いって言うだろ?それ故のことだろうな」
ゲッター線に選ばれた自分とことははともかく、他の複数のプリキュアも何故、転生という道を辿ったのか?その理由はわからなかったのぞみだが、アストナージの言葉に合点がいったようだった。アストナージ本人はそこそこの年齢(30代ほど)だが、第二次ネオ・ジオン戦争で生死の境を彷徨ったからか、落ち着いた言動も多くなっている。また、その時期に『恋を知った』からか、愛についても一家言あるようであった。既にそれなりに長い付き合いとなったドリームAは納得したようだった。だが、正真正銘の14歳であるのぞみBは何が何だか分からないようで、キョトンとしている。
「現役の時のお前、こういう感じだったのか」
「あたしにとっては、遠い昔の事ですけどね。皆からは『あんまり変わってない』って言われてますけど」
「ぶ~~!外見は同じじゃん~!!」
「精神的に、お互いの差が大きいって事だと思うが」
「なんですか、それぇ~!私だって、去年とは違うもん~!」
のぞみは二年間の現役期間の間に、それ以前より大きく成長している。それは同じだ。違うのは『それ以降の全ての経験と、錦の人生経験を引き継いだ状態で復活した』Aのほうが『人生経験は豊富だが、大人の世界の闇を経験した分の脆さができて』しまっており、それがデザリアム戦役での一連の出来事に繋がった。それを経ているため、Aは『戦士としてのプリキュア』に寄った進化をしたといえる。
「お前達は平行世界の同一存在だ。そいつが経た道を辿ることを、お前が辿るとは限らない。だから、変身した姿は同じでも、能力は違ってくる事はありえる」
「うん。あたしは『復活した時のパワーアップ』の影響で、現役の時の『全部の技』を使い分けできるしね。それでも勝てない敵が出てくるから、それと関係ない技も覚えていってる」
「それじゃ、あの『シャインスパーク』も?」
「あれはゲッタードラゴン……ゲッターロボGの最強兵器の再現だな」
「ゲッターロボ……えぇえええ!?」
「メタ的に言えば、シャインスパークがお前の技のアイデア元……なんだっけ?」
「オマージュって言ってくださいよ。ポーズは『天空×字拳』とか、ネットでネタにされた事もあるんですから」
ドリームAとしては、『プリキュア・シューティングスター』は『シャインスパークのオマージュ』と言いたいのだが、腕をX字に組むため、世界的に有名なバトル漫画の初期にあった『天空×字拳』とネタにされている事も知っている。そのためもあり、近頃は『元ネタ』のシャインスパークのほうが使用機会が多い(何気にネットの評判を気にしていたのか、キュアブロッサムの主催するラジオ番組にゲスト出演した際、そこを大いに愚痴っている)
「メタ的って、どーいうこと~!?」
「まだ、あなたにはわからない世界だよ」
「子供扱いしないでよーーー!もう中二だよー!」
のぞみBは正真正銘の14歳なので、行動の端々に子供っぽさが残る。ドラえもん達は『メタ発言』上等な性分であるため、その影響を受けると、自然とメタ発言が多くなる。のぞみBは怒った勢いでキュアモを起動させ、変身する。B世界も『二年目の時間軸』であるため、基礎的なコスチュームは同じである。
「うーん。どっちがどっちか分からん」
「うーん。言えてるなぁ。ナイトメアの頃なら、あたしはへそ出しだったから、わかりやすかったんだけど。この頃にはもう、今のコスチュームだしなぁ~…。あ、そーだ!もう一段階くらい変身しよう」
「!?」
「ハァァ…ッ!!」
まったく見分けがつかないと、見るからに困った様子のアストナージ。ドリームAは見分けのために、『気と小宇宙』を同時に高め、『シャイニングドリーム』に自己意志で変身してみせる。白いコスチュームと天使の羽が『パワーアップ』の象徴だ。
『想いを咲かせる奇跡の光!!シャイニングドリーム!!』
フォームチェンジが根付いた世代の後輩らのような感覚で『奇跡の形態』に変身したドリームA。呼水にしたのが気と小宇宙という違いはあれど、後輩と同等のフォームチェンジ能力を得た。本当は『ミラクルライト』を呼水としなければ『なれない』ので、当然……。
「だーかーらー!!ずるいよぉ~!!それにぃ~!!それに!!じ、じっ…自分の力だけでなれるなんてぇ~!わたしは『お菓子の国に行った時』に一回、後は『似てるけど、違う形態』(キュアレインボー)なのにぃ~~!!」
ドリームBは涙目+ギャグ顔となり、駄々をこねるような形で大いにぐずる。Aはなんとなく気まずくなったのか、片手で頭をかきながら、『ご、ごめん』というのが精一杯であった。実際、『蝶の翼が生え、飛べる様になる』くらいの外見上の差異しか通常のパワーアップには発生しないため、コスチュームに顕著な変更があり、更に見栄えの良い『天使の羽』が生えるシャイニング形態は羨ましいかぎりなのだ。
「その姿だと、どのくらいで飛べるっけ」
「成層圏までは楽々。宇宙にはワンクッション置きます。最終フォームのエターニティなら、楽に大気圏突破と再突入ができますけどね」
「わ~~~んーーー!!そんなのあんまりだぁー!」
と、さらなる衝撃に落ち込むドリームB。とはいえ、Bもオールスターズ戦でのレインボー形態であるのなら、大気圏突破の経験はあるのだが。お互いの基礎能力に『差がある』事を知り、変身した姿でしょげるドリームBであった。