ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回も遠征側が主役です。


第三百十九話「幕間その61 キュアジェラートの気持ち」

――扶桑は結局、国家安定のために、いくつかの制度は『形だけ』存続した。そのうちの一つが華族制度である。廃止論が沸騰したが、扶桑にとっても『聖域』である皇室にまで及ぶことが恐れられた事、軍隊へのウィッチ供給のある程度の安定性を担保するために『ノブリス・オブリージュ』を建前にせざるを得なかった。ウィッチは身分を問わずに発生するが、文句を言わずに『滅私奉公』してくれる者は絶対に必要であったのだ。一部の一騎当千の強者に依存するのは、健全とは言えないためでもあった――

 

 

――キュアミラクル/朝比奈みらいは元の世界で既に19歳になっていたため、英語は堪能である。野比家でメカオタクに変貌していたため、自分でメカを設計したがるようになったが、専門知識は皆無であるため、戦闘に参加するようになってから勉強し、人型機動兵器の知識、コンピュータプログラミングの技能を身に着けていった。数年後の1949年には、大まかなアイデアは出せるようになったが、まだまだ勉強不足であった――

 

 

「ミラクル、最近は超合金ロボットとか買ってるんだって?」

 

「ああ、給料で買ってるんだと。最近はナイトメアフレームを見せてる。のび太の奴が『ランスロット』も造らせてたみたいでよ。あれにはいい思い出ねぇんだがな」

 

ランスロット。前世で散々に煮え湯を飲まされた相手(とはいえ、共闘の経験もなくはないが)であったため、いい思い出はないと、キュアホイップに明言するキュアメロディ。

 

「まー、アニメ見ると、割に圧されてる感じだしね」

 

「素の腕は互角だったんだぞ。クソ、ルルーシュの奴のギアスのせいだ。……まったく」

 

紅蓮聖天八極式を以てしても、ランスロット・アルビオンとは、互いの僅かなスペックの差で勝てたに過ぎない事、その前に尋問で自白剤を打たれそうになったせいか、転生後も枢木スザクの事は許せないところがあるキュアメロディ。転生前の世界で『ゼロ・レクイエム』の蚊帳の外であったことへの強い不満を抱いていたせいもあり、ルルーシュ・ランペルージと枢木スザクの二名は『ぶん殴ってやりたい』と公言して憚らない。とはいえ、ナイトメアフレーム乗りとしては、枢木スザクと双璧とされるエースパイロットだった誇りも残っているが、『ブランク』もあり、転生後は地球連邦軍の中では『中級』程度の腕とされている。これは戦闘センスは高いが、遠距離攻撃をあまり考慮しないこと、ナイトメアフレームのある世界では主流ではなかった『高機動ミサイル』の雨霰の弾幕の回避、オールレンジ攻撃への対応を苦手にしているためでもある。得意レンジで『アムロや甲児、竜馬などの手練に伍する』と評価されている一方、高機動戦が主流の世界では、(勝手が違うのもあり)総合的には些か評価されにくい。

 

「でも、よくやれてるよね」

 

「まー、元々、転生後も乗り物好きだったからな。そうでなきゃ、ウィッチになっても、飛行機を動かしてねーよ」

 

「それもそっかぁ」

 

なお、彼女が面倒を見ていたルッキーニはキュアメロディの姿をあまり気に入っていない。曰く、『おっぱいが元より減ってるから!!』という、実にしょーもないものである。

 

「でもさ、どうやって変身能力と記憶が元に?」

 

「ああ。向こうの世界で、ひょんなことで復活したんだ。のぞみとみなみが『目覚めた』影響だと思う。のぞみは素体の人格の殆どが消えたけど、あたしは比較的に残った。それどころか、前世のものと混じってるって言われてる」

 

のぞみは『夢原のぞみに色々なものが付加される形の自我意識』が錦の肉体に再構築され、肉体も精神に合わせ、容姿が夢原のぞみそのものへ変化した。それに対し、シャーリーは『元の姿は保ちつつも、+αの能力で容姿を変えられる』という形であるので、のぞみと違い、変装(能力で変身するなど)する事なく、転生先で過ごせるという利点がある。その関係で、プリキュアとしては唯一、日本連邦の国籍を有していない。とはいえ、シャーリーはそれなりに有名人であるので、北条響、ないしは『キュアメロディ』になっていたほうが気楽にプライベートな時間を過ごせるという逆転現象が起こっている。」

 

「のぞみと違って、ウィッチとして名が売れてたから、実は自由リベリオンじゃ、プライベートの時間が、むしろ取れねー状態になっちまって。だから、変身してる時間の方が長くなってんだ」

 

「そういえば、そうだね」

 

「それに、転生して初めて、自力で変身できたからなー。あたしの代が最後だしな、初期メンバーの単独変身が現役時代にできない仕組みだったの」

 

転生したことで、『スイートプリキュア』の不文律から脱した面が生まれたキュアメロディ。最も、現在は『アストルフォになると、理性がぶっ飛んでるほうが多いから』という理由で、あまり変身を解かなくなったキュアミューズ(アストルフォが変身する体裁になったため)、『黒川エレン/キュアビートの姿なら、精神面も幼児化する事がない』クラン・クランの例があるが。

 

「あたしは転生後は戦闘種族の一員で、マイクローン化すると、幼児化してしまう遺伝子の持ち主だったんだ、それに比べれば、お前はだいぶマシだ。民間軍事会社にいたから、正規軍人になろうと、あまり変化ないが」

 

「エレンか。ケイさんかと思ったぞ」

 

「ヤツのほうがやさぐれてる感じだろうが。……まったく」

 

黒川エレン/キュアビートは加東圭子に声が似ている。ただし、圭子は『やさぐれている』雰囲気を多分に纏い、ドスも効いているので、似た感じの声でも、比較的にわかりやすい。黒江が転生を繰り替した後は、素で月詠(月読)調と殆ど同じ声になり、『本当の姿と釣り合わなくなったから』という理由で、デフォルトの容姿を変えているよりはマシというレベルだが。

 

「まあ、黒江さんと調よりはマシだな」

 

「奴はシンフォギアも使う事があるから、雰囲気と言葉づかいでしか分からん時がある。付き合いはそれなりにあるから、まだわかる方だと自負してるつもりだがな」

 

黒江は容姿を変える事も多いが、デザリアム戦争後はまた、『調を成長させた』容姿に戻している。それが定着してしまったからという。違いは黒江の元の特徴である『長身』を出すようになったことで、成長後の調よりも背丈が高い。D世界の装者達が一様にびっくり仰天したのはいうまでもない。

 

「でも、シンフォギア使う奴にも『因子』はあるんだろ?キュアグレースになった『ガングニール』の奴も大変だったと思うぜ。黒江さんの言いつけを拡大解釈したなのはに良いようにボコされるわ、自分の善意が結果的に、ゴタゴタの要因の一つになる……」

 

「それは、あいつらに非がないわけではないがな。なのはは自業自得だが、綾香については、如何にヤツでも、見も知らぬ世界で、いきなり全てをそこの公の組織に話して、『協力してください』と言うのを避けるのは、けして悪いことではないさ。それと、あの子の強要を断れはしたんだろうが、下手に状況を悪化させるわけにもいかなかったのもあるだろう。調がのび太の世界に行った結果を考えれば悪手だったかもしれんが、水掛け論になるからな」

 

キュアビートは黒江と響の双方に配慮しつつ、同情している心境を明かす。双方の事情が噛み合わず、更に、調本人が『借り物の居場所』を嫌がったことが双方の予定外だったのも事実なのだ。とはいえ、のび太も『まさか本当にくるなんて』と漏らした事があり、のび太にとっても驚きの結果であったのも伝える。

 

「のび太にも驚きの結果だったようだが、調は『元鞘に収められなくなった』のを強く自覚していた。だから、小日向未来が手引をしたのだろう。意外に思い切った事をする子だよ、あの子は」

 

小日向未来は思い切った事をする事がある。ギア装者にはなったが、彼女を『守るべき日常の象徴』と見ている立花響とは考えを異にする面もある。そんな彼女も『プリキュア因子の持ち主ではないか?』という疑問がある。これは、響がキュアグレースになると、プリキュアのエネルギーに共鳴した神獣鏡が不意に勃起状態になり、勝手にギアの状態になる事があり、その現象の調査を担当したキュアコスモいわく、『プリキュア因子がある証かもしれない。そうでなきゃ、そうそう都合のいい事にはならないニャ』とのこと。

 

「プリキュア因子の調査は?」

 

「単純な共鳴じゃないようだから、キュアコスモも、アグネスタキオンも調査が難航している。通常は天文学的に低いはずだからな。保有者の発見は」

 

黒江はキュアコスモ、アグネスタキオンの二人に調査を依頼している。アプローチはそれぞれ異なるが、同じ目的に基づく調査である。アグネスタキオンとは『下宿させてもらっている以上、何かで恩返しはしなくてはねェ』と発言しており、キュアコスモと違い、『下心ありあり』である。これはウマ娘の体質改善(自らの『脆い肉体』を改善したい願いもある)を研究テーマにしている故で、プリキュアの元気パワーが自らの脆い肉体にあれば……と思い、自分でしょげた後に『ダイワスカーレット』に励まされた事が窺える。これは競走馬として、種牡馬として嘱望されつつも、早期に引退/死亡してしまった経緯によるものだ。

 

「それじゃ、私は訓練に戻る。VF-31の慣らしをしなければな」

 

「おう。それじゃな」

 

キュアビートと別れ、キュアメロディはうたた寝を格納庫の出入り口近くのベンチでするのだった。

 

 

 

 

 

 

――キュアミラクルはある時期に、ドラえもんのスペアポケットのリンク性能を用いることで、リコとモフルンが離れている場所にいても、変身する事を思いつき、1949年になると、そうして変身していた。(ただし、デフォルトのダイヤスタイルが半固定だが。プリキュア化すれば、スタミナなどが飛躍的に向上する関係上、この頃には作業着代わりにもしていた)――

 

 

「ん~……こうかな」

 

元々が国際学部の学生だったため、機械工学などは一から学んだ。国際学部であったのは、亡き母親の仕事を手伝う必要があったからである。元の世界はZEROの暴走で、すべてが塵と帰したため、この頃には、のび太のいる世界が第二の故郷になっている。自分達が最後の生き残りになったため、多くの魔法が『失伝してしまった』のは言うまでもない。世界独自のものが多かったためだ。そのため、魔法が通じない場合は他の手段でどうにかするしかないのである。魔力での機械の能力キャパシティの増強の研究も初めており、元々の素質も生かしている。なお、これはウィッチ世界にも、ミッドチルダにも、古代ベルカにも存在しなかった理論だが、時たま『機械的限界を超えても、ストライカーが原型を保つ事例』があったのを知ったキュアミラクルが提唱したものだ。また、ウィッチ世界は他の世界より地盤が堅牢な土地が多く、それが『ラーテ』戦車をカールスラントが運用しようとした理由であると結論づけた。(履帯で移動させようとしていた事から、魔力での重量低減措置が施されていた説もある)結局、ラーテ戦車の開発費を『回収できなかった』カールスラントは無理な軍縮もあり、国として機能不全に陥っている。この頃には、既存兵器のメンテナンス業務や、連合軍への人材供給で食いつないでいるに過ぎない。連合軍の中核は日本連邦へと既に入れ替わっていたのだ。

 

「フェリーチェ、このアイデアをノビタダさんに伝えといて」

 

「わかりました。資材はどうします?」

 

「ガンダリウムε、サイコフレームとバイオコンピュータを用意するように言っといて。新規の機体だから、時間かかりそうだしね」

 

MSの素材を使うが、ミッドチルダの魔導機械の理論も取り入れる。ミッドチルダは地球の事実上の間接統治下に入ったが、ミッドチルダの技術陣は『次元世界最高』を自負していた故に、地球製兵器のそのままでの導入に強く反対している。だが、動乱で自らの保有技術が尽く『格落ち』であったことにショックを受けた彼らは、地球製兵器に魔導機械部品を使ってくれと懇願。その要請もあり、キュアミラクルは意外な大任を任せられたわけである。

 

「量産機はどうするのです?」

 

「ネオ・チタニュウム合金を使うよ。ある時期、ティターンズだか、オズだかの次期主力の『サーペント』用に開発されたけど、普通のチタンより高コストで、熟成されていくガンダリウムの存在もあって、ジオン残党にさえも見向きもされなかった種類のチタン系のマテリアルだって」

 

チタン合金セラミック複合材は普遍的な装甲材だが、その性能は時と共に改良される。それを見限り、素材の段階で強度を高めた『次世代のチタン合金』がいくつか制作されたが、どれも大量生産には至らなかった。特性が通常のチタン合金の上位互換であるガンダリウムが君臨していたのと、それをベースマテリアルにし、さらなる強度を持つ『ガンダニュウム合金』がMS用にあったからだ。ガンダニュウム合金は大量生産が実質は不可能な『特殊合金』。ガンダリウムは普遍的な技術故に、その当時は『新型が出ない限り、往時の優位は取り戻せない』とされたことから、マテリアル技術者は『調達が容易な通常のチタン合金をガンダニュウム合金の精製方法で再精錬する』事を実行し、『ネオ・チタニュウム』を作り出した。だが、折しもティターンズもオズも解体され、軍縮期には『新技術はいらない』とされ、開発した技術者らはショックのあまりに自殺したが、技術書はアナハイム・エレクトロニクスに流されており、技術そのものは残った。

 

「精錬技術がアナハイム・エレクトロニクスに?」

 

「うん。軍縮期の頃に手に入れたらしいけど、高コストな割に、ガンダニュウム合金ほどの高性能でもないから、見向きもされてなかった。それで、許可が出たんだ」

 

キュアミラクルは自分用の試作機にハイエンドマテリアルを使用する一方、供与用のものには相応にグレートダウンをするという配慮を図っている。この頃になると、ガンダリウムも『ε』に世代交代し、ネオ・チタニュウムの開発当時における、互いの性能差が逆転しているからだが、装甲分野も相応に技術革新は起こっている事の表れである。

 

「まぁ、フレーム構造とブロック構造、モジュール構造を取り入れるから、外装と内部部品は簡単に取っ替えられるようにするよ。そうでないと、向こうのメカニックが目回すからね」

 

 

供与用の兵器は『整備性の良さ』もセールスポイントである。例えば、一年戦争のジオン系MSを例にすると、『統合整備計画』の影響を受けたモデル以外は『整備要領もまちまち、操縦方法も機種毎に異なる』という致命的弱点があった。一年戦争で連邦が盛り返せた要因の一つにも、『兵器の使用部品の互換性が高かった』という『見えない利点』がある。第二次大戦のジープに伝わる『部品の大まかな形が合ってれば、お互いのすり合わせも容易で、ニコイチ修理も簡単』というエピソードが有名なように、兵器設計における『専門知識がないであろう、現場の人間でも、修理が容易にできる』事の大事さは『兵器の評価が高まるポイント』だ。

 

「互換性は時として、どの世界のどの分野でも、他への優位性になる事はありますからね」

 

「ここ数年、地球連邦大学の機械工学部の講義をオンラインで聴講したり、真田さんに聞いたりしてきたからね。わたし、元が文系だから、それが余計にハンデだったけど、楽しかったよ」

 

キュアミラクルはそう明言する。仕事の傍ら、オンライン講義を受けたり、スネ夫の従兄弟『スネ吉』(成人後は機械工学博士。実は二足歩行ロボットの歩行技術を普遍化させるための基礎を築いた『天才』である。)に教えを乞い、機械の組み立て、車や飛行機のエンジン構造の理解、プログラミング技術の習得などの課題を出されるなど、文系少女のハンデを糧にしての血のにじむような努力をしてきている。元来、ハマったものはとことん突き詰める気質であった彼女は充分に『オタク気質になる』素地を備えていた。

 

「では、私は次の定期便で23世紀のフォン・ブラウンに行きます。支度もあるので、また」

 

「いってらっしゃ~い」

 

ミラクルは設計案をフェリーチェに託すと、格納庫に行く。ホイップがお菓子を焼いたからだ。

 

「ミラクル~、こっちだ、こっち」

 

「メロディ」

 

「ミラクルの分も残ってるよ」

 

「ありがとう、ホイップ」

 

アラモードチームは戦闘向けの能力をあまり持たないため、普段の主な仕事場は本職と同じ『厨房』。キュアホイップ/宇佐美いちかは現役時代からやってきているが、64Fやロンド・ベルの炊事を担当しているため、『本来辿るはずだった道』での『未来の自分』に劣らない『パティシエ』として成長している。

 

「シュークリーム焼いたんだ?」

 

「うん。みんな、疲れてるだろうと思ってさ」

 

元々、現役時代の時点で店をチームで営業していたため、アラモードチームの料理の腕前は一級品。いちかとあおいが遠征に呼ばれたのは、戦闘の補助もそうだが、こういった役目も期待されてのものだ。

 

「あんたら、変身したままで食ってんのか?」

 

「いつ、スクランブルかかるかわかんねー身だしな。つか、お前もジェラートになってんじゃん」

 

「あたしはこれから、一号ライダーさんの特訓なんだっての。ところで、ゆかりさんはなんでいかなかったんだよ?」

 

「あの人、転生後は日本連邦空軍の少将だぞ?それに、マカロンとしても『魅力ある』から、ファッション雑誌のグラビア撮影とかに引っ張りだこ。おまけに、琴爪ゆかりとしても、抜群のプロポーション。これで忙しくならねー道理があるか?」

 

「た、確かに。ちきしょー。あたしだって、生活がやっと落ち着いてきたから、そろそろ音楽活動をやりたいんだぞー!」

 

元は深窓の令嬢であるし、青のプリキュアの後継者でもある、立神あおい。だが、実際には来海えりかや夏木りん寄りの属性を持つ。現役時代は音楽活動をしており、バンドのボーカルを担当していたという意外な特徴もある。

 

「ふふーん。あたしに勝てるかな?」

 

「クソ、特訓で歌がうまくなったからってぇ…。アンタ、元はピアニストだろー!?」

 

「絶対音感持ってるし、元々、歌の音程はさほど外れてなかったからな。今じゃ、売れっ子アイドルユニットのメインボーカルの影武者だぜ~!」

 

「だーーー!!なめやがってぇーー!歌はなぁ~……」

 

「え?歌は神秘だろ?」

 

余裕顔のキュアメロディ。音楽のプリキュアである上、特訓で『ワルキューレ』の美雲・ギンヌメールとなんら違わぬ歌唱力、彼女と同一の歌声を習得。この時点では、彼女のキメ台詞『歌は神秘!!』、『聞かせてあげる!女神の歌を!!』をケイオス公認で使用できる立場にある。

 

 

「ぐぬぬ……!!」

 

「な~にを格納庫でたむろってやがる?」

 

「なんだ、あんたかぁ」

 

と、頭に閑古鳥が鳴くキュアジェラート。黒江がやってきたのだ。

 

「荷解きが終わったんだよ。シャーリー、これはどーいう状況だ?」

 

「実はカクカクシカジカ……」

 

シャーリーの説明を聞き、自身も余裕顔を見せ、ニヤける黒江。

 

「な~るほど。こいつのバンド活動か。ボーカルだったんだろ?」

 

「そー。で、あんたがメロディに特訓を?」

 

「そうだ。おりゃ、お袋に英才教育受けさせられてたんでな。」

 

「だーーー!なんでだ、なんで、あたしの周りには、素で歌がプロ級なのがいるんだよぉー!あんた、生まれはロックのロの字もない時代じゃんー!」

 

「生まれはそうだが、歌なんてのは、基本を押さえれば、だいたいのものに対応できるもんだ」

 

「この人、アカペラにオペラから、ハードロック、グラム・ロック、パンク・ロック、バラード、ポップミュージック。なんでもこなせちまう」

 

「ヒップホップは、時代的に苦手だがな。歌唱曲と軍歌は、生まれた時代の都合で歌えるよ」

 

「ほぼ万能選手じゃねーか!?」

 

「英才教育の程度が良かった恩恵って言うやつだ。ウチは金あるほうだったからな。ひけらかすわけじゃないぞ。嫌な事も多かったからな、ガキん時は」

 

黒江は歌についても、高いレベルの才能を持つ(作曲作詞もできる)。母親の時代を超えたレベルの英才教育を受けさせられたおかげだと述懐する。

 

「こいつの歌は聞いてみたが、光る物はある。将来が楽しみだ」

 

「ほら、きーたか、あんたら~!」

 

「あ、そうだ。言っとくが、歌の講師は頼んどいた」

 

「ああ、この間に来たっていう、競走馬の生まれ変わりとかゆー?」

 

「その中でも、バランスが取れてる連中を中心に、シンボリルドルフに選んでもらった。奴自身も含めて」

 

ここで、プリキュア達に『ウマ娘達が歌の講師になる』事が伝えられる。

 

「既に、ドリームには特訓を始めさせた。エアギターが元から得意だったのと、一応、絶対音感を持ってたようだ」

 

「なにーーーーー!?マジかよ!?」

 

腰を抜かすキュアメロディ。

 

「現役時代はエアギターを披露する機会がなかったのと、本物のギターはなぜか、てんでダメだったとか、らしい?それでも、ハードロックのエアギターをこなせたから、素質はあったんだなぁ…。試しに、ウイニングチケットに許可をもらって、彼女の持ち歌を歌わせてみたんだが…。データを送るから、イヤホンで聞いてみてくれ」

 

 

黒江はタブレットで、キュアドリームに歌わせてみたという、ウイニングチケットの持ち歌でもある『WINNING MELODY』のデータを送る。一同はそれを聞いてみるが……。

 

 

「馬鹿な、現役時代はド下手だったはず……サマになってやがる……だと……!?」

 

キュアメロディはドリームと同世代かつ、長年の悪友なせいか、言うことが色々とひどい。

 

「嘘……。のぞみちゃん、特訓さえすれば、歌もそこそこにはなるんですね」

 

「お前、何気に、すごくけなしてる部分あるぞー…。」

 

「そ、そうですか?あ、あはは~…」

 

キュアミラクルでさえ、キュアドリームの歌唱力にはこの台詞である。面識がある者たちに言わせれば、驚天動地級に信じられない出来事らしい。

 

「ド下手から、ここまで?……うかうかしてらんねー……」

 

こちらは大真面目なキュアジェラート。歌手活動に真摯に取り組んできて、向き合ってきた自負があるからで、この中では唯一、公平な評価を下す。

 

「あ、あおちゃん?」

 

ジェラートが顔色を変えたのに気付くホイップ。

 

「おい、あんた。講師にはどんな奴が?」

 

「ナリタブライアン、シンボリルドルフ、ナリタタイシン、トウカイテイオー、オグリキャップ、フジキセキ、マルゼンスキー……だそうだ。歌が上手い連中で、比較的年長の奴が買って出ているそうだ。……なんだ、テイオー。俺は仕事中だぞ?」

 

「いや~ゴメンゴメン。正式に生徒会長を引き継いだのを報告したくてさー。あ、TV電話モードになってる?」

 

「?」

 

「実はゴルシがさ、うっかり、マックイーンにビールを……」

 

「飲ませたのか?」

 

「事故さ。ノンアルコールかと思ったらって…奴。それでマックイーンが悪酔いしちゃって、カラオケの機械で自分の歌を歌いだしちゃってさ…。見て」

 

一同は黒江のタブレットに注目する。すると、悪酔いしたマックイーンが頬を真っ赤に染めつつ、自分の持ち歌である『はじまりのSignal』を熱唱中のメジロマックイーンの姿が見える。酔っ払っていても、歌唱自体はしっかりこなすあたり、名家の令嬢としての根性が見える。しかも上手い。

 

「テイオー、止められなかったのか?」

 

「ああなると、無理さ。マックイーンは意志が強いからね。出来上がると、ゴルシでも止められないよ」

 

ため息のトウカイテイオー。

 

「ゴルシの手に負えんだと?」

 

信じられないと言わんばかりの黒江。メジロマックイーンは意外にも、何らかの理由で『タガが外れる』と、ゴールドシップ並に暴走するという特徴がある。やはり、お互いの血は争えないわけで、黒江はあっけにとられる他のメンバーと違い、ゴルシとマックイーンの前世での血縁を考え、納得の表情であった。

 

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