ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

430 / 788
ウマ娘側に戻りますが、状況説明多めです。


第三百二十話「幕間その62 BLAZE 6」

――結局、扶桑社会の変革が完全にはならなかったことで『挫折』した日本の一部の者達は標的を軍隊へ切り替えたが、現地情勢が緊迫化したのに、『人件費抑制』をせっつき始めた。その関係上、64Fは単独で各世界の平和を守るという大任に比して『安い』給金でこき使われることになった。また、軍隊への民間協力も『日本の市民運動の成果』で大きく減少している都合上、64Fですら、食料品を自給自足で賄うという異常事態に陥った。そのため、日本の食料品メーカーが『厚意』で扶桑に自衛隊用レーションを提供するということまで発生。扶桑の戦争行為への妨害も極限に達していた――

 

 

 

 

 

 

――軍隊への食料品供給の問題は史実の数々の悲劇のもとであることもあり、自衛隊用のレーションが日本政府の方針で、扶桑に無償で大量に提供された。それを扶桑が自前の工廠でコピーを試み、デッドコピー品が扶桑の一般部隊に出回っている。扶桑では、軍需産業に関わる人数は圧倒的に多く、日本のせいで中小の食料品メーカーが経営危機に陥っていたためで、デッドコピーはやむを得ない選択であった。扶桑が工廠をやむを得ずに地上部分を拡大したのは、食料品や嗜好品の提供のためでもあった。携行拳銃の全軍統一の試みもあったからだが、当時の扶桑軍将校の多くは『連合軍で修理が効き、補充も楽な』外国産拳銃を好んでいたため、『メンテナンス性も悪く、補給も効きにくい』国産品は倉庫の肥やしであった。九四式拳銃などは、工廠の雇用維持のために開発されたと揶揄されている。これは扶桑軍の将校用の拳銃は『自分の裁量で揃える軍装品であった』ためでもある。扶桑は制式拳銃の統一を試みたが、国内品は品質が悪く、九四式も行き渡る前に事変が起こり、そこで圭子や黒江が『ベレッタ』の優秀性を証明(ただし、後に判明するが、当時にちゃんと存在していた『ベレッタM1934』ではなく、後世のモデルである『ベレッタ92』を使用していたが…)してしまったことで、九四式拳銃はその後も倉庫の肥やしにされた。特筆すべき事項は『日本連邦樹立後にクーデターで使用された』のが唯一無二の日の目であったが、ここで性能面の不利を露呈した。クーデター軍の壊滅の一因でもある。扶桑軍中央は制式拳銃をSIG SAUER P220と定めるが、古株の将校達は古い慣例通りに、自前で購入した銃を愛用し続けたのである――

 

 

 

 

 

――ベレッタ92は扱いやすいため、護身用の武器として、プリキュアたちにも支給されていた。これはウィッチと兼任する宮藤芳佳(多くの世界では、彼女は拳銃を持たないが、A世界では人格の変化もあり、持つようになった)も同様であり、ゴールドシップも護身目的とスポーツシューティングの双方の目的で、野比家に貯蔵されていた個体を入手し、携帯していた――

 

 

 

「ゴルシ、あんた。銃に弾を装填してどうするのよ」

 

「半分は護身、もう半分はスポーツ目的だ。このマンション、シューティングレンジが地下にあるんだよ」

 

「いいの?」

 

「このマンションの他の住民はアイツの息がかかってる自衛隊と警察の関係者だし、このマンションには裏の目的があるんだ」

 

「裏の目的?」

 

「昔の九段会館みたいに、自衛隊の訓練施設なんだと。それも予備役の。表向きはエアガン・モデルガンのシューティングレンジで登録してあるけど、実際は実弾射撃用だ」

 

野比家のあるマンションは実のところ、表向きは分譲マンションだが、実際は黒江の息がかかっている自衛隊や警察関係者などが家族とともに住んでいる。これはGフォースに多大な維持費がかかっており、日本も何割かは維持費を出資している事を伏せるためである。

 

 

「あいつの部隊、維持費もかかってるからな。軍隊嫌いの戦後の政治家共がその存在を許さすはずはないが、そういう取り決めが交わされてるからな、極秘裏に」

 

「どうしてよ」

 

「扶桑が何の見返りもなしに、異世界に貴重な陸海空軍の戦力を置くか?そういう取り決めがあるから、戦力や物資を日本に提供してんだ。そういうのを一般人に言っても、ヒステリックに騒ぐだけだから、伏せられてるんだ」

 

タイシンにそう説明するゴールドシップ。扶桑も日本に何の見返りなく、戦力を提供しているわけではなく、何らかの見返りを受け取っているのだと。国家間の連邦というのは、そういうものである。

 

「それに関連して、あいつの部隊は特殊な位置づけで、日本と扶桑の軍中央の指揮下じゃないんだ。わかりやすく『司令官直属』って説明されてるけど、実際は『独立部隊』。21世紀の日本に伏せられてるのは、艦隊まで運用できる規模の部隊が軍の中央の管轄になくて、連邦運用管理部署の管轄な事。知られたら、誰かが問題にしたがるだろうからだと」

 

Gフォースの運用管理そのものは日本連邦としての組織『連邦運営委員会』の軍事部門が担当している。これは日本防衛省のとある高官が『扶桑国防省による無茶な運用での壊滅』を強く懸念した事がきっかけで決められた事である。シビリアンコントロールには則っているが、扶桑の要望で『有事即応』を原則に結成されているので、事後承諾の体で出動が承認される。日本国民に伏せられているのはそこなのだ。

 

 

「日本って、何でも許可を欲しがるんだ……。お墨付きなんて、後から貰えばいいのに」

 

「戦前の反動さ。誰かのお墨付きがないと、動けなくなったとも言うがね。だから、アイツの部隊は酷使されてんだ。この時間なら、朝早いから、あそこは使えるはずだ。やってみっか?」

 

と、言うわけで、ゴールドシップはブライアンとオグリが対決する日の前日、ナリタタイシンを誘い、マンションの地下にある『シューティングレンジ』に赴いた。耳栓(ウマ娘は人間用の遮音用具は使えないため、とりあえずの措置)はして、銃を構える。

 

「サイレンサーはついてないんだ」

 

「ま、音に慣れたほうがいいのも事実だしな。あたしらなら、マグナムでも反動は抑えられるけどな」

 

「そら、そうだ」

 

ウマ娘は通常の人間より遥かに身体能力が高い。マグナム弾を使う拳銃であっても、反動を充分に片腕で吸収できる。2.5トントラックをG1級ウマ娘の二人で持ち上げられるので、拳銃の反動は充分に耐えられるのだ。

 

「あたしらより大柄の連中はばんえいレースのほうに行くが、マイナーだしな」

 

ウマ娘世界でも『ばんえい競馬』相当のものがあるが、マイナーなスポーツであること、ウマ娘でも、特に大柄で、ハイパワーな者がばんえいレースにいく事が分かる。

 

「なんか、むかっ腹がたった。そろそろ初めていい?」

 

「お、おう」

 

タイシンはむかっ腹がたったのか、弾倉にして五つ分の弾丸を標的に撃ち込んだ。元々、シューティング系の体感ゲームをアーケードでやりこんでいたこともあり、かなりの命中率を叩き出した。

 

「ほう?筋良いな」

 

「アーケードの体感系はやり込んでたから。それに、従姉妹にいるんだよね、サバゲー好きが。付き合わされたんだよね、よく」

 

「ナリタトップロードか?それとも、ナリタルナパークか?」

 

「なっ!?なんで、あたしの従姉妹の名前を……」

 

「お前の親類でトレセン学園に入り、名を残せた者は少ない。自ずと絞れる。最も、お前の親類の殆どはGⅢ止まりだが……ブライアンとお前、ハヤヒデ、トップロードのみが一流になれたようだな」

 

『ビワ』、更に『オースミ』性まで含めた場合、ハヤヒデ、ブライアンとタイシンの『親類』は意外と多い。しかし、多くがGⅢかGⅡ止まりの才能しかなかった中、タイシン、ブライアン、ハヤヒデ、トップロードはエースと言えるだけの戦績を残している。ゴールドシップはいつの間にか、それを把握していた。

 

「今日は奴の書いた報告書を精査してくれって頼まれててな」

 

「は?なんで?」

 

「ケイの奴が『本にしたいから』だと。断片的にしか報告書を見ていないから、あいつの証言に『矛盾する』ところがあるそうだ。後で思い出したりしたり、発言を撤回したんだろうが、それがちと『多い』そうだ。タイムテレビで精査してくれって」

 

「今日は暇だし、付き合うよ。あの子、今日はスネ樹くんのとこに泊まるっていうし」

 

「誕生日パーティーでもすんのか?」

 

「いや、新発売のゲームを徹夜でするんだって。近頃のご時世的に、集まりにくくなったからだとか」

 

「最近はうるさいからな、何かと。よし、最後に一〇発、的の中心に近いのをどれだけ当てられるか、勝負だ!」

 

「望むところ!トレーナーが長電話してきて、スマホゲのイベントをやりそこねたところなんだよね。それに、同位体の記憶は記憶っしょ、あんたの腕が上がったわけじゃないっ!」

 

「フフフ、そいつはどうかな?」

 

ゴルシとタイシンは、標的の中心に近い箇所にどの程度当てられるか勝負した。結果は……。

 

 

「フフ、あたしの勝ちだな」

 

「クソ……焦って、照準をミスったか……!」

 

タイシンの最後の一発は焦りがあったのか、中心から大きくずれ、当たっていた。しかし、ゴルシは全弾を当てていた。概ね互角である。

 

「まあ、やる方だぜ。普通は疲労とかで外すからな。さて、仕事だ。下宿させてもらっている以上はな」

 

ゴールドシップは持ち前の場の仕切り力を発揮する。この日以降、二人はシューティングレンジを使用していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――キングス・ユニオンはイギリス主導で原子力潜水艦の保有へ動いたが、必要上の理由で、ブリタニアの戦艦部隊は維持された。潜水艦の攻撃では、怪異への攻撃力たり得ないからだが、ブリタニア戦艦の多くは既に性能的陳腐化が目立つ旧式艦であった。英国は戦艦よりも原子力潜水艦に予算をかけたかったが、現地の都合で戦艦に予算を回さざるを得ないことに苦虫を噛み潰す思いであった。戦艦は日米のバケモノ達に及ばぬものばかり。元来、英国の戦艦は個艦戦闘力を重視せずに数で勝負するという伝統があったが、財政的都合で、そのドクトリンを放棄せざるを得なかったため、キングジョージⅤ世級以前の戦艦を予備艦隊に落とし、竣工しつつあった新鋭艦を主軸にしたが、戦艦部隊の規模縮小は避けられなかった。そのため、『10隻以上の戦艦部隊』を日本連邦が持たねばならなくなった。この報は衝撃そのものであったが、原子力潜水艦に注力するあまりに、水上艦隊が衰弱するのは好ましくない。更に、原子力潜水艦には『怪異への決定的な攻撃手段がない』。それは明らかであった――

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦の戦艦部隊はダイ・アナザー・デイでその力を誇示した。46~56cm砲の大口径砲を有し、並み居る水上艦を蹴散らすことから、『大海獣の群れ』と表現される報道のされ方であった。また、敵に鹵獲されたガリア艦を蜂の巣にし、上部構造物をめちゃくちゃにした映像は『ヤマトの力』の誇示となった。これに強烈な危機感を抱いた各国海軍だが、政治家が『戦艦よりも巡洋艦』を推奨した関係上、戦艦の新規建造は大国の特権と化していく。日本連邦に対抗する能力は列強諸国にも殆ど残っていないからだ。それを認めなかったガリアの強行派は軍再建計画を始め、アルザス級戦艦の残存する船体の完成を画策する。流石に、ペリーヌも海上治安の悪化の防止、造船所の雇用維持の都合で、その阻止そのものは諦めた。リシュリュー級の老朽化が1949年には現実味を帯びていたからだ。ただし、建造資材の確保もままならないことで、その完成は大きく遅延していく。その間に、日本連邦は『55口径46cm砲』、『55口径51cm砲』、『55口径56cm砲』の開発に成功。砲の換装を進める。これは『60口径』の開発失敗に伴う妥協的な口径であったが、それでも『45口径』とは比較にならない威力をもたらした。40cm砲の55口径も制作されたが、対地支援には過剰すぎることから、『上陸支援艦の予備部品』扱いされ、増産ペースには乗らなかったという――

 

 

 

 

 

 

――日本連邦はバダンの超弩級戦艦たちに恐怖と対抗心を持っており、それが大和型戦艦の系譜達の果てしなき強化の理由であった。もはや他国の戦艦の殆どは眼中になかったのである。1949年時点では『新型砲塔と装甲への換装』を伴う長期ドック入りが始まっており、日本連邦の戦艦部隊の仮想敵は『誰の目にも明らか』であった。ヒンデンブルク号の名声は皮肉なことに、幾度とない激戦を生き抜き、大和型に対して優位にあることを証明したことで、確固たるものになっている。ヒンデンブルク号に同型艦がいるのでは?という恐怖も、日本連邦が超弩級移動要塞である『敷島型(二代)』を揃える理由づけであった。日本の『世界第三位の海軍国家』というプライドも関係している。(その事がガリアの琴線に触れたのは言うまでもないが)当時、既にガリアは世界四位からも陥落しており、近代化と増勢を急ぐ扶桑に完全に逆転されていた。大艦巨砲主義の究極を体現する大和型への嫉妬が同国の海軍関係者が新型艦を欲した理由といえるが、もう一つは現実問題として、残存艦の解体による鋼材確保をペリーヌが公言していた事だった。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ペリーヌの悲劇は『自力で復興してこそ、ガリアの精神が示される』と、当時の多数派であるド・ゴール派が公言し、植民地からの収入を宛にし、その広告塔にされた一方、ペリーヌ自身も、本心では『戦後日本のように、自分たちの手で復興の糸口を掴む』事を理想としていた節がある。(そこがド・ゴール派とは異なる)ペリーヌも流石に、娯楽を事実上は規制されているも同然の状況では『欧州人は欲求不満を我慢できなくなる』事を友人に悟され、地球連邦からのガリアへの支援物資を受け入れる事とする。現実問題、ガリア国民の心を癒やすには『娯楽の復活』が不可欠であるが、国民はその余裕が見いだせず、貧困に喘いでいるからだ。その点を差して、ペリーヌには『美辞麗句ばかり言う、戦争帰りの浮世離れなお嬢さん』という陰口も存在する。それが影響したのか、地球連邦からの支援物資を受け入れることへ賛成に転じたのは、植民地頼りのガリアの経済形態を脱するためでもあったが、国民の困窮の現実を受け入れたのもあった。ペリーヌは『独りよがり』ではないのである。掲げる理想が現実といつしか乖離しただけの『偶像に仕立て上げられた存在』なのだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ペリーヌが方針転換した背景には、日本連邦でのトワの生活を俯瞰した事も関係している。単に戦うだけでは『周囲の理解は得られない』からだ。トワは本来、ホープキングダムの王女であり、身分的にはペリーヌよりも『高貴な出』である。その彼女のほうが『俗世』を理解していたというのも皮肉な話であった。とはいえ、ペリーヌは時たま、本国での政治に遠隔で参加しており、(この頃においては)政治への関心は高かった。日本連邦での戦いは別人格であるトワに任せていた関係である。当時のガリア国民は、誰もが目の前のことに精一杯で、富裕層であっても、娯楽の再開まで気が回らなかった。ペリーヌはマシなほうであったが、国家規模で資金を投入しての『娯楽の復興』は好ましくないと考えていた。それが彼女が犯した政治ミスであった。ペリーヌは『自分達の力で復興してこそ~』と信じていたが、それどころでない困窮に国民はあったのだ。アストルフォの指摘で身につまされた彼女は方針転換を議会で表明しようとするも、そこを過激なボナティズム(かつてのナポレオン派)派に漬けこまれ、七回目の暗殺未遂に遭遇した。1947年のことだ。なお、表明そのものは成功し、ペリーヌは当時における年齢の若さ(1947年当時に17歳ほど)もあり、『若気の至り』と国民に赦されたが、政治的には理想家過ぎた。それ故に判断ミスも多く、政治的な立場そのものの上昇は成らなかった。(ペリーヌは元々、家が領主の家系ということで、政治の世界を知る必要があった立場であること、政治の世界で名を成した父を始めとする、クロステルマン一族の無念を晴らせればよかったので、それでもよかったのだ。親類縁者が全滅している関係で俗事への興味は薄れていたからだ。)――

 

 

 

 

 

 

 

――カールスラントは本来の国土への自力帰還が半ば放棄されたことで、国民のモラルが崩壊。NATO軍による軍政が数十年に渡り、続くことになる。怪異に鉱物資源を吸われている影響で、本来の領土の回復が『政治目標を果たす』以外の魅力が無くなったのも影響していた。日本連邦の苛烈な報復で政治影響力と軍事的な影響力を失った事もあり、数十年は経済的に困窮する日々を送る。旧・国土そのものは1950年代に回復するが、『自分達が作戦を主導できなかった』という挫折感は如何ともし難かった。旧・国土の復興は鉱物資源の貯蔵量の回復を待った都合で遅れ、1970年代、扶桑の宇宙開発の本格化で『宇宙から鉱物資源を得られるようになって以降に本格化する。軍事的には『大国』には戻れなかったが、有力軍人らの戦功で軍事史に名を残し続けていく。ナチスが台頭せず、帝政が続いている世界なので、ハインツ・グデーリアンやエルヴィン・ロンメルなどの『ナチ政権下で台頭した有力な将軍たち』の予備役編入が現場の士気とモラル維持の都合で憚れたのも、カールスラント軍が軍事史に名を刻んでいく理由である。特に、ロンメルは史実でヒトラーのお気に入りであったことで、予備役編入の有力候補だったが、連合軍の現場指揮官である事、史実での『ヒトラーに自殺を強要された悲劇的結末』のおかげもあり、すんでのところで即時の予備役編入を免れた。史実では『有能に見えるが、その実は無能な働き者』とさえ謗られ始めているが、現場指揮の範囲では、たいていの軍人より有能であるのには変わりないためだ。そのため、ロンメルは軍人としての晩年に至るまで、現場指揮官として過ごすこととなる。――

 

 

 

 

 

――有力な将軍達すら、その立場が脅かされるのを目の当たりにした現場の士官たちが恐慌状態に陥るのは当然の流れであった。日本連邦の大規模なヘッドハンティングに有力なカールスラント軍の将校が応じるのは当然の流れであった。カールスラントの国家はそんな状態からの再建を余儀なくされた。カールスラント軍は日本連邦が太平洋戦争を終えるタイミングを見計らい、有力軍人の『再召集』をかけるが、その頃には『日本連邦の永住権』を得た者が大半。ハルトマンとマルセイユなどがその当時の元帥らの懇願で『将官として』復帰する程度に留まった。日本連邦の国籍を得た者も多く、カールスラント軍は1970年代以降は『二流』の誹りを受けていくが、『1945年当時の有力な現場の将校』がごっそり抜けた事による打撃をカバーできなかったからであった――

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦が大規模にヘッドハンティングした真の理由は、クーデター事件で大量に『中堅世代のウィッチ』や『若手の参謀』を現場、もしくは軍そのものから追放したため、現場が一気に空洞化してしまったからでである。参謀については『自衛隊の幕僚』で変えがいくらでも効くが、現場要員は変えが効かないのだ。そこで妥協的に『ヘッドハンティング』が取られたのだが、予想外に良質の将校達が応じた。各国の軍縮で、高級取りの『英雄』は一様に疎んじられたからである。日本連邦は64Fにその将校らを集め、一括で運用している。厚遇した上で。しかし、戦線全体からすれば、ウィッチ部隊の空洞化をごまかすための措置というのは否めない。それが逆に、通常兵器部隊の近代化と増強を促していった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――野比家にも置かれている『コンバットアーマー』。扶桑が増強の遅れている機甲装備の内、装輪戦車などを代替する兵器として注目している。日本もGフォースのみに導入しているものだ。元々は反地球(ガイア)で開発された機動兵器だったが、反地球の地球連邦軍は艦艇と宇宙戦闘機による艦隊戦に傾倒しきっており、人型兵器の有効性に殆ど気づいておらず、パテントを地球の各軍需産業に売り払ってしまった。のび太の末裔『ノビタダ』とその親友『スネスケ』(スネ夫の末裔の一人)、『タケサブロウ』(ジャイアンの末裔の一人)はそのパテントを安価で買い取った後、ウィッチ世界に高性能試作機であった『ダグラム』を持ち込ませ、のび太に実戦テストを委託。概ねは良好な結果を弾きだした。その後に扶桑、地球連邦軍(アース)、自衛隊(Gフォース)などが採用したわけだ。64Fはダグラムとその量産タイプを保有しているが、機体の予備パーツの供給体制がまだまだ整っていないため、大半は野比家の格納庫の肥やしである。ただし、学園都市のゴロツキ共の鎮圧のために、いくつかが何回か使用された――

 

 

 

 

――ある日――

 

 

 

「やいやい!そんなパワードスーツで暴れようなんて、そうは問屋がおろさないよーだ!」

 

生徒会長に就任したトウカイテイオーだが、この日は思わぬ出来事に出くわした。ススキヶ原に『学園都市暗部部隊』の生き残りが襲来し、その部隊がパワードスーツで警察を蹴散らした事から、展示の為に輸送トラックで横浜に運ぶ途中であった『ダグラム』(実弾装備済み)を緊急で起動させた。(IDカードはのび太のものを使用した)

 

「な、何ぃぃぃ!?」

 

二重に着込む形のパワードスーツを纏う学園都市暗部部隊残党らも絶句した。警察を蹴散らして、襲った輸送トラックの積荷は『人型ロボット』、それも『ダグラム』そのままだったのだ。

 

「そ……、そんなのありかよぉぉぉ!?」

 

学園都市のパワードスーツは二重に着込むタイプであろうと、せいぜい6mほどの体躯だが、ダグラムは12m近くの体躯。更にターボザック装備であるため、通常より重装備であった。

 

「もー、展示展に運ぶ途中だったんだよ~!!そのパワードスーツをぶち抜くよ!答えは聞いてないけどっ!」

 

テイオーは操縦桿の火器管制装置のスイッチを入れ、威嚇のために、ダグラムのアームリニアガンを放つ。学園都市のパワードスーツの巨大タイプは二重構造であるので、リニアガンの直撃に『なんとか耐えられはする』程度の耐久性はある。それをゴールドシップから知らされているため、意図的に外殻部分を狙ったわけだ。

 

「ば、馬鹿な……自衛隊の戦車の砲撃に耐えられるはずの外殻を……!?」

 

パワードスーツを着込む残党兵は被弾の衝撃で数mは吹き飛び、倒れ付す。彼は反撃に出ようと、パワードスーツの外殻を内殻からの操作で動かそうとするが、外殻は完全に機能停止状態であり、アーマーのパージもままならない。

 

「生憎だね。コイツの銃はリニアガンでね。そんな謳い文句に意味はないんだ」

 

「馬鹿な…リニアガンなど、学園都市でも……」

 

「旧日本軍の秘匿技術……って聞いてるよ」

 

「……!?」

 

それに関しては、本当だ。アースとガイアの日本軍はオーバーテクノロジーをどこかで入手していたが、いずれも保守派であった東條英機の判断で研究が遅らされ、1944年六月以降に必死になって使おうとしたが、全ては遅すぎたのである。つまり、少なくとも、日本軍は自らの元来の技術を過信したが故に滅びたわけだ。日本軍の二つの地球における遺産の一つが『リニアカノン』、『リニアガン』である。ガイアにおける日本軍はそれを戦艦大和と武蔵に積もうとしたが、両艦が健在であった『レイテ沖海戦』に試作品も間に合わず、棚上げにされたという。

 

「とにかく、投降してくれる?そのパワードスーツ、もう動けなさそうだしさ」

 

「何を……!?」

 

彼は抵抗を試みるが、パワードスーツは沈黙したままであった。リニアガンが綺麗サッパリと撃ち抜いたため、内部の電装品が破壊されたからである。

 

「ほら。それに、ダグラムに勝てると思う?今のは軽いジャブだよ?」

 

「……わかった」

 

「このまま、警察に突き出すけど、いいね?」

 

「……勝手にしろ」

 

と、あっさり投降した。戦力差がありすぎるのだ。リニアカノンの直撃に耐える重装甲を持つダグラムはコンバットアーマーとしても高性能機であり、純粋に陸戦兵器として見るなら、全ての機動兵器でも上位に食い込む。アニメのものがそのまま実現するというのも変な話だが、この世界は『そういうもの』なのだ。

 

「テイオー、そいつを警察に突き出したら、トラックにダグラムを載せろ。昼までに横浜に行きたい」

 

「わかった。でもさ、ブライアン、いいの?トラックを運転してさ」

 

「そういう年齢には届いてるからな。ウマ娘としては、お前より入学は早いんだぞ」

 

運転免許証を取得できる年齢に到達しているため、家庭の事情で、運転免許証は取得したらしいブライアン。

 

「そうだった…。でも、なんで大型免許を?」

 

「親父の意向だ。親父、デコトラ好きでな…」

 

「あー……」

 

「それと、引退後にな、私は親父の仕事を手伝うことになってるんだ」

 

「もしかして、運送業?」

 

「ああ…。とはいえ、親父も年だからな。姉貴じゃ無理だから、私がすることになったんだ」

 

「ハヤヒデ、理屈っぽいから、運転ダメそうだしね」

 

ハヤヒデとブライアンはトウカイテイオーより入学そのものは早いが、デビューの遅れた期であるため、デビューはテイオーより遅い。これは選抜レースの時期とずれた時期の入学であること、その当時はオグリ世代の引退に伴うチームの再編期にあたり、チーム新編まで間が空いた事、色々な事情で、先にテイオーとマックイーンのの期がデビューすることになった。その関係上、テイオーとマックイーンはレースでは、ブライアンの先輩にあたるというわけだ。

 

「でも、何歌うのさ?ボクは『winning the soul』だけど?」

 

「私か?久しぶりに『シャドーロールの誓い』でも歌うつもりだ。『BLAZE』も考えたが、久しぶりに初心に還って…な」

 

「早い時期に歌ったって聞いてるから、声、今と違うね?」

 

「それを歌ったのは、入学間もない時期だったんだよ…。だいぶ前の事だ。まぁ……頑張れば、今でも高音域は出せるがな」

 

「無理しないでよ?」

 

「舐めるな。こっちは三冠経験者だぞ」

 

ナリタブライアンは家庭の事情を多少明かし、父親が運送業を営んでいるらしき事を示唆する。なお、入学間もない頃は『猫をかぶっていた』関係で、ハヤヒデを『姐さん』と呼んでいた時期がある。

 

「でも、いつから、猫かぶりをやめたのさ」

 

「クラシック期の頃だ。その頃にはお前らも入った後で、上の世代もターフからいなくなり始めてたからな」

 

「その頃から素を?」

 

「ああ。親戚のタイシンに敬語使うのは、こそばゆいしな。それに、三冠は……どのみち取るつもりだったからな」

 

ブライアンはクラシック期に素を出し始め、『シャドーロールの怪物』という異名を欲しいままにした。思いのほか評判が良かったので、以前の猫かぶりに戻す必要がなくなったのだという。

 

「で、シニア期に入ってから、『BLAZE』が?」

 

「そういう事だ。今の心境的にはそっちのほうが良いんだろうが、初心に帰りたくてな」

 

 

ブライアンはちょっとだけ恥ずかしそうだった。そこもブライアンの『うぶなところ』と言えよう。

 

 

 

――こうして、テイオーはダグラムでパワードスーツを着た彼を警察に突き出し、警察署の駐車スペースでダグラムをトラックに再度載せ、展示展の開かれている横浜に向かった。主催者の頼みでライブもすることになっているため、意外に、二人のする事は多い。これが彼女の生徒会長就任後初の大仕事であった――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。