ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

432 / 788
今回は遠征側です。


第三百二十二話「幕間その64 苦戦の遠征軍と街路上の猛虎」

――のび太の射撃の腕は凄まじく高く、飛行する戦闘ヘリのコックピットを拳銃で狙い撃てるほどの精度を誇る。それは子供時代の時点で為し得ていたが、子供時代は精神面の問題で判断が遅れる事があった。青年期以降はそのネガが無くなったため、真にスイーパーとして完成されていた――

 

 

 

 

「ハインドか。東ドイツからの横流しだな。後で、ドイツに嫌味でも言ってやるかな」

 

遠征では、旧・東ドイツ軍が解体当時に横流ししたと思われる兵器が現れ始めている。東ドイツ軍は国の統一後、多くの軍人が失業し、西ドイツ系の人々から爪弾きにされている。その事から、多くが部隊ごと組織に加入したと思われる。これは由々しき事態である。

 

「どうなるんだ、のび太」

 

「ドイツはカールスラントへの酷い仕打ちで、NATOで針の筵になってるからね。これが伝われば、首脳は軍部をいじめるだろうから、失業者は日本連邦で受け入れるさ」

 

ドイツ連邦はカールスラントを混乱させた事への日本連邦の制裁を回避すべく、カールスラントにそれなりの賠償金を払い始め、軍人の復職を(王室親衛隊除き)認め始めている。王室親衛隊の失業者は亡命した王室が私的に『SP』として再雇用していったため、とりあえずの鎮静化へ向かい始めている。

 

「ところで、ペリーヌの第二人格のモードレッド卿は何してるんだ?グータラか?」

 

「あの人は生前の所業がアレだしね。あまり表に出ないけど、二人ができない荒事は『彼女』の仕事さ。それと、方針転換は二人の功績だよ」

 

「あー、脳内会議って奴か?」

 

「そう。それでペリーヌさんを説得したのよ。英霊の中じゃ現世に馴染んでるしね。まぁ、生前の所業のせいで、宝具の本領が出せないってのは気にしてるようだ」

 

「アルトリアさんは?」

 

「最近はカールスラントに乞われて、ナイトウィッチの教官の仕事に強引に就かされてるけど、任期を終えて、もうじき帰ってくるよ。英雄王はチャネリングで宝具を貸してくれてるけど、それで楽しんでる感じ」

 

「ギルガメッシュも面倒な奴だなぁ」

 

「あの人は性格は悪いけど、煽てりゃ、宝具は貸してくれるからね。ものは使いようだね」

 

「お前らもワルだなぁ」

 

「箒ちゃんはここ数年で鍛えてもらってるようだから、定時連絡だけだよ」

 

「あのガキ、どうやって鍛えてんだ?」

 

「46年の頃にデスクイーン島、次の年からは五老峰に行かせられてたよ。あの子の世界とは時の流れが違うのを活用してね。綾香さんが鍛えてたのは、この戦争が始まるまでで、後は老師・童虎が引き受けてる」

 

「なに、老師が?」

 

「ああ。綾香さんは紫龍さんと同門になるんだ。その関係で。山羊座の先代の聖闘士『山羊座のシュラ』は蘇生しなかったからね。箒ちゃんもその関係で。だから、ISを使ってる状態でも、廬山昇龍覇を撃てるよ」

 

「ハハ、すげえな」

 

「そりゃ、あそこの河を逆流させろって難題を突きつけられて、アッパーを撃ち続けてりゃね」

 

「と、言うことは……廬山百龍覇もか?」

 

「ドリームも、デザリアム戦争が終わった後に撃てるようになったっていうよ?」

 

「なにーーーー!?」

 

「綾香さんが教えたんだけど、戦闘に関しては飲み込みが早いとか?」

 

「あいつ、普段はおっちょこちょいなくせに、戦闘に関しては天才なんだよな。我流のくせに」

 

「まあ、前世の引退直前の時期までに、あらかたの格闘テクニックは身につけてたようだしね。そこに錦ちゃんの『元から鍛えられてる肉体』がプラスされたんだ。ZEROと融合しなくても、かなりのところまでいけたはずだ」

 

のび太は推測をキュアメロディに言う。キュアドリームの戦闘センスは天性のもので、パワーで圧すキュアブラックとは違うタイプのプリキュアであると。ブラックとブルーム、ピーチとのちょうど中間に位置しつつ、ブラックとブルームにない『単独で必殺技が使える』初のプリキュアだと。

 

「ピーチは元からある程度の基礎はあったみたいだから、ドリームがおかしいんだよ」

 

「あいつはダンスしてるからな。そうなると、のぞみの戦闘センスが説明つかねぇ。ニルヴァーシュに乗ってた『大昔の頃』でも、そこまで喧嘩は強くなかった記憶が……」

 

「君はジ・エンドだったね」

 

「そこまで知ってんのかよ。あの世界の記憶は殆ど残ってねえんだよ。よくて二割くらい。あの世界での『大切だった人』の顔は出ても、名前が出ないくらいだ。宛にしないでくれ」

 

「その割に、ニルヴァーシュやジ・エンド、エウレカの事は覚えてるんだ?」

 

「それはあたしが聞きてーよ!」

 

と、ぼやくキュアメロディ。とはいえ、その繋がりがキュアドリームとの友情が深まるきっかけであったため、なんとも複雑らしい。キュアドリームも、その事はうっすらとしか覚えていない部分、はっきりしている部分が混在しているので、ドラえもんは『コンパクドライブ』に魂の一部が吸収されたんだろう』と推測している。

 

「でも、あん時はあいつ、ナニがあったかんな。今は同じになったけど」

 

「転生で性別が変わるなんてのは、よくあることだよ。本当はね」

 

のび太は転生に対し、ある種の見解を持つようになっていた。リルルやフー子の事例があるため、自身の転生を受け入れていたからだ。のび太自身もその後、93歳で亡くなるまで長寿を保ち、22世紀終盤、セワシのひ孫としてこの世に再誕するのである。のび太当人から数えて、7代後の人間として。

 

「僕自身も、93歳まで生きた後は、23世紀の子孫になる。多分、神様が与えてくれたプレゼントだろうね。ドラえもんを迎えるためのね」

 

「そうか、ドラえもんは…」

 

「統合戦争の時にバダンの時空破断装置を封じるため、親友テレカを使ったが、結果的に相打ちになって、時空の狭間を数十年は彷徨ってる。君が知るドラえもんは『それ以前の時間軸のドラえもん』さ」

 

ドラえもんはドラえもんズを率い、仮面ライダーらがコールドスリープをしていた施設を守るために奮戦するが、バダンの時空破断装置と親友テレカが相打ちになった影響で、次元の狭間をさまよう羽目になった。統合戦争開戦間もない時期の事だ。のび太はドラえもんを出迎えるため、転生を選んだ。それを知った調が自身の体質の変化をどこかで受け入れ、『野比家の見届け人』としての道を選んだのである。ひ孫の代で一旦は離れたが、ノビタダに『家令』として迎い入れられ、23世紀の野比家の守り役を引き受けている。ドラえもんの行方不明、セワシのワンマン化が影響を及ぼしたのは否定できない。

 

「僕は充分に生きる。だが、僕を世界が必要としてるのさ。それに、ドラえもんを迎えたい気持ちもあったから、運命の神と取引したのさ。奴は僕の転生だけど、お互いに別の存在って認識はあるよ。一応はね」

 

のび太自身は生誕した1988年の93年後、安らかに天寿を全うする。神の意志で転生し、この世に舞い戻るが、お互いに別の存在という認識はあるようだ。

 

「23世紀の世界じゃ、僕はあまり出張れない。公的には死人だしね。子供の時は良かったけど、大人になるとね。だから、あの世界でのサポートは奴に頼んだ」

 

「そこを今更かよ」

 

「仕方ないさ。カミさんがメカトピア戦役でジオン系のスペースノイドの逆鱗に触れるような演説やっちゃって、子孫がスペースノイドのテロリズムの標的になってるんだし」

 

しずかがメカトピア戦役の終戦記念式典で行った演説は『自分達の世代の努力を無にしている』という趣旨の『スペースノイドの強硬派を鋭く批判する』もので、当時ののび太には止めようがなかった。子供時代のしずかは『のび太と結婚し、子孫を残す』未来は知らなかったからだ。ジオン系スペースノイドはしずかの演説で行き場をますます失い、ついには月爆破をしようと目論んだ。それも失敗に終わると、オールズモビルに合流したり、バダンに加わるなど、まさに『連邦に一矢報えるのなら、組織の主義主張などどうでもいい』の典型例であった。

 

「お前も大変だな」

 

「カミさんがそれを知るのは、僕と結婚して、せがれを生んだ後。カミさん、怒ると怖いから、連れてきたら、公安仕込みの尋問で捕虜を『潰しかねない』よ」

 

「清楚そうな外見の割に、意外に切れると怖いんだな」

 

「子供の頃から、何度も半殺しにされたからね。アフリカの冒険の時なんて、スーパー手袋で兵士をメタメタにのしてたんだし」

 

 

苦笑いののび太。しずかは子供時代でさえ、半殺しにするのだから、成人後も相手を『再起不能』にしかねないほどの激昂性を持つ。普段は清楚で『家庭的な妻』として振る舞うだけに、成人後は戦闘に連れて行くのを避けている。

 

「今、連れてきたら、尋問で相手を潰しかねない。まだ、スカーレットニードルを撃ってもらったほうが安全さ」

 

「いや、どっちもどっちと思うぜ……」

 

しずかは公安警察で尋問をよくするが、相手を潰す寸前に追い詰める事もある事を知っているため、のび太は『まだ、スカーレットニードルで拷問したほうが安全』と考えている。

 

「しかし、パットン戦車を以てしても、ティーガーⅡの装甲をなかなか抜けないたぁな」

 

「APFSDSの供給は少ないからね。高速徹甲弾くらいじゃ、ティーガーⅡの装甲は苦労するよ。史実だと、M26を以てしても、まともにぶつかっても倒せないから、爆撃で始末してたくらいだし」

 

当時、連合軍はAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)の供給を他世界からの輸入に頼っており、64Fであっても、充分な在庫はない。そのため、旧来の『高速徹甲弾』を用いていたが、傾斜した重装甲を誇るドイツ重戦車+百戦錬磨の戦車兵の組み合わせは、それを弾くに充分な力を持つ。APDS(装弾筒付徹甲弾)ですらも配備が進んでいないのは、連合軍の資金力減退が理由であった。兵器は頑張れば揃えられるが、それに供給する弾丸が足りないのである。

 

 

 

 

「戦車じゃ、膠着状態になるぞ」

 

「MSとコンバットアーマーを使うように言ってある。敵もMSを使ってきたんだ。遠慮する必要はないさ」

 

「と、いいつつ、野郎どもをヘッドショットかよ」

 

「これでも、再生する奴はするからね。奴らに取っちゃ、末端の雑兵はいくらでも補充が効くからね。最近は、戦闘員にホムンクルスも使ってるっていうし」

 

この頃、連合軍全体で軍縮の悪影響が生じており、比較的に熟練者が多いとされる自由リベリオンでも、平均練度そのものは低かった。そのため、日本連邦は『一点集中のエース部隊を置く』というドクトリンを実行する。このドクトリンは『貧乏性+人材供給が難あり』の軍隊が負ける直前に選択する『一矢報いるためのドクトリン』だが、日本連邦は過去の成功例を鑑み、『少ない費用で有能な人材を使い倒すため』に実行した。統合戦闘航空団という枠組が政治利用されてきたため、その枠組を形骸化させてまで、人材を一極集中させている。『絶対に生還してくれる人材を一極集中して、一騎当千させる』というドクトリンは、後にキマイラ隊、ロンド・ベル隊に引き継がれる。もっとも、キマイラ隊は批判のほうが大きい。キシリア・ザビが政治抗争の道具に用いたからである。キシリア派に属した人材は多くが針の筵で、シーマ・ガラハウの海兵隊を残党内部で『獅子身中の虫』扱いしていたように。

 

 

「ジオンより一枚板だからね、ナチは。ジオンは派閥が多すぎて、まだ残党がいるって噂さ。ティターンズ残党も合流したはずだから。連邦の脱走兵も、ジオン残党の看板で略奪行為を働いてるからね。イフリート・シュナイドのパイロットはそんな人だって」

 

「脱走兵か。連邦もアコギな事はしてるけど、ジオンに与する時点でなぁ」

 

「だから、連邦も恩赦を餌に、そういうの減らす努力してるんだって」

 

「やれやれ。どこも大変だな」

 

「扶桑は超甲巡の主砲で揉めたしね。海軍は金剛型の代替が欲しかったんであって、巡洋艦は別の計画は別にあったんだって」

 

扶桑海軍は超甲巡を『巡洋艦を圧倒するために』計画したが、日本側からは『欠陥品を用意する暇があれば、重装甲の甲巡を用意しろ』と散々に酷評された。だが、実際には扶桑も、かなり直前まで、天城型巡洋戦艦の代替も兼ねて『36cm砲搭載』に変更する事を迷っていた。しかし、元来の設計が『戦艦構造だが、戦艦としての重装甲は想定していない』こと、速射式に改装された31cm砲が好評であった事から、上部構造物のデザイン変更と配置変更を経て、完成している。ウィッチ世界では、『本来の巡洋艦の需要が少なかった』からだ。しかし、高雄型重巡洋艦の陳腐化から、同型を強化したタイプの検討が始まるなど、どうにもグダグダな出来事もあった。

 

「グダグダだな」

 

「工業機械は性能を追求していくと、大型化と小型化を交互に繰り返すんだそうな。スネ夫が言ってた。モビルスーツも大型化に戻って来てるから、結局、ある程度の物理強度がないと、運用する側の安全が担保できなくなるって奴だろう」

 

それは当たらずも遠からずで、実際には、小型MSの高度性が行き過ぎて、ゲリラ的運用が難しい機種が大半になっていた、バトロイドの高性能化で、お互いの差が希薄になり始めたため、小型機が廃れ始めたのである。また、ゲッターエンペラーや聖ドラゴンがそうであるように、強大になるにつれ、サイズが際限なく巨大化していく事の判明で『無理してダウンサイジングする』必要が失せたのもある。

 

「それにしても、三号は何を考えてんだ?顔見せだけか?」

 

「奴は首領のお気に入りだからね。とは言え、デルザー軍団の意向は無視できないようだ。四号は単なる殺戮マシーンだが、やることのタガが外れている。奴をまず倒さないと」

 

「でも、奴も相当の猛者だろ?」

 

「ピンじゃ、君等は苦戦は免れない。一切の躊躇がないからね、奴は。それに痛覚もないようだし」

 

「……まさに殺戮マシーンだな」

 

「この世界のプリキュア5の手に余るよ。あの子達のレインボーローズエクスプロージョンも、たぶん片手で弾くと思うよ」

 

のび太は仮面ライダー四号の実力を『B世界のプリキュア5の手に余る』と判定した。A世界にいる『強化済みのプリキュア達に優位に立てる』のだから、B世界のプリキュア5の全員がスーパー化したとしても、一蹴できると考えているようだ。

 

「お前にしては、慈悲もねえな」

 

「純然たる事実さ。僕や東郷のいる世界じゃ、『次はない』のが当たり前だしね。あの子たちには酷だけど、できるのは露払いか、防衛くらいだよ」

 

のび太は過去の冒険で幾度となく死地を乗り越えた故か、一応の配慮は見せるものの、意外と辛辣な事実を述べる。また、仕事の世界を生きるからか、実力判定は厳しめである事がわかる。

 

「今度はメッサーか。ラジエーターか燃料タンクをぶち抜いて、炎上させるか」

 

メッサーシュミットBF109は液冷故に、意外に被弾に脆い箇所が存在する。かつてはエンジンが防弾装甲代わりになるという風潮もあったが、液冷エンジンは冷却液タンクに被弾したりすると、エンジンが止まる危険が大きいなどのデメリットが実戦で露呈。整備に熟練が必要などのデメリットがあることから、マスタングが名を馳せたのが最後となっている。のび太は液冷エンジンの弱点を知っており、そこに特性の銃弾を撃ち込み、炎上させる手法を取っていた。

 

「あらよっと」

 

のび太が銃弾を撃ち込むと、敵機は容易く炎上する。急所を撃ち抜いたのだ。メッサーシュミットは被弾に強くない箇所が存在するが、のび太は的確に当てたのだ。

 

「すげえ…一撃で……」

 

「弾丸は特別製だけど、燃料タンクに当たったな。ゼロ戦よりは頑丈なはずだけど、メッサーも強いほうじゃないからね」

 

「そうだ、BARの替えを調達してくれねーか?」

 

「あれの替えは難しいよ?ベルギーのMAG、ミニミとかあるけど、君は昔から荒っぽいしね」

 

「空中でも使ってたからな。最近は止められたから、M2を持ち出してるけどな」

 

キュアメロディは覚醒以前から『BAR』を愛用してきたが、生産停止が告知されてしまったため、最近はウィッチ世界独自の改修で手持ち化された『M2重機関銃』を使っている。とはいえ、やはり、陸戦ではかさばるため、手持ちの軽量な汎用性のある銃を欲しがっている。

 

「威力はあるけど、重いよ?」

 

「扱いには慣れてたしな。自衛隊だって、機関銃を扶桑から調達しようかって話だろ?」

 

「メーカーが不祥事で撤退するからね。扶桑のメーカーなら、ちゃんとしたのを造ってくれるって考えての話だろうね」

 

「日本側はなんて?」

 

「外国産の完成品を買ったほうが早いって喚いてるけど、有事の時の供給の途絶の可能性を考えてるんだろうね。ま、扶桑のメーカーが日本に卸すのは裏ワザだよ」

 

「どうすんだ?」

 

「完成品を卸すことになるね。ミデアかガルダで運んで。扶桑も今更、九二式を卸すのはしないだろうし」

 

自衛隊は扶桑から、装備品の調達を始めていた。日本の各メーカーが不況と疫病での経営難で、次々と軍需から手を引いていくための緊急措置である。扶桑はこれに救いの手を差し伸べ、余剰の装備を自衛隊向けに卸し始めたのである。その分野はどんどん拡大してきているため、日本のメーカーも『扶桑向け』を名目に、軍需部門を細々と復活させることにもなった。また、遠征の頃には、扶桑軍は『F-15』/『F-14』、『F-16』を採用しており、自衛隊の老朽機の代替に余剰分を提供し始めていた。これは扶桑の無償提供として扱われているため、日本の当局も無碍にはできない。また、Gフォースへの供給の名目で『F-14』も日本に入ってきていた。扶桑の意向で『単座型』に再設計されていたり、最初から強力なエンジンを搭載する前提となっているなど、元から随分と変更されているため、米軍関係者は『これはトムキャットの皮をかぶった何かだ』と評している。

 

「でもよ、日本の防衛省がよく、トムキャットの保有を許したな」

 

「扶桑は一応は大規模な空母機動部隊があるし、あれは防空戦闘機としての一種の完成形。採用しない道理はないさ。一部関係者はライノの単独採用でゴネたけど、単一機種だと、事故があった後の飛行停止で防空網の空きが出る可能性がある。その事もあるから、財務省も折れたのさ。扶桑の予算で買うんだし」

 

「確かに」

 

扶桑の軍備に提言する権利は日本の防衛省と財務省に与えられているが、戦時下である扶桑の状況に日本の官僚はついてこれず、いささか的外れな事しか言えない事も多く、扶桑側に押し切られている。F-14やF-20の採用は扶桑独自の判断だが、F-20に関しては、日本側の主張が一部通り、『機体の性能を存分に引き出せる熟練者向けの少数生産』とされた。これが、後年のモビルスーツ時代には当たり前となる『エース専用機』と『エース専用仕様機』の奔りとなる。(同機の活躍は『一握りのトップエースらの技術に依存しているものだ』という主張も一理あったためだが、エースパイロットらの『配備の要望』は無視できなかった。この点も『後年に人気がある機体として知られる、高機動型ザクの位置づけの奔り』とされる。とはいえ、実際は素直な操縦性を持っていたため、現場判断で有望株に充てがわれる場合も多かったが)

 

「F-20の予算は下りたけど、エースパイロット用に少数生産で落ち着くそうだよ」

 

「はぁ?なんでだよ」

 

「日本が安全性の懸念を伝えたのと、史実で採用が見送られたからか、日本の当局へのウケが悪かったんだって。とはいえ、エースパイロットが乗れば、第一級の活躍は確約されてるようなもんだし、君が絶賛したのが効いたんだ。一応、自由リベリオン最高のエースパイロットだろ?」

 

「あー、あ~……。なるへそ」

 

キュアメロディはF-20を雑誌で絶賛した事があり、それがもとで、搭乗したがるエースパイロットが多くなった。元々、日本では『エリア88』の主人公の最終搭乗機としての知名度があったので、『エースパイロットか、期待の若手に与える』機体としての生産が妥協的に認められた。これが『高機動型ザクに始まる、エースパイロットの搭乗を前提にした高性能機の採用』の奔りとなる。

 

「高機動型ザクってあったろ?あの奔りになるのさ。日本の妥協で認められたってのは、些かのグダグダ感あるけど」

 

「いつからだ?」

 

「50年には、ラインが開かれるそうな。ノースロップ・グラマンは大喜びだそうな。21世紀になって評価されたんだから。それも実戦で」

 

ダイ・アナザー・デイの大空中戦で、F-20は煌めく星のような獅子奮迅ぶりを見せた。黒江や圭子などの『軍全体のトップ5級の腕利き』が搭乗していたとはいえ、F-16よりも良好な出撃成績を記録した。その頃に64Fのシンボルとなった『炎の鬣の一角獣』のシンボリック性もあり、瞬く間に扶桑空軍のみならず、ウィッチ世界の全空軍の人気者となったからである。日本防衛省はプロパガンダ的な扱いでの生産を考えていたが、ウィッチ世界での人気ぶりで『防空指揮戦闘機』という触れ込みでの採用となる。この『エースパイロット用に調達される、少数生産の純然たる戦闘機』という位置づけは遥か後年の地球連邦軍の時代に『コスモ・ゼロ』が継承していくのである。

 

「あたしは純粋に、性能ポテンシャルを評価したんだけどな」

 

「史実で採用されてないのを採用するってのは、面倒くさいことだからさ。ドラケンもそうなように。君や僕たちが大戦果を挙げたから、日本も嫌とは言えなくなったんだ」

 

政治的な妥協が絡むことをぼやくキュアメロディ。喋りながら、流れ作業的に、敵のメッサーシュミットBf109を落としていくのび太の超人的離れ業を普通に流すあたり、彼女も『見慣れた』事がわかる。

 

「何機めだ?」

 

「今ので一個中隊は地獄に送った。僕相手に機銃掃射なんて、A-10でも持ってくるのが正解だよ」

 

「逃げるしかねえからな、あれは」

 

流石に、西側諸国きっての重装甲で鳴らす攻撃機『A-10』は苦手らしいのび太。のび太も流石に、同機へは手持ち武器で致命傷を与えられないと明言したため、遠征に協力する米軍に伝わり、同機の名声が高まる一因となった。

 

「この辺は追っ払ったようだ。パットン将軍に打電して」

 

「わかった」

 

二人はこの日、ヘリコプターやレシプロ機を追っ払い、味方の進撃経路を確保する仕事についていた。バダンの機甲部隊と、自由リベリオン陸軍を主力とする連合陸軍は街の道路を挟んで睨み合っている。連合陸軍は高速徹甲弾などを用いているが、傾斜装甲を有効に使うバダンの機甲部隊に苦戦していた。特に、街路上で『壁』となっていたのが、改良型か、最終型のヤークトティーガーで、さらなる重装甲で壁役を務め、M48パットンの90ミリ砲を弾き返し、『12.8cm PaK44』で以て行動不能にする恐るべき威力を見せた。また、回り込みが不可能な市街地の路地に陣取っていたことから、連合陸軍の戦車を避けつけない『街路上の猛虎』という渾名が生まれ、対峙する連合陸軍の将兵を震え上がらせている。(皮肉なことに、これがカールスラント機甲装備の再評価のきっかけになる)その関係で、連合陸軍は別ルートでの進軍を余儀なくされていた。なんとも情けないが、連合陸軍の当時の標準配備の徹甲弾では、ヤークトティーガーの前面250mm以上、なおかつ傾斜75°の重装甲は至近距離でも貫徹できなかったのだ。バダン戦車兵等の配置の妙も功を奏した。少なくとも、第二次世界大戦から冷戦初期の防御戦では、最適解の車体配置角度は模範と言えた。これが自由リベリオン軍に『M103重戦車』の制式採用を決心させるわけだ。

 

「やれやれ、あの猛虎には、当分は近寄れないな」

 

「戦後世代を持ち出したのに、ヤークトティーガーに手こずるとは思わんだ」

 

「あの重装甲をぶち抜くには、できることなら、今の現役戦車の徹甲弾が必要なんだ。高速徹甲弾なんて、えらく旧式のものじゃ、避弾経始で弾かれるよ」

 

ヤークトティーガーという強敵の出現で、思わぬ損害を負ったらしい連合陸軍。のび太も猛虎と表現するように、12.8cm PaK44の攻撃力(戦後型のMBTであっても、運が悪ければ、一撃で行動不能になる威力)と、90ミリ砲を礫のように弾く車体正面と戦闘室の重装甲は、連合陸軍を震撼させた。史実でドイツ軍が『KV-2』に対して体験した恐怖を、自由リベリオンがヤークトティーガーによって味わう羽目となるのは戦史の皮肉であった。適切な運用ができた場合のドイツの『大戦末期型戦闘車両』は恐るべし強敵となる。街路上で炎上する『M48パットンの車体と、そばに転がる砲塔の無残な残骸』が、ヤークトティーガーの猛虎伝説を生んだといえた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。