ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

433 / 787
前々回の続きになります。


第三百二十四話「ゴルシの思慮とは?」

――ダイ・アナザー・デイ期間中の問題の一つは日本側が既存の野戦防空機材を廃棄させた事による『野戦防空能力の低下』であり、携帯式対空ミサイルの普及が急がれたが、機材そのものが高価であるため、一向に普及が進まないという難点があった。また、日本側が『近接信管付きの新型大口径機銃と高射砲の普及』を望んだ事もあり、兵器配備計画が狂い、戦闘機隊に多大な負担がかかっていた。64Fは負担を減らせという指令も出ていたため、MS用の兵器をダウンサイジングした武器を用いて、一気呵成に蹴散らす事も多かった。扶桑の通常部隊には『雷電』、『飛燕』すらもないという事も当たり前であるからであった。(本来は一式/零式が行き渡っていく最中であったため)――

 

 

 

 

――ウィッチ世界の扶桑の兵器配備計画は大幅に狂い、雷電や飛燕も『旧式』扱いされてしまう有様であった。飛燕は液冷エンジンが災いし、五式戦へ既存機の殆どが改装され、ダイ・アナザー・デイの前線に投入された。(この時に、三式二型、液冷型彗星の改良型の量産計画はすべて破棄された。爆撃機の設計思想が搭載量重視に変容したからだ。)零式も新造機はすべてが五四型(史実で言う金星エンジン/水エタノール噴射装置搭載型)に切り替えられ、ウィッチ用のアグレッサー仕様である四二型も使用用途が限られるからと、現地で『五四型へ改装されて』殆どが前線に配置され、消耗した。敵新鋭機への性能不足は否めなかった機種もあるが、ジェット機に超重爆の主力を任せられたため、日本の予測より遥かに善戦した機種が多かった。比較的有力な機種である。雷電や紫電改は排気タービン搭載型が対B-29迎撃に使用され、日本側の溜飲を下げる活躍を見せた。ちなみに、重爆の調達コストは単発機の10機分以上であるため、ウィッチ世界においては大作戦にしか投入されてこなかったという。だが、超重爆の戦略的有効性は扶桑によく認識され、『飛龍』までの反復攻撃前提の設計の爆撃機が淘汰される一助となった。この過程で、扶桑は旧来の戦術爆撃機が淘汰される流れとなったが、戦術面で満足の行く搭載量のジェット機の量産は当分先のこととなったが、連山、その流れを汲む『浅間』が開発され、戦略爆撃機にハイローミックスが導入されていく――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――通常兵器は一気にダイ・アナザー・デイで飛躍し、後期には大戦末期~朝鮮戦争期相当の性能水準の兵器が普通に使用されるに至った。零式艦上戦闘機や一式戦闘機はダイ・アナザー・デイが最初で最後の華とされ、本土防空用の機材も動員され、前線で多くが消耗された。とはいえ、史実の後期仕様には百戦錬磨の義勇兵が乗り込んでいた事、史実より程度のいい整備を受けられるため、遥かに稼働率が高かったことで、意外に多くがダイ・アナザー・デイ戦終了時にも残っていた。また、扶桑系を含めた前線部隊の多くがサボタージュしたことで、前線の制空権維持は殆どが義勇兵、ないしは厚意の友軍が主力になる有様であった。地球連邦議会も、明確な脅威が身近にある時代となった故に、軍予算そのものは豊富に与えるため、余剰装備などの供与は積極的に承認しつつ、コロニー落としや隕石落としに対する『手頃な迎撃手段』の開発を指示。そうして生まれたのが、サテライトシステムである。元々は第二次ネオ・ジオン戦争の前後に建造予定だった戦闘衛星用のシステムとして考案されていたが、波動エネルギーの普及で見向きもされなくなったものを小型化・改良し、MSの武装に転用したものである。本来はダイ・アナザー・デイに投入予定だったが、ガンダリウム合金の世代交代による予定変更、ビスト財団と野比財団の抗争が激化していた事で、搭載予定のガンダムタイプの建造が先送りとなった。デザリアム戦役で相次いでロールアウトしたそれらは、野比のび太によって『A.Wガンダムシリーズ』と名付けられ、三つのタイプが開発された――

 

 

 

 

 

 

――一つ目は『ガンダムレオパルド』。これはプリベンターの有する『ガンダムヘビーアームズ改』の模倣と見なされている。とはいうものの、重装甲・重火力を追求していくと、どうしても『似てしまう』ものであるという。二つ目は『ウイングガンダムの基礎設計をもとにして』設計された『ガンダムエアマスター』。設計者が西部劇かぶれだったのか、二丁拳銃風にビーム・ライフルを持つ『割り切った』設計であったが、軍の要望で『ハイパービームサーベル』が追加装備されている。これは接近戦が想定以上に多い部隊への配備が想定されたからだ。最後が『ガンダムX』。これは新開発のサイコミュ『フラッシュシステム』を積んだ初の機体であり、プロジェクトのフラッグシップ機である。少数生産予定だったが、上位機種の開発も決まったことで増産が決定されている。試作一号機はデザリアム戦役の際、のび太の判断で夢原のぞみへ託され、同戦役での多くの期間における乗機となった。この上位機種が『ガンダムダブルエックス』である。これらがデザリアム戦役当時における地球連邦軍の新鋭機であった。装甲材も新技術で性能がグンと上がった『ガンダリウムε』であるため、機体の破損率も下がっている。ガンダリウムにガンダニュウムの精錬方法をスピンオフした結果の産物であり、既存のMS用武装の大半では、損傷を与えるのは困難になっている――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ジオン残党は皮肉な事に、自らが作り出した『ガンダリウムγ』を地球連邦軍が更に改良して量産されたことで、四度目の敗北を迎えたと言っても過言ではない。ガンダニュウムはルナ・チタニウム合金をベースにしているとはいえ、特殊な精錬方法を使うため、必然的に高コスト化していたが、ガンダリウムεはガンダニュウムとガンダリウムの利点を併せ持っている。とはいえ、技術漏洩の防止のため、ガンダムタイプ用の装甲材という形でしか使用されていないのが玉に瑕であった――

 

 

 

 

 

 

――野比家には、64Fが予備機として調達している同シリーズのガンダムが保管されていた――

 

 

「ブライアンとテイオーは横浜?」

 

「ああ。ダグラム展があるとかで……」

 

「だからって、実機を持っていくの?」

 

「まあ、ガンダムほどのインパクトはないけど、置いたほうが盛り上がるからな」

 

「でも、こんなの使う戦争が地球規模になったなんて、SFみたい」

 

「それがこの世界の未来だ。23世紀には、造山運動が促されたせいで、太平洋にでかい大陸ができるそうだ。オーストラリアの一部が消し飛んだ事の帳尻合わせだって言われてる。コロニー落としや隕石落としが頻発したから、戦略兵器がガンダムに積まれんだ」

 

ガンダムX。その機体を見上げ、解説するゴルシ。23世紀の地球連邦軍が行き着いた『MSへ究極の攻撃力を持たせ、コロニー落としや戦略兵器の投下を防ぐ』というドクトリン。波動砲を戦艦に積む思想の延長線上のものと解釈できるが、宇宙怪獣の存在の判明以後、『一騎当千の力で敵を倒す』ことにのめり込んだ地球連邦軍にとっては当然の流れで生まれた。地球連邦軍は新フラッグシップ機として宣伝しつつ、一定の増産を考えている。そのため、その更に上位機が造られたわけだ。

 

「でも、適正がないと、真価は発揮させられないんでしょう、こいつは」

 

「ビットMS込みの状態で運用したけりゃな。そんな状態は稀だから、サテライトキャノンさえ撃てれば、所期の目的は達してるよ。移動砲台みたいなもんだ。連邦軍はこれで隕石落としとかを未然に防ぐつもりなんだと。サイコフレームのオカルトチックに頼らない方向だと、どうしても、そうなるそうだ」

 

地球連邦軍は閉鎖されていた月の推進レーザー発振施設をサテライトシステム用の施設として転用し、艦艇にもマイクロウェーブ発振設備を積み、サテライトキャノン運用に柔軟性を与えようとしている。ジオン残党が残虐性の高い行為を繰り返すため、連邦軍もなりふり構わずに戦力を再建しようとしている。ジオン残党はウマ娘たちにさえ、『戦争屋』扱いされているが、往生際の悪い行為を繰り返し、月すら爆破しようとしたからであった。経緯を知れば、普通は嫌悪感を持つ。スペースノイドの代表を名乗りつつ、自分らに味方しないコロニー群を皆殺しにしていった所業の数々、ネオ・ジオンが最も苦慮していたのは『ジオン以外のコロニーに生きる権利を与える』事。その点がジオン残党の全派閥が『キシリア・ザビに虐殺の全責任を押し付けている』理由だ。

 

「こいつが生まれる原因になった『ジオン公国』って国は、宇宙時代に生まれた『ナチスと日本帝国の子供』みたいなもんだ。元々、統合戦争でテクノロジーの過剰な発展を戒めようとしていた連中の子孫が多いサイドだったようだし、それが時を経て、独裁国家に変容した。建前は議会制だろうがな」

 

「歴史上の国じゃ、二次大戦の頃の日独に酷似していたからなの、そういう解釈」

 

ナリタタイシンはゴルシにそう問いかけ、ゴルシは頷いた。

 

「そうだ。で、ジオンに反抗的なコロニーの人間を億単位でぶち殺して、オーストラリアの16%を塵にしたし、負ける寸前には、細菌兵器でジオン以外の全コロニーを皆殺しにしようとした。もし、あと数ヶ月、一年戦争が続いてたら、悲惨な殲滅戦になり得たって言われてる。だけど、そんなのは誰も望んでなかった」

 

「でも、軍隊の何十%は無傷で残った」

 

「ああ。連邦軍も予備戦力がなかったからな。だから、23世紀を迎えても、残党が騒乱を撒き散らしてんだ。こいつはそれを止めるために生み出された」

 

ガンダムは暴虐への反抗の象徴。地球連邦軍がその意義をようやく理解したのは、第二次ネオ・ジオン戦争の後。以後、地球連邦軍本隊でのガンダムタイプ運用が拡大され、精鋭部隊や特殊部隊は『グリプス戦役~第二次ネオ・ジオン戦争期』までに造られたガンダムタイプの派生機を有するに至っている。

 

「フラッグシップってやつさ。スーパーロボットはある種のヒーロー的存在だけど、ガンダムは軍用機の側面もある工業製品が基本からな」

 

地球連邦軍がその点を重視して量産した初のガンダムタイプは『ジークフリート』という渾名を持つ『ダブルゼータの大型化設計機』。合体機構を無理に20m級に収めず、スーパーロボット級の大きさにまで拡大することで強度を確保したという。ガンダムをそのまま量産する事は初代ガンダム以来の悲願であるが、コストや議会の説得などの壁で、尽くが断念されている。ジム系の上位機種で間に合うというのが議会の言い分だが、そういう時に限って、敵側の高性能機に部隊単位で蹂躙される事例が報告されてきた。異星人との宇宙戦争時代になり、議会もようやく、高級MSの一定数の量産を認め始めた。リ・ガズィやZプラスなどのZ系MS、量産型F91、Gラインなどの過去の高性能機が中身を時代相応にリファインされた上で増産されている。ただし、やはりというべきか、リ・ガズィだけはBWSの運用上の問題があり、大量配備は見送られた。その代わりが『リ・ガズィ・カスタム』なのだ。

 

「量産型は尽くが量産に失敗するジンクスがあるから、そのまま増産しちまおうとなったが、色々な兼ね合いもあるから、量産型として設計されたものの中でのいいのを選んで再生産する、あるいは新規設計で賄う事にもなった。要はカネの問題だ」

 

64Fの倉庫と化している地下格納庫。ガンダムXとそのシリーズ以外にも、歴代ガンダムの派生機、あるいは量産検討機が並んでおり、連邦軍から押し付けられたものも多い事がわかる。

 

「で、あたしはバイトで、こいつらのソフトウェアの最適化も担当してる。いざという時に動かねぇと不味いだろ?それに、グリプス戦役が終わった直後の教導部隊の反乱以降、第三者が介在しての動作確認が義務付けられてんだとよ」

 

「ハヤヒデとブライアンの下の妹……タケヒデがそこに至る話をゲームでしてたような」

 

「あいつの下の妹、渋い趣味してんなー」

 

ガンダムセンチネルという物語という形で、ニューディサイズの反乱は別世界でも存在しているらしく、ビワタケヒデ(ハヤヒデとブライアンのすぐ下の妹。トレセン学園への入学を控えていた)は趣味のゲームで『そのステージ』をプレイしていたという。現実として存在している場合、教導部隊の反乱は大きな衝撃であり、以後の地球連邦軍では、教導部隊の規模縮小、人員の適宜的な前線への腕利きの積極的投入が方針となった。ニューディサイズがMSの管制OSにバグを仕込んだ事は、連邦軍の教導部隊の立場を一気に悪化させ、ロンド・ベルのような独立部隊がその後の連邦軍で『花形』とされる原因となった。ゴルシはバイトの一環で『MS管制OSの動作確認』をしている事を明かした。

 

「あんた、いいの?」

 

「ニューディサイズ、ティターンズ、ジオン。こんな連中のことを聞けば、間接的にでも協力したくなるぜ。胸くそ悪い話揃いだ」

 

「気持ちはわかるよ。前に、タケヒデに付き合わされた時、α任務部隊が本隊に裏切られるってのがあってさ」

 

「実際はそんな単純な話でもないそうだ。残りの教導部隊の連中は居心地が悪くなって、多くがロンド・ベルに志願しちまって、教導部隊が開店休業に陥った事もあるそうだ。あいつの部隊もそれと似た状況だそうだ。だから、機材と人材のチートが容認されたんだと。扶桑の腕っこきの八割を持ってるって噂だ」

 

「いいの?」

 

「日本はクーデター事件の懲罰を前線送りって形で課していった。戦中の日本軍みたいな口封じだ。人事異動の名を借りたな。あいつらも大変だよ、そんな連中がまともに働いてくれると思うか?いくら、あいつらが不死身の体でも、寝首をかかれるのは気分の良いもんじゃねぇからな。だから、遠征には幹部級の半分と、個人的に信頼する連中しか連れて行っていないんだと」

 

64Fに人事異動で送られた者の中には、サボタージュとクーデターで64Fを苦しめた部隊の隊員も含まれており、そういった者たちは『真に心を入れ替えたかを試す』目的で、意図的に太平洋戦線の最前線で使いっぱしりをさせている。『裏で、黒江らの寝首をかこうとしていた』者も『八木大佐・参謀本部派』という形でいたからだ。セラと宮部大佐は実質は個人的な親交と信念で逆スパイ(参謀本部の動きを探るため)になり、幹部の信を得た。セラは功績が大きいため、増員という形で隊の中枢に食い込んだ。この時期には既に部隊のNo.5を自負している。64F結成メンバー以外からの幹部としては初めてであった。

 

「裏切りの防止?」

 

「日本の1940年以降の幼年学校からの生え抜き青年将校ってのは、大概が危険思想の持ち主だからな。キュアアクアとキュアマジカルが隊内の危険思想者を洗ってるそうな」

 

扶桑陸軍の幼年学校はゴルシからも『危険思想の巣窟』扱いされていた。史実の大日本帝国陸軍の暴走』を招いた関東軍の将校たちの少なからずが幼年学校を経ての任官であった史実からの発想だが、日本連邦体制下では『陸軍幼年学校卒の将校は出世ができなくなる』という話がまことしやかに囁かれていたため、任官までの経歴を『人事部を買収して改ざんする』者が多く生じ、新たな社会問題と化していた。また、社会的混乱の防止の観点から、全てを人事異動で中央から追放したり、軍籍剥奪などの処分にはできなかったためと、最前線配置のため、64Fは参謀本部の一部過激派の参謀らにとっての『人材のゴミ箱』と見なされ、64Fの配属基準を本来は満たさない者まで配置を命じてくるのだ。そのため、64Fの末端の一般隊員は固定配置の幹部級と対照的に、その入れ替わりも激しい。末端構成員から栄達が期待できる者は1949年初夏の時点ではおらず、本来は中堅幹部とされる『尉官』相当の人員が事実上の(64Fの一員という気概がある者という意味での)使いっぱしりであった。そのため、佐官であろうとも使いっぱしりのような業務は多い。幹部といえど、明らかに過労気味の者も多く、ゴルシから見ても、明らかに過労で倒れそうな者もいた。プログラミングや解析の仕事を『善意の協力者』という形で引き受けたのは、そういう事情を知ってのことだ。

 

「あんた、やけにあの人達に協力的じゃない」

 

「過労でぶっ倒れるのが末端からでも出たら、部隊の面目丸つぶれはもちろん、世間からこれでもかと叩かれる。そうすりゃ、週刊誌の力で、有る事無い事書き立てられる。こんな事はいいたかねぇが、そういう『卑しい』ところは世界中のどこにもあるもんだ。マスメディアが発達してからは特に。あたしはディープのオジキが凱旋門賞を失格になってから、一部の連中がよ、有る事無い事言い出したの知ってんからな…。それでな」

 

 

「あんたにも、そういうセンチメンタルなとこあるんだ」

 

「るせー」

 

ゴルシは前世で、自分のおじの一人にあたる三冠馬『ディープインパクト』が凱旋門賞の失格(禁止薬物の検出だが、本来は彼に投与された治療薬である)の一件以降、陰口を叩かれ始めた事を引き合いに出し、人の卑しい側面を嫌っている事を明言した。ディープインパクトとの面識が前世であったかは不明だが、ゴルシにとっては『偉大なおじ』という認識(ゴルシの父であるステイゴールドとディープインパクトは世代の近い血縁関係にあった)であったらしい。また、ディープインパクトがウマ娘として現れた後は『オジキ』と慕っているかのような様子を見せているため、ゴルシにとって、ディープインパクトの史実の『偉業』が目標となっていた可能性もある。また、ディープインパクトへの陰口に心を痛めているらしい口ぶりから、タイシンは『センチメンタル』と評した。

 

「ま、わからないわけじゃないよ。あたしだって、陰口は散々叩かれてきたし。G1一勝だけって。だから、現役を続けてる。ハヤヒデには言いたいことがたくさんあるけど、そういう事しても、あいつが考えを翻すわけでもないし、あたしはあたしだし」

 

タイシンも、自分の戦績を気にしていた。ナリタの名を持つウマ娘ではトップクラスではあるが、G1を一勝しかできていないため、親類のナリタブライアンに大きく水をあげられている。ハヤヒデには言いたいことはあれど、今はその時ではないと割り切り、シニア戦線を戦う決意らしい。ハヤヒデに代わり、ウイニングチケットの面倒を見る者として。そして、自分のトレーナーを悪評から守るため。更にいえば、ノビスケに良い格好がしたいという下心もある。トレーナーへの感情と、ノビスケに向けるのは『似て非なるもの』。母親と姉たちが過保護だったせいで、自分が本当に『守りたいものを得られなかった』というコンプレックスがあり、ノビスケはタイシンにとって『かわいい弟』のような存在となっていた。口ではつっけんどんなようでも、実際はすごくかわいがっている事は周知の事実である。

 

「お前、あの子に良い格好がしたいんだろ?」

 

「……それはある。誰かに『褒められる』なんてさ、滅多になかったし、姉貴たちは、いつまでもあたしを子供扱いするし……」

 

「年の離れた兄弟なんて、そんなもんだ」

 

タイシンは『誰かに褒められる』経験が少なかった上、姉たちからは子供扱いされていることへの反発があると話す。

 

「それで、クリークさんに?」

 

「初対面の時。……後で謝ったよ。姉貴たちとは仲いいわけじゃなかったから。あたし、遅くに生まれたから、母さんにさ…」

 

タイシンは母親の過保護を恨んでいるようだった。姉たちとは仲がいいわけではなく、衝突を繰り返していた。母親譲りの優しさを疎んじた事もあるという。ノビスケは自分に先入観なく接してきた。それがタイシンには何よりも嬉しかったという。ノビスケも不在の多い両親への反発があり、それがガキ大将となる原因でもあったが、タイシンとの交流で、周囲への気配りを学んできている。タイシンもノビスケから気付かされる事は多く、クリークの気持ちを理解し始めていた。周囲への当たりが柔らかくなっていると言われる所以だ。

 

「だから、嬉しかった。あの子に『お姉ちゃん』って言われた時は。あたし、背も高くないしさ……」

 

タイシンの意外な願望。背丈へのコンプレックスがどうでもよくなるほどの一打をノビスケは与えてくれた。ノビスケに『レースで、かっこいい自分を見せたい』というのも、現役続行の原動力であった。

 

「そのためには、トレーニングだな」

 

「茶化さないでよ、まったく……」

 

「いーだろ。ハヤヒデが驚くぞー?」

 

ゴルシはウマ娘達の潤滑油になろうとしていた。前世でボス馬だったという経歴からか。それとも、同位体の記憶が為せる業か。それはわからない。だが、徐々にウマ娘達の相談役的なポジションになりつつあるのも、一つの事実である…。ゴルシはその後、生徒会のトウカイテイオー政権で生徒会の要職を歴任していくが、その始まりと言えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。