ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回も二つのパートに分かれます。


第三百三十二話「D世界の装者らと英霊、そして『ゲッターエンペラー』」

――21世紀、ススキヶ原の再開発は終焉した。練馬区長が交代したため、環境保全に切り替えられた事、裏山の開発を担当していた建設会社と前区長の癒着が取り沙汰され、開発計画が頓挫したためだが、建設途中の建物については、地区の住人への補償金の関係で建設が続けられ、裏山の完全な切り崩しは避けられた。また、切り崩し途上の土地は住民の意向で再緑化が始められたため、裏山に建てられたマンションとホテルは肩身の狭い立場に置かれ、マンションはあまり売れずに終わり、2020年代半ばに区が半分を買い取り、文化会館代わりに用い始めるのである――

 

 

 

 

 

 

 

――ウィッチ世界の戦争は21世紀にはあまり影響を及ぼさないが、英霊と現在進行系の英雄達との差を無くす効果はあった。英霊でありながら、『英霊としては弱いから』という理由で、プリキュアを兼任するアストルフォがいるからだ。また、素体になった人物の戸籍を引き継いでいる都合上、英霊本来の働きよりも、転生後の生活基盤の確立を優先したアルトリア・ペンドラゴン、ジャンヌ・ダルクはデザリアム戦役後は1949年の初夏まで、目立った戦功はない。アルトリア・ペンドラゴンはハインリーケの立場を引き継いだ都合で、デザリアム戦役後はウィッチ教官としての仕事をしていたため、デスクワーク主体。ジャンヌ・ダルクは23世紀でテストパイロットの任務をしていたので、ガリアにはあまりタッチしていない。戦闘はともかく、生前は無学だったため、政治に興味がない(アストルフォのほうがまだマシなレベル)。アストルフォがほぼ唯一、政治にタッチしていたが、出自がイングランドとのハーフである事もあり、気位の高いガリア人の制御は難しく、結果的に、国際的地位の低下を強く危惧するド・ゴール派を御するには至らなかった。とはいえ、ガリアには軍備を早期に再建できる国力など残っていない。その事実そのものがガリアの軍事行動の抑止となった。戦艦を新造するための鉄も、飛行機を製造するための金属も本土の備蓄がかなり低下していたためで、その回復には『最低でも、数十年はかかる』という予測が出ていたからだ。しかし、『アルジェリアを失えば、鉱物資源の供給を絶たれてしまう』という恐怖がガリアの政治家たちを思考停止状態に陥らせ、軍隊は『あんなのに勝てっかよ!!』と言いたいのが本音であった。太平洋戦争の情報は独自に仕入れていたからで、国内開発がほぼ停滞しているガリアの兵器が裏取引を用いたところで、日本連邦の兵器の水準に数年で追いつけるはずはないのだ――

 

 

 

――留守番部隊――

 

「ド・ゴール派と軍隊のお偉方はアホだよ。極大規模集積回路すら用い始めてる扶桑の兵器に追いつこうとしてるんだから。戦間期の戦車とレシプロ機がまだ主力だってのに」

 

「気持ちは分からなくはないですが、無茶が過ぎる。日本連邦は既に第四世代ジェット戦闘機の配備にこぎつけているというのに」

 

「ボクたちがガリアの国策に協力しないからって、ムキになったとしか。それに、アヤカ達は下手な英霊より強い『聖闘士』だよ?」

 

「神に選ばれし闘士の力を、ド・ゴール大統領らは見くびっているようですね。仮面ライダーやスーパー戦隊らも認める境地だというのに」

 

「英霊も形なしって、まさにこの事だよ」

 

「ギャグ漫画の人物、あるいは世界そのもののデウス・エクス・マキナ的な存在と目されているデューク東郷氏でもなければ、生還の困難な攻撃。宝具の霊格を宿し、身体を武器と変える…。下手な英霊が霞みますね……」

 

ゴルゴとのび太が特別な存在である事は、交流を結ぶ皆が分かっている。のび太はそれを自覚した上で、成人後は戦いの場に身を置いていた。身を案じる妻の要請で、30代からは表立って動くことは減っている。だが、しずか自身が公安警察に配属されたため、結果的には共働きの状態が続いている。そんな彼が組織との戦闘の一翼を担い、正規の軍人であれば、勲章と二階級特進間違いなしの戦闘実績を挙げていることは報道されていない。彼は環境省の役人であって、戦闘員ではないからだ。そして、そののび太も信頼を置く『聖剣』。宝具の霊格を宿す事は聖闘士の特権であり、英霊でも起こり得ない。そこを差して、聖闘士は『シリアスなバトルの範疇では反則的』と言われるのである。

 

「我々の宝具と似て非なる存在……それでも、生き延びられる存在はいる……」

 

「ギャグ漫画の人物や、世界のデウス・エクス・マキナ的な人物さ。のび太やゴルゴはそんな人物。異能生存体とかいう単語が似合うよ。要は主人公補正だよ。ボクたちにもあることはある。アヤカたちは物語の道筋から逸れることで、それを手に入れた。ボクらに比べれば、まだまだ。ボクはプリキュアでもあるからね。君だって、ガンダムパイロットの属性を手に入れたろ?ルーラー?いや、ジャンヌ?」

 

「今はそう呼んで構いませんよ。召喚されたわけではないですからね。あなたも日本人ではないはずですが」

 

「ペンネームとか芸名さ、昔の名前を名乗るのはね。それに、元は別次元の王女だよ。地球人ですらない。」

 

お互いに、転生に伴う立場の確立に奔走することになったジャンヌ・ダルクとアストルフォ。アストルフォは何かと王族に縁がある魂なのか、転生先が王女だったりしている。プリキュアとしては、その時に覚醒めている。そこは苦笑いである。

 

「確かに…」

 

「ペリーヌもかわいそうに。ド・ゴール派の人身御供みたいにされてるじゃん」

 

「サーニャも、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンにならないと、表立っての行動ができないじゃありませんか?」

 

「それはオラーシャが悪いのですよ」

 

「あなたも戻られましたか」

 

「ええ。カールスラント空軍が開店休業状態になったので、出向という形になりました。クーデターと内乱で、軍が機能不全に陥ってますから」

 

「扶桑のものより深刻だそうだね、セイバー?」

 

「ええ。今は真名で構いませんよ。呼ばれているわけではないので」

 

「お互いにね」

 

どこかの世界で聖杯戦争というものに参加させられていた事がある英霊たちだが、転生という現象で、その仕組みから開放された者は、転生後も時たま、その時のカテゴライズの単語で呼び合う事がある。あくまで『一つの世界における結果』でしかないが、記憶と自我を保ったままで『新たな道を歩む』ことに、ルーラー(ジャンヌ・ダルク)は抵抗が特に強かった。黄金聖闘士による肉体言語、ルナマリアの肉体を乗っ取ったことへの贖罪のため、生者としての第二の道を歩む事にしたが、フランスの英雄ながら、悲劇的結末、死後の時代での聖人扱いに思うところがあるため、形式的にガリアの顧問になったが、生前は無学であった事を理由に、口出しを控えている。アストルフォがその分も頑張らなくてはならないので、アストルフォ本来の姿になっていられないという事情がある。アルトリア・ペンドラゴンは逆に、ハインリーケとして生活しているが、ハインリーケ本来の人格は歳不相応に幼さが残り、年功と階級を振りかざし、自分の戦場を作りたがっていたところもあるので、実のところは近代軍隊の将校の器ではないと裏で断じられていたのを覆す『騎士道の理想』というべき振る舞いであるため、現在では元のハインリーケよりも人望を集めている。王位経験者である事を差し引いても、圧倒的なカリスマ性があるからだ。

 

「ハインリーケの全てを受け継ぎましたが、王侯貴族から逃れられないとは」

 

「君はブリテンの王だったからね。ま、いいんじゃない?円卓を破滅させた罪を清算できるいい機会だし、君の去った後のブリテンの道筋を二ルートは見られるんだよ?」

 

「考えようによっては、そうですが…」

 

「どうしたの?えらく不満そうだね」

 

「聖剣のバーゲンセール状態は、どうにかならないのですか?」

 

「君だって、何種類かしてるじゃん。君が『セイバー』となった後に生まれた『派生存在』を入れたらさー」

 

「確かにそうですが」

 

不満そうだが、そこを突かれては立つ瀬がないアルトリア。聖剣の基本形はカリバーン、エクスカリバーはそこからの完成系の一つ。聖剣の伝説はどこの地域にも存在するが、その内の『人々の信仰が篤い』形がエクスカリバーなのだ。聖剣はアテナが霊格を配下に与え、代々の山羊座の黄金聖闘士に引き継がせてきたが、シュラが紫龍に引き継がせたことで、その代々の伝統が崩れるかと思われたが、アテナの権能で『聖剣』をもう一振り作り、山羊座を継いだ黒江に与えた。それが契機となり、聖剣は黒江の弟子筋にも与えられ、キュアドリームも、1949年初夏までには聖剣を身に宿すに至っている。『本物の宝具の霊格を身に宿す』という事の戦闘での優位性は確固たるものであり、シンフォギアのイガリマ(絶唱状態)の能力を無効化しているほど。

 

「今日の仕事はどうだったの?」

 

「説明に四苦八苦しましたよ。色々と。あの子らにとっては『辿る道が大きく変わるきっかけ』ですし、あの子らの力より上位になる力ですからね」

 

シンフォギアと聖衣の力関係は明白で、史実のバーニングエクスギアで、ようやく『黄金聖闘士の基本能力値に追いつく』と予測されるほど。更に、小宇宙を高められると、視覚などの感覚の強化がなされない装者では視認すらも困難になる。その事は風鳴弦十郎の超人ぶりの証明にも繋がった。また、黄金聖闘士級の闘士がシンフォギアを使った場合、『キャパオーバーを引き起こし、その力を受け止めきれなくなる』事も判明している。その関係上、改良が施されない限り、シンフォギアは黄金聖闘士級のパワーを受け止められずに自壊する可能性が大きかったわけだ。黒江がシンフォギア世界での戦いで、黄金聖衣で強敵に対応したのは、理に適っている。

 

「どういう流れだったのです?アルトリア卿」

 

「説明しましょう」

 

アルトリアが説明を始める。このような流れだったという。(彼女は王位経験者である上、転生後も王侯貴族の一員だったため、『卿』と敬称付きで呼ばれている。これは扶桑にそれらしい言葉の訳が存在しなかったので、卿を当てはめたことで定着した単語)

 

 

 

 

 

 

 

――四時間前――

 

「……別のアタシ達はそういう流れに…」

 

「ええ。勘違いが誤解を招き、更に事態がこんがらがり…。貴方はシンフォギア装者でなければ、国際司法裁判所で死刑でした」

 

「私は……入れ替わっていたことで、『フィーネ』の人間という認識が上書きされ、戸籍も偽装されていた…」

 

「ええ。それは事実です。ですので、色々な安全が確認されるまで、貴方方には接触を避けてもらっていました」

 

アルトリアはキュアブライト、キュアミラクルと共に、シンフォギアD世界の装者達に事情を改めて説明していた。次元世界的意味での安全が確認されたからである。黒江が動いたことで流れが変わり、切歌は結果的に、マリアの制止を振り切り、大量殺戮に手を染めた。調本人とも関係が険悪になったのは、勘違いを正そうとしたマリアの声を切り捨て、無意味な大量殺戮に走ったからで、冥土に送らずに、存在そのものを消してしまった大勢の一般人への罪悪感で自害も考えたが、響の説得で、自害はやめている。法的には切歌Aは死刑囚であったが、減刑され、無期懲役になっている。これは大量殺戮の責任を負わせ、法的に裁いた体裁を取るためで、本人は減刑のための司法取引を行い、無期懲役になった後、さらなる取引で聖闘士に転じ、聖闘士として生きる事を選んだ。

 

「同位体同士で会うことの安全の確認が必要だったから、会わないようにしてもらってたの。それに、別のあなたは大罪人でもある」

 

「十万単位を虐殺したって言うからね。理性がぶっ飛んでたとはいえ、やりすぎた」

 

「うぅ。調が乗っ取られたと勘違いした結果が、そんな大事に……」

 

「響ちゃんの主張と、装者だったことで死刑を免れたけど、当然、後ろめたさはある。だから、聖闘士に転じて、元の世界を去ったってわけ。で、響ちゃんもその後にプリキュアに目覚めたから、今はそっちが主体かな」

 

キュアミラクルが言う。

 

「へ?なんでですか?」

 

「体を慣らす必要があるし、力が本来のそれから変化してたからさ」

 

キュアブライトも続く。三人の説明は映像付きである。響Aは別人格とは別に、彼女個人として、キュアグレースに覚醒した。だが、現役時代との乖離が大きいことから、響の思いが力を変質させたと推測されている。そのため、現在はプリキュア化に体を慣らすため、プリキュアの姿で戦っている。この時期に、別人格をコピーロボットの改良型に移す作業が行われたからでもある。シンフォギアを捨てずに、プリキュアとしても戦うというのは、プリキュアの力も尊重したい彼女の意向であるので、プリキュアとしての自己を確立させたいのであると見られている。

 

「それに、そちらの貴方方は2010年代の人間でして」

 

「え、どういうことですか、それ?」

 

「貴方方とは、生きる時代が数十年は違うということです。ここにいる貴方方は2040年代、我々が最初に接触した貴方方ですが、2010年代の人間だったのです」

 

「30年もずれてるじゃねぇか!?」

 

「ええ。単純な数字の上では、親子ほども差があることになります」

 

アルトリアの言うように、シンフォギア装者の生年は世界によって、数十年単位の差がある。D世界は基本世界の流れに準じているので、装者たちは2020年代後半~2030年代前半に生まれているが、A世界では、その遥か以前の時代の生まれ。何らかの原因で、全てが数十年は早まったと見るべき世界であるのがわかっている。黒江が動いたことで、歴史も本来の流れから外れ、ある時期から『独立した流れ』の世界になった。A世界は平和になったので、装者たちは基本的に異世界への遠征などでシンフォギアを用いている。

 

「別のあなた達の世界は平和になったけれど、シンフォギアの存在が騒乱のもとになる可能性があったから、別の世界に行かせることで、その防止を図った。持ったままで、世界を離れた子もいるよ」

 

平和になれば、強大な力を持つシンフォギアは逆に疎まれる。それを悟っていた風鳴弦十郎は装者らを積極的に『異世界の調査』名目で送り出すことで、批判を躱す選択を選んだ。調、切歌は結果的にSONGに短期間しか属さず、最終的に聖域の聖闘士となった。シンフォギアも持ち出しての離脱であるため、表向きは『戦闘で消失』とされた。それが穏便に済ませる説明なのだ。

 

「待て、メンテナンスはどうしてんだ?整備なしに使えば……」

 

「定期的に整備はしているそうです。聖遺物に負担をかけずに、励起状態にできる方法が見つかったので、追加機能のテストの際のついでに行う程度そうですが」

 

「ですが?えらく抽象的だな」

 

「私達はそう聞いているだけですので、そのところはご容赦下さるよう。ただし、映像と写真は預かっています」

 

アルトリアは映像を再生する。それはドラえもんが録画していた日常風景で、調Aが日常生活で『身体保護』目的でシンフォギアを使っているもの。ギアの基本形状は2000年代中は魔法少女事変当時のもの、2010年以降はそれ以降の事変のものになっている。細かい違いは、マフラーを首に巻いている事だろうか。ギアを戦闘ではなく、人命救助や身体保護目的で用い、日常的に纏う。元々、単独戦闘にはあまり向いていないギアであったとはいえ、すごく平和的な光景だ。

 

「ん?待て。なんで、年月が経っても、外見があまり変わってないんだ?」

 

「彼女が異世界に飛ばされた事の副産物のようなものでして。精神的には加齢しても、肉体的な老化は起きなくなった。つまりは不老の状態ですね」

 

「なぁ!?」

 

「2000年代前半に14歳の状態なら、2014年には24歳を過ぎる計算でしょう?しかし、彼女は肉体の加齢が起きませんから、14歳の外見を保っているのです」

 

多少の嘘が混じってはいるが、大まかには正しい。2015年を過ぎても、調の外見に変化はなく、同居人が結婚し、子を儲けた後は、その子の面倒を見るようになっている。その様子を映像で見ると、如何に特殊な状況になったのがわかる。

 

「その年月を活用して、得たのが……」

 

――唸れ、聖剣・エクスカリバー!!――

 

シュルシャガナ単体では撃破困難な敵をまっ二つに切り裂く手刀。黒江の後追いながら、聖剣を与えられ、シュルシャガナ本来の力と組み合わせて会得した。一見すると、ものすごい手刀だが、鋭い刃のようなオーラを右腕に纏っており、鎌鼬のような衝撃波が奔った瞬間、文字通りにまっ二つになっている。

 

「聖剣って、エクスカリバーしかねぇのか?」

 

「それが一つの完成形だからです。聖剣というカテゴライズでは、ほぼ最高位です。霊的攻撃も無効化しますので、あなたの武器は通じません」

 

「ぶーーー!なんデスカ、それぇ!?」

 

聖遺物の霊格を宿すことの意義。それを知らされ、ぶーたれる切歌D。本気になれば、視認できない速さで攻撃される。そのことの意義をよく知っているクリスDは渋い顔だ。射撃が戦法の自分では、そんな超人相手には太刀打ちできない事を悟ったからだ。

 

「……私達とは似て非なる存在とはいえ……少しヘコむ……。シンフォギアを日常生活でも使うなんて」

 

「確かに、そちらの私達は似て非なる道を辿ったようだが、私はどうなのです?」

 

「あなたについては、あまり変化はないね。ただ、お父さんがご健在でおられるのが救いかな」

 

「お父様がご健在!?それでは……」

 

「あなたのおじいさんは『彼女』の仲間の超絶的な攻撃で廃人になって、そのまま裁かれた。騒乱を企んだ罪でね。その時にあなたのお父さんを殺そうとしたけど、なんていうか……哀れになるくらいだったそうな」

 

そうとしか形容しようがないのが、乙女座のシャカの力である。黄金聖闘士で最も強大な力を持つ一人とされた彼の力を以てすれば、風鳴訃堂を廃人にすることは容易なもの。彼には常人のあらゆる攻撃が通用せず、一睨みだけで五感を剥奪できる。黄金聖闘士の格があるとすれば、間違いなしに最高位の一人だとされる。

 

「あのおじいさまを一撃で……!?」

 

「ええ。我々もよく分からないくらいの超能力としか説明できませんが」

 

乙女座のシャカの力は言葉での説明のしようがないほどの超絶的なもの。歴代の乙女座でも最強とされる力は、同じ聖闘士でも説明のしようがないという。英霊さえ、この有様である。

 

「このように、物事が大きく変わっているので、今後に会う機会が訪れた場合、くれぐれもご注意くださるよう――」

 

 

これがD世界の装者に明かせる情報であった。かなり踏み込んだ領域まで明かしており、A世界とD世界の違いも明かされている。D世界の装者達はA世界との兼ね合いもあり、出歩く機会はそれほど与えられてこなかったが、A世界の響がキュアグレースとしての修行中であるため、問題が無くなったと判断されたわけだ。世界の差といえば、それまでだが、ギアへの基礎適合率の低い調と切歌は、別の自分たちが体質の変化で『シンフォギアを日常的に纏える』上、それと別の力を身に着けたことに改めての衝撃を受けた。更に言えば、切歌は『咎人』であり、無期懲役に減刑されたので、表向きはA級囚人として収監されている事、調は黒江の介入で『フィーネの装者である』事実が無くなり、途中加入の二課(後、SONG)の装者であると上書きされたため、最初から『フィーネに属していない』とされた。切歌とは天地の差ほどに認識と待遇が異なっている。

 

「どうして、私はそんなことに?」

 

「あなたは別の世界に飛ばされていたのですよ。その方と姿も入れ替わって。そこで10年ほどを過ごし、元の世界に戻れた頃には、既に、貴方自身も元鞘には収まれなくなっていたし、状況も変わっていた。その方に築かせた居場所に甘んじるのを、あなたは嫌った。それをさせた響さんと一悶着あって、貴方は置き手紙を残し、また別の世界に移ったそうです」

 

「その手引は誰が行ったのです、アルトリア女史」

 

「小日向未来さんです。夜中に調さんを連れ出し、その世界の迎えに引き渡したとのこと。響さんに見つかれば、色々と面倒になるので、夜中に実行したそうです」

 

「未来はどうして、そんな事を?」

 

「別の貴方が、かの方に強引に迫り、押し切ったのを見ていたからだそうです。断れば良かったのでしょうが、響さんの言うように、調さんが戻って来た時に、居場所が無くなっていたのも事実ですし、切歌さんは国連の議論如何では、電気椅子行きでした。ですが、事故で入れ替わっていたその方も、押し切られる体裁でしたが、事前にマリアさんが懇願していた事もあって、引き受けたのだそうで。本当は断るつもりだったそうです。姿が入れ替わっていたとはいえ、切歌さんを大混乱させた責任を取らせたかった響さんが押し通したそうです。いくらなんでも、それはないだろうと、貴方と未来さんとで揉め、結局は調さんの出奔となったのです」

 

「……うーん。それはなんとも…」

 

バツの悪そうな響D。別の自分が選んだ選択を聞かされる立場になってみると、なんともいえないらしい。更に、未来と揉めてしまう経験は自分も何度か経験があるからだろう。更に、キャロルとの戦いが『エリス』との戦いに変化し、自分らの手が及ばない領域に発展し、キャロルの精神が食われていた(ただし、後にエルフナインが集めた記憶をもとに、彼女の脳内で人格を再現する形で復活)事、『自分たちの力がいらなくなることで生じる掌返し』の恐怖に駆られた事も、騒動を大きくした一因だった。

 

 

「ボタンのかけ違いや、お互いのすれ違いが騒動を招いたと言っても、過言ではありません。騒動はあなたが現状を受け入れ、また、こちらも詫びを入れたことで落ち着きましたが、結果として、調さんと切歌さんはSONGには短期間しか属さなかったことになります」

 

「それで、聖闘士という、神の守護闘士に転じたというの?」

 

「そういうことです。もっとも、調さんは航空自衛隊官の職を得ていますが。実年齢的には当然のことですが」

 

「確かに、実年齢としちゃ当然だろうが、背丈は通るのか?」

 

「それについては問題なかったようです。背丈は伸びていますので…」

 

アルトリアが質問に答えを提示していく。実は小学校にも行っていない調だが、A世界の調は大検(高等学校卒業程度認定試験の前身)に合格した後、地球連邦大学で史学を専攻。そこから日本連邦軍が発足した2010年代後半に志願した。(正確には、地球連邦軍に入った後に地球連邦軍の諸機関がGフォースを介しての工作を行ったのだが)その関係で、Gフォースの一員としての資格を持つ。扶桑軍のプロパガンダに起用されているのも、それに起因する。黒江たちが華々しい戦果とは別のところで、『世代対立の象徴』とされた影響もあり、あどけなく、物静かそうな風貌の調は夢原のぞみ(キュアドリーム)、宮藤芳佳、雁淵ひかりらとともに、扶桑の新世代ウィッチという触れ込みで宣伝されたのも伝えられる。黒江と入れ替わった影響で、魔力を得ている関係だ。

 

 

――これが、D世界の装者らに明かされた事の全容だった。調Dは別の自分が切歌と距離を置く選択を選んだのに衝撃を受け、切歌は自分が愛ゆえの暴走で大量殺戮に奔り、その贖罪のために自害を思い立ったが、響の説得で思い留まり、咎人としての法的な裁きを受け、(世界を救った功績で減刑されたが、形式的には無期懲役刑である)表向きは収監中だが、裏ではSONGの手引きで聖闘士世界に行き、小山羊座の資格者となっており、聖闘士と装者を兼任している。調と違い、その経緯の都合もあり、表立っての職業にはついていないことに、あんぐりとするしかなかった。D世界と違い、光明結社関連の事変が事前に防がれたとは言え、グレートマジンカイザーという『現代科学の延長線上の存在』が異端技術(シンフォギアなどの構成技術、錬金術を含む)をも真っ向からねじ伏せる様を見せつけた事は『シンフォギアの優位性と有用性』に疑義を突きつけたし、聖闘士の存在は『先史文明期の技術をも超える異能』と見なされた。A世界の響がそれらに『居場所を奪われる』恐怖を抱いてしまったのも、無理からぬことである。ただし、聖闘士も神の闘士としての資格であり、技能である。実質的には互いの垣根は無いに等しい。それはプリキュアも同じこと。D世界の装者はA世界と異なり、アヌンナキとの戦いを経ていたので、聖闘士、プリキュア、スーパーヒーロー、スーパーロボットを『神の領域に踏み入れられ、対等に戦える事の証明』と前向きに考えているようである――

 

「人は神様も知らない明日を掴める。そのことの証明ですよね、皆さんは」

 

「私達の存在意義は『神をも超え、悪魔も倒す』事。不滅の存在になったとしても、ヒトだから為し得るものがあるってことだよ」

 

「そうそう。あたしら『ヒト』は創造主の思惑を超えていくんだ。たとえ、宇宙を消す機械のバケモノを生み出そうが……ね」

 

「科学を極限まで発達させ、闘争を宇宙へ求め……そこに何があるというのです?」

 

「生命全体の敵らしいけど、今の時点じゃ、まだわからない。分かるのは……それに抗うための手段を生み出す未来がある事さ」

 

キュアブライトがそう締めくくる。彼女がいう『手段』とは、究極のゲッターロボである『ゲッターエンペラー』のこと。一同はそこで幻視する。三機の超巨大な宇宙戦艦が一列に整列し、一体のスーパーロボットに合体していく様を。

 

 

チェェェ――ンジッ!!ゲッターエンペラァァァ・ヌァァンッ!

 

ゲッターエンペラーが合体を終え、余剰エネルギー(ビッグバン級の衝撃波)を放出し、星々を砕く様が見える。控えめに言っても『バケモノ』。その表現が相応しかった。

 

 

「今のバケモノはなんだ…!?」

 

「星を砕きながら合体していったデス……」

 

「あれが人のたどり着く可能性なんですか…!?」

 

「あのようなもの……」

 

「存在していいの…?」

 

口々に、存在のインパクトの大きさに圧倒され、絞り出すように言うので精一杯な装者たち。キュアミラクルがその名を告げる。

 

「あれは……皇帝。」

 

「皇帝…?」

 

「ゲッターロボというスーパーロボットの究極の姿。その名も……、ゲッターエンペラー」

 

「ゲッターエンペラー…?」

 

『皇帝』と呼ばれる究極のスーパーロボットの一つの姿を垣間見た一同。そのこと自体がゲッターエンペラーの、ゲッターそのものの意思であろうか?それはわからない…。

 

 

 

 

 

 

 

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