――1949年度になると、統合士官学校に制度が変化したため、その狭間に任官された世代のウィッチは『売れ残り世代』と揶揄される扱いになっていた。服部静夏も『兵科至上主義』を戒められる形で再教育を受けたため、少尉任官はだいぶ先延ばしになった1948年。その頃には彼女も既に『ウィッチ本来の盛りを過ぎた』年齢である。しかし、教育課程の変革とダイ・アナザー・デイ後の再教育によるものなので、既に勤務実績を積んでいる。親からは退官も勧められたが、生真面目な気質もあり、正式な任官が先延ばしにされたため、結局は太平洋戦争中に任官を迎えた――
――こうした例は『1945年に任官されるはずだったウィッチ』にはよくあることで、再教育期間が長期に渡ったため、任官を辞退する者も生じた。だが、正式な任官の後でないと、恩給の受給資格が得られず、職歴としても扱われないため、外聞上の都合もある上流階級や、代々の軍人家系の者たちはそのまま、太平洋戦争に従軍することになった。静夏は史実での縁から、64Fに配属されたが、静夏は史実ほど芳佳を尊敬しているわけではない。また、再教育で兵科以外の士官を恐れている節もあるなど、史実より臆病になっている面がある。(この問題は兵科士官と他科の士官の垣根が完全に消滅する時代まで軋轢のもととなる)また、『機関科関係の職務のみに就いてきた旧機関科士官が艦橋に立って操艦や砲戦指揮を行うことは現実問題として不可能だから、経過措置を取るべし』という意見は日本側が『人手不足』を大義名分に、一蹴しため、この時期に大量に機関学校出身の高官が生まれることになった。また、海軍の英雄であった東郷平八郎元帥が生前に『罐焚きどもがまだそんなことを言うとるのか。今後、この問題に口を出さすな!!』と怒鳴ったという話がスキャンダルとなったため、東郷の孫の一人(軍人)が責任を感じ、自殺未遂を起こすなど、大騒動となった。結果、扶桑海軍はこうした内輪揉めで人的損害が大きかったため、太平洋戦争の緒戦で主導的立場を演ずる事ができなかった。空軍は新参ながら、多くの有力軍人を抱える事もあり、以後、戦争の軍略を主導していく。制空権確保こそが近代戦の肝だからだ――
――人的損害は大きい海軍だが、物的には恵まれており、多数の超弩級戦艦を有し、超大型空母を六隻以上も保有する立場である。日本側は後方支援艦艇の充実をがなり立てたが、ウィッチ世界では『後方支援艦艇が少数の護衛で活動することは無謀』であるため、工作艦は各泊地で運用する』という、日本側の思惑とは異なる結果を呼び、空母の大型化が却って作戦への投入を躊躇わせるなど、日本側の思惑と真逆の顛末となった。その兼ね合いで、空軍の宇宙艦隊がクローズアップされたといえる。宇宙艦隊は未来世界行きを経験した者が乗員であり、名義上は空軍だが、実際には海軍に近い気質を有する。また、その人員が属する部隊は比較的に優遇されており、コア・イージを有する部隊も複数に登る。
これは地球連邦軍が、より高性能の『ブラックタイガー』や『コスモタイガーⅡ』を主力としたために払い下げをしたためである。コアイージは一年戦争後に大量の機が倉庫行きになったが、ガトランティス戦役に駆り出された後は現役復帰した。だが、万能機であるコスモタイガーの増加で余剰になり、ウィッチ世界に流れたというわけだ。それらは防衛の要と扱われ、各要所に配置されている。
――1949年のある日――
「それで、あの三人を試しに別世界に送り込んだら、そこでもエースになって、帰って来たそうだ。大佐はその当事者ですよね」
「そうだ。あの三人とは古い付き合いだが、そちらでも才能があったようでな。それで、501に増員として送り込んだ。だが、実際には貴官の早合点で国際問題になりかけた。隊も二分しかけるなど、色々と問題が生じた。故に、四年前の戦いの後に再編がなされたのだ」
ルーデルはぼかしているが、おおよその事情は明らかにした。扶桑の『沈黙は金なり』の姿勢が悪いのだという事で手打ちしたものの、扶桑の人々による『カールスラント大使館焼き討ち』を防ぐため、ミーナは人身御供に差し出されたわけだ。
「私は生贄でしょうか」
「人身御供といい給え。その方が正しい。そして、君らは扶桑の義勇兵という体裁で戦っている。カールスラントは公には『参戦していない』のでな」
「義勇兵……」
「扶桑も人手不足が顕著なのだ、ウィッチ兵科も将来的な解消が俎上に載るほどに。世代交代が停滞したのもあり、君らの世代が未だに第一線だ」
「いくら超科学で先延ばししても、限界があるのでは?」
「倫理的に受け入れられにくい事柄であるからな。だが、反戦の風潮が生じ、人員補充に支障が生じた以上、既存のウィッチを延命させんと、戦線の維持も覚束ないのだ」
ウィッチ本来の摂理に反するが、反戦意識が芽生え、人員補充に時間がかかるようになったため、高齢のウィッチに去られるわけにもいかなくなった。一部の超人頼りではいけないとする考えもあるからで、それは扶桑海軍に強い。しかし、当時の扶桑のウィッチの平均学歴はせいぜい、中学校。女子教育が史実より進んでいても『女に過剰な学問はいらない』とする考えがあった時代なので、労働力が減らされることを嫌う農村部が反発しているのである。だが、結局は農業にも機械化の波が押し寄せたりしたため、小さい村が衰退する事例が続出。『軍人街』の出現への対処として、官舎の建築、団地の建築などを行い、街並みの近代化も行われた。また、扶桑で古くからの国家功労者が亡くなっていく時代を迎え、扶桑に国葬を行わせるべきかという議論も起こったが、扶桑の面子に配慮し、やらせることにしたという(鈴木貫太郎、岡田啓介らが寿命を全うする時期に到達していたため。また、史実ではいない国家功労者もいたため、扶桑の血気盛んな国民を抑えるために好きにさせた)。
「異世界は自分たちの好きに操ろうとしたり、自分たちの金づるとしか見ない者も多いが、我々がその気になれば、21世紀世界の扶桑やカールスラントの同位国程度は容易に制圧できる。内戦と見做し、他国は動かんし、戦艦を真っ向から撃沈できる装備はもはや残っておらん」
「異世界のうち、近い時代の勢力は我々の軍事力を恐れていると」
「そうだ。21世紀は軍縮している時代だから、我々の軍事力を完全に抑えられる力は有しておらん。核兵器は政治的に使えんし、宮藤くんほどのウィッチであれば、核爆発でも防げる。更に言えば、戦艦の装甲はミサイルでは撃ち抜けんよ」
対艦ミサイルはあくまで『巡洋艦までを想定した』兵器であるので、戦艦は想定外である。ビームの熱量に耐えられる仕組みが凝らされているウィッチ世界の戦艦は『空襲でスクラップにはできるが、沈められない』事例が続出した。特に、モンタナ級のように『史実より進歩した水雷防御力を持つ戦艦』は九一式魚雷が六発も片側に当たろうと、平然と航行するほど。それより遥かに強大な超大和型を相手にしたくないだろう。自衛隊の対艦ミサイルをいくら打ち込もうが、沈まないのだから。
「だから、先方の世界で疫病が流行った時に、治癒ウィッチを送り込んで恩を売っておいて、向こうの軍需産業に市場を開放してやったそうだ。こっちの戦艦に、艦砲射撃でもされれば、過密になった東京は地獄になるからな」
日本はそれを恐れた。大和型戦艦以上の砲を持つ戦艦に艦砲射撃されれば、21世紀の過密な都市は瞬く間に地獄と化する。また、扶桑が得た超合金ニューZは、21世紀の通常兵器で壊れるほど軟な合金ではない。『マジンガーZより四倍も頑丈』という謳い文句は日本政府を大いに怯えさせた。また、64Fが『グレンダイザーよりも強力なマジンガー』を持つ事も、日本への強力な脅しになった。自衛隊をまるごと壊滅する事が容易である事の証明だからだ(マジンカイザーなどの新世代マジンガーの知名度は若年層中心であるため)。
「つまり、お互いに利害関係があると?」
「国家間の連邦は、なかよしクラブではないからな。利害関係は生ずる。その中で、上手く付き合っていくのが、大人のやり方というものだ」
ルーデルはそこを理解していた故か、日本連邦を羨ましく思っているようだった。カールスラントとドイツの関係が破綻に近いほど悪化しているのは、互いの我の強さもあるが、ドイツが戦前国家=ナチスという先入観を持っていた事が不幸のもとであった。日本と違い、ドイツは戦前との国家的連続性が薄い(ドイツ帝国とも連続性が薄い)ため、自分達に合わせさせようと強硬な姿勢を取った。だが、ナチスも東ドイツも微塵もない世界に混乱を持ち込む結果に終わり、結局はドイツ連邦は有名無実な連邦となった。日本連邦と違い、共通の象徴的な存在を持たなかった故の悲劇であった。
「それに、我々の抗議で、扶桑の当局が従軍記章や勲章の佩用の意義を再認識したのでな。そこだけは痛み分けに出来た。我々が向こうに勝った唯一の事項だ」
結局、勲章や記章の佩用が外国軍にわかりやすく功績を示しやすいものであると認識はさせたが、カールスラント軍は人種差別のレッテルを貼られ、莫大な賠償金を扶桑に支払う羽目に陥った。ミーナやゴロプなどに現場責任を負わせても、監督責任は免れず、カールスラント軍将官の少なからずが連合軍の役職を更迭されている。その後任がリベリオン系の軍人達であるので、カールスラントの軍事的黄金期はそれを以て終焉を迎えたとされる。カールスラント軍が長年に渡って『貧乏軍隊』と揶揄されていくのは、1945年からの数年で負わされた負債が莫大な金額になったからだ。人材供給センターと、後年の歴史家に揶揄される有様となったのは、高給取りとなったエースたちの給与も支給できないほどに困窮したからで、結局、カールスラントは優秀なウィッチを『傭兵、義勇兵』として派遣することで生計を立てていく。それが一段落するのは冷戦終結を迎えた、1991年の前後であったという。
――調Aの詳細がD世界の装者達に明らかにされ、少なからずの衝撃をもたらした。A世界では『イレギュラーが起こり、自分と他者の姿が入れ替わった』事、その入れ替わった側が、別の異能を以て大暴れしたこと、その詳細が明かされたのは、かなり後のことである事、互いの思いが噛み合わなかった結果、Aはシンフォギアごと出奔した事。
「いくつかの平行世界と接触したけど、高い確率で、自分に喧嘩売られましたね。まぁ、半分は私達のせいみたいなものなんですけどね」
「お前はベッタリだもんな。それがいくら、平行世界でも、別々に暮らしてますなんて」
「ええ。参りましたよ。あと、ギアが仕事着みたいになってるってのが驚かれます」
「そりゃそうだ。あたし達みたいに適合率が高くても、長時間展開してると、重く感じる事はあるからな。それを普段着代わりにされるとなぁ…」
クリスDは過去に、シンフォギアを長時間にわたって展開し続けて、疲労などの要因で装着感の低下が起こった経験があるからか、特殊な鍛錬で『聖遺物を御するほどの力を得た副産物のような効果で、メンテナンスの頻度も大きく延び、自然な着用感も維持できる』調Aに対し、ちょっと羨ましげであった。
「どうして、そこまで適合率を上げられたの?」
「アルトリアさんたちの言った通りだよ。時間は異世界を渡り歩いたから、数十年はあったし、シンフォギア以上に特殊な訓練を受けたからね」
「その訓練って、ほとんど漫画じみてねぇか」
「異能に目覚めるための訓練は大抵の場合、体系だったものは存在しないのですよ」
「私達とも違うから、そこはなんとも」
キュアブライト、キュアミラクル、アルトリア・ペンドラゴンの三名もそのような見解である。聖闘士は師となる聖闘士から教えを受けることもあるが、開眼そのものは自らの手で起こす。調Aの場合は、既に黄金聖闘士になっていた者の技能を継承していたのと、魔導師としてそこそこの才があったのが複合した結果の産物である。
「ギアを普段使いにしているのは?」
「私の階級だと、おいそれと聖衣は使えないんだ。綾香さんは黄金聖闘士。つまりは最高位だから、個人の裁量権が大きいだけ」
「ギアは身体保護のために使っているの?」
「それが大きいね。今はギミック使わなくても、以前よりグンと上の力を出せる。それと、私だってことを示すアイコンみたいなもの、かな」
「……むー…。ギアの外見はマフラー以外は殆ど同じなのに」
互いのギアの外見上の差異は少ないが、別の異能で想定外運用での出力を補えるAは、切歌との連携を前提にしてきたDにとっては、複雑な心境にさせられる『もう一人の自分』であった。
「でも、アタシ達のギアの根幹の聖遺物が『超古代文明の兵器』で、神代の聖遺物は別にあるなんて…信じられないデス」
「貴方方の世界と離れている世界では、貴方方の知る法則は当てはまらないということです。私たちのような自然な形での転生、プリキュア達の来訪。そして、宝具の存在」
「現代科学では説明不能な『奇跡』を具象化させたもの…。貴方たちの持つ聖剣はその一端なのね」
「貴方方の世界でのガングニールの絶対性ですが、おそらくは十字教に伝わる『ロンギヌス』と混同された事で生じた『関連世界固有の事象』なのでしょう。故に、野良に近いとはいえ、本当の神格たる『エリス』に通用しなかったのでしょう。加えて、グングニルより上位の宝具たる『ゲイ・ボルグ』が相手となれば……よく、籠手の破損だけで済んだものです」
「ガングニールの根幹となったグングニルは神鎗であっても、必殺の因果はない…。だけど、ゲイ・ボルグにはそれがある」
「別の貴方は自らの意思と想いで、それに抗った。ですが、相手が神鎗である故に、戦闘不能にはさせられたのですよ、立花響」
「別の私がキャロルちゃんを助けるのにこだわったのは、その神様が私達の世界にやってきたから、『可能性はある』って考えたからかも。なんとなくですけど、それまでの積み重ねもあったから。だけど、現実には戦うどころじゃなかった」
「おまけに、異端技術を現代科学の延長線上にある『ロボット兵器』が普通に上回ってみせた。それが、別の貴方が精神バランスを崩しかけた理由だと思うわ」
「オーバーテクノロジーの塊ではあるけれど、理論的には現代科学そのもの。そのような兵器が異端技術の代物を上回ったなど、信じがたいが……」
シンフォギアA世界に衝撃をもたらした『グレートマジンカイザー』の存在。同機は未来世界においては『オリジナルのグレートマジンガーが進化した存在』であるが、別世界の記憶を持つ『ミネルバX』に『ZEROには無力』であると断言された結果、ZEROへの切り札という存在意義を喪失。存在そのものが宙に浮いてしまった。だが、オリジナルのグレートマジンガーと同一の存在である事から、炎ジュン主導で『存在に意味を与える』とし、黒江たちの救援に投入された。それで錬金術を捻じ伏せる戦果を挙げたわけだ。
「それでも及ばない存在と戦うために、もっと強いロボットが造られたんだろ?それって、堂々巡りじゃねぇか?」
「敵が因果律すら操れる強敵でしたからねぇ。それでもう一機を新造したんです」
「そのおっさん……いや、意外に若いから、兄ちゃんって言うべきか…も災難だな」
「まぁ、不幸中の幸いで、その敵が偏執的な性質を持ってたから、ハイブリッド動力にする事で解決できました」
「偏執的ぃ?」
「ええ。話せば長いんですが…」
調Aの説明は、マジンガーZEROの偏執的な性質が味方の勝機に繋がった事、結果的に、キュアドリームが『贖罪』をさせるために同化を選んだことに及ぶ。
「贖罪ねぇ…。癇癪起こすついでに世界を焼いてきた野郎を永遠に付き合わせるために、同化ってのは…」
「彼女はその結果、プリキュアとマジンガーのハイブリッドのような存在に変質しています。ですが、マジンガーの一つにゲッターロボの技術が流入していた影響で、ゲッターロボの技も使えるように。ただし、肉体の見かけに変化はありませんが」
マジンカイザーとマジンエンペラーGには、ゲッターの力が入っているため、マジンガーとゲッターの愛の結晶と言える特色があり、ZEROと融合同化したキュアドリームが双方の力を使えるのは、当然の摂理であった。ZEROは『マジンガーZの悪の側面が兜甲児の心の闇を利用する形で肥大化して生まれた自我の一つ』なので、その後続機の力を使える。善のマジンガーの正常進化であるマジンカイザーは光の象徴のような位置づけであり、グレートマジンガーは『進化を受け入れる』事の象徴なのだ。
「それじゃ、却って揉めると思いますけど?」
「月のクレーターがいくつか増えるくらいの大喧嘩になったよ。プリキュアの最強形態での殴り合いになったから。もっとも、他の世界じゃ、月は改造されてないけどね」
シンフォギア世界での月は先史文明期に『宇宙人によって、一部を人工物に置き換えられた』ため、月に『上位となる存在の手が加えられていない』事は却って新鮮であった。また、それほどの異能と『身体的に優れた男性が機械式のサイボーグになるだけで、対等に渡り合える』というのも信じがたいものだった。
「叔父様は例外中の例外と思っていたが……機械式のサイボーグといっても、どういう技術で改造すれば、彼等は彼女たちと……」
プリキュアのポテンシャルは想いの強さにも依るが、基本的に幾多のヒーロー達に劣らない。また、機械式のサイボーグながら、特訓で強くなれる仮面ライダー(キングストーンの奇跡で際限なくパワーアップしていくRX、大自然のパワーでパワーアップできるJもいる)達の事が気になるようだ。
「あの人たちは超高度な技術で『人間に昆虫の能力を与えられた』んです。拒絶反応も解決されてますし、内臓も必要最低限のもの以外は機械に置き換えられてますし、骨格は超合金製のものに置き換わっています」
「なら、何故、自我を保てる?」
「頭脳は生身のままですから。組織は脳みそ以外の機械化にさえ、成功しています」
「なんだとッ!?」
仮面ライダー達は脳髄は生身のままである。超高度な技術で維持をしているため、改造当初当時の柔軟な思考を失っていない。外見はいくらでも誤魔化しが効くが、デフォルトの外見年齢は改造当初当時のそれである。その集大成が仮面ライダーZXである。
「ですが、彼等は自分達が必要とされない世界を願い、ある時期にコールドスリープに入った。それから、200年近くが経過した時期に目覚める事になったんです。彼等の力が必要な時代になりましたから」
仮面ライダーらの力が必要にされるほどの混沌が起こった世界。そして、別の自分はプリキュア変身者の転生体だった。その事実を穏やかに受け入れている節がある響D。Aは装者である事がアイデンティティに近かったため、それと違う力を受け入れるかどうかで、数年は悩んだが、Dは史実通りに錬金術師との接触を経たので、一時のAのような頑迷な言動はしなくなっている。
「その人たちの願いって、後の時代の人たちが破ったようなものなのに、なんで、その時代の人たちを守ろうと思ったのかな?」
「愛のため、ですよ。自分達の愛した誰かの愛した世界を守る事。言うのはたやすくても、なかなか出来ませんよ」
デビルマンにしろ、自分の愛した者のいる世界を守るために存在する。ある意味では高潔であり、ある意味では陳腐なお題目であるが、人の行動原理の一つは愛だと言える。
「私もあーだこーだで強くなりましたけど、単純なんですよ、戦う理由なんてのは」
「貴方……変わったわね」
「外見は変わってなくても、過ごした時間は長いから」
外見はDと大差ないが、精神的には大人になっているので、相応の物言いのA。体質もまったく変わり、魔力も有するに至った『別の自分』に対し、言いようのない劣等感がこみ上げるD。
――シュルシャガナが鋸から変質し、神話通りの炎剣としての力へ変異しつつも、ギアの外見は自分と差異がさほどない事は何かのお召しぼしだろうか?――
調Dはそう考察していた。別の自分が力を得、聖遺物本来の力を目覚めさせても、ギアの外見上の変化はさほどない事、ツインテールを覆う装甲などはそのまま、ヨーヨーの代わりに斬撃武器類を使い、魔法攻撃を行うなどの細かな差異はあるが、ギアのスタイルそのものは変わっていない。心象変化(心象でシンフォギアを変化させる)の実験は情勢の都合もあり、行われてもいないようだが、戦闘力は自分を大きく上回っている。
「最後にいい?異世界の暮らしって、どうだったの?」
「色々大変だったよ。一番恥ずかしかったのは、今住んでる家の家主さんのご家族に、ギアを展開した姿で挨拶する羽目になった時だね」
「ど、どういうこと!?」
「ギャラルホルンを介さずに異世界に行ったからか、一時的に機能異常が出ただけなんだけど、参ったよ。あ、あはは……」
調Aが恥ずかしかったとする最大の場面。それはギアの機能異常で、のび太の両親にそのままの姿で挨拶せねばならなくなった事だった。相当に恥ずかしかったことは想像に難くないので、D世界の一同は話の佳境に、そのことを質問するのだった。