ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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遠征編です。


第三百三十四話「キュアグレースの特訓、夢原のぞみの軍隊生活」

――扶桑は元々、Me262の先進性に目をつけていたが、攻撃機としてしか使えないと判断していた。そこへ飛躍的に先進的なF-86が現れたことで、制空戦闘機としての可能性を見出し、レシプロ機に見切りをつけて、軸足を移した。その過程で海軍航空隊系の開発陣の少なからずが四散し、陸軍航空隊系の開発陣が主流になったため、1946年以降の艦上機の開発は米軍機、もしくは空軍機の改造・改善が主流になる。また、元・ユーラシア大陸方面軍出身者が関東軍出身者と同一視され、戦線で捨て駒扱いされる現状に、多くの元・ユーラシア大陸領在留者たちが抗議を行うに至ったため、日本側もあからさまな冷遇を避けるようにはなったが、反乱防止のためか、型落ちの兵器しか与えられないという待遇は残った。その軋轢のため、前線の部隊間連携はお世辞にも上手くいかなかった。そこも、64Fにおんぶにだっこに陥る理由であった――

 

 

 

 

 

 

――他の理由としては、既存の軍需産業で製造途中であった『新型』装甲戦闘車両が数週間で旧式化し、納入されぬままに倉庫で不良債権化し、大量に眠っている事も大きかった。その解消のため、以前はユーラシア大陸方面軍に属していた部隊が使われた。要は足止めのための捨て駒としての扱いだが、三式中戦車や三式砲戦車などの比較的に新しい兵器があったことから、在庫の処分に使われた。90ミリ砲搭載の戦車が現れたため、旧式化したものの押しつけだ。それらは他戦線の更新用として流され、九五式軽戦車らを置き換えていった。三式中戦車らも能力面で既に旧式化しているが、太平洋戦線に全てを費やす日本連邦にとっては、他戦線への兵器供給はポーズにすぎないので、それで良かったのだ。九五式や九七式よりは圧倒的に強力だからだ。さらにいえば、弾薬庫に眠る75ミリ砲弾の在庫処分のためだからだ。扶桑本土では、四式改、五式改の運用すら苦労する地が多い故、外国製の重戦車の導入に反対する者は多い。とはいえ、南洋が戦場である上、敵の戦車がどんどん強大化するため、輸送時の重量はほとんど考慮する必要はなかった。未来輸送機や輸送艦でどんどん運ぶ上、地下工場で生産するからである。また、戦車よりも格段に強力な人型機動兵器が使われ始めたため、戦車の配備が減らされた側面もある。MSやコンバットアーマーに切り替えた方が、運用経費が安いからだ。――

 

 

 

 

 

――しかし、本来は第二次世界大戦相当の時代であるウィッチ世界での人型機動兵器の運用は多大な苦労が伴うものであるのも事実なので、多くはMSなどより安価な『コンバットアーマー』を導入した。MSを『戦車の代替』とするなら、コンバットアーマーは『手足の生えた戦闘ヘリコプター』であり、MSよりは手に負えると判断されたからだ。また、この時期はウィッチ個人にも高い近接格闘能力が求められ始めた時期にもあたるため、42年からの数年間で速成された者達は急速に戦力外と見なされつつあった。64Fは元々、好事的に格闘技を極めていたりした者が集められていたために、状況の変化にも対応できたのだ。ティターンズの超人たちとの死闘は結果として、ウィッチの今後の方向性を定めた形である――

 

 

 

――ある日――

 

「うーん。あの人はとんでもなく強かったんだよね。見えない拳なんて、反則だぁ~!」

 

「そりゃ仕方ないって。あの人はまともにバトったら、下手なプリキュアもワンパンできるんだし。いくら手加減はしてたったって、よく五体満足でいられたね?」

 

「敵か味方か。それが分かんない時に拳を交えたけど、力の差があることに動揺しちゃってさ。それで、暴走したらしいんだよね。だけど、それもすぐに解除に追い込んだ…。その事を聞かされた時は…目の前が真っ暗になる感じがしたんだよね」

 

キュアグレースになっている響Aはある日、キュアミラクルにそう告白した。黒江が敵か味方か、はっきりしなかった時期に、装者として、何度か戦う機会があったが、食らいつけたものの、完全には対応できずじまいであったと。

 

「暴走状態の記憶ってないの?」

 

「完全にしちゃうと、そこだけがなくなるんだ。目の前が塗りつぶされるみたいな感覚なんだ。その状態に平然と対応したから、こっちは大騒ぎだったんだ」

 

「まぁ、黄金聖闘士になれば、聖衣がなくても、光速の拳を打てるからね。加減してあったんだろうけど」

 

「スピードが違いすぎて、殆ど当てられなかったよ。これでも、心得はあったほうなんだけどね」

 

「あなたは中国拳法系でしょ?カンフーとかなんだっけ?」

 

「師匠(風鳴弦十郎)が昔の香港映画とかのマニアでさ、その関係で覚えたんだ。多分、ジークンドーも混じってると思うんだ」

 

「あのー、すみません。この機械はどこに置けば?」

 

「地下の酒保に置いといて。後はこちらで設置するから」

 

扶桑の工兵らしき人員が機械を運んでいく。よく見てみると、21世紀では当たり前になっているレジの機械だ。

 

「ん、何してるの、あの人たち」

 

「地下の売店で使うレジを運んでんの。現金ニコニコ払いが義務付けられてんから、21世紀の頃のシステムは役に立つよ。ミノフスキー粒子で、従来式のネットワーク接続前提の機器が全部使い物にならなくなったから、電子マネー払いが一年戦争で廃れて、現金ニコニコ払いが主流に戻った時に、博物館の機械を引っ張り出した話も残ってるそうだし」

 

「ほえー…」

 

M粒子対策もあるが、実際は軍票の新規発行と使用を停止させた混乱への対応もある。軍票は市井での流通は停止させたが、前線では紙幣と貨幣をストックできないため、部内だけの経過措置という名目で、扶桑軍は使用を続けていたが、日本側の強い意向で完全廃止になったため、扶桑軍は紙幣と貨幣を給与支払いのために貯蔵する必要が生じてしまった。これは扶桑側に多大な負担となった。それまでに流通した軍票の補償問題にも繋がったためで、この時にあれこれと試行錯誤する事が扶桑の兵站関連システムの近代化と完全整備に繋がっていく。その関係で、独自規格であった1944年までの扶桑国産装備やカールスラント系の装備は扶桑軍から排除され始めるのだが、ブリタニアやリベリオン製装備を嫌う古風な部隊は弾薬と部品をカールスラントから直接買い付けてまで、使用し続けた記録もある。とはいえ、連合軍間で弾薬や部品の融通のため、一定の規格統一はなされていたため、それを戦後のNATO規格へ更に変えようとしたのは、性急にすぎたと言わざるを得ない。この時点の扶桑で最も近代化された軍隊は空軍である。空軍が陸軍の任務を肩代わりせざるを得ない時点で、一つの軍隊としては歪な状態であるのがわかる扶桑軍。弾薬消費量の飛躍的増加、機械化の進展に伴う燃料消費量の増加。それに供給が追いつかないのだ。東條英機の歩兵至上主義閥が早期に失脚した世界とはいえ、戦車の発達が急激過ぎたのである――

 

 

 

 

 

――大和民族は基本的に『集団の敵』が決まると、途端に攻撃的になる。その点が連合国内で問題視されたのも事実だ。カールスラントを再起不能寸前に追い込んだ事は恐怖とされ、連合国の構成国の大半が日本連邦に媚びることになった。外交で独自路線を突き進んだガリアだが、資源不足が響き、早くも行き詰まりつつあった。だが、太平洋戦争の情報をあまり収集しなかった事が、後のド・ゴール派の衰退の伏線となるのだ――

 

 

 

 

 

――その要因の一つが、MSなどの存在である。1949年当時、メカトピア戦役の経験者らは64Fに属していなくとも、地球連邦軍からMSを買うことがステイタスのようになっていた。ただし、整備力の都合で『スタークジェガン』までの量産機であることが普通であった。ガンダムタイプ、あるいは可変機構ありの高級量産機を躊躇なく購入可能なところで、64Fの特殊性は際立っている――

 

 

 

 

――遠征軍――

 

「制御系のパラメータ調整…っと」

 

MSの高練度パイロットは『吊るし』のセッティングでは満足せず、主に機体反応速度の向上のために、制御系のパラメータをいじることが当たり前である。地球連邦軍の場合、エース専用モデルをガンダムタイプ、ないしはその量産モデルが占めているため、個々のパイロットの要望に則っての操縦系と制御系の最適化の研究が盛んになっている。整備性は多少落ちるが、地球連邦軍の補給率は良いので、エース専用モデルを新規で制作する事が多い他勢力よりも実は『補給効率はいい』。リ・ガズィ・カスタムはその役目を期待されていた。

 

「まさか、シューフィッターみたいな真似するたぁねぇ」

 

「自分の機体の調整だから、違うんじゃない?」

 

「やることはあまり変わらないさ。錦ちゃんがしてた事に近いから、すぐ覚えられたけど」

 

MSなどの整備調整は、戦車や戦闘機よりシビアであるため、それら以上に整備班との連携が必要である。連邦軍には、軽微の被弾が致命傷に広がった『アルビオンのジムカスタム』の言い伝えや、コックピットへの被弾で、パイロットが死亡してしまう事例が相次いできたため、Iフィールドやビームシールド、追加装甲などの研究が行われてきた。常にジム系MSは敵のエースに蹴散らされてきたからでもある。ザク系がどんどんコンセプトが肥大化し、ザクⅢでその極限に達したのに対し、ジムは設計の限界に到達し、新設計のジェガンに切り替わり、ジェガンのの基本設計はジェイブスに至るまで使用されている。これは地球連邦軍は数を一定数は揃える必要がある故に、普及量産機にはさほどの革新性を求めないのだ。

 

「でもさ、官軍側って、主役機の増産ってしないんじゃ?」

 

「たいていは試作機の体裁だから、増産の予算つかないんだって。一年戦争で生産された本式のガンダムはせいぜい十数機だっていうし」

 

「少なくない?」

 

「准量産機の陸戦型を省いた数だそうな。その内の少なからずが失われてるから、その教訓で、ガンダムは試作機が数機作られる程度になっちゃったんだそうな」

 

RX-78タイプの戦後の残存数が少ない事が、その後のガンダムたちの運命を変えた。そもそも、テム・レイ(アムロの父)は78をそのまま量産するつもりだったが、あまりに高コスト過ぎたため、別セクションの廉価量産機が主力にされた。これがジムの出自だ。テム・レイの抜けたメインセクションはジーラインの案を提出し、試作機の製造にこぎつけたが、量産機向きでない機能が多すぎたために没っている。地球連邦軍のMSにおける階層はジーラインの失敗で確定したと言っていいが、ジム系では対応不能な敵に対応可能な高級機は需要があるため、ガンダムタイプの再設計機がその役目を期待されてきた。リ・ガズィもその一つだが、性能不足が指摘されたため、結局は元の可変機に回帰せざるを得なかった。そこに同機の悲劇がある。

 

「だから、結局、連邦も『エース用の高級モデル』を用意する事になったんだってさ」

 

「グダグダね」

 

「あたしらの時代のゲーム機とかでも、ハイエンド仕様って謳ってたのあるじゃん?それみたいなもんだそうな?」

 

「なんで疑問形なのよ、のぞみ」

 

「分野が違いすぎるからだよ、りんちゃん」

 

珍しく、地球連邦軍の軍服(ロンド・ベル仕様)姿ののぞみ。デザリアム戦役前後に支給されたが、普段は扶桑軍の所属なので、着る機会は少なかったが、この度の遠征では着用している。地球連邦軍としての派遣任務でもあるからだ。

 

「あんた、向こうのあんた自身にぶーたれられてるわよ?」

 

「そりゃ、戦いでおまんま食ってるしね。日本の不手際で転職を潰されたなんて、大人の事情は納得いかないだろうし、仕事で戦ってるってのは……ねぇ」

 

のぞみは教職を目指していたが、Aは予備士官行きを事実上は潰されている。日本側の勘違いと無知、思い込みからの暴走で、予備士官制度そのものが事実上の崩壊を迎えたからだ。結局、制度そのものが予備自衛官に準ずるものに切り替えられたが、転職がダメにされた者たちへの補償は『予備士官への扱い変更をなかったことにし、召集の継続という形にする』という、妥協と当事者への箝口令を兼ねた解決法が取られた。その発端になったのぞみは、皮肉にも『プリキュア5のリーダー戦士』という肩書があることで、給与も、危険手当もすぐに倍増された上で、少佐へ進級している。防衛省も『プリキュアの夢を潰した』というマイナスイメージは避けたかったし、自分達の関与できぬところで、文科省が起こした祥事は自分達の株を上げるいい機会。ここぞとばかりに、文科省の不祥事を責めている。そこを差して、大人の事情なのだ。(扶桑側の事情を無視し、独善的な施策を押し通した日本の不手際であるため)

 

「夢と現実の違いって説明もできるけど、あんた自身はブラックな側面に幻滅してるから、そこがねぇ…」

 

「公立の先生はなるもんじゃないよ、本当。モンペアの文句を毎日聞かされるわ、主任にいびられるわ、部活で休みがないのに、手当出ない……」

 

のぞみAは前世で散々にブラックな側面を味わされ、教職に幻滅したため、教師に戻ったとしても、戦前の雰囲気の残る扶桑で、のんびりと教師をするつもりだった。だが、日本の文科省の過激派が『師範学校や士官学校卒の者は教壇に立たせない』というスローガンで介入し、強引に扶桑の施策を捻じ曲げ、軍人事を大混乱させた。その収拾のための口止めも兼ねた決定で、結局は現役軍人のままでいることになった。扶桑人の不満を煽るような事があったとはいえない日本側の妥協的な提案の結果だった。

 

「おまけに、予備役制度そのものが大混乱で、一から仕切り直しになっちゃったから、現役のままでいることになったし。予備役なら、有事に召集されるだけだったんだけどなぁ…。有事続きだから、隊籍はそのままにされただろうけど」

 

のぞみは錦としての姉『小鷹』に頼み込み、ダイ・アナザー・デイの直後、天皇のお墨付きも得ていたので、『転職先』として、扶桑の学校に話をつけてもらっていた。だが、日本文科省の過激派の暴走で、その話が流れてしまった。彼女以外にも、何十万という『在郷軍人』の転職の進路が狂わされたため、『失業保険』が莫大な金額になってしまう事が問題となった。最終的には、財務省と大蔵省の要望もあり、在郷軍人たちの召集の期間を『日付を遡って延長させて、『予備役編入願いは存在しない』扱いにする。その施策で再召集の手間を省いたのはいいが、当事者達の不満は大きかった。そのため、日本側は箝口を暗示するのを兼ねての最前線送りを『栄転』をエサに進めていった。体の良い厄介払いである。そうでないのは、地元マスコミを味方につけていた、のぞみのみである。のぞみだけは人事上のマイナスもなく、軍のホープ扱いで太平洋戦線を迎えた。むしろ、プラスが多い。のぞみは世間的に、予備士官制度の混乱の第一被害者だと認識されたからである。のび太はこのことに、こうコメントしている。

 

――日本側は自分らが上位者と勘違いしてるのさ。昔にぼく達が見た『天上人』みたいなものだよ。彼らは雲戻しガスの存在に怯え、キー坊の仲介で、植物星に移民した。もし、23世紀以降に彼らが強行的な姿勢のままで戻ってきたなら、今頃、植物星は波動砲、あるいは次元兵器で消し飛んでるだろうね――

 

つまり、日本側は扶桑に文明で勝るので、『未開人に文明のルールを教え込む』つもりで高圧的に出たら、扶桑が軍事面で明らかに自分達より勝るため、急に媚びてきたのと同じ事が形を変えて起こったわけだ。これは未来世界でも『サレザーイスカンダルとアースの外交問題』として起こっている。

 

「未来世界でも、ガイア側にとってのイスカンダルと外交問題になったって言うから、宇宙全体でも、自分達が一番の状態が何年も続くと、高慢になりがちなんだってさ。ジオンが連邦にMS技術でかなり追い抜かれても、自分達の技術力は最高のはずだって信じてたし」

 

「だから、未来世界はうさぎみたいに臆病なくらいに軍備に力入れてんのね」

 

「戦乱期が落ち着けば、停滞はするけどね。ドラえもんの話だと、24世紀から25世紀の『銀河百年戦争を『第十八代宇宙戦艦YAMATO』が終わらせた後に、第二の文明停滞期があって、30世紀に第三戦乱期に入る…。地震並の頻度だよ、そうなると」

 

そこまで言い終えたのぞみAは、手元のコントロールレバーを動かし、機体の腕を動かしてみて、機体の反応速度を確認する。駆動音が響き、同時に人の肉体と同等以上の速度で機体の指が動く。

 

「うっし、上々の速さ」

 

「重機とかより動き良くない?」

 

「グリプス戦役からの機体は運動性重視だったから、反応速度がどんどん上がっていったんだそうな。昔ながらの重機の一部は、作業用に格下げされた旧式のMSに置き換えられてるんだって」

 

のぞみの言う通り、連合軍の工作部隊の工兵車両の一部はより高度な作業をこなせるモビルスーツに置き換えられている。予備部品も多く確保できるジムⅡとジム改がその任に就いている。ジオン軍のアイデアを地球連邦軍もMSの再利用策として採用したわけだ。第一線機がグリプス戦役以降の第二世代機になったため、第一世代の残存機は重機代わりに運用されていた。

 

「それが、あの工事車両みたいな色のジム?」

 

「そそ。工兵隊が喜んでるんだ。地雷でも壊れないから」

 

機体の左の掌(コックピットハッチが空いているのと、整備作業用の足場から飛び移っていた)を通路代わりにし、ハンガーの足場に移り、そこでおにぎりを食べる。

 

「作業はまだ終わんないの?」

 

「後は武装の管制ソフトの動作確認だけだよ。グリプス戦役の後に、教導隊の一部が反乱起こした事があるから、OSの細かい調整は現場に丸投げになったんだって」

 

「ああ、ニューディサイズの反乱?」

 

「そそ。ゲームのあれがそのまま起こったんで、地球連邦軍の教導隊は不満分子扱いされて、針の筵だったんだって。その後の戦争で率先して前線に行って、多くが戦死したそうな。だから、うちらみたいな部隊におんぶにだっこなんだよなー」

 

 

地球連邦軍も、ニューディサイズのような者達がまた生まれるのは阻止したいので、定期的にゼントラーディ討伐名目で、銀河外縁部に行かせたり、民間軍事会社のエース部隊をそのまま編入したりしている。結果、正規部隊の質が下がっていく悪循環に陥っている。扶桑も、ウィッチ・クーデターの事後処理の過程で、多くの若手参謀や中堅ウィッチが軍籍剥奪/抹消の憂き目に逢い、そこから立ち直しが進まない内に戦争に突入したため、戦線の空戦ウィッチ部隊は指で数えるほどしか実働状態ではなかった。他戦線から必死に引き抜いているが、現場から反対される事も多く、結局は64Fがどんどん肥大化するのみであった。1949年当時には、主要メンバーだけで『往時の統合戦闘航空団が二つ以上はできる』ほどの規模に達している。この陣容は日本側の後押しもあって実現したが、控えメンバーは新説された第二基地へ移され、従来からの基地は主要メンバー専用とされた。これは他戦線からの苦情への上層部の苦肉の策であり、第二基地は欺瞞を兼ねた施設でもあるのと、他戦線から送られてきたばかりの控えメンバーの控所的側面もあるので、未来装備は電探や連絡用設備など以外は殆ど置かれていない。

 

「うちも、上層部が新設した第二基地へ控えメンバーを移すでしょ?あれも、他のところからの苦情対策だそうな」

 

「分散配置にしたいとか、隊長言ってた気が?」

 

「それもあるけど、主要メンバーが固まったから、新参者は別管理にしたかったみたい。宮部や佐藤には、そっちの面倒を見させるって」

 

その二人は階級こそ大佐だが、軍歴は42年以降と『新参』。のぞみの『素体』になった錦は1940年頃からの軍歴を持っていたため、二人は士官学校の後輩にあたる。日本の軍隊では、外国以上に『古参兵が幅を利かす』風土があるため、宮部大佐や佐藤大佐(いずれも実戦経験ありの猛者)は士官学校の後輩ということで、のぞみに敬語で接している。

 

「あの子達、あんたより階級は上じゃなかった?」

 

「メンコの数で勝ってるし、あの子達は士官学校の後輩だもの。日本の軍隊はいつの時代も、『メンコの数』で偉さが半分決まるもんさ」

 

日本の軍隊は『精勤章(善行章)の線か、星の数で部内での立場が決まる』と言われるほど、年功序列の風潮が強い。名称は精勤章に統一されたが、64Fの主要メンバーは全員が『ウィッチとしての元々の限度一杯まで勤務していた』ため、精勤章の線は限度一杯に溜まっている。これは元々、ウィッチの二年は『通常兵士の五年分以上の価値があった』ためで、64Fの主要メンバーはダイ・アナザー・デイ時点で、精勤章の限度一杯までの着用権を持つ。その価値を『ロートルの証』と見誤った事も、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの立場的意味での没落を招いたのである。

 

「どこの軍隊も、そういうもん?」

 

「日本は特に強いほうさ。給料や危険手当の金額まで違うもの。それに、意見も上に通りやすくなる。大先輩が大将や元帥連中と酒を飲むだけで許可もらって来れるのが、わかりやすい例さ」

 

他部隊での隊長格経験者も多い64Fだが、主要メンバーはこの時期には固まったため、新設された分隊用の基地には、下位の序列の幹部格とその副官、准幹部格の面々を配置し、異動間もない『新参者』を鍛えつつ、側面援護要員に仕立て上げたい思惑がある。のび太は正規メンバーではないが、上級幹部に準じる待遇を受けており、子孫らに製作させた兵器を預けている。のぞみ達を含めたプリキュア勢も『主要メンバー』と扱われているため、引き続き、64F基幹基地の勤務である。武子は隊員の分散配置を前々から考えていたが、軍内部での隊全体の立場を安定させる必要から、自分からは上申できなかった。だが、上層部が新基地を築き、第二の拠点として整備させたことで構想が一気に具体化したわけだ。遠征中にその事が通達された。

 

「その気になれば、あんたも一応は兵隊たちにはでかい顔できるわけね」

 

「士官なんて、末端の兵隊たちにとっちゃ『雲の上の存在』だもの。ペーペーの少尉でも、下士官以下の連中の喧嘩を諌めるくらいの権威はあるさ」

 

忘れられがちだが、将校は現場の兵士達、下士官に対し、絶大な権威がある。通常のウィッチ部隊では、新入りへの教育係として、古参の下士官などがいるのだが、64Fの主要メンバーは全員が経験豊富な士官であるため、その役目は佐官級の将校の役目であった。のぞみも少佐であるので、大尉以下のメンバーのいざこざを諌める事が求められるわけだ。

 

「士官は楽だよ?下士官以下と違って、個室が与えられるし。下士官以下は雑魚寝が当たり前だからね?」

 

「昔、なんかのドラマだか、映画で見たアレね?」

 

「古い軍艦じゃ、士官でもハンモックさ。陸軍は前線じゃ、その場で寝ろなんて当たり前さ。粗末な作りでも、ちゃんとベットで寝れるだけ、軍隊生活じゃ幸せなほうさ」

 

64Fは遠征でも、ベットで寝れる。錦としての候補生~見習士官時代の記憶では、ハンモックはいいほう、最悪は地面で雑魚寝であったため、前線での任務中でも、ちゃんとした食事が食え、粗末ながらも、ベットで寝れる64Fは最高の環境といえる。整備作業用の足場でおにぎりを食べながら、のぞみAとりんAは軍隊生活というものを客観的に批評していた。

 

 

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