――扶桑軍は兵器更新を急かされる格好であったが、生産ラインの刷新を含むので、思うほどには迅速な更新はできていない。戦線全体の末端部隊には、一式中戦車以前の旧式戦車が未だに残る有様であった。新兵器は練度の高い部隊に優先配備されているためだ。空母部隊は新鋭艦の竣工が完了しなければ、まともな作戦行動は許されず、制海権維持は戦艦と潜水艦に依存している。ウィッチ世界では、巡洋艦と駆逐艦の価値は高くないからである。他国は日本連邦の激昂性を、この頃から恐れ始めた。日本連邦の逆鱗に触れると、大国であろうが、物理的に再起不能寸前に追いやられてしまうからだ。カールスラントなど、内乱でNATOがやむなく軍政を引くまでに追い詰められ、民族存亡の危機に立たされている。スオムスが『人種差別というものは、我が国には一切合切ない』と声明を慌てて発表し、智子へは、同国の最高勲章である『白バラ勲章』を授与していることを公にし始めたのも、日本連邦による制裁が恐れられたからだ。ブリタニアも国際問題の要因となったモントゴメリーの元帥昇進を白紙撤回し、補給関連部署の責任者に就任という人事で『左遷』するなど、露骨にすり寄ってきた。日本連邦を怒らすと、あらゆる手段で逆襲される事、リベリオン相手に血みどろの戦争を躊躇なく繰り広げている事、しかも、リベリオンを所々では師団単位で殲滅している様相である事は、各国の軍事関係者を震撼させた。ブリタニアは扶桑に新型戦車を買ってもらいたいのと、セールスの評判を確立させたいのもあり、扶桑に新型戦車を優先的に卸し、ライセンス生産も認めた。異例だが、日本連邦の軍事力が明らかに世界最高峰に飛躍していることを鑑みての『すり寄り』の一環であった――
――戦略爆撃機でリベリオンに頼れなくなった連合軍は戦略爆撃機を持てる国の戦略爆撃機に依存していた。だが、日本側が戦略爆撃そのものに嫌悪感を持つ事もあり、太平洋戦線の多くの場合、戦略爆撃機は『航空殲滅戦』に用いられていた――
――F-4の登場で、旧来の軽爆撃機、双発爆撃機、四発爆撃機などのレシプロ戦術爆撃機の多くが自然に淘汰されたが、パイロットの意識改革のほうが急務であった。自衛隊出向経験のある人材にばかり、新鋭機が回される現状に異を唱える者も多かったが、レシプロ機時代と違い、ジェット機は高価な機材であり、『使い捨てしていいものでない』という財政面の事情もあり、一般部隊では、戦前と大差ない思想がまかり通った。それを少しでも薄れさせたい日本は、軍用機の増産を容認せざるを得なかった。戦場では機材の消耗はつきものだからだ。その関係上、日本での扱いが明確でない人型兵器が重宝されだした。物量合戦で勝てないのは百も承知、質で圧倒する。日本系の軍隊は、この回答にいつも行きつく。そのため、一騎当千が保証された古参が重宝されるのは自然の流れであった。また、古参兵たちもそれを保つための特訓を日常とするため、スポーツでいう『一軍と二軍』的な差が定着しつつあった。
――太平洋戦争は、21世紀世界には『体の良い、兵器実験場』と見なされていた。そのため、両陣営に同時代の兵器が流れていくこととなった。日本連邦陣営には西側諸国系の装備が、リベリオンには、ロシア系装備も少なからず流れた。これは、ティターンズにロシア系の人員がいることも関係している。かつての西側諸国は兵器の実験を兼ねて、扶桑に新旧の兵器を供与。それは大戦型兵器が残るリベリオン軍へ絶大な効果を見せていた。怪異の出現頻度の低下で、空戦ウィッチの重要性が低下した時代、扶桑の生産能力の殆どは『必要な』近代兵器に割かれていた。陸戦ウィッチと違い、古参兵の多くが歩兵装備の域を出ない範囲での空戦を好む一方、ジェット戦闘機への技術革新で『12.7ミリ銃』が豆鉄砲扱いに落ち、『20ミリ砲』が最低限必要な火力となったことも価値の低下を助長している。第二世代理論式が古参兵の多くに受けなかったのは、ミサイルと重火器の組み合わせが『大仰すぎる』と捉えられたからだ。(史実で言う『ミサイルキャリア』的発達だったのも大きいが)だが、飛行機の発達はウィッチの平均的な技能の者では、『射撃機会が訪れない』ことも多く、その重大さが第二世代理論の普及を促し、後々の次世代理論の方向性を定めていく。そのモデルが未来式パワードスーツというのも、何かの因縁のようなものだと言える――
――21世紀。ウマ娘達は協会からの通達で、行動に事実上の一定範囲の制限が加えられてしまった。これに対し、ゴールドシップは『プリキュアの体を借りる事で、街の要請に応える』という案を提案。このアイデアはシンボリルドルフとトウカイテイオーの合議で採用され、なにかかしら似た点のあるウマ娘とプリキュアが入れ替わることになった――
「さっそく、仕事をしているようだね、ブライアン」
「……あんたも入れ替わったのか?ルドルフ」
「言い出しっぺは私だからな。私がやらないのは、公平ではないよ」
ルドルフは複数の共通項(生徒会長経験者、その時代の最強かつ主役、頭脳明晰など)があるキュアハートと入れ替わったようだが、ルドルフの戦績を反映してか、フォームはパルテノンモードになっている。
「よく、エアグルーヴが認めたな?」
「言い出しっぺは私であるし、提案者がやらなければ、生徒会長経験者としての沽券に関わるよ」
キュアドリームに続いて、休暇を取ったキュアハートの承諾を得たシンボリルドルフは彼女と入れ替わった。ルドルフの現役当時の高い戦績の反映か、デフォルトでパルテノンモードになっている。
「それに……エアグルーヴは、こういう事向けではないからね」
「あいつはお硬いからな。おふくろさんが苦笑いしてるよ」
「ゴールドシップ、君はダイナカールさんと?」
「SNS友達だよ。懐妊もそれで知らされた。エアグルーヴの奴は性格は親父さん似だとか?」
「あいつは何故、ああいう性格になった?」
「話せば長いからな、その辺。しかし、会長さん。あんたもノリいいな?」
「私には妹がいるんだ。妹に付き合って、プリキュアのようなアニメは見ていたからね」
「ふーん、マチカネアスカか?」
「な!?何故知っている!?」
「レースに出走経験のある馬の魂が転生するのなら、あんたの妹でレースに出たのは、『マチカネアスカ』だけだ。スイートルクーはいないようだから、そいつしかいない」
ルドルフの妹が『マチカネ一族へ養子に出された』マチカネアスカであることを当てたゴールドシップ。ルドルフ(キュアハートの体を借りている)も大いに狼狽える。自分の兄弟姉妹の事は、テイオーにも教えていないはずだからだ。
「それに、この世界では、あんたとブライアンは20年以上昔の馬で、歴史の一ページなんだ。ネット漁ればな、ガキでも、すぐに情報を得られるぜ」
「そうか。そう考えると、同時代に存在している我々の事を、この世界の人々が『オールスター』と評するのは……」
「そう、本当なら、絶対にありえないからさ」
ゴールドシップは真理を突いた。本来であれば、80年代中頃の三冠馬であるシンボリルドルフと、その10年後に名を馳せたナリタブライアンは出会う事はないし、エアグルーヴもシンボリルドルフとは、本来は縁もゆかりもない。だが、会長選挙の敗北後にルドルフに心酔し、ルドルフの生徒会活動を支えたという経歴は、驚きを以て迎えられている。エアグルーヴもオークスの勝ち馬であるが、90年代中頃の牝馬であるので、2000年代後半以降の世代ほどは高評価されていない。そのためか、シンボリルドルフの腹心であるのは、史実を考えると『ありえない組み合わせ』なのだ。」
「オグリやタマモクロスと同時代に、アタシやスズカが存在してるからな。レースで戦う事はなかったが」
タマモクロスやオグリキャップは、現在に第一線を張るウマ娘達が子供の頃に全盛期であった。史実では、両雄の現役時代とスペシャルウィークらの世代の全盛期は10年もの開きがあるが、ウマ娘世界では『3、4年』程度の開きである。そのため、テイエムオペラオーらの世代が第一線世代となってきた時代でも、学園に在籍しているのだ。
「こんな体験は、願ってもできるもんじゃないぜ。まぁ、カワカミプリンセスの奴が聞いたら、狂喜乱舞のあまりに、学園全体を廃墟にしかねねぇが」
『言えてるな(ね)』
二人もそこには同意した。カワカミプリンセスはウマ娘世界のプリキュア相当のアニメ『プリファイシリーズ』の熱烈なファン。体を鍛え続けたため、学園一のパワーに成長してしまった。本人は平凡な家庭に生まれたウマ娘らしいが、TVの影響で、お嬢様言葉を使うようになったらしい。ある意味、キュアフローラ/春野はるか相当のポジションである。(春野はるかもお嬢様校に通っていたが、実家は下町の和菓子屋。精神面でプリンセスプリキュアに選ばれたため、はるかは『お嬢様』というわけではない)キングヘイローの失踪以降は意気消沈状態で、学園のいくつかの建物に大穴を穿つほど取り乱しているため、今はマンハッタンカフェとハルウララがお目付け役をしている。
「しかし、私だけ何故、最強フォームがデフォルトなんだ?」
「あんたが『皇帝』だからじゃねぇのか?あんたを超えた馬はアーモンドアイまで、30年以上も現れてなかった。それを鑑みれば、当然だろうさ」
「おい、それじゃ、私の立場はどうなんだ?ルドルフの次の三冠馬だぞ」
「お前は晩年期がかわいそうだったからな。その違いか?」
ゴールドシップもそこはわからないようだ。ただし、二人の基礎能力の高さが反映されたか、『借り物』ながらも、『本人達』に遜色ない戦闘ポテンシャルを見せている。
「しかし、エアグルーヴは何をしている?」
「あいつなら、今頃は胃薬の瓶でも抱えて、部屋をウロウロしてんじゃね?会長が『入れ替わりたい』って言ったらよ、ものすごい勢いで止めようとしたからよ」
「あいつは意外に心配性だからな…。昔はルドルフの後継にならんとしていたのに、今じゃ、ちゃっかりと腹心に収まっているからな」
「ハハ、エアグルーヴも若気の至りだと言っているよ、それは。私の一期目が終わる頃だったし、エアグルーヴも、デビュー前の一介のウマ娘に過ぎなかったからね」
「しかし、あんたもこういう願望、あったんだな」
「アスカに付き合って、プリファイを見ていたし、上の姉がグッズとかを買ってくれたからね」
物珍しそうな顔のブライアン(外見はキュアドリーム)。ルドルフは『エリート』のイメージからか、俗事にはあまり興味がなさそうだったからだが、実は素質に惚れ込んだ自身の両親と祖母(祖母は史実通りであれば、スピードシンボリであろうか?)の帝王学偏重の教育を危惧した、ルドルフの長姉『シンボリフレンド』が積極的に街に連れ出していたのと、妹のマチカネアスカのお守りの関係で、ヒロインものを相応に見ていた。また、次姉のスイートコンコルドは(自身が大成できなかったこともあって)ルドルフに辛く当たっており、シンボリフレンドは妹達の関係に悩んでいた。(シンボリフレンド自身も気性難であったが、次妹のルドルフを溺愛していた)次妹の素質に気づいたフレンドは帝王学一辺倒の両親の姿勢を危惧し、先輩のトウショウボーイ、マルゼンスキーらからアドバイスを受け、次妹にアニメグッズなどの『世間の話題についていくためのもの』を買い与えていた。だが、父母は『フレンドやコンコルドが大成できなかったことで、シンボリ一族がヒシ一族(嫡流)と同じ運命を辿る』事を危惧するあまり、天才的な才覚があったルドルフに過剰なまでに、一族中興のための帝王学を仕込んだ。その結果が現在なのだ。
「あんたの一族は気性難が多いというが、あんたは例外か?」
「いや、私も家では、わがままを通したことも多いよ。一族の中では大人しめなだけだ」
「意外だな」
「私のお祖母様のことは知ってるだろう?」
「スピードシンボリさんのことか?」
「ああ。私の全盛期の頃のスタミナは、祖母譲りさ」
ルドルフはシンボリ一族の中でも、最も才能、運、気質に恵まれた。シリウスシンボリがコンプレックスを持つのは、自身は祖父の方針で海外遠征をしたが、入着が精一杯。しかも、同期の三冠候補にして、シンザンの正統後継者『ミホシンザン』の不在でダービーを勝てたと揶揄され、帰国後の晩年期はタマモクロス、オグリキャップの噛ませであったからである。とはいえ、シリウスがコンプレックスを抱く相手のルドルフといえど、『無敗の王者』ではない。ギャロップダイナ、カツラギエースの二人には、土をつけられているからだ。
「それに、キュアハートに頼んだのは、私の意思でもある。他の何人かの候補には、エアグルーヴが難色を示していたからな」
「何故だ?奴には関係ないだろう?」
「私の『七冠』を意識していたからだろう。彼女達に対しての非礼になるから、エアグルーヴを叱っておいたよ」
エアグルーヴは『ルドルフたっての希望』ということで入れ替わりは承諾したが、その相手を値踏みするような言動を見せ、ルドルフとゴルシに『無礼千万だ』と咎められ、二人から叱責されている。これはルドルフのウマ娘としての格を重視しての配慮ではあったが、プリキュアに対して無礼である。そこに、遅れて休暇を取得したキュアハートが来たので、ルドルフ自身に近い属性の彼女と入れ替わることになったのだ。
「七冠か。アーモンドアイが来たなら、そいつは九冠なんだがな」
苦笑するゴールドシップ。ルドルフを超えた成績の馬は、アーモンドアイまで出現しなかったからだ。とはいえ、アーモンドアイといえども、安田記念だけは鬼門であったため、厳密な意味での七冠の定義から多少は外れている。
「まぁ、気分転換にはなると思うぜ。あんたらは三冠経験者で、調子が悪いだけで、世間からブーブー言われかねない。プリキュアも似たようなもんだが、こいつらはヒロインだから、そういうのに、周りは寛容だ。世間ってのは勝手だよ」
「私達はそれが存在意義だからな。しかし、君ほどに変な方面で愛された競走馬はいなかろう?」
「アタシは愛嬌いいんだよ。ジャスタウェイとはウマもあったし。さて、行こうぜ」
ルドルフの勝負服には、近世の欧州系の軍隊の将校の軍服のような飾緒がついている。この意味をルドルフは知っているが、テイオーは『カイチョーみたいだから』という理由で勝負服に取り入れており、ほとんど験担ぎに近い。(そのせいで、新調された第二の勝負服はタンスの肥やしであるという)
「おい、食事はどうする」
「今日は商店街はまるごとで、近くの県の温泉地に慰安旅行、ショッピングモールは定休日だ。裏山の頂上に、キャンプ用のスペースがあるから、そこでゴザでも引いて、ミリメシだ。調理はアタシがやってやるよ。ホテルもしばらくは休みだそうだし」
ゴールドシップは背中に背負うリュックに、レーションを入れているようだ。また、テントには、Gフォース名義で調達した野外炊具が置かれているとも話す。自衛隊のレーションは、扶桑の太平洋戦争に日本が介入し、『民間からの食料品の徴発を緊急時以外は禁ずる』という通達がなされたことで混乱状態に陥った扶桑軍を落ち着かせるため、大量に扶桑軍に出回った。64Fにも大量に支給されたが、64Fではすでに『調理不要なひみつ道具である、畑のレストラン』、ないしは『グルメテーブルかけ』を使用していたため、余剰となり、少なからずが野比家で処理されていた。ゴールドシップが持ち出したのは、その備蓄品だ。
「コンビニはないのか?」
「無茶言うな。コンビニは昨日の地震の影響で休業中だ。昨日は揺れたかんな。ついたら作ってやるから、我慢しろ」
「…わかったよ」
三人はこうして裏山へ向かう。この前日、日本列島を地震が襲い、ススキヶ原でもけっこう揺れた。ブライアンはキュアドリームとしての戦闘で腹がすいたか、ぶーたれる。どちらが年上かわからなくなるが、意外に子供っぽい点が多いらしい。
「ああ、アマさん?アタシー。用事が済んだ?裏山へ来てくれ」
ヒシアマゾンへ電話をかけ、呼び寄せる。この日、ヒシアマゾンは競走馬としての名声から、都内のイベントに呼ばれており、ススキヶ原に戻る途中であるらしい。元の世界では、イベントで、ヒシアマゾンに魔法少女風の衣装を着せてから、親交ができたようだ。その時にタイマンをはられたが、ゴールドシップが勝ったらしい。
「で、今後はどうするつもりだ?ブライアン、会長」
「しばらくはプリキュア活動を楽しむさ。私も、その気になればだな……」
「あんたは、素を出しゃいいからな」
「ぶ、ブライアン……!?」
「あんたの上の姉貴が心配していたぞ。真ん中とうまくいってないようだな」
「コンコルド姉さんは気難しい方でな。すぐに私が生まれて、シンボリ一族の後継を想定した帝王学を仕込まれたことに嫉妬していたからな…。難儀な姉だよ」
ルドルフは三女である。長兄以外は全員がウマ娘であり、ルドルフの二番目の姉がスイートコンコルドである。あまり関係は良くないようで、長姉が度々、生徒会に様子を聞きに、電話してくるほど、次姉とはぎくしゃくした関係らしい。
「ウチのタケヒデのようなものか」
ブライアンには更に下の妹が数人いるが、比較的有望なビワタケヒデも凡庸なウマ娘であり、姉たちへコンプレックスがある。ルドルフの場合は『姉が妹に嫉妬する』ケースである上、気性難で知られるシンボリ一族である。
「ウチの一族はたいていが気性難だからな。シリウスも、幼少の頃は遊んだものだが……」
シリウスシンボリも最近は大人しめになったが、現役時代は騒動を起こすわ、海外ではぱっとせず、帰国後はオグリとタマモの噛ませになり下がるなど、全体的に運がいいとはいえないウマ娘であった。今では疎遠になり、周囲から水と油と例えられる関係となった。同期からは近寄りがたいとされたルドルフは、現役引退後には『同志』を大事にするようになり、直近の後輩であるオグリキャップ、タマモクロスとは親友と言っていい関係にある。
「シリウスは……ミホシンザンが怪我してた時に勝ったウマ娘だからな。ガキの頃、あいつを見たのは…オグリにちぎられる姿だな」
「言ってやるな、その時には能力の衰えが出てきていた上、あいつの代では出なかったからな、あれが」
「領域か」
「そうだ」
ルドルフは、ミホシンザンを含めた『シリウス世代』からは『領域に至るウマ娘』は出なかったと明確に述べた。同時に、その次の世代のウマ娘達からは続々と生じ、スペシャルウィークの代では、第一線級の誰もが至るモノになっている。その点を差して、シリウス世代は過渡期だと述べた。ルドルフは同期から睨まれているが、実のところ、王者であった故の驕りが理由だ。ルドルフ自身も、引退の原因はメジロマックイーンが史実で陥った怪我と同様のもの(現在は完治)であるが、強すぎた故か、ほとんど世間的な同情はされなかった。その反動で『アイドルウマ娘』(ウマドル)へ憧れており、それがオグリとタマモへの親近感の原動力であった。二人の引退後はかなりの自由を、自分の一存で与えている。そして……。
「あんたは世間に『愛されたかったのか』?」
「そう取ってくれて構わんよ、ブライアン」
肯定するルドルフ。王者である故の孤独、同期からの疎外、現役最盛期の頃の自らの驕りへの反省。それらが綯い交ぜになった複雑な気持ちがあるようだ。誰かに愛されたかったからこそ、テイオーを可愛がり、(前世での実子であるのも大きいが)世代の離れた後輩らへは寛容な生徒会長として振る舞っていたのだろう。
「さて、どうする?」
「コミュニティバスはまだ来ねぇし、近くの駐車場にヒーローたちのバイクを借りて停めてあるから、裏山まではそれで行くぞ」
ナリタブライアンとシンボリルドルフは成人が近い年齢なため、乗り物の運転免許証はすでに取得している。また、仮面ライダーたちからマシンを借り、乗りこなせるだけの身体能力もある。その事から、ゴルシは近くの駐車場に停めていた新サイクロン(二号用)、ハリケーン、ヘルダイバーの三台をオーバーホールから受け取り、トラックで駐車場に運び、トラックをヒーローユニオンへ返した後、マシンを使うことにしたのだ。
「さて……どの程度の……うぉ!?」
プリキュアの姿になっているナリタブライアンは、ヘルダイバーのエンジンスイッチを入れ、スロットルを回してみる。すると、一般に流通している、あらゆるモデルが玩具に思えるほどのトルクを発揮したため、驚く。
「なんてパワーだ!!レース用のものでも、ここまでは…!」
「そりゃそうだ。サイボーグの体になった連中用のバイクだ。普通のものとは桁が違う」
「おい、お前。そんなものを普通に……」
「基本は同じだ。それに、運転免許証は取得してる。会長はどうだ?」
「問題ない。借り物の体だから、あまり無茶はさせたくないがな」
ゴルシとルドルフは意外なことに、新サイクロンとハリケーンのトルクに驚くことなく、普通に動かす。
「クソ、驚いた私がアホのようじゃないか。」
「そう拗ねんなって。いいか、パワーは出すな、三速以上じゃ、すぐに時速300Km近くに到達しちまうぞ」
「何ぃ!?」
「メーターパネル見てみろ」
「時速600Kmだと!?」
ヘルダイバーは時速600Kmの速力。常人では制御不能なパワーを備え、加速度も歴代随一のマシーンである。メーターパネルに目をやると、時速600キロという表示に目を疑う。
「核融合炉を積んでる上、それを安定させて走らせて、モトクロス戦をこなせる機動性だってんで、そのくらいがいいそうだ」
「これより速いのがあるのか!?」
「単純なスピードなら、音速出せるのがあるが、機動力のいるモトクロス戦で、そこまでの速さはいらないそうだ。さ、裏山へいくぞ」
ゴルシは意外なことに、二輪免許を取得し、既にそれなりに日が長いようだ。元の世界から持ち込んだ『ウマ娘用のヘルメット』をかぶっている。
「しかし、私達はノーヘルでいいのか?」
疑問に思ったルドルフだが。
「プリキュアになってりゃ、ヘルメットはいらねぇさ。あ、交通ルールは守れよ?」
三人はそんな会話をしつつ、裏山へ向かう。ライダーマシンの野比家地下への一時預かり目的の配送が目的であったらしいが、ゴルシはものはついでということで、裏山までツーリングしてしまおうという事らしい。(キュアハートとキュアドリームのGフォースでの身分証はゴルシが持っている)そこも用意がいい側面であった。