ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第三百四十二話「入れかえロープ~ナリタブライアン編~ その6」

――カールスラントは結局、政治的都合でエディタ・ノイマンを失脚させられたことを引き金に、急激に衰退していった。頼みの軍事力の優位は日本連邦の未来兵器の導入で失われ、財政もほぼ破綻。陸海空軍の全ては張り子の虎と化していった。この衰退劇の一つの象徴がミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの行為であった。日本連邦も無傷で済まず、参謀級の軍人達の失脚、近衛師団の若手将校達の最前線への片道切符など、政治的都合で軍隊を機能不全に陥いらせてしまった。日本のマスメディアは高官たちや中堅層の社会的抹殺を煽りながら、士官学校卒の若手将校達に死の献身を強要する。日本連邦全体が一握りのエース部隊に依存するのは、マスメディアの無責任に原因があった。その煽りのせいで、殆どの通常部隊は張り子の虎と化している。軍はそれを批判したが、マスメディアは日本帝国陸海軍の犯した罪を引き合いにし、参謀、若手将校らに至るまでを社会的抹殺も辞さない勢いで批判。結果的に彼らを最前線に送らせた。その影響で、扶桑軍の中央からの統制がうまくいかなくなり、連合軍統合参謀本部が統制を代行する始末であった――

 

 

 

 

 

 

――連合軍は日本連邦と他数ヶ国の多国籍軍を指すように意味合いが変化した。カールスラントとガリアが軍事力の供出を取り止めた結果、数カ国のみで世界秩序を担い続けなくてはならぬからで、大国とその影響下の弱小国しか存在し得ないウィッチ世界の秩序に意義を唱えようと、日本の左派などはティターンズに金づるのように扱われている。ジオン残党は明確に敵と認識されたが、ティターンズは元・体制側であった点を利用し、21世紀世界で『金づる』を意外に得ている。また、ジオン残党との共通の敵である野比家の先祖であるのび太、その子であるノビスケの抹殺を過去の世界で図っているなど、抜かりの無い戦略を実行しているが、ある時は仮面ライダー、ある時は宇宙刑事、ある時はデューク東郷(ゴルゴ13)に阻止されている。そのことをゴルシから聞いたタイシンは、ノビスケを守ろうと、一念発起。キュアフェリーチェの承諾を得た上で、何週間かに一回は入れかえロープを使い、プリキュアとして戦うことで、街を守っていた。そのことを更に聞いたルドルフが自警団への参加を見送る代わりということで、自分たちにも適応させたわけだ――

 

 

 

 

 

 

――オグリキャップ、タマモクロスは歴史改変の効果で『史実よりG1勝利数が増えた』状態で現役時代を終えていた。また、史実より早い段階で二人の関係が良好になり、記録上は『オグリの現役後半期からは、二人はルームメイト』であった。二人が史実より活躍できたためか、『平成三強』の現役期間も延長されているなど、オグリキャップの願っていたことが実現していた。また、改変に伴って、平成三強とタマモクロスの足は引退後も往時に近い状態を保っていた事になり、治療で『全盛期の状態に戻った』事から、ドリームシリースで走れば、四位までの独占も夢ではないという状況であった。この改変の結果に裏で危機感を覚えたルドルフは、マラソンでの醜態の後は治療を終え、トレーニングを再開。その数週間後には『全盛期の時の最高の状態』までとはいかないが、かなり戻してきている――

 

「トウショウ元会長、会長は何故、現役時代の能力値に戻そうと?」

 

「ルドルフ自身、キングヘイロー君の一件、現役時代の振る舞いなどへのバッシングで気が滅入っていてな。奴に勝てた二人(引退後に学園も去っている)のためにも、奴はドリームシリーズを本気で走ることにしたのだ。最も、ルドルフとマルゼンの時代と違い、領域に達しただけでは勝てん時代が来たがね」

 

ルドルフの時代までは、領域に達したウマ娘は一握りであった。だが、オグリ以下の平成三強とタマモクロスの世代以降のG1級ウマ娘には必須の能力と化し、その優劣も大いに勝利に関わる。だが、精神力で肉体の限界を超える例もある。テイオーはそれを実践し、理論派であったビワハヤヒデに打撃を与え、間接的に引導を渡した。また、領域の更にその先に至っている『オルフェーヴル』、『ディープインパクト』ら新世代の者たちは『デビューすれば、他の世代より強いのは確実』と見られている。

 

「エアグルーヴ君」

 

「なんでしょうか?」

 

「これは、ルドルフにはまだ知らせていないことが…、オサイチジョージを知っているかね?」

 

「ええ。いつぞやの宝塚記念を勝った?」

 

「その彼女だが……亡くなっていたらしい」

 

「なんですって!?」

 

信じられない表情のエアグルーヴ。オサイチジョージとは、オグリキャップ世代の直近の後輩世代のウマ娘で、オグリキャップの引退レースに参戦していたことが有名であった。家庭の事情で、ひっそりと引退した後は消息不明となっていたが、引退後しばらくした後に『何らかの理由で亡くなっていた』らしい。

 

「死因も、その死の背景も不明だそうだ。数年前に死亡届が遺族から出されていたという噂だが…。我々でも、そこまでが精一杯だった」

 

「バカな…。今は21世紀ですよ?情報化社会の世の中で……そんな…」

 

愕然とするエアグルーヴ。オグリの現役時代末期の頃の宝塚記念を制したオサイチジョージが人知れずに死去していたことを知らされていた。仮にも、G1レースを制したウマ娘が福利厚生制度が整備された時代に、虚しい最期を遂げた。公になれば、協会はまたも激震に見舞われる。そのため、協会はしばらく公にしない方向に動いている。新体制が安定する十年後まで。なんとも政治的過ぎるが、G1制覇経験者がセーフティーネットから漏れたのは由々しき事態だからで、エアグルーヴは虚しさと胸糞悪さが同時にこみ上げてくるのを感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

――こちらはゴルシたち――

 

「ゴールドシップ、ジオンは親殺しのパラドックスを知っているのか?」

 

「わからんね。この時代を攻撃する事自体が、奴らの先祖を消すことに繋がりかねないはずだが、それもお構いなしだろう。ジオンって枠を残すのに、自分らが消えても構わないってのが恐ろしいぜ」

 

「でもさ、ゴルシ。自己意思でも、プリキュアと入れ替わって戦うってのは、建前と本音が矛盾するんじゃないのかい?」

 

「自衛隊を維持する『建前と本音』みたいな状況だよ。自衛隊も、90年代以降は憲法の縛り以外は一級の軍隊になった。入れかえロープで入れ替わってれば、戦ってるのはプリキュアで、『アタシら』じゃないことになる。屁理屈なのは百も承知だが、タイシンを納得させて、通達に違反しないための最終手段なんだ。学園祭でウマソルジャーVってネタをした事あるが、あれはネタだったから、大目に見られたところがある。あれをガチでやったら、協会は許さねぇだろ、アマさん」

 

「そりゃそうだけど、シラを切り通すのかい?」

 

「タイシンがやる気になってるんだ、無碍にもできないだろ?それに、そういう時に、アタシらはイベントに参加してたって証拠があればいい。こんな東京の端っこの小さい街の自治会に、映画級のコンピュータグラフィックを駆使したSFX動画は作れねえってのは分かるし、タイシンには悪いが、未来からドラグナー遊撃隊とかに来てもらうように頼んどいたが、ギガノス帝国の残党がよ、月で蜂起したんだと。あの人たちはロンド・ベルの指揮下にはあるけど、司令部が動かすことも多いからな。で、ヒーローユニオンは戦力の多くが『ロシアに現れた悪の組織の数々の残党』の鎮圧に駆り出されたり、遠征先の援軍に行ったり、日本政府の要請で『新領土』の国境警備に回されたからな。現地の警察を立て直す努力をしろって、アカレンジャーがボヤいてたぜ」

 

「新領土?」

 

「この世界の日本は、2010年代の学園都市とロシアの戦争で、ロシアの極東地域の統治権を棚からぼた餅みてぇに得てんだ。そこの地域の治安機構を学園都市が消し飛ばしちまったが、外地の直接統治に日本は乗り気じゃなかったから、現地の治安回復に扶桑の戦力を使ったり、ヒーローユニオンに丸投げなんだよ。極東ロシア全体の国境警備をヒーローユニオンに投げやがるんだぞ?呆れちまうぜ」

 

ゴルシの言うとおり、この世界の日本は2010年代の戦争で『極東ロシアの統治権を得ている』。学園都市が極東ロシアのロシアの治安組織を文字通りに蹴散らしたため、戦後の治安に空白ができた。日本政府はこれに大いに困ったが、国連も『停戦監視団』を少人数で派遣するだけの薄情ぶりだったため、ヒーローユニオンや扶桑の戦力と警察を駆り出す有様。これは『日本列島とその周辺を維持する』だけに留められてきた戦後の日本国には、『外地に人を置く』余裕は無いに等しいからだ。

 

「で、そのレコンキスタを叫んで、ロシアの政権を手に入れた馬鹿が22世紀に世界大戦を引き起こしたそうだ。一つの結果だが、とんでもない選択を選んだり、あくどい奴が合法的に政治の実権を握った国はだな、ろくな結果になんないんだよ」

 

古くはアドルフ・ヒトラー、ヨシフ・スターリン、ポル・ポト。22世紀終盤のギレン・ザビ。独裁者がその野望を顕にし、それを周りが止められない場合、最後に待つのは破滅である。何百年かかろうと。

 

「銀河英雄伝説の銀河帝国も、600年で英雄の立てる『次の王朝』に取って代わられたろ?世の中上手くしたもんだ」

 

ゴルシは第三者の視点での物言いになるように、言葉遣いに気を使っていた。ゴルシなりに思うところはあるが、表に出さないようにしている。

 

「お前さんの口から、そんな理知的な台詞が出るなんてね」

 

「アタシだって、真面目に考える時はあるさ。タイシンの無茶な要求さ、『何いってんだ、お前』って返したんだぞ。泣き顔で蹴られたけど」

 

ゴルシはごく偶にあるが、生徒会の変な空気に本気でツッコむなど、『意外にまとも』なところも持ち合わせている。タイシンが『ノビスケを守るには、どうすればいい?』と聞いてきた際には冗談だと思い、『『何いってんだ、お前』と返し、タイシンから蹴りをもらっている。大真面目だとわかった後は一晩考え、どうにかひねり出したのが『プリキュアと入れ替わる』という手段だった。普段は無愛想ですらあるタイシンが本気で懇願してきたからだ。それにルドルフが乗ったのだ。

 

「クリークも言ってたけど、タイシンは誰がの下心に自分が利用されるのを嫌ってるけど、本当は周りに愛されたい。そんな矛盾を抱えてんだよなー。だから、自分に似た境遇で、自分に本当に懐いた、あの子が可愛いんだろうね」

 

「あいつは、自分の姉貴達とも折り合いが良くないらしいからな。だから、自分を愛してくれる誰かを大事にする。口でつっけんどんな態度でも、な。ノビスケは子供だから、態度を取り繕う必要もない。さらに、自分のガキの頃と同じ『鍵っ子』だから、かもな」

 

「誰でも、そういった事はある。私は王者であった分、同期から疎外されてきた。だから、周囲に愛されようと必死だった。だが、立場上、突き放すしかないことも多くてな…。それを、事後に否定されるのは堪えるよ……」

 

ルドルフは在任中の頃の『取るしかなかった選択』を第三者のヒステリックな声で、事後に『現在進行形で否定されている』ためか、哀しげであった。オグリキャップを突き放すような言動を取るしかなかった事、テイオーの怪我を傍観していた事など。ルドルフは自分のしたことを『取り返しのつかなくなった後に、他人によって断罪される』のを目の当たりにしたショックが大きいのが窺える。

 

「私はまだ多少の取り返しは効くが、姉貴の引退は取り返しが効かん…。だから、姉貴に当たった。頭で分かっていても、な。だから、選んだ。『運命を超える』ことを、姉貴と妹たちのためにも。三冠の冠に『縛られる』のは柄じゃないが、妹たちが届かない、姉貴が取りこぼしたものを手に入れるため……走るだけだ」

 

ブライアンは、自分たちを翻弄した『運命』を超えるという道標を見出したようである。ルドルフが政治的理由も絡んでの『退任』で無気力気味に陥りかけているのとは対照的だが、ルドルフは『王座を手に入れ、頂点を極めた』故の虚無感、自分の栄光の『砂上の楼閣』ぶりへの衝撃に打ちのめされている節があった。ブライアンと違い、引退以外に明確な『挫折』をしておらず、レースの敗北も現役中は三度のみという『王者』であったため、役職から離れた途端に激増した『ゴシップ』に衝撃を受け、弱さを顕にするルドルフと対照的に『求道者』として、運命を超えることを選ぶ。その意思は瞳の中の『炎』として宿っている。

 

「ルドルフ。あんたは『強すぎた』からこそ、今の状況が受け入れられないんだろう?私はあんたのような花道を歩み続けられなかったが、自分の立場が砂上の楼閣だってことを知れた。三冠経験者としては言うべきじゃないと思うが、たとえ、後代の『三冠』と戦うことになっても……一人のウマ娘……いや、前世から課された『運命』を超える、超えてみせる…!」

 

ブライアンは前世からの鎖を断ち切り、運命を超えていくと宣言する。ルドルフと違い、明確な低迷期を『経験』し、周囲から掌返しを受けたからこそのハングリー精神を持ち、それに火が灯っての答え。ルドルフが精神的に立ち直るのに、しばらくかかる中、ブライアンは『第二の黄金世代』といえる新入生らの筆頭といえる『オルフェーヴル』、『ディープインパクト』らへの挑戦を見据えていく。三冠馬としての後輩であり、前世での成績は自分を超える、ないしは匹敵する若者たち。ルドルフと違って、未だに『現役』の座にあり、当代の三冠ウマ娘であるからこその誇りとプライドがあるからこその言葉。ルドルフはすっかり『腑抜けた』自分を情けなく思うのだった。

 

 

 

 

 

 

――ウィッチ世界での兵器開発は加速されたというが、ウィッチ装備研究が『兵器開発の急激な進展に追いつかなくなった』点では停滞期に入っていた。宮藤理論の限界が見え始め、空中での交戦速度の高速化で『射撃機会が大きく減った』ことで空戦ウィッチ用装備の開発難度が、装甲戦闘車両の高性能化で陸戦装備の開発難度がグンと上がった。1947年に現れた『第二世代理論』は救世主であった。だが、空戦部門では『武装の強化より、機動力を上げてくれよ!!物理装甲も重しに過ぎんよ!!』という拒否反応が大きく、49年までに使用する部隊は最前線の戦闘部隊、本土の教導部隊のみに限られている。かの山本五十六も、これには頭を悩ませた。山本は、先輩の米内光政亡き後の1949年には『軍の実力者』としての地位を確立させていたが、軍令面での才能は無いため、航空畑の参謀から陰口を叩かれていた。仕方がないが、山本は軍政家として生きるべき人で、史実で任ぜられた『連合艦隊司令長官』向けではないのだ。(これは同志であった井上成美にも言える)とはいえ、軍政家としてはまごうなく一流で、第二世代理論の研究に多額の予算を与え、実用化に漕ぎ着かせているという功績は偉大なものだ。日本人は軍政より軍令の功績を評価するため、山本五十六としては複雑であったが、史実では前線視察で暗殺されている。(なお、自由リベリオンのチェスター・ニミッツはそれを命令した側であるため、彼のほうが睨まれ、日本人の信頼を得るために、前線に出なくてはならなくなり、史実と真逆に苦労を強いられていた)日本人独特の『大将は前線で指揮を取れ』病が他国軍人にも苦労を強いた例である(これは地球連邦時代にも、軍事行政に影を落とす)。後方の司令部への信頼が薄い日本人の軍事行政への不信が自由リベリオンに流血を強いたとして、後年の再統一後のリベリオン合衆国に批判されることになる。最も、日本は第二次世界大戦の影響で後方勤務の士官(将校)と下士官を睨んでおり、黒江たちのような『前線で戦う将校、ないしは下士官』を過剰に礼賛している。その結果、今度は『参謀/幕僚が軽視される』という近代軍事組織にあるまじきこととなった。結局、『自衛官式の教育を施した新世代が頭角を現すまで、有能なごく少数の者で回す合議制にする』という曖昧な体制が構築される。陸士・陸大卒の既存エリートを中央から排除したい日本の意向だったが、逆に彼らが『投げやりになって、業務遂行を放棄する』事態に陥るのだ――

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦軍はこうした混乱もあり、兵站・教育に至るまでの多くの実際の業務を地球連邦軍に依存していた。扶桑の既存装備は史実での1941年の水準のままである分野も多く、輸送での必要量を満たせないからだ。扶桑の零式輸送機、ないしは一〇〇式輸送機はダイ・アナザー・デイ後に退役を余儀なくされ、ジェット輸送機に切り替えられたが、扶桑軍の飛行場整備が追いつかず、地球連邦軍がその業務を代行するようになっていた。ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケが人格の入れ代わり前に心配した『燃料消費量の増加による補給頻度の増加』も、ミデアやガルダがひっきりなしに飛来することで解消されており、熱核融合タービンの導入で通常のジェット燃料の必要量も減ったのも、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの『赤っ恥』が強調された理由である――

 

「この写真は?」

 

「ああ、四年前の欧州の時に、こっそり撮ってた奴らしい。あの人(ミーナ)の本来の人格が『生きてた』頃、上の指令で錯乱状態って証拠を補強するために隠し撮りしてたって。人格が変わったんで、保管期限が過ぎる明日に焼却処分する予定なんだと」

 

「そうか。お前たちもあくどいな」

 

「21世紀以降の技術なら、ボールペンやシャーペンにもカメラ仕込めるからな」

 

「ん?穴拭はどうした?」

 

「ああ、奴なら、大佐に誘われて、カジノだ」

 

「カジノぉ?珍しいな」

 

智子はこの頃になると、ルーデル同様に、ウマ娘『ナカヤマフェスタ』との記憶の共有が起こっており、以前と違い、ギャンブルに興じる機会も増えていた。言葉づかいも意図して変えられるようになっており、以前より諜報任務に回される事も増えた。そのため、基地に不在であった。

 

「任務の一環だよ。情報収集のためでもあるが、あいつはそこそこ美人だろ?」

 

「若い頃はプロパガンダに動員されてたからなぁ。だが、あいつにできるのか?」

 

「お前よりは機転は効くぞ」

 

「そうだが」

 

坂本はキュアビートに愚痴る。自分は『戦バカ』という認識があるからか、多少の自嘲も含んでいた。

 

「近頃は情報部も虐められているが…、我々は日本帝国ではないのだぞ?」

 

「向こうの政治屋には通じんよ。お前のような武人気取りの軍人は特に嫌われるんだ。公では、ビジネスライクに振る舞うようにしろ。ガキと旦那を食わせたければ、なおさらな」

 

64Fの隊員は、公の場では『軍務に邁進している姿勢を見せるな』と厳命されている。これは軍国主義という言葉を使い、扶桑軍をいたずらに締め上げ、手綱を握ろうとする政治家や官僚対策である。世俗事にも詳しくなければ、すぐに閑職行き。それが日本が扶桑に実行させた『人事異動』だが、扶桑の軍人は国際交流が史実より機会が多いのと、女子教育も史実より浸透しているため、史実より『国際見識の広い軍人』が多い。ここ10年はカールスラント(ドイツ)に傾倒していたことは事実だが、領土奪還のため、陸軍の近代化が必要であっただけ。親カールスラント派の多くが失脚し、親リベリオン・ブリタニア派に天下を取らせたところで、ブリタニアやリベリオンのような火力重視のドクトリンが取れるわけでもない。また、扶桑領シベリアの放棄をするにも、元住民の新たな居住地確保や高額な賠償金の支払いは必須。それらを一気に実行すれば、扶桑の財政は一瞬で破綻する。この事がネックになり、扶桑領シベリアの『譲渡』は交換条件で『太平洋地域での扶桑の行政権の取得』が約束される『1991年』まで棚上げされていく。扶桑はカールスラント、ガリア、オラーシャと疎遠になる一方、ブリタニア、自由リベリオンとの密月の関係を確定させる。

 

「お前、最近はプリキュアでいる事が増えたな」

 

「クラン・クランの姿だと、ゼントラーディだからな。遺伝子の関係で、マイクローン化すると幼児化してしまうし、黒川エレンの姿だと、年端もいかぬガキンチョでしかない。だからだ。プリキュアであれば、日本のお偉方にも舐められん。こう見えても、第一世代だぞ?」

 

プリキュアの戦闘力は基本的に、古い世代ほど、原初のプリキュアである初代に近しい。第一世代のプリキュアであれば、正面戦闘向けの者が多い。最も、第一世代でも、基礎力自体は高いとはいえないキュアブロッサムの例があり、第二世代以降の者でも、歴代随一の猛者が出ることもあるので、ピンキリと言える。

 

「昔取った杵柄…って奴か?」

 

「そうだ。お前もリバウから離れた後には、そうやって『うそぶいた』だろう?」

 

「否定はせんよ」

 

この頃には(階級がお互いに佐官であることもあって)、親交があるらしい坂本とキュアビート。坂本はフライトジャケット姿である。

 

「それ、向こうのお前自身から言われたろ?」

 

「海軍から離れたわけではないが、年がら年中、第二種軍装を着込むわけにもいかなくなったし、第三種軍装を普段着にするほど、陸に上がっているわけでもないからな」

 

坂本はA世界ではウィッチの力を維持したままで引退しているので、引退後も往時の容貌を保ったままだ。ただし、海軍籍のままで64Fに在籍中という身分なので、普段着をフライトジャケットに切り替えている。Bからは『リベリオン軍人でもないのに、何故、リベリオンのジャケットを着込む?』と聞かれたが、『扶桑皇国も同じようなものを採用したから』と返している。

 

「それに、別の世界だからな、お互いに」

 

「そこはな」

 

坂本Bは『扶桑撫子である以上、軍服はきちんと着用すべし』と考えている。独立空軍の生まれた世界なりの礼儀は理解しているが、別の自分が海軍に籍を残しているのに、リベリオン風のジャケットを着ていることには、精神的意味での抵抗があるようだと、Aの口から示唆される。Bは元の世界に戻れば、どのような形にしろ、『遅かれ早かれ、引退の時が訪れる』。故に、この世界にいる内に『次代を育てておきたい』と明言している。故に、海軍軍人の誇りである第二種軍装を着ない別の自分には複雑。線引きの難しさは『異世界間の同一人物』であるほど大きい。芳佳Bのように『自分の考えは異世界でも完全に同じである』と考え、騒動を起こす例、ルッキーニのように『秘密を持ってることが気に入らない』ということで、別世界の軍事機密を暴こうとした例もある。自分同士でも、住む世界が違えば、『同じ人生、同じ顔を持つ別の存在である』。そのことが大事だと、色々な騒動で学んだ坂本A。お茶を飲み干しつつ、『平行世界の自分たちと上手く付き合っていくには』?それを思案するのであった。

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