ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

449 / 787
前回の続きです。


第三百四十七話「入れかえロープ~ナリタブライアン編~ その9」

――長きに渡る統合戦争で、西洋文明圏の政治影響力は大きく減退し、日本文明の覇権が確定した。その一方で、アナハイム・エレクトロニクスが地球圏の経済圏を掌握するに至るなど、経済圏における統合のほうが円滑に進んだ。その一方で、一定範囲の有視界戦闘への回帰で、人的資源の消耗率が激しく増加。無人兵器の需要が一定程度は存在する。そのせめぎあいが続いている。遠征部隊が組織の本隊とも戦闘しているという報は、日本連邦の評議会でも取り上げられた――

 

 

 

――その頃の扶桑軍は液冷エンジンを捨て、空冷エンジンに主要な軍用機のエンジンを統一したため、既存の液冷エンジン機の修理に事欠く有様となったが、すぐにジェット機の時代に突入してしまったため、1949年の段階でも混乱が続いた。また、レシプロ機の現地改造を禁じたため、各戦線から猛抗議がジャンジャンかかるなど、統合参謀本部はその対応に忙殺されていた。結局、三式戦で原型を留める機体は航空博物館に飾られ、正式に退役。実戦に供された期間は配備開始から数年となった。その一方で、一定の防弾+素直な操縦性の五式戦はススキヶ原の自警団にも買い取られ、愛用されたので、飛燕の悲劇性が強調されることになった。忌み子のように扱われたからだが、きちんと整備された個体であれば、F6F程度であれば戦えたとされ、ダイ・アナザー・デイで撃破記録もあるが、弟の五式戦の影に隠れてしまった。それが飛燕の『悲劇』である――

 

 

 

 

 

 

――ブルボンらがやってきた次の日――

 

 

「ブルボンがああなるたぁ、予想外やったで」

 

「ライスが覚醒めるかもわからないって宣告されちゃねぇ…。命が助かっただけでも、儲けものってやつ。治療用ナノマシンで抑えなければ、確実に死んでたって」

 

「ゴルシ。おんどれの言う運命ってのは……?」

 

「ライスは本来、あそこで死ぬ。それがあいつの結末だったって、誰かに聞いた。昔な。タイシンの対処が早かったから、奴は助かった。だが……覚醒められるかは……誰にも分からない。未来世界の医学に賭けるしかねぇ」

 

真面目に語るゴルシ。ライスの凶報は予想していたとはいえ、意識不明状態という報は心を締め付けるものには変わりないからだ。

 

「……ハルウララには知らせたか?」

 

「……言えると思う?」

 

「……分かった」

 

ライスのもう一人の親友『ハルウララ』には知らせていないらしい一同。同室のキングヘイローの失踪も知らされていないなど、特殊な立ち位置のウマ娘であり、ルドルフからも丁重に扱われるなど、『史実で勝てたレースがない』者としては異例中の異例の扱いを受けている。全校を挙げて、ハルウララを泣かせないようにしているあたり、彼女が如何に愛されているかということの証明であった。

 

「ブライアン、その姿は何の冗談?」

 

「自警団の要望に応えるためだ。姉貴がいたら、吹き出すだろうさ」

 

キュアドリームの姿で勝負服を羽織り、枝を咥えているナリタブライアン。キュアドリーム本人と違い、闘争心むき出しの目をしている事などの要因で見分けは容易である。

 

「会長もなんで、入れ替わったのよ」

 

「ルドルフはな、ああ見えて、役目を演じることに嫌気が差しとるんや。エアグルーヴがむやみにあいつを信奉するもんやから、檜舞台を降りれないんや。楽にさせてあげるのが礼儀やと思うんや」

 

タマモクロスは現状、ルドルフと学年がさほど離れていない世代の生き残りである。故に、エアグルーヴの盲信を苦々しく思う一面がある。ルドルフの友を自認するからだろう。

 

「エアグルーヴの奴は、ルドルフの器に惚れたのさ、タマさん。奴は元々、ルドルフへの挑戦者だった。血統的には勝っている(エアグルーヴの一族は史実では、『華麗なる一族』と謳われるほどの繁栄を迎えている)が、ウマ娘個人としてはルドルフには及ばない。桜花賞の勝利が加わった程度は誤差だ。故に、七冠を達成したルドルフに憧れがあるんだろう」

 

ブライアンがフォローを入れる。

 

「本来は、G1ウマ娘になれただけでも、偉い名誉な事なんやけど、ハマノパレードやオサイチジョージ……。そいつらの結末を思うと。だから、ルドルフはゲッターに身を委ねる選択を取ったんやろな。前世の鎖を断ち切るために」

 

ブライアンの言うとおり、ルドルフは因果を超えるための道を歩むため、ゲッターにその身を委ね、ドリームシリーズへの出走を決めた。その一方で、一介のウマ娘として、シリウスシンボリを見限ったことを後悔しているという人間臭さも持つ。ブライアンは補佐という立場で見てきたため、ルドルフの苦悩を知っている。そして、シリウスシンボリが不良の番長のようになってしまった要因は『領域に達するほどの才能がなかったのに、ダービーウマ娘になった』ことの悲劇である。尚、オサイチジョージは死亡届が親類によって出されていたが、後にオグリキャップが捜索したところ、『心無い親類縁者と絶縁し、世捨て人になっていた』という形での生存が確認されたという。(表向きは死亡という形になったほうが『妹へ金を残せる』とはオサイチジョージの談。現役時代の蓄えを親類にだまし取られたという。)

 

「故に、シリウスと対立したんやけどな。あいつは名誉は得た。……そこで成長をやめよったけど」

 

シリウスシンボリはルドルフの親類縁者であるし、G1級の能力は確かにあったが、それ以上の伸びしろがなかった故に、能力が下り坂を迎えた頃には、偉大な後輩らへの『噛ませ犬』も同然に扱われた。故に、タマモクロスからも舐められ気味である。

 

「仕方がない。あの代はミホシンザンであっても、『領域』への覚醒に至らなかったんだ。シリウスの奴があんたらの噛ませなのは、どう考えても当然だ」

 

オグリの後の世代からは覚醒者が一気に増加していった『領域』という一種の固有スキル。故に『黄金世代』と言われる所以である。だが、増えすぎてありがたみが薄れているのも事実なので、『その更に先』の扉を開こうとする動きが出るのは当然の事なのだ。

 

「ルドルフは領域の更に上を目指そうとしてる。昨今はありがたみが薄れていると漏らしていたからな。それに、新入生達はいずれも『時代を担える』ほどの連中揃いだという話だ」

 

「ああ。三冠を二代は出せるほどの粒ぞろいだ。スペたちに勝るとも劣らん。少なくとも、在校生で正面から太刀打ちできるのは……スズカだけだろうよ」

 

ゴルシは前世の記憶を得たためか、スズカを高く評価していた。ディープインパクトも『スズカの兄貴には勝てねぇだろうよ』と言っているため、得意距離であれば、サイレンススズカが最速であるというのは揺るがない。

 

「スズカ…か。あいつがもし、クラシック戦線を戦っていたら…?」

 

「分からねぇよ。それは。だが、得意距離でなら、スズカに追いつく現役のウマ娘はいねーよ」

 

ブライアンの問いにも、そう明言する。スズカは稀代のウマ娘であるが故に、史実の因果が強く縛り、スペシャルウィークと『スピカのトレーナー』の尽力がなければ、落命していた。ゴルシはそれを知るが故に、そう答えた。

 

「……クソ、最速はスズカのものか……!」

 

「あいつより『成績がいいウマ娘』はいくらでも出てくるが、人気のある『悲運のウマ娘』はそうはいないだろうさ」

 

ブライアンは速度自体はスズカに及ばない自覚があるからか、悔しそうである。

 

「ゴールドシップとかいったな。お前は傍観者のつもりなのか?」

 

テンポイントが問う。

 

「いえ、アタシにはあるだけっすよ。前世の記憶が…ね。それに、この世界じゃ、アタシらの事は四足歩行の動物としてだけど、記録があるんすよ」

 

ゴルシはテンポイントの追求にそう回答し、ネット上のいくつかの記事を見せる。自分たちにあたる馬たちの。殆どが複雑な表情となるが、ブライアンだけは知っているので、何とも言えない表情であった。

 

「おっと、そろそろ、自警団との仕事だぞ、ブライアン」

 

「そうか。面倒だが、この体を借りている以上はやらなければな」

 

「アタシが保護者として、同伴しますわ。こいつは口下手だし」

 

「クソ、こればかりは反論できん」

 

ブライアンはキュアドリームとして、自警団との共同任務を行う。内々で『入れ替わり』は承知の上で。これが自警団とウマ娘達の密約であった。ゴルシはこの時期から生徒会の役員として頭角を現し始め、いぶし銀の活躍を見せ始める。史実を鑑みれば、さほどの不自然ではない。

 

「テンポイントさん、『オサイチジョージ』のことを言ったのは、『あてつけ』ですか?」

 

「深い意味はない。単純に知らせただけだ。むしろ、ルドルフより前に、彼女の耳に入れたくらいだ。後で、マスコミにしつこくツッコまれるより、先に知っておいたほうが柔軟に対応できるからな」

 

タイシンがその疑問をぶつけると、テンポイントはサラリと言った。エアグルーヴは副会長に在任を続ける以上、ルドルフとテイオーの預かり知らぬことも『処理』せねばならない。テンポイントは、トウショウボーイ時代の副会長がその方面の処理も引き受けていたことを見ているため、それを前提に話している。

 

「それが副会長の責務……そう解釈していいですか?」

 

「そうだ。テンメイもそうしていたぞ」

 

タイシンは痛烈に皮肉った。テンポイントもそれを承知の上で頷く。ある種の仕事の処理も、生徒会副会長の仕事の内。トウショウボーイ時代の関西の英雄であった『テンメイ』(かつての天皇賞ウマ娘『トウメイ』の子。トウショウボーイの現役後半期~卒業までの副会長である。マルゼンスキーの同期では、数少ない成功者である)がそうしていたように。テンポイントは『協会との軋轢が表ざたになっていた』時代の当事者であるので、生徒会の役職につくことは避けたことも示唆する。最も、テンメイも(私生活では)気が荒かったとはマルゼンスキーの談。こうして、ブライアンとゴルシが出ていったあと、一同がTVをつけてみると……。

 

 

 

 

 

――その日の日本近海のゲート付近――

 

「今日は何がくる……うおおっ、元・フランス艦だ!!見ろ、MAC構造だぞ!」

 

ゲートの警備についていた護衛艦が退避しつつ、防衛省に打電する。敵艦隊の中核は『鹵獲されたフランス戦艦』であると。

 

 

「MAC構造で艦橋くっついてんと、あちぃんだよなぁ」

 

「なに言ってるんです、主砲の射程に入る前にトンズラしましょう!」

 

ところどころでアメリカ製部品に置き換えられているが、MAC構造の艦橋などが出自を物語っている。接収時に船体は完成していた『アルザス級戦艦』である。リベリオン製の砲塔を添えつけた関係で、オーソドックスな三連装40cm砲を持つ『ありふれた戦艦』になったが、自衛隊にとっては重大な脅威であった。護衛艦はここ12年ほどの交戦規定で、戦艦との交戦を禁じられているからだ。定期的な襲撃に自衛隊が自分たちでの対応を禁じられたままなのは、現場の士気に影響が出ているが、戦艦との交戦で高額な装備が失われることでの『目先の損得勘定』を優先した背広組を恨んだ。そのため、護衛をF-2戦闘機でのミサイル攻撃で散らし、扶桑の艦隊に後事を託すのがここ数年のルーティンである。彼らは直ちに防衛省へ緊急電を打ち、防衛省が更に連合艦隊に出動を要請する。運悪く、足止め役の潜水艦がいないため、その役目はF-2戦闘機の役目となった。

 

「最後っ屁だ!敵射撃の着弾と同時にSSM発射!ブラストを煙幕代わりにズラかれ!」

 

護衛艦は退避するついでにミサイルを放ち、敵の艦艇に当たるように照準を合わせた。ミサイルは手短な目標である巡洋艦(ウースター級軽巡)に当たり、意外な戦果をもたらす。それが彼らの憂さ晴らしであった。

 

 

 

――知らせを受け、日本の各泊地から、近代化された連合艦隊艦艇が出港する。自衛隊の艦艇に混ざって停泊する連合艦隊の艦艇。水上打撃艦艇中心の編成であるが、戦艦甲斐(ウィッチ世界における四番艦)、戦艦三河(純然たる大和型としての最終艦)を中心に、超甲巡、改修したばかりの空母飛鷹(試験的にコア・ファイターを艦載機として搭載)、隼鷹を主力にしての陣形を組み、出港していった。この時期の連合艦隊としては標準的な空母機動部隊である。その中核である大和型は超・近代化で宇宙戦艦ヤマトに近い艦容になっていたが、大まかな構造物配置は変わっていない。向上した生存性は『ヤマト無敵伝説』を生んだ。特に、ウィッチ世界の標準を超える『46cm砲』は結果として、10年以上の間の戦術的優位を連合艦隊にもたらした。近頃は敵の艦艇の高性能化で、45口径のままでは限界なので、55口径砲に載せ替えて対応している。ウィッチ世界では、元々は51cmまでの主砲を載せ替える前提で船体が設計されていたためだ。実際の船体が反動に耐えられる限度を試験し、60口径砲の開発失敗での妥協的産物が55口径砲であるが、延命策としては成功し、大和型戦艦が連合海軍の力の象徴として、長らく君臨し続ける要因となった。――

 

 

 

 

――戦艦三河――

 

「提督、敵艦隊との接触は明日の昼ごろになります」

 

「うむ。その時こそが扶桑海軍の誉を見せる時だ。兵たちを今のうちに休ませておけ」

 

「ハッ」

 

艦隊の指揮は宇垣纏が取っていた。こういう艦隊の戦闘は基本的に、戦艦同士の対決が物を言うからということでの人選である。自衛隊には戦艦の指揮は荷が重いという事情もあった。日本側の戦史には『近代戦艦同士の砲撃戦』の事例は欧州戦線が主で、お互いの性能差が大きいソロモン海海戦の事例が太平洋でのほぼ唯一の事例であるからだ。日本海軍の大砲屋の提督の中では、比較的に堅実な人選でもある。

 

「敵の旗艦は何か?」

 

「元・ガリア艦だそうです」

 

「ほう。まだおったのか。鹵獲して、ガリアに返さんといかん。陸戦隊の編成もしておくように」

 

M動乱以来、連戦で鍛えられた連合艦隊は精強な艦隊に成長しているが、元・ガリア艦へは『できるだけ降伏させろ』という外交上の都合での規定があり、そこを承知の上で、敵が出してきたと愚痴る将校は多い。

 

「他は??」

 

「お馴染みの組み合わせです。巡洋艦については、デモインに更新された模様です」

 

「伊吹型のいいテスト相手になろう。空母化を撤回して、巡洋艦にした意義の証明となろう」

 

改最上型と言える、伊吹型重巡。本来は44年の夏の竣工を見込んだが、空母化が決まって中断された。ダイ・アナザー・デイで建艦計画が大型空母に一本化されて変更された後、ドックを開けるために、結局は巡洋艦として完成する紆余曲折を経たため、『妙高の代わりが欲しいだけ』、『仮想敵と比べて脆弱なフネ』など、散々な言われようである。だが、デモインは砲身命数と砲身冷却の都合で『想定通りの速射性能は出せない』実状があり、意外に脅威ではない。扶桑はアラスカ級対策で『31cm砲を持つ超甲巡洋艦を用意した』が、日本側からは『アイオワ級戦艦が護衛だったら?予算の無駄遣いだ』と罵倒された。しかし、アイオワ級戦艦は『怪異がいる戦場』では『脆い』と判定されたか、モンタナを基本にする重戦艦が取って代わったため、日本側は大恥をかいた。設計時の扶桑の思想としては『空母の護衛に戦艦がいるとは思えない』であった。史実ではそうではないので、あれこれ言われただけだが、ウィッチ世界では『戦艦と空母を同一の艦隊に組み込む軍事的思想』が発達していなかっただけである。そこが扶桑がウィッチ世界の『勝者』へ成長する要因である。なお、伊吹型は議会向けには『甲巡』という説明だが、武装が更に変更され、地球連邦式の15.5cm砲を積むこととなったので、厳密には乙巡であるが、ミサイル兵装の事もあり、書類上は甲巡扱いという『史実を逆手に取った防諜策』が取られた。

 

「この世界の者共にとっては、我々はローマ時代の剣闘士ですかね」

 

「半分はな。兵の寝床やドックを提供してくれる分、遥かに恵まれているがな。同位体らは日露戦争の感覚でアメリカ合衆国と戦い、無惨に敗れた。だが、我々には力がある。同位体の無念を晴らし、この世界での我々の再評価に繋げるのだよ」

 

宇垣は同位体の行動に対し、なにか思うところがあったらしく、軍略家としての自らの名誉回復を狙っている節もあった宇垣。自らが多くの世界でなし得なかった武勲を立てるという野心も覗かせたが、軍人としての向上心の範囲内である。副官と語らう彼は『黄金仮面』と周囲に渾名されたその容貌に久方ぶりの笑みを浮かべ、21世紀世界の駐留艦隊司令としての初仕事に臨む。

 

「提督、巡洋艦の連中からの要請です。巡洋艦は我らにやらせておくれと」

 

「彼らも張り切っとるな。戦艦は沈めるな。空母と巡洋艦はいいがね」

 

「駆逐艦はいかがなされます」

 

「友軍の航空攻撃で散り散りになっておるだろう。F-2の対艦ミサイルは駆逐艦の天敵だそうだからな」

 

駆逐艦は相手にされていないようだが、21世紀最新の空対艦ミサイルを相手に、第二次世界大戦型の駆逐艦が耐えられる道理はないので、すっかり三下扱いである。

 

「CICより報告。敵艦隊の空母はエセックス級2、インデペンデンス級4の模様」

 

「軽空母を今更か。だが、友軍に攻撃されるわけにもいかん。コア・ファイター隊は夜明けと共に発進を目指せ。M粒子で連携を断った後に奇襲せよ」

 

コア・ファイター隊に機会を与えるため、コア・ファイター隊に出動命令を出す宇垣。奮進タイプの戦闘機としては超小型であるため、第二次世界大戦型の中型空母でも、そこそこの数は搭載できる。

 

「アメリカ軍も付近にいるP-3Cで援護を実施した模様。駆逐艦群はかなりが大破したと」

 

「後は空母、巡洋艦、戦艦だな。友軍に謝意を伝えよ。明日には決着だな」

 

駆逐艦の損害は計算の内なのは、敵味方共通の事項。本格的戦闘艦艇の戦いこそメインディッシュ。宇垣はウズウズしているようである。

 

「ガンペリーにM粒子弾頭装備で先行させろ、護衛のコア・ファイター乗せて出せ」

 

「ハッ」

 

飛鷹と隼鷹に随伴する補給艦は、ガンペリーが搭載されている。同機はこうした任務にも駆り出されるわけだが、M粒子を散布する事は敵味方関係なく、レーダーなどの精度が低下することでもあるが、戦艦同士の戦闘を起こすための舞台装置でもある。M粒子はM動乱以降、扶桑軍を成長させてきた要素でもあり、軍事的革命をウィッチ世界で起こした存在でもある。未来世界に協力する目的の一つは『M粒子下での戦闘』を覚えるためである。コア・ファイターは1949年には、扶桑空母機動部隊の再建の一翼を担っているが、サイズ上の限界もあるので、旧型空母の延命処置の一環というのが艦政本部の認識である。とはいえ、意外に運用上の使い勝手がいい上に、扶桑人好みの『小回りの効く』飛行特性であったため、開発元の地球連邦も驚くほどに愛されたという。(扶桑所属のコア・ファイターは部隊によって塗装が異なるようになり、再教育の際に自衛隊の影響が強い部隊は自衛隊式の洋上迷彩を用いるが、伝統のある部隊は俗に言う日本海軍色をそのまま描いている)アメリカ合衆国の影響でシャークマウスなどの文化も入り、ノーズアートに寛容な風潮も出来上がりつつつあるのもあり、改革の象徴と見なされている。パイロットによっては、空母艦娘との縁で、矢や式神のノーズアートを描かせた者もいたという。練習空母という形で修繕工事が済んだ龍驤などでは紙幣(式神の依代)のマークが定着している。なお、艦娘飛鷹と隼鷹は何故か、声がタイキシャトルに似ていたため、64Fの隊員にネタにされ始めている。タイキシャトル本人も『OH!ジャパニーズシップガールとミーが?』と楽しんでいるという。

 

 

 

 

――野比家――

 

「本日、ゲートからリベリオン本国軍の艦隊が出現。我が日本連邦軍は直ちに迎撃準備に入り……」

 

連合艦隊の出動が報じられる。他人事のようだが、『戦意を煽らないように』という要請での報道姿勢である。ジオン残党のことが『テロリスト』で片付けられた理由でもある。

 

「この世界は大変なようだな」

 

「この街はその中でも格別ですよ、先輩」

 

「お前も、あの小僧らと同じ?」

 

「いえ、私は別口で、午後からのイベントへの参加を頼まれてますので。」

 

ルドルフはキュアハートとして、街のイベントに参加を頼まれているという。

 

「協会からの通達をどうにかするため、か?」

 

「ええ。ゴールドシップが考えたことです。色々と示し合わす必要はありますが」

 

「お前、ガキの頃はそういうアニメを見ていたんだな?」

 

「……シリウスシンボリに付き合って」

 

「お前の従妹か」

 

「ええ」

 

ルドルフとシリウスも、魔法少女ものに憧れた時期はあるようだ。とはいえ、プリキュア相当の『プリファイ』のアニメはカワカミプリンセスの子供時代に初代が放映されているため、世代は多少はずれている。なお、のぞみに『野乃はなへのわだかまり』を捨てるよう、最後の後押しをしたのはルドルフである。完全な第三者であるが故に、中立的に物事を判断したのだ。

 

「私は……ブライアンが借りている体の持ち主である彼女の過去のこだわりといおうか、わだかまりを捨てるように説得していたのです。野比氏や彼女の戦友達では、どうしてもバイアスがかかりますから」

 

ルドルフはブライアンの借りている体の持ち主(のぞみ)を諭したと、テンポイントに報告した。前世でのことは前世のこと。これから助ける、あるいは出会うキュアエールはその彼女とは別人である公算が強い。ルドルフは普段は四字熟語を織り交ぜて話すが、のぞみは四字熟語に疎い(教諭経験はあるが、国語教諭ではないらしい)のを聞いていたので、噛み砕いて話し、諭したという。思想で対立したのではなく、スタンスの違いで対立したはずが、それが世代間闘争にまで発展し、シャーリーはその記憶があるせいか、『まずは一発殴らせろ』と喧嘩腰である。それも、のぞみが引くに引けない理由でもあった。ルドルフは両者の話を聞いた上で、キュアメロディ(シャーリー)を『君は話を聞くことから始めるんだ』と諌め、のぞみには『この先に会ったら、理由を言った上で謝ること』と前置きした上で、諭した。引くに引けなくなることで関係が拗れた経験が身内(次姉と従妹)であるからだ。

 

「相談役をしたと?」

 

「関係が拗れるのは、恥ずかしながら、身内で経験があるので、アドバイスできるかと」

 

「スイートとまだ揉めているのか?」

 

「姉は私より意固地ですからね」

 

スイートコンコルド(次姉)と関係が拗れているままなことを認めるルドルフ。シンボリ一族は代々気性難であると知られているが、スイートコンコルドは次女であること、シンボリの名を持たないというコンプレックスをこじらせてしまい、妹との和解は成っていない。三女ながら、次期当主間違いなしのルドルフはシンボリ一族の最高傑作であるが、長女と三女の間に挟まれた次女がひねくれてしまうという『よくあるパターン』。ましてや、祖母の代から名を馳せていたシンボリ一族となれば。

 

「俺が〆てやろう。奴は俺の尻を追っかけていたからな」

 

テンポイントは冗談交じりに、スイートコンコルドをシメると口にする。兄弟姉妹間の揉め事で家が崩壊するというのは、『ごくありふれた光景』だが、妹が稀代の天才であるスイートコンコルドは通常とは違うパターンである。

 

「妹に見せられませんよ。姉との揉め事は」

 

「そういえば、ちっこいのがいたな?」

 

「両親の判断で、マチカネ一族に養子に出されましたけど」

 

ルドルフには、マチカネ一族に養子に出された『マチカネアスカ』という妹がいる。ルドルフが面倒見のいい性格に育った理由でもある。

 

「そうか」

 

「妹が見たら、喜ぶでしょうね、これ(プリキュアの姿)は。好きですから、あの子は」

 

苦笑交じりのルドルフ。キュアハートの姿ながら、皇帝としての威厳を感じさせる一方で、姉妹との揉め事を抱えてしまった少女としての素顔を見せる。揉め事を解決したがるのは、自分がそうであるからだ。意外な人間臭さに、テンポイントも関心するのだった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。