――ナリタブライアンはキュアドリームとしての仕事を引き受けた。元々、ブライアンは武道の心得が多少なりともあったため、ドリームの体の潜在能力を引き出せた。また、本人より闘争心が強いためか、戦闘態勢に入った際の気のオーラが天に立ち上るかのような形で可視化された――
「おお、すげえ。ここまでのもんだとはな」
「関心している場合か。こいつらをどうにかせんといかんのだろう?『こいつ』の力は知らされているが、それを上手く扱えるか」
とは言うものの、現役前半期の頃のドリーム本人よりいい動きを見せる。これはドリームの基礎能力の向上も作用しているが、レースで鍛えたブライアンの勝負カンも助けになっていた。元々、多くの世界でいうところの『流鏑馬』にあたるものの経験もあったため、ドリーム本人より射撃への対応力が上であるという副次効果があったのと…。
「ふむ。これが学園都市の大型パワードスーツのパワーか。……温いな」
歴代三冠ウマ娘の中では、パワータイプに属するブライアン。ドリームの肉体の最大パワーを引き出し、大型パワードスーツのパンチを片腕で受けきる。
「フンッ!!」
パワードスーツの右腕を掴み、そのまま空高く放り投げると。
「この技で大人しくしていろ。『サンダーブレーク』!!」
ブライアンはドリームの持つ技の内、任務の性質上、威力の調整の効く『サンダーブレーク』を選び、放った。とはいえ、300万Vの電圧と秒間30万Aのエネルギーを誇るため、並の機動兵器であれば、食らえば最後、電気系統が死ぬ。そのため、パワードスーツは搭乗者ごとダメージを与えられ、沈黙。地面に墜落し、機能を停止する。学園都市製のパワードスーツは二重の防御構造を誇っていたため、着用者の命に別状はないだろう。
「なるほど。存在単位で融合したわけだから、中身が入れ替わっても使えるのは事実のようだな」
「次がくんぞ~」
「忙しないな。……ダブルトマホォォク!」
トマホークが実体化し、二刀流で構える。形状はゲッターGやアークのもので、両刃のものだ。
「でぇい!!」
別の大型パワードスーツのアームをダブルトマホークでぶった切る。ゲッターの力を扱えるようになれば、誰でも召喚できる武器の一つがこれだ。
「そこで寝ていろ」
武器をゲッターマシンガンに持ち替え、蜂の巣にする。行動不能にするため、脚部と腕部だけを狙い撃つ。未来世界の機動兵器のように『背部にスラスターを持つ』わけではないため、それだけで行動不能になる。
「おい、ゴルシ。こいつらは『着ぶくれ』か?
「本来はな。だが、サンダーブレークやゲッター弾頭に耐えられる21世紀の兵器はねぇさ。連中の脱出機構も機能してねぇだろ」
「確かに」
「まー、こいつらは学園都市も保有数は少ないらしいから、このサイズはこれで打ち止めだろうよ」
「やれやれ。学園都市というのは、どういう街なんだ?」
「アタシも、まだ調べてるところさ。殆どの記録は破棄されてたようだからな。ドローンが来たぞ。弾は足りるな?」
「ああいう手合の奴の動きだが、規則性があるからな。ランダム運動ったって、しょっちゅう違う動きをするわけじゃない。読み方ってのがある」
ブライアンは流鏑馬の心得もあったのと、射的が得意という特技を持っていた。また、ウマ娘であるので、扱いの難しい『ゲッターマシンガン』の反動を抑えつつ、扱い方を会得していく。三冠を能力頼りで得たわけではないと言わんばかりに、マシンガンでドローンを返り討ちにしていく。
「さて、親父が子供の頃に見たという特撮ヒーローじゃないが、こいつらを改心させればいいんだろう?」
「そりゃそーだが」
「前に、バンブーメモリーから借りたアニメにあった技だが……この姿でなら、試せそうだ」
バンブーメモリーはオグリ世代なので、本当はブライアンの先輩に当たるが、色々なことがあり、現在では、同輩のようにブライアンは接している。ゴルシはブライアンの先輩後輩関係に無頓着な一面に多少の呆れを見せつつも、バンブーメモリーがそれを尊重している事は知っているので、苦笑交じりの表情を見せて済ます。
「フッ!!」
ブライアン(姿はキュアドリーム)は天に掲げた右手の掌に虹色に煌めく気弾を創り出し、それを握り潰し、拡散した光を相手に投げつける。浄化の効果があるこの技の名は『ソウルパニッシャー』。完全な邪悪を消滅させる一方で、多少でも良心があれば、邪心の部分を消し去るだけに留める。無駄な破壊を齎さず、敵を倒すのみが戦闘でもない。その精神の発露と言えた。
「ソウルパニッシャー……マジでやるなんてな」
「浄化の効果という事は、怒ってる相手に撃てば鎮静の効果もあるはずだ。ぶっつけ本番だったが……どうやら、やれたようだ。ぼぅっとしてる連中を自警団に引き渡すぞ、手伝え」
「あいあい」
破壊したものは大型パワードスーツとドローンのみ。必要最小限に被害も抑える。プリキュアは戦闘向けの者でも、多少なりとも浄化能力を持つため、気弾に浄化能力を持たせるのは比較的に容易である。パワードスーツの回収は自警団が重機で行うため、初仕事を無難に終えたブライアンはゴルシを引き連れ、野比家に戻った。
「よくやった、ブライアン」
「まぁ、この姿だから、ある程度は遠慮なくやれた。元の姿では、専守防衛でないといかんからな」
「あとは、金鯱賞で君が復活の狼煙を上げるだけだな」
「大阪杯の前哨戦には、ちょうど良かろう?こいつに借りを作っておくのも悪くはないがな。『昔の記憶』があるというのは……なんとも言えない気分だ」
ブライアンは夭折した前世の記憶が蘇ったからか、現役を続ける意義を見出しつつあるようだ。
「だが……後輩に戦いがいがある連中が揃った以上、現役を退くわけにはいかん。もう一旗揚げてやるさ。あんたの分もな」
ブライアンやテイオー世代と、ウォッカ、ダイワスカーレット、ゴルシらの世代には一定の開きがある。ゴルシは『年齢不詳』なところがあるが、一応、レースの上ではウオッカ、ダイワスカーレットと同期か、それに近い年代のウマ娘である。史実にそこは近い組み合わせであると言える。その更に後輩がキタサンブラックとサトノダイヤモンドの世代だ。
「私も、正式にドリームシリーズに出走を決めたよ。先輩方に鍛えられることになった。現役時代のトレーナー君は学園を去っているから、先輩方に協力を仰いだ」
ルドルフは現役を退いて久しく、マラソンで醜態を晒したため、TTGの三人に鍛え直される事になった。ウマ娘は肉体のピークの持続時間に個人差があり、史実の活躍馬でも、史実で何かかしらのアクシデントがあり、活躍できなくなった経歴があった場合、何かかしらの出来事をきっかけに『能力が大きく減退してしまう』。サクラチヨノオーがそうであったように。なお、タマモクロスは施術に伴う強化と歴史の改変の結果、引退時期が大きく先送りされているため、このことを回避したことになる。
「サクラチヨノオーのように、限界を超えて走ったために、怪我をきっかけに『能力減退』が急激に起こって、結局は引退を選んだ奴もいるからな。」
「仕方がない。歴史改変はあまりするべきではないが、ヤエノムテキやサクラチヨノオーのように、世代の代表的なウマ娘をライバル視していたはずが、後からやってきた天才たちがライバルの座に収まった…。そんな例はいくらでもあるんだ。多少は変えたいことくらい考えてしまうさ」
「サクラチヨノオーの先輩だったという、『サクラスターオー』のことを気にしているのか?」
「ああ。『サクラ軍団』が誇ったエース格だが……ファンの募金で手術もしたが、芳しくなかった。それで引退を選んだ。バクシンオーの活躍が清涼剤だが……ローレルの後はどうなるか」
ウマ娘世界のサクラ軍団は『とある競争スクールに属していたウマ娘達』を指す。しかしながら、サクラスターオー、サクラチヨノオーの引退後、サクラバクシンオーとサクラローレルがレースで台頭したが、『二人の後継ぎ』がいないという問題が発生している。(大成できなかった者が、『バクシンオーが活躍し、ローレルが台頭する』までの間に多く発生した)
「ゴルシの話だと、GⅡ、GⅢの勝利はあるそうだが、GⅠはサクラキャンドルが最後らしいんだ。サクラチヨノオーのように、『マルゼンさんの無念を晴らすこと』が存在意義だった奴もいるからな…」
「スターオーの運命を変えてあげたいが、それは本人が望むまい。タマモが歴史改変をしたのは、オグリへの贖罪のため。これに尽きる。本人が望む、望まないにしろ、歴史改変は重大事だからな」
「テイオーも、本来はあの有馬が最後の輝きだったが……それを回避した。神様ってヤツはどこまで私達を翻弄する?」
「ライスシャワーの快復については、未来世界の叡智の力を信じるしかないのが半分だ。タイシンが治癒用ナノマシンを急いで注入し、彼女のトレーナーくんが適切な指示を出したおかげで、最悪の事態は避けられた。だが、肝心要の足が戻るかは……ライスシャワーの意思次第だ。どんな治療が施されようが、本人の意思が治り具合に関係するからね」
ルドルフはライスシャワーの再起を祈りつつも、本人の意思次第だとした。自分がそうであったように。(ただし、ルドルフは繋靭帯炎を発症し、致命傷とされたため、やむなく引退したが)
「彼(のび太)は歴史改変を?」
「彼の幸福そのものが、歴史改変の産物だというからね。それに関しては寛容だよ。私も……繋靭帯炎を回避し、穏やかに引退したかったのが本音だよ」
ルドルフは繋靭帯炎を発症し、引退した。引退後に完治したが、再発の危険が大きいため、レースへの出走を避け、偶に走る際も往時の全力は出していない。そのせいか、マラソンでペース配分を読み違えるミスを犯した。ルドルフは自身の後悔の一つを回避することを考えているらしい。タイシンがライスの死を回避するために手を打ったことは称賛すべきことだが、ライスシャワーが瀕死の重傷を負う、オサイチジョージの消息不明(表向きは死亡だが、実は世捨て人のように生存)などの出来事は不可抗力的に発生するが、それ以前に歴史改変がなされた場合、最悪の事態は回避される。のび太も最悪の世界線では、大学を数年は浪人するのに対し、ドラえもんによる改変後は『ストレートで補欠合格』にまで改善しているし、のび太も父のいた会社に縁故入社するという経緯が、環境省の官僚になるという結果となっている事から、回避できる出来事は回避するが、本来の世界線との帳尻合わせはどこかで起きるというのが鉄則らしい。
「しかし、帳尻合わせはどこかで起きるぞ、ルドルフ」
「おそらく、ライスやスズカの前世を鑑みるに、『たとえ、死亡に至らなくとも、選手として再起不能寸前の大怪我を負う』事が帳尻合わせなのだろう。ブライアン、君が最初の股関節炎の発症で精彩を欠くようになったように。我々はサンデーサイレンスやキングカメハメハ旋風の前には、一時代の徒花だったが、それなりの意地というものはある」
ルドルフとブライアンは種牡馬としては、サンデーサイレンスやトニービンの前に圧され、直系の子孫はほとんどいなくなっている。ルドルフはテイオー以外の子がほとんど走らず、ブライアンは自身の夭折という理由で、サンデーサイレンスの前に、種牡馬として膝を屈する結果となった。二人はその記憶を得ているため、その子にあたる馬のウマ娘たちと戦う意義を見出した。ルドルフを完全に超える者は、かのアーモンドアイまで現れないが、必ずしも同じ土俵では語れない。分野が違うからだ。
「今年の金鯱賞を楽しみにしていろ。久々にぶっちぎってやるさ」
ブライアンには、久々に勝利の美酒を味わう確信があった。どこか嬉しそうなのは、姉がターフを去ったとしても、それに代わるライバルが現れてくれるという事を実感したからだった。
――一方、ブライアンと入れ替わったのぞみは、前世から抱えている『わだかまり』を捨てるように諭され、今後にキュアエールと再会した場合の接し方を考えていた。キュアフローラの話によれば、キュアブラックらと共に戦い、彼女は敵に敗れたという。その相手が誰であるかは詳しくは不明だが、のび太の遠戚である『のび太郎』のなれの果てという説がのび太本人によって提唱されている。ザカールを強奪したのは彼であり、野比家(正確には片岡家の血のほうが濃いが)の係累である彼であれば、ザカールの認証を上書きすることは可能である。
「のび太くんはレイズナーマークⅡでザカールと戦うつもりだ。だけど、元々は双子のようにそっくりだったからって、そこまで憎めるものなのかな」
「レジーナと亜久里ちゃんのようなものかもね、のび太くんとその人は。本来は双子として生まれるはずが、何かかしらの手違いか、遺伝子のいたずらか、それぞれが別々の家に生まれた。のび太くんと似てることで、色々な不利益を被ったら?それが悪に堕ちるきっかけかも」
「そいつが、なぎささんとはなちゃんを拷問してるのなら……倒すしかない」
「問題は、そいつの裏に何がいるか」
「うん…」
のぞみとマナの二人は、ウマ娘としてのステージ裏で、その事を話しあった。のび太の存在を疎んじた、彼の親類の誰かが敵なのは想定内だが、その背後にいる敵を考え、必ずしも楽観できないことを悟っていた。問題はその背後に何がいるか。のび太の存在そのものがのび太郎の人生にどんな悪影響があったのか?それが気になるのだった。
――連合艦隊は事前の味方の援護で護衛艦の少なからずが落伍した状態の敵艦隊と砲火を交えた。敵艦隊の戦艦はアルザス級だが、砲がリベリオン式になっているため、火力はむしろ平凡になったと言わざるを得ない。超甲巡には優位だが、大和型には不利である。ミサイルで対空装備と副砲の半数を潰された状態では、速射砲となった大和型の猛威に対抗は叶わなかった。大和型は細かい装備品は失うが、バイタルパートは全く貫通されず、未来世界の装備で命中率が遥かに向上した55口径46cm砲弾の洗礼を浴び、一隻が後部砲塔を早々に旋回不能にされる有様であった――
「ふむ。脆いな」
「時代相応の鋼材では、こんなものでしょうな。241.3mm程度の側面装甲では、55口径46cm砲は防げませんから」
補給の観点から、リベリオン製の砲を据えたアルザス級だが、大和型の前では砲火力を却って喪失する要因でしかなかった。敵艦隊は必死に反撃をするが、バイタルパートの装甲板はびくともしない。
「超合金ニューZとガンダリウム合金、硬化テクタイト板の複合装甲はさすがだな。敵の砲弾を余裕で弾き飛ばす」
「21世紀世界の要求に応えるため、相当に気を使いましたからな。ガワは元とあまり変わりませんが、中身は宇宙戦艦ですからね。金をかけた甲斐があるというものです」
「敵二番艦の船体前部に命中弾!副砲をぶっ飛ばしました!」
「よし。これ以上はあまり痛めつけるな。ガリアに返す時に文句が出る」
「では、試験装備の艦橋砲でも使いますか?」
「うむ。射線に敵旗艦を入れろ。あれならば、怪異対策装甲でも、一発で撃ち抜ける」
大和型は第三次改装で波動エンジンを積んだ。将来的に宇宙戦艦として運用するためのもので、武装も23世紀の規格品の改良型を試験代わりに積んでいる。艦橋砲もその一つ。三河は艦橋デザインは宇宙戦艦ヤマトのデザインを流用しつつ、アンドロメダ級の特徴を取り入れたため、艦橋砲が装備されている。無砲身の大口径エネルギー砲であり、一撃でガミラス帝国の『駆逐型デストロイヤー艦』を轟沈せしめる。ダイ・アナザー・デイの際は秘匿装備に位置づけられていたものだ。
「敵艦隊、こちらの意図を計りかねている模様」
「近接戦と見せかけろ。向こうには、こちらの思惑はわからんからな」
宇垣は全艦に『中央突破と見せかけての偽装を行う』と指令。敵艦隊が好機と見て、手柄を欲した敵旗艦が前に出てきたところを。
「エネルギーチャージ、完了」
「撃て!」
艦橋砲が火を吹く。近接防御火器とブリッジの狙撃用を兼ねた武装だが、この時は後者の目的で使用され、試験的にエネルギー偏向装置が備わったため、エネルギーが曲がる形で、アルザス級の一隻の艦橋に命中。怪異対策装甲を容易く貫き、機能喪失に陥らせた。
「命中!」
「あっさり片付いたな」
宇垣がモニター越しに映るアルザス級の画像にそう感想を述べた。ピンポイントで艦橋が無力化された同艦は戦闘継続能力を失い、漂流を開始する。艦橋に上がった人員はこの世の地獄と化した惨状に唖然となった。艦橋が壊滅したため、戦闘継続が混乱となった同艦。後部艦橋は無事であったが、操艦を行うための前部艦橋がやられた以上、単なる的でしかなかった。
「後部艦橋に機能を分散しているのが功を奏したようだが、動けぬようでは的だな。よし、敵旗艦を降伏させるように仕向けろ」
機能は生きてはいたが、砲塔各個での個別照準での射撃ができるほどの高度な機能生存性はない敵艦。後部艦橋で戦闘を続行しようにも、操艦もやろうと思えばできるが、まったく歯が立たない上、一撃で司令塔を破壊できるエネルギー兵器があるのなら…。リベリオン軍人たちは『合理的』に降伏を選ぶ。二番艦が指揮を引き継ぐが、こちらは普通に大和型戦艦の一斉射撃をバイタルパートに受け、撃沈はせずとも、数発の46cm砲弾が船体で爆発し、大損害を負い、戦闘継続不能となる。空母は艦載機がコア・ファイターに蹴散らされ、ガンペリーに甲板を破壊されるという失態であり、砲撃戦の前段階で既に無力化されていた。
「残る敵は?」
「デモイン級がいますが、超甲巡に無力化されるでしょう」
「うむ。砲術班は不満だろうが、ここは彼らに任せよう」
超甲巡は存在意義証明のために『戦果』を必要にしている。特に備砲の中途半端さが挙げ連ねられていたため、なんとしても、戦果が必要であったのだ。ドイッチュラント級装甲艦の影響が大きいので、日本からは『ドイツの猿真似』とも揶揄されている。しかし、扶桑としては『アラスカを圧倒し、水雷戦隊を無事に突入させるための船』という運用目的があった。その関係で『36cm砲は重巡的運用には適さない』とされただけだが、日本側には『戦艦に無力な豆てっぽう』と揶揄されていた。海戦の決着は巡洋艦同士の決戦で決まりそうである。意気揚々と突撃する三隻余りの超甲巡、それに敢えて挑むデモイン級。コンセプトは異なるが、最高の巡洋艦(砲熕型)として設計されたモノ同士。
――片や、高雄型重巡、金剛型戦艦の双方を代替するために戦艦タイプの船体設計を持つ『超甲巡』という名の装甲艦、もう片方は重巡という存在を最新技術でブラッシュアップした『最新鋭の重巡』。同じような設計目的で生を受けた艨艟たちが、生まれた世界ではない地で戦いあう。史実では『航空兵器やミサイル兵装の前の徒花』となった存在。片や死産、片や火力支援艦同然に扱われ、不遇の艦生を辿ったモノ。『未成艦と不遇艦の対決』が幕を開ける――
「全艦、左砲戦。敵さんの電探はM粒子で無力化してある。砲術手は落ち着いて狙え」
超甲巡のCICは緊張に包まれる。似たような規模の相手と単独で戦うのは始めてだからだ。デモインはボルチモア級の性能向上型であるが、従来の艦よりタフである。
「問題は敵さんが本艦の31cm砲をどう見るか」
「艦長、水雷兵装は使用なされますか?」
「準備させろ。念には念を入れて、な。こちらは31cm砲だが、敵はそれなりに不沈対策をしてきたはずだ」
艦長は副官にそう言いつけ、すべての兵装を使用できるようにさせる。巡洋艦同士の戦闘は戦艦同士の戦闘とは違うからだ。重戦艦を超ヘビー級ボクサーとするなら、巡洋艦はフェザー級か、ライト級のボクサーに相当する。超甲巡は『蝶のように舞い、鉢のように刺す』という表現がコンセプトとして似合う日本型巡洋艦からはだいぶ外れた存在だが、巡洋艦の枠組みの中で最大に強化したのがデモインである。史実で別々の意味で徒花とされた者同士の戦闘が始まる。