――ウマ娘たちが野比家で過ごしているその頃、怪人軍団と戦っているのび太。本人は目立たないようにしているつもりだが、ゴルゴ13がそうであるように、裏世界には素性はバレバレである。(ゴルゴも纏う風格などでバレバレな時があるので、当然か)基本として、成人後ののび太は自分の限界を把握している。ドラえもんが常にいた頃とは、全てが違うからだ。(怪人軍団と生身で戦闘してきて、90代まで生きる時点で十分にすごいが)――
――ドリームとハートが休暇となるのに合わせて呼ばれた、キュアラブリー。彼女がのび太の護衛を兼任している。基本的に、プリキュア達も全員が常に動けるわけではないため、ローテーションを組んで対応している――
「ラブリービーム!!」
キュアラブリーが露払いを行う。戦闘員相手なら、この技で充分である。
「よし!」
拳銃とは思えないほどの発砲音が響き、歴代の幹部の一人であるゼネラルモンスター(ヤモリジン)の片腕を腐食させる。
「貴様、どうやって、コローション弾を!」
「アポロガイストが生前に残していた基地の跡から回収していたのさ。さあ、地獄に送り返してあげるよ、ヤモリジン。いや、ゼネラルモンスター」
元・ドイツ軍少佐であるゼネラルモンスター。スカイライダー/筑波洋へのリベンジに燃えていたが、のび太とキュアラブリーに追い詰められていた。
「ラブリー、どこを狙ったほうが楽に倒せると思う?」
「そりゃ、眉間でしょ」
「そりゃそうか」
のび太は愛銃にその特殊弾を装填し、引き金を引く。倒すべき相手なので、眉間を撃つことが慈悲である。
「お、おの……あ、ああぁ……」
ゼネラルモンスターは怪人態から人間態に戻り、数秒ほど苦し悶えた後、衣服しか痕跡を残さずに溶けていった。
「すごい弾だね、それ」
「怪人の処断用の弾頭を敷島博士にコピーしてもらったからね。改良も加えてるようだから」
「ドリームが『ジジイ』って呼ぶってのも珍しいけど、どんな人なの?」
「ああ、一言で言えば、頭のネジが数本は飛んでるってのが合ってるイカレポンチなマッドじいさんさ。若い頃は反応兵器の改良を研究してたらしいけど」
「それで、こんな弾を?」
「まぁ、ゼネラルモンスターは歴代の幹部の中じゃ小物だからね、一発で仕留められて良かったよ。後任の魔神提督のほうが恐ろしいってさ」
ネオショッカーと呼ばれた組織の最初の幹部『ゼネラルモンスター』はかつて、スカイライダーに配下が負け続けた結果、大首領の粛清の対象になり、スカイライダーとの相打ちを果たせず、魔神提督に誅殺されている。組織の相次ぐ敗北はこの内部抗争(デストロンのヨロイ元帥の頃から生じた)も原因の一つである。
「大金星さ。組織の幹部を黄泉の国へ送り返したのが、ただの人間なんだから。ゴルゴ以来の快挙だよ。まだまだ、僕は彼には及ばないけどね。彼はアメリカ空軍の依頼で、改造魔人を地獄に送ってるから」
それはデルザー軍団の『ジェットコンドル』の事である。ゴルゴは1975年当時、米空軍の依頼で、当時の最新鋭機『F-15』の部隊を指揮し、自らも空中戦に加わり、彼の一射がジェットコンドルを地獄に送っていた。のび太のこの事例はそれに続く快挙である。
「ゼネラルモンスターの部下達を皆殺しにして、味方の側面の脅威を排除するよ」
「YES!」
二人はゼネラルモンスターを排除した後、ネオショッカーの初期怪人を含めた連隊を皆殺しにする。怪人を含む、組織の中級までの正規戦闘員は脳改造、ないしは培養されたホムンクルス(ゲルショッカー戦闘員がそれである)であり、良心を一切無くしている。情け容赦は不要である(科学要員は知能を活かすため、能改造しないで協力させるケースが多い。脳改造は人間本来の柔軟な思考を失わせるからで、幹部級については脳改造は不要とされる)。
「ちょっと良心が咎めるけど、立ち塞がるのなら、倒すのみ!」
キュアラブリーは良心が咎めるらしいが、割り切るつもりである。こうして、組織が送り込んだ第一陣はのび太の手で、いきなりの大ダメージを負う羽目となった。仮面ライダーらとエンカウントできずに、ゼネラルモンスターが戦死したという報は暗闇大使を大いに震撼させ、大首領の叱責を招いた。大首領の直接指令により、のび太への刺客として、キバ男爵、ツバサ大僧正らが送り込まれることになったのである。
――歴代の大幹部を蘇生させ、作戦の指揮官に当てる方法を実行させた大首領。仮面ライダーZXのボディが自らの体の鏡写しである真の理由も関係しているが、歴代の大幹部らの中でも格があり、最上位にデルザー軍団が位置し、暗闇大使などは二番目の位に位置する。プリキュア達はデザリアム戦役以降、残虐非道な『組織』と敵対することになった。その過程で、現役時代の技や武器が通用しないケースが常態化したため、まったく別のアプローチからの戦闘法を会得するのが最適とされた。ドリームは結果的に、その嚆矢となった――
――B世界との本格エンカウントの際には、サムライトルーパーとなったコージと共に、仮面ライダーブラック&ドリームBを救う形になり、シャドームーンを撃退するため、ドリームAは初めて『ゲッター機動』と『ストナーサンシャイン』を披露した――
「シャドームーン!あんたの好きにはさせない!!」
ドリームAは修行により、任意でシャイニングドリームにパワーアップできるため、シャドームーンとの戦闘にはその形態で臨んだ。融合後の全能力を無理なく扱うには『上位形態』であることが必須であったり、シャドームーン相手に戦うためであった。
「……あれは……?」
ドリームBは気絶する直前、ドリームAの姿を見ていたが、直後に気絶してしまったため、その時の記憶はそこまでとなっている。ドリームAはシャドームーンを撃退するため、草薙流古武術の闘技も用いるが、シャドームーンのシルバーガード(強化皮膚)の前には、さしもの草薙の炎もさほどの効果もなかった。コージの『超弾動双炎斬』も同様だ。
「さすがは世紀王……数千度の炎にも耐えるなんてね…!」
「のぞみ、このままじゃ埒が明かない。輝煌帝を使うから、合わせてくれ!」
「うん!」
コージが烈火の鎧を解き、代わりに輝煌帝の白き鎧を召喚し、身に纏う。輝煌帝はサムライトルーパーの最強の鎧であるが、詳しい事は調査中である。コージの記憶によれば、対になる『黒い輝煌帝』がどこかに存在しているはずだという。こうして、輝煌帝を纏ったコージは輝煌帝状態でしか放てない技を放つ。
「超弾動ぉぉぉぉ!!閃煌ぉぉぉざぁーーーん!!」
この技は閃光と炎の両属性の波動で敵を斬り裂くというもので、遠距離攻撃に向く攻撃でもある。さすがのシャドームーンも輝煌帝の力を食らい、そのダメージで思わず片膝をつく。
「ムゥ……この俺が膝をつくとは…!!」
その隙は数秒であったが、ドリームAがストナーサンシャインをチャージするには充分な時間でもあった。両腕にゲッターエネルギーを圧縮、制御し、前に包むように構えた両手の中で光球として束ねて生成する。ケレン味あふれるポーズである。
「え!?ど、どういうこと!?これ!?」
B世界のミルキィローズ、キュアレモネード、キュアルージュが駆けつけた瞬間に目にしたのは、倒れているキュアドリームとは別に、上空で、何かの技の態勢に入っているシャイニングドリームの姿であった。一同がリアクションも起こす間もなく、シャイニングドリームは技を放つ。
『アンタにも味あわせてやる、プリキュアの恐ろしさをな――ッ!!』
その一言の後、彼女は閃煌斬に合わせる形で、この技を炸裂させた。
『ストナァァァァァァ・サァァァァンシャイィィン!!』
二つの技が同時に炸裂し、凄まじい大爆発を起こす。しかし、シャドームーンはそれに耐え、この一言を残し、瞬間移動能力で撤退する。
「……ほう。中々の力だ。面白い、また会おうぞ」
「ヘッ、おととい来やがれっての」
シャドームーンに強気に言い返すシャイニングドリーム。B世界のプリキュア5が来ていることは感知していたため、気絶している『自分自身』をお姫様抱っこする形で運び、彼女らと邂逅する。
「直接は初めてかな、みんな?」
「あなたはまさか、別の世界の……ドリーム?」
「その通り。それで、こっちが……」
「僕と直接会うのも初めてだったね?コージだ」
「まさか、あなたが……別の世界のココ様なんですか!?」
「正確には、その生まれ変わり。だから、今はれっきとした地球人さ、ローズ。積もる話がたくさんあるけどね」
「ココ、そっちだと、結婚してるんでしたね?」
「ああ。新居も買ったとこ。義理の父に頼んで、資金を都合してもらったけどね、レモネード」
「へ!?」
「そっちだと、もう大人でしょ?あんた」
「まーね。戸籍上は21歳くらいになってるかな。ショーバイも思いっきり違うんだよねー。」
「聞いたわよ。法律の問題があるからって、軍人になったなんて、こっちのあんたが聞いたら、泡吹くわよ」
詳しい事情を聞いているルージュとレモネードは普通に会話をするわけだが、あいにく、あまり事情を聞いていなかったミルキィローズは半分置いてけぼりをくらっている。
「ちょっと、あなた達、なんで普通に会話してるの!?」
「かれんさんとこまちさんが連れて行かれる時、フェリーチェから、事のあらましを聞き出したのよ。この子(ドリームB)が駄々をこねたから」
「あたしのせいでこうなったようなもんだし、それに……巻き込んじゃったようなもんだから。その償いをしないと」
「あなた、なんでその状態なのよ!?ミラクルライトも無しに……」
「戦いの中で、もっと上の境地に目覚めたのもあって、自分の意志で任意に変身できるようになったんだよねぇ。それでね」
「何よ、そのバトル漫画みたいな話!?」
「そうなってんだって。それに、こっちのローズ、歴女してるよ」
「はぁ!?」
「ほら、これ」
「!?」
ヴェネツィアの観光地でテンション爆上げな様子の自分(しかも変身している)が写っている写真に、目玉が飛び出る勢いで固まるミルキィローズ。普通に変身した姿で観光している自分に。
「ど、どーなってるのよ!?」
「それが、転生した時のあれこれな都合か何かで、記憶が蘇っても、転生後の人格のままだったんだ。その関係で、君はイタリア語が堪能になっているんだ」
「なんですか、それぇ~~!?」
コージも補足を入れる。ミルキィローズ/美々野くるみはA世界では、大洗女子学園の『カエサル』を素体に転生した。記憶の覚醒後も『個性が強かった』ためか、人格の変容はあまり起きなかった。ミルキィローズへの変身能力も蘇ったが、転生前とは違う人格となったので、些か『コスプレ感』が漂うようになったと愚痴っているが、イタリア語とラテン語が堪能になっているなど、生前より優っている面も生まれている。口調については、カエサルのそれになっているため、男性言葉を主に使う。ただし、生前の主従関係(王族と世話係の関係)の名残りで、コージへは生前と同様に接している。
「あたしらに言われてもね。ま、ナッツハウスで話すよ。正式に籍入れた事とか、こっちのくるみの事とか、かれんさん達の近況とか」
この時のA側は1947年前後の頃なので、まだ余裕があった。正式に開戦する前であるのもあり、B世界と交流する機会を確保できていたわけだ。この時に、AからBに『自分の事情に巻き込んだ』事への謝罪がなされ、同時に『野乃はなへの前世でのわだかまり』を告白した。B世界の面々は『自分の元いた世界を見つけて、自分の世界のはなへ正式に謝罪するべきでは?』と、のぞみAに述べたが、野乃はなも、のぞみの死後の時間軸に生存している可能性は年齢的に高くはないという事実、自分の世界のはなに出会えなければ『彼女に謝罪すること』の意味がない事、彼女も別の世界へ転生した、あるいは現役時代の時間軸の姿で、どこかに召喚されている可能性を考慮せねばならない問題があるので、意外にハードルの高い事柄である。
「少なくとも、その時の後の時間軸以降のはなを見つけないと、正式な謝罪は難しい。彼女であれば許してくれると思うんだが、違う時間軸、あるいは別の世界の彼女だと、彼女をいたずらに苦しめるだけだし、のぞみの前世を狂わしたのは、僕にも責任の一端がある。のぞみの元いた世界の時間が経過していた場合、彼女も存命しているか怪しい。現役時代の彼女がどこかにいることを祈るしかない。確率的には、サハラ砂漠で裁縫箱の針を探すようなものだけど」
コージの見解はそれであった。代を重ねたプリキュアは役目を終えた後に力を失うケースが多くなり、その後の人生は普通の人生を送る場合が多くなった。初期のプリキュアは引退後も力を保っているので、そこが世代間の軋轢になったケースである。ドリームも自分に非があると述べており、見つけ出したいが、サハラ砂漠で裁縫針を探すような確率である。つまり、何かかしらの偶然を祈るしかないのだ。そこもドリームが悩んでいる理由であるが、自分に非がある自覚があるので、なかなか一歩踏み出す勇気がないと漏らす。その一歩は、後に、全くの第三者であるシンボリルドルフが手助けする形となるのである。
――数年後――
「ドリームに吉報だと思う。私、転移する前にブラック、エールと一緒に戦ってたんだけど、エールがそんな事を言ってた覚えがあるんだ」
「なんだって(なんですと)ーーー!?」
キュアフローラがキュアミラクルとキュアホイップに言ったことは重大な事だった。
「うん。お互いに違う世界から呼ばれたようだから、あまり詮索しなかったんだけど……そんな事を漏らしてたんだ。ドリームに伝えといてくれる?」
「わかった。だけど、その世界の探査が必要だから、下手すれば年単位の時間がかかるなぁ」
「平行世界は広いからね。フェイトちゃんにメール入れとくよ」
「それがいいね」
キュアフローラのもたらした情報は吉報ではあった。だが、世界の座標も不明なので、年単位の時間がいることは覚悟しなければならない。時空管理局も全ての世界は把握しているわけではないからだ。
「でも、ドリームの故郷の世界ってどうなったんだろう?」
「メロディの話じゃ、娘さんの一人が後を継いで、闇落ちしたお姉さんを倒したんだそうな。それ以降は知らないんだそうな」
「そこで響ちゃんも?」
「たぶん…。確証はないけど。エールと和解できればいいんだけどねぇ」
嘆息のキュアミラクル。
「あの子、悪い子じゃないんだけどねぇ」
キュアホイップも続く。
「私は現役の頃に会った事ないかなぁ」
「そっか、ミラクルの時代の後はオールスター戦が落ち着いちゃったから、フローラは現役時代にキュアエールに会ってないんだっけ?」
「一回だけ会ったかなぁ。呼ばれた事あるから。ただ、直接は会話したわけじゃないんだよね。でもさ、ドリームも引っ込みつかなくなってた感ない?」
「言えてる。りんさんたちもその頃には亡くなってた上に、家庭が上手くいかなくなってたらしいからねぇ」
「色々な事情で、ココに相談できない理由もあったろうし」
「教師って職業がブラックすぎたのと、子供の一人がグレたのが原因かなぁ?」
「だろうね。教師は時間外労働も多いからね。それがのぞみちゃんをおかしくしたんだよ」
「心の拠り所のみなさんが先に亡くなったことがとどめ?」
「たぶん。で、娘を止めようとしたけど、無理にプリキュアになり続けた代償が来た……」
「重い話だなぁ……」
「だから、強さをいたずらに求めるようになってたんだろうな。で、自分と似た境遇のマジンガーZEROを救おうとしたんだろうね」
「許せる?」
「言いたいことは全部吐き出したからね。プリキュアに二言はないよ」
ZEROへ複雑な感情はあれど、ドリームとの喧嘩でそれを吐き出したので、現在はZEROを許しているというミラクル。二言はないと述べ、先輩の選択を尊重しているらしい。
「ドリームに必要な最後の禊は……エールに謝る事。お膳立ては頼むよ、ホイップ」
「連名で送ろうよ。そのほうがスッキリするし」
「そうだね。フローラ、いいね?」
「構わないよ」
この後、三人は連名でフェイトへメールを送り、フェイトはそれを受け、世界の調査を始めるのだった。
――扶桑皇国は日本国の言うことを穏便に受け入れた結果、華族階級がほぼ名誉階級化する形で身分的に生き永らえ、戦前日本と戦後日本のキメラ的な国に変貌し始める。軍隊が公的に存在する以上、引退後の福利厚生が必要だからである。旧来の華族層の内、旧大名系は軍人が当主になる事が好ましいとされた結果、黒田のように『傍流の出ながら、軍人であるので、本家を継がされる』ケースが増加する。堅物の嫡男が娘の冷遇を理由に廃嫡され、邦佳が当主に就任したことは一種の模範とされ、以後、大名系華族の慣習として、『その時々の嫡男が相続に適さない場合、軍人である誰かが継ぐ』事が定着していく。家族の名誉階級化が進展するにつれ、財力のない家柄(旧公家など)の者が爵位返上を願い出るケースが増えた事も決定打であった。一代華族が世襲華族を数で上回るようになると、華族階級も名誉階級化を余儀なくされたが、代が変わっても功を挙げる者たちもいるので、世襲華族は減りつつも、存在し続ける。絶えた名門の名跡を誰かが継ぐ(例として、銀河英雄伝説でラインハルト・フォン・ミューゼルがローエングラムを名乗ったケースが有名だろう)ケースは当然あるからだ。ウマ娘世界でも、ヒシ一族がヒシスピードの失踪で絶えた後、名跡をヒシマサル(二代)が継ぎ、その更に後継ぎがヒシアマゾンなり、ヒシアケボノであったように。その事も、ウィッチ世界の社会の歪みの表面化に繋がった――
――ウィッチの社会的行き場が二分化され、双方の最初の政治抗争があったのも、1940年代後半の事であった。この時期は長年の戦争での国民の精神的疲弊で、MATが政治的に優勢であった。軍は日本国の介入もあり、大幅に予算削減がなされ、兵器不足・人材不足が顕著に現れ、太平洋戦争の行く末が危ぶまれていた。Gウィッチへの処遇が『異端』から『英雄』に扱いが変わった一因には、ウィッチの公職への就職口の守護という政治目的があったのだ。実際、軍隊への志願への嫌悪が増加した農村部では、ウィッチ化した者を納屋へ監禁し、その者をいなかったことにするケースが生じてしまい、玉音放送で引きずり出させる必要まで生じた。『集団就職』の半分以上は玉音放送で示唆された『不敬罪』の適応を恐れた農村部が強引に送り出した者たちであり、意欲も能力もなかった。有望株の大半がMAT(自衛隊所管であるが、戦闘参加義務はない)に参加し、軍に入らないケースが主流になりつつあったからで、この時期がMATの最盛期であった。怪異の出現率が低下し、ウィッチの覚醒数も低下している時代、サボタージュへの反感から逃れるため、多くの中堅層が転職していったため、軍部は古参兵と小数の新兵という組み合わせの状態になった『ウィッチ兵科』の前途を見限り、特技章への移行を模索し始める。竹井少将の存命中は兵科の維持をすることになっているが、彼は既に老いているため、時間はあまりない。1945年以前から現役の者は兵科章の着用を引き続き許可する手筈である。ウィッチは他兵科との統合が容易くないからでもある。特に、速成教育の世代は『通常兵器の兵法に無知』であるために転科訓練にさえ嫌悪感を見せる者がいるからで、結局は一部のトップエースのみに戦果が集中することになってしまう。子供であろうが、戦わなければ生き残れなかった世界に『普通の歴史を辿った世界の倫理観』をいきなり押し付けても、『歪み』を生むだけである。21世紀日本はその自覚がなかった。それがウィッチ同士の対立意識を生み出してしまった点で『悲劇』であった――
――カールスラントの衰退の一因は日本連邦の苛烈な報復であったのは疑いようはなかった。カールスラント軍部も予想外の結末となったわけだが、10代のウィッチの行き場が無くなることは、ウィッチの社会的立場の喪失と迫害に繋がる(オラーシャではそうなった)ために、日本連邦も最終的に妥協し、『18歳以上であれば、前線任務を認める』という条文を盛り込んだ国際条約を締結するに至った。ウィッチの力は本来、時限式である事実が伝わると、『最後の二年しか前線任務につけない』というのは費用対効果的意味で問題なため、Rウィッチ化を前提にしての勤務の推奨に改革するしかなかった。更に、ウィッチ世界の魔法は体系づけが発達していないため、一子相伝の奥義もかなり多かったことも予想外であった。過去の遺跡の保護条約が施行された事で、エディタ・ノイマン大佐が更迭されたのがすべての始まりとする意見も出ていた――
――1945年。デロス島に出現した怪異の処理の一件で、エディタ・ノイマン大佐は(当時。後に中佐へ降格、そこから数年後に退役)デロス島にあった遺跡を『今に生きる者のほうが大事だ』とし、遺跡ごと島を砲撃する前提で作戦計画を進めていたが、それを知った21世紀世界の諸方面から火の出る勢いの抗議を受け、ノイマン大佐は司令部の意向で更迭され、同時に見せしめのために降格となった。その緊急の代替案が『圭子と智子による討伐』であり、結果的に公的な『七勇士』の復権の狼煙になった。ダイ・アナザー・デイ開始の一週間ほど前の事であった。この更迭劇は大いにカールスラント軍の不満を煽ったが、ミーナの失態で、カールスラント軍の品位を疑われる事態になったため、政治からの余計に締め付けが強められた。それがカールスラント軍の暴発に繋がってしまう。1945年こそが、カールスラント暗黒時代の始まりという意見が後世で主流になるのは仕方なかった――
――それと同時に、それは扶桑の黄金時代の幕開けでもあった。扶桑は日本を利用しつつ、地球連邦の技術を使い、軍備を増強していった。1947年以来の戦争での黒幕の一つは『組織』だからで、リベリオンとティターンズは組織の隠れ蓑のようなものと認識された1949年。日本連邦は戦争目的の明確化にようやく成功。リベリオンへの侵攻に大義名分を得たが、その前に南洋侵攻軍をどうにかしないとならないのも事実であった。64F主力は遠征で交戦状態に入っているが、連合軍としてはこれ以上は援軍を送れない。そこも遠征の長期化を招いていた――
――ススキヶ原――
「敵の戦車を鹵獲したから、一時的に置いててくれ、か」
「ま、戦車の置き場所なんて、21世紀の日本にはねーからな」
パンターA型、ティーガーⅡ、E-50などの戦争最末期~計画兵器の実物が地下に搬入されていく。遠征軍が鹵獲した敵戦車で、史実のドイツ軍が使用、もしくは計画したものたちだ。
「向こうの世界のドイツが購入を打診してきてさ。正式に決まるまでの置き場所だそうだ」
「しかし、あれだけじゃ部隊は組めんと思うが?」
「サンプルにすんだよ。それで解析して、軍需産業に同じのを作らせんだよ」
「なるほどな」
「向こうのドイツは戦争で国ごと南米に疎開したが、そこでも内乱になって、国の維持も難しくなったそうでなぁ」
「それで兵器を売るのか」
「ドイツはプライド高いからな。別時空の自分らのやつでも文句言うんだそうでな」
ゴールドシップはカールスラントをそう評する。カールスラントは連合軍の中核であるという意識が強かったため、軍需産業の復興に必死であった。しかし、ドイツの締め付けと、内乱の傷は大きく、自力での新規開発は困難な状況に陥っているのである。
「連絡があったようだが?」
「のび太がネオショッカーの大幹部の一人を仕留めたそうだ。それで鹵獲したのが、今のだよ。」
「よく仕留められたな」
感心するブライアン(体はキュアドリーム)。
「何、特殊弾頭を打ち込んだんだそうだ。改造人間をも溶解させるという、な」
「おっそろしいな」
「敵の発明を逆に利用してやった結果さ。敷島博士って人に頼んだんだと」
「写真は見たが…。なんだ、あのイカレポンチなジジイは」
「兵器技術者だそうだ。頭のネジが数本抜けてる倫理観を持つ、ぶっ飛びじいさん。そのじいさん、殺人兵器の研究がライクワークだから、市井に解き放てない。だから、公の組織で雇ってるんだそうな」
「お前が前に使った麻酔弾もか?」
「ああ。オグリさんに効くのを頼んどいたんだよ。あの人、経口薬は効果ないからな」
オグリを基準にすると、人間は愚か、大半のウマ娘にとっても危ないが、敷島博士は自らのノウハウを用いた麻酔薬を使うことで解決し、ゴルシへ送った。
「お前が使ったマシンガンも、彼の作品だ。ああいう武器を作らせると一流なんだそうだ。」
ゴールドシップも、敷島博士の武器制作の天才ぶりを素直に称賛する。
「そうか。アグネスタキオンタイプのジジイか」
「タキオンよりやばいぞ。本当にぶっ飛んでやがる」
敷島博士をゴールドシップすらも『アブねぇジジイ』と認識していた。それは敷島博士には褒め言葉だろうが、ゴールドシップすらも『アブナイ』と見なしている事の証明である。ブライアンはその様子に、薄ら寒い思いであった。