ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回はオムニバス編の更新です。


第五百四十六話「はるかなる愛にかけて」

――扶桑皇国は保有する巡洋艦の多くが旧式の烙印を押されてしまった事で、喧々諤々の議論が起こっていた。1930年代の末時点では、超甲巡に『今までの甲巡の任務をやらせる』という前提を立て、10年近くも建艦計画を進めてきたが、デモイン級の登場で伊吹型を含めた『既存の日本型重巡の旧式化』を突きつけられる格好になった。扶桑は水雷装備の必要性の増加などによる、既存艦の再改装や戦後式の艦艇への急激な世代交代でてんやわんやであり、カテゴリ自体が軍縮条約の産物である『重巡の更新』には無関心であったが、結局はデモインの量産化で『対抗馬を政治的意味合いで用意せねばならなくなった』。そこに、扶桑造船界の苦悩があった。本来、扶桑は対潜装備を含めて、一切の水雷装備を廃する流れであったのだが、M動乱で多くの駆逐艦が潜水艦に狩られる醜態を晒したことにより、艦政本部の若手~中堅造船官の複数が自らの不明を侘び、本部や自宅で自刃する事態が起こった。(日本側にこれでもかと罵倒されたのも理由だ。)扶桑海軍は造船側の大混乱により、海軍軍備の整備に支障が生じ、結局、一部の戦艦に過剰に負担がかかってしまい、戦艦の殆どがドック入りという事態に陥っていた。結局、日本の政治判断で『超甲巡は史実には存在しなかった艦種なので、便宜的に巡洋戦艦として予算を計上する』とされ、巡洋戦艦として改装され、以後はその艦種として扱われた。その兼ね合いで、伊吹型の巡洋艦としての建造再開がなし崩し的になされた(軽空母というジャンルそのものが陳腐化してしまったため、そのための資材が宙に浮いてしまったが)。伊吹は建造中断の時点で巡洋艦としてかなり完成していたが、魔女閥のゴリ押しで軽空母に変更された。だが、M動乱からの造船界の大混乱で工事再開が遅延を重ねた挙句に『やっぱり巡洋艦にするわ…』と言われた工員たちの心情はたまったものではなく、造船所でのストライキや打ち壊しも相次いだ。そのために伊吹型は一時は『誰にも望まれない巡洋艦』という扱いを受けた。だが、5500トン級軽巡洋艦の殆どが戦没、あるいは退役し、阿賀野型も旧型と見做され、早期退役の流れとなった中では、待望の純然たる巡洋艦であった伊吹型は量産された。ただし、高雄型重巡洋艦の後継ではなく、最上型の量産型という扱いであった。高雄型重巡洋艦の代替は超甲巡のハズであったが、政治判断で巡洋戦艦に枠が変えられてしまったため、結局は高雄型重巡洋艦の発展型を政治判断で再検討せざるを得なかった点に、扶桑造船界の嘆きは集約されていた。結局、扶桑海軍の戦闘態勢が完全に整うのは、1950年代に入って、更にしばらく経ってから。海軍はその間、やむなく水雷戦隊と大艦巨砲を押し立てておくしか手がなく(潜水艦は通商破壊に全艦が従事したため)、空母機動部隊はお飾り(空母そのものが大型・少数化したための弊害)と揶揄される日々が続いたのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本側が矢継ぎ早に戦後の技術を与えたため、必然的に艦艇自体が重武装・大型化した。ただし、巡洋艦級以上の艦砲は日本側にノウハウが一切ない(敗戦で失われた)状態であり、地球連邦軍がそれを与えた。駆逐艦がかつての軽巡洋艦を駆逐し、重巡が15000トン超えの艦に巨大化していった結果、戦艦と空母もその理想の排水量が100000トンを超えてしまったわけだ。これに追従できた国はなく、日本連邦はほぼ独力で強大なリベリオン艦隊と対峙せざるを得なかった故、新型艦は軒並み大型・重武装化した。水上機の新規開発も1945年でストップ。現場の要望で『強風』と『二式水戦』の生産が細々と続いていたが、1950年には全機が退役の見込みであった。ジェット機の時代を迎え、もはや航空戦力として勘定できなくなったからだ。ミサイルは各国ではさほど重視されていなかった(撃ち尽くした場合の洋上補給が懸念された)が、日本連邦は史実どおりに、大型艦はミサイルを戦艦の副砲の代替とし、全艦種の主砲の速射化も進められた。その結果、海軍魔女の存在意義が希薄化する結果となった。防空網を突破された時の備え、あるいは空母がいない場合の洋上防空以外に役目が期待されなくなったからだ。魔女たちが好む『12.7ミリ機銃』が防弾力に優れるリベリオン軍機の前には、攻撃手段として成立し難くなったのも、その理由だ――

 

 

 

 

 

 

――ダイアナザーデイ当時、日本主導で『機銃は長砲身20ミリを実用の最低ラインとする』という取り決めがなされた。超重爆撃機が想定の中で最大の敵だからだ。義勇兵も『20ミリ以上ないと、アメ公は落ちない』と断言したためだが、魔女閥は楽観視していた。いざ、実際に戦いが生起したら、『13ミリ機銃をいくら撃ち込んでも、まったく効かない!!』という報告が続出。あらかじめ、20ミリ機銃に装備を切り替えておいた艦上魔女部隊、対大型怪異想定の邀撃部隊、64F(実質的な統合戦闘航空団の改組)はつつがなく対応できたが、多くの部隊はそうではなく、P-47やF6Fの重装甲の前に敗れていった。皮肉にも、F6FとF4Uは魔女部隊には重大な脅威となり、義勇兵部隊にとってはカモであった。義勇兵部隊は『コックピットを撃てる』という利点があり、それが窮地の時の生存率を左右した。64Fの猛者達は転生で『覚悟が決まっている』者が多かったが、それも戦いぬける理由であった。なお、実質的に、ダイアナザーデイの全期間を通し、主要メンバーが無傷であったのは、64Fのみ。ミーナは自身の確認ミスと思い込みによる暴走で、自身の輝かしい経歴に大きな傷をつける形になり、予定されていた叙勲は白紙に戻された。本来、ミーナが想定通りに手柄を立てれば、大佐への昇進と上位の勲章の叙勲が約束されていたのだが、実際は逆の結果で終わった。実際の叙勲はシャーリー、ハルトマン、バルクホルンなどの固有メンバーの他は、元・504の中島錦(後に騒動になった際、名義を『夢原のぞみ』へ変更)が戦功第一とされ、一応は事変後志願の若い世代を立てる形で叙勲は決められていった――

 

 

 

 

 

 

――ミーナのこの外交上の大失態はカールスラントの凋落の引き金となり、坂を転げ落ちる勢いで同国は衰退。ダイアナザーデイの四年後には『人材派遣センター』扱いにまで落ちぶれていた。特に、魔女部隊の軍事的有用性の急激な低下は如何ともしがたく、一部の才ある者のみが求められる状況に陥っていった。折り悪く、熟練者が相次いで『あがり』を迎える時代に突入したため、カールスラント軍の魔女部隊の質は急激に低下。新世代の質が黄金世代のそれに追いつかなかったのもあり、世界最強の魔女の国の座を日本連邦へ明け渡す事になった。同国の軍縮はこれに同期して急激に行われたため、ノイエ・カールスラントは『治安も何もあったものではない』有様となり、なんと、100万近くの人間が内乱で死亡してしまうという惨事となる。そのきっかけは同位国・ドイツによる過剰な軍部の締めつけだったので、日本はその惨事を他山の石としたのだ。カールスラントの貴重な人的資本と資源を大急ぎで回収した日本連邦は扶桑海事変世代の大半が引退する時代を迎えるにあたり、教官として迎え、同国の魔女部隊を栄えさせる礎を築く。つまり、1950年代以降の扶桑軍の魔女部隊はカールスラント魔女部隊の正当な後継者という事になる。カールスラントは1947年以後、軍を加速度的に縮小。史実の西ドイツ軍よりは多少マシな規模にまで、一気に落ち込んでいったので、日本連邦は文字通りにブリタニアに代わる『世界の覇権国』となっていった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦も、第一線機材をジェットに改変しようにも、当時はジェットそのものが出たての時代であったので、そのストップギャップとして、ターボプロップ機を大規模に軍用機として用いた。既存のレシプロ機も大規模に改装され、ジェットの普及までの第一線を支えた。改変を完了しようにも、求められるレベルが戦後第二世代以降であったため、配備完了の通知がなかなかできず、1949年の段階では、一握りのエース部隊のみが定数を満たしている有様であった。また、運用設備の高額化により、野戦飛行場を設けられないのも、日本連邦が『物量不足』に悩む理由であった。更に、日本の大衆が『アメリカへの技術的劣位』を事更に強調し、扶桑で大きく騒ぎ立てたため、扶桑海軍は空母機動部隊の運用に自信を無くし、人員の士気も無惨な有様であった。その立て直しに尽力しているのが、坂本であり、若本であった――

 

 

 

 

 

 

――魔女部隊は艦上機のジェット化により、『スペースがないから』という事で、空母から強襲揚陸艦に移された。ジェット機への対応改修は既存空母では『使える年数に限りがある』故、できるだけ長く使えるように大改造するのは当然の事であった。魔女閥はこれにテロを含めての手段で抵抗したが、結局は蒼龍と飛龍を戦力外にする失態を犯してしまい、大艦巨砲と水雷戦隊に頼らざるを得なくなった。そのため、空母機動部隊は1940年代後半は不遇の時代であったと言える。坂本と若本はその立て直しに、残りの軍生活の全てを捧げる事になり、海軍に殆ど唯一残された『空母機動部隊の運用の権威たる魔女』として、その手腕を奮う事になる。ただし、空母そのものが高額・少数化し、以前のように『気軽に使える艦種』では無くなると、強襲揚陸艦を空母代わりに使用することが増加した。これは怪異が存在する世界である故の発展であった。ただし、強襲揚陸艦も瞬く間に45000トン超えの巨艦に変貌してしまうので、歴代の海軍高官達は艦艇の相次ぐ大型化に悩む事になったが――

 

 

 

 

 

 

――日本連邦の成立以後は、政治的意味合いで『軍隊は日陰者と扱われる』ようになっていく時代を迎えたわけだが、扶桑皇国は元々、武人の力で国を保ってきた歴史があるので、史実の戦後世界の反軍的風潮を持ち込めば、当然ながら反発が生ずる。日本の大衆はそれを自覚なしに弾圧した。その結果、萎縮した扶桑皇国の臣民が軍を避けるようになるという有様となり、軍部は人手不足に悩まされている。そのために『64Fの超人に戦闘を依存する』事になっているわけだ。魔女閥が解体に向かった理由の一つは『世界全体がティターンズの傀儡政権に支配されようとした時、お前らは何をしていた?』という世間の白眼視に耐えられなかったからであった。『何の縁もゆかりもない、歴代のプリキュア達が現役時代と打って変わっての血みどろの戦いを繰り広げてくれたのに、お前らは…』という視線は(武人を尊ぶ文化が強かった分)鋭く、高年齢層の魔女の多くは『欧州戦線従軍記章』を軍服に常につけ、世間の批判を躱した。(その例外は『新世代の象徴』として宣伝された芳佳やひかり、静夏などの新世代のエースたちだ)ダイアナザーデイ当時に中堅層以上であった魔女は、欧州戦線従軍記章の有無で、世間からの扱いが変わってしまう事に愕然し、その世代の多くが現役復帰、もしくは継続を望み、太平洋戦線の人材供給源となっていた。後方勤務が軽視される風潮が強まってしまったため、その是正は日本連邦全体の課題であり、自衛隊で有望とされた事務方の隊員が扶桑へ大規模に出向を命じられたのも、その傾向を抑えるためである。その兼ね合いもあり、Gフォースは『自衛隊が魔女の世界で国際貢献活動をするための受け皿』という認識が日本国内で啓蒙されるようになり、自衛隊の有望な若手幹部自衛官(士官)の間で出世のステイタスのようになり始めた――

 

 

 

 

――2020年代。日本連邦の成立で、魔女の世界との人や物資の往来が盛んになったことにより、往年の高度経済成長期のような活気を取り戻し始めた日本。この時期が後々の『地球連邦の盟主』への第一歩であると言っていい。扶桑からの出稼ぎ労働者が来訪し始めた事により、ススキヶ原も再開発の波が一気に押し寄せていった。骨川コンツェルンが中興を起こすのも、この時期だ。同コンツェルンは野比財団との提携により、扶桑の主要産業メーカーとの繋がりを得、一気に多分野に進出していく。また、野比財団が旧軍の超兵器(海底軍艦、鉄人・超人機計画、空中戦艦計画)の設計図を入手した事から、骨川コンツェルンは日本の大手企業と野比財団との仲介役としても名を馳せる。それら超兵器は野比財団、骨川コンツェルン主導で解析と建造がなされ、ダイ・アナザー・デイの段階で投入された鉄人達はこの嚆矢であった――

 

 

 

 

 

 

――当然、軍需産業分野で日本が中興を起こすことを嫌悪する反動分子は国内にごまんとおり、野比財団の創始者であり、2010年代半ば以降は『名士』とされたのび太の妻子が狙われることは山のようにあった。のび太本人が如何な活動で財を成そうとも、その妻子には何の関係もなく、本人らに落ち度はないはずだが、彼らは『同罪』と断じ、卑劣極まりない犯行を、のび太の子であるノビスケが幼稚園児となった時期から繰り返した。のび太は(裏稼業を減らすなどして)なるべく、休日は家にいるようにしたのだが、妻の静香が2017年頃に公安警察の仕事で家を開ける事になり、のび太自身も年齢が30代に差し掛かり、表の仕事が多忙になってしまい、そうはいかなくなってしまった。調も聖闘士になった都合、常に家にいるわけではなくなる時期であったので、のび太はダイ・アナザー・デイ終了直後に、ことはのつてで歴代のプリキュア達に声をかけ、家に下宿してもらうようになった。折しも、のぞみが『その変容』もあり、転生先の実家である『中島家』に帰りづらくなってしまい、長期休暇に困っていたのも契機となった。その矢先に、ノビスケの幼稚園バス襲撃事件は起こったのである。これが野比家へのあからさまな敵対行為の始まりであった。これに対応し、事件を解決したのが、キュアフェリーチェ、キュアルージュ、キュアマーチの三人であった。その時に下宿しにやってきたルージュとマーチが大慌てになるフェリーチェを諌め、三人で解決に乗り出し、学園都市崩れの能力者のチンピラを制圧した。これが『プリキュア達の実在が確かと認知された』最初の出来事であった――

 

 

 

 

 

――のぞみの転職失敗騒動はその後に起こったのである。のぞみは皮肉にも、騒動がきっかけで実在と転生が認知され、その後の『プリキュアの顔役』としての活動に繋がったわけだ。本人は『14歳当時の容姿』であったのもあり、日本国民に存在を瞬く間に認知されたわけだが、転生先では既に17歳であったので、『いたいけな中学生』と扱われることには抵抗があったが、すぐに慣れた。扶桑外務省は騒動の渦中に、鈴木貫太郎大将の手で総理大臣に渡された親書を通し、『中島錦大尉はキュアドリームこと、夢原のぞみ氏の転生体である』と正式に通知。日本政府を驚愕に陥れ、恐怖のどん底に叩き込んだ。日本政府は世論の沸騰、扶桑軍の『暴発』を恐れ、のぞみの要求をほぼ条件無しで受け入れた。ただし、教官資格のみは『然るべきカリキュラムの受講と日本側での大卒資格の取得』とされ、日本連邦大学の設立が具体化した。のぞみは戦間期にその連邦大学の学生となり、戦争が終われば、日本連邦大学の日本側のキャンパスに二年ほどは通う事になるだろう。戦争が終われば…というのは、扶桑が学制改革を始め、その混乱が収まるまでの時間が長い事が容易に推測できたからだ。扶桑の予備役制度そのものが混乱したためもあり、日本は扶桑の戦争を早く終わらせないと、扶桑の内部改革に支障をきたすことを遅まきながらも認知。政府は扶桑軍への支援を拡大する方針となる。だが、急進的な者たちや過激派は野比家を『戦争幇助者』と見なし、ますますテロリズムに傾倒。ノビスケのみならず、静香の親類縁者にまで危険が及んでしまう。そして、彼らはカールスラント軍崩れのマフィアを雇い、同国陸・空軍の放出した装備でススキヶ原を襲撃するという蛮行に打って出た。これがススキヶ原自警団の結成のきっかけであった。ススキヶ原は東京都内では最も『ダイ・アナザー・デイの義勇兵が多かった』土地地でもあり、彼らが扶桑から記念に持ち帰ってきていた装備が『飛行クラブ』の名義で管理、使用可能の状態にあった。彼らはダイ・アナザー・デイの後も扶桑の予備役にあり、野比家のあるマンションには『飛行クラブの飛行場』が併設されていた。その関係で運良く対応が叶い、烈風や紫電改、キ100の最後の華を飾ったわけだ。カールスラントの放出したBf109は史実のF型相当。対して、彼らは大戦末期の高性能レシプロ機。勝負はあっという間に決した。このような事態が続くようになると、カールスラント空軍が放出していないはずのMe262までもが現れる様になり、カールスラント空軍の管理体制の不備を表すような体たらくが露見してしまう。自警団もこれに(次世代機の配備で余剰扱いになった)F-86の購入で対抗。それまでには数年の時間がかかった事、飛行機の発展の過程を垣間見れるという理由で、不謹慎ながらも、その空戦を撮影する『勇者』が続出した。特に、Me262とF-86という『有り得そうでなかった』夢の対決は軍用機マニア垂涎の的であった。のぞみはススキヶ原を守るため、自警団に積極的に協力。時には自身がF-86に搭乗し、非公式に空戦に参加。同機のポテンシャルを証明し、名声を高めている。とはいえ、Me262はF-86よりも前世代のジェット機(世界初の実用型ジェット戦闘機)なので、のぞみほどの腕があれば、いいカモであったが――

 

 

 

 

――自警団仕様のF-86は『カールスラント軍崩れの輩からの自衛のための道具である』という理屈で当局も認知している。いくら相手が第二次大戦レベルの航空機とはいえ、警察の装備では手も足も出ないからだ。また、『武装勢力が二次大戦中の航空機で攻撃してくる』事態そのものが日本の法律の想定外にあたり、なんら保障もされない事は問題であった。自警団はそのやむなき事情もあり、野比家を拠点に『ダイ・アナザー・デイの義勇兵たちが中心になって』組織された。法的にはグレーだが、やむなき事情による応戦であるため、当局も議論を棚上げしている。時間が経つにつれ、装備も次第に整うわけだが、レシプロ機とジェットの混合編成である。相手が相手なので、レシプロ機でも充分であるのだが、ドイツのメッサーシュミットは改良が進むと、史実では水エタノール噴射装置(MW50など)が積まれているため、自警団の活動が認知されだすと、日本機の高高度性能不足が指摘されている。だが、自警団仕様の機体は自家改造でターボチャージャーの取り付け、はたまた、ニトロを仕込む改造を仕込んだ者も多く、下馬評と違い、メッサーシュミットは日本機のカモであった。更に言えば、自動空戦フラップを備えた機体も多く、横方向の空戦をあまり重視していないドイツ機では、その性能を限界まで追求してきた日本機相手に敵う機体はなかった。特に、日本機では稀に見る大型の烈風にさえ、ドッグファイトで軽く負けるBf109は当たり前の光景であり、むしろ、横転性能の良いフォッケウルフのほうが難敵扱いであった。その横転性能の良さは義勇兵らが命中を確信したタイミングでの射撃を回避する事があるほどの鋭さであり、それを聞いたタンク技師が大笑したという。のぞみもフォッケウルフの横転性能の良さは知っており、見越し射撃の際はそれを計算に入れて、機銃を撃つのを心がけたと述べている。(素体となった錦がテストをした事があったため)――

 

 

 

――2023年の年明け――

 

この年になると、自警団が航空装備まで持つことが問題視されるようになったが、カールスラント軍崩れの持ち込む旧式装備への対処に法務省が法的根拠がなかなか見いだせず、ススキヶ原へ自衛隊の専任の防空部隊を置こうかという案も否決(与党が政治的失態を繰り返したため)されたため、結局は自警団に解散を命ずる事はできなかった。戦後直後の骨董品とはいえ、ジェット機を運用できる力を民間が持つことは問題であったが、皆が扶桑の予備役軍人であり、ダイアナザーデイから、記念に持ち帰っていたものであると説明されれば、扶桑ではそれは『合法の範囲内』であるので、何も言えなかった。更に、若かりし頃に日本軍人であった者も多く、日本の当局は目を回す思いであった。

 

 

 

 

 

 

――日本は扶桑の力で、奇跡的な経済復興が起こりつつあるためか、波風立てないようにとする論調が次第に支配的になった。2016年以降、日本は扶桑へ連続的に迷惑をかけてきたからか、扶桑の経済力と軍事力をうまく利用することを防衛閥は模索。扶桑の改革派はその思惑を逆に利用し、Gフォースを結成。20年代に入ると、海軍戦力も充実が図られた。大和型のいくつかは交代で日本に停泊しており、20年代に入ると、大和と信濃がその任に就いており、さらなる近代化改修の最中にあった――

 

 

 

 

――2023年 横須賀――

 

「これも何かの因果か?」

 

と、自衛官らが口々に言うのも無理はない。横須賀に配置された大和型はかの『信濃』であったからだ。近代化改修により、上部構造物の殆どは宇宙戦艦ヤマトの規格品になっていたのもあり、『戦艦大和の船体に宇宙戦艦ヤマトの構造物を載っけた』と揶揄されていたものの、信濃は投錨した。日本側はこの近代化改修の凄まじさに『確かに近代化改修しないと、ミサイル時代には無用の長物だと言ったが、宇宙戦艦ヤマトの部品を使うか?』と、ため息であった。副砲は撤去されているが、主砲は長砲身のものに換装(55口径砲)済み、煙突は既にミサイルランチャーの構造物の一つにされている、現代的な戦闘指揮所も設置済みと、21世紀の目から見ても、改装は完璧であった。日本が行うのは、弾薬と食料品・医薬品の補充くらいであった。基本的な砲弾は21世紀の日本でもその製造は可能であったので、その点では仕事はあった。

 

「しかし、空母としては、世界で一番早くに海の藻屑になったはずの信濃が『戦艦』としては幸運艦とはな……」

 

「変えすぎじゃないですかね」

 

「M動乱で大損害を受けたかららしいが……これでは、造船界の宛は外れたな。皮算用していたらしいからな」

 

「砲熕型艦艇の艦橋にステルス性は必要ないのでは?」

 

「連中は売り込んでいたらしいからな。ミサイルの被弾率低下のためとか言って」

 

彼らの言葉からは、造船界が防衛省に何かかしらの売り込みを図っていたことがわかる。ちょうど、日本に駐留する艦隊の旗艦が交代する時期だからだろう。当時、扶桑海軍全体の世代交代が起こり、水偵の陳腐化でヘリコプターが重要装備に登り詰め、旧来型巡洋艦や戦艦の艦載機運用装備が無用の長物化した事に伴い、日本の防衛当局は扶桑に近代化改修案を打診していた。だが、財務当局の横槍で多くが頓挫した。彼ら曰く、『大正時代や昭和初期の古い巡洋艦を無理に改造するなら、戦後の大型化した護衛艦に装甲を付与したモデルを造るべし』であった。これはいくらなんでも不可能であった。結局、巡洋艦は『安く、大量に揃える軍艦』とする財務当局のアメリカ式認識が否定された事もあり、政治判断で『一等巡洋艦として、当初より設計された艦の強化発展型とする』という妥協案が通り、『史実での摩耶を基本とする』という事になった。伊吹型が巡洋艦で落ち着いたのは、旧来型の老朽化が想定以上に進行していたからである。

 

「しかし、伊吹型は結局は巡洋艦のままか」

 

「空母にしたとしても、早晩に旧式化しますし、ヘリ空母にするにも、巡洋艦の船体では小さすぎますからな」

 

「妥協の産物か」

 

「ええ。そもそも、伊吹型自体、最上型の改良に過ぎませんからな」

 

この頃には、水雷装備の復権に伴い、巡洋艦は水雷装備の常備が当たり前に戻っていため、居住性と航続距離と言った性能と攻撃性能のバランス取りの難しさが取り沙汰されていた。扶桑海軍の将兵は『欧州への遠征がほぼ必要なくなったからって、無理に水雷装備を復活させんでも…』と考えていたが、元々、水雷突撃を前提に建造されていた日本巡洋艦はM動乱で『打撃力不足』を露呈。結局は打撃力の担保のために、水雷装備は復活した。撤去したものを戻す事に反対した将兵もいたが、結局は戦局の推移で受け入れていった。そのため、巡洋艦は『日本の巡洋艦は脆いし…』という大衆の偏見に晒される事となり、戦艦に比して冷遇されていた。その払拭に『超甲巡』は役立つと思われたが、船体規模から『もう巡洋戦艦で良くね?』という意見が主流となってしまい、巡洋戦艦という枠組みに当てはめられてしまった。それに伴い、装甲厚や武装の大半が戦艦に準ずるモノに統一されたが、元々が巡洋艦であった名残りにより、水雷装備は残された(これはアイオワ級との遭遇を日本側が異様に恐れたため。アイオワ級に抵抗できるだけの力を持たせようとしたのだ)。

 

「超甲巡は巡洋戦艦に分類し直しだそうだね?」

 

「はい。国会でも『長門より大きいじゃないか』と指摘され、財務当局が削減を目論んだ結果の妥協だそうです。

 

「紀伊型と加賀型は退役かね?」

 

「上陸支援艦や航空戦艦の実験に回されたようです」

 

「史実より艦齢が若かったのが幸いしたか。大和型のような『重戦艦』のみが戦艦ではないのに」

 

その大和型も『砲塔が敵新鋭艦より少ない』という指摘がされたため、後継では『三連装砲塔四~五基』に増やされている。最も、46cm砲をリベリオンが搭載するだろうという懸念は扶桑側にもあり、『怪異への将来的な打撃力の維持』を大義名分に、『大和型後継の新鋭戦艦の素案』を練っており、地球連邦軍の力と政治情勢を利用し、その実現に至っている。地球連邦軍にとっては『アンドロメダ級に代わる新鋭宇宙戦艦に採用予定の装備の実験』のいい場所であったが、ソナー手の育成を久しくしていなかった扶桑にノウハウを提供し、戦艦を建造してやることで、『魔女の世界』に確固たる基盤を得たのである。

 

「戦後の大衆は旧軍の逆張りが正しいと思いこんでいますからな。

 

「まったく、大衆は三八式だけで戦ったと思いこんでいるからな。アメリカのような機関銃のバラマキ戦術など、英国でも取れんというのに」

 

日本の大衆は扶桑の国力をフル稼働させ、アメリカのように『圧倒的な火力による兵員の殲滅』を志向させようとしていたが、日本の軍隊はそのようなドクトリンで人員を育成していない。武子がその典型的な思考の持ち主だ。武子は『扶桑海の隼』という渾名を持つように、先祖に熊狩りのマタギがいた家系であり、どちらかというと狙撃手の特性を持つ。転生前は圭子がその役目を担ったが、転生後は武子が『正確な射撃』で名を馳せた。そのため、アメリカ流のバラマキ戦術を嫌う傾向にあった。圭子からは『ドケチ野郎』と呆れられているものの、射撃に一家言があるのである。

 

「そういえば、統括官のところの加東閣下が直に空自を視察なされるとか」

 

「何、あのインドシナ半島かどこかで殺し屋稼業をしてそうな御仁が?まさに兵隊やくざだな…」

 

圭子の言動は転生後はとにかく粗野であり、タバコも咥えているなど、カタギには見えない風貌の持ち主として知られている。素の容姿でも目つきが悪くなっていたため、彼女の与える印象は『殺し屋』、『兵隊やくざ』だの散々である。そのため、B世界にいた『桂子』が天使なら、A世界の圭子は『戦闘狂の狂人』とも形容され、B世界の魔女たちに恐れられている。

 

「あの方は兵隊やくざだからな…。とても、カタギには見えんよ。あれで中将だというのだから……戦場で手柄を立てて上がったとしても、恐ろしい人だ」

 

「我々からすれば、狂人とも言えますが、戦時はああいうタイプが出世するんでしょうな」

 

「あれで本当に大正の生まれなのか?感性は完全に現代人だぞ」

 

「はい。1919年の生まれだそうで……」

 

「関東大震災より前だぞ?その時代の生まれなのに、なぜあそこまで垢抜けているのだ?」

 

圭子は私服の服装が完全に21世紀以降でも露出多めと言われるであろうもので、ホットパンツとタンクトップである。アフリカ戦線に参加していた時期の末期には、既にその格好であり、史実では戦闘服を通していたので、その差も気質の変化を示している。また、史実ではマルセイユに翻弄され気味であったが、この世界では、本性の判明以降は従順になっている。なんだかんだでマルセイユが怯えまくった名残りである。

 

「あの方には謎が多いですから。ゲッターロボを動かせますし。それも真ゲッターロボ級を」

 

「何、あのわけがわからんくらいにイッてるような危ないマシンを?統括官といい、扶桑の魔女は化け物しかおらんのか??」

 

凡人も多いのだが、才ある者は時代を変えるレベルの天才である事が多い扶桑。黒江もゲッターロボに乗れる事は通達されているので、自衛官らは『ゲッターロボに乗れるのはバケモノか、バカだ』という認識を全員が共有するに至っていた。

 

「例の世界でのゲッターロボはどういう順で存在するのだ?」

 

「順当に、ゲッターロボGの後に真ゲッターロボが開発されているようです」

 

「真ゲッター……あんなバケモノが生まれるとは思わんだ…」

 

と、真ゲッターロボを形容する幹部自衛官だが、その真ゲッターロボとて、ゲッターロボの中では、良くて中堅所なのである。ゲッターロボアーク、真ゲッタードラゴンなどが控えているからだ。

 

「あの世界(未来世界)の真ゲッターロボは普通の人間には過ぎた代物です。ゲッターに選ばれた人間以外は廃人になりますから。ですので、我々が訓練して、乗れるとしても、ドラゴンが限度です」

 

「ゲッタードラゴンか。私の子供の頃は最強のゲッターロボとされていたんだがねぇ…」

 

「続編が増えれば、そうもなります。ゲッターロボは性能のインフレが激しいですから」

 

「マジンガーはどうなのだ?」

 

「あれもインフレが……」

 

「どうなっているのだ。マジンガーZの時点で空母打撃群の発揮できる戦力と同等だろう?」

 

「グレートマジンガーはその四倍、グレンダイザーは地球製ではないですが、やや上ですからね。対外的に日本製と言っているのは同じですね」

 

未来世界に実在し、彼らもダイ・アナザー・デイで目にし、資料を渡されたスーパーロボット。連邦軍の一般MSが雑兵なら、彼らは一騎当千の武将。それほどに戦力差がある。なお、彼らが基準にしているのは、初登場時点での性能なので、Zの新造された2号機であれば、90万馬力を凌駕するパワーを誇る。これは技術の進歩によるものだが、レディーロボットとの性能差が広がりすぎたので、マジンガーエンジェル計画が実行され、ハニーはそのテストパイロットとして、弓さやかに協力していた。

 

「やれやれ、扶桑の連中はソルティックを採用したのか?」

 

「反地球から野比財団がパテントを買い取り、骨川コンツェルンに製造を委託していると」

 

「やれやれ。財務省の連中がみたら泡を吹くぞ。ヘリで吊るして運ぶなど……」

 

彼らの頭上を、ラウンドフェイサー(ソルティック)を運搬する扶桑陸軍のヘリが通過する。ラウンドフェイサー(ソルティック)は二足歩行タイプのコンバットアーマーの嚆矢である。ガイアからパテントを買い取った野比財団と骨川コンツェルンの手で改良が加えられ、扶桑陸軍の軽戦車に代わる騎兵出身者の乗り物として台頭している。無論、最初期の二足歩行型であるので、故障も多く、軍部は早期に次期コンバットアーマーを模索中である。その最有力候補が『アイアンフット』(ヘイスティ)である。扶桑陸軍はMSほどの複雑さと大きさは求めていなかったので、コンバットアーマーがその座についたわけだ。

 

「野比財団は改良したのか?」

 

「ガイアのものと違い、MSの部品で構造の頑強化に成功したようです」

 

「そうでないと困るよ。アニメだと、一発でボカチンしていた機体だからな」

 

「マスコミの連中に見せたいくらいだよ、差止めさえされてなければ」

 

「報道されたら、マスコミが無駄使いとあげつらうでしょう?」

 

「全く、チトやチリをおもちゃと揶揄しといて……」

 

四式戦車と五式戦車は登場時期が1944年と45年であったので、マスコミからは日本陸軍のホビー扱いであった。だが、四式は砲塔バスケットが採用されていないだけで、扶桑陸軍としては高性能な中戦車であった。五式も砲塔バスケットが採用され、扶桑戦車としては最新であった。それらをホビー扱いされた(いずれもカタログスペック上はM4中戦車を上回るのだが)扶桑陸軍は五式を陸自の61式相当にまで性能を引き上げつつ、当時に最新の英戦車『センチュリオン』を大量に購入し、当てつけとした。しかも、その性能は最初から最終生産型相当のもの。扶桑の要請にブリタニアが応え、先行生産という形で与えたのだ。

 

「センチュリオンの存在に、陸自はどよめいているよ。日英同盟が続いとる世界だから、供与を要請できるとはいえ、最初からオードナンス L7を積むなど……。反則もいいところだ」

 

「1940年代なら、20ポンド砲で充分な戦闘力が得られる公算ですから。財務省のケチぶりを彼らも知ったのでしょう。我々も既存の部品を流用できますし」

 

「それはいいのだが、いきなりの105ミリだぞ?国産戦車派が大慌てだそうだ」

 

「61や74は待ち伏せ前提の設計ですから、いいんじゃありませんか」

 

「彼らは外征も想定しているからと?やれやれ。バブル期があと5年続いていればなぁ」

 

「どういう事です?」

 

「統括官の独占なされているメーサー兵器、あるだろう。バブル期があと数年でも続いていれば、一般部隊にも配備される見込みだったのだ」

 

「初耳ですな」

 

「バブル期の終わるちょっと前の時の陸幕が夢見た編成構想だよ」

 

彼はその時代の若手であった世代の自衛官なのか、メーサー兵器の存在を知っていた。ここで、メーサー兵器は主に『日本に金があった時代』に研究・開発が終わった兵器である事が語られる。

 

「ゴジラとでも戦うつもりですか」

 

「当時は冗談半分で、そう言われていた。真の目的は……おそらく、学園都市への逆襲用だろうな」

 

「やはり」

 

「当時は金があったからな。レスキュー隊にオーバーテクノロジーをふんだんに用いたパワードスーツが回されるほどだった。学園都市の物よりも遥かに高性能な代物が、な」

 

それは特警ウインスペクターに始まる、三大レスキューポリスのことだ。バード星由来のオーバーテクノロジーを用いたパワードスーツが制作(ウインスペクターのファイヤーのものは機動刑事ジバンのサポートドロイド用に用意されていたボディの外装を流用して制作されたが)された。

 

「それがどうして、ススキヶ原も満足に守れんくらいに堕ちてしまったのか。プリキュアや統括官らの厚意に甘んじていては駄目だというのにな。情けないよ、この国は」

 

役人もだが、政治家にも、その責任の一端があるといえる。特に政治家は『当時の超技術の遺産が一つでも残っていれば、自警団の結成など起きなかった』と警察官僚が述べたところ、『当時にちゃんと説明しなかった君らが悪い』の一点張りであったからだ。とはいえ、この時代には既に『街の名士』であるはずののび太の嫡子が度々、命を脅かされ、それを守るのが警察でも、自衛隊でもなく、プリキュアやヒーロー達であるという事実は公権力に属する人間には堪えるのだ。

 

 

 

「プリキュア達は『初期世代は既に成人している』とはいえ、変身した姿は現役時代のままだ。当然、アイドル扱いもされるが、ダイ・アナザー・デイでは『修羅』となり、戦線の崩壊を食い止め、数人で一個師団の歩兵を返り討ちにしていた。我々には堪えたよ」

 

彼は黒江の指揮下の幕僚として、ダイ・アナザー・デイに参加していたらしく、ドリームやピーチが単騎で敵師団と真っ向から戦い、必死に戦線を支える姿を、自衛官として目の当たりにしたようで、自分は(戦うには)既に歳を取り過ぎていたことを自覚したのか、寂しそうな表情であった。

 

「私に子供がいたら良かったんだが、女房との間に子供はできなんだ。あの子達の姿を見ていたら、自分が歳を重ねたのを自覚させられてね。子供の頃は仮面ライダースーパー1に憧れ、ジュニアライダー隊にいたんだが……彼らが活動を再開する頃には、自分は彼らの(外見)年齢を遥かに超えてしまっていた…。統括官の下にいるのは、子供の頃を思い出すからだよ。気が若くなれるからね」

 

その幹部自衛官は仮面ライダースーパー1の現役時代に子供であり、1990年代前半には青年層であった世代であり、2020年代には退官がそろそろ近づいてくるような年齢を迎える。2023年時点の階級は将補。ダイ・アナザー・デイでは一佐であったが、その後に昇任したという。

 

「それに、少しでも、彼らと彼女らの楽に立てる。そう考えているからだよ」

 

そこで彼はタバコに火をつける。彼は幼少期の体験から、ヒーローユニオンやプリキュアの活動に肯定的であるようであった。

 

「あの子達はどうして、我々の前に?」

 

「さぁな。わかるのは、『英雄』が必要とされるような情勢からこそ、彼女達は『呼ばれた』のだろう。あの人(沖一也)は昔に言っていた。時代が望む限り、俺たちは死なんと……彼女らもそうなのだろうな」

 

名も無き自衛官達の会話は、当時の日本の公権力に属する人間達の本音を代弁していた。そして、複数の夢原のぞみが実感している事を。『誰かが望む限り、英雄は死なない』。それはのぞみが現役時代に望み、仮面ライダー達が『自分たちの生きるべき時代をとうに超えてしまっても、地球を守り続ける』事の理由の一端。のぞみも『自分がいた世界とは違う世界を守る事の意味をダイ・アナザー・デイから探し続け、デザリアム戦役で見出した答え。それは『はるかなる愛にかけて』。それは仮面ライダー達が戦い続ける理由の一つであり、のぞみ(キュアドリーム)が不幸な前世の後半生で失い、転生で取り戻したものを表していた。

 

 

――この命をはるかなる愛にかけて戦う。それだけでいい――

 

――それは仮面ライダー達の見出していった一つの戦いへの回答であり、のぞみがたどり着いたもの。往時の仮面ライダーを知る世代の警察官や自衛官たちが組織の中で見出そうと苦悶したもの。その言葉こそ、地球人の行動原理の一つである『愛』であり、『白色彗星帝国』のズォーダー大帝が否定しようとしたものであった――

 

 

 


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