――結局、ウィッチ世界の軍事優先傾向の強い文化は次第に淘汰され、次第に軍ウィッチの職業化が進んでいった。また、非戦闘ウィッチの軽視が進む事を憂いる声が大きくなったが、大抵の治癒ウィッチは応急処置レベルの処置が限界であるし、ウィッチによる慰問も『慰問』という言葉が禁句も同然に扱われるようになると、次第に文化ごと衰退していった。その代替に用いられたのが、サウンドエナジー値の高い人員に慰問業務を兼任させるということだった――
――64Fは追加メンバーも含め、全員が文化的才能に恵まれていたため、死産に終わった『ルミナスウィッチーズ』の代替としての役目も自然と背負わされていった。その補強に一役買ったのがウマ娘たちである。64Fの人員はプリキュアも含め、前世で本職であった者も多数が含まれているため、そのレベルは本職に見劣りしなかった。これにより、軍ウィッチになることのハードルが高いと認識されたため、『まずはMATに応募、入隊し、そこで育った後に転職する』というケースが数十年間のトレンドとなる。世間への露出の多い部隊がそうだと、一般人はそう認識するという好例であった。逆に、一般パイロットは人手不足もあり、多数の応募がなされるのが通例になりつつあった。レシプロからジェットへの転換期であった時期だが、ちょうど空母の世代交代期になりつつあったためもあり、多くは予備人員の確保も兼ねて、そのまま採用される。米軍式の育成法に切り替わったためだ。空母機動部隊は熟練兵が空軍の設立に伴う混乱で空軍に移管されたために、人員の育成し直しにされた事も大きかった――
――井上成美が史実の見解によって、海軍軍人としての見識を疑われ、海軍軍人としての立場を失った結果、逆に海軍艦艇の整備がつつがなく進んだという皮肉じみた結果となった。彼は大物であったため、そのまま失脚はせず、空軍へ移り、空軍の育ての親の一人となった。ただし、負の遺産として、基地航空第一主義の結果、空母航空隊が見る影もなく弱体化したという問題がのしかかった。この制約により、熟練兵が多い空軍を酷使するしか方法がなかった。井上本人も日本側の武官に『あの提言は1930年代末に書いたもので、その後のことは反映していない。一回負けたからと、全てを否定するのか、君たちは!!』と弁明しつつも反論している。優秀な教育者ではあるが、軍人としての統帥能力は実のところは低かったのも事実なため、彼は空軍でのキャリアを教育と事務方で終えることになる。『航空母艦は運動力を有するから使用上便利ではあるが、極めて脆弱である。故に海軍航空兵力の主力は基地航空兵力であるべき』という提言が史実の太平洋戦争の結果で全否定されたことは(エセックス級の威力もあって)凄まじくショックだったようで、彼が空軍に移籍する理由となった。(ただし、空母航空隊の否定ではないと弁明している)――
――太平洋戦争と朝鮮戦争の史実は、扶桑の軍備整備に多大な影響を及ぼした。空軍の設立に伴う海軍基地航空と陸軍航空の統合による『独立空軍』、弱体化した空母航空隊の再整備、ジェット戦闘機への革新に伴う空母の少数精鋭化、潜水艦の攻撃用途の切り開きなどであった。空母航空隊の弱体化は由々しき事態であり、ダイ・アナザー・デイでの主力となったパイロットは義勇兵である。それから四年後の時点でも、使用機種がコロコロと変わる影響により、育成は捗らない有様であった。とはいえ、F-14などの配備でようやく安定したため、ここからは徐々にパイロットになる人数が増加していった。潜水艦はM動乱以降の活躍で一気に主力へ上り詰めたが、多くはウィッチ運用艦として改修されていたため、その装備をまた取り除き、静音性の向上や巡航ミサイル発射の実験に供された艦も存在する。ただし、反対も大きかったので、一部の大型潜水艦は静音性と武装の改良の上で、そのままウィッチ母艦として使われた。また、扶桑の国情として、ユーラシア大陸領の殆どの奪還が諦められた時期であるため、陸軍は相対的に縮小されていくが、太平洋戦争で必要なため、現状維持はされていくのである。怪異からの避難誘導等で人数が必要なためで、機械化の進展は意図的にゆっくりにされたが、逆に海外産の装備を持つ部隊が増加する有様となり、国産兵器の入り込む隙間が無くなると大議論を呼んだ。結局、他国の有志から提供された装備は『員数外』とすることで軍需産業の要望との兼ね合いが図られたが、結局、国産兵器は限られた分野でしか、現場で用いられなかったため、扶桑の軍需産業は相対的に縮小していく事になる。また、軍需産業の規模縮小で、民間移管で廃止予定であった工廠設備が(軍の需要を満たすために)存続する事になる。――
――扶桑皇国で軍隊が嫌われ者となるのに、さほどの時間はかからなかった。だが、その一方で、ウィッチがいなければ、社会生活の安定は保てないというジレンマがあり、それに配慮した日本政府はMATを設立させた。それは扶桑ウィッチ社会を二分することになり、逆にウィッチ世界のの社会における問題点を浮き彫りにした。1945年の粛清人事で多くの中堅層が軍から去ったため、その後を支える古参世代が相対的に『ウィッチ社会の特権階級』と化しつつある。仕方ないが、社会規範の変革で『10代前半で前線に出る』ことがなくなり、普通の社会がそうであるように『10代後半は青二才』という認識が生まれたため、ウィッチとしての従軍を花嫁修業の一環として捉えていた農村部の反発に遭い、世代交代が余計に起きにくくなった。黒江たちも『戦争が終われば、どっかの基地の地上勤務になるだろう』と、たかをくくっているところがどこかにあったが、のぞみの一件の後は『定年まで戦い続けること』を受け入れている。日本と扶桑の人々が突きつけたことは『存在し続ける限り、力を持つ者は愛するものを守るために戦え』というもの。この事の突き付けが『MAT』という組織の勃興を起こすが、猟友会と警察をミックスしたような同組織にはやれることに限界があり、同組織が『組織としての全盛期』を終える頃には『国家後援のウィッチ育成組織』の顔も持つようになる――
――ウィッチは『長くて、12~3年』と言われるほど、戦士としての寿命が短かったため、体系だった教育方法は存在しなかった。それを変えようと、集団戦などが模索されていたのが、事変世代が引退し始めた1940年代。だが、ダイ・アナザー・デイとクーデターの混乱で、せっかく育った世代が『追放』され、新人は再教育となったため、現場を古参兵が支えるしかなかった。折悪くも、ストライカーの構成理論も世代交代期となっていた上、戦争勃発。結局はエースの個人技が物を言う時代に逆戻りしてしまった。同程度の兵器があれば、最後に個人の技量差が物を言うのは不変の真理だった故、ウルスラの目指した『ジェットストライカーによる高速戦闘と一撃離脱』は机上の空論に過ぎなかったわけだ。(転生者ながら、ウルスラがあまり出世しない理由は『敵が強大無比なのに、技術チートを嫌うから』だが、ウルスラは『自分たちで模索して、答えを出すことが肝要なのに』とふてくされている。(このカタブツぶりは子には遺伝せず、逆に技術チート上等なノリに育った。ウルスラはカールスラントの絶頂期を体験し、科学立国という自負を持つのに対し、娘は国が零落した後の時代を生きてきたからである。)ウルスラの娘は(カールスラントでは、仕事がめったにこないため)扶桑の軍事プロジェクトに度々参加し、収入を得ているため、母を『昔が忘れられない道楽者』と評しているという。ウルスラはカタブツなため、日本連邦の技術チートを快く思わない。自身の子が技術チート上等な姿勢で出世してゆく未来は、ウルスラには『皮肉な未来』であった。また、ウルスラが技術チートの容認をしだしたのは、扶桑の戦局が膠着状態となったことを重く見たためと、敵がカールスラントへ容赦なく、21世紀型の巡航ミサイルを打ち込みまくったためで、流石にそれへの対処が必要だったからだ。後世、彼女はその批判を受けることになるのだった――
――扶桑は人的・物的混乱から抜け出せず、64Fに集めた精鋭に依存していた。その関係上、同部隊に戦果が集中するのは避けられなかった。しかし、彼等も苦戦する敵が現れるのが世の常。仮面ライダースーパー1の仇敵『テラーマクロ』もその一人。ウィッチ世界にいるプリキュアに加え、シンフォギア装者(A世界。なお、立花響はこの時はプリキュア側で参戦)も迎撃に参加したが、元々が拳法の達人であったテラーマクロはこの迎撃を難なく凌いだ――
「なにィ!?ミサイルの軌道を逸しやがったぁ!?」
テラーマクロ(人間態。怪人態のカイザーグロウにはなっていない)は歴代プリキュアの大技と雪音クリスの全力射撃を難なく受け止め、掌底でクリスの放った大型ミサイルの軌道を逸し、空中でぶつかりあうようにして無力化する。そして、クリスの脇腹に全力の正拳突きをぶつけ、悶絶させる。(改造人間のパワーでの正拳突きなので、シンフォギアのバリアフィールドも衝撃の完全な軽減はできなかった)
「グ、グフォ……」
その場で反吐を吐いて、倒れ込んで悶絶するクリス。次いで、キュアビートとキュアウィンディが同時に攻撃するも、全ての攻撃を避けられる。伊達に赤心少林拳の独自流派を一時的に開いていたわけではなく、テラーマクロは二人の猛攻を避けきり、逆に反撃を加える。
「こ、このパワー……私たちに、一撃でここまで……」
「赤心少林拳の一流派を率いていた時期もあるのでな。……小娘共、そこをどけ」
テラーマクロは山伏のような格好をした、ひげもじゃの壮年の男性の姿を取っていた。だが、その戦闘能力はプリキュアの平均値を遥かに凌ぐ。キュアビート、キュアウィンディの攻撃を軽くいなし、更に殴りかかってきたキュアグレース(プリキュア化した立花響。本来と違い、完全な徒手空拳での戦闘が可能)も加えてもなお、全てがかすりもしない。
「勢いやよし。……だが、それだけではな」
鼻を鳴らし、テラーマクロはウィンディの蹴りを片足で、ビートとグレースのダブルパンチを右の拳だけで受け切る。グレースのパンチにはガングニールの力が上乗せされていたが、それすら受け止めたのだ。
「フ……、小娘。ある世界の聖遺物に近いもの力を持つようだが……それだけでは、儂は倒せぬ」
「ガングニールを知ってるの…!?」
「そうだ。だが……それはある意味では『歪んだもの』だと言っておこう」
グレースにそういうと、テラーマクロはグレースの顎を思いっきり蹴り上げる。ビートもその次の瞬間に掌底を食らわせられ、立てなくなる。辛うじて、調がサンダーブレークを浴びせるが、彼の持つ特殊能力で効果がなかった。それどころか、彼の真の姿をさらけ出すだけであった。
「その姿は…一也さん(仮面ライダースーパー1)が倒したという……カイザーグロウ!!」
「そうだ。我はドグマ王国の支配者にして、かの方の宿願を果たすための使者なり!」
悠然と構え、そう宣言するカイザーグロウ。カラス型の改造人間で、いささか不格好な姿だが、ある魔術の効果で不死身のボディを持っており、スーパー1の協力者の多くを抹殺、沖一也も死を覚悟したほどの強敵である。再生怪人は生前のガワだけを再現したケースが多いが、バダンの時空魔方陣で蘇った者は生前の能力を有する。そのため、プリキュアと装者の攻撃をものともしないのだ。
「おい、知ってんのか!?」
「スーパー1がなんとか倒せたくらいの強敵です!あいつは不死身の体を持ってます!」
「でも、倒せたって事は、どっかに弱点があんだろ!?覚えてねぇのか!?」
「聞いたの、随分前なんですよ!今すぐには……」
調はうろ覚えであったが、彼の弱点はカラスが止まっている方の肩の部分。そこだけは本来の脆弱性が残ったままだが、それ以外の箇所にはどんな攻撃も無効化するという。
「クソッタレぇ!!」
クリスはやけっぱちでガトリングガンをダブルで乱射しつつ、太ももの装甲から小型ミサイルを放つ。だが、カイザーグロウはミサイルを翼の羽ばたきで散らし、自身の超能力でガトリングガンを強引に止める。
「くそ、なんかの手品か!?」
普通の銃と違い、装弾不良など起こさないはずのアームドギアが機能を停止する。引き金が動かなくなり、用をなさない。クリスはガトリングガンを捨て、ボウガンを生成しようとするが、これもできない。
「ギアのエネルギーを武器に固定できねぇだと!?嘘だろ!?」
「奴の超能力か!このまま戦っても、こっちがジリ貧だ…、私とウィンディで時間を稼ぐから、皆は後退しろ!必殺技を浴びせれば、足止めくらいにはなるだろう」
「やれるのか!?」
「それくらいの余力はある。一太刀くらいは浴びせんと、名が廃る」
「こんな時に、先輩みてぇな武士道って奴か?」
「そうでなくとも、一撃くらいは反撃しないと気がすまん。そういう事だ」
カイザーグロウは大幹部級の怪人である。姿は不格好だが、ある箇所以外の攻撃を全て無効化する。その威力は、仮面ライダースーパー1すらも、ほとんど手も足も出なかったほどだ。ビートとウィンディの即興での合体攻撃も足止め以上の効果を持たない。この後、調から連絡を受けた沖一也(仮面ライダースーパー1)はウィッチ世界へ急行したのだった。
――こちらはナリタブライアン。本職のプリキュアではないが、領域というウマ娘特有の技能(意図的に超集中状態になる事で、ウマ娘の能力を限界まで引き出すもの)を戦闘に転用することで、驚異的なパフォーマンスを発揮した――
「悪いが、加減はせんタチでな。これで終いにさせてもらう」
領域を戦闘用途に転用し、気を掌に集中させる。意外とノリの良い側面もある(そこは親類であるトップロードに似ている)のか、意外にきちんと技名を叫んだ。
『ファイナル・シャインアタァァック!!』
左の掌から緑色の気功波を放つ。ゴッドガンダムやマスターガンダムがそうであるように、『機械越しに気功波を放つこともできる』ため、ある一定以上の能力を持つプリキュアも同様の事ができるのである。(最も、『中身は別人』だが)
「冥土で、閻魔さまにでも裁いてもらえ」
意外と博識なところを見せるブライアン。こうした事の積み重ねが『次元世界全体で伝わるキュアドリームの人物像に差異がある』事につながるのである。また、ブライアンは幼少期にドラゴンボールシリーズを視聴した経験があるらしく、その場の思いつきで技を撃ったらしい。
「ガキの頃はこういうもんに憧れたものだが……、ビコーの奴の気持ちもわからんでもないな」
同期のビコーペガサス(ビコーペガサスは性格や態度が子供っぽいため、実年齢より幼く見られるが、意外なことに、ブライアンの同期である)のことが頭に浮かび、ふと口にする。
「ルドルフの奴も楽しんでいるようだが、あれは素を出しているようなもんだな。エアグルーヴも面食らっとるはずだ」
ルドルフもキュアハートに無理を言って、入れ替わっている。そちらは(ルドルフが役職を辞し、責務から解放された事もあって)ルナと呼ばれていた時期の幼さが表に出ている。ルドルフも色々と『王者に相応しい振る舞い』を強いられた時期が長いので、周囲の目がなく、ごく親しい者の前では子供っぽさの残る素の性格を見せる。テイオーと共通点が多いため、そこは前世での親子関係による縁だろう。(ちなみに、ルドルフのサイアーラインは自身とテイオーが不調であったことで絶える寸前だが、エアグルーヴは子のアドマイヤグルーヴも成功し、ドゥラメンテを生むなど、21世紀まで繁栄を謳歌する『華麗なる一族』となっている)
「エアグルーヴはアドマイヤグルーヴ、ドゥラメンテと『次代が続く』ことが約束されているが、私はいないからな…。ウォッカが間接的に継いでくれたが……、できれば、直系を残したかったものだ」
ブライアンは種牡馬生活が晩年の数年の身であった上、サンデーサイレンスの種牡馬としての最盛期とかちあったため、三冠馬でありながら、シンザン以降の歴代三冠馬で唯一、直系(父系)の子孫を残せずじまい。(自身の早世もあるが)そこも地味にコンプレックスらしく、現役を続ける理由の一つだったりする。
『な~に、感傷に浸ってやがる』
「ゴルシか。仕事は終わったぞ」
『いいネタしやがって。動画あげとくぞ』
「撮ってやがったのか?」
『まぁ、どっかのバカが勇んで、アップする事もあるから、先手を打っとくだけだ。プリキュアってのは、ある程度はイメージを守る必要もある商売だからな』
ゴルシは口八丁でブライアンを納得させ、その日の内に、自身の動画チャンネル『ゴルシちゃんねる』に動画をアップする。学園都市崩れの『無駄に装備のいいチンピラを、ファイナルシャインアタックで始末するキュアドリーム』という絵面はミスマッチ感もあるが、元から『プリキュアはエネルギー波を撃てるものである』という不文律と認識があるので、意外に反応は良かったという。
「気功波はこの体の持ち主のあいつがなし得ていないと聞いてるが」
『まぁ、気の制御はある程度の熟練がいるからな。数ヶ月かそこらで身につかねぇよ。お前は元々、トレーニングを自主的にしてきたんだろう?それが巡りに巡って、撃てるようになってたって事だな』
「特別なことはしてきてないがな。しかし、ビコーペガサスとカワカミプリンセスの奴にはいうなよ?絡まれると面倒なんだよ」
『まぁまぁ、あの二人もかわいいもんだ。カワカミの奴はエアグルーヴのほうが胃が痛いそうだ。最近、学園でなにかあると、たいていはあいつがやらかしてるから』
「昔のドラマじゃあるまいし……」
カワカミプリンセスは、その有り余るパワーであちらこちらを破壊しまくるため、エアグルーヴの最近の頭痛の種である。それでいて、オークスと秋華賞の勝利経験者と、けして実績のないウマ娘でないというところも、エアグルーヴの頭痛の種である。
「奴が何の実績もなけりゃ、あいつが相手する必要もないが、あいつはエアグルーヴの何年か後のオークスで勝ってて、エアグルーヴがなし得なかった秋華賞の勝者でもある。史実を鑑みると、キングヘイローの代表産駒だしな。そろそろ、あいつのことの調査の進捗状況が報告されるだろう」
『どこへ行ったんだ、奴は』
「アメリカに渡ったらしいことは掴めた。奴の実家のクルーザー(外洋航海可能な規模)がサンフランシスコに停泊してるのが確認できた。奴の両親の思い出の地を巡っているんじゃないかと、奴の親の同期の人から聞き取り調査ができた」
「ハルウララを、いつまでごまかすつもりだ?」
『わからねぇ。だが、ハルウララを泣かすわけにもいかないだろうが。とにかく、エルコンドルパサーとスズカは口止めしといた。これからウォッカに入る』
「カレンチャンとファル子に協力を仰ぐか?」
『今、そのメールを生徒会名義で打ってる。会長の名で連れてくるか?』
「ルドルフと私の名を使ってもいい。とにかく呼べ。ハルウララを泣かせたら、色んな意味で学園が危ない」
『分かった。大事になってきたな…』
ブライアンもハルウララが学園の清涼剤である事をよく理解しているため、生徒会の総意として、キングヘイローのことは伝えていない。ただし、学園の建物は傷心のカワカミプリンセスが壊しまくったので、あちらこちらで修繕中である。
『あ、体育館に大穴空いたぞ』
「なにィ!?カワカミプリンセスのバカか!?」
『今、生徒会の末端の役員から連絡が入った。案の定、カワカミプリンセスがバスケのゴールを倒して、壁に大穴が……』
「エアグルーヴには?」
『今はやめとこう。これ以上のショックを与えたら、胃潰瘍で入院しちまうよ』
ゴルシは動画配信の編集作業と生徒会役員の業務を並行して行っているようだ。また、ゴルシの口ぶりから、エアグルーヴの胃は胃潰瘍寸前の状態なことが窺える。ルドルフが羽目を外しすぎるなど、ルドルフや協会の上役でもあるTTGの三人との折衝など、彼女一人では回しきれない悩みごとがもっぱら多いからだった。