ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

461 / 787
前回の続きです。


第三百八十話「ナリタブライアンの選んだ役目と、扶桑の状況 3」

――結局、扶桑皇国は反戦の風潮が生じたものの、怪異という現実的な脅威があるため、史実ほどのムーブメントとはならなかった。妥協的に、軍と怪異駆除の分離が試みられたが、現地の混乱のもとになったため、『就職の選択肢を増やしただけだ』と開き直るしかなかった。しかし、現実問題として、相手側からの戦争で領土を取られては、自分らの生存権に影響が生ずる。それが扶桑の応戦理由である。国力差があるからと、防衛戦まで放棄することは、ウィッチ世界では死を意味するからだ。故に、技術チートは政治的に歓迎された。ウルスラは技術者として歯止めをかけようとしたが、自国が巡航ミサイルによる爆撃を被ったために、口を慎むしかなかった。最悪、宇宙戦艦に地上を焼き払われる可能性が出たからだ。また、この頃にジオン残党から生物兵器『アスタロス』がティターンズ残党に提供された事も明らかになり、扶桑の上層部は徹底抗戦の意思を固めていた。未来世界で大勢が決まった『ジオン独立の闘争』。その果てに行き着いたのが『異世界に戦乱を撒き散らす事』。故に、ジオンに見切りをつけた者達の複数がロンド・ベルに入隊した。ロンド・ベルがエゥーゴの旧ジオン軍閥が過激化した『エグム』やジオン残党の生き残りらの掃討を急速に進められるようになったのは、彼らの情報提供によるものである。そこにあるのは、異星人の襲来が『地球人』としての意識を高めたという皮肉である――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――地球連邦軍は直接的に扶桑を援助していた。扶桑に対弾道ミサイル防衛技術、MSの製造・運用ノウハウを提供するなど。国家インフラに至るまでの近代化を図った。意識の改革は100年単位の時間が必要であるとされたため、『64Fに集めた精鋭達はとことん使い倒す』。ロンド・ベルがそうであるように。64Fは実質、その一部として扱われた。ウルスラが云々言うまでもなく、異世界の脅威が差し迫っているのは事実である。21世紀世界の中露が暗躍し、扶桑を自身の国際的立場を高めるための鉄砲玉と見なす米国と日本など、様々な思惑が入り乱れており、相対的に善玉の要素が多い地球連邦を頼るのは当然の流れであった。そのため、加速度的に軍備近代化が進み、要地には防空用デストロイド『ディフェンダー』、『ファランクス』(衛星軌道の戦闘機も撃墜可能)が配置されていき、戦車より相対的に軽量なため、主力戦車の補助名目で、デストロイド『トマホーク』も配置されていく。そのため、意図的に戦争指導と兵器開発の促進を制御し、未来世界を『温存』する傾向の強いティターンズ、未来兵器を惜しげもなく投入する扶桑で対比的になっていった。それは軍備予算をなんとかして削り、福利厚生費の補填に充てたい日本の思惑が絡んだ末の結論であった。国力差を超兵器で覆せ。日本連邦の選んだ軍事施策はまさにそんなもの。その選択は未来に普遍的なものとなり、ガンダムという偶像を生む。結局、戦闘の行方を超人たちが左右してゆく時代へ回帰してしまう。アナベル・ガトー(デザリアム戦役で正式に戦死)、ジョニー・ライデンがそうであったように。色んな意味で人的資源の補充が効かない故に、扶桑は超人たち頼りの施策を取らざるを得なかったのだ――

 

 

 

 

 

――実際、扶桑は中堅層(パイロット、ウィッチ)が軍を抜けた影響で人的資源の層が空洞化し、それを補うための急速育成も規制されたため、『既に完成されている古参兵をもっと強くする』しか手立てがなく、参謀に転じていたはずの者も『思想的に問題がない』者に限り、前線指揮官にされていった。これはウィッチで特に顕著であった。また、日本的な『指揮官は前線で戦え』という風潮が連合軍を悩ましており、ミーナの更迭にも関わっている(むしろ、カールスラントは前線指揮を好む方だが…)。日本のように『指揮官先頭、率先垂範』が尊ばれるのは、近代軍隊では少ない方である。だが、日本ではそうしないと、口汚く批判されてしまうため、陣頭指揮に定評がある者達を集め、そのことの象徴としてのプロパガンダとする腹積もりだった。だが、本当に最前線で使い倒すことになるとは思わなかったのが本当のところ。教官級のウィッチを独占している事は批判を浴びたが、教育の長期化などで急速育成が不要とされたのと、なのはの一件で『エース=いずれ教官にする』図式は必ずしも正しくないということが示されたため、64Fのエースパイロットたちは(一部の経験者以外)は部内でも教官の任務にはついていない。なのはの一件は(結果的に)一石を投じてしまったわけだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――結局、エースパイロットたちを安易に教官にできなくなり、教本にできない固有技能も多かったことから、この時代に多くの技能が断絶の危機に陥る。ウィッチは我が強く、組織に迎合しないことが多いのも、社会的立場の悪化を助長した。64Fは上層部を味方につけ、ダイ・アナザー・デイとデザリアム戦役での戦果を武器に、政治の干渉を許さなかった。実際、サボタージュへの見せしめに、政治の干渉で幹部が左遷させられ、機能不全に陥ったままで、他戦線で全滅したウィッチ航空部隊は複数あった。64Fは前線部隊の模範となることが求められたため、主力、予備部隊の二つが交代で南洋の各戦線の制空任務を遂行していたが、一部隊にそこまでの任務を背負わせることには軍内で批判もあったが、戦力の逐次投入による人員の消耗を日本側が拒絶したことから、64Fを模倣する部隊の設立は叶わずじまい。比較的に同隊と良好な関係の部隊を増強し、補助に当たらせる次善策が取られた。MSの優先配備権も与えられたが、それは人員的都合で使われなかった(ウィッチとして優秀でも、機械音痴だったりしたため)。そのため、64Fが如何に奇跡的(魔法も優秀、機械の扱いもプロ)であるかが理解された。1947年以後、それもあり、軍ウィッチの志願のハードルが上がったと解釈された事も、MATの勃興に繋がった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――B世界のウィッチ達はそれぞれの仕事を割り振られていた。サーニャはA世界では『早期に退役している』ため、フリーのピアニスト、リーネとエイラはA世界の自身の影武者(1949年次のエイラは大使館の駐在武官、リーネは『特殊任務中』である)、芳佳は顔を隠しての医療任務、ミーナはA世界では顔出しを控える身なので、南洋の田舎で隠遁生活に入っていると思わせるための写真撮影、バルクホルン、ハルトマンは帰還に備えてのトレーニング。坂本は帰還後の策謀の準備に追われていた。(B世界の軍上層部の粛清の準備である。それに伴う自刃の下準備も始めていた)――

 

 

「やるの?」

 

「ああ。航空事故という形で、事前に行方を眩ませた上でな。宮藤には悪いが、許せんものは許せん」

 

「どうするの?」

 

「無用な混乱は避けたいが、連合艦隊主力の無力化は避けられんだろう。史実通りの大和で、そちらの超大和は止められんだろう。シャーリーが探り始めたから、釘を刺しておいたが……」

 

「あの子も気になってるようだしね。上の連中をどうしたいの?」

 

「悪魔の力に手を出した連中には制裁を与えんとならんからな。連中の誰かには生贄になってもらう。特にモントゴメリーにはな」

 

「こっちの彼が聞いたら、失禁もんよ」

 

「最悪、軍の上の連中に恐怖を与えんと、手出しはやめんだろうからな。怪異研究の研究所は跡形もなく消し飛ばしてくれ」

 

「まぁ、こっちでも、研究所とその周りの基地も消し飛ばしてるしね」

 

「やったのか?」

 

「私達全員の記憶が復活した後に、ストナーサンシャインで消し飛ばしたわ。地下部もあったから」

 

智子は1943年のうちに、ストナーサンシャインで怪異化研究の拠点を消し飛ばしたことを示唆する。怪異化研究はスオムスと扶桑、ブリタニアで行われていたともいい、その全てを付属の基地諸共に吹き飛ばした。表向きは弾薬運搬時の大事故として処理されたが、三つの拠点が跡形もなく、同時に消し飛ぶ事はありえない。未来兵器に飛びついた背景には、その研究が頓挫し、原爆のエネルギーを以ても、(コアが無事であれば)怪異は再生する可能性があるが故に、開発が止まった』という背景があったからだ。また、ウォーロックがそうであるように、『毒をもって毒を制す』のは大間違いであった。結果、智子たち三人は研究所と基地をそれぞれ、ストナーサンシャインで爆破。未来世界との接触の際のお膳立てを行った。怪異化研究の成果もその輸送途中で撃墜したため、A世界(今回)ではウォーロック事件は起こったものの、それ以降の研究は放棄されている。

 

「それを上層部にしてくれ。制裁として、な。私の世界は間違った方向に行きつつある。だから、それをお前達の力で正せ。犠牲が出るのはやむを得ん。ガリア革命がそうだったようにな」

 

「あんたらしくもない。なんで、名誉革命とかをモデルケースにできないのよ?」

 

「欧州のボンクラ共は……なにかかしらの形で流血をしなければ納得せんよ。いつの時代も、『闘争での犠牲』無くして、人は理解しないのだ…。ガリア革命がそうだったようにな」

 

坂本Bは上層部への怨恨が『史実ルートでのウォーロックやその後の魔導ダイナモなどの研究』を知ったために肥大化。半ば復讐鬼に近い精神状態になっていた。坂本Bは事が済んだ後に、人知れず自刃をするのを前提に、行動予定を組み立てており、もはや止めようとしても『聞く耳を持たない』ほどの心理状態であった。ウォーロックが怪異との間の子と言える『同族』を生む世界も知ったためか、坂本は連盟軍の中心を気取るブリタニア軍の粛清を決意している。

 

「いざ、粛清した後はどうするのよ?」

 

「そうだな。混乱はするだろうか、些細な事だ。どうせ、カールスラント、あるいはガリアがリーダーシップを取りたがるだろう?」

 

武人気取りで、『政治』にまるっきり無関心であるが故に、事が成った後の世界に興味がないなど、坂本の『悪い点』がもろに噴出していた。ある意味、北郷の事を割り切れなかった結果なので、智子Aは『上層部のくだらない選択が少女を復讐鬼にした』と嘆息し、対策を急ぐ。その一方で、B世界の怪異化研究そのものは約束通りに葬ってやる事は決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――2022年。ブライアンがあれこれと動き回り、シンザンの誓約書を勝ち取った事は大手柄であった。学園の自治権の保証が得られたのと同義であるからだ。その一方で、一向にキングヘイローが捕まらないことに、しびれを切らし始めていた――

 

「なぜ、キングヘイローを捕まえられんのだ」

 

「落ち着けよ。米国から出国はしていないようだし、ちょっとづつ外堀は埋まってきてる。辛抱しろ。米国は広い上、いくらインターポールとか言っても、地元警察が非協力的なこともあんだろ」

 

「21世紀にあるのか?そんな事、夜の大捜査線などの古い時代の映画やドラマの話だと」

 

「表沙汰にならないだけで、裏では残ってる話だ。フランスでも、昔の貴族とかの子孫が先祖の爵位を振りかざして、えばってる事はままあるそうだ。まぁ、あんたは留任だから、知らせておこうと思ってな」

 

「ブライアンがよく、シンザンさんと面会を…」

 

「ルドルフ会長が辞めたし、テイオーは汚いことを知るには若い。だから、あいつが買って出たんだよ。三冠の箔もあるから、シンザンさんもまともに取り合ってくれる」

 

ゴルシは生徒会のかなり上級の役職についたため、エアグルーヴとも対等に接する。自由人のような振る舞いのゴルシだが、役職に落ち着いた途端に『潤滑油』のような振る舞いになる。エアグルーヴも驚きだが、悪友のナカヤマフェスタ曰く、『ゴルシは面倒見の良いやつだ』とのこと。

 

「あんたはしばらく休め。新しい情報が入ったら、また教えっから」

 

「どうも落ち着かんのだが……」

 

「肩の力を抜けよ。ルドルフ会長を見ろ。ノリがいいから、ほとんどプリキュアになりきってるじゃないか」

 

「会長は遊ばれる時は羽目を外すからな。トウショウボーイさん曰く、『昔からだ』とのことだが…」

 

「深く考えるな。ブライアンも元の姿で、坊主の迎えに行ってるはずだ」

 

「意外に運動神経いいんだね、あの子」

 

「お目覚めですか」

 

「おかげさまで。久しぶりに、ゆっくり休めたよ」

 

のぞみが目覚めた。キュアドリームの姿だが、素が出ている。

 

「しかし、ブライアンが子供の迎えなど……意外だ」

 

「下の妹の一人が小学生くらいでな、あいつ。慣れているそうだ」

 

「ああ。そんなこと言ってたっけ」

 

「待ってください、夢原女史。ブライアンに……妹が?」

 

「うん。少なくとも、三人くらいはいるとか言ってたよ。一人はまだ赤ん坊みたいだけど」

 

それは『ビワタケヒデ』などのウマ娘だ。ブライアンは妹たちへは複雑な心境(自分と姉のような才能がないことがわかってしまっている故の苦悩がある)だが、身内としては可愛がっている。

 

「初耳です」

 

「まぁ、年が離れてるからっていってたからね。一番に年の近い子でも、まだ小学生だとか」

 

「末っ子ムーブしておったくせに、ブライアンは『真ん中』だと?……信じられん」

 

「お前はどうなん?」

 

「年の近い妹が一人いる。直に入学するだろう。だが、それは私たちに直接は関係ないことだろう?」

 

「確かにな。だが、お前には後継になり得る奴が現れるはずだ」

 

「何……!?」

 

「アドマイヤグルーヴだ」

 

「あ、アドマイヤグループ……だと」

 

「それがお前の生まれたばかりの次妹の名前だよ」

 

ゴルシに、自分の生誕間もない『次妹』の名を聞かされ、うろたえるエアグルーヴ。ゴルシの大物ムーブに圧倒されがちになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――21世紀に搬入された『戦略爆撃機:富嶽』。長島航空機が1943年前後にブリタニアの技術援助で完成させ、ウィッチ母機を主用途にするという前提で生産されていた。だが、すぐにその用途が殆ど意味をなさなくなった上、輸送機と爆撃機の需要が増したため、量産が軌道に乗った段階での生産機は『戦略爆撃機、輸送機、雷撃機の三つの兼任』を前提にされていた。初陣のダイ・アナザー・デイで主力戦略爆撃機として活用されたが、ジェット戦闘機の普及で旧式化。電子戦機、空中給油機、偵察機などに転用されていった。ジェット化の実験にも供された。戦略爆撃機そのものは陳腐化していたが、敵のリソースを削いだり、空中給油、輸送、電子戦機などの素体に有用なことから、開発と整備は継続する。博物館の展示に供された機体は、扶桑空軍が有した中でも初期に納入された機体らしく、ダイ・アナザー・デイで爆撃任務についていた部隊の塗装がなされていた。戦略爆撃機というものは嫌われ者の兵器だが、日本が構想した中では唯一、アメリカに伍する思想で生まれた爆撃機であるため、人気は高い。1949年時点では退役が始まっていたため、日本に数機が友好政策の一環で提供された。実機は魚雷搭載ラックが廃され、巡航ミサイル搭載機構に改装されていたり、電子機器搭載のために、胴体の幅が大きくされていたため、内部は変化していた。扶桑国内の雇用維持のために生産されたと揶揄されたが、1945年から数年は紛れもなく主力の戦略爆撃機であった。――

 

 

「ふむ。Z飛行機の展示展と、恐竜展が開催、か…。連れてってやる。ただし、次の試合で三得点以上だな」

 

「ちぇ、厳しいな」

 

「当たり前だ。目標がなければ、張り合いないだろ?」

 

ブライアンは姉妹の真ん中であるため、ノビスケに目標を示させ、達成感を刺激する方法を取っていた。スポーツ好きの子供は『目標を立ててやり、達成感を味あわせたほうが伸びやすいということを、自分の経験と知識で知っていたためだ(自身も現役アスリートであるので)。なお、服装は学園の制服なので、一応は高校生に見えるが、纏う雰囲気が『修羅場を潜ってきたスケバン』風なので、初見で『まともな学生』に見られなかったのが地味に効いているらしい。

 

「これでも、生徒会副会長なんだぞ?まったく、誰がスケバンだ」

 

地味に衝撃だったらしく、不服そうであった。とはいえ、ブライアンは意外に背丈が高くなく、キュアドリームやキュアピーチよりは多少高い程度。具体的に言うと、21世紀の女子高校生によくいる『160cm台』。鼻の絆創膏がそういう風に見えるのを補強したのは否めないが、気の強そうな高校生には見える。

 

「姉貴よりは、バランスいいと思うんだがなぁ」

 

と、地味に精神面のダメージを負っているブライアン。とはいえ、ハヤヒデが聞いたら、腰を抜かすこと請け合いである。ウマ娘の存在しない世界だというのに、普通に応対されたのだから。かつてのクラシック三冠馬の生まれ変わりと説明したら、やけに食いつきのいい事務員がいたので、そこは嬉しいようだが。

 

「ブライアンねーちゃんは、まだ走るの?」

 

「そうだな……。次の世代と戦いたいし、昔の借りを返したい奴もいるからな。しばらくは現役でいるさ」

 

ブライアンにしては、実に優しい回答の仕方である。普段はファンへも無関心に近い態度を取るが、子供には優しい。これは妹たちの子守りで身についたが、本人も『子供には不思議と好かれる』と述べている。子供は『三冠経験者』という肩書と『レースにしか興味のない『レースモンガー』の色眼鏡で見ないからで、子供っぽさのあるウマ娘と関係が悪くないのも、それが理由の半分を占めている。

 

「ほら、取ってやったぞ」

 

「ありがと」

 

コンビニのおにぎりののりを上手く巻いてやる。姉のハヤヒデはこういうものを難しく考えてしまうため、うまくできないが、ブライアンは天性の才能できれいに巻ける。

 

「うーん。ママが見たら、悲鳴あげちゃうかもなぁ。派手にやられたし」

 

「ラクビーに怪我はつきものだ。だが、別のスポーツと比べてみて、向いていると思ったものを選べ。何も、男らしいからと、無理に挑む必要はないんだぞ?」

 

「幼稚園の頃、僕は誘拐されかけてね。プリキュアのねーちゃんたちのおかげで助かったんだけど、その後、幼稚園の別のクラスの番長に馬鹿にされてね。まぁ、どうって事はないことだけど、なんとなく腹が立ってね。それでスポーツをやりだしたんだ」

 

プリキュアとごく近しい関係にあることは、ノビスケを人気者にするのに一役買ったのも事実だが、『男らしくない』と反感を持つ者もいたにはいた。ノビスケとは別のクラスの番長がそれであった。21世紀には時代錯誤かもしれないが、幼稚園児という年頃はジャイアンがそうであったように『見かけからして、かっこいいなにか』に憧れる頃である。のび太も『蒸気機関車などの力強い何かに憧れていた時期はある』。プリキュアをどう思うかは個人の勝手だが、『女に守られて、恥ずかしくないのか』という趣旨の批判も浴びていたのも事実。祖父ののび助も『お姉さんばかりに頼らず、自分の力で何かを為すことを考えなさい』と述べたため、ノビスケは自身の不甲斐なさを払拭するため、『男らしい』スポーツに傾倒していく。ラクビーは体格に恵まれることも成功の条件なため、後にサッカーに専念。成功を収めるのだ。

 

 

 

 

「そうか。今の時期は大事な時だ。いたずらに『男らしさ』だけを求めて、体を痛めては何もならん。できる範囲でやればいい。でないと、私のように、体をダメにしまうぞ」

 

 

 

ノビスケはこの日、ラクビーの試合でそこそこの活躍をしたが、得点に絡みきれないなど、小学低学年から中学年になるあたりの年齢としても『そこそこの体格』であるが故に、街ごとに数人はいる『年齢のわりには、やけに体格のいい体育会系のガキ大将』に圧倒されてしまう場面が多かった。この経験が後年にノビスケがサッカーに専念する一因となる。野比家男子の常として、一族の男子は『線の細い』という表現が似合う体形を維持するか、『中年太りで太めの体格になるか』の二択で、のび助(のび太の父)とのび太(老年期)は後者、源家の血が入っているノビスケは前者である。

 

「ブライアンおねーちゃん…」

 

「タイシンの奴も言ってるだろう?奴も無理して、体を壊した事があるんだ。何年か前の夏のことだ」

 

ブライアンはタイシンの従妹にあたるが、子供の頃からの付き合いであるため、ブライアンはタメ口を聞いていた。男らしいことに傾倒過ぎているノビスケに言い聞かせるため、タイシンの『悔い』のエピソードを話した。ノビスケがタイシンに懐いているのは知っているからだ。ブライアンはコンビニのホットスナック(肉類)を肴に、野比家に帰るまでの間、ブライアンは自身とタイシン(ブライアンにとっては従姉にあたるため、世界線によっては、彼女に敬語で接する)の過去に触れる。その上で、『新世代と戦い、決着をつけたい相手を待つ』(史実で最後のライバルであった『サクラローレル』のこと)ために、自分の体を全盛期の状態に戻したとも注釈をつける。

 

 

――『サクラローレルとは、お互いに最高の状態で決着をつけたい』――

 

 

それが自分の今の願いだと。栄光に満ちた『頂点』から『どん底』へ堕ちていく悔しさを知るが故に、ブライアンは自身の『凋落』を史実で印象付けた存在であるサクラローレルを真っ向から下すことで『前世の意趣返し』を達成したいのだ。それがブライアンが心から望む『運命を超える』ことである。

 

「魂に刻まれた因果を超える。そのために、私は超科学の力を借りた。誰がなんと言おうが、最高の状態で戦いたい相手がいるんだ……」

 

「誰なの?」

 

「絶頂期の頃は歯牙にもかけなかったが……サクラローレルという同期だ」

 

ちょっと哀しげな表情となるのは、サクラローレルも史実では『夢半ばでターフを去るしかなかった悲運の結末』を辿っているし、自身も完全復活を衆目に見せられぬままで引退したからで、シンパシーを感じているからだ。

 

「どうしたの?」

 

「…いや、なんでもない」

 

ブライアンは前世の自分(競走馬としての)の記憶を持つことで、サクラローレルの苦難とその悲運に共感したらしく、ハッキリと名を口にする。普段はレース相手を歯牙にもかけないことも多いブライアンだが、自身を『負かした相手』であるサクラローレルの事をライバル視している節があった。また、前世で『落ち目になった自分を周囲が哀れんで、見放していった』事がトラウマらしいそぶりも見せる。『強さ』ばかりがクローズアップされるナリタブライアンだが、幼少期に封印したはずの『弱さ』も残っている事、サクラローレルをレースで下し、自分の前世に決着をつけたい願望があるのだ。

 

「ちょっとな」

 

目が涙で潤んだブライアン。この時だけは三冠経験者という泊、『かつての王者』としての外聞をかなぐり捨て、『一介のウマ娘』としての本音をさらけ出していたのかもしれない。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。