ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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「二二世紀からの刺客」編その二です。


第三百九十三話「二二世紀からの刺客 その2」

――ダイ・アナザー・デイの時期になると、地球連邦政府の月移転が成り、国家中枢が宇宙へ移動した。また、アースフリートの高い軍事力を抑止力として活用し始め、星間国家としての体裁を整えだした。ジオンは移民星の増加で宇宙移民の代表として振る舞えなくなることに怯え、移民星にすら牙を抜く。その過程で、相容れない思想を持つはずのティターンズとも手を組み、現政権転覆を狙うなど、暗黒星団帝国との戦争後も残るジオン残党軍は過激派テロリストと同義にまで堕ちていた。

 

 

 

 

――彼等の保有艦艇は『グリプス戦役』から殆ど進歩していないため、地球連邦軍の新鋭艦の相手にもならないケースが増加した。とはいえ、生存競争がそうさせたともいえるので、地球連邦軍としても複雑な心境である。大量にグリプス戦役までの建造である旧式艦が余るからだ。扶桑へペガサス級を含めた艦艇が多数売却され、扶桑が宇宙艦隊を保有するに至る。暇を囲った地球連邦軍の人員もレンタルされたからで、1949年五月の時点で、既に三個艦隊が稼働状態にあった。それに対し、ティターンズ残党にティターンズ派、ザンスカール派、ジオン共和国右派などが手当たり次第に武器を供与するという節操なしな事態となった。ジオン共和国は解体予定だが、それに反対する者が残党化したため、結局は堂々巡りになってしまい、間接的にウィッチ世界の対立の構図をますます促進させていく。21世紀世界の日本の左派が構想した『扶桑の全植民地の独立、それらによる国家連邦と相互安全保障体制化』はウィッチ世界特有の事情で、あえなく潰えた。そうした事情で、扶桑は相対的に超大国となるしかなかった。扶桑はそのために内地への投資を強め、軍事面は異世界からの援助で資金を賄うことにしたのだ――

 

 

 

 

 

 

 

――ウィッチ世界は技術実験場のような扱いになっていた。ミッドチルダが実質的に地球の傘下に入り、その技術を好きに使えるようになった地球連邦軍は64Fに兵器を与え、そのデータで次の兵器を開発するという手法を編み出した。これは地球連邦自体が戦乱期で、本国の復興をしようにも、ジオン残党の離散集合でその暇すら確保できないからで、結局、ジオン残党は反体制テロリスト集団の隠れ蓑と化し、ミネバ・ラオ・ザビやシャア・アズナブルの統制からも外れた存在となっていき、ついにはティターンズと合同するに至った――

 

――その流れで、扶桑陸軍は若手・中堅将校の少なからずを左遷させられ、将官も多くを予備役編入させられたため、極端な人材不足に陥った。元々、派閥抗争が激しかった軍隊なので、この人材不足は半ば致命的であった。更に、日本側が政治的に『指揮官の前線指揮を尊ぶ』ため、士官の死傷率が群を抜いて高くなってしまった。その関係で、防弾装備の発達が史実の数倍のスピードで起こり、史実以上の性能のボディアーマーが現れるに至る。これは怪異の出現が鳴りを潜め、人同士の争いが普遍化した故に起こった技術進歩であった。また、せっかく育ってきていた中堅ウィッチを『危険思想の青年将校』と見なされ、多くが軍籍剥奪に至ったため、ウィッチの思想継承で断絶が生じた。この損害の補填は数十年単位で時間がかかると評され、扶桑社会に禍根を残す。この軍を追われた者たちの行き場がMATであり、対立が先鋭化し始める前は単に『職業供給の場』であったが、アイデンティティの確立に『対立』を選んだことは、扶桑社会に深刻な分断を生んでしまう。カールスラントほどでないが、社会的に分断が生まれ、軍隊が人材不足に悩むになったことで、『一握りの超人への依存』が却って進んでしまう。これは日本側が『指揮官先頭』を強いた故の弊害でもあった――

 

 

 

 

 

――江藤や武子など、集団戦を重視する有力ウィッチは集団戦法の普及促進のため、自軍の超人たちの活躍を表向きは封印することにし、戦果の申告は当時の慣習に従い、過少に申告したものの、昭和天皇の耳に活躍が入っていた事から、政治的な妥協で戦果の多くを(注釈付きの)未確認スコアにした。だが、統合戦闘航空団の時代を迎え、カールスラント優位の風潮が生まれた事から、その事に疑義が生じてきた。この二人の誤算は『ミーナが人事書類をきちんと閲覧しなかったこと、グレーテ・ゴロプのカールスラント至上主義的言動がスキャンダル化したことで、国際問題になった』ことだった。武子はその責任を取りたいとし、予てから推薦されていた『侍從武官』(ウィッチ出身武官の最高の名誉とされた)の地位を辞退し、(推薦もあるが)前線部隊である『64戦隊』の隊長になることになり、江藤も統合参謀本部の航空参謀として奉職した。その扶桑の混乱の煽りを受けたミーナは査問後に『錯乱した』ため、ダイ・アナザー・デイ中の扶桑への『謝罪』の第一声はアドルフィーネ・ガランド中将(当時。退役時に元帥に名誉昇進)、ハンナ・U・ルーデル大佐が行い、作戦後には、カールスラント皇帝自らが直接の謝罪を行った。血気に逸る民衆による『大使館焼き討ち』が決行される寸前でのことだった。この国際問題は結局、日本連邦がカールスラントを追い詰めた一連の出来事の一つとして、後世に記録された。

 

 

 

 

 

――文化財保護が世界的に定められた影響で、エディタ・ノイマン大佐は文化財を軽視した罪で訴追されたが、マルセイユの必死の弁護で軍事法廷での訴追は免れたが、47年度に正式に退役。直後に機械加工関連企業を興す。こうした影響で、カールスラントの衰退の機運は拭えないものとなり、以後のウィッチ世界の軍事の主導は日本連邦がしつつ、軍事技術の革新などは自由リベリオンが中心になっていく。これは宮藤一郎技師(芳佳の父)亡き後の扶桑はウィッチ技術の根本的進歩を実現可能な技術力を持つ技師はいるが、必要な資材がないという有様となる。第二世代と第三世代理論は外国が『必要な要素を発明してくれないと、具体化できない』というジレンマに悩まされ、『理論はあっても、それを具体化できるだけの資材がない』という状況となり、ミッドチルダから『触媒』と『資材』を輸入するに至る。第二世代理論の実用化はこうした取引で成功したのである。――

 

 

 

 

 

21世紀世界でも、ジオン残党の襲撃は社会問題であった。23世紀の技術で構成されたモビルスーツは自衛隊の兵器での撃破が至難の業だからで、2019年頃の事件も、結局はゲッターロボアーク頼りであったことは議論を呼んだが、『何百年も先も時代の兵器を、現代兵器でどうにかできると?』という現実もあり、GフォースのMSやメタルアーマー、VFの保有を認める事になった。地球連邦軍の支援があるとはいえ、『予算の無駄使い』と謗られる事を考慮され、標準機も『高級機』であるグスタフスカールやジェスタが採用され、地球連邦軍の訓練を受ける事がGフォース転属の条件となった。

 

 

 

学園都市の叛乱への懸念は過去のものになったものの、今度は未来からの襲撃に悩む羽目に陥った日本。21世紀には存在しない軍隊の構成員をどう裁くのか?という法的問題、安易に自衛隊に応戦させるべきかという問題提起がなされたが、ゲッターロボアークなどに頼りきりでは現場の士気が下がるという問題から、結局はGフォースに『その手の攻撃への対処を専任させる』という結論が出され、各方面の部隊から『交戦経験のある者』を引き抜き、地球連邦軍の訓練を受けさせる方法で、Gフォースの体裁を整える事になった。

 

 

 

 

その通達から半年あまりが経過した2022年の夏になると、ススキヶ原防衛は自警団とGフォースが共同で行うという協定が結ばれ、同時に、街の再開発も再度の促進がなされた。ハッタリだが、リゼルやグフタフカールが街を行進することは示威、21世紀の他国への体裁を取り繕うことに多大な効果を見せた。自警団にジェット機である『F-86』が回されたのも、この頃である。カールスラント軍崩れがジェット機である『Me262』を持ち出すケースがあったからだ。ウィッチ世界での現場の人員はジェット機嫌いが多かったが、日本連邦が後世のジェット戦闘機を惜しげもなく投入し、華々しい活躍を見せたことで、自分達の立場が無くなることを悟ったが、既にMe262の価値は暴落しており、軍縮の煽りで予備部品ごと持ち出されるケースが後を絶たなかった。同機は30ミリ砲四門の高火力を持つため、自衛隊にとってもある程度は脅威であった。

 

 

 

――ススキヶ原自警団。2016年頃に結成された自警団である。学園都市の実質的解体で周辺の治安が極端に悪化。カールスラント軍崩れの部隊が学園都市を根城にし、テロ活動を行う事態に陥ったが、21世紀日本の法的しがらみなどで警察は『見て見ぬふり』、自衛隊も動けない。それに憤った有志が『骨川コンツェルン』に泣きつく形で結成した。主に空襲への対処が目的であったため、扶桑の払い下げ兵器をそのまま購入していたが、2021年に敵編隊に『Me262』の姿が確認された事から、扶桑で第一線機から降り始めたF-86を提供され、同機への機種転換を図っている。

 

彼等が守る『ススキヶ原』は小さい街だが、東京都内でありながらも自然が残されている事から、都会の喧騒を嫌う者達が引っ越してくる事も多く、人気の土地である。2000年代後半以降、裏山の頂上にホテルとマンション兼任の建物が建てられたが、裏山そのものを整地する事は無くなった。付近にゴルフ場建設計画もあったが、環境保護意識の高まり、団地にシンパシーを感じる者が高齢化で減ったため、需要が見込めなくなり、立ち消えとなった。そんな流れで生まれたわけだ。ジオン残党軍の襲撃に際しては、流石に自衛隊が動いていたが、野党の喚き散らしで自粛せざるを得なくなった。だが、ジオン残党軍の襲撃が連続して続いたため、自警団の解散どころではなくなり、Gフォースの協力組織という扱いで存続が決まった。

 

 

 

 

 

 

――2022年の盛夏近く――

 

夏は基本的に休みであるウマ娘たち。秋から冬に大レースが控えているため、夏は慣らしの小レースに出る以外は基本的に合宿で鍛える。もっとも、騒動と政権交代が重なった影響もあり、レースどころでなくなった者も多いため、この時期に現役引退を考えていた者は『あと数年は現役を続ける』ことにしていった。

 

「そうか、ネイチャもあと数年は続けたいと」

 

「テイオー世代も、そろそろ盛りを過ぎる頃だが、テイオーに触発されたようだな」

 

「だが、成績上位でなければ、あんたは歯牙にもかけないと、批判が出ているぞ」

 

「成績は全てではないが、どうしても、協会の意向には逆らえん時はある。現役時代は嫌というほど、そういう場面に出くわしたよ」

 

「あんたの本意ではないと?」

 

「そうでなければ、テイオーを『低迷した時』に見限っていても不思議ではなかろう?我々とて、全員がG1レースに出れるわけでもないし、オグリのように、華々しく去れるわけではないからな」

 

「前世の私のようにな」

 

ブライアンは、多少なりとも自嘲じみた口ぶりのルドルフに皮肉を言う。ルドルフも現役引退の原因は怪我だし、ブライアンも競走馬としての晩年期は精彩を欠く日々であったからだ。

 

 

「お互いに、現役引退のきっかけは怪我だったからな。今となっては因果か」

 

「だから、華のある内に引退する後代の三冠馬たちが羨ましく思える。それに、前世では怪我に怯えて、晩年期に全力を精神的に出さなかった事が悔いでな」

 

「それが原因か?君の飢餓ともいうべき、レースへの欲は」

 

「そうだ。今となっては、三冠という肩書に満足できなかった本当の理由がわかる」

 

ブライアンは前世の記憶が蘇った事で、シニア級の王者として評価を確立させ、史実で『自分に引導を渡した』存在であるサクラローレルに借りを返してから、華々しく引退したいという目標を持つようになった。そして、間接的に彼女の夢を叶えてやりたいという情も持つようになった。それ故か、以前の『一匹狼』じみた近寄りがたい雰囲気は薄れ、『意外に当たりのいい先輩』に変わりつつあった。

 

「君も……変わったな」

 

「前世の記憶のおかげで、自分を見つめ直せたからな。あんたもそうだろう?」

 

「できれば、現役時代に『そうなりたかった』よ」

 

ルドルフは従姉妹かつ、幼馴染であるシリウスシンボリとの関係が悪化したことの最大のきっかけが『自分の最初の怪我が原因で、シリウスシンボリと共に海外に打って出る計画が頓挫したこと』と考えており、前世の記憶が蘇った後には奇妙な確信があった。故に、『現役時代に記憶の覚醒が起こっていれば…』と悔いているようだった。

 

「シリウスのことを?」

 

「そうだ。私は過去を変えるつもりはないが、悔いは今でもある。現役時代に怪我がなければ、シリウスと共に、全盛時に海外に打って出ていたかもしれん。自分の実力が海外で、どこまで通じたかはわからんが……」

 

ルドルフの現役時代の悔いの一つは『全盛時に海外遠征をできなかった』事らしい。そのことが、ルドルフとシリウスの仲がこじれた最大の原因であるのは、ブライアンも知っている。今となっては、双方が『引っ込みがつかなくなった』というべき有様であるが、幼い頃のような関係に戻りたい願望がある。また、祖母であるスピードシンボリ(グランプリ三連覇を達成するなど、ウマ娘史上最長級に現役にあった事で知られる。学年はシンザンの二~三学年ほど下であった)に憧れていた故に、海外遠征は夢であったが、実現した時は選手としての最晩年、しかもレースの途中で怪我をしていたなどの醜態を晒したことから、悔いが残っているようだった。

 

「過去は振り返るなと、祖父は言っていたが……因果に縛られていたことを知ってしまうとな…。タマモとオグリの気持ちがわかるよ」

 

「あの二人はそれなりにやりたい事があったから、歴史をちょっとだけ変えた。あの二人だから、許される事はある。だから、私なりに、後輩たちの未来を作ってみせるさ。あんたの分もな」

 

ルドルフは生徒会からも退いたが、ブライアンは生徒会副会長として留任している。さらに、トゥインクルシリーズにも、未だに現役の座にある。それ故だった。

 

「大変だよ~~カイチョーにブライアン~!」

 

「どうした、騒々しいぞ」

 

「と、とにかく、TVを見てみなって!」

 

テイオーが部屋に駆け込んできて、TVをつける。すると。

 

『先日の東京都練馬区での原因不明の事故についての続報です。視聴者からの投稿映像をご覧ください』

 

視聴者投稿のスマホの映像には、子供のおもちゃほどの大きさの『昔のギャング映画の殺し屋を模した人形』が歩き回り、撮影者を発見するなり、情け容赦なく『転ばせていく』様が映し出されていた。いたぶるように転ばせ、負傷させる事で悦に浸るような所業まで見せる。

 

『この人形が何であるかは、当局が調査中ですが……』

 

「こ、これは!!」

 

「昨日の会議で言ってた奴だよ~!」

 

「見ればわかる!」

 

それは『ころばし屋Z』であった。この世界dにおいては、スネ夫の子孫の一人が『スネ樹』(スネ夫の次男)が日記に遺したノビスケのわんぱくぶりへの鬱憤に同情し、野比一族へのささやかな仕返しとして試作し、そのついでに、未来デパートの社内コンペに出したとの記録がある。だが、その性能はもはや仕返しグッズどころか、『兵器の範疇に入る』。被害拡大を防ぐため、ルドルフとブライアンはキュアドリームとキュアハートに理由を言って、体を借り、自警団と共にパトロールを行うことにしつつ、トレーニング中のウマ娘達に『目撃したら、生徒会に一報を伝えてほしい』と通達を出している。

 

 

 

――その日の夜――

 

「そうか。目撃情報はあれ以降はないか」

 

「ええ。念のため、野比氏の子息の送迎は私達でしています」

 

「それがいい。ころばし屋の狙いはノビスケ君だ。他者はこれ以上巻き込めん。エアグルーヴ、君も気をつけてくれ」

 

 

ルドルフは戦闘も覚悟し、キュアハートの体を借り、待機している。これは所謂、通達を受けての『アリバイ工作』であるが、その前にルドルフが自警団と約束を交わしていたための妥協策である。それにブライアンが付き合っている格好だ、

 

「ありがとうございます」

 

エアグルーヴからの連絡が終わると、自警団の警戒網のモニターを確認する。ころばし屋Zは『プロとしては二流以下』だと言わざるを得ない思考をするため、普通のころばし屋より探しやすい。自警団はこの頃より、学園都市から接収したレーダー機材を運用しだしており、航空兵器への警戒を強める一方で、東京で五輪が前年に開かれていた名残りで監視カメラ設置数が増加しており、五輪終了後もその監視カメラ網は治安維持のために運用されていた。

 

「カイチョー、D地区のカメラを見て!」

 

「いたか!」

 

ルドルフとテイオーが監視カメラのコンソールで監視カメラを操作すると、ススキヶ原の南西部(工場地帯)付近で、通りがかった運送トラックが突如として横転する様子が映る。そして、脱出してきた運転手を『ころばし』、余計に怪我をさせる。事故を目撃し、すぐに駆けつけたパトカーも横転させ、事態を悪化させる。

 

「行ってくる」

 

「気をつけて」

 

「小手調べだ。野比氏の言うように、本当に危険な代物なら、粉々に破壊する。テイオー、君は未来デパートに一報を」

 

「わ、わかった!」

 

ルドルフはキュアハートの戦士としての能力をこの頃には把握しており、ころばし屋Zの破壊も辞さないと表明する。だが、ころばし屋Zは通常のころばし屋より遥かに高性能である事がまもなく、未来デパートから通知される。現場に駆けつけたルドルフはキュアハートとして活動し、警察の現場検証に立ち合った。

 

 

――事件現場――

 

「Gフォースの者です。自警団の要請で、現場の確認に参りました」

 

「ご苦労様です」

 

身分証(キュアハート/相田マナのもの)を見せ、現場に入る(Gフォースはススキヶ原周辺部の治安悪化への警察の無為無策を誤魔化したい政府の取り繕いで、事件の捜査権などを持つ)

 

「これは……」

 

「ここで転ばされたようです。かなり派手にやられたようですな」

 

「ガイシャはかなり出血していました。不幸中の幸いで、命に別状はありませんが、数か所の骨が折れていました。駆けつけて、助けようとした警察官が二名ほど、負傷しています」

 

「その方々は?」

 

「応援の警察官の手配で、別の病院に運び込まれました。一週間は入院しなければならないでしょう」

 

警察官たちと会話を交わしつつ、ころばし屋Zの暴れた痕跡を確認するルドルフ。Gフォースが特殊な立場にあるとはいえ、その隊員がフィクション世界の探偵のように、警察の仕事に混じってもいいというのは、学園都市周辺の事件に関わり合いたくないという、警視庁上層部の体たらくを表していた。とはいえ、ススキヶ原は『小さい街』ということで、上層部に睨まれた者、中央での出世に興味のない者が配置されているため、そんな上層部の政治抗争などはどこ吹く風で協力していた。

 

「横転したトラックはどうなさるのです?」

 

「レッカー車を手配しています。すべての検証が終わるには、四日ほどは」

 

「被害者の方の証言は取れましたか?」

 

「いえ、脳震盪を起こしていたので、明日以降に予定しています」

 

現場に残されているのは、横がひしゃげて横転させられた運送トラック、被害者たちが流したと思われる血の跡、消防庁の管轄である火災の跡であった。話を総合するに、ころばし屋Zは戦闘能力は高いものの、『プロとしては二流以下』としか思えない。

 

(さながら、昔のSF映画の殺人ロボットだな。プロの仕事とは思えん)

 

ルドルフは親族も相応の能力がある者たちであり、祖母は古豪という渾名を頂いた名ウマ娘『スピードシンボリ』である。故に『ころばし屋Z』の仕事は『見境のない破壊を行う、殺人ロボット』も同然だと看破した。そこにテイオーからの連絡が入る。

 

『テイオーか』

 

『カイチョー、未来デパートから追加連絡。Zの開発者の『スネ夫さんの曾孫』がタイムパトロールに逮捕されたって。過去の時代に混乱を起こしたから、お咎め無しっていかないだろうし。まぁ、数年くらいはブタ箱(刑務所の暗喩)行きだろうって』

 

『そうか。タイムパトロールはなんと?』

 

『追手を差し向けたらしいけど、宛になるかどうか。ドラえもんが普通のころばし屋を持ってるはずだからって言ったんだけど、性能差がありすぎるってんで』

 

『その時代の警察のエリートだというから、役人とたかをくくるな。案外、役立ってくれるやもしれん』

 

タイムパトロールがころばし屋Zの危険性を鑑み、部隊を派遣したことも伝えられる。彼等が動くほどの事態という事は、他の時代にも別の個体が現れたからだろうか。テイオーはタイムパトロールを宛にしていないようだが、それはドラえもんから『ギガゾンビ』や『恐竜ハンター』の事例を聞いていた事で『あんまり捜査力はないんじゃ…』と考えているためだが、タイムパトロール自体はひみつ道具時代を通して、『エリート』と見なされるほどの難関であった。

 

さらに言えば、ギガゾンビや恐竜ハンターは『出身の時代』で相当に慣らした大物犯罪者であるので、タイムパトロールの捜査が辛抱強くの長期に渡ったのも仕方がないところ。また、ドラえもんはタイムパトロールに何度も協力し、大物犯罪者を逮捕するきっかけを作ってくれた功労者。のび太自身もタイムパトロール隊の高官と知り合いであるなど、タイムパトロールの発見に寄与することがわかっているため、ドラえもん一行の身の周りに起こった事件は『緊急度が高い』とされているようだ。(実際に地球の危機であることが多かったため)

 

『まぁ、ドラえもん達の危機を何回か助けたって聞いてるけどさー』

 

『彼等と話をしたいから、君は手筈を整えてくれ」

 

『わかったー』

 

と、タイムパトロールから話を聞く段取りをしてもらうルドルフ(姿はキュアハート)なのだった。

 

 

 

 

――なお、この騒動を引き起こした原因である『スネ夫の子孫の一人』はその時代の法律に触れる発明をしたため、当然ながら、タイムパトロールに逮捕され、裁判で何年かの懲役刑を科される事になった。骨川家の人間でありながら、『明確な犯罪行為を行った』という顛末を迎えたためか、以後の代の骨川家は、子育てに(23世紀に至るまで)より腐心することになる他、ノビスケが『野比家の異端児』であった事の周知などが行われた。骨川家の人間(セワシの父の世代)がその三代前の先祖の遺恨を晴らしたいがために、『ころばし屋を差し向けた』というのは、その時代の骨川家にとっては一大スキャンダルであり、当代の骨川家当主はその火消しに追われたと、後年の回想録に記されている――

 

 

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