――ルドルフとブライアンは協会の通達が伝わる前に、自警団と約束を交わしてしまったため、通達に困惑。プリキュア達に頼みこみ、ひみつ道具で入れ替わることで、どうにか約束を守った。元々、子供時代には『そういう番組を見ていた事がある(シリウスシンボリ&ビワハヤヒデの談)』ため、意外に適応できていた。また、ウマ娘の特徴である運動能力の高さが反映され、『本人達』より能力値が上回る点が生じた。(魂が入れ替わった事による『個人差』と思われる)ルドルフは自身と同じ『生徒会長』の経験者であるキュアハートに頼みこみ、入れ替わった。これは自警団と交わした約束を守るための苦し紛れの策であった。ルドルフは元々、嗜み程度とはいえ、『ウマ娘がいない世界でいうところの流鏑馬』の経験があったため、『いざという時の対応力』にも優れていた――
「協会の通達は予想外だったが、大衆の抱くイメージを壊されたくはないという判断だろうな。しかし、イメージに縛られるのも、窮屈なものなのだがな」
ルドルフは『皇帝』としての威厳と強さだけを両親を含めた周囲に求められてきたため、その本質は知られていない。テイオーに甘いのは、幼少期の自分を見ているようだからだ。テイオーと違うのは、立場相応の振る舞いができる点だろう。テイオーは『キタサンブラックを泣かせた』事の意味を知り、有馬記念の後で『罪悪感で胸が締め付けられた』ため、最近では、自虐的な発言もするようになっている。テイオーが少しづつ『大人になってきた』のは、成長もあるが、自分たちの立場が少しづつ変わり始めたことを自覚したからだ。
……と、ルドルフ(姿はキュアハート)が感慨に浸っていると。
「!!」
衝撃波がすんでのところを通り抜ける。
「現れたな……ころばし屋!!」
子供の玩具ほどの体躯で、デフォルメされている容姿だが、昔のギャング映画の殺し屋を思わせる姿の『彼』は現れた。手に持つのはデフォルメされているが、『トカレフTT-33』を模したデザインの銃であった。放たれるのは強力な衝撃波である。ルドルフは持ち前のカンと動体視力で、ころばし屋が銃を撃つ瞬間に銃口の向きから弾道を予測し、避けるという芸当を見せる。
「悠長に技名を言う暇はないか…!」
キュアハートの固有武器『ラブハートアロー』からプリキュアハートシュートを連射して応戦するが、ころばし屋Zはエネルギーの矢を自分の攻撃で相殺する離れ業で対応。そして、武器を強力なバズーカ砲に換装する。
「バズーカ砲だと、正気か!?」
それを受け、ルドルフはキュアハートが転生で得た『空中元素固定能力』を使い、ウィンチェスターライフル(西部劇でお馴染みのレバーアクションライフル)に武器を持ち替える。銃器の知識があまりない(祖父が狩猟などを行っているため、素人よりはあるが)ルドルフがイメージしたものは『ウィンチェスターM1876』であった。威力は強くないが、セオドア・ルーズベルト大統領が使っていたことでも有名なライフルである。(過剰な威力がなく、ころばし屋を破壊するのみであれば充分である)
バズーカ砲の衝撃波をやり過ごした後、警察の人払いで操業を停止し、無人となった工業地帯に、古めかしいメカニズムの銃の銃声が鳴り響く。
「すばしっこい奴だ!」
連射性はボルトアクション式よりは効く(ボルトアクション式は威力と安定性はあるものの、連射性は低い)ため、四発ほどを撃つ。ころばし屋Zはそれを回避し、ルドルフと銃撃戦を展開する。
「じいさまのやり方をちゃんと見ておくべきだったな…!」
銃の扱いは素人に毛が生えた程度なため、ぼやくルドルフ。だが、運動能力については相田マナを上回るため、彼女以上の反応速度で攻撃を避ける。
「危険を察知して、姿を眩ませたようだな…そこはわきまえているようだ」
ルドルフは銃をしまい(元素に分解した)、とりあえずテイオーに報告を入れる。
「カイチョー、銃撃だけどさ、ぜんぜん当たってないよ」
「素人だから、そこは大目に見てくれ。奴の動きは追えているか?」
「いや、ステルス機能があるみたいだ」
「そうか…。タイムパトロールはなんと?」
「明治、大正に別の個体が現れたみたいで、その討伐に人員を割いてるみたい。証拠の隠滅は頼んだぞ」
「ゴルシに手配させる。帰ったら、タイムパトロールの担当者と話して」
「わかった」
ころばし屋騒動は他の時代にも飛び火したようである。故に、スネ夫のひ孫の一人は逮捕されたのだろう。本業とはかけ離れているが、ウマ娘達はこうして、ころばし屋相手に水面下で戦うことになった。レースのトレーニングは怠らないものの、こうした雑事もこなしていくのである。
――ころばし屋Zは七体ほどが制作済みであり、その内、復活した数体が明治~21世紀までの時代に散らばっていった。タイムパトロールはそれへの対処に部隊を割くしかないので、ドラえもんの滞在する記録がある21世紀には、あまり人員を割り振れないと言ってきた。つまり、『ひみつ道具は貸すし、協力はするが、自分達でなんとかしてくれ』ということだ。顰蹙を買ったが、タイムパトロールも選抜課程の厳しさなどで『余裕がある組織』ではないため、それは受け入れるしかない。また、タイムパトロールもひみつ道具時代の後期になると、密航タイムマシンの増加や恐竜ハンターの摘発に人員が割かれてしまい、こうした騒動への対応がおざなり気味になるという弊害が生まれている。とはいえ、敏腕隊員が連絡員として赴任するなど、功労者であるドラえもんの滞在する時代故に、人員の質はどうにか確保していたのがわかる。また、ジオン残党軍に輸送用タイムマシンが鹵獲され、過去に軍勢を送り込むのに使われてしまったとも報告され、23世紀でも組織は存続していることが明確になった。23世紀ではひみつ道具時代の終焉によって、規模も全盛期より縮小されているが、技術保全の意味合いで存続していること、ジオン残党はその存在を知り、過去改変を幾度か試みたが、いずれも地球連邦軍に阻止された事が語られる。
「タイムパトロールを襲撃して、タイムマシンを奪って、過去改変ねぇ。SFみたいな話だね」
テイオーがそう感想を述べる。
「結局のところ、彼等に都合の悪い結果にしかならなかったようですし、シャア・アズナブルというカリスマが死んでも、その代わりが用意されるという道筋に嫌気が差す者も多いのですが。指導者と言うのは、御輿のようなものですから、体制の形が維持できれば、誰が指導者でもいいというのが、彼等には悲劇でしょう」
フル・フロンタルという男がシャア・アズナブルの後釜に添えられ、その彼も死んだ後は時代が進むごとに風化していった歴史の存在は受け入れがたいだろうし、たとえ、一年戦争に勝とうが、ギレン派とキシリア派の内戦で結局は崩壊へ向かうという歴史も存在するわけだ。
「だから、もっと過去……この時代から改変すれば…という淡い期待で、事件を起こすのですよ、彼等は」
タイムパトロール隊の中堅隊員はジオン残党軍の行いをそう評した。21世紀から改変すれば、自分達に都合の良い結果になるという期待を持っているが、実際は一年戦争での敗北が既定路線になるのみである。また、過去の人間を殺傷することで、自分が消える危険もあるのに、それに躊躇がない。
「しかも、そういった輩に限って、戦時中に完成してなかった兵器を持ち出しますから」
ゲッターアークの介入で阻止できた騒乱は、その一例でしかない。
「クイン・マンサの保有すら確認されていますので、野比氏は我々『地球連邦』の決戦兵器を確保しているのでしょう」
「それが地下の格納庫なのでしょうか」
「左様」
ジオン残党軍は何故か、戦時中に完成しなかった兵器を戦後に完成させるケースが多く、地球連邦軍はそれで大損害を被る。その為、矢面に立つ部隊へ『ガンダムタイプに準じる装備』が与えられ始めた。だが、ロンド・ベルはそれでも足りないため、スーパーロボットの運用権が与えられている。ジオン残党軍の決戦兵器保有の可能性はかなり高く、指導者にすら通達せずに作ることも確認され、その場合は指導者の立場を悪くする。ミネバ・ラオ・ザビがサイコフレーム規制の件で劣勢になり、かなりを妥協せざるを得なかったのは、グレート・ジオング、グランジオング、ネオジオングの存在が明らかになり、彼女はそれを把握していなかったためである。また、ナイチンゲールの存在も不利に働いた他、『統合戦争の技術散逸と喪失の悲劇を繰り返すつもりか?』という批判に言い返せなかったことも大きい。
「ジオン残党軍というのは、指導者の政治的立場さえ、自分達で危うくしますからね。ですので、我々としても、相応の態度で臨んでいます」
ジオン残党軍は平気で条約を破るため、地球連邦も疑心暗鬼である。ミネバ・ラオ・ザビは過去の残党が条約破りをしてきた事で、交渉の場では元から不利であり、ネオジオングなどの存在が決定打となった。更に言えば、彼女は『オードリー・バーン』として生きる気であったため、『ジオンの幕引き役としての責務』は二義的なものと考えており、同位体の出現後は彼女にその役目を任せるなど、年相応とはいえ、軽率な行動も見せている。それが結果的に、共和国軍右派も含めた多くのジオン系軍事勢力が新規に『徒党を組む』のを招いたのだ
「今回のころばし屋の一件も、彼等が骨川氏の曾孫さんを唆した可能性を我々は考えています。断定はできませんが」
「ジオン残党はなぜ、そこまで野比氏の一族を敵視するのですか?」
「彼の子孫で、一年戦争前の頃の当主がジオン・ダイクンのパトロンだった時期があるのですが、ダイクンとザビの政争が始まったあたりで袂を分かちました。さらに、当主の次男一家がコロニー落としで全滅しまして。それ以降に反ジオンに転じたので、裏切り者とみなしているのです」
「彼等は何が目的なのでしょう」
「彼等は今や、単なるテロリストですから。この時代の一神教の過激派と同レベルにまで堕落しましたから、元来の思想などは組織の看板以外に意味はありません」
彼はルドルフにそう告げる。地球連邦軍にとって、指導者であった者たちからも見捨てられた後のジオン残党軍は宗教の過激派と同様の『烏合の衆』になりつつあり、過去に死んだ指導者達のメモリークローン計画まで立てているという。(実際には、生き返ったギレン・ザビが残党を糾合しつつあるが)少なくとも、デザリアム戦役が終結し、ウィッチ世界が1950年代を迎えつつある頃には、ジオン残党軍は目的も指導者も失って、もはや霧散しつつあると認識されている。だが、実際には、ティターンズ残党やナチ残党の手を借り、息を吹き返しつつあるのだ。
「ですので、貴方方が野比氏と関係を持った以上、地球連邦が警護する事をお約束しましょう。ヒーローユニオンとも協力することになっております」
「それはありがたいのですが、私どものこの行動は」
「ご安心ください。協会には、我々がちゃんと貴方の望むように御説明いたします。嘘も方便ですからね」
彼はタイムパトロールの意思として、ウマ娘たちは警護対象である事、ルドルフとブライアンの入れ替わり行為に協力し、協会へのアリバイ証明をすることを約束した。流石に、自衛行動まで禁ずると解釈できる文面は不味いだろうという事で、後に『何らかの危機への自衛については不問とする(セクハラ行為をする『ふしだらなトレーナー』もいるため)』と明確にされた。(一説によれば、ヒーロー大好きっ子なビコーペガサスがあまりに憔悴したことが伝わったため)また、タイムパトロールがルドルフとブライアンの『入れ替わり』を公認したため、以後も二人は定期的に入れ替わりを行い、自警団との約束を果たしていく。
――ころばし屋騒動の背後にジオン残党軍の存在を示唆されたルドルフは当面の相手であるころばし屋Zに備える事になり、ブライアンと共に、しばらくはプリキュアの姿を維持する事になった。この定期的な『入れ替わり』はお互いに影響を及ぼしており、のぞみがブライアンのような『無頼漢』じみた態度を見せたり、マナが皇帝モードのルドルフのような『威圧感あふれる態度』を見せるなどの変化があった。その間に『別世界のプリキュアオールスターズの戦い』に召喚されることもあった。(キュアフローラが『なんか、妙にキュアハートとキュアドリームが貫禄あったんだよね』と話しており、その回答となる)――
「やれやれ。姉貴に見つかったら、面倒なことになるぞ、これは」
「入れ替わってても、それ咥えんのね…」
「咥えてないと、落ち着かなくてな」
ブライアンは成功を収めて以降は『口に枝を咥えている』ことが多く、プリキュアと入れ替わっても、それを通している。ブライアンと属性が反対なように見えるキュアドリームとの入れ替わりだが、『三代目』(ミスターシービーからカウントした場合、ブライアンは三代目の三冠である)、なんだかんだで優しく、面倒見の良いところなど、共通点もないわけではない。
「あんた、態度が柔らかくなったわね」
「ガキ共の夢を壊すわけにはいかんだろう?それに、受けた恩は返すだけだ。ビコーの奴が聞いたら、絶対に喜ばれるな」
「言えてる。あの子、あんたの後輩?」
「チビなだけで、私と同期だ。それと、元に戻ったら、ヤエノに仕合を頼まれていてな」
「あの人、家が道場だっけ」
「そう聞いている」
ブライアンもこの頃には、キュアドリームの能力を把握しており、元の姿に戻っても、高度な格闘術をこなせるようになっている。それを聞きつけたヤエノムテキ(オグリ世代のウマ娘。ブライアン達が走っている時代には、現役を退いている)から果たし状が来たと言い、それを受けたらしい。(ウマ娘が格闘技を身につけた場合、ヒトのアスリート以上のレベルの強さに到達するのは比較的に容易)
「そういえば、エルコンドルパサーはプロレスしてなかった?」
「奴の親父さんが覆面レスラーで、奴がプロレス好きなのはそのせいだそうだ。まぁ、今なら勝てそうだ」
ブライアンの態度が以前よりとっつきやすくなっている事に、従姉妹であるナリタタイシンは気づいていた。また、プロレス技をかけられた事があるらしく、その仕返しを考えていると明確にする姿からは、どこか柔和な印象を受ける。(姿が違っていても、以前より遥かにとっつきやすい印象を与える)
「買い物があると言ってたな?私も『こいつ』から頼まれていたのと、ボウズに頼まれていたものがあってな」
「何で行くのよ」
「地下にオートバイがあるだろ、仮面ライダー達の。それを拝借する」
「いいの?」
「慣らし運転は委託されてる。私たちなら、ヒトが扱えない馬力のマシンでも扱えるだろ?」
ウオッカが憧れるように、オートバイはウマ娘たちにとっても一種の憧れである。ウオッカは運転免許証を取得できる年齢にはまだ到達していない(中等部であるので)が、ブライアンは高等部。とうにオートバイの運転免許証を取得できる年齢であり、父親の意向で運転免許証を取得している。
「おじさんに言われたの?」
「引退後に仕事を手伝わせたいようでな。あいにく、三冠取ったから、そうもいかない。三冠ウマ娘が『運ちゃん』なんてしてるのは世間的にも不味いだろ」
「確かに」
ビワハヤヒデとブライアン達の父親は運送業を営んでいるらしく、ブライアンに仕事を手伝わせたいようだが、三冠になった以上、そうもいかなくなったと、ブライアンは述べる。その一環で運転免許証を取得させられたとも。
「だから、車もバイクも大丈夫だし、この姿なら、色々と面倒ごとを避けられる」
奇しくも、地下でオーバーホールを完了していたライダーマシンは『ハリケーン号』であった。車格は400cc程度のもので、高級な大柄のスポーツモデルより小型である。だが、パワーは改造人間の搭乗を前提にしているため、それと比較にならないパワーを持つ。(ハリケーンは時速600kmを誇る)その為、普通の人間には制御できない代物。しかし、ウマ娘、ないしはプリキュアであれば制御できる。
「それに、ウオッカの奴に自慢話をドヤ顔で聞かされるのも癪だからな」
「あ、そこね」
二人は買い物に向かう。ハリケーン号を慣らし運転も兼ねて、繁華街に繰り出す。(法定速度は律儀に守る)
仮面ライダー達のマシンは定期的にオーバーホールに出される。立花藤兵衛や谷源次郎といった『おやっさん』の亡き後は自分達で整備しているが、昭和ライダーのマシンは基本的に『原子炉』を大馬力の確保のために積んでいるため、一般的なバイクのディーラーの手に余る箇所がある。(立花藤兵衛達は組織の技術を得ていたので、普通にメンテナンスできていたが、これは彼等の卓越したエンジニアとしての才能のなせる業である)その為、復活後は超技術の代物でも整備できるヒーローユニオンの整備部がメンテナンスを担当している。その管理を更にのび太が引き受けており、ゴルシが使用許可を取り付けていたわけだ。
「このマシン、如何にもっといった感じの外見の割には操縦性がいい。モトクロス戦があるからだな」
運転してみると、仮面ライダー達のマシンは意外に操縦性に優れることに気づくブライアン。仮面ライダー達(昭和)はモトクロス戦も日常茶飯事なので、操縦性もいいことが条件になったが、クルーザーやジャングラー、旧サイクロン号のように、外見的に向いていなさそうなマシンも多いため、意外にモトクロス戦は、代によって頻度が違うことがわかる。ハリケーンは新サイクロン号の流れを直接的に汲むため、モトクロス戦も設計段階で考慮されている。大馬力の割には操縦性が良いのは、モトクロス戦が多かった事の証明でもあった。
「何を関心してんのよ」
「こういう外見のは、見栄えいいが、動かしにくいのも多いだろう?」
ブライアン(姿はキュアドリーム)はハリケーン号を運転しつつ、タイシンと共に繁華街に向かった。(キュアドリームのGフォースでの身分証もきちんと携帯している)ブライアンはタイシンの従妹である。この事から、ブライアンは17歳前後、タイシンは18~19歳前後である事がわかる。既に成人が近いため、運転免許証は取得できる。とはいえ、タイシンは21世紀基準ではかなり小柄、ブライアンも平均程度の背丈である(キュアドリーム本人より数cm大きいくらい)なので、ウマ娘としても平均的な体格である。体格面では特筆すべき事はない二人だが、脚質や気質などの面でそれを補い、一流と言えるほどに成長したので、意外に努力家であった。