ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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ころばし屋編です。


第三百九十七話「二二世紀からの刺客 その4」

――太平洋戦争は『反戦運動』により、扶桑軍の作戦行動に多大な支障が生じた。だが、ティターンズ残党の残虐行為が公になると、一挙に扶桑の世論は沸騰。1949年に入った後に、正式に戦時体制に移行した。日本側は戦時体制下での自粛による『密告』、『リンチ』などを強く懸念したため、経済活動の過度の自粛を求めないように求めた。扶桑は大日本帝国比で数倍以上の国力があるため、精神的な余裕があるので、史実よりかなり穏やかな空気があった。ウィッチ確保の確実性を得るため、華族身分の存続となったことは残念がられた(軍事的な理由で存続したようなものだからだ)が、扶桑は英独の折衷的に近代化してきた事情もあるので、英国式に皇室の人間が持つ軍階級の名誉称号化をさせつつも、過去に、皇室軍人が扶桑のクーデターを沈静化させてきた実績を鑑み、『個人の階級相応の権限』を軍人として奮えることで折り合いが取られた。これは扶桑海事変を経験した参謀達がどうしても譲らなかった事柄で、叛乱に対する権威付きの防波堤を確保しておく事の政治的意義を唱えたからだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイとその後のクーデターで中堅~若手将校の多くが更迭された余波により、ウィッチ出身の将校達が戦艦や空母の艦長に任ぜられるケースが多数生じた。元々、ウィッチ出身の軍人は砲術などのカリキュラムを軍学校を卒業した上で、一線を退いた者に改めて課す方針であったが、大量に軍学校卒の現役ウィッチが更迭されたため、軍学校卒以外のウィッチや候補生にも拡大し、数十年単位のスパンで長期育成し、将来的に充てる案が採択された。全員が64F在籍者のように、マルチタスクを容易にこなせるわけではない故であった――

 

 

 

 

 

 

 

――坂本は次期艦長クラスの有力候補であったが、後輩の志賀の尻拭いもあるため、異動の自由化はどんなに早く見積もっても、1958年すぎであった。これは太平洋戦線の長期化が決定事項である故であった。また、正規将校で黒江達に指示を出せる者が(扶桑国内では)坂本をおいて、他にいないことも大きく、軍に悪影響を及ぼした形になった志賀は(その純朴さが逆に仇となって)少佐でキャリアを終えることになる。このように、1948年をすぎると、ウィッチ出身の軍人は『つぶしが効かない』ということで、日本連邦内で疎んじられ始めた。だが、その逆に、転生した、ないしは転移者はマルチタスクを容易にこなせるという両極端さもあり、ウィッチは社会的排斥を避けられた。同時に、ウィッチ軍人の正規の『職業化』が図られ始める。これはゲッター線が満ちる事での体質の変化、『リンカーコア』が後天的に生じ、使い魔に依存しない魔力を持つ者が現れたためだ――

 

 

 

 

 

 

――2020年代の日本で発見された告発書。第二次世界大戦の直前、参戦する口実を欲した米国が英国と共謀して、英国、あるいは米国籍の豪華客船を一隻、生贄に捧げる計画が実行され、成功したものの、良識派の議員によって計画は阻止された。だが、冷戦も後期になった頃、その豪華客船の乗員と乗客は奇跡的に生存し、創意工夫で生き延びていた事、最終的に少数の生き残りの乗客とその子孫を米海軍が救出。事後、その出来事を(二次大戦にまつわる不祥事であるためか)封印したことを告発する内容。80年代に、それと酷似した内容のTV映画があったが、その元になった出来事だと思われた。調はススキヶ原に住む、知り合いの英国人青年から『亡き曾祖父が遭遇したという、嘘か真かもわからぬ出来事を調べてくれ』と依頼され、2017年から2019年までの二年間で調査した。すると、米国が冷戦終結と時代の変化で解除した機密書類にわずかながらもその記述があり、依頼主の青年の曽祖父は1939年、その客船に乗船しており、その後の数十年を船内で過ごし、子を儲け、妻子と共に数十年後に救出された事が確認された。曽祖父の亡き後は祖母が冷戦が終わって15年ほど、箝口令を守っていたという彼の証言から、米国には後ろめたさがあったらしい。その船の乗客の名簿には、ティターンズ残党の幹部になっている将校の先祖と思われる名があった。ティターンズ残党がなぜ、あっさりとリベリオンを手に入れたのか?その謎の一端が『世界大戦期に米国が英国に唆されて、喜々として行った偽装工作』にあったというのは、巡る因果と言えた――

 

 

 

 

 

 

 

――実際に、沈没船に偽装した秘密基地を造る計画は米国が太平洋戦争中にある程度の段階まで検討されており、基本アイデアが後に宇宙戦艦ヤマトの建造を偽装する際に用いられたなど、間接的に影響があったことを窺わせる。アメリカはその事件を冷戦後期に解決し、海底火山の噴火でその沈没船が吹き飛んだのを良いことに、『なかったことにした』が、生き残った乗客の手記や口伝は残り、それが巡り巡って、リベリオンの政府関係者がティターンズの甘言に魅入られた原因の一つになったのでは?という推測が調によって立てられた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1949年――

 

「荒唐無稽そうな話だが、ありえる」

 

「翁、ありえますか?」

 

「ルーズベルト大統領が存命で、怪異が来なければ、リベリオンは1940年代の何処かで、我々に戦争を挑んだはずだ。インド太平洋地域の権益は我々とブリタニアが握っているが、我々は邪魔だったはずだ。だから、原爆を造らせていたのだろう。怪異との戦争では無駄になりかねなくても、人同士の戦争では有効だからね」

 

当時、首相を退きつつも、絶大な影響力を持っていた吉田茂。彼はリベリオン内部の『開戦派』がフランクリン・ルーズベルトを焚き付けていたことを察知していたようで、怪異の出現を僥倖とした。更に。

 

「彼女達が事変で伝説を残してくれたおかげで、フランクリン・ルーズベルトは開戦を先延ばしにしたともいう。リベリオンのウィッチ隊は歴史が浅い故に、底が見えていたからな」

 

「確かに。我が国の近代的なウィッチ隊は扶桑よりも数十年は新しい。故に、独自のノウハウが少ないのは事実です、吉田閣下」

 

苦笑混じりのチェスター・ニミッツ。この時期の自由リベリオン海軍元帥であり、自由リベリオン実戦部隊の実質的な長だ。

 

「彼女達は建艦競争を促したが、結果的に、我が国の不満分子をあぶり出させた。貴国の兵器が以後の開発の指標となるのも促してくれた」

 

「軍需産業の技術屋には疎まれるでしょうが、我が国の兵器が1945年以降の民主主義国家のスタンダードとなるのは、多くの世界での事実ですからな」

 

「まぁ、航空技術者は不満でしょうが、政治家達と官僚が力を持つ時代を迎える以上、実績ある兵器を買えることは好まれますからな」

 

「だから、彼女達の階級を異常に上げたのですか、アドミラル・ヤマモト」

 

「左様。軍の本隊を動かすことは今後、我が国では憚られるでしょう。ですが、名目だけでも、外殻独立部隊である64Fを動かす分には、政治家達も文句は言わんでしょう。独立の維持のためもありますな。階級の高さは」

 

転生・転移者を含む『Gウィッチ』の特殊性から、軍の通常編成に組み込めないことが認知された1940年代後半、64Fはかつての統合戦闘航空団の担うべきであった役割を吸収しつつ、国籍を問わずに存在する『転生/転移者』の保護と職場を兼ねる場になりつつあった。これは『本来のウィッチ』と異質な力を別に持つ者たちが幹部層を占めている事、幹部層のほぼ全員が転生者であったからで、ダイ・アナザー・デイでの孤軍奮闘、未来世界でのメカトピア戦役、デザリアム戦役での活躍で地位を得たが、最高幹部が『多くが扶桑海事変以来の軍歴があり、皇室の信頼も厚い古参』達であるが故に、他部隊から常に嫉妬される立場であるのも事実である。故に、他部隊の士官の妨害を受けないようにという配慮が働いた結果、『将官でも前線で飛び、佐官は使いっぱしり』という特異性を持つに至った。実際、中尉や大尉がゴロゴロおり、佐官級も分・小隊長級の任務を担うことはザラにあるのが64Fの特徴であった。

 

 

 

 

「転移、ないしは転生者である者は強力な力を持つが、メタ情報を有するが故に、その素性を素直には開かせない。それが事変の終了後に誤解を招いた」

 

「おかげで、モントゴメリー将軍がボヤいていますよ。きちんと通達してくれれば…と。日本でマンネルヘイム元帥が釈明に追われてもいますから」

 

「それは日本側の無知も大きいですよ。白バラ勲章についているものはハカリスティで、ハーケンクロイツではないというのに」

 

吉田茂の首相在任中、智子が式典で着用した白バラ勲章のメダルに鉤十字が入っていたため、日本の野党が攻撃材料にしたが、ハーケンクロイツはウィッチ世界では存在せず、ハカリスティである(フィンランドなどで使用中の紋章)と判明すると、言いわけのように『紛らわしいから、モミの木が入った現行のメダルに変えろ!!』と宣う有様で、フィンランド/スオムスの双方を呆れさせた。また、スオムスの最高勲章の外国人初の受賞者という名誉も伝わり、授与した方の立場であるマンネルヘイムを政治的に救っている。その余波で、智子ほどの功ある者を『数年でも、飼い殺しにしていた』原因を提案した張本人であったモントゴメリーは『混乱を招いた』という名目で、元帥への昇進を取り消され、(当時は)閑職である兵站部署の責任者に左遷されたため、連合軍の高級将校は『政治家の都合で、出世コースから外される』ことを嫌うようになり、反乱抑止のために、政治判断で辺境送りか、前線送りになるケースが各国で増大する。そのため、ウィッチ世界の太平洋戦争は将校の『口減らし』という負の側面を持ってしまう。

 

「俗な政治家は若い将校を前線送りにして、負けて帰れば、極刑も辞さない構えだが、それでは、ジオン軍と何ら変わらん。名誉挽回のチャンスを与えないと、まともな作戦を練らなくなるし、冒険を避けるようになる。それでは、多少の人命は助かっても、損害は釣り合わない。事変の際に、東條さんが『政治家は水商売だ』と宣ったのも、分からないわけではないな」

 

吉田茂は日本の多くの政治家達の行う『懲罰的な軍への圧力』を嘆いた。日本軍は補給を軽視して敗れたが、自分達は南洋を数百年ほど維持してきた。故に歴史は違うというのに、だ。

 

 

 

「こちらの歴史を調べようとしない日本側に非がある。故に、違う時代の者たちの手を借りたのです。21世紀日本はしがらみが多すぎるので」

 

「その成果が地球連邦からの?」

 

「ええ。一般用には、型落ちですが、ジェガンを回すと決まりまして」

 

吉田茂と山本五十六は、地球連邦軍が余剰機を供与する『ジェガン』を扶桑全軍に配備することにしたという。地球連邦軍は代金を次世代機の生産費に充てたいようで、扶桑三軍向けのあらゆるMSやコンバットアーマー、VFの購入代金は(割安だが)ある程度の金額である。

 

「日本の政治家たちには?」

 

「事後に報告します。横槍を入れられて、ひっかき回されるのは御免被るので」

 

「高級機は?」

 

「64と彼等を支援する部隊及び、宇宙艦隊に優先的に。量産型νガンダムやZプラスの保有は熟練部隊でなければ、手に余りますから」

 

量産型νガンダム。νガンダムの量産型であり、ジェスタの量産頓挫に伴い、当初予定より高性能化した機体である。デザリアム戦役でジェスタが生産中止になると、その代替機として生産された。ただし、准ガンダムタイプであるため、ジム系より高度なアビオニクス(サイコフレーム持ち)を持つ点から、熟練整備兵がいる部隊のみの配備となった。64Fは『ジム系とさして変わらぬ扱い』で使っているが、それは彼等だからこそ可能な芸当だ。

 

 

「配備率は?」

 

「極秘裏に始めましたので、現時点では25%に届くか。平行世界のフランチェスカ・ルッキーニ少尉の行為には肝を冷やしましたが」

 

「宮藤軍曹やルッキーニ少尉は軍事機密に無頓着ですからな。明かして良かったので?」

 

「あの二人は隠し事を嫌いますからな。敵は怪異ではないことを理解していなかったようなのでね」

 

「その点、ザンスカール残党はいい事をしてくれた」

 

「ですな。あれで、この世界の敵は怪異だけでないことを理解してくれたようで」

 

「MSやVFでも太刀打ちできない何かが現れば?」

 

「対策はすでに打っています」

 

山本五十六はここで、64Fが極秘裏に集めたスーパーロボットの数々のスライド写真を見せる。グレートマジンカイザー、ゲッターノワールG(レプリカ)、ゲッターロボアークなどのA級スーパーロボットである。

 

「いざという時の切り札です。それと、メディカルキットとして、未来デパートから『お医者さんカバン』を購入致しました。治療ウィッチは個々の練度に依存しますが、あれなら安定した治療ができる」

 

医療ウィッチは宮藤芳佳が異常なパワーを持つが、それ以外のウィッチは自然治癒力の増強程度の領域に留まっており、ダイ・アナザー・デイで宮藤芳佳以外のウィッチが『応急処置』の範疇を出ない故のデメリットが浮き彫りになってしまい、医療ウィッチの存在意義が問われた。

 

「よろしいのですか?」

 

「魔法先進国であるミッドチルダでさえ、治療魔法の体系化は殆どなされていません。それと何もかも違う我々は過去からの記録に魔法の体系化を頼る必要がある。徒弟制では、今後はウィッチ育成は立ち行かなくなるでしょう。昔気質の連中は嫌うでしょうが…」

 

ウィッチの魔法は体系化がされていない分野が多すぎた上、親子でも継承される場合は少ないため、徒弟制の名残りが残るのだが、太平洋戦争でそれなりの数が必要とされる時に、必要な数の供給が不可能に陥っている。その原因が事実上の徒弟制にあると見なされたため、ミッドチルダ式の大量育成への切り替えが模索されている。

 

「今は戦争ですからな。それも、人同士の。彼女らがなんと言おうと、それは揺るがない事実だ。それに、鍛錬次第で、ウィッチの才能は凌駕されることも判明した以上、昔気質の連中の言うことに付き合う必要はない」

 

今回の転生では、坂本は改革派寄りで知られているため、前世での坂本の役目の多くは志賀が代行する形になった。ダイ・アナザー・デイで南斗聖拳の使い手達がプリキュアすらも返り討ちにしてきた事は上層部も周知の事実であり、ウィッチ雇用の確保の継続性が優先された。(南斗聖拳などを極めた場合、容易にプリキュアよりも上位の戦闘力が持ててしまうため、南斗聖拳などは機密扱いにされた。未来世界でも伝説化していたほどだからだ)

 

「あの拳法のことは?」

 

「機密に指定しました。ウィッチ至上主義閥が解体しない限り、本気にはされんでしょう。草薙流古武術でさえ、与太話同然の存在でしたから」

 

「言えてるな。聖闘士も非現実的だが、普通に鍛えただけで、容易に金属も切断できるようになるとは…」

 

南斗聖拳はまだ序の口、元斗皇拳、北斗琉拳、北斗神拳などの流派が他に存在するのだが、ウィッチ世界の軍隊は機密に指定した。ウィッチの存在意義がこれ以上揺らいだ場合、魔女狩りの危険があったからだ。この当時の事実上の扶桑と自由リベリオンの最高権力者達はY委員会でその決定を(混乱防止のため)追認した。

 

 

 

 

 

 

――スネ夫のひ孫の一人は裁判で正式に『執行猶予無しの25年の禁固刑』。かなりの厳罰を下される事になり、スネ夫はのび太に詫びた。子孫の不祥事を先祖が尻拭いする羽目になるからだ。ころばし屋事件は刑事裁判としては、これが顛末と記録された。だが、ころばし屋Zの討伐には、タイムパトロールもかなりの部隊を割いたため、懲役50年でいい位だという声も出ている。だが、初犯であり、反省の弁を口にしていることと、偶然が重なっての復活などの理由で『間を取っての年数』が採用された。だが、彼にそうさせた真の黒幕は反統合同盟の残党であり、その彼らが更にジオン残党をうまく唆したため、ころばし屋Z以外にも、戦う相手が増えてしまった――

 

 

 

――西暦2022年。プリキュアと精神を入れ替え、ころばし屋討伐の任についたシンボリルドルフとナリタブライアン。体は二人のプリキュアと入れ替えたが、目つきなどは中身が反映されており、キュアハートは『王者』の風格と威厳、キュアドリームは『無頼』としての粗野さと『怪物』としての迫力が備わっていた――

 

「ビコーの奴なら、嬉々としてやるんだろうが……私は柄じゃないんだが」

 

「と、いいつつ、入れ替わってんじゃない」

 

「ルドルフに付き合ってるだけだ。かといって、エアグルーヴにこういうことができるか?」

 

「柄じゃなさそう」

 

「だから、ルドルフは消去法で私を選んだ。一応は副会長だからな」

 

「普段は無頓着なくせに」

 

「億劫なんだよ、役職の業務っていうのは」

 

ブライアン(外見はキュアドリーム)はハリケーン号を運転しつつ、副会長の業務は億劫に感じていた本音を漏らす。とはいえ、ブライアンはクラシック期(全盛期)は『ルドルフを超えるやもしれぬ逸材』と持て囃されていたため、後継を見越した人選であった事は明らかだった。だが、ブライアンはルドルフの後継者たり得ず、結果的に、ルドルフの愛弟子であるテイオーが後継ぎになった。

 

「あんた、本当にいいの?副会長のままで」

 

「会長って柄じゃないしな。三冠は取れたが、それ以降は低迷してきた以上、理事長は認めても、協会はいい顔せんだろう。だから、ルドルフの正統後継者のテイオーがなるのが相応しい」

 

自分の立場をよく理解しているブライアン。とはいえ、プリキュアとして振る舞うのを、それなりに楽しんでいるようである。

 

「ハヤヒデが見たら、生暖かい目で見ると思うわよ」

 

「姉貴には言うなよ?」

 

「あんま宛にしないほうがいいわよ」

 

「クソッ…」

 

無頼を気取っているものの、なんだかんだで生来の性格の片鱗は表れており、意外に周囲に優しかったり、肉料理を前にすると、子供のように目を輝かせる、意外にムキになるところがあるなど、のぞみとの共通点も存在するブライアン。

 

「さて、繁華街はこの道路を真っ直ぐか……」

 

「ブライアン、周り」

 

「ショッカーの戦闘員……こんな町中で仕掛けてくるだと?節操のない連中だ」

 

タイシンに促され、周りを見渡してみると、怪しい一団が自分たちを尾行してしている事に気づくブライアン。繁華街行きの高架橋に入ったあたりで、ツーリング中の団体に偽装していた戦闘員が変装を解き、毎度おなじみの『タイツの胸の部分に骨模様が入っている』風貌の戦闘員の姿を見せ、サブマシンガンで攻撃してきた。

 

「どうする?」

 

「ぶっちぎって、この場を乗り切るしかないだろ!……掴まってろ、タイシンッ!」

 

「うわわっ!?なんてかそ…っ!」

 

戦闘員がこの時に用いたサブマシンガンはH&K MP5で、これまたドイツ製である。ブライアンは持ち前のカンでハリケーン号を上手く操って火線を躱しつつ、タイシンを守るため、ハリケーン号を加速させる。ハリケーン号はブライアンの要求に答え、瞬く間に時速200キロを超える。

 

 

「すごい……。アクセルを回しても、底が見えん……。これがライダーマシンか…ッ」

 

通常の技術でのオートバイは高速になると、コントロールにそれなりの神経を使う(ハイパワーのスーパーバイクも同じ)が。超技術で制御されているハリケーン号は時速200キロ近くに加速しても、低速時と同様に快適な操縦性を維持している。また、最高速が時速600キロに達するため、パワーに余裕があり、時速200キロ近くは流し運転の感覚である。ブライアンは自身が当代最速を謳われていた事に誇りを(人並みに)抱いていたため、歴代ライダーマシンでも『高速』の部類に入るハリケーン号の『底しれぬポテンシャル』にゾクッと来たようだ。タイシンは自身も『運転すれば、似たようなことになる』と自覚しているようで、口には出さないが、共感していた。ブライアンは組織のモトクロス部隊を巻くため、幹線道路から、裏道の込み入った路地に入る。

 

「あんた、どうして路地に!?」

 

「幹線道路に居続けると、周囲を巻き込むだろうが。こういった路地に入った方が、却って撒きやすい!」

 

カンの鋭さの度合いも、ウマ娘として一流であるかを図る指針である。ブライアンは脚質が『差し』であるとされ、後ろから相手を抜き去る事、ラストスパートの瞬発力に定評があった。そのタイミングはカン半分、頭脳半分で測っていたため、ブライアンは知らない道であろうが、バイクで正確に走れているわけだ。

 

「うわっ、来た!?」

 

「どけ!!」

 

ブライアンは狭い路地ながら、ハリケーン号の車体を相手に軽くぶつけ、相手を転倒させる。海外のウマ娘相手に戦うには、体のぶつけ合いに耐えなくてはならないため、ブライアンにしてみれば、トレーニングと同じ感覚でこなせる攻撃である。

 

「これが車なら、ステアリングに秘密兵器のボタンがついてたりするんだが……まいったな」

 

「昔のレース漫画だか、どっかの有名なスパイ映画みたいな事をマジに言ってる場合!?」

 

「今はそういうのがほしいぞ、本当に!」

 

と、ブライアンは珍しく、しょうもないことを口にするが、切実ではある。実はハリケーン号は空中滑空用に伸縮・二段式のウイングがフロントカウルについており、その起動ボタンがハンドルについているのだが、ブライアンはそれに気づいていない。とはいえ、ハリケーン号は新サイクロンの後継機種としての使用が予定されていた通りの機動力を見せ、市販のものを改造した戦闘員のバイクを圧倒し始めるのだった。

 

 

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