――ウマ娘達は肉体・精神的な全盛期がとても短く、ピークをすぎると、内面から少しづつ衰えが始まる。マルゼンスキーのドリームシリーズでの平均タイムが全盛期の頃より数段落ちていたのがその表れだが、これは史実の因果も大いに関係しており、サクラチヨノオーはそれが早く訪れた。確認されたウマ娘の中では最速で、シニア級(三年目以降)の初年度に早くも始まり、ダービーウマ娘としてはもっとも短命な部類になってしまった。マルゼンスキーは、サクラチヨノオーが『前世での自分の子』だと知り、その仇討を志すようになり、闘志に火が灯った。それが精神面を絶頂期の状態に戻す最大のきっかけであった――
「我々が受けた処置ですが、肉体的には全盛期に戻っても、心が伴わなくては、フルポテンシャルは引き出せないのでは?」
「そうだ。処置はあくまで、医学的に全盛期の肉体に差し戻し、それを維持するに過ぎん。心が絶頂期の時の輝きを戻してこそ、初めて、本来の力を引き出せる」
「世間には発表するのですか」
「発表はせんよ。移りゆく世間を振り向かせるためのわがままに過ぎんからな。表向きは激しいトレーニングを課したということで通す。新世代の台頭の邪魔になるからな」
「スズカのことをご存知なのですか?」
「そうだ。彼女の復活劇は奇跡だが、引退しているか、落ち目の我々にも、同じことは起きえるのだ、エアグルーヴ君。走る理由は千差万別だが、人々に思い出させてやろう。我々がターフにいた事を」
トウショウボーイもドリームシリーズへの出走を決めたようである。ルドルフ入学時の生徒会長なので、ルドルフとマルゼンスキー以外のほぼ全員が『栄光のTTG時代』は知らない。世間も歴史の一ページとしてしか記憶していない。加えて、引退後は協会の重役(トウショウボーイ、グリーングラス)、怪我の治療で渡米(テンポイント)であったため、三人の時代からは『何世代も経ている』。
「元・会長は天馬と謳われたほどの実力者だったよ。ミスターシービーの従姉でもあられた」
「シービーは世話が焼ける従妹だったよ。現役時代の私を超えてくれたのは嬉しかったが、時代が悪かった」
「私が頭角を現しましたからね」
「ああ…」
トウショウボーイは史実での子であり、ウマ娘としては従妹のミスターシービーとよく似ていたが、シービーから気まぐれさを抜き、生真面目さを加えたような性格である。公平さも持つため、ハイセイコーの卒業後に生徒会長を継いだ。テンポイントと争ったが、テンポイントは気性が荒かったため、中庸なトウショウボーイが選ばれた。
「昔の事だがね。私達も出走を表明するが、シンザン新協会長の意思で、しばらくは極秘事項になる。サプライズにしたいそうだ」
「貴方方が?引退してずいぶんとお聞きしますが……」
「昨日、処置は受けた。見せてやろうと思ってね。我らが時代の王者であった様を」
エアグルーヴは怪訝そうな表情を見せるが、トウショウボーイは微笑ってみせた。彼女らは同世代で最強を誇り、一年下のマルゼンスキー世代が(当のマルゼンスキーを除く)まるで太刀打ちできずじまいという伝説を残したからだ。実際、太刀打ちできる唯一無二のウマ娘であったと目されていたマルゼンスキーがシニア級に行けずに引退したのもあり、三人の強さには箔がついているのは確かだが、エアグルーヴらにとっては古い話。ルドルフの入学時には、三人は既に競技生活を終えつつあったため、ルドルフも小学生時代の記憶が頼りである。一学年下のマルゼンスキーのみは当事者だが、どうにも彼女の後輩からは信用されていない。時の流れという奴だ。いくら当代に伝説を残しても、後代の者には与太話と捉えられやすい。この点で、黒江たちとは不思議な共通点がある。
「元・会長達は『領域に到達したウマ娘』の中では最古参に近いのよ、エアグルーヴちゃん。貴方も分かると思うけれど、ある限界を超えられたウマ娘は自分だけの時間が流れる感覚を覚える。元・会長らは同世代の中で突出していたから、覚醒められた」
マルゼンスキーが補足する。その境地は超集中状態が可視化されたもので、原理は不明だが、オーラが可視化するビジュアルが多いなため、人気が高い。ゲームで言う固有スキル発動に近いが、史実で活躍していない馬の魂を持つ場合はそれがない場合もある。その為、ある時期から、協会が特撮で撮影したムービーを中継に挟む演出を挟むようになったという。実際、協会が想定したそれと実際の能力が違う事はままあり、例として、引退時のオグリキャップは『勝利の鼓動』と言う名の固有スキルを持っていたと演出されたが、実際には精神が往年の状態に立ち返ったため、史実での祖父から継承していたと思われる『灰色の幽霊』が発動していたりする。
「ただし、中継映像には、かなりの演出が入っているがな。実際に見せたほうが早い。とはいえ、今はその暇はないがな」
トウショウボーイは天馬と言われたほどの俊足を誇った。だが、この時点では『ルドルフやシービーの台頭する以前の世代の中での事』だと、後輩らからはそう思われていた。だが、どの分野でも、伝説を生み出した者はそれだけのことをしてきたのである。会議の最後であった一コマだが、遊び心があるのは、ルドルフに生徒会長の何たるかを教え込んだ張本人なだけあった。
一方、こちらはウィッチ世界。カイザーグロウの襲撃で撤退するしかなかったプリキュア+シンフォギア装者ら。仮面ライダースーパー1から『烏が乗っている方の肩が弱点であると教えられたものの、元々が格闘技の名人+改造人間である彼を倒すのは容易ではない。また、超能力でシンフォギアのアームドギアを機能停止に追い込むなど、強敵ぶりを発揮。その影響で、一時的にシンフォギアが解除不能に陥っていたクリス。
「最近はこんなことばっかだ。ちっくしょう!」
「まぁ、初見殺しされなくて、良かったじゃないですか」
「そりゃそうだけどよ、だからって、これじゃ羞恥プレイだぞ」
シンフォギア姿で新京をぶらつく(ちょうど、昼休憩の時間であった)調とクリス。同じ学校に通った期間はごく短期間であったが、その時の関係は続いている。また、ダイ・アナザー・デイ以降は装者たちの中では中立的な立場であったため、マリア共々に参戦の機会は多い。また、何気にダイ・アナザー・デイでは対空砲火を一人で展開し、500機のレシプロ機を撃滅したことが評価され、勲章を連合軍から授与されている。また、大型ミサイルで六隻のエセックス級を使い物にならなくしているなど、殊勲を挙げている。彼女を始めとする超人の活躍でダイ・アナザー・デイ時の『最新兵器』の多くは役立たずの烙印を押され、早期に現役を退く羽目に陥った。とはいえ、空母の大型化とパイロット育成法の変容の都合上、今すぐには変えられないので、F6FとF4Uは二線級として現役である。これは日本連邦と同じで、矢継ぎ早に変わったところで、パイロット育成が追いつかなければ、ただのカカシであるからだ。
「でもよ、戦争中だってのに、ここは平和だな」
「そういう風にさせてるんですよ。日本は戦時的な空気を嫌いますからね。だから、兵士達の精神衛生の問題が起こって、兵士たちにある程度の行動の自由を許すようになったんです。軍御用達の料亭との関係もありますし。問題起こすの、たいていはペーペーの兵隊か、若い下級将校ですからね」
「そういう連中、一般人相手に憂さ晴らしてんのか?」
「ええ。軍隊は階級と入隊年度が物を言いますから。下級将校とかは本当は使いっぱしりなんですよ。パイロットは特別です。エリートですから。日本は下士官からパイロットになれてたんで、叩き上げが多いですよ」
日本軍(扶桑軍)のパイロットは、士官学校卒のエリート士官は専門教育を受けた幹部級を占めるために少数派で、主力層は下士官であった。だが、色々な理由で、パイロットは少尉以上が望ましいとされたため、兵科教育を受けていない芳佳も兵科将校と同等の扱いとされた。(ミーナの失脚の原因の一つは、医務中尉になっていた芳佳を『兵科教育を受けていない』という理由で『曹長』と扱おうとしたからである。アイゼンハワー直々の命令で『撤回』し、芳佳へ謝罪をする羽目になるなど、人格変容直前は踏んだり蹴ったりな事が続いた)調もこの頃には、大尉へ昇進の内示が出ている。
「それに、旧日本軍とは『似て非なる』軍隊だから、旧軍とは一致しない点も多いですよ。それなのに、旧軍と同一視するから、揉めるんですよ」
「あん時のゴタゴタ、まだ解決してねぇの?」
「ええ。あの後に青年将校がクーデター起こしたんで、余計に混乱が起こったんです。その結果、軍隊の中の横のつながりが断たれたんで、司令部の統制が効く部隊しか動かないことも珍しくなくなって。結局、この地域でまともに働いてる部隊はうち、うちとなにかかしらの友好関係にある部隊と連合艦隊、それと防空部門ですよ」
「横のつながり?」
「ええ。士官学校の期が同じだとか、そんな感じの。有力将校の軍閥化を恐れたんでしょうが、結局は形骸化を招いたんで、私たち頼りになってるんですよ。日本も予想外だったみたいで」
扶桑軍は部隊間連携を横のつながりに頼る面が大きかったため、それを断った途端に機能不全に陥ったことは日本政府も予想外であった。ただし、64Fの行動には口を挟むことはなくなっていった。史実のドイツ空軍44JV(44戦闘団)は友軍からも妨害を受けていたのは有名であるため、人材融通と機材調達は邪魔をしなかったのだ。(日本には、海軍第343航空隊の成功例があるからである)むしろ、64Fにテスト部隊出身者からも熟練者を引き抜くことを進めさせ、44JVも真っ青なエース部隊にした。このことは64Fに協力するロンド・ベル隊が精鋭部隊化する過程と全く同じ。実質的に唯一無二の有事即応部隊となりつつあるのも一致する。皮肉なことに、キマイラ隊の事例も参考にされ、ロンド・ベルの強大化に寄与した。それはジオンの残した戦訓であった。
「ほんと、お前ら、いつ休んでんだ?」
「交代で休んでます。無人兵器が規制されてるんで、有人兵器で対応してますからね。日本はドローンとかを使えと言いますけど、行き着く先はゴーストとかモビルドールですから、嫌われ者なんですよ」
23世紀では、無人兵器の法的規制が東方不敗やトレーズ・クシュリナーダなどの影響で厳しくされたものの、度重なる異星人との生存競争で正規軍人の数が減少したため、一定範囲の規制緩和がなされた。人手不足だけは安易に解決できないからである。地球連邦軍の無人艦隊の整備もそれが理由である。ある連邦政府の高官は『なんで、10年もしない内に異星人が来まくるんだ!』と泣きを入れている。実際、ガトランティス亡き後もデザリアムが襲来し、ハーロックのメタ情報では『ディンギル帝国』や『ボラー連邦』とも戦端が開かれる予定だからだ。
「その割に、よく内輪揉めするな。あの世界」
「宇宙移民が地球を聖地として考える考えを持ったのがきっかけで、過激化したって聞いてます。中東の宗教戦争みたいなものだと、連邦政府の高官は言ってました。で、宇宙移民が星系単位になっていったから、コロニー出身者は埋没を恐れた。それが内輪揉めが続く理由ですよ。要するに、過激派がコロニー移民の憂さ晴らしみたいな役目を果たしてるわけで」
「地球のいくつかの歴史的な街を犠牲にして、か」
「彼らの大義名分なんて、その時点で消えてますよ」
ジオンはデザリアム戦役までに、ラサ、ダブリン、シドニー、キャンベラ、パリなどをこの世から消し去った。その怨嗟がティターンズを生み、自らの弾圧を生んだ。その点は自業自得だが、連邦もティターンズの台頭に無策だったなどの汚点を残している。結局は21世紀から『本質的』には進歩していないともいえる。ニュータイプが生まれようと、結局はわかりあえない事例があった(シャア・アズナブルとハマーン・カーンなど)ため、21世紀の人間たちの抱いた理想は未来世界の戦争が否定したことになる。また、地球を撃滅し、自らが人類の盟主にならんとする政治勢力が台頭した『シリウス星系』(シリウス星系・主星の寿命は星の基準では短いが、人間からすれば充分に長い)にあった第二惑星はひっそりと滅亡に瀕していた。
「…はい。えぇ、『彼』が現れた!?どこに……シリウス星系に……ええ。不運な…」
「どうした?」
「地球連邦軍本部からです。皇帝が介入して、地球撃滅論を提唱していた植民星を物理的に潰したそうです」
「はぁ!?地球くらいか、それより大きいって話だろ、その惑星!?」
「皇帝は星系サイズですからね。恒星をだん○3兄弟できる大きさです」
「なんだよそれぇ~~!!」
調への地球連邦軍本部からの連絡は、ゲッターエンペラーが時を越えて介入した事が観測されたことであった。ゲッターエンペラーは星系サイズのゲッターであるため、23世紀地球の技術であれば、充分に遠くから観測可能である。
「シリウス星系は主星の寿命が短いから、仮住まい扱いされてたんです。その分、独立の機運が高まってたけど、まさか、皇帝が潰しにかかるなんて」
「皇帝はどういう基準で動いてるんだ?」
「地球人の守護です。地球に仇なす者は、何人たりとも許さない。だから、世界線によっては、地球を潰したというシリウスは撃滅の対象なんです」
「住民ごとか?」
「避難の余裕があるかどうか…。皇帝は30世紀で有数の軍事力を持つイルミダスという星間国家を蹂躙できる力がありますから、23世紀の時点の兵器なんて、子供の玩具ですよ」
「あ、観測の映像データが送られて来たんで、再生してみますね」
連絡用のタブレットに送られてきたデータはとんでもない代物であった。それは……
『チェーーーンジ!!エンペラァァァ……ヌワゥン!!』
シリウス星系の防衛部隊の必死の抵抗を物ともせず、ゲッターチェンジを敢行してみせるゲッターエンペラー。急速合体で抑え目とはいえ、衝撃波でシリウス星系の伴星(白色矮星)を消し飛ばし、主星の位置がずれ、他の星の軌道が変わるほどの影響を及ぼす。流竜馬の声が宇宙空間で轟き、衝撃波だけで防衛部隊は全滅し、エンペラーの手が物理的にシリウスの惑星を握り、すり潰していく。残ったシリウス星系の住民達は必死に許しを請い、エンペラーに恭順する道を選ぶ。
「すごい映像だな…。独立をしようとした植民星は皆殺しか?」
「いえ……避難船は見逃したそうです」
僅かな避難船が逃げていくのが確認できるが、その避難船の乗員たちは23世紀からの数百年後に於ける敵性国家『セイレーン連邦』の首脳陣になる科学者とその家族であった。彼らは地球への復讐を数百年かけて画策するが、西暦2520年頃に『第18代宇宙戦艦YAMATO』がワルキューレの炎を使ったことで、あっけなく滅亡してしまうのである。
「ただ…この避難船、後々に地球の敵になる連中の船って噂も。25世紀くらいにならないとわからないそうですが」
「それ、どうなんだ?」
「彼に聞いてみないことには。ただ、慈悲はありますよ。全滅はさせてないようですし」
仲間割れした避難船団の一部をエンペラーが受け入れ、シリウス星系が荒れた痕跡を消し去るなど、超常的なパワーを見せる。彼が破壊と創造を司るほどの神域に達した事は誰の目にも明らかであった。自らに恭順すれば、慈悲を見せるなど、ゲッターエンペラーも多少なりとも自制と良心を得たらしい。
「星系を直しただと……!?」
「これがゲッターエンペラー……!」
凄まじい所業に息を呑む二人。地球連邦軍の観測船の乗員も圧倒され、言葉もないようで、そうした音声が入っている。
「まさか、ここまで進化するなんて…」
「究極のゲッターロボだってのか、これが……」
「しかもこれ、汎用形態ですからね…。特化形態があと二つはあるはず…」
「そこは忠実なのかよ…」
「曲がりなりにも、ゲッターですから…。これで、すぐの内輪揉めの要素は一つ潰れたことになります」
「こんなことになって、どうなるんだ?」
「地球を全滅させようっていう過激論は大人しくなるでしょうね。デモンストレーションとはいえ……ここまでされちゃ…」
映像はエンペラーによる『破壊と再生』を妙実に現していた。まさに機械神。一つの星の軍事力をハエか蚊を落とすかのように蹂躙し、星系すら好きに操れるほどの存在。
「シリウスは地球から独立して、独自の勢力圏を築こうとした地域ですけど、エンペラーと戦うどころじゃないですからね……」
ゲッターエンペラーは30世紀きっての軍事国家「イルミダス」すら蹂躙してゆく恐るべき存在。23世紀当時のいかなる勢力であれ、どうあがいても『かすり傷すらつけられない』のだ。
「そこって、どういう星系だ?」
「太陽系から比較的近い星系の一つなんですが、独自の勢力を築こうとした人たちの集まりでした。ところが、銀河系は超大国(銀河連邦、ボラー連邦、ガルマン・ガミラス)のひしめき合う場所。中心部は過去の戦いで消し飛びましたから、それ以外の場所で勢力争い。アンドロメダ星雲にも手をかけないと、航路が手狭になってきてるくらいなんで、独自の勢力どころじゃないんですけど」
「で、アンドロメダ星雲にも文明はあるんだろ?」
「あります。近くの銀河にもゴチャゴチャ。元々は超銀河団全体を支配した古い文明が滅んだ後にいくつかの中くらいの文明圏が生まれては滅ぶくらいの長い歳月が流れてるんで、そこから興った文明圏に地球は入るんです。宇宙時代は、一つや二つの星系を持ってるくらいじゃ『若い文明』と見なされるそうで」
「スケールがでかくなってきて、ピンと来ねぇぞ…」
「宇宙の歴史みたいなものですから。地球の世の中が1980年代に入る頃、銀河連邦は最盛期だったそうですが、そこから斜陽に入り始めます」
「なんでだ?」
「悪の星間組織と立て続けに戦争をして、勝つには勝ったんですが、かなりの前途有望な宇宙刑事が戦死しちゃって、銀河連邦警察も汚職にまみれるようになって…それで宇宙刑事ギャバンとかの大物を内勤にしたりして……」
「そりゃ、宇宙で刑事してるもんな。いくら超光速航法があっても…」
「だから、ギャバンがまだ、30そこそこの外見なんですよ」
「刑事って、叩き上けだと、若いほーでも20の終わりだろ?」
「交番のお巡りさんの時期がありますからね。そこから刑事課に回されるのは、宇宙でも同じですし。シャリバンとシャイダーが最年少記録持ってるそうです」
「ああ、あの人たちか」
二人の話のスケールは拡大していく。調の言う通り、銀河連邦警察は戦乱期、駆け出しであったシャリバンとシャイダーを若年のうちに地球担当に任じ、大任を担わせた。その為、二人は『若手のホープ』と言える年齢なのに対し、ギャバンはそろそろ30代の半ばにさしかかり、なおかつ『コム長官の娘婿』という立場なので、内勤を命じられている。
「そう考えてみると、今もそうだけど、意外に宇宙を股にかけてねぇか?あたしらのネットワーク」
「外見上の差異がほとんどない、別の世界の自分自身とも会いましたからね。向こうに言わせれば、『平行世界はなにかかしらの大きな違いがあるはず』ってことですけど…」
「経緯以外には、ほとんど違いがないもんな。ばーちゃんが関わったおかげで、だいぶ違った歴史にはなったけれど」
「私は向こうに拗ねられて、大変ですよ。半分以上は師匠がしたことだし、今回で何度目だったか…」
「仕方ねーよ。お前はあいつと気まずくなって、顔を合わせなかった時期もあるし、おまけに、別の世界で体質が変わって、ギアを制限なしで使えんだ。普通に、あたしらと一緒にいた世界線のお前からすりゃ、言いたいことの一つや二つはあるだろ」
「切ちゃんとは仲直りしたし、ギアの事は師匠との感応で起こった変化の産物だから、奇跡みたいな確率の出来事なんですけどね」
別の世界線の自分と会うたびにツッコまれたり、喧嘩を売られた(切歌との関係のことなどで)ためか、そこらへんをつつかれるのは勘弁してもらいたい調だが、クリスからすれば当たり前のツッコミどころである。そもそも、非戦闘時も仕事着代わりに、ギアを展開する+聖闘士としての鍛錬もあり、ギアのかける負荷に体が慣れたという状況は、史実での調自身からすれば、夢のような話である。
「おまけに、それを仕事着代わりに使うのは、ツッコミてぇだろ?」
「元々は、のび太のところに来て間もない時にあった機能異常を聞いた師匠のアイデアなんですけどね」
別世界の彼女自身との外見上の差異は少ないが、ギア展開時に『白いマフラーを首に巻いている』事が大きな違いであり、様々な用途に使っている。また、のぞみと知己を得た後は『プリキュア・シューティングスター』を見よう見まねで放ったこともあるとのこと。
「師匠の指示で、用を足す時や風呂に入る時以外は展開状態を保ってましたからね。多分、のび太やはーちゃん、ドラえもんと取った写真見たら、泡吹きますね」
「何せ、お前ら、変身した状態で記念写真撮ってたもんな。あの写真はいつのだ?」
「はーちゃんがのび太の義妹になる事が内定した記念に撮ったから、2000年代前半くらいかな。のび太が中学に入る頃くらいだったし」
クリスがダイ・アナザー・デイ後期の頃に見た一枚の写真。中学入学を控える年の頃ののび太が調とキュアフェリーチェ、ドラえもんと共にカメラに向けて微笑んでいるもので、二人が明確に『野比家の一員に加わった』以降の写真では最初期のものだ。以前の家の玄関前で撮影したもので、のび太の両親も若々しい姿だ。
「色々とすごいよな、お前」
「私もまさか、異世界に飛ばされて、それから『数十年』も若い姿で過ごすなんて、思いもかけませんでしたよ」
「そこが第一、おかしーんだって」
調は色々な要因で肉体的加齢と無縁になったため、のび太が小学生の子を持つ年頃を迎えても、外見上の年齢は『10代半ば』のまま。精神的には加齢しているが、肉体的には年を取っていないため、別世界線の自分自身より饒舌になっている印象を与える。
「喫茶店で何か飲みます?」
「そうだな……。別世界のお前が見たらひっくり返るぞ?」
「ギア姿で茶店ですからね」
二人は街の外縁部にある喫茶店に入り、休憩する。野比家でウマ娘たちが会議を進めている頃、ウィッチ世界では午前11時半のお昼時。外出中の休憩の一コマであった。