――ダイ・アナザー・デイで無人戦闘機『ゴースト』は猛威を振るったが、撃墜は可能である事、暴走の危険が大きいことから、敵側もあまり使用せず、捨て駒扱いで暴れさせた事が明らかになったため、結果的に21世紀の無人機推進閥は大打撃を被り、以後、ゴーストが実用段階に達する時代まで鳴りを潜める。しかし、有人戦闘機が技術進歩で無人戦闘機に優位になる時代が来てしまう事が突きつけられたのには変わりないため、開発目的は人手不足を補うためという目的にシフトする。無人兵器は非人道兵器、捨て駒という認識がMS時代に本格的に普及してしまうが、度重なる戦争での人手不足の顕著さから、絶えはしなかった。それが推進閥の精一杯の世相への抵抗であった――
――ウィッチ世界は体の良い実験場扱いであったが、ウィッチ世界にもメリットはあった。ウィッチ至上主義閥の圧力で、通常兵器の更新は立ち遅れており、その遅れを解消できる事、将来的な宇宙移民のための地ならしができる事だった。扶桑は宇宙移民での生存圏確保を本気で考えており、地球連邦の協力で既に宇宙ステーションの建設に取り掛かっていた。つまり、通常は21世紀で達成する事を1950年代で達成することになる。そして、1960年代以降に月面基地建設の段階に足を踏み入れる。だが、そこにも怪異はいたので、結果的に怪異の月からの完全な掃討も含め、1980年代近くまで運用開始はずれ込む。とはいえ、鉱物資源輸送は成功したため、扶桑は南洋の資源を節約しつつ、時代が進むごとに、使用のメインをそちらに移行する。南洋資源を温存する方向にシフトするわけだ。その過程で、扶桑海軍は東郷平八郎などの過去の英傑の名声に傷がつく結果になる他、海軍航空部門は『時流に乗れない阿呆の集まり』というレッテルを貼られていく。これはウィッチ達が太平洋戦争までの時期に『伝統を守る』というスローガンを掲げ、陸軍航空部門の転じた空軍に属した者達と対立したためであった――
――志賀はそのきっかけを作ったということで、後年に行動が酷評されることになる。当人は『海軍航空隊の伝統を守りたい』一心でしたことだが、結果的に海軍航空隊の政治的立場を却って悪くしただけであった。先輩である坂本の顔に泥を塗る形で、隊を去ったことは彼女の軍歴の汚点となった。震電の焼却も阻止出来なかったことがとどめとなり、彼女は兵学校卒のウィッチでありながら、少佐止まりで退役することになる――
『俺は海軍航空隊の伝統を守りたかっただけだ…。海軍にエースといった称号はなく、全て共同戦果として考えるのが伝統だったというのに。貴様のいる統合戦闘航空団はプロパガンダ目的の部隊であり、実戦部隊ではないはずだ……なぜ、そんなものに属することが名誉なのだ…』
これは一時期に志賀の部下であった雁淵孝美への告白文の一節である。統合戦闘航空団の時代を迎え、対外的に撃墜王の存在が必要とされたのも事実であるが、彼女は統合戦闘航空団をプロパガンダ目的の魅せ部隊と見做していた。その認識が彼女の視野狭窄を招いたといえる。告白文が記された当時は既に501が功を挙げた後であり、後年に志賀が『国際的協調に無関心な軍人』というレッテルを貼られる理由付けにされてしまうわけだ。彼女は結局、扶桑ウィッチにおける保守派の代表のように扱われてしまうのだが、外聞上の理由で撃墜王の存在が必要である事自体は理解しており、『部内で隊員が撃墜数の優劣を言い合う分には、士気の維持のために構いませんし、戦闘詳報を見れば、誰が戦果を挙げたかがわかるはずです!』と主張していた。だが、彼女の不幸は日本側が戦闘詳報の正確性を疑問視していたり、ミーナが人事書類(戦闘詳報含む)の不確認の不祥事を起こしたことで、彼女の言い分は説得力を無くしてしまった。この告白は彼女を慮った孝美の手で、80年ほど封印される。表ざたになれば、太平洋戦争の時点で『空軍の予備部隊』のように扱われている海軍航空隊の存廃にまで影響してしまうからだ。志賀は部下の手で名誉を守られ、80年の間に死去するわけだ。(ただし、晩年は和解に成功し、年相応の外見になりつつも、親睦会に出席していたという)
――これは太平洋戦争直前にかけての混乱と戦後にかけてのゴタゴタの一例だが、似たようなことが頻発し、優良な軍人の少なからずは他業種に流出していた。それを一握りの超人で補うことに反対論が強くあった。だが、日本の政治家の多くが人的被害の発生と『銃後の人間に戦争を感じさせる』ことに強烈なアレルギー反応を示したため、結局は練度向上と扶桑の工業力と継戦能力の増強を為してからの戦時体制移行が決議されたが、戦況の報道は殆どされない状態であるため、前線帰りの扶桑軍兵士が戦場と銃後のギャップに耐えられず、戦争神経症を却って患うケースが見られるようになった。そのため、扶桑の要望で、戦況に関する報道を増やしつつも、経済活動の自粛は求めないし、スポーツ選手も召集しないという規則が妥協的に定められたが、扶桑の中高年層へその理解をさせるほうが困難であり、結局、扶桑の戦時体制への移行は1949年にまでずれ込んでしまった。それに伴い、兵器生産・供給も供与と地下秘密工廠頼りになりつつあった。戦時体制に移行することは各メーカーの工場でも既存兵器の生産ができるということでもあるため、反転攻勢が検討されるようになったわけだ――
――また、扶桑は日本から21世紀水準による三次元レーダーの供与を受け、それをM粒子対応型に改良して運用しだしており、防空システムについては21世紀以降の水準に早くも達していた。電子戦関連装備も同時代の水準であるため、リベリオン本国側の戦略爆撃機に積める『時代相応の電子装備』の殆どは無力化され、護衛機も扶桑空軍のジェット機の前には散らされ、低空での多数侵入でしか攻撃の成功の見込みがないという、戦略爆撃機としては本末転倒の運用がなされていた。空対空特攻すら行われる中、B-29はB-50へのマイナーチェンジも行われ、使用された。扶桑空軍はこの戦略爆撃機による多数侵入に苦慮。対策として、防空部門の増強を決定。完成していた『震電改一・エンジン強化型』を緊急で量産し、配備することを当面の対処法とした――
――のび太の世界に至るまでのテロリズムの黒幕はジオンが存在する時代にまで存続する『反統合同盟』の残党であり、彼らがナチ残党の支援で、スネ夫のひ孫の一人を唆したわけだ。本人は『祖父に代わっての仕返し』という軽い気持ちで作ったのだが、完成品はあまりに危険なため、地下の倉庫に封印した。だが、その倉庫の地上部分は統合戦争の戦禍で消失。地下部分が露出してしまった状態で放置された(存在が忘れ去られた)。それから数十年後、異常気象による落雷が直撃。その膨大なエネルギーがころばし屋を目覚めさせてしまったわけだ――
「何万分の一の確率による偶然によって目覚めた『忘れ去られたアサシン』か。まるで何かの映画みたいだな」
「関心してる場合?」
「ガタガタ言ったところで、そいつが小僧を狙ってる事には変わりない。ルドルフと私が入れ替わったのは、小僧を守るためもある。この姿なら、大っぴらに戦えるからな」
「アリバイ工作は?」
「ゴルシが手配している。今頃は街の自治会館で踊ってるだろうよ」
ゴールドシップにアリバイ工作を頼み、実行させているからこそ、自分とルドルフは戦闘態勢に入れると、ブライアンは明言する。プリキュアとしてのコスチュームの上から軍用のフライトジャケットを羽織るという格好だが、意外に着こなしている。ブライアンの纏う強者としての雰囲気もあり、普段のキュアドリームより『歴戦の勇士』感を醸し出している。
「相手をしてて、シリウスのやり口がわかったよ」
「フジ先輩にも似てたわよ」
「まぁ、フジさんは優しいからな」
ブライアンは低迷期の経験から、孤高を気取ることは半ば止めたのか、自分の知る範囲での優しさを思い浮かべ、苦心して『なりきった』ことを示唆する。
「あんた、昔は一匹狼を気取ってたけど、今はどうなの?」
「トレーナーにも頼らないで、強い気でいた時期は卒業した。私たちは一人では強くなれない。前世の記憶で、それがわかった。だから、一人でいるのは止めにしたんだよ」
ブライアンは前世の記憶の覚醒が理由か、以前より弱さをさらけ出すようになっていた。三冠馬でありながら、らしくない走りしか殆どできなかった競走馬としての晩年期の記憶があるからか、レースではない拠り所を求めているようでもあった。
「アンタ……」
「らしくないだろう?だが、これも私だ。晩年期、三冠の栄光も昔の事と言われ、落ちぶれ果てた後の…。だから、今度は掴みたいんだ。前世の分もな」
遠い目をするブライアン。前世での晩年期に散々な成績だったことはブライアンの心に影を落としたらしく、その雪辱を誓っている。シニア級で王者としてしばし君臨しつつ、華々しく去りたい。それが同じ怪物と言われたオグリキャップの衣鉢を図らずも受け継いだ(出自は全く違うが、怪物の渾名を継承した者という共通点がある)者としての責務なのだ。
「オグリさんの渾名である『怪物』の衣鉢を受け継いだからには、今度は無様な引退はできん。王者として返り咲いてからだ」
自身の進路は決めていると明言し、しばし現役の座にあり続ける決意のブライアン。
――ヒーローであった者は最後までヒーローたるべし――
前世の自分がなし得なかったことを、ウマ娘として成すつもりである。プリキュアと入れ替わったのも、その目的を果たす上での鍛錬であるとも述べる。
「……!タイシン、伏せろ!!」
「わっ!?」
ブライアンはとっさにタイシンを伏せさせる。すると、頭上をかまいたちのような衝撃波が通過し、直撃したところの民家のブロック塀を無惨に崩してしまう。
「……何、なんなの!?」
「現れたようだな……ころばし屋め!」
逆光を背に、体の大きさに不釣り合い重火器を持った『彼』が姿を見せる。昔のギャング映画に出てくる殺し屋をデフォルメした姿だが、手に持つ火器は衝撃波を撃ち出す『ショックガン』だろうが、形状は明らかにトンプソン・サブマシンガン(シカゴ・タイプライター)であった。
「ト、トンプソンだと!?」
ブライアンも流石に瞠目した次の瞬間、周囲お構いなしに、そのショックガンが火を吹く。マシンガンのように。幸い、衝撃波は視認できるが、一般人では反応できるものではないため、衝撃波の餌食になった無人のトラックが横転したり、ソニックブームで転倒する者が続出してしまう。
「標的以外でも、お構いなしか!?」
「このままじゃ、けが人が続出するわよ!?」
「しょうがない。ガラじゃないが……!」
ブライアンはフライトジャケットを脱ぎ捨て、戦闘態勢に入った後、キュアドリームとして周囲に呼びかける。
「ここは私が食い止めますから、皆さんは安全な室内に!窓からは離れててください!」
ブライアンは精一杯呼びかけた後、タイシンに避難誘導を託し、自身は戦闘に入った。武器はFNH社のP90を召喚し、応戦した。
「まさか、実銃を使うとはな……。エアガンはトプロの奴が持っていたが……」
ブライアンは意外な事に、親戚のナリタトップロードに誘われ、サバイバルゲームに参加したことがあるらしく、その時に同銃のエアガンを使っていた。実銃はエアガンとはまったく違うものだが、ウマ娘としての特性とプリキュアの能力を組み合わせているため、反動は気にならないレベルまで制御できていた。
「奴め、なかなか素早い。ルドルフでは当てられないはずだ」
ブライアンはルドルフよりもカンが鋭いためか、初見でころばし屋Zと互角の銃撃戦を展開する。ころばし屋Zは強敵と見たか、衝撃波の出力を上げ、辺りの被害を顧みない攻撃に切り替える。
「うおっ!?奴め、周りも巻き込む気か!させんぞ!こいつの能力、使わせてもらう!」
『プリキュア・ドリームアタック!!』
キュアドリームの能力は把握しているため、牽制も兼ねて、技を放つ。ドリームの初期技だが、基礎能力が向上しているため、現役で使用していた時代よりチャージタイムなどの使い勝手が向上している。もちろん、威力も上がっているのだが、ころばし屋Zは衝撃波をぶつけ、空中で相殺させる。
「それは読んでいるっ!!百八式・闇払い!!」
手から炎を放ち、ころばし屋の外装にダメージを入れる。草薙流古武術はプリキュアの能力ではないが、のぞみの素体である錦が継承家の血を引いている関係で、魂が入れ替わっていても、その全力を発揮できるのである。(その関係で、キュアルージュのアイデンティティが危うくなっているが)。
「『私』が炎を扱えないと思っていたようだな。だが、それは古い情報だ」
通行人らを守るためのカモフラージュも兼ねて、多少得意げな口調で挑発する。敢えて、手から炎を出してみせることでの威圧効果も狙っている。(後に、ブライアンの復調祝いということで、黒いドレス調の勝負服が新調された際、心中のイメージソースということで、『炎』がPVで多用されることになる遠因になった)
「百式・鬼焼き!!」
ころばし屋は玩具サイズなので、裏拳を繰り出し、そこから炎で焼く構成にアレンジする。飛び道具(例えば、波動拳やかめはめ波などの気を使う技)があまりない武術である故だ。ころばし屋は緊急機能か、外装をパージし、脱皮。お返しの衝撃波を見舞う。それをブライアンは左の手刀で切り払い、右腕にP90を再度持ち、10発ほどを撃つ。手応えはなかったが、武器に当たったらしい火花は見え、姿を眩ませたようだ。
「姿を眩ませたか…。だが、これはひどいな」
民家のブロック塀は崩れ、駐車してあった無人のトラックは横転させられている。そして……。
「まずい、ガソリンが漏れてやがる。引火する――」
トラックは衝撃波と横転のショックでガソリンタンクが損傷したらしく、燃料が漏れ出し、引火して、火災を起こす。
「……無人で良かったが……こりゃ、運ちゃんは泣くな」
人的被害は幸いにもなかったが、ブロック塀の崩壊とトラックの炎上、いくつかの建物の窓ガラスの破損という物的損害は発生した。ブライアンはこの後、キュアドリームとして、警察の事情聴取、現場検証に立ち合うことになり、タイシンを先に帰した。
――戦闘からしばらく経って 野比家――
「ご苦労、タイシン」
「ブライアンが撃退しましたけど、あれが?」
「そうだ。件のころばし屋だ。なかなかの強敵だが、ブライアンは上手くやってくれたようだね」
「多少の被害は出ましたけど」
「被害なしはころばし屋の能力からして、ありえない。人的被害が生じなかったことで良しとせねばなるまい」
キュアハートの肉体を使うルドルフ。元々、生徒会長経験者でもあった相田マナの肉体との親和性は良く、ルドルフが生徒会長の責務から解放されたこともあり、幼少期のように奔放な一面を見せ始めている。
「なんですか、あれは」
「22世紀にいる、骨川氏の曾孫さんの一人が表向きは未来デパートの商品開発のコンペで生み出した機能向上品ということだが、自分の祖父がシゴカれていたことへの仕返し用に作ったとも。完成品は彼自身も危険に思うほどの性能に仕上がってしまい、コンペの落選後は未来デパートの管理していた倉庫の地下に封印されていた。だが、それから数十年後、戦争の傷跡が残り、焼跡が放置されていたその付近に異常気象による落雷が直撃した。その電気エネルギーが伝わった結果、偶然にも再起動してしまったらしい。全部で七体が存在し、複数の時代に散らばり、そのうちの最も残虐な人工知能を持つ個体がこの時代に現れた」
「七体もいるんですか」
「明治や大正に現れた個体はタイムパトロールが対処している。この時代の個体は我々が主体になるがな」
「どうしてですか」
「彼等も22世紀で骨川氏の子孫を逮捕し、事情聴取をしているが、意図して作り上げたものではないとの言い訳が出てきたという」
「はぁ!?」
「なので、執行猶予のない懲役になるだろうと通達が来た。明治や大正の日本軍に被害が出ているのも確認されたのでな」
ルドルフはタイシンにタイムパトロールからの通達を伝える。明治や大正の頃は徴兵があったため、のび太たちの明治~昭和初期までの男の先祖たちには軍歴が誰かどうかある。(野比家の男子には乙種合格が多かったが)その関係上、ころばし屋の標的になり、被害が出ているという。
「歴史上の帳尻合わせでは、この事が日本軍の近代化促進勢力に力を与えたが、永田鉄山大将亡き後の統制派の頭領の東條英機首相が保守的であったため、全てが御破算になったとある。彼としてはオーバーテクノロジーに頼りたくなかったか、自前の技術に自信があったのだろうが、結果がすべてだからな」
ころばし屋事件は明治・大正の日本軍に浅からぬ影響を与えたが、東條英機の保守性が御破算にしたという、軍高官の回想録が発見され、余計に彼の評価が下落する事になったが、ウィッチの軍事利用に奇跡を願う側面も明らかになった。
「つまり、歴史的には大局に影響はないってことですか」
「そういうことになる。だが、研究推進派が遺した遺産は戦後日本を守っている。超人機メタルダーにしろ、人造人間キカイダー、海底軍艦轟天号、鉄人28号……」
キカイダー兄弟は戦後の制作だが、基礎技術はメタルダーに使用されているものの派生に位置するため、その点で日本軍の遺産とされる事が明らかになった。むしろ、これだけあって、なぜ負けたのかという疑問も湧く。(実際には、東條英機は戦争を利用しての第二の殖産興業を目論んでいたため、オーバーテクノロジーの使用に消極的であっただけだ。だが、地力の差を思い知らされた1944年に『慌てて研究が進められる』が、時既に遅しであった)
「どうして、そんなものが作れて、負けたんですか?」
「様々な要素が重なった結果だろうな。今回の事件は戦後日本の技術立国ブランドの礎にはなるのだろう。彼女らの世界にもその技術が流れるだろうから、かの世界は今後、戦争が激しさを増すだろうな」
ルドルフは今回の事件が歴史的な帳尻合わせを起こす一方で、ウィッチ世界の戦争を激しくするという見解であった。日本の人間達がそれぞれの思惑で、両陣営に技術を流す事を見抜いていた。その関係上、敵味方ともに軍用機が短時間で現用機に近い水準に到達していく。扶桑空・海軍に至っては『現用機世代か、その一個前の世代』に到達してしまう。その機体が大戦期同様の感覚で使い潰される事を嫌がる財務関係者だが、ウィッチ世界の戦争は国家間の総力戦であるため、非対称戦争での少数精鋭運用が前提条件の第五世代戦闘機はむしろ適さなかった。怪異と誤認し、同士討ちになった事が多く発生し、現地のウィッチから『紛らわしいものを使わないでくれ』と要望されていること、M粒子でレーダー精度が低下する故に、有視界戦闘が必然的になるからであった。
「どうしてですか?」
「いい機会だからだよ。今回の事件は地球連邦がウィッチ世界に軍用品を売る理由付けに使うだろうし、日本は電化製品を売り捌くだろう。政治的に、かの世界を変えることが頓挫したので、経済的植民地にしたいだろうからね」
「勝手なもんですね」
「国家の交流と言うのは、言葉で言う程には平和なものではないよ。子供の仲良しクラブではないからね。彼等はそれで得られたもので、次の世代の魔導装備の開発を行う。利害関係の一致で同盟は結ばれるものだよ。自分達の世界の不始末を片付けたい地球連邦、そんなことは関係なしに、戦争特需を続けて、儲けたい日本。超技術でウマ娘の宿命を超えたい我々……。そんなものが入り交じるのが、大人の世界だ。だから、私は嫌気が差したのだ」
「だから、テイオーに職を?」
「それと別に、テイオーに大人になってもらいたかったのもある。私やマルゼンは直に、高等部から大学部に上がる。そうすれば、交流の機会は減るからね」
ルドルフは新設された大学部へ上がるらしく、その準備も始めないとならない時期が近づいている。故に、生徒会執行部の刷新を前々から考えており、キングヘイローの失踪から始まる一連の出来事をその大義名分にしたことを告白する。
「キングヘイローの行方はどうなんですか?」
「報告があった。米国からの出国が確認されたとのことだ」
「後手後手じゃないですか」
「行き先は欧州だろう。そこで彼女を連れ戻す。ハルウララを誤魔化し続けるのは、良心の呵責があるからな…」
キングヘイローはなんと、複数の機関の追跡も虚しく、米国を出国し、欧州に向かったという報が伝わったらしい。また、彼女のルームメイトであるハルウララを誤魔化し続けるのは、周りが良心の呵責に駆られるため、欧州でどんな手を使ってでも、捕まえるための準備を関係機関等に委託したらしいルドルフ。生徒会長を引退しながらも、残された仕事はこなさなくてはならないため、些かの疲労があるようだった。