ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第四百六話「二つの世界での風景 11」

――カールスラントは1947年に内乱に突入した。同位国のドイツは皇室を無くしたかったため、この内乱はある程度は容認していたのだが、カールスラント国民はガリアの共和制の醜聞を目の当たりにしていた事から、カールスラント政府の『異世界の同位国』であるドイツ連邦共和国への弱腰を叩き、軍に政権へのクーデターを促した。これに対し、NATO軍は『皇室からの鎮圧要請』という体裁で鎮圧に乗り出し、数ヶ月で鎮圧に成功した。だが、国土奪還というアイデンティティを奪われたカールスラント軍と国民は一種の無気力状態に陥ってしまい、NATO軍が軍政を引かなくては、国家としての体裁も保てない有様であった。ドイツはこの結果で、NATOから針の筵状態。結局、『1939年当時のカールスラントとオストマルクの国土の統治権は失われておらず、防衛に足るだけの軍隊の整備も認める』というドイツの嫌々ながらの声明がなされたが、荒廃したノイエ・カールスラントの地の復興には、数十年単位での長い時間が必要となった――

 

 

 

――この結果は日本連邦内の『扶桑の植民地化推進派』に衝撃を与えた。特に、法的には軍隊といい難い上、備蓄弾薬も少ないために、国家総力戦前提で整備されている扶桑軍と事を構える力が自衛隊にない事をも示していたからだ。同位国に冷淡に接し、国際的評価を落とすよりも、『上手いこと蜜を吸って、バブル全盛期の頃のポジションに返り咲く方が賢明』と判断された。日本は自分の軍事力の都合もあって、この選択を選ぶ。こうして、日本は扶桑との国家連邦の構築を推進していく。その結果、他の世界では落ち目と言われている2020年代には『中興』の始まりを味わう事に成功した『ドラえもん世界の日本』。軍事力も扶桑のそれを用いることで、国内の反対勢力からも文句を言われないからだ。ウィッチ世界の労働力と富を上手いこと、自分たちに分配させることで、懸案であった経済復興を成し遂げる。それが日本の選択だった――

 

 

 

 

 

――扶桑は世界情勢の急変との兼ね合いもあり、『これからも』軍事大国であり続けなくてはならなくなった。また、急激な近代化と、ジェンダーフリーの倫理観の流入で『ウィッチの公的な特権』は段階的に廃止されていった。また、前線で戦い続ける選択肢が加わった+皇室の軍事的役割の縮小で『侍従武官』が廃止される見通し(皇室が軍事へは儀礼的な役割しか持たなくなるため)である事から(扶桑においては、侍従武官への抜擢がウィッチ出身武官の最高の名誉とされていた)である事から、それに代わる『名誉』を設ける事の必要性が認識され、64Fは1949年には、部内で『特殊部隊』と扱われるに至る。また、金鵄勲章が戦中に授与されることがなくなった事から、武功章、感状の授与と二階級特進がその代替とされた。64Fのはそのいずれも多くの隊員が有している事から『金鵄勲章部隊』とも評され、羨望と妬みの対象であった。政治と部内の抗争に振り回されてきた64Fだが、1949年(日本では2022年)には、その孤軍奮闘が評価されだした。一部の者達には『年端も行かぬ若者を戦場に駆り出している』と批判されているが、現地では『10代での従軍は当たり前』だし、『幹部級は転生者だし、多くがプリキュアの変身能力を持つ』という奇想天外ぶりは、同隊の部内での位置づけをますます特異なものにしてゆくのだった――

 

 

 

 

 

 

――結局、扶桑の後方業務までの機械化は1949年になっても終わらず、逆に戦時の消耗で、人型兵器の需要が増すという状況であった。装甲車両の需要は多いものの、外国のライセンス品で賄えるという状況。これに危機感を覚えた『装甲戦闘車両の国産化推進閥』は日本に働きかけ、10式戦車の供与を働きかける。日本側は渋ったが、外国産装甲戦闘車両が市場に溢れかえることは望ましくはないため、結局は扶桑向けの生産が決まる。戦後型日本戦車は『待ち伏せ』を前提に開発されてきたため、74式戦車以前の戦車は大戦中のような『機動戦』向きではないのも、決め手であった。人型兵器がシェアを奪うことが強く懸念されたためでもあった。現に、軽戦車などは人型兵器で代替されていく状況になっており、日本の軍需産業は『極めて強い』危機感を持った。この危機感を扶桑は利用したわけだ――

 

 

 

 

――扶桑海軍はM動乱で水雷戦隊の重要性を再認識したが、折しも、ミサイル装備の開発による軍事的革新を迎えてしまった。そのため、装備の是非で再度揉めたが、『文句言われそうだから、できるだけ装備はしておく』という方向に落ち着いた。魚雷は酸素魚雷から誘導魚雷に切り替えられるはずだったが、酸素魚雷が雲霞のごとく余っていたため、ダイ・アナザー・デイと太平洋戦争で消費せねばならなかった。そもそも、M動乱とダイ・アナザー・デイで駆逐艦が数十隻単位で沈み、苦戦の原因が魚雷の非搭載であると判明し、艦政本部の造船官が喧々諤々に陥る事態となったため、史実の酸素魚雷の設計図が提供され、ダイ・アナザー・デイの決戦に備え、緊急で生産・装備されたため、外すわけにはいかなくなったのも大きい。そのため、魚雷の在庫処分も仕事の内に入った連合艦隊は積極的に艦隊決戦を挑むつもりだったが、艦艇の消耗を恐れる日本側が逆に禁ずるという齟齬が起きたため、倉庫が満杯の状態が続いた。太平洋戦争でも消費量は少なく、当面は在庫処分が続くという予測が立てられている。そのため、艦艇の刷新が進められたが、戦後型の大型艦は直接戦闘にはほとんど向かないため、戦前型の防御改善型が主流になった。これは『直接防御』がなければ、戦艦が生き残っている世界では生き残れないからだ。超甲巡は『大きい巡洋艦』であり、『小さい戦艦』ではない。大正期の巡洋艦の老朽化という命題への対応であるのだ――

 

 

 

 

 

 

――これについては、扶桑としては、『戦艦は紀伊型戦艦で更新したから、46cm砲の試験艦として大和型を造ったのに、前線で使えと言われて困っちゃう!!』だった故だが、その紀伊型戦艦はモンタナ級戦艦の存在で『旧式化』が露呈。国民の造艦運動を抑えるために、信濃と甲斐の空母改装を取りやめたことは不本意だった。だが、大和型でも対応できない艦艇の出現が現実になり、超大和の開発が具体化するというグダグダぶりであった。その結果、戦艦・空母・潜水艦装備の急速な近代化に、巡洋艦と駆逐艦が追従しきれない問題が発生。超甲巡の量産継続と『従来サイズの巡洋艦の改善に移させる』派が艦政本部で対立してしまう。その折衷案が二つを併行して行うということであった。1949年には後者も大型化し、巡洋艦というカテゴリのそのものが曖昧になってしまうのだが、軍縮条約の名残りである『備砲の口径の基準』は生き続けたため、20cmを超える砲を保つ場合は『超』、20cmなら『甲』、15.5ミリなら『乙』、14cmは『両』という基準が扶桑国内で設けられるに至ったという――

 

 

 

 

 

 

 

 

――アニメから離れた能力を持つに至った、一部のプリキュア。その筆頭格はキュアドリームであった。デザリアム戦役で『覚醒』して以降は完全に独自路線に移行。草薙流古武術を扱え、スーパーロボットの力を生身で奮うに至るなど、一言で言うなら『チート』である。ただし、多段変身形態は彼女独自の方向性になっており、現役時代に到達していた『シャイニングドリーム』形態の発展に位置する『エターニティドリーム』形態に開眼。それがデザリアム戦役の後にあたる時間軸での切り札である。なお、他の世界での合体フォームである『ドリームキュアグレース』は制約の多さが仇になり、(キュアグレースの転生で、理論的には可能となったが)試されていないことは公表されており、それを惜しむ声が多い。

 

 

次に、キュアピーチ。彼女は転生する前に『光の力』に目覚めていたことが判明していた。プリキュアへの変身能力を既に有していたからか、俗に言う『仮面ライダーアギト』に変身するわけではないが、その力は奮えるようになっており、アギトが使用した武器や能力を『プリキュアの姿を保ったまま』行使できるなど、転生したからか、かなりの変質を経ている。そのため、ある時点からは『プリキュアの皮を被ったアギト』と評されている。

 

 

キュアメロディ。彼女の場合は直近の前世が『紅月カレン』であった影響が色濃く、生前の愛機であった『紅蓮』の輻射波動を生身で発動できるようになっている、口調がガサツになっているなど、攻撃的な特徴を持つ。その一方で、キュアメロディとしての能力は保たれているため、最も現役時代からかけ離れているプリキュアと言える。

 

――この三人がダイ・アナザー・デイで活躍した事から、『プリキュア三羽烏』と扶桑国内で評されれたが、ピーチはトレーナー的役目を途中から引き受けたため、デザリアム戦役以降はキュアハート/相田マナが戦士としての役割を引き継いでいる。最近はキュアメロディも自由リベリオン(彼女はプリキュアでは珍しく、日本連邦の国籍ではない)で階級相応に飛行教官をするようになっているため、三羽烏のメンバーは流動的になってきている。そのため、最近は第二期/第三期プリキュアとの組み合わせも増えているのである――

 

 

 

 

 

――ルドルフとブライアンが(入れ替わっていたため)参加した撮影は、扶桑皇国軍が日本国内で人員(前線/後方を問わず)募集をしている事を示すポスターと、TVCMの撮影であった。扶桑の三軍はクーデター後、人員の損耗回復が損耗に追いつかない悪循環に陥っており、日本でのリクルート活動に精を出していた。扶桑軍で一定期間の勤務をすれば、食うのに困らない程度の恩給が約束されているというのは経済の低迷が続き、『一億総中流』というお題目が有名無実化して等しい日本に暮らす青年~壮年層には魅力的であり、2020年度から始まった募集には、かなりの人数が応募した。一応は国家公務員の採用なので、そこそこ厳しい審査があるが、応募者の少なからずは自衛官経験がある者だったりするので、すんなりと採用された。日本側も『自衛官経験者が扶桑軍の悪しき伝統を廃してくれる』事を期待し、それを止めようとはしていない。実際、扶桑軍の伝統とされていたものは、自衛隊式に『明文化』などがなされていく過程で『違う形になった』り、『実情に合わなくなり、自然と消えていった』。扶桑海軍航空隊の『海軍に撃墜王はいない』という方針もそれだ。統合戦闘航空団などの国際協力の際に『不都合』が生じたために『多量撃墜者』という言い訳で、自軍の人員を派遣させるグダグダぶりを発揮するなどしていたため、64Fが実質的にその統合戦闘航空団の役目を引き継ぐと、内規の『時代遅れ』ぶりが余計に際立ってしまい、集団主義的な風潮を嫌った熟練者が次々と空軍へ移籍していったのも併せ、空軍の『二軍扱い』が強調され、『予算対策で存続した』と揶揄されているほどであったためだ。(政治的理由で)扶桑で全体主義が廃れ、個人主義が急速に台頭したことも、エース制度の公式化が行われ、64Fが公的に『エース部隊』と言われるようになった理由である。――

 

 

 

 

 

――これもカールスラントが撃墜数を競う文化を世界に根付かせたためで、古株の作戦参謀ほど、同国空軍に恨み節だった(自分たちの出世の道が断たれたため)。とはいえ、同国もドイツによる政治的制裁で空軍の熟練者の多くを他国に事実上は供出させられたため、ズタボロであったが。M粒子の存在で、21世紀に確立された『戦闘のシステム化』が完全には成り立たない場であるため、『エースパイロット』の存在が自然とクローズアップされたのが、ウィッチ世界の状況であった。武子も本来は『部隊で任務にあたった以上、その勲功は部隊全体のものであり、個人が誇るべきものではない』という考えだった。公には、『友人が国際協力の場で冷遇されたことに罪悪感を覚え、中央での出世を捨てた』というのが、64F指揮官への就任理由にされているが、実際のところは『君じゃないと、荒くれ者共を御せないから……』という上層部の懇願と友人の推薦、自身が転生者である故に『記憶の覚醒で、中央での出世に興味を無くした』からである。欧州で評価されるには、撃墜数の多さのみが必要。それが大戦の流れで示されたため、軍内の全体主義的な考えは(実務上の都合で)短期間で駆逐されたわけだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

――ミーナはその流れで『扶桑とカールスラントの外交関係を冷却化させた元凶』と見做されたため、問題の発覚の時点で『将官への出世の道』と『ガランドの後継者候補』から脱落した。扶桑とカールスラントの政治取引で、501統合戦闘航空団の運営主導権を手放すことにもなったためだ。カールスラント軍全体の不祥事として取り扱われ、扶桑への技術ライセンス提供でのトラブルも表ざたになったためだ。その内の人的トラブルの責任をヘルマン・ゲーリングと分担する形で負わせられた彼女は1945年~太平洋戦争の期間は表向きは『療養所で療養している』という形になり、公の場に姿を見せなかったとされる。(実際には、日本連邦で『西住まほ』名義で従軍していた。日本語がネイティブになったため、誤魔化しようがあった)彼女はミーナ・ディートリンデ・ヴィルケとしては、公には『過去の実績の評価と扶桑の不手際の発覚で、軍法会議への訴追は免れたが、飼い殺しにされた』という道を辿った。(これはミーナのトラブルと同時に発覚した『カールスラント軍とカールスラント軍需産業の策謀』の悪辣さが扶桑の『不手際』を遥かに凌ぐものであった事、日本連邦の復讐心に『火に油を注ぐ』事態を防ぎたいが、ヘルマン・ゲーリング元帥に全責任を負わすには、あまりに問題が広範囲に渡っていたため、トラブルを起こした士官が誰かどうか必要であったための『生贄』/『犠牲』であった)とはいえ、この事が報じられると、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケとしての活動は困難となるため、西住まほとして生活したほうが身の安全を確保できたという側面もあった――

 

 

 

 

 

 

――それと関連して、人格が『夢原のぞみ』で完全に固定された中島錦についても、錦の記憶は維持されている事から、扶桑向けには『彼女がプリキュアに覚醒した』という体裁が整えられた。中島家は扶桑きってのウィッチの名家であり、姉妹全員が軍人であるからだ。ただし、肉体の容姿が完全に夢原のぞみになっている事、親戚の年長者に『漫画嫌い』がいる事でのトラブルの懸念から、のぞみは中島家には戻らず、野比家にしばらく居候する事を選んだ。ダイ・アナザー・デイ第一の英雄とされつつも、扶桑軍内部で『どっちとして扱うべきか』という問題があったからだ。結局はネームバリューの問題で『夢原のぞみ』として扱ったほうが都合が良いためと、日本から援助を引き出すための材料にできるため、錦の栄典その他を引き継がせた『夢原のぞみとしての軍籍』が改めて作成され、太平洋戦争以降はそちらの軍籍記録で管理された(のぞみが日本で巻き込まれたトラブルを利用して作成された)。これは扶桑の新興の名家である中島家の将来の財産相続トラブルの防止の意図も大きく、彼女が中島錦と同一人物であることは太平洋戦争までには『軍ぐるみで』伏せられたのだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――西暦2022年 骨川家の保有する『海辺の別荘』(四丈半島ではない)――

 

「では、撮りまーす」

 

カメラマンが撮影するシャイニングドリーム。海辺で日差しを浴びつつも、羽根を広げる構図を撮影していた。撮影用の表情は凛々しいものだが、これは『中身』のブライアンには『意識しての柔和な表情』が難しいからである。(思春期以降のブライアンは闘争を求め続けてきたので、自然と厳しい表情になりがちであった)

 

「……これでいいか?」

 

「はーい、ありがとうございます」

 

 

本来は柔和なイメージがある『シャイニングドリーム』だが、ブライアンが無頼的な近寄りがたい雰囲気を持つためか、撮影イメージは孤高さと凛々しさを押し出したものになっていた。また、ブライアンが本気になると発する『オーラ』が可視化されると、『強者』と言ったほうがしっくりくるのだ。

 

「君は肩の力を抜けないようだね」

 

「ガキの頃からの癖なんだよ。アンタだって、『そいつ』のイメージからは離れてるだろ」

 

「それは言えてるな」

 

ルドルフも、キュアハートの『慈愛』からは離れた『皇帝』としての雰囲気を醸し出していたため、撮影イメージを変えてもらっている。これはルドルフの持つ『威厳』の関係だ。

 

「今、体験していることは、我々にとっては非日常というものだな」

 

「分かりきった事を。これが二昔前なら、どっかの民放の局がドラマのネタにしてたろうよ」

 

「世にも奇妙な物語か。元は米国のドラマがアイデア元だと、祖母から教えられたよ」

 

「ああ、ミステリーゾーンか。アンタのばーさまもハイカラなの見てたんだな」

 

「海外遠征を最初にしたウマ娘だからね、祖母は。私が最も敬愛する方だよ」

 

ルドルフの祖母『スピードシンボリ』はシンボリ家を勃興させたことで知られ、ルドルフは本家筋の後継者である(ただし、史実ではルドルフ引退後、ルドルフに代わる存在は現れず、代わりに外国産のシンボリクリスエスが名を馳せた)。

 

「しかし、アンタ無き後、後継が出なかったことは?」

 

「シンボリの名をクリスエスが継いでくれるだけ、ありがたいものだ。名が残らんと、人々はすぐに忘れてしまうからね」

 

ルドルフは90年代以前にステイヤーとして名を馳せた『メジロ』、それと対照的な『サクラ』などの名が時代と共に急激に衰退し。メジロに至っては消滅してしまった経緯に、時の流れを痛感しているようだった。そして、海外の大種牡馬たちの子供にテイオーの後の子供達が蹴散らされ、自身も種牡馬としては順風満帆とは言えなかった事から、シンボリクリスエスが名跡を継いでくれただけでも嬉しいようだった。

 

「イナリさんも、クリークさんも、子孫は残ってないからな。タマさんはどうだったかな」

 

「タマモは……母系にひ孫がいると聞いたよ。父系はオグリくらいだ。『あの時代のウマ』の血統は」

 

オグリとタマモは子孫を何かかしらの形で四代後に繋げられたが、イナリとクリークは21世紀の頃には絶えてしまった。その事を言い合う二人。

 

「寂しいもんだな」

 

「私はテイオーが繋いでくれたから、続いているようなものだしね。君はどうだったかな」

 

「母系で孫がいるそうだ。その後はわからん。息子達にはすまないと言いたい」

 

ブライアンは自身の子が大成しなかった事で父系の子孫がいない事を知ったためか、自身の早世に思うところがあるようで、哀しげな表情だった。

 

「なら、今度はちゃんとすることだよ」

 

「クソ、現役時代のトレーナーとそこそこ関係が良いからって」

 

そこで、炭酸飲料を喉にかっこむブライアン(姿はシャイニングドリーム)。ルドルフが現役時代の個人トレーナーと良好な関係を保っていることが羨ましいようでもある。ブライアンはチームのトレーナーが東条ハナだったため、リギルで厳格に管理されていた。だが、三冠後のブライアンの個人戦績の低迷、グラスワンダーの低迷を含めての『近年のチームメンバーの不振』へ後手後手に周り、スピカが台頭したことで、チームの評判が落ちたことへの責任を取らされる形で、チームそのものが解散させられたため、ブライアンはグラスワンダーと共に、スピカに移籍させられる見込み(チームの統廃合で同じ扱いのウイニングチケットに誘われたのもある)であるため、今は個人トレーナーが欲しいという。

 

「姉貴のトレーナーに頼むってのも悪くてな……」

 

「ふむ。前々から提案されていたアオハル杯の開催に目処が立ち始めたところだが、君についていけるトレーナーを今から探すのは……ものは試しだ。彼等(64Fの面々やヒーローユニオン)に臨時トレーナーの打診をしてみるかい?」

 

「奴らは鍛える方向が違くないか?」

 

「体を鍛えるという点では、下手な本業より詳しいと聞いている。仮面ライダーやウルトラマンも常に鍛錬をしているのだ。私達がそれをしない道理はないぞ」

 

「ゴルシの入れ知恵か?エアグルーヴの胃に穴が開いても知らないからな?」

 

とはいえ、理屈として間違ってはいないため、あまり強く言えなかったブライアン。一応の忠告はするが、64Fとその関係者は明らかに『オカシイ』としか言えないほどの身体能力を誇っており、一文字號はブライアンを腕相撲で負かし、その上位互換的な人物である流竜馬は『ヒトより遥かに頑丈な爬虫人類を素手で撲殺できる』。最近は博士としても活動中で、体が訛っているとボヤく兜甲児でさえ、ゴルシのドロップキックを素で躱せる身体能力を持つ。正規のトレーナーを抱えていないのに、素でオリンピックアスリート真っ青な身体能力の超人揃いなのは、地球連邦軍本隊からしても『異常』扱いだ。64Fはロンド・ベルの一部署扱いで未来世界の編成表に記載されているので、その本隊のロンド・ベルは『人外』と揶揄されがちだそうである。(通常部隊がお手上げのじゃじゃ馬マシンを乗りこなしてしまう者が多いことから『ロデオ部隊』との渾名がついたという)

 

「で、どうするつもりだ?」

 

「キングヘイローと今回の一件が片付き、テイオーへの生徒会長職の移譲が正式に承認されれば、アオハル杯の準備に入る。明日にでも、加藤閣下に打診をしてみる。彼女達も戦続きだから、我々の世界で骨休めをしてもらいたいのだ」

 

「学園は招待したがってるのか?」

 

「理事長がキングヘイローの一件で米国に飛んだそうで、当分は戻れんらしくてな。代理が送り込まれそうなんだ。その前に、協会への牽制をしたいのだよ」

 

「そういうことか」

 

ルドルフはブライアンとの会話で、ゴルシの入れ知恵を受けたのか、64Fの責任者である武子に面談すると明言した。アオハル杯に備え、ある種の地ならしが必要らしい。また、協会の送り込むであろう人物への牽制が出来る『押しの強い人物』を学内に置きたい思惑もあるらしい。また、黒江がテイオーの招待を今回の任務でフイにしたと愚痴っていたため、その代わりの機会を設けたいと、テイオーが言っているためでもあった。

 

「アオハル杯は既存のチームの枠に縛られない『チーム対抗戦』になるが、それでいて、通常のレースに出る者は出るというハードな日程になる。私にも、特別枠で出るようにと、協会からのメールが来たところだ」

 

「引退したアンタにも?どうなっている?」

 

「今後の特別レースの試金石にでもしたいのだろうな。とにかく、今回の騒動が早く収まってくれる事を祈るしかない」

 

ルドルフもそこまで言い終えると、微糖の缶コーヒーを飲み干し、喉を潤わせる。

 

「次、CM撮影入りまーす!」

 

準備の終わった撮影スタッフから声をかけられ、缶をスタッフの用意したゴミ箱に入れ、次なる仕事である『TVCMの撮影』に入る。ウマ娘である二人にとっては慣れている分野の仕事だが、今回は他人の体を借りてのもの(ドラえもんの入れかえロープを使用)であるため、普段と勝手が違う。それもいい経験だと嘯くルドルフ。『ゴルシの入れ知恵』だと察し、ため息交じりに付き合うブライアン。なんだかんだで、『人の良さ』が滲み出るところに、彼女が夢原のぞみと共通する点があった。

 

 

 

 

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