――変身した姿で日常を過ごすという事のアイデア元は黒江と調、ことはが『そうせざるを得なかった』ことからであった。ことはの場合は『任意の解除が解禁された』後も、素の姿での精神年齢が外見と釣り合わない問題があったために『変身していたほうが、何かと都合が良かった』という事情もあった。――
――実際に、ことはは野比家に居候していた時間の半分以上をキュアフェリーチェの姿で過ごした。次第に素の精神年齢も成長し、俗っぽくなったためか、フェリーチェの姿で荒い言葉を使う場面も増えていった。のび太の成人後の時間軸では、荒い言葉で啖呵を切ることも当たり前となっている。戦闘法も以前と異なり、従来のプリキュア寄りになっていた。比較的に手空きなことから、野比家にいるウマ娘に体を貸すこともある。その場合はナリタタイシンが体を借りている。これは『相性』が良かったためであった――
「タイシン、次のレースはいつだ?」
「まだ決めてない。宝塚記念を考えてるけどね」
「なるほどな。ところで、今週はお前が担当か?」
「今週はこーゆーローテーションだから。チケットは喜んでるけど、そもそも、この入れ替わり…、かなり無理ない?」
「会長さんが街の自治会と約束しちまったんだから、それを反故にするわけにもいかねぇだろ?それに、例の通達、相当に大混乱だ。ビコーペガサスなんて、意気消沈しちまって、まるで結果出せねぇ有様だ。だから、先方に無理を言って、入れ替わってもらってるんだぞ」
「でも、協会をごまかすためでも、魔法つかいなんてのはガラじゃないんだけどなぁ」
「つべこべ言うな。他の方法もあるだろ?」
「そりゃそーだけどさ」
「それに、うちの学園、ライダーの隠れファンは多いんだぞ」
「…マジ?」
「そうだな、シャカールもだぞ」
「え、あの見かけによらずが?」
「なりは不良だけど、あれでインテリだぞ?仮面ライダー(昭和)の改造の組み合わせに興味があるそうだ」
エアシャカールは『身なりはストリートギャングっぽいが、中身はバリバリのインテリ』というギャップがある。彼女は『人+昆虫(飛蝗、あるいは甲虫)』の組み合わせで生み出されてきた昭和ライダーが何故、『世界を守れたのか』という事を割に真面目に研究しだしていた。自分を破った『アグネスフライト』の妹である『アグネスタキオン』が仮面ライダー達と(ゴールドシップを通して)何らかの協力関係にあることに興味を懐き、ゴールドシップに何らかの依頼をしてきたのだと、タイシンには容易に想像がついた。(最も、タキオンの姉が自分の三冠を阻んだ事、気性難のせいで、トレーナー達からも敬遠されてきたためか、理解者や好敵手を求めた節があるが)
「あいつ、タキオンが言うには、数字の信奉者だってことだけど、変わった?」
「まぁ、数字ばかり信じても、土壇場の底力は数字に表れねぇことがわかったんじゃね」
と、ゴルシは返す。とはいえ、シャカールも史実通りに事が運んだ時があれば、それを覆せた事もあるのを(身を以て)体験したためか、自身の持論は貫くが、『何がどうなって、そうなるのか』という探究に切り替えた節があるため、タイシンが『変わった?』と感想を述べるのも当然であった。
「今回のことだけど、会長さんも回りくどい事をするわよね」
「協会の意向なんだから、あたしらにできることは『どう、法のスキマを縫うか』だ。本職は本職できちんとしてれば、多少のお目溢しはしてくれるだろう」
「いいわよね。アンタはG1を六回も勝ってんだから」
「お前は前世だと、体の問題もあって、G1を勝てたのは、一回こっきりだからな」
「そりゃ、そろそろ引退して、家業の花屋を継いでくれって、母親から言われてたけど、癪じゃない。G1に勝てたのが、クラシック時代の皐月賞の一回きりのままでターフから去るなんて」
「そりゃそうだ。因果を超えてやれ。多くは自覚なしにその道を進んじまうが、それを何かかしらの形で知覚できれば、別の形の未来が開ける。テイオーも、ブライアンもそれを選べた。オグリさんも、多少違う道を選んだ以上、お前にできねぇ道理はねぇさ」
「オグリさん、どういう風に違ったの?」
「後で、うちのチームのトレーナーに集めさせた資料を見せる。細かい部分から変えたみたいだ」
オグリキャップはタマモクロスとグルになる形で、『細かい歴史を変えた』らしく、細かな違いは多いが、『最後の有馬記念で勝って、劇的な引退劇を飾った』ところは同じであった。タマモクロスの引退時期がオグリキャップと同時期になり、史実では出ていない時間軸のレースで上位をキープしている。浮き沈みがあるオグリと違い、『覚醒後』はコンスタントに上位をキープし続けたということになっており、ルドルフ引退後の第一世代最強格の一角を占めたとされている(オグリは史実より期間は短いものの、不調に陥る事があったため、准最強の扱いとなっていた)。
「基本は変わってないの?」
「大まかなにはな」
「なるほどね」
「どうだ、その体?」
「だいぶ慣れた。空を素で飛べるのは便利だし。あたしが入れ替わってるせいか、脚力は元の数倍あるみたい」
「ま、あたし達は競走馬の生まれ変わりだからな」
ウマ娘の魂がプリキュアに入った場合、脚力が主に強化されるらしく、走力、キック力などのステータスが大きくプラス補正される。(タイシンはクラシック三冠に挑めるだけのスタミナがあったため、基礎スタミナも向上している)これは魂が肉体をそれに合わせさせるためであり、元に戻っても、プラス補正は継続するらしい。
「あたしの体に入ってる、この子はどうなの?」
「無難に、自治会館でのライブをこなしてるぞ。お前と違って、愛想いいし」
「ぐっ……。どーせ、あたしは無愛想ですよーだ」
「お前、前よりわかりやすくなったな?」
「るっさい!」
拗ねて、顔を真赤にするタイシン。からかうゴルシ。タイシンは以前より、己の感情が表に出るようになったため、言動も以前より快活になっている。
「ま、そう拗ねんなって」
「プリキュアって、こんなコスで戦ってんの?」
「その代は魔法と併用で戦うから、コスの動きやすさは二の次だそうだ。けど、近年では人気のあるほーだそ」
「うへ、マジ?」
「魔法は好きに使えるそうだぞ、この子なら」
「魔法ねぇ」
「元々、大地母神の後継ぎだったそうだから、無から物質を作れるそうだ」
「なにそれ」
「神通力の名残りだろう。それで、弓さやかさん、自分の乗ってたロボのスクランダーを生成させたとか聞いた」
「未来世界の光子力研究所の後継ぎになったっていう?」
「ああ。向こうの光子力研究所も富士山の切り開きでの新研究所建設がポシャったから、予算が削られたんで、この子(キュアフェリーチェ)の魔法で装備を用意させたとか」
「ああ、富士山、世界遺産だもんね」
「そこにジャパニウムの鉱脈があったんだが、あの世界は自然保護の方向に動いてたから、ジャパニウムのエネルギー利用研究は頭打ちになって、代わりに陽子エネルギーの研究に切り替えたんだそうでな」
「それで魔法を?非科学的じゃん」
「金ねーんだから、いいんだそーだ。おまけに、彼女が所長になっちまったから、彼女が進めてた計画が頓挫寸前に陥ったそうだ。その内の一機は完成して、宇宙科学研究所に譲渡したとか」
それは弓教授の弟子であった野中博士が主導して進めていた『マジンガーエンジェル計画』のことで、一定の段階には進展したが、弓教授が政界に進出し、弓さやかが所長を継いだ、炎ジュンが入籍し、懐妊して第一線を退くなどの想定外が続出。計画は暗礁に乗り上げた。想定されたサポート先のマジンガー達がゲッターに呼応し、『皇帝』や『神』に代替わりし、既存のロボの改修程度では能力差を補えない問題が急浮上したのも大きい。ただし、元来はZの正式なパートナーとして想定されていた『ミネルバX』の躯が回収され、中枢部の人工知能は別個に『ヒューマノイドロボット』として生まれ変わり、ボディは搭乗型に改造され、最強のマジンガーエンジェルという触れ込みで修理された。搭乗型に直されたボディは宇宙科学研究所に譲渡され、グレース・マリア・フリードに与えられ、人工知能と分かれた存在となった。人工知能はヒューマノイドロボット『ミネルバX』として再生。平行世界の記憶を持つ+Z大好きをこじらせた言動で周囲の顰蹙を買うものの、基本的には兜一族の忠実な僕であった。
「広告塔に使うの?」
「一応は防衛用だそうだ。ボスボロットやイチナナ式じゃ、ベガ獣や円盤獣は荷が重いだろ?」
「ベガ星連合軍、月にいるもんね」
「暗黒星団帝国が怖くて、月の極点に引っ込んでたんだそうだ。最近になって、別働隊が合流したのか、チラホラ来るんだとさ」
マジンガーエンジェル計画は頓挫したものの、牧葉ひかるにダイナアンAが譲渡され、さやかはアフロダイAの二号機の製造を計画していた。いざという時は自分が使うつもりで。ただし、弓教授は仕様違いのビューナスを薦めていた。ミネルバXはそれを折衷させ、『アルテミスA』というアフロダイとビューナスの長所を兼ね備える新型の開発にシフトさせた。なお、デビルマンからデータがもたらされ、甲児も若き日に遭遇した『妖獣シレーヌ』の姿を模したモードをミネルバXのボディに追加させたのは野中博士だとの事。
「それで、こういうプロパガンダの写真が?」
「パートナーロボも使えるって見せないと、連邦政府が維持費出してくんないんだと」
未来世界の新聞には、皇帝達の留守を狙った円盤獣がパートナーロボに討ち取られているように見える写真が載っていたが、ゴルシとタイシンは『光子力研究所のプロパガンダ』と見ていた。戦闘用のビューナスはまだしも、元は作業用であるアフロダイに武器を持たせたところで『焼け石に水』のように見えるからで、素人目に見ても戦闘用ロボに見えない。
「だからって、作業用にまで武器を?」
「まぁ、連邦軍もザクの改造機(ザニー)でパイロットの育成をしてた時期があるから、作業用でも、とりあえずは武器もたせてんだろ」
アフロダイは作業用の設計なので、パワーウエイトレシオでダイナアンやビューナスに劣る。二号機に改造を加えても、素人目にも、限界があるのはわかる。とはいえ、ボスボロットよりはマシなのには変わりはない、『所長は逃げない』ことのポーズのためだろうと睨んだ。
「ポーズのためだろうけど、こんなパフォーマンスがいるの?」
「光量子と陽子の研究資金を得るためだろうよ。光子力研究所は富士山の一件で心象悪くなってんだとさ、地域住民から」
「そりゃ、切り開くとか言っちゃえばねぇ」
タイシンはそこで、読んでいた『2200年代の日付の新聞』を畳む。デザリアム戦役の事後処理のことしか載っていないからだ。
「でもさ、ゴルシ。なんで、23世紀に紙の新聞が残ってんの?」
「ミノフスキー粒子が一年戦争で使われて、既存理論の電子機器が使えなくなった時に、新聞社は博物館に展示してあった骨董品の印刷機で刷ったんだと。だいぶ対策が進んだ時代になったけど、その方が安心するって世代が増えたんで、そのままになったんだとさ」
23世紀は未来的になった点もあれば、22世紀終盤の一年戦争での文化面のカタストロフィで、21世紀初頭までのライフスタイルに回帰した側面もある世界である。デザリアム戦役の起こった時期には、新聞は『インクジェットプリンタでの発行』になっており、21世紀初頭レベル』に回復していた。また、コスモリバースで自然が復活する以前に研究されていた『代用肉』がそのまま定着し、食料品不足を補ってもいる。
「それと、あたしたちの時代にも研究されてた培養肉が実用化されてるってさ」
「培養肉?SFのディストピアものみたいね」
「デラーズ紛争の惨禍の後に緊急で実用化されたんだって。移民星にあまり頼れないものも多いから、代用してる食料品、多いんだとさ」
代用肉は23世紀では意外に普及している。移民星の固有生物は地球人に合うかどうか分からないところも多いし、バード星の厚意で食料品の輸入もされているが、全てを補えるわけではないからだ。
「オグリさんが聞いたら、目回すわよ?」
「地球人の食えるもので代用してんだから、あの人の胃なら消化しちまうよ」
ゴルシも、あまりに頑強なオグリの胃をバキュームか何かのように解釈しているようだ。
「そりゃ、あたしたちは毒に耐性のある種族だけども、あたしは普通の人間くらいしか食えな…あ、今は入れ替わってるんだった」
「プリキュアは消費カロリー多いぞ?あたしら並だ。多分、必殺技とかでエネルギー使うんだろうよ」
それを加味してなお、オグリキャップの胃の容量は莫大である。この時点で最も大食いになった(パワーアップの関係で)プリキュアであるキュアドリームとキュアハートの倍の量が収まる。(変身時)その二人も、プリキュアでない時は常人より多少食う程度なので、素で『学校の貯蔵庫がカラになる』オグリキャップとは比較にならない。これに対し、アグネスタキオンは『エネルギー接種効率自体は最悪では?』と推論している。その逆に、常人レベルしか食べられず、太りやすい体質のメジロマックイーンはステイヤーで鳴らしていたため、オグリキャップと逆に『エネルギー効率が高いのでは?』と述べている。
「でも、オグリさん、なんであんなに食べられんのよ。プリキュアが子ども扱いの量って」
「会長さん曰く、学園の七不思議だそうだ。笠松の分園にいた時は、貯蔵庫がすっからかんになって、コックがショックで入院したってよ」
オグリキャップの食欲は親友や理解者、後輩を問わずに恐れられている。スピカのトレーナーは『俺がチーフの時で無くて良かった…』と漏らし、ルドルフは『学園の貯蔵庫を増設してなければ、学園は致命傷だった…』と呆れ半分に話した。タマモクロスは『オグリは大食いで早食いなんや』と述べている。また、現役時代の頃は、自分のライバルであったスーパークリークの作るカレーライスを好んでいたとも述べており、根本的に贅沢は馴染まない(蓄えは山のようにあるが)気質らしい。
「どういう胃袋よ」
「バキューム?それでいて、庶民派。まぁ、元は貧乏だったから、贅沢は馴染まないんだろう。現役時代の蓄えが思いっきりあるから、最近はウチのチームに援助してくれてる」
オグリキャップはアイドルウマ娘として名を馳せていたため、引退時には億万長者になっていたのだが、元々が貧乏だったため、あまり贅沢を好まない。引退後もかなり高額の収入が入るため、最近は母のために家を立てたとも述べている。出身チームの後輩のためにも貯蓄を使っており、直近では、ブライアン、マックイーン、テイオーに便宜を図っている。
「オグリさんが?」
「あの人の名声なら、シンザンさんも無碍にはできないからな。オグリさん、裏で『ハイセイコーの後継ぎ』って言われてるんだぞ」
「ファル子(スマートファルコン)がライバル視するわけだ」
「でも、ファル子はダート専門だろ?オグリさんは両方をその気になれば、走れる脚質だった。今の記録だと、現役中期にダートのG1を肩慣らしで走って、勝ってることに」
「なぁ!?」
驚きのタイシン。オグリは確かに、史実でも若手時代にダートで勝った経験があるが、歴史改変後はダートのG1を『脂の乗った』時期に勝利していることになっていると聞かされれば、驚く。調査中とのことだが、史実より出場数が多くなっていたことなどから、タマモクロス共々、かなり走った機会を増やしたのがわかる。
「相当に増やしてるから、二人で満足するまで走ったんだろうな。」
「まぁ、走りたくても走れなかったウマ娘たちはいくらでもいるから、あの二人は過去を改変できるのなら、そうしてでも走りたかったのね」
「走れなくなって、挫折した連中の祈りや思いを供養する祭りが元の世界にあんだろ?二人は自分達の心残りを過去の改変で果たしたんだろうさ。それで会長が拗ね気味でな」
「あの人、案外に子供っぽいとこあんじゃん」
「自分を巻き込んでくれなかったのが、ショックだったんだろ?禁じ手でもあるから、種明かしを今までしなかったんだ。エアグルーヴが知ったら、いい顔はしないだろ?」
「あの人、そういう手を嫌いそうなクソ真面目な性格だからね」
「ブライアンもそれを分かってるから、未来を切り開くほうを選んだのさ。テイオーとあいつは『過去を否定するよりも、未来を作る』タイプだ」
「だから、シニアの王者に返り咲くって、あいつが言ってるわけ?」
「ディープのオジキたちが次代のエース格に登り詰めるのは運命だが、ブライアンが輝きを取り戻すのは、あいつの持つ権利だよ。史実では叶わなかったから、こそな」
「ローレルが聞いたら、どう思う?」
「ローレルには凱旋門賞に行く権利があるが、ブライアンは勝ち逃げをしたいのさ。前世の意趣返しに、な」
ゴールドシップは、ブライアンがサクラローレルに勝ち逃げしたいと説明する。前世で引導を渡されたお返しという奴だ。
「だからって、一番人気に近いプリキュアと入れ替わってんの、あいつ」
「ま、それはあいつの趣味も兼ねてんだろ。あいつ、ガキンチョの時は意外に大人しかったんだろ?」
「子供の頃は会ってないのよ。見かけたくらいで。でも、まさか、自分から言い出すとはね、今回の事は」
「あいつとしても、ビコーペガサスやカワカミプリンセスを理解できないわけじゃなさそうだしな、ハヤヒデから聞くと」
「聞いたの?」
「カワカミプリンセスがまたトレーニングルームに大穴開けたんだとさ。その事情聴取のついでにな。曰く、子供の頃、そういう類のアニメは見ていたと思う。今は無頼を気取っているが…だとさ」
「へー…」
「お前はどうなんだ?」
「子供の頃は体調崩しがちで、入院も多かったから、人並み以上には見てたわよっ!……悪い?」
「うちのスカーレットとウオッカも見てたようだから、それは同じだよ、安心しろ」
ウマ娘達の世界でも、ヒーロー番組やヒロインものは大人気で、ビコーペガサスはヒーロー番組の大ファン、カワカミプリンセスはヒロインもの好きが高じて、オークスを目指したほどである。
「今回の事は?」
「ああ、ハヤヒデには知らせてある。必要上、連絡要員がいるって言われたんでな。入れかえロープの仕組みに興味津々だったぞ」
「他には?」
「スズカやアマさん(ヒシアマゾン)だ。スペとブライアンの保護者だし。ただ、スペとオグリさん用に食料品を用意しないといけねーのがなぁ」
「しゃーない。ノビスケは知ってんの?」
「知らせてある。今回の事の中心だし、あいつが何気なくしてきた『シゴキ』の仕返しを目論んだのが『スネ樹』か『スネ太郎』のどちらかの孫だしな」
「あいつ、なんで、一族で唯一のきかん坊になったの?」
「のび太や調、ことはの推測だと、母親似なのと、おばあさん(野比玉子)からの遺伝だって話だ。のび太は諌めてんだが、ジャイアンが『男はこうでねーと』って寛容でなぁ」
ノビスケはススキヶ原の街の歴代のガキ大将でほぼ唯一の『非・剛田家のガキ大将』である。やっていることは子供の頃のジャイアンよりは大人しいのだが、時代が時代なため、PTAからの受けは良くはない。おまけに、狡猾に立ち回れたスネ夫と違い、その息子たちは輪をかけて気弱である。ジャイアンの子『ジャイチビ』(ヤサシ)がのび太寄りの優しい性格なため、ジャイアンがノビスケに『ガキ大将としての後継ぎ』としての英才教育をし、息子を鍛えたかった。それがスネ夫の子のどちらかに負い目として刻まれ、その更に孫が復讐を目論んだというわけで、多忙なノビスケの両親にも非がないわけではないが、ジャイアンが『近所のおじさん』をしすぎた事も、今回の騒乱の原因であった。
「今回の原因は、ジャイアンさんがノビスケを見込んで、色々とガキ大将の英才教育をした上、ノビスケの母親寄りのきかん坊の性質が合わさったことにあるわけで、のび太も困ってたよ」
「直接的な原因は?」
「ここから数年前の幼稚園児の頃の誘拐未遂事件だろう。そこからスポーツに傾倒し始めたっていうから」
「プリキュアに助けられたのを、クラスメートに笑われたの?」
「たぶんな。幼稚園児とかは無垢な分、言われたほーは来るからな。特に、ノビスケは『のび太の子』って色眼鏡があるし」
ノビスケが男らしさに傾倒するきっかけを推理するゴールドシップ。プリキュアはなんだかんだで女子向けのアニメなので、ノビスケはそのプリキュアに『守られている』ということで、ノビスケは女子からは人気者になったが、男子からは中傷されたのは、二人も容易に推測できた。また、ノビスケには(中高で持ち直したとはいえ)父ののび太が小学生時代に打ち立てた不名誉による色眼鏡がついて回っていると、のび太自身も嘆いているので、今回の騒乱の責任は『親である自分達に非がないわけではない』と発言している。
「だから、その色眼鏡を打破しようと?」
「たぶんな。それと、多分、周囲の男子の嫉妬もあるかもな。ノビスケが危機に陥った時に、歴代のプリキュアが助けに来てくれるってのは」
「それじゃない?」
「かもなぁ。誘拐未遂は本当に緊急事態だったんだけどなぁ。ガチで戦闘になったそうだし」
ノビスケもその事件では本当に殺されそうになっており、ブザーを『藁にもすがる思い』で鳴らしたのは本当である。ゴールドシップが聞いた話によると、フェリーチェは本気で切れており、『真ゲッタートマホーク』(ハルバード型)を構えた状態で現れたという。また、当時の地域紙の一面をその様子が飾ったため、『アニメとの違い』が初めて、世間でクローズアップされた。
「ああ、その地域紙って、スクラップしてある、この記事?」
「のび太が事後に切り取ってたんだってよ。アニメとまるで違うから、記事の著者も戸惑ってる文面だぞ」
「……これじゃね」
キュアフェリーチェは本来、魔法の詠唱と徒手空拳が主体なのだが、その頃には存在と力の変質を経ていたため、殺意マシマシの得物を初っ端から構えるようになっていた。共に戦ったキュアルージュとキュアマーチに『現役時代との能力の目立った違いがなかった』ため、悪目立ちしたところもある。また、敵の能力者の能力に『有機体と無機物の中間化する』というものがあったため、キレた状態のドスの利いた声で『こいつが有機体なら、ぶち殺す!!メカなら……ぶっ壊す!!』と言い放って、トマホークの乱舞攻撃を行ったため、ネットニュースになった時には、ネットの世界が祭りになっていた。
「当時のネットの反応も相当だぞ。いくつか読むぞ。虚無ってるーーー!!だとか、ゲッター線が仕事した?、誰か、動画取ってるのいないか!?バックミュージックは『DEEP RED』で決まりだろ!とかだ。ゲッター線に取り込まれた?ってツッコミも多いけどな」
「魔法つかいと関係ないし、やってる事がゲッターロボみたいだもんね。あの子とドリームが一番に違いがあるって聞いたけど、相当なのね」
「フェリーチェは特に大きい。故郷の世界が滅んだ後に、ゲッター線と光子力に身を委ねて、自分の存在を再固定させたから(元々が大地母神の後継者であったため、その世界が滅ぼされた後の改竄による影響で、一時はフェリーチェからことはへ戻れなくなっていた)、自分の大事な誰かが危機に陥ると、情け容赦しなくなったらしい」
「うへぇ」
「ゲッターリーダー達の教育もあるんだろうが、今の能力はスーパーロボット寄りだそうだ」
竜馬と號の教育の成果もあるらしいので、荒事に躊躇がない。『プリキュア5の世界』にいたのぞみBを、『心を折る勢いで』圧倒した事の理由づけでもあった。
「同じなのは姿だけ?」
「そうだな。ま、相当に恥ずかしい思いもしたそうだ。その姿で、のび太のご両親に挨拶するしかなかったそうだし、プリキュア姿で公共交通機関に乗ることもあったって」
「……マジ?」
「ま、下手に空飛ぶわけにもいかないし、のび太のご両親が若かった頃は普通に送り迎えをしてただろうし」
そのことは調もシンフォギアで同じ経験を持つが、意外なことに、状況を逆に楽しんだのがユニ(キュアコスモ)であるのは言うまでもない。なお、真田志郎曰く、この類の現象は『異世界を飛び越えたか、転生後の体を能力に順応させるための一時的な現象だ。PCのアプリケーションのインストールのようなものだ』とのこと。黒江はこの現象を聞き、(自身の体験もあって)『精神鍛錬になる』とし、歴代のプリキュアたちに『変身姿で生活してみろ』という内容の鍛錬を義務付けている。(64がメディア露出の多い部隊だからでもある)
「別の理由もある」
「別の?」
「サイコフレームの干渉対策だと」
「ああ、あのオカルトじみたアイテム」
「オカルトいうなって」
さらに言えば、デザリアム戦役で、キュアドリームやキュアハート、キュアピーチらの変身アイテムが『サイコシャードによる干渉で損傷させられた経験』の教訓も大きい。サイコフレームの規制が議論された背景には、『プリキュアの力であっても、サイコウェーブの干渉を受ける』ことも大きかったのだ。タイシンがオカルトと言ったのも、その仕組みゆえだ。
「で、アンチファンネルシステムやらも生まれたんでしょ?その研究の過程で。でもさ、そんな物があるのに、普通に魔法が信じられてんの?」
「科学だって、1960年代までは万能信仰あったろーが。そーゆーもんだ。」
「アサルトライフルとかが普通に戦争で使われるって、やっぱり?」
「素質のある人間は少ねーんだよ、本当に。ファンタジーもんだって、ドラゴンとかケンタウロス狩れる勇者は数百年に一人って、なってんだろ」
「でもさ、なんでアンタ、ライフルを持ったりしてんのよ」
「手入れを頼まれてるし、フェスタやシリウスに誘われてんだよ、元の世界で。」
「何をよ?」
「サバゲー」
「今どき?」
ナカヤマフェスタ、シリウスシンボリにサバゲーに誘われたと述べ、使いやすいエアガンを選ぶついでに、実銃の感覚をつかんでおこうという魂胆のゴルシ。
「今どきってか、市民権得てんだぞ?お前、アウトドアだからって、苦手じゃねーの?」
「は!?そんなことないしー!」
ムキになるタイシン。とはいえ、魔法は『小っ恥ずかしい』ため、銃は仕事の自衛用に必要であるのも事実である。
「そんな事いうなら、アンタが選んでよ。仕事に持ってく銃」
「お前な~。とはいえ、この街は物騒だから、デザートイーグルか、スーパーレッドホークくらいは持ってけ」
「ゴツいじゃん」
「マグナム弾用の奴だからな。ころばし屋相手に、普通の拳銃弾じゃ非力だ。かと言って、三点バーストできるのは素人には無理だ」
「ベレッタに、あれこれ付いてるのがそう?」
「ケイさんがお遊びで持ってるもんだ。三点バーストできる仕様らしいが、半分はハッタリだと」
「これは?」
「ああ、この棚はセキュリティシックスとその小型版だ。のび太、仕事に使うのはスタームルガー社製のものなんだ。ラフに扱えるからだ。357マグナム仕様だが、その体なら余裕で扱えるはずだ。弾は好きに持ってけ」
のび太が仕事に使う棚の中には、手入れされている銃器が置かれている。のび太は扶桑への環境調査のため、拳銃所持が特例で許可されている。趣味でコルトS.A.Aを持つ以外は『スタームルガー』のヘビーユーザーであるが、これがのび太の裏世界での特徴である。ゴルゴが二大銃器メーカーの拳銃を状況に応じて使い捨てるのと対照的だが、裏世界で『スタームルガー』を好んで使うのは、のび太を表す記号と見られている。プリキュアに自衛用に渡すものも同社製であり、フェリーチェやドリームは同社製の銃で腕を磨いてきている。のび太曰く、『倅がモデルガンと思って乱暴に振り回しても、壊れないから』という理由らしいが、実際は古き良きコルトの気風が残っているかららしい。
「なんで、普通にあんのよ」
「ま、裏稼業の他に、扶桑の環境調査でも必要なんだと。特に、国が滅んで久しい『華僑』の多い地域は治安良くねぇんだとよ」
「なんで?」
「マフィア(ヤクザに非ず)が幅効かせてるんだってよ。十四年式拳銃やらを普通に持ってんから、環境調査の度に、撃ち合いあるんだと」
扶桑の外地には、明国の難民の子孫らがコミュニティを築いた地も多く、同化して久しいといえど、治安の良くない地域は多い。また、何度かの軍縮で流出した軍需品がマフィアに流れていることも当たり前であった。そこは史実の上海や香港の役回りも兼ねていると思われ、のび太も『華僑の子孫の多い都市は魔都と言うべきだね』と述べている。のび太は殴り合いはダメなので、そのところで『妙に70年代の香港映画じみていた』。
「中国が滅んだのに、なんで華僑はいんのよ」
「国が消えても、人は残るってことだ。特に扶桑の外地は難民の行き着く地の一つだったそーだから、一定範囲の文化は残ったんだろう」
ウィッチ世界は中国が滅んだ世界であるが、史実ほど発展しなかっただけで、中国風の服装や『史実の原型らしき食品』は現存していた。その為、扶桑の地方の服装とされるものが、史実での中国、ないしはその勢力圏の国々の服装であることも多々あった。のび太はそこの面で扶桑を『日中の文化が融合した存在』と評している。その歴史こそ、扶桑が事実上の『多民族国家』である所以であり、日本の派生国家ながら、中華文化の継承者的側面も強い理由であった。ウマ娘達から見ても、不思議な様相を呈する風土があるのが扶桑なのだ。