――ダイ・アナザー・デイにて、大活躍をした戦艦大和。その活躍ぶりは史実の不遇を考えれば、充分に感動ものだった。日本連邦の正式発足後は大和型が主力戦艦になったため、それ以前の戦艦の扱いで揉めた。八八艦隊型の紀伊型戦艦や加賀型戦艦が実在する世界線だったからだ。大和型でも近代化を余儀なくされた程なので、更に古い二つを戦艦として維持することは半ば諦められた。性能的にも、新世代艦相手には不足とされたからだ。加賀型は空母改装が通用する時代ではないため、戦艦の姿は保たれ、上陸支援艦に種別変更。『火力がある揚陸支援用艦艇』となり、紀伊型は航空戦艦の実験に供されたため、第一線の戦艦は必然的に大和型とその強化型に絞られた。そのため、日本連邦化で割り振られた戦艦用の識別ナンバーは大和を初号、二号を信濃とするように決まった。武蔵が兵装実験に回されていたためだ。大和型は最終的に、合計で予備を含めての四隻が戦艦籍にあり、超大和も移動要塞タイプと通常タイプとが別々に区分されて登録された。それらの重装備は扶桑の財政負担となるため、日本側は防衛予算そのものは従来の規模に負担金を足す程度で済んでいた――
――日本連邦では軍事交流も盛んに行われており、1970年代から2000年代までの兵器は供与、あるいはライセンス生産が許可されていた。主に陸戦兵器、電子兵装がその対象であったが、扶桑にはそれで充分であった。元々、アジア唯一無二の軍事大国であったため、兵器の生産設備は唸るほどあったからだ。とはいえ、日本主導で民需重視にかなりが切り替わった段階で戦時に突入したため、鹵獲と購入が全部隊で推奨された。鹵獲兵器がそのまま(車体や機体のマーキングの変更を経て)運用されたのは、扶桑の兵器供給力の低下も大きいのだ――
――常に、超人たちがいるわけではないため(当然のことだが)、扶桑軍は軍に残る貴重な若い人材の育成にかなりの資金をつぎ込んでいた。扶桑からすれば、軍の世代構成を左右するほどの死活問題であったからだ。元々、ウィッチは長期の従軍が想定されなかった人々であるため、それに対応する仕組みを用意する必要が生ずるなどの『財政負担』ものしかかった。そこも兵器生産予算の削減に繋がった。現実問題、1940年代半ばのクーデター後には、扶桑においても、ウィッチを見る目は瞬く間に冷却化し、社会的迫害がまかり通る寸前であった。だが、すぐに有事となったために、重苦しい空気は一掃された。人々が掌返しをする様を目の当たりにした者達は民間軍事会社を興し、有事に備えた。それらは日本による法的規制の導入で多くがすぐに潰えたが、アウトソーシング化によるコスト低下は魅力であったため、後方任務の少なからずは民間軍事会社が担うことになった。太平洋地域に殆どの公的リソースを集中させざるを得なかったため、輸送部隊に休暇を取らせられる余裕がなかったのだ。扶桑最大手の軍事会社である坂本商会(坂本龍馬の一族が数代にわたって、ウィッチ世界で築き上げた一大コンツェルン)の公営化による民間軍事産業の後釜狙いで、多くの新興の軍事会社がその任務に志願していった――
――第二世代宮藤理論はそんな『技術変革期』に産み落とされた。元々は『怪力系の固有魔法に頼らずに搭載量を増加させ、大型怪異に致命打を与える火力をウィッチへ与える』事を目指した理論研究に端を発し、それが基礎理論の世代交代を促した。その発端となった出来事がのび太がもたらした『バスターランチャー』の運用記録だ。シンフォギアやISなどの高エネルギーソースを以てしても、相当な負担を強いたが、圧倒的火力を約束した。それは旧来の理論のストライカーでは、宮藤芳佳とそれ専用のストライカーでなければ、機体の動力伝達系統がオーバーロードを引き起こすため、ウィッチが使う場合は彼女の専用兵装になっていた。それを改善させ、『一般ウィッチでも、一射はできるようにしたい』。グンドュラ・ラルのそんな鶴の一声で、第二世代理論の開発は始まった。バスターランチャーの破壊力は折り紙つき。超高エネルギーを難なく扱える者であれば、砲身冷却のクールタイムを入れての最大出力の連射は容易であるが、『純然たるウィッチ』は宮藤芳佳以外にまともに扱えない。その事の解消の要請が発端となり、第二世代の理論は生まれたのである――
――1947年の年末――
「例の『S物資』だが、完成に目処が経ったのか?」
「ええ。F-100やF-8を落とし込む形で、プロトタイプの制作とテストは進んでいます。予算が減ったので、あと二年はかかるでしょう」
「仕方あるまい。今は通常兵器の刷新のほうが緊急性が高いからな。ウルスラは?」
「彼女は不服そうでしたが、最終的には従いました」
「あいつはカタブツにすぎる。んなんだから、カールスラント人は偉ぶってると陰口叩かれるんだ」
ウルスラ・ハルトマンはなんだかんだで技術屋的気質が強すぎたため、未来技術の導入を進めようとする軍部にとっては邪魔者であった。彼女が冷遇はされど、身分的にテクノクラートのままでいられたのは、トップエースである姉の威光の賜物であった。
「若い頃に、本からしか知識を得なかったから、根本的に融通があまり効かないんだ。娘たちも呆れるんだよな、あいつの」
傾向は和らいだとはいえ、『自分たちの持てる技術だけで勝負する』という思考が強い事から、このご時世では『柔軟性に欠ける』と判定され、地位を失う危険が大きく、姉のエーリカの根回しで『扶桑に出向』ということになり、第二世代理論の研究チームに属した。黒江としても『転生者なのに、前より悪化したような』と同郷の転生者からも酷評され気味な彼女の前途を心配しており、エーリカの頼みで『S物資チーム』(第2世代理論の研究チーム)に入れさせたのである。
「それで、どうだ?」
「彼女は既に知られている技術の範囲でどうにか出来ないか。それに固執する傾向があります。ですので、それでどうにも出来ないものを見せつけ、それに対応するものの必要性をわからせれば良いのです」
吾郎技師はそう評する。彼はこの後、ウルスラを上手く扱い、彼女を第二世代理論の実用化とその改良作業に従事させる。吾郎技師の尽力もあり、ウルスラの人事評価が持ち直すが、その確定には第二世代理論の実用化を待たねばならなかった。とはいえ、目標さえ決まれば、あとはトントン拍子に開発は進み、1948年度中に『魔導オグメンター』(魔導アフターバーナーの俗名で普及)の開発に成功。耐熱合金の進歩もあり、実証実験用のプロトタイプは『X-1』と名付けられ、シャーリー(キュアメロディ)がテストを任せられた。
「で、実証実験は?」
「来年には可能です」
「シャーリーには、史実通りに音速超えをしてもらうか。プロトタイプのコードネームは」
「X-1です」
「ライトスタッフ、だな」
「ええ」
プロトタイプの音速飛行実験用ストライカーは1947年の段階で組み立て中であった。
「あの野郎に言え。ロデオは禁止だ」
「ええ。それがいいでしょう」
「奴はプリキュアになっても、趣味でロデオしやがる。テスパイしてんだから、控えてほしいぜ」
シャーリーは戦間期にはテストパイロットで食っていたが、趣味のロデオとオートバイで怪我が絶えない日々で、クロエからは『アメリカ人だからって、ロデオにはまって、どうするのよ』と呆れられ、のぞみさえ『テストパイロットなんだし、控えたら?』と言われる有様だ。
「のぞみは国産の練習ストライカー『T-1』やライセンス生産の『セイバードッグ』のテストで手一杯だから、あいつに怪我されると、マジで困る」
1947年の段階では、テストパイロット経験者が黒江、シャーリー、のぞみの三人のみ。坂本は当時、空母で研修中なので、不在であったし、武子は本土の錬成中隊の極天隊の様子を見に行っていた。智子は日本との交流のために出向。圭子は一時的に参謀本部に出向し、カールスラント軍部との人員調整の真っ只中であった。そのため、リベリオン系機材の導入には、シャーリーが必要だったのだ。結局、シャーリーは怪我の絶えない日々であったものの、48年までには公的に『音速超え』を達成。以後はリベリオン系機材のテストパイロットを任せられる事になり、やがて、その功績で中佐に昇進するのであった。
――さて、1949年/2022年。キュアレインボー形態になったドリームBはAの『影武者』的なポジションで戦場に加わった。言うならば『囮』だが、キュアレインボー形態であれば、プリキュアとしての基礎能力は匹敵している。その利点を活かし(元々、ドリームはどの世界でも、戦闘経験値が歴代ピンクでも高い)、影武者を立派に勤めていた――
「向こうの私がしばらく戻らないから、代打をやれ、かぁ」
「仕方ないって。こっちののぞみちゃんは仮面ライダー級の戦力だし、パイロットも仕事でしてるからね。働き詰めだったんだ」
「だからって、地力の差が大きすぎだよぉ。自己再生能力まで持ってるなんて」
「そんな事になったから、無茶しがちなんだ。パワーでゴリ押しも効くようになったから」
「ゴリ押し?」
「うん。大技撃ちまくって、ケリをつける事あるよ。多分、ファイトスタイルは現役時代と変わってると思う」
ドリームAは能力が自己再生や自己変態などの領域にまで飛躍したため、大技でのゴリ押しも戦術に加えている。キュアラブリーの説明に聞き入るB。戦術の選択肢がグンと増えつつ、プリキュアかしらぬゴリ押しも行うようになったというAのことを。
「得物も、思いっきり殺傷力あるロングソードだとか、蛇腹剣使うようになってるから、プリキュア色は薄れてるね。合体技も弾かれた事あるって聞いたよ」
「あのさ。めぐみちゃんは、向こうの私とも?」
「うん。あなたとも違う世界の出身。だけど、『あなた』に恩義があるからね」
「恩義?」
「それが今の戦う理由かな。現役は終えてるからね、あたし」
キュアラブリーは自分の世界ののぞみに恩義がある事から、その恩返しも兼ねて、戦列に加わった事を明言した。平行世界の存在であっても、それは同じであると付け加えた。役割を本来なら後輩たちに譲っていていいはずの彼女を戦場に引き戻したのは、自分の存在だと聞かされ、複雑な気持ちになるドリームB。
「いいの?いくら、私のためっていっても……」
「住んでる世界が違うくらい、どうってことないって。そもそも、あたし達の時代には、なぎささん達は大人になってるはずだしさ」
キュアラブリー(愛乃めぐみ)は平行世界の恩恵の意味を知ったようで、なぎさやほのかとの本当の年齢差も自覚しているようだった。
「そう、そうだよね……」
ドリームBはそれを自覚させられ、先輩達との本当の年齢差を考え出すが。
「ん、空で空中戦だ」
「あ、本当だ」
空から不意に響いてきた轟音に、二人が空を見上げると。連合軍で引退しつつあるものの、まだまだ現役で飛んでいる『艦上戦闘機/烈風』と『Bf109G』が編隊で空中戦を繰り広げていた。速力と火力で互角、航続力や格闘性能では烈風の圧倒的優位にある。Bf109G側は一撃離脱戦法を主体に闘うが、横方向の機動力が突出して高い日本機相手では、勝手が違った。
「あ、メッサーが落ちる」
キュアラブリーの言う通り、メッサーシュミットは開発年度が古いため(原型機は1935年初飛行)1945年には、その威力も衰えていた(マイナーチェンジを重ねた性能も陳腐化しつつあった)。一方、烈風は基礎概念は零戦完成以前からあったが、設計の終わった年度は1943年。艤装などの調整、エンジン換装などで2年前後の時間を要したものの、曲がりなりにも『1945年世代の基準は満たしている』。『和製F4U』と評判を取った(逆ガル翼である事から)烈風だが、元々は零戦の正統な発展型であった故に『自動空戦フラップ』を備えており(ただし、史実で搭載予定の『空技廠式自動空戦フラップ』ではなく、史実で実績のある量産型の『自動空戦フラップ』が稼働率維持のために採用された)、横方向の機動力はBf109を超越していた(ロール速度の不備も後期型では改善された)。それが巴戦の総合練度が扶桑に比して劣るドイツ軍の誤算であった。
「あれ?日の丸のプロペラ機、変な翼してる…。カモメみたい」
「あれはゼロ戦の後継機になり損ねたことで有名な『烈風』だよ。史実じゃ、実戦を飛ぶことも、戦後の空を飛ぶこともなかったけど、別の世界じゃ飛んだ。そこから持ち込まれたんだ。アメリカ軍は『パクリ』って馬鹿にするけど、ゼロ戦よりは性能いいよ」
烈風はレシプロとしての最終型では、概ね紫電改と同等の速力を手に入れ、同機にはない『搭載量の多さ』を武器に、初期の戦闘爆撃機(ヤーボ)として運用された。とはいえ、格闘性能そのものは(史実以上の工作技術もあって)『シーフューリー』以上(元々、格闘性能最重視の艦戦であった名残り)であるため、それを引き出せれば、格闘性能においては最強に近い同機は王者である。(ドイツ機は実のところ、日本よりオクタン価の低い燃料で飛行機を飛ばしていたため、戦後基準のハイオクタンガソリンを日常的に使える日本連邦とは『燃料の質』でも差があったのだ)
「聞いたことないなぁ」
「関係者とマニアしかわからないからね、普通は。史実だと、作ってる途中で戦争終わったから」
ウィッチ世界では、ダイ・アナザー・デイの武勲が評価され、しばらくは現役に留まる(ターボプロップエンジンへの強化が条件だが)見込みの烈風だが、史実では『時期を逸している』、『1945年に一世代前の機体を持ってきた』など、駄作とすら言われてしまう試作機である。ウィッチ世界での活躍も日本では、『精鋭を乗せてるから』と陰口を叩かれている。とはいえ、『史実より燃料事情や工作精度が圧倒的に良い』だけで、F6F/F4Uの両雄を上回る性能をマークするなど、潜在ポテンシャルは世代相応であった。ジェット戦闘機が(加速力と機動力の問題で)低評価され、開発が遅れていた世界では第一級扱いである。輸出も検討されており、零式に代わる外貨獲得用の機種になる予定だ。
「さーて、こっちもいくよ」
「あれ、ノーマルの形態で大丈夫?」
「ああ、それは問題ないよ」
「え?」
「はぁっ!」
キュアラブリーは気合を込め、気/小宇宙の双方を高める。すると、最強フォームのフォーエバーラブリーへ二段変身するが、現役時代からマイナーチェンジがされている。現役時代よりパワーアップしている証拠か、オーラが電撃を伴ったものになっている事、アテナの加護によるものか、背中のリボンが白い羽根に回帰している(本来、背中のリボンは『神からの自立』を意味していたが、プリキュア全体がアテナの加護を受けたため、フォーエバーラブリーのリボンは翼へ変化した)。
「私もパワーアップはしてるんだ。問題は敵がそれ以上に強いこと。怪人やら強化人間と戦うこともあれば、格闘技を極限まで研ぎ澄ませた人間は異能を超えて来るからね」
プリキュア達の基礎能力は確かに上がっているが、敵がそれ以上に強いケースが多くなった。聖闘士や南斗最高位の拳士級の超人になると、プリキュアの最強フォームを容易くねじ伏せるのもざらにある(それをも更にねじ伏せるのがゴルゴであり、銃と鋼線を用いた時ののび太だ)。
「うへぇ……想像つかないよ」
「Mr.デューク東郷やのび太さんに狙われるよりは、ずっとマシさ。数キロ先のビルから狙撃されるんだから」
「デューク東郷?」
「ゴルゴ13の通り名だよ。本名か不明だけどね。彼が味方でよかったよ」
キュアラブリーも言うように、ゴルゴ13は東西冷戦下の時代から、少なくとも21世紀中までの活動が確認されている。最大で数キロ先のビルからの見越し射撃で、標的を消した実績がある上、ダイ・アナザー・デイで『ウィッチのシールドを無視できる純鉄の弾丸で以て、敵の数少ない熟練ウィッチ達を消し、連合軍の勝利に貢献している。(この弾丸がウィッチキラー弾として、敵味方関係なく採用されたことも、ウィッチの軍での地位低下に繋がった)
「だから、銃も使うわけ?」
ラブリーが持っていたトランクを開け、中に入っていたボルトアクション式の小銃に狙撃眼鏡を取り付け、調整。手慣れた操作で弾丸を装填するのに驚いたドリームB。
「ブンヤ連中が見てない時はね。技はまるっとバレてるから、補助的には使うよ。証拠は担当部署が隠滅してくれるしね」
現役を退いた後の時間軸からの召喚もかなり多いため、銃火器を補助的に携行するプリキュアもそれなりにいる。キュアマカロンなど、転生後の実家が『扶桑きっての武門の家柄』である事から、『銃火器の使用は仕方ない』と割り切っている。それなりに銃を撃ってみせないと、扶桑の軍人(ウィッチ含む)が納得しないのだ。
「そうしないと、扶桑の軍人さんたちから文句が出るんだ。一応、籍は置いてるからね」
「へ、どういう事?」
「第二次世界大戦が起こってなくて、織田信長が天下統一した世界の日本だから、扶桑は。その分、何かとうるさいんだ」
扶桑は日本と違い、武力で道を切り開いてきた歴史を持つため、帝国時代の日本よりも武術の心得がある事が『出世の約束手形』的な側面が強かった。日本はこれを『武断政治』と切り捨て、文治政治を推し進めさせたが、却って混乱を引き起こした(ただし、銃器の購入規制の強化などは受け入れられた)。1940年代後半は日本の政治介入も激しかった時代だが、同時に戦国三英傑のうち、織田と豊臣の嫡流が(養子込みで)明治以降も存続し、坂本龍馬が老年期まで存命していた扶桑への介入は(日本の予想以上に)困難を極め、結局、成し得たことは扶桑の銃刀類の保有の規制強化や、軍の志願制移行、文治政治の気風の増強などに留まった。ただし、急激に反軍的な風潮が生まれたが故の揺れ幅も極端であり、日本はそれで故郷を追われた軍人への損害賠償金も支払う必要に迫られた。また、プリキュア達に対する視線も厳しいものがあるため、軍籍がある立場相応に、銃器や刀を扱える事を扶桑の衆目にはっきりと示す必要があったのだ。
「だからって、狙撃スコープ付きの三八式歩兵銃を?古くない?」
「あ、これはサンパチじゃないよ。後継ぎの九九式短小銃。日本最後のボルトアクション式ライフルさ。狙撃用にスコープはつけたけど、他は殆ど改造されてないよ」
キュアラブリーはプリキュアの姿を保った状態で、立膝体勢での狙撃を披露する。狙撃仕様(俗に言う九九式狙撃銃)の九九式短小銃を使っての狙撃だ。
「数百mくらいだったら、無改造でも充分さ。相手はサイボーグか吸血鬼だから、弾丸は特殊加工が必要だけどね」
弾丸を装填し、数百mほど先にいた敵の将校をピンポイントで倒す。のび太たちと違い、胸を狙っているが、これは彼女の腕の問題だ。
「ふう。三八式は軽いんだけど、弾の威力がね。だから、この九九式になったんだって。でも、自動小銃の時代に入って、歩兵銃としてはお払い箱になって、狙撃用に回されたんだ」
「……あのさ、手慣れてない?」
「まぁ、今は戦う事が本気で仕事だからね。訓練は受けてるよ」
ボルトアクション式の薬莢排出と次弾装填を手慣れた手付きで行うキュアラブリー。1940年代にも関わず。旧式のボルトアクション式にこだわったのが日本陸軍の敗因とよく言われるが、あのドイツ軍を以てしても、歩兵の基幹ライフルは帝政時代以来のボルトアクション式であったので、カービン銃やライフルを自動化したアメリカ軍が世界的に異常なだけである。
「今の敵は、ナチの残党が変質して、時代ごとに裏で操ってた国や組織の生き残りも多くいるような連中さ。だから、こっちも情け容赦は不要になるんだよね。末端の戦闘員は人間爆弾や捨て駒だしさ。シャドームーンは一匹狼だと思いきや、元来は暗黒組織の次期ボス候補だし」
「あいつが?」
「そう。BLACKやRXと対になる存在。本当なら、あたし達で立ち向かえる範疇を超えちゃってるよ」
シャドームーンは洗脳の弊害で、BLACKやRXほどの柔軟性がないために敗北が目立つが、本来は月の世紀王。BLACKやRXと対の存在なのだ。
「経験値で補えてるけど、あいつが本気になったら、パルテノンモードとフォーエバーラブリーで同時にかかっても、歯が立つかどうか。大決戦じゃ、キュアウィンディのバリアを薄紙のように切り裂いたしね」
「嘘!?」
「それくらい、インフレしてるんだよ、敵のパワーが。だから、あたしたちもなりふり構わずに強くなるしかなかったんだ」
シャドームーンの実力は、現在も未知数である。現役時代の能力値のプリキュア5が歯が立たないのは自明の理である。
「だから、超科学でミラクルライトを真似して、最強フォームになりやすいようにしたりしてるんだ。神様クラスの敵がミラクルライトの類のものを封じてくるってのも、本気で現実問題になったし、超科学のアイテムで変身を妨害されたこともあるからね」
「……」
転移したプリキュア達は既に、キングストーンやサイコフレームの脅威に触れている。自分たち以上に摩訶不思議なそれらの力を実感したため、『既存の手段以外の手段』で現役時代における最強フォームになれるようにしておく必要があったのだ。
「仮面ライダーの皆さんにも、のぞみちゃんのことは伝えてあるよ」
「私は『代理』でしかないってこと?」
「拗ねない、拗ねない。その内の一人が直に援護に来てくれるから。……ほら」
独特のエンジン音とともに、一人の青年がオートバイに跨がって現れる。その青年は手袋を取り、コイル状の手を顕にし、オートバイを立ち乗りしながら、一定のポーズを取る。
『変っんしんッ!!ストロンガー!!』
城茂が仮面ライダーストロンガーに変身し、颯爽登場する。
「よう。そいつが『嬢ちゃん』の同位体か?」
「ええ。ああ、結城さんにライフルを返しておいてくれます?」
ライフルをストロンガーに渡すキュアラブリー。ライフルはライダーマンが調整しておいたものらしい。
「使いやすかったろ? ベースをもっと年式の新しいのにしたら、と薦めたんだがな」
「おーい、めぐみちゃん~。この人は?」
「紹介するよ。城茂さん。仮面ライダー七号で、その名も、仮面ライダーストロンガー」
「仮面ライダー……ストロンガー…。って、な、七号ぉ!?」
「仮面ライダーは光太郎だけじゃない。他にもいるぞ。俺はその『七番目』だ」
風来坊な口ぶりのストロンガー。これがドリームBとの本格的な邂逅であった。仮面ライダーBLACKやBLACKRX(及び、その派生形態)以外の仮面ライダーを彼女は目の当たりにしたのだった。