――ウマ娘たちは協会の通達の網をくぐり抜けるため、『プリキュアとの入れ替わり』という手段を講じ、ススキヶ原自警団の要請に応えた。ドラえもんとのび太が用意していた『入れかえロープ』が功を奏したのだ。ころばし屋によるものと思われる『事故』が頻発していたため、ウマ娘たちも警戒を強め、ノビスケの通う学校の見回りや見守りのアルバイトを引き受けたりしていた。ルドルフとその先輩達の命で、その仕事に割り当てられたのが、ルドルフの様子を見に来た、副会長筆頭のエアグルーヴであった――
「エアグルーヴ、大変だな、仕事は」
「生徒会の仕事で慣れてはいますが、小学生相手は些か勝手が……」
「慣れや、慣れ。ま、ウチは実家のチビ達で慣れてるけどな」
「先輩方は手慣れておられますね」
「子供の相手は慣れているからな。私も現役の頃は子供にも好かれていたから、接し方は心得ている。何なりと聞いてくれ」
「ありがとうございます」
エアグルーヴはオグリキャップ、タマモクロスと共に、その仕事を引き受けていた。二人はエアグルーヴの三期から四期上の世代(レースデビューの上で)で、エアグルーヴの入学時には、オグリキャップらは選手生活の晩年期にさしかかる時期にあった。エアグルーヴは若くして頭角を現し、比較的に早い段階で副会長になった。在任期間は長いが、年齢的にはまだ若いのだ。
「野比氏は今回の事態に継いて、何か?」
「あんさんは『自分にも責任がないわけじゃない』って言っとる。きかん坊の坊主がガキ大将することに不満があった子分の内の一人の孫がやらかしおる事だから、坊主に責任がないわけじゃない。だけど、当人同士は先祖代々の宿命みたいなものって割り切っとっるみたいやけどな。あの三人の一族は、奈良時代以前から不思議と、代々がほとんど同じポジションの立ち位置やというし」
「今回の事件の根本はどこにあると、お思いですか?」
「恐らくだが、ノビスケ達は父親の代と違って、幼なじみではあるが、その範疇を超えた結びつきを得るには至らなかったんじゃないか?父親達は『生死を共にした』仲だが、あの子達は普通の『幼なじみ』でしかないからな」
「幼なじみでも、何かのきっかけで疎遠になることはあるしのぉ。逆に、何かがきっかけで強い結びつきが生まれることもあるで。ウチとオグリ達のように。それに、親やそれ以前の代からの付き合いだからって、当人同士が親しい関係になるとは限らへんしな」
タマモクロスの言うことは確かである。『何かを共にした』関係は、時として『肉親』をも凌ぐ、強い繋がりをもたらす。それは戦争であれ、スポーツであれ、遭難などの緊急事態であれ、変わりはない。
「確かに、そのようなことはよく聞きますが」
「アンタにも、覚えはあるやろ?そうやな、面従腹背。そういう言葉もあるしの」
タマモクロスはルドルフと親しい友人であるため、先輩後輩の関係無しに話し合う事ができる。ルドルフの代の生徒会役員の中には、長期政権になっていたルドルフに面従腹背であった者もいなかったわけではないし、ルドルフのイエスマンと見なされていたエアグルーヴを裏で罵倒していた者も当然ながら、数人は存在していた(ルドルフには逆らえないため)。タマモクロスはルドルフへのツッコミをしつつ、ルドルフ政権の維持を助けていた。
「さて、朝の仕事は終いや。その辺の喫茶店で腹ごしらえするで。オグリ、自重せえよ?」
「ああ。出禁は避けたいからな」
何気にすごい発言だが、オグリキャップ、スペシャルウィーク、タイキシャトルの三人は学園周辺のレストランや定食屋には、『トレセン学園のフードファイター三銃士』として(良くも悪くも)知られている。トレセン学園が何度も食料貯蔵庫の増設を余儀なくされた元凶であることもあり、『店が潰れる』と恐れられ、三人が出禁にされた店は多い。その為、オグリキャップの食事量はスーパークリークかタマモクロスが管理するようになっていたという。
「私からもお願いしますよ」
「むむっ……分かっているさ」
ちょっと不満そうな表情を見せるオグリキャップ。自身が大食いである自覚は(後輩が増えたことで)多少は認識しているようだが、エアグルーヴにも釘を差されたのは、些か心外なようだ。とはいえ、三人の食事でのトラブル等を裏で収拾してきたため、エアグルーヴも釘を差したくなるのは当然であった。
――その前日、のび太からのルートで、ころばし屋Zの基礎スペックデータを知らされたゴルシとタイシン。その関係上、ゴルシもパトロールに参加した。(いくらゴルシと言えど、そのままの姿では『参加』するわけにもいかないため、その日に非番になったキュアビートに入れ替えを依頼した)
「あんた、よく手配できたわね」
「ちょうど、ローテーションの関係で、スイートプリキュアの一人が休暇取ったんで、無理を言って、頼んだのさ」
ゴルシはキュアビートの体を借りている。携行した装備はかなりの重装備で、拳銃は『ルガー スーパーブラックホーク』やら『ベレッタM92』を、ライフルは『H&K G3』を持つなど、『凝っている』セレクトだ。
「今の時間は?」
「午前12時を回ったくらいだ。工業地帯から出られると、犠牲者が増える。ここで封じ込めるしかねぇ」
「月の光が頼りか……暗視ゴーグルとか持ってこなかったの?」
「下手なハイテク装備は役に立たねぇさ。22世紀のマシンが相手だし、今はプリキュアの体を借りてんだ。下手なハイテクより宛になるさ」
ころばし屋Zが工業地帯を根城にしたという情報がタイムパトロールから伝わり、二人はタイムパトロールが『インターポール』の名義で操業を停止させている工業地帯に踏み込んだ。すると。
「あ、あいつは!!」
「野郎、受けて立つ気か!」
二人はころばし屋Zの奇襲を受けた。とっさの反応速度の高さもあり、最初の一撃を避けることに成功した二人は持っている拳銃を連射する。共に、ルガー社製の回転式拳銃だ。
「このっ!!」
「ヤロウ!!」
タイシン(体はキュアフェリーチェ)はゴルシに選んでもらった『GP100』(357マグナム)を、ゴルシはスーパーブラックホーク(44マグナム)を数発ほど反撃で撃った。プリキュアの体を使い、なおかつウマ娘の身体能力が反映された状態なので、片腕での射撃でも発砲の反動を充分に受け止められると判断したため、その態勢で反撃を行った。大口径拳銃特有の発射音が無人の工業地帯に響きわたる。
「あんなこけしみたいな大きさのくせに、すばしっこい!」
「武器に当たったか?」
「火花が散ったから、多分。一、二発が当たったくらいじゃ堪えないでしょ?」
二人はころばし屋Zの後を負いつつ、状況と周囲を確認する。
「この辺の工場は、だいぶ前に操業を止めたみたいだな……クレーン車やフォークリフトが放置されてら」
「だけど、ここでなら、被害を気にせずに戦えるって事でしょ?やってやろうじゃん」
「はりきりすぎんな。奴の撃つ衝撃波は対物レベルの強力なもんだからな」
「だからって、アサルトライフルまで用意したの?」
「壁をぶち抜く火力があるからな。7.62x51mmは。今の主流の5.56x45mmは火力が落ちるんだよ。かといって、重機関銃は持ち運ぶには重いし」
タイシンは拳銃のみを携帯していたが、ゴルシはアサルトライフルも用意する『手際の良さ』であった。のび太が扶桑での調査の護身用に持っているものだが、日本製のものは入手が極めて難しいため、帳簿にないデッドストックがメーカーにあるG3を裏ルートで入手したのである。東西冷戦下の頃のものは、大国間が平和になった90年代以降のものよりも実際の信頼性が良い場合が多いため、裏世界でも未だに多くが流通している。M16も『ゴルゴ13が使用している』ということで、なんだかんだでアメリカ軍から退役せず、地球連邦軍への移行後も予備火器扱いで保管されているほどだ。(弾丸の製造ラインの都合もあるが、軍縮で地球連邦時代の銃火器が破棄され、一転して、本土決戦が取り沙汰された『ガトランティス戦役』の際に解体予定の倉庫から緊急で引っ張り出し、再配備したためもある)
「いたぞ!!」
拳銃弾より圧倒的に威力があるライフル弾を撃ち込まれるころばし屋Zだが、ころばし屋Zは拳銃をバズーカに換装し、対抗する。
「空気バズーカだと!?…どわっ!?」
ゴルシ(体はキュアビート)はバズーカの衝撃波を辛うじて避ける。地面に大穴が開くほどのもので、一般人が喰らえば、重傷間違いなしだ。
「こりゃ、犠牲者が出るはずだぜ」
「タイムパトロールはどう処理してんのよ」
「何気ない事故にして、事を処理してる。ころばし屋のやったことだし、ノビスケ当人の責任を追求しても、奴の子分の孫の世代の人間がした事だし、当人同士は気にしていなかった事を、スネ樹かスネ太郎のどちらかの孫(スネ夫から数えると、曾孫になる)が逆恨みして、『ヤツ』を造ったもんだ。そいつには相応の責任はあるが、ノビスケに『孫の世代に恨まれるから、今すぐにガキ大将をやめて、品行方正になれ』なんて言うのも、お門違いだ。最も、これからの行動に釘は差せるかもしれないがな。起こっちまった以上、奴の手での被害をこれ以上は出さないようにしないといかん」
それは、ゴルシなりの一つの回答であった。のび太たちといえど、全部を未然に防ぐことは出来ないし、逆に『防いだことで、自分がひどい被害を被り、のび太としては不本意な結果になった』こともあった。(例として、のび太は小学生時代、ジャイアンの父が巻き込まれた交通事故を未然に防いだが、結果的に、彼が息子へ買ってきたさつまいもが台無しになったため、それをつゆ知らぬジャイアンにボコボコにされた事がある)歴史の流れの不思議を理解していたゴルシは『起こったことはしょうがないから、被害を最小限で食い止めるようにする』という方針を取っているのだ。
「それに、ジャイアンさんがノビスケを可愛がることは『家族ぐるみの付き合い』の範疇だから、法的に問題はないんだがね。昭和の頃は当たり前にあったことだしな。あたしも、ガキの頃は近所のオバちゃん連中に可愛がられたからな」
「なにか言われた?」
「タイムパトロールの下っ端から嫌味を言われたそうだ、彼。責任がどのこうのいうなら、その場に居合わせられないのに、どうすればいいっての。言うなら、遠く離れてる場所にいる家族をその場に飛んでいって、暴漢から守れって言ってるようなもんだ。仮面ライダーでも無理だぞ、そんな事」
と、ジャイアンに同情したゴルシ。実際、仮面ライダーたちが組織の陰謀を知る過程においても、名もなき犠牲者は生ずるものだし、ドラえもん達が過去に介入した異人類の世界(例として、犬人類の世界)においても、ドラえもん達が知る由もない『圧政の犠牲者』がいたのも事実だ。更に言えば、のび太達は昭和の常識で育った最後の世代にあたるため、(21世紀のご時世では)近所付き合いがとんでもなく良い部類に入る。だが、のび太達が『当たり前』として認識していた社会はススキヶ原においても、過去のものになり始めており、ジャイアンの家系が代々担った『ガキ大将』という存在も、過去の遺物と見られ始めていた。そのことが今回の事件の背景の一つである……。
――実際に、これから起こるであろう、あるいは『歴史が違っていれば、起こったであろう出来事』の責任を無理に当人たちに取らせようとした結果の例の一つがカールスラントの無政府状態である。ナチスと東ドイツでお前らがしたことだと、理不尽に職を奪い、何も補償も出さずに『公職追放』をした結果、カールスラント全土が『紛争地帯』もかくやの有様になり、結局はNATO軍による軍政下に置かれ、失業軍人への損害補償と再就職(復職含む)支援で『経費が却ってかかる』有様である。また、自由リベリオンは史実アメリカ合衆国の業を支払わされる羽目に陥り、扶桑人による憎悪犯罪の被害者になる者も続出したため、日本連邦の忠実な僕として振る舞うしか生きる道がない、ブリタニアは欧州の大国であるというブランドは守れたが、欧州の軍事で血の献身を求められ続けるようになるなど、史実の米国の担っていた役目が分散された形になった。カールスラントが衰えれば、どこかがその代理を務めなくてはならないという事実は『ある一つの出来事の結果が全てとは限らない』事の表れである――
――これはころばし屋事件にも言える。ノビスケの素行を単純に直させるのでは、事の全ての収まりがつかないのである。ノビスケはたしかにガキ大将だが、高価な他人の玩具をがめたり、すぐに壊すことが当たり前であった少年時代のジャイアンよりは遥かに良心的である。街の大人達の多くは(のび太たちも含めて)ノビスケがガキ大将として振る舞う事自体には寛容であるのだが、インドアの遊びが増え、のび太の少年時代のように『外で遊ぶ子供』が減っていたことを街ぐるみで憂いていたため、子供達に良くも悪くも、リーダーシップを取れるノビスケは、街の大人達の少なからずにとって『好ましい子供』であった。(最も、その気質は小学校入学後に顕著になったもので、幼稚園児の頃はそこまでのきかん坊ではなかった)――
――タイシンとゴルシがパトロールに出かけた後――
「お前も奇妙な仕事を引き受けたな?ブライアン」
「なに、協会に一泡吹かせたかったんでな。事情はオグリさん達から聞いてるだろう?」
「その姿で出歩いたのか?」
「最初は私と会長(ルドルフ)だけだったんでな。それが、タイシンとゴルシも加わったんで、追加で休暇を取ってもらったんだ。向こうは長期戦になるから、交代と休みは必要だからな」
ナリタブライアンは撮影の仕事から戻ったばかりだが、プリキュアの肉体を借りているため、それほど疲労していない。鼻にちゃっかりと絆創膏を貼っているので、(事情を知っていれば)見分けは簡単である。
「お前もしてみたらどうだ?」
「たわけ、私は貴様と違って、そういった戯れをする暇はない」
「いや、テイオー政権に移行したら、お前の役目も縮小するぞ?ルドルフと違って、あいつは自分で動くタイプだからな」
「会長というのは、そのような役職ではないのだぞ?……まったく」
「まるで、おふくろだな。その物言い」
「なっ…!?ブライアン、お前!何を……」
「図星か、やれやれ。とにかく、今はボウズが今の振る舞いになったきっかけを見てみるぞ」
「タイムテレビか?」
「そうだ。例の事件を見てみるぞ」
ブライアンはタイムテレビを操作し、ノビスケが幼稚園児時代に遭遇した事件を見てみることにした。
「日付は20……十何年の……っと」
日付さえ分かれば、細かい時間などの補正機能で、『見たい時間を映し出す』タイムテレビ。ドラえもんのいた時代のテクノロジーの中でも、特に高度な技術の結晶であった。テレビが最初に映し出したのは、今より大人しげで、幾分か幼い顔つきのノビスケ。幼稚園のバスで帰宅の途についていた時に、学園都市崩れのゴロツキにバスが襲撃され、バスジャックされる様が克明に映し出された。引率の教諭は気絶させられ、運転手は脅され、彼等の思うコースを走らされる。騒ぐ子供達は銃の発砲で黙らせられるが、それでも泣き喚く者は素手で殴られて昏倒させられる。
「雑なバスジャックだな。しかも、幼稚園バスを狙うなど……TVのヒーローものでも陳腐になって、そうは見なくなったぞ」
と、ブライアン。学園都市崩れのゴロツキ共はついに子供達を見せしめに殺傷する行為に及び、ノビスケがその最初の餌食になろうとした時、ノビスケは両親に渡されていた『手製の防犯ブザー』を鳴らした。それに気づいた犯人がノビスケを放り出そうとした瞬間。空で一瞬、何かが光り、ノビスケを放り出そうとした犯人は開け放たれたステップ部から外へ盛大に吹き飛ぶ。
「なるほどな、そういうことか」
ブライアンはそう感想を漏らす。ノビスケは一瞬の間、宙を舞うが、いつの間にか現れたキュアフェリーチェにキャッチされていたからだ。フェリーチェはかわいい見かけからは想像だもしない武器を瞬時に取り出し、犯人の二人目を突き飛ばす。
「もう大丈夫ですよ」
「ことはねーちゃん!」
「ここは任せて」
ノビスケにそう微笑いかけたフェリーチェはバスの中にいた犯人を瞬時に制圧してみせる。だが、既にバスは犯人の合流場所についていて、犯人の別の一味らがバスを取り囲む。フェリーチェはバスの運転手と、気絶から回復した引率の教諭を子供達と一緒に避難させようとするも、単独では護衛しながらの戦闘は難しいが……。
「そこで他のプリキュアが援軍に来るのだろう?」
「お前、読んでるな。…って、お前……」
「うるさいっ!子供の頃は見ていた!!悪いか!?」
「うおお、逆ギレすんな!?」
と、意外だが、エアグルーヴも現地での『プリファイ』を子供だった頃は視聴していたらしく、顔から湯気が出る勢いで真っ赤になりながらも明言した。この後が見ごたえある内容なのだが、そこで通信が入る。タイムテレビを切り、音声通信に切り替える。
「ゴルシか。そちらの様子は?」
「まるで戦場だぞ!!撃ち合いの最中だ!」
さすがのゴルシも、かなり切羽詰まった声色(ただし、キュアビートの体を借りているが)で返してきた。通信に発砲音がかなり混じっている。
『ゴルシ、弾!!』
『ほれ!』
357マグナム弾と7.62ミリNATO弾を食らって尚も、その活動力に衰えを見せない『ころばし屋Z』。タイシンは銃を、衝撃波で部品を壊されたGP100から、ゴルシの持ってきた予備のスーパーブラックホーク(ロングバレル仕様)に持ち替え、357マグナム弾の替えを要求。ゴルシがそれを投げ渡す。ブラックホークの設計はコルト・ピースメーカーの改良なので当然ながら、機構は古典的な『シングルアクション』である。だが、タイシンは元々、サバゲーに興味があったのか、西部劇でも見たのか、シングルアクション機構の拳銃を難なく扱い、次弾装填をスムーズに行った。(シングルアクションの回転式拳銃はシリンダーがスイングアウトしないタイプが主流なので、通常は次弾装填の完了に数秒間ほどはかかるのだ)
『タイシン、お前。いつの間にシングルアクションの回転式拳銃の扱いを?』
『説明書を読んだのよ』
『へー……って、おい!?』
ゴルシの疑問へ、タイシンにしては『冗談めかした』回答なので、ゴルシも流石に面食らう。
(あいつ、姉貴のコレクションの『コマンドー』でも見たな?)
と、タイシンが見た映画に目星をつけるブライアン。
『ゴルシ、今、隣にエアグルーヴがいるんだが、一応、状況を報告しろ』
『それどころじゃねぇって!NATO弾を少なくても10発、357マグナム弾を4発は食らっても動けるなんて、あのなりに似合わねぇタフネスだぞ!!』
ゴルシは廃工場というフィールドでの不利を自身の本来の能力に加え、キュアビートの身体能力をフル活用して、なんとか補っている。フルサイズのライフルであり、インドア戦に不向きな『G3』を携行していながら、その不利を感じさせない身のこなしを見せている。だが、ころばし屋Zも廃工場の中にある廃棄物を遮蔽物として使い、二人に狙いをなかなかつけさせない。音声だけだが、相当に切羽詰まっていることにしびれを切らしたエアグルーヴはブライアンからインカムを借り、二人に通信する。
『なんとか隙を見て、外に出ろ。その体の持ち主の能力も使えるはずだろう』
『その声はエアグルーヴ?無茶言うな!衝撃波を拡散させてきやがるんだ、こっちは避けるのに精一杯だ!!』
『向こうが遮蔽物を使うのなら、お前らも利用しろ!なんでもいい。目くらましにできるものを探して、それを奴に撃たせろ!そうすれば、借りている体の元の持ち主の持つ技を気兼ねなく撃てるはずだ』
『アンタ……意外にいいこと言うじゃねーか』
『御託はいい!とにかく、外に出る事を優先しろ!室内では、大きさの差でお前らは不利だ!』
『分かった!』
切羽詰まっているため、この時ばかりは真面目に返すゴルシ。廃工場の外に出て、ころばし屋Zを『体が覚えている技でどうにかする』。エアグルーヴが咄嗟に考えた策だが、インドア戦ではジリ貧である事からか、二人は満場一致でそのアイデアを採用。なんとか外へ誘い出す作戦に切り替えるのだった。