――なんとか、外に出たタイシンとゴルシ。エアグルーヴのアドバイス通りに、外なら体の持つ能力を使えると判断。タイシンは試しに、フェリーチェが持つ能力を使った――
「弾丸に耐えても、電気エネルギーならどう!?」
雷雲を呼び、轟く雷を指で受け、エネルギーを収束させる。フェリーチェは現役時代とは違う方向性でパワーアップしていたため、その能力も大きく変貌している。その証がこの技であった。
「プリキュアに似つかわしくないけど、『偉大な皇帝』の誇る一撃、受けてみる?」
エネルギーをフルチャージし、そこからサンダーブレークの要領で一気に解放。電気エネルギーがビームの如き様相を呈し、ころばし屋Zへ放たれる。
『サンダーボルトブレーカー!!』
浄化をメインにしつつある『プリキュア』とは対極にある『敵を薙ぎ払う』技である。そのエネルギー量は膨大で、サンダーブレークを遥かに上回る。元々がサンダーブレークの発展技であるので、当然と言えば当然だが、サンダーブレークの方向性を極めた結果である。
「ええいっ!」
空間爆破で〆るが、ころばし屋Zはボロボロになった外皮を脱皮する形で耐え抜く。
「なっ!?」
「外皮をパージしやがっただと……!?」
驚く二人。そして、『彼』はニヤリと微笑うと、対戦車ライフルじみた形状の銃を撃つ。ゴルシは咄嗟にキュアビートの『ビートバリア』を展開し、なんとか防ぐ。
「ふー。間に合ったぜ」
「でも、逃したわね」
「奴も消耗してる。そう安々と動くまい。今頃、ノビスケを父親がそれとなく叱ってるはずだ。今回は事が複雑だし、犠牲者も出てるから、後で現場で黙祷するぞ。スネ樹、あるいはその兄のスネ太郎か?はなんで、日記に注釈つけなかったんだろうな。事態がここまでこじれた原因だと思うんだけど」
「日記なんて、三日坊主になる事が多かった分野じゃない。親父もじいさまも、夏休みの絵日記は嘘を書きまくってたって言ってた」
「ま、そーだろうな。夏休みの宿題の日記がこうなんだから、普段の日記を続けられんのは、よほどのもの好きか、幼稚園児くらいだよなぁ」
タイシンも、ゴルシも学校の課題の絵日記はきちんとこなしていたらしいが、普段の日記は割にいい加減な方(特にゴルシ)らしい。インターネット時代の個人ブログでさえ、更新が面倒くさくなるのだから、手書きの日記など、なおさらである。
「ネットで昔に流行ったブログも、めんどくさくなって、ブログ主が投げたのがあるからね。……って、銃で思いっきりドンパチしちゃったけど、大丈夫?」
「誰も見てねぇし、ここの証拠隠滅は頼んであるから、心配すんな。それに、一応、こいつらの職業柄、銃は訓練とかで使ってるから、誤魔化しは効かないわけでもない。すべてがアニメと同じわけでもないことは、世間も承知の上だ。そもそも、こいつらが戦うこと自体が違法行為になりかねないってんで、扶桑軍が抱え込んだからな。銃を使うこと自体は織り込み済みだ。訓練で撃つことは当たり前にあることだからな、軍隊や警察じゃ」
プリキュアのタブーはウマ娘のそれよりは緩いものの、存在はしている。しかしながら、現在の彼女らの職業柄、一定範囲は破らないとならないのも理解している。また、唾棄すべき『絶対悪』と呼ぶべき者たちが今の彼女らの対峙する敵であることも。
「ノビスケには、今回の事件の当事者で、原因を作った張本人でもあるから、犠牲者の出た現場で黙祷と、冥福を祈らせる。ジャイアンさんは古いタイプの人間だからな。のび太も話を合わせてるけど、ご時世的には不味いのよな。21世紀に昭和の常識は多くが通じなくなってるからな」
ジャイアンは経営者としては有能である。とはいえ、父親としては、ガキ大将であった頃を懐かしみ、ノビスケに『イロハ』を叩き込む、気弱な実子に基本的に優しいが、妻似の気弱なところを叩き直そうとするなど、些かの時代遅れなことは否めなくなっている。そのため、ヤサシが武の後を継いだ暁には、補佐が必要(父と違い、気弱な性格であるため)だと目されているほどだ。
「のび太か?倅を叱ったか?」
「ああ、今ね。ジャイアンの手前、調子合わせたけど、悪いことは悪いし、スネ夫には後で、倅と僕とで謝っといた。それと、セワシに調べさせたんだけど、どうも、その日記は日頃の不満のはけ口にしていたものらしい」
「何、本当か?」
「ああ。セワシがスネ夫の孫(セワシの少年期には老人だが)から聞き取ったことだから、まず、間違いない。現場で合流しよう。君たちの戦闘の証拠隠滅は僕から依頼しといたから」
「悪いな」
のび太は『ジャイアンに調子を合わせた』と明言し、今回ばかりはジャイアンにも非があるといえるが、『自分の子供時代には問題にならなかったことだぞ』と突っぱねるのは、目に見えていた。そのため、のび太とスネ夫は、ジャイアンが溺愛しているという、彼の妻に諭してもらおうということにし、彼女に事情を説明。ジャイアンを説教してもらうことにした。良くも悪くも、彼は『昭和のガキ大将』であり、『愛妻家兼恐妻家』ある。今回の事件では、ガキ大将という存在自体が時代遅れになりつつあることは浮き彫りになったと言える。かつて、昭和の戦後期の頃、戦前の名残りと言える『家長』的な振る舞いをする『頑固親父』が世間から嫌われ、その頃の教育を受けた最後の世代である『戦争前に若年~少年期にあった人々』が高齢化や死亡で減少した時期に消えていったように、『ガキ大将』も遊びのインドア化が進む21世紀には『時代遅れ』となりつつあった。いや、既にそうなったと言える。多少なりとも、ガキ大将的気質があるゴルシは双方の立場がわかる故に、複雑な気持ちになっているようだった。
――のび太とスネ夫の両親子はこの10分後、二人から通報を受けた『ジャイアンの妻』が一計を案じ、彼女からのルートで事情を知った彼等の小学校時代の元・担任教諭に親子で呼び出され、『つべこべ言う前に、何故、お互いにごめんなさいが言えんのだ!?』と、親子でこっぴどく叱られたという(そのため、ゴルシたちとの合流に遅刻した)。のび太らの元・担任教諭は彼等の成人後も畏敬されているからだ。(ちなみに、その彼は定年退職後に年老いた母を看取った後に結婚し、一子を儲けた。その子が成人して教諭になり、息子世代の担任となった)今回のみならず、のび太らの成人後においても、彼は教え子たちを気にかけており、いくつになっても、彼はのび太達の『先生』であり続けた。教え子たちを引退後も導き、時に叱咤した彼はある意味、『教師の鏡』であった。もちろん、その翌日、ジャイアンも彼に呼び出され、久方ぶりに彼に叱られた(子の教育の仕方などで一喝された)のは言うまでもなかった――
――プリキュア・タブーは『本人達』の現在の職業、その立場の都合で破らざるを得ないところが大であった。彼女たちはウィッチ世界などの複数の世界で『便宜上』であるものの、軍人となっている。(身辺警護と戦闘行為の法的問題のクリアの意味もあるが)そのため、連合軍や地球連邦軍も一定の配慮はするものの、プロパガンダに駆り出している。ブライアンが代行した仕事はまさにそれだ。また、『軍人』である以上、銃を使った訓練は形式的にしろ、せねばならないのも事実である。今回は『ころばし屋Zの破壊は手段を選べない』ため、ゴルシたちも銃火器をバンバン使ったのである。(あまり効果はなかったが)――
――新野比家――
「思いっきり、実在の銃火器を撃っていましたが、いかがなさるつもりですか、会長」
「野比氏が証拠隠滅をタイムパトロールに依頼してあるそうだ。彼女ら(プリキュア)のタブーはこの際、多くの事項を破らざるを得んだろう。やむを得ん」
ルドルフはゴルシとタイシンが思いっきり、プリキュアの体での戦闘で『銃火器を使用した』事を自衛戦闘に含め、認める事をエアグルーヴに明言した。状況的に銃火器を使わざるを得なかったとの報告も入ったからだ。とはいえ、プリキュア達が銃器を使っていることは公には伏せられている。(公には、使用する目的は『射撃訓練のノルマ消費のため』とされている)異世界でも、関係機関(自衛隊や警察など)等が(使用した場合は)直ちに証拠隠滅を行うという協定だ。
「それに、状況は刻一刻と変わるものだ。明治期と大正期に現れた個体はタイムパトロールが旧日本軍に紛れて、始末に成功している。だが、この時代の個体は『最も出来の良い個体』らしく、脱皮機能を備えているようだ。倒すには、脱皮機能を破壊、もしくは飽和状態に追い込むほどのダメージを与える必要がある」
「だが、並の攻撃ではダメージを負わんようだ。銃弾を物ともせず、反撃をできるところを見るに、かなり頑丈だぞ」
「『彼女ら』の必殺技でも、そうはダメージは負わんだろう。だが、標的が小さいのも難儀だな」
ころばし屋は大きさが『小さい貯金箱』ほどであるため、銃弾を当てるのも一苦労だったのか、ゴルシ達が当てられた弾数は実際の発砲数より少ない。
「犠牲者を悼み、冥福を祈りつつ、この事態を収束させるのが何よりの手向けになる。しばらくはこのままでいるしかあるまい。そうすれば、街の自警団への義理立ても成り立つ」
ルドルフはプリキュアの肉体を借りることを『街の自警団への義理立て』とした。本当は本来の肉体でやりたいが、教会の通達には従うしかないので、プリキュアの体を借りるしかなかったのは些か不本意なことであったらしい。
「本来の肉体でしたかったがな」
「教会の通達には従うしかないだろう。最も、こいつらのイメージはぶち壊しまくっているがな…」
不満を漏らすルドルフを窘めるブライアン。キュアドリームの体を借りているが、ブライアン本来の孤高/無頼な雰囲気を纏っている。鼻にも絆創膏をしており、声色もブライアン本来のものに寄ったのか、のぞみのそれより低めで、ドスの利いた声になっている。
「それは仕方あるまい」
「アンタはその気になれば、相応にぶりっ子演技できるだろうに」
「TPOに応じた振る舞いと言ってくれ」
ブライアンは、ルドルフが卒業済みの先輩らの前では、現在のテイオーに近い振る舞いをする事を指して、呆れ混じりに言った。ルドルフも苦笑交じりに返す。
「しかし、タイシンが体を借りている奴だが、ずいぶんとアニメとかけ離れてる能力を持つな?」
「彼女も『アニメとは別の存在』だからな。同じなのは外見だけで、能力は別物だ」
「タイシンもノリ悪くないんだな」
「彼女、意外に気合が入っていたが、知っていたか?」
「いや、あいつはインドア派だとは知ってるが、あそこまでノリがいいとは思わんだ」
タイシンが意外なほど気合を入れて、『サンダーボルトブレーカー』の技名を叫んだことは親類のブライアンをしても驚きであった。
「あの技はなんだ?映像に切り替えて、見てみたが……」
「サンダーボルトブレーカー。グレートマジンガーの後継機種『マジンエンペラーG』の必殺技だ。本来はな」
マジンガーやゲッターロボの必殺技はゲームなどで容易にビジュアル化されているため、既に衆目の知るところにある。プリキュアの一部は『プリキュアでありながら、存在としては既に、その範疇を超えている』ため、それらを放つ事ができる。つまり、『浄化』と対極にある『討滅』の力を得た事になる。
「技自体が『こいつら』の本来の役目とは対極にあるが、アニメ通りのままなら、あいつが借りている体の持ち主が20年近くも、この世界で特訓を繰り返していた理由がない」
「つまり、敵と戦うために、アニメの通りのままではなくなったと?」
「アニメがあるってことは、自分の能力が全て分析されている事でもあるからな。子供でも買える本に曝されている以上、そこから離れるのは当然の帰路だろう?」
「確かにそうだが」
「私たちも映像などで、その能力をトレーナー達に分析されるだろう?それで、対策を立てられるが、基礎能力の差でねじ伏せるか、新しい境地に達したことで、敵を抜く。やることは案外に似てるんだよ」
ウマ娘たちの場合はレース運びでも駆け引きもあるが、G1級になると、生半端な策は能力差でねじ伏せられてしまう。これはタマモクロスやオグリキャップの時代以降に顕著になった事項だ。
「全盛期が何らかの理由で終わってしまったウマ娘が成績を保てなくなるのは、自覚なしに能力が落ちていく上、回りが自分の傾向を分析しきったからだ。私も、カンを取り戻そうと、あれこれ考え、試した。結果は個人で契約を結んでいたトレーナーにヘイトを集めるだけだったがな」
ブライアンはチームトレーナーと別に、個人トレーナーの契約を結んでいたが、ブライアンの体調管理やレースの選択などで協会から苦言を呈されてしまい、ブライアンの低迷の原因の一つのように扱われてしまい、今回の事が起きる前に『前協会長の圧力で、退職に追い込まれた』。それを初めて公にした。
「お前、だから、テイオーから聞いた話を信じたと?」
「半信半疑だったさ。だが、テイオーが有馬で全盛期以上のポテンシャルを見せつけ、姉貴をねじ伏せた。それで調べていたんだ。あれから、姉貴の歯車は狂っていったからな……」
「テイオーを倒したいのか、ブライアン?」
「個人的な願望としてはな。だが、私にはそれ以上にやらなければならない事ができた。テイオーと走る機会があるかどうか」
それはサクラローレルとの決着である。史実では引導を渡される側であったが、ウマ娘としては意趣返しをしたい。それが現在のブライアンが抱く大志である。それまでに、自分の走者としての名誉を回復させておく必要がある。個人トレーナーの名誉も併せて。
「お前にやりたいことだと?」
「ああ。どうしても果たしたいことだ」
ブライアンは史実では、マヤノトップガン、マーベラスサンデー、サクラローレルに世代交代の事実を突きつけられた末に引退している。その記憶が蘇ったため、その逆に『王座への返り咲き』を狙っている。個人トレーナーへのせめての手向けとして。
「走者として、地に落ちた名誉をもう一度、この手で取り戻す。オグリさんにできたことだ、私にできん道理はないはずだ」
どこか哀しげに話すのは、個人トレーナーが自分に別れを告げてしまい、必死に退職を止めたが、彼の意思を覆せなかったことへの悔しさと自分の無力を突きつけられたからだ。
(二度と忘れん。あいつの無念、協会の連中の掌返し……そして、この私の……無力を……な)
三冠経験者ながら、明確に低迷を経験した二例目(ミスターシービーも、シンボリルドルフの台頭と時を同じくして、全盛期が終了。以後は引退までルドルフの後塵を拝し続けた)のウマ娘となってしまった。ルドルフの後継ぎを期待された全盛期との落差、低迷を経験することで垣間見た、『敗者へ酷薄な世間』。それを経ているため、以前より周囲に心を開くようになっていた。故に、全盛期より遥かに優しい目をしていた。言葉づかい以外はキュアドリームを演じられるのは、ブライアン自身が別れと挫折を経験したからだ。三冠馬で『最後まで最強であり続けた馬』は意外に少ない。ディープインパクトでさえ、凱旋門賞の失格などの汚点が存在するし、牝馬三冠馬も歴代の馬達は、その達成後に低迷するジンクスがメジロラモーヌ、スティルインラブ、アパパネの三代も続いた。アーモンドアイでも、数回は敗北の記録があるのだ。
「お前に続く者は新入生にいると思うか?」
「いるだろ?新入生の質は年々上がってるしな。そのうち、会長を超えるのも出てくるかもな」
「そう簡単に出るものか」
「出る時は出るもんだぞ」
エアグルーヴからの質問に、そう返したナリタブライアン。それは将来的に自分の後継となる者達が新入生に二人以上はいる事を確認していたからで、ルドルフの記録も抜けないわけではないことは証明されている。(ちなみに、飛び入り参加で撮ってもらった2020年代時点での当代三冠馬『コントレイル』の引退式での写真は大事に飾っている)ブライアンかしらぬほどに穏やかな物言いであるので、エアグルーヴは不思議そうだった。
――かくして、ころばし屋Zとの第一戦は終わった。明治期、大正期にタイムスリップした個体よりも格段に強力な個体が現れ、サンダーボルトブレーカーの空間爆破にも耐えぬくほどのタフネスなボディを持つ。そのことは重大な脅威として受け止められた。ノビスケは今回の事の重大性を聞かされ、流石にバツの悪さがあり、現場で黙祷し、ころばし屋Zの犠牲者の冥福を祈った。ブライアン、ゴルシ、タイシン、ルドルフの四人は当面の間、プリキュアから体を借り続ける事を決める。エアグルーヴはその間、四人の本来の体を大事に使ってほしいと、プリキュア達に伝える。四人の本来のボディは入れ替わっているプリキュア達が街での広報活動で使っており、無難にこなしていた。(元々、プリキュア達はダンス経験者も多く、戦いが済んだ後にダンスを一般人に披露する機会が多かったため、意外にステージの場数を踏んでいる)
――この頃になると、一部に限るが、プリキュアは現役時代の変身アイテムに依存せず、仮面ライダーと同様の方法で変身が可能になっている。ポーズは決まっているわけではないので、その時に思い浮かんだ仮面ライダーのポーズで変身していたりする。そのため、ゴルシは黒川エレンの体を借りた際、一号ライダーと同じ変身ポーズを取って変身している。この現象は『アニメとは独立した存在である』と彼女らが認知されたこと、能力が完全に存在そのものに根付き、変身アイテムに依存しなくて良くなった(もっとも、現役時代に変身アイテムを介さずに変身した例が無いわけでもないが)からだ。また、64Fに入隊したプリキュアの少なからずが『大決戦』、ないしはデザリアム戦役の際に、『賢者の石』(キングストーン)の光や高濃度ゲッター線を浴びた者が多く、その力で変身に関しての制約が取り払われたとも解釈できる――
――その日の夜 ブライアンは――
「ああ、タケヒデか。姉貴の様子はどうだ?……そうか。今は落ち着いたか」
「あれ、姉さん。そんな声だっけ?」
「ああ、今は仕事で他人の体を借りている。入れかえロープという、ドラえもんの道具を使って」
「姉さんの行った先の世界、ドラえもんいるの?」
「ああ。今の声じゃなくて、私と姉貴が子供の頃に流れていた旧版のどら声だったがな。基本は変わらんよ」
「それで、そっちの世界のプリファイ相当のヒロインの体を?」
「そういう事になる。取引をして、な」
「姉さん、まだ走る気?」
「やりたいことが残ってるんでな、当面の間は現役に留まる。三冠は達成したから、引退の時期はこちらで決められるしな」
競争ウマ娘は一定の戦績があれば、引退の時期は自分で決められる規定がある。ブライアンは五冠達成の功績があるため、マルゼンスキーやキングヘイローがされたような『肩たたき』もされない(世間からの圧力はあるが)。
「教会の通達がうるさくてな。それで、今いる世界で不都合が出たから、体を入れ替えることになった。世界が違う以上、アニメも微妙に違うから、お前達が持っているのは、資料として宛にならんな」
「SFとかでよく見るネタだけど、本当にそういう事あるんだ」
ビワタケヒデ。ブライアンの妹で、ビワハヤヒデの次妹である。年齢は長姉の引退発表の時点で小学校高学年くらい。ハヤヒデは引退発表からこの方、多忙なため、ブライアンは妹である彼女に連絡を入れている。プリキュアと入れ替わったことも伝えたが、ハヤヒデには自分から言うとし、止めている。
「しばらくはこっちの世界で休む。流れる時間が違うから、そっちはキングヘイローの失踪から二週間も経ってないだろ?」
「うん。姉さん。単位は?」
「安心しろ。仮にも、生徒会副会長が留年するわけにもいかんだろ?」
と、学業成績も良好(美術以外)なため、何週間か休んでも問題はない事を明言する。
「美術だめじゃん」
「絵はあれだが、立体はいいぞ、立体は!」
「そういうの、目くそ鼻くそじゃん?」
「ぐぬぬ……」
ブライアンは絵がド下手である。立体はうまいのだが、平面になると、のび太の少年時代とどっこいのヘタぶりである。それは小学生の妹にも酷評されるほど。ただし、それ以外の成績は(ヒシアマゾンの助力もあって)極めて良好で、(五冠達成の功績もあり)何週間かサボっても大目に見られるほど。(生徒会の仕事があることも大きい)
「ハヤヒデ姉さんには私から伝えとくから、ブライアン姉さんはそっちで骨休みして」
「うむ」
「タイテイを幼稚園に迎えに行くから、それじゃ」
「ああ。姉貴達によろしくな」
ビワハヤヒデには、多くの妹がいる。そのうち、ブライアンとビワタケヒデのみが成績を挙げられる事が保証されている。しかし、タケヒデも姉たちほどの実力はないのを、ブライアンは悟ってしまっている。それも、ブライアンが走り続ける選択肢を選んだ理由だった。