ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。新年最初の投稿です。


第四百二十九話「ナリタブライアンの涙と、その身の回りの状況5」

――ウマ娘たちはころばし屋事件を期に、黒江たちの事情に関わる事になった。とはいえ、恩返しの範疇に留まるので、街の治安の維持などを行うのである。ただし、ゴルシやブライアンのように、個人的な事情で『より深く立ち入る』場合もあった。その過程で『因果』という言葉を知ったブライアンは『史実超え』を真に果たすためと、精神面の修行の双方を兼ねて、仮面ライダー一号/本郷猛の営む道場へ入門する事になった。一号ライダーこと、本郷猛は遠征の最中ながら、長期戦になった事から、ヒーローユニオンの業務チェックの必要ができ、21世紀世界を訪れていたため、絶好の機会であった。その際に、ブライアンは組織が復活させた巨悪の存在を知る事になる――

 

 

 

 

 

――仮面ライダー一号の営む道場の稽古所――

 

「君がナリタブライアン君か」

 

「はい。あなたが高名な本郷猛さんですね?私に話とは?他人の体を借りているので、それはご容赦くださるよう……」

 

「構わんよ。俺たちは『気配』で何者かを判別できるからね」

 

「それはあなたの肉体の機能とは?」

 

「関係はない。長年の修練によるものだ。君があの子(のぞみ)の『代行』をしているのなら、話しておこう」

 

「何をですか?」

 

「君たちのいる街に近い高速道路で、組織の雇われ幹部が確認された。道路の監視カメラが偶然に捉えた画像だが……」

 

本郷猛がブライアンに見せた画像に写っていたのは、70年代の特撮ヒーローものに出てきそうな『悪のライバル』っぽい容貌のロボットだった。

 

「このロボットの名はハカイダー。かつて、この日本を守っていたヒーロー『人造人間キカイダー』、その兄『キカイダー01』の兄弟の好敵手だった」

 

頭部に人間の頭脳らしきものを積み込みつつも、不気味に輝く漆黒のボディ、大型の単車を『転がす』余裕ある姿。1970年代的なデザインながらも『風格に溢れている』。そのロボットこそが『人造人間キカイダーの能力を超えた基本能力で造られた悪の戦士』だと説明する本郷。

 

「つまり、悪の組織が造った対抗馬?」

 

「それとは多少異なる。悪の科学者が『そう生まれる』ように仕組んだと言うべきだな。人の脳髄をメインコンピュータ代わりにするが、脳の主によって、ボディの強さも、変身する人間態も変わるという、恐るべき技術の産物だ」

 

ハカイダーは元来、キカイダーを破壊するために造られた。脳髄を格納しているのは、表向きは『人質』ということだが、実際は脳髄の影響が機体に現れる仕組みになっていた。元祖キカイダーと対峙した人間態『サブロー』がニヒルな性格だったのは、脳髄が彼らの開発者『光明寺博士』のものだったからで、サブロー亡き後に現れた個体『ギルハカイダー』が卑劣で傲慢、おまけに妙に小物臭かったのは、組み込まれていた脳髄の質の変化のせいであった。ハカイダーを生むように仕向けたマッドサイエンティストにして、悪の組織の首領『プロフェッサー・ギル』の脳髄が現場判断で組み込まれたため、そのような『小物』に成り下がっていたのだ。だが、その画像からは、ギルハカイダーとしての『小物臭さ』でなく、『サブローであった頃のダークヒーローぶり』を想起させる、颯爽たる勇姿が感じられた。

 

「この颯爽たる姿からして、相当の者の脳髄が組み込まれたと見るべきだ。ハカイダーのボディの基本能力はキカイダーを凌駕するが、それを活かせるかは、脳髄の持つ資質に依存する。キカイダー01の時代のハカイダーは小悪党に過ぎなかったが……今回は違う」

 

「つまり、往時のフルスペックを発揮できる脳髄を組み込まれて『復活』したと?」

 

「ああ。ハカイダーのボディはキカイダー01の時代に、彼の仲間『ビジンダー』の必殺技で引導を渡されたはずだが、組織の手の者が残った残骸を回収し、少しずつ組み立て直していたと考えるべきだな」

 

本郷猛はハッキリと『キカイダー01の時代のハカイダーとは違う』と述べ、注意を促した。組織が差し向けた刺客としては、上々すぎる人物だ。配下の量産型のハカイダー(胸部のカラーリングが異なる個体)を引き連れていないことからも、サブローハカイダーであった時代に近い性質を備えたのだろう。

 

「恐るべき強敵だ。スペックも上がっているから、プリキュアの通常フォームでは、歯が立たないだろう」

 

 

ハカイダー。その存在はダークヒーロー史上に燦然と輝く。サブローとしてのニヒルさ、ギルハカイダーの小物臭さを見せたことから、後世でも絶大な存在として知られる。姿は往時と変化がないが、内部回路は21世紀以降の電子技術で作り直されたので、以前の数倍の能力を得ただろうと推測しているようだ。

 

「1970年代の時点で、俺たちに匹敵しうる能力のロボットであったものが、22世紀以降の電子技術で作り直されたら、どれだけの化け物になるか…」

 

「1970年代は集積回路はなかったような?」

 

「ごく初期のものはあった。大きく発達したのは、80年代以降にパソコンが普及してからだ。冷戦もたけなわな時期は、軍事用途で造られるのが先立っていたんだ」

 

「なるほど」

 

「気をつけてくれたまえ。如何に君たちといえど、単独では危険だ。特に夜は気をつけるように」

 

「わかりました」

 

仮面ライダーは1971年の時点で、2000年代後期のパソコンを超えるほどの処理能力を備える電子部品を組み込まれていた。それを考えると、『その時代相応の技術』で『人造人間』を作れた光明寺博士が如何に天才だったかが窺える。本郷猛がそう促すあたり、ハカイダーの強さがわかる。

 

「それと、扶桑軍の上層部から伝言がある。君が使っている体の持ち主の子だが……今度、扶桑で叙勲されるようだ」

 

「叙勲、ですか」

 

「扶桑には、軍人勲章や従軍記章がある。その子が転生した先の家は扶桑の名家だから、軍部も褒賞をきちんとするところを日本へ見せたいのだろう。ここ数年の国内のゴタゴタで先送りされていたからな」

 

「何故です?」

 

「日本の一部の政治家が扶桑のそれらを廃止させようと、扶桑へ圧力をかけたんだ。俗に言うところの内政干渉になると気づいてからは、大人しくなっているが、一時はひどくてね」

 

 

本郷猛は『のぞみが叙勲される』という情報をブライアンに伝えた。武功章と感状は現場判断で授与されていたが、正式な軍人勲章たる、佐官級相応の金鵄勲章はまだ授与されていない。授与の旧基準をデザリアム戦役の戦功で充分に満たすことから、制度変更前直前での旧制度の最後の授与者で一番に大物となる。

 

「そんなにですか?」

 

「いるだろう?明治~戦前の日本を目の敵にしてるような輩が。信じられんことだが」

 

本郷は軍人上がりの(海軍技術将校。戦後は造船技師)の父を持ち、師であった立花藤兵衛も青年期に特攻隊員(最末期の召集であったが)であったためもあるのと、本来生きていた時間軸(昭和戦後期)の都合上か、日本の左派中心の『扶桑への内政干渉』まがいの行為を冷めた目で見ていた。

 

「俺の父と恩師には軍隊経験があったが、負けた軍隊ほど、惨めなものはないからね。日本が扶桑の軍隊を急に認めたのは、現地の社会不安を煽った形になって、扶桑に逆占領される恐怖があったからだ」

 

扶桑の社会は日本の予定した施策の公表でパニックを起こした。日本の『前向きに検討する』、『予定は未定』の慣習が通じなかったためで、日本は散々な目にあった。とはいえ、政治に興味を抱く参謀たちの追放という目標は達成したものの、扶桑の人手不足を招いた。同時に、日本は軍隊内部の改革を実行した。これはクーデターを伴った副作用が出たため、結局は扶桑軍の64Fへの依存を高めるだけであったが、制度の近代化には成功した。だが、日本からすれば、『政治に関心のある軍人が騒乱を起こす』という強迫観念があり、一定の大義があった。クーデター抑止のためと、傷が大きくなる前に手を引いたのが本当のところだ。

 

「それで、空軍は64戦隊頼りになったのだ。人手不足に陥った上、陸海軍出身者の相克も大きかったからね」

 

「だから、勲章を与えて、現場の士気を?」

 

「引き締めもあるんだろう。君はのぞみちゃんの戦闘技能を、図らずしもラーニングする事になるが、それは承知の上だね?」

 

「はい」

 

ウマ娘はチーム編入後にエース格に成長した場合、チームの歴代エースの持っていた技能を引き継ぐ現象が三女神像のある場所で起こる。ブライアンはある時に、ルドルフとシービー、マルゼンスキー、オグリキャップの四人のそれを継承していたが、怪我でそれらを実質的に喪失していた。それを復活させたい。だが、その現象は完全にランダムであるので、図らずしも、のぞみの持つ戦闘関連の技能も継承するだろうということは認識している。

 

「実は父と揉めてまして…。それもあって、しばらくは現役を続けるつもりです。引退後の進路は自分で決めたいんですが、父は勝手に……」

 

「親はそういうものだよ」

 

「しかし、私には私の意思というものがあります。父の言われるままにはならないつもりです」

 

 

ブライアンは父親と『今後の進路や下の妹達の学費』で揉めており、引退後は風来坊志願であった。しかし、上の娘たちの賞金で充分に潤っているはずであるので、父親は『家業をお前に継いで欲しかったし、子供の全員はトレセン学園には入れられないから』という言い分だったが、それが次女の不信を招いたと言える。結局、ブライアンはこの時に『家は姉貴(ビワハヤヒデ)に継がせる』という意思を固め、自身は風来坊になる腹積もりとなる。父親は事業拡大の資金確保のために、資金を溜め込むつもりだったが、その目論見は『無謀な事業拡大』を阻止しようとしたブライアンの手で潰えたという。そのショックで父親は隠居。肝心の家業はハヤヒデが後に正式に継ぎ、堅実な商売を行い、トレセン学園の大学部に酒を卸すまでに成長する。当のブライアンは大学部卒業後は風来坊となり、しばらくは表舞台から姿を消し、変名で出場した草レースの『荒らし』として生計を立てるのである。

 

「どうするつもりだね」

 

「草レースでも出て、しばらくはそれで食いつなぎますよ。メジロパーマーも、家出していた時期はそれで食いつないでたそうですから」

 

ブライアンは後々にそれを有言実行。裏世界に通ずるシリウスシンボリとナカヤマフェスタのつてで裏の草レースに出走し、勝ちまくることで食いつなぐのである。ブライアンほどの名声を持つ者が個人的事情で闇レースを走る事は伏せられればならぬため、シリウスとナカヤマの二名が情報工作を買って出るのである。一定の名声を得たウマ娘であろうと、引退後も『走る事』をやめられなかった場合は闇レースで小遣い稼ぎをするというのは、種族そのものの性のようなものだった。実際、ブライアンのように、引退後の生活に『意義を見出せない』者は闇レースで『欲求不満』などを発散しており、ある種の受け皿として機能していた。その闇レースを取り締まり、『かつての名ウマ娘達に公に走ってもらいたい』という願いがドリームシリーズの拡充として実現するが、では『二流以下のウマ娘はどうするのか?』という問題も生ずる。ブライアンの現役期はまさにその問題が噴出し始める時期だったのである。

 

「それに、この子の体を借りている以上は名声に恥じぬだけの仕事をしたいのです」

 

「ふむ……だが、それは君たちの取り決めに反する事になるぞ?」

 

「会長もしていることです。それは『お硬い』エアグルーヴの決めた事ですし」

 

ブライアンはそういう理屈で、本郷猛の門下生となった。多少強引な理屈であるが、ブライアンは行動派なので、理屈が先に立つ(一定の実力もあるが)エアグルーヴの考えに異議があったようだ。

 

「さて、君の実力を見せてもらおう」

 

「大丈夫ですか?私は元の肉体のプラス補正が働いた状態なのですが」

 

「な~に、俺は改造人間だ。変身前でも、通常の人間より遥かに高い身体能力を持っている」

 

ブライアンはのぞみの肉体を使いこなし始めたため、かなりのポテンシャルを発揮できる。だが、本郷猛はデザリアム戦役で『二度目の再改造』を行い、機械に置き換わった箇所が増加している。変身前の時点でも、以前の『桜島一号』相当の身体能力を発揮できるようになっているので、ブライアンのこの時点での蹴りに余裕で耐えられるのだ。

 

「失礼します」

 

ブライアンは断りを入れつつ、本郷へ試し蹴りを行う。すると、本郷はこともなげに片手で蹴り足を受け止める。煙が出るほどのインパクトであったが、本郷からすれば、どうという事はない。

 

「ふむ。筋は悪くない。だが……。足刀が決まっていないな」

 

と、評価する。そして、本郷が寸止めの蹴りを披露した。

 

「トゥ!」

 

元々、改造前の時点で『万能超人』とさえ謳われた本郷猛の蹴りは寸止めでも、ブライアンが呆気に取られるほどの迫力であった。

 

「……!?」

 

「人間相手であれば、寸止めでも充分な威力になる。無論、俺たちのような存在であれば、の話だが。高い能力を備えていようと、持ち主がそれを充分に理解してなければ、意味はない。体が変わっても、それは共通だ。君はまず、自分の能力を本当に理解する事から始めよう」

 

ブライアンはこの時、『この人なら……!』という奇妙な確信を抱いた。久しぶりの感覚であった。以後、ブライアンは少しづつであるが、本郷猛の手ほどきで真に『全盛期の走り』を取り戻し始めるのである。マルゼンスキー、ルドルフも似たような経緯で、往時の走りを取り戻そうと奮闘中なため、オグリキャップが『肉体を往時の状態に戻した』だけで、往時の走りができるように戻ったのは、オグリキャップの才能の高さとカンの良さを示していた。ブライアンはそのカンの良さを受け継ぐ事により、教会の言う『責務』は全うできるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――ナリタタイシンはキュアフェリーチェというイメージの異なる者の体を借りた影響か、以前よりは人当たりが良くなった。彼女が野比家のコンピュータで閲覧していたのは、多くのプリキュアを戦乱の渦に巻き込んだ『大決戦』の際の地球連邦による記録映像であった。大決戦はある種の『きっかけ』となったわけだが、同時に、別世界の戦乱にプリキュア達が巻き込まれるきっかけともなった。その際に活躍したメカの一つが、ガンダムF91である。サナリィの司法取引により、正式にガンダムを名乗る事になった同機だが、サナリィの目論んでいた量産化は『エース専用機』としての少数生産という形に変化し、実質的に頓挫した。その代わりに、地球連邦が正規の計画で開発した『ガンダム』の最新型という事で、エース専用のチューンナップが個々に行われた。武子は隊長権限で量産化されたモデルを『MEPE現象』を起こせる仕様に差し戻させる事を考えたが、元からその機能があるオリジナル機の兄弟機を提供され、それを愛機とした。(サナリィのエンジニアいわく、『元から機能があるオリジナルをチューンナップした方が費用が安上がりだし、その方が高い能力を持たせられるから』との事)量産化されたモデルは各所の質を落としているからで、結局、F91はサナリィの目論んだ『主力機』としてではなく、フラッグシップモデルとしての活躍で名を残したわけだ――

 

 

「これがF91ね。オリジナルの同型をチューンナップしたというけれど、結局は量産するよりも、少数生産のエース機として、名を馳せる事になったわけか」

 

サナリィは当初の量産モデルでは、搭載するバイオコンピュータを市販品のチューンナップの範疇に入る『廉価版』に落とすなどの措置を取っていたが、エースパイロットに不評を買い、結局はMEPE現象を起こせるように改造されるケースが相次いだため、第二期生産ロットはその機能を復活させる羽目となった。その設備投資費用で財政難に陥ったところに、ザンスカール戦争の咎を受けたため、今度は彼等が斜陽を迎え、ミドルサイズ規格の登場でアナハイム・エレクトロニクスの軍需部門が復興するのだ。

 

「確かに、サイズ的に『戦闘獣』や『百鬼メカ』の相手は難しいかもね」

 

大型機でも、それ以上のサイズを持つ機械獣や戦闘獣などには基本的に不利であるため、MSで圧倒するには、エースパイロットの乗るガンダムタイプが必須条件となる。しかし、そんな条件は滅多に整えられないため、スーパーロボットが重宝されるのである。その筆頭たるマジンガーも『Zとグレート』では性能面の優位が薄れたので、後継である『皇帝』達が第一線を張り始めたのである。

 

「でも、闇の力で復活したならって理屈で、プリキュアの敵に波紋が効くとはね」

 

波紋法。元来はとある世界のチベットで生み出された医療技術であるが、エネルギーの波長が太陽光のそれと同じであることから、その世界では、最終的に対怪物の戦闘用途に応用された。黒江は『漫画』という形でそれを知っており、キュアドリームの姿を借りている際に使ったのである。

 

「でも、プリキュアの姿なんだし、攻撃力増加とか以外のメリットあるの?」

 

波紋は戦闘用途に応用はできるが、20世紀後半に現れた『スタンド能力』へは優位性が無く、それに取って代わられ、物語から退場していった(吸血鬼が根絶された)。とはいえ、身体能力の増強や自然治癒の増進などに応用できるため、メリットは充分にある。さらに、闇の力で復活した『プリキュアの敵』には『光の力』である波紋は最良の効果を発揮するのだ。

 

 

『山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)――ッ!』

 

プリキュアのオールスターズ戦の復活幹部はウザーラの登場後も一部の生き残りが独自行動をしており、黒江は実験的に波紋を使った。そうしたら、思いの外、効果が絶大であったのだ。つまり、存在を形にする『闇の力』を『光の力』が消し去る事で、彼等は浄化されたのだ。

 

「すごい…本当に浄化された。波紋法を極めれば、肉体の若さを20年くらいは余計に保てるっていうけど…」

 

波紋法を極めた者は基本的に、実年齢より-15歳前後の若さを持つ。最高位の達人であれば、実年齢が壮年に入っていようが、最盛期(20代半ば)の若さを保てる。治癒力の増強というメリットもあるため、タイシンは自身のトレーニングに加える事を検討し始める(ウマ娘は内面から衰えが始まり、外見の衰えは老齢に近づくと顕著に現れる傾向がある)。

 

「……考えようかなぁ」

 

と、波紋法のトレーニングの取り入れを考え出すタイシン。基本的に、ウマ娘は馬の特徴をどこかかしらで引きずっているため、馬がかかる病気や怪我を発症してしまう。メジロマックイーンが治癒を受けなければ、重度の繋靭帯炎で引退を余儀なくされていたように。タイシン自身も史実同様に、遅かれ早かれ、『屈腱炎』で引退を余儀なくされていただろうという診断が下されたため、波紋法の習得はその克服の方法(医学的には予防は困難であるので)であるからだ。ルドルフも繋靭帯炎の発症でキャリアを断たれているのは有名なので、タイシンは最終的に、波紋法を目指す事にするのだ。

 

「生物学的には信じられないけど、あたしたちは馬の特徴を受け継いちゃってる。その対策としては最上かもね」

 

人と同様の構造になりつつも、ウマ科の病気を発症するウマ娘の不思議は解明されていない。そもそも、種族そのものが『ダーレーアラビアン』、『バイアリーターク 』、『ゴドルフィンアラビアン』の三人から始まっており、史実での三大始祖にあたる。(三人はウマ娘の始祖でもあるので、後世で神格化されたのは当然である)その不思議は23世紀世界の科学技術を以てしても、その解明には至っていない。故に、タイシンは波紋法の習得を考えるのだ。

 

「あの漫画で概要はわかるかも……えーと、初期の部だったかな」

 

『ジョジョの奇妙な冒険』。ウマ娘の世界でも存在する漫画である。連載された年数が長いため、文庫本で揃えても、小さい本棚では満杯になってしまうほどの巻数だ。野比家ののび太の書斎のコレクションから拝借し、読んでみることにした(タイシンは知らないが、アニメ化もされている)のだ。書斎に入り、本棚に並んでいる『ジョジョの奇妙な冒険』の文庫コミックの中から、波紋法がピックアップされている初期の巻を選び、読み耽るのだった。

 

 

 


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