――扶桑皇国の支配階級である皇室と華族は(カールスラントの失敗もあって)存続に成功した。皇室は日本にもあるし、華族は日本では身分が無くなっているが、名誉は否定されたわけではない(先祖が公家なり、旧大名であるので)ので、カールスラントのように『無理に一方に合わせようとして、現地の社会的混乱を引き起こす』のは愚策だったからである。左派は『華族階級は直ちに解体すべき』と、繰り返し宣ったが、扶桑軍からの『貴族階級が存続していたり、王族がいる国の軍隊との釣り合いをどうするのだ?』と指摘された上、実際にカールスラントやブリタニアなどの『ガチガチに貴族階級が存続している』国々が連合軍で力を持っているのだから。更に、共和制の象徴のような位置づけだったガリアが国土が怪異に占領される過程で醜態を晒し、あちらこちらに亡命政権が乱立した事から、共和制への求心力自体が低下、シャルル・ド・ゴールも貴族の権威に頼る有様であったのも効いた。結局、シャルル・ド・ゴールが貴族の権威に頼ろうとしたことは他国における共和制の求心力を決定的に削いでしまう結果となり、ガリアの内部分裂ぶりを白日の下に晒す結果となった。そうした混乱が扶桑華族の存続に説得力を与えたのだ――
――戦争に負けたわけでもないのに、扶桑の国を戦後日本寄りにしようとする者は意外に多く、軍隊は特に攻撃の対象とされた。しかし、混乱が容易にわかる職種なため、専門性の高い分野の兵士や将校に大きな影響はなかった。だが、魔女兵科は兵科章のデザインから、歩兵と勘違いされる事も多く、のぞみの一件で大きくクローズアップされた事から、魔女兵科の兵科章のデザイン変更が検討され、1948年度に正式に変更されたが、戦間期に大多数が退役した事、諸兵科連合に組み込む都合もあり、結局は『竹井少将(元)の死を以て、兵科の発展的解消をする』という事が固まった。魔女の高慢ぶりが各所の反感を買う事態が多かったのも後押しになった。その流れは大っぴらにされており、魔女達は正式に職業軍人へ転じる層、戦役終了後に退役を選ぶか。その二つの流れに大別されていった。坂本らは新規育成ノウハウの維持に心血を注いだものの、世の中の流れは反軍へ傾いていったため、思うようにはいかなかった。――
――日本は役所の都合を優先し、ジェット戦闘機の扶桑皇国への配備を急いだが、現地は国家総力戦の最中であり、まったくの新機種の配備を現場が嫌がる有様であった。現地は簡易的な野戦飛行場で運用できるプロペラ機を求め、役所は超重爆を落とせる迎撃機の存在を欲した。これらが噛み合わない様相を呈した太平洋戦線は航空戦力の劣勢を補うため、陸戦戦力の近代化が驚異的に進み、コンバットアーマーの配備までも進んだ。軽戦車と騎兵を代替する戦力として、だ。人型のコンバットアーマーが好まれたのは、敵がMSを持ち、四足型は弱点を容易く突かれるからだ。(怪異が多脚歩行タイプが多いからでもある)ただし、コンバットアーマーは構造的にMSより脆いので、機種更新は驚くほどに迅速に行われた。また、プリキュアに戦線の維持を頼る状況を覆すべく、坂本は64Fにいる傍らで、次世代の魔女を後方で育成していたが、時代の変化は激しく、坂本は無力感すら感じていた――
――航空分野では、1945年当時の扶桑皇国では、開発中に旧式化した雷電の量産は不要論が優勢だったが、隊の幹部が激怒した日本の役人に金属バットで滅多打ちにされ、病院送り(最も酷いケースでは片目を無惨に潰され、内蔵も損傷させられるレベルの殺人未遂だという)にされる事例が相次ぎ、『零戦でB29と戦うよりはマシだろう!』という、ある種の妥協で量産された。扶桑としても、肝いりの局地戦闘機であり、それをそのまま『死産』にするには、あまりに金をかけすぎたのである。更に言えば、ジェット戦闘機の運用に既存の設備は適さず、耐熱性のある塗装がされた滑走路が必須であるが、ダイアナザーデイ当時には大規模に整備する時間がなかったのだ。その関係で雷電が(エンジンと高高度性能を改善された上で)量産された。その成果はなかなかで、繋ぎとしては充分な成果をもたらした。紫電改や烈風にさえ、ケチがつく中、雷電はなぜか、存在にケチがつかなかったのだ(局地戦として当初から生まれたためか)。F-86やF-104に比較的早期に機種転換されはしたが、一時でも必要とされただけ、史実よりは幸福な生涯であった。B-29に曲がりなりにも対抗できる火力を持っていたからで、ダイ・アナザー・デイ中のみの活躍であったが、史実の悪評が嘘のように活躍した機種の一つであった――
――海軍が真に泣いたのは、井上成美の方針で航空隊の主力が陸上にいたことで、空軍の設立に伴い、予備人員しか置いていなかった艦上機部隊が形骸化した事であった。結局、空軍へ移動した部隊に『旧任務』を再度命じる有様であったので、人員の練度が維持された水上艦隊に行動を依存するようになっていた。更に、折り悪く、日本側が現存艦隊主義による温存策を空母機動部隊に取らせたため、空母機動部隊は『数も減り、まともに航海もできない』という苦境に陥ったことになる。元々、雲龍型を使い捨て同然に消耗戦で投入するつもりであったが、日本側が雲龍型の多くを他用途に転用させたため、今度は空母の数の不足が問題になったのである。その関係で空軍の宇宙戦艦が重宝されたが、『オトナプリキュア世界』での決戦に64F保有の艦艇も動員されたため、扶桑皇国はそれが終わるまでは攻勢を控える事になった――
――ジェット戦闘機の登場は空母の少数精鋭化とそれを補う強襲揚陸艦の台頭を起こした。空母のサイズが加速度的に大型化し、長さが300mを優に超え、10万トン超えの排水量が必須となり、量産が効かなくなったのだ。強襲揚陸艦も、排水量が4万5000トンを超える巨艦となり始め、建造時間が延びる有様。戦後型に切り替えられる艦艇は戦後型になったが、巡洋艦と戦艦は(戦後は滅んだために)戦後に殆どが運用されなかった結果、『従来の設計にミサイルなどの戦後装備を組み込む』形しか近代化の手段がなかった。また、従来の戦艦を無理に近代化しても限界があるため、諸外国は戦艦の組織的運用を次第に諦め始めている。それもあり、戦艦を主力装備から外そうと考えていた日本連邦は『怪異への火力確保』という諸外国からの圧力で『戦艦部隊の維持』を続けなくてはならなかった。それは歴史の皮肉であった。――
――扶桑皇国と日本国は大多数が『似て非なる国』と認識していたが、極一部には扶桑を『多少違う歴史を辿った大日本帝国』と見なす者がおり、先鋭化した市民運動家や団体、個人単位での扶桑への妨害・利敵行為が相次いだ。その一方で、扶桑皇国の国力が大日本帝国よりは圧倒的に高い(扶桑皇国の単年度予算は最盛期の大日本帝国のそれの数年分以上の金額であった)事により、史実では成し得ていない『八八艦隊』が八割方完成し、それを維持したままで『大和型を導入した』点は特筆に値する事項であった。日本の大衆は扶桑の『後方支援艦艇の不足』を詰り、無理にそれらを増産させたが、ほどなくして、旧来型の工作艦などの修理では手に余る『電子装備』が大量に導入されたため、電子装備の損傷の際の修理の問題が浮き彫りとなり、浮きドックが各地に配置された。また、雲龍の転用で空母不足が一気に具体化してしまったため、やむなく『大型空母の複数生産』を容認したのであった――
――怪異は世界間の繋がりができた事で、日本にも出現していたが、能力者の力、あるいは超兵器の一点集中で撃破するしかなく、軽装備しかない日本警察は無力であり、日本自衛隊も政治的な意味で出動できないため、必然的に日本政府の指揮下にない『Gフォース』が重宝され、ヒーローユニオンが栄えたのである。怪異を手っ取り早く撃破する手段の一つはプリキュアであった。プリキュア達の複数人が軍に属している事に反発はあったが、世界を守れるほどの力を『誰かの抑えなしに奮う』事の危うさが指摘されていたため、軍が管理する事は理に適っていた。また、現地で既に戦功を立てていた軍人がプリキュアの過去生を持ち、その力が偶発的に蘇ったという事情も、軍の管理下に置く事の理由付けの補強になっていた。例えば、のぞみ。彼女は世界線によっては『戦いを退く』が、彼女は転生前は一生、キュアドリームであり続けた世界線の存在であったため、のび太の提案で『その姿で暮らす』事になっても、抵抗なく受け入れていた。プリキュアになっていれば、容姿は14歳当時のものであるからだが、精神的には大人になっているので、いささかの気恥ずかしさもあった。だが、プリキュアの姿のほうがマスコミの取材攻勢からも避けられる事の判明により、キュアドリームの姿を保った状態で『日本連邦大学』に通い出した――
――ある、一つの謎。それはバダンとの死闘の末に、ドラえもんズはどうなったのか?当時の記録がないために不明だが、時空破断装置を阻止した代償により、次元の狭間へ消えたというのは、間接的な証拠がそう示していたからである。仮面ライダー達がコールドスリープしていた秘密基地を誰がバダンに漏らしたのか?それも謎の一つであった。のぞみは2019年からはそのテーマを調査するようになり、デザリアム戦役が未来世界で終わり、その戦後処理で暇であった時期(日本連邦大学に通っている時期)が中心だが、大学生活の傍ら、その謎を追っていた。
――2019年の年明け間もない頃――
「一号ライダーから聞いたけど、ドラえもん達が消えたのは統合戦争の最中だったそうな。彼らも後で知ったらしい」
「23世紀の資料に残ってないの、のび太くん」
「アナハイム・エレクトロニクスやコロニー公社にも調べさせているが、次元融合現象と統合戦争で、その時期だけ『綺麗さっぱり消えてる』情報サーバーが大半だそうだ。M粒子の軍事利用で廃棄された、一年戦争の直前の時期のものも漁っているがね」
「M粒子で何があったの?」
「有り体に言えば、今の時期に使われてる情報ネットワークの根幹を否定する現象を起こしたのさ。それで一時的に太平洋戦争と大差ないレベルに情報ネットワーク技術が退化したんだ。ジオンが国民をコントロールしやすいようにするために、意図して行ったそうだ。で、戦後にザビ家の専横を後悔した科学者達が復興させたのが『タキオン通信によるネットワーク通信技術』。フォールド通信と違って、タイムラグが起こらないから、瞬く間にそれが主流になった。その過程で廃棄されたサーバーをうちの財団が回収して、情報を漁っている。戦争のゴタゴタで忘れ去られたものだからね。廃棄された人工衛星が『宇宙完全大百科』の情報サーバーだった事もある」
「なるほど」
ドラえもんの『宇宙完全大百科』は統合戦争の最中にサーバー衛星が某国の電磁パルス攻撃で機能停止した後は『トマソン』化していたが、23世紀に野比財団が再発見。内部の情報をフォン・ブラウンのサーバーセンターやメガロポリスの地下都市のサーバーに移植し、23世紀までのデータを補完した『新板』が登場。23世紀以降のロストテクノロジー調査に活用されている。
「今年からはキャンパスがこっちになるから楽だけど、不思議だなぁ」
「何がだい?」
「2020年代近くで学生してる事。しかも、プリキュアの姿で」
「君は世界線によるけど、今頃にはプリキュア戦士じゃなくなってる世界もあるからね。それに君は本来、1993年生まれ。僕と五歳しか違わない。2013年には20で、2015年には就職。この時代には25、6になってる計算だ」
「そうなんだよねぇ。不満なのは、プリキュアの変身は中学ん時の姿がベースだから、その時期の背丈なんだよなぁ。高校んときには、170近くになってたんだけどなぁ」
のぞみは14歳で変身に目覚めたため、プリキュアとしての姿はその時期の姿がベースである。転生後も変身後の背丈は変わらなかった(アカシックレコードにそう記録されていたため)事は不満なようだが、10代の頃の気持ちに戻れたので、それはそれでいいとしている。ただし、見かけが14歳相当なので、仕事に差し支えることもいくつかあったが。
「不満があるのかい?」
「背丈だけね。それ以外は満足さ。文字通りに10代の頃に戻れたからね。まぁ、不死身になっちゃったけど」
「ZEROがシンギュラリティ・ポイントを超えてたからね。そのおかげで、君はテンセンシズに到達したんだよ」
「テンセンシズ?」
「セブンセンシズの三個先の感覚さ。神の領域。神になった者が持つもの。黄金聖闘士でも、ここまで至れるのは、歴代でもいなかった。あのシャカでさえも、『ナイン』だったそうだから」
のぞみAは機械神となっていたマジンガーZEROと一つになった都合で『神』の領域たる『テンセンシズ』に到達した。聖剣も『エクスカリバー』の他に『草薙剣』、『布都御魂』、『天叢雲剣』の力が宿ったため、それらを合体させた『神代四剣』(エクスカムイ)という究極の神剣に進化している。エクスカリバーが進化を重ねた末に到達したのが『日本神話の神剣との合体』というのは、何かの因果であろうか。
「先輩も?」
「到達したはずだ。人から神になった者ならね。君のその右腕もすごい事になったね」
「日本神話の神剣だもんね。斬れないのは超合金ニューZα系だけだよ」
「あれは全宇宙で一番堅牢な上、自己修復機能もあるから、仕方がないさ」
それを以てしてさえも『斬れない』と断言された超合金ニューZαの存在が際立つ。マジンカイザーの凄さが間接的に証明されたわけだ。
「『草薙剣』、『布都御魂』、『天叢雲剣』だもんなぁ。それとエクスカリバーが合体したから、たいていの神獣は倒せるってヤツ」
「凄い事になったね」
「扱えるエネルギー量がアテナエクスクラメーションを超えちゃったもんな。たぶん、あたしの現役時代の敵なら、前世で負けたシュプリームだろうと、一刀で切り捨てられると思う」
「日本とイギリスの最強の剣を一つに束ねたようなものだからね。綾香さんの『乖離剣エア』に匹敵すると思う。で、シュプリームって?」
「前世であたしらを一度は全滅させた野郎さ。後輩の子は許したそうだけど、あたしは納得できなかったよ。地球諸共に倒された上、家族の存在も消されたからね。それがジェネレーションギャップだと言えば、そうなんだけど」
「そいつがプリキュアに生まれ変わるにしても、それなりの禊は必要。君はそう考えたわけだ」
喫茶店で、のび太はクリームソーダを飲みつつ、そう言う。
「うん。ライダーマンにしても、味方になる前、禊として、プルトンロケットを自爆させたじゃん?」
「確かにね」
「どこかの戦闘民族みたいな考えで襲われて、78人が束になっても歯が立たなかった。もし、今の次元で襲われたとしても、今度は返り討ちに……」
「できるさ。神代四剣を食らって、無事でいられるのは、ゲッターエンペラーくらいなものだからね」
「ヒャア……」
「ああ。神剣なんだ、そういう生命体くらいは屁でもない。おまけに、因果律操作も今の君なら操作し返せる。空間支配能力があれば、なおいい。今なら倒せると思うね。」
のび太もそう断言するが、テンセンシズこそが真の究極の小宇宙。速度が超々光速に達する上、アテナエクスクラメーションをも凌駕するエネルギーを生身で操れ、惑星の命の創世すらできるというから、そこまで至った聖闘士がいたかは不明だが、アイオロスが生存していれば、可能性があったともいう。
「すごすぎて、ピンとこないよぉ」
「僕もさ。要はそんなパワーを持ってしまったってことさ。ZEROとの融合でね。話題を戻すけど、統合戦争で電磁パルス攻撃をけしかけたのは、反統合同盟側だったイスラエルって噂もある」
「イスラエルが?」
「連中は日本連邦が覇権を握るのを恐れたからね。だから、日本と戦った。結果は言うまでもないけど」
旧西側諸国も少なからずが民族差別意識の表面化や『統合戦争の後の世界での地位への危惧』で日本連邦と敵対し、怒りに燃える彼らの前に潰えていった。旧フランス、イスラエルもその一つであるという。ネオフランスが何の因果か、王制になっているが、それは統合戦争の敗北の際に共和制に失望した人々がコロニーを建造する際に音頭を取ったからだという。
「フランスなんて、日本連邦に負けた後、何の因果か、王制で立て直そうとする一派と共和制信奉者の間で内戦になったそうな。で、国家の体を保つために『立憲君主制』になった。仏革命の連中が聞いたら、全員が泣くよ」
「……確かに」
「ドラえもんはそんな状況で、バダンの動きを掴み、オーストラリアのどこかで、決戦を行った。ドラえもんズは勇戦奮闘、最後は親友テレカで時空破断装置を阻止したが、それの代償に姿を消した。他のヒーロー達が支援してたにしろ、なんで、ドラえもんズが矢面に立ったのか。その背景を僕は知りたいのさ」
統合戦争は長く続いた弊害か、完全に終わった頃には、当事者の国々でさえ『なぜそうなったか、指導者層も分からなくなっていた』という。ただ、わかるのは『日本連邦がその後の地球圏の指導層の主流を占め、その後に復権してきた欧米との合議制に移行した事、日本列島の地理的要件などの奇跡が23世紀の宇宙大航海時代の幕開けでの主導権をもたらした事。文面だけではわからないことが多いのだ。
「なるほど」
「君も大変だよ、今度の太平洋戦線が開戦したら、大学どころじゃなくなる」
「猶予はそんなにない、か」
「ああ。たぶん、敵は建造中の主力艦艇が完成すれば、戦争を始める。五輪と万博で、こっちは時間稼ぎをしてるが、二年半が限界だろう。扶桑は1946年だけど、47年から48年が開戦のボーダーラインだろうね」
「参ったな、こっちは大鳳と瑞鶴から、自前の空母の更新ができてないよ」
「連邦の供与空母は日本側が運用を控えさせてる有様だからね。財務官僚と防衛官僚が殴り合いになったとか、ろくな話がない。信濃が戦艦だから、連中は面食らってるようだし」
「なんで?」
「あの空母は500mを超えるからね。それで尻込みしたのさ。で、連邦軍は余ってたのを続々と供与しただろ?でも、日本側はそのデカさにブルった。500m超えの超弩級空母だ。君の転生先の扶桑本国にあれを受け入れられる港はない。それで問題にしたんだ。だから、慌てて、港湾施設の近代化を押し進めてるんだがね」
結局、日本側がプロメテウス級の運用にゴーサインを出したのは、戦局の動く『1949年』以降の事になる。日本側は『500m超えの空母など、1940年代の日本は港湾施設が対応できない』とし、多くを軍港に繋留させておく死蔵ぶりを見せ、扶桑軍を辟易させた。だが、日本側の根拠としては『500m超えの空母など、どう乗員を確保すればいいんだよ』という理由があり、『旧軍式の軽空母の全てと、雲龍の多くを退役させなくては確保できない』という強迫観念があったからだ。実際のプロメテウスは統合戦争最末期以降の設計であったため、21世紀の空母より自動化が進んでおり、航空要員を入れても、一隻あたりで『4900人』しか必要としない。これはニミッツ級航空母艦が5600人を必要にしていたより少人数である。航空要員込みでも5000人未満なのは、大いなるメリットであった。日本がそれでも運用を止めさせたのは、扶桑国内のインフラを刷新させたかったためだった。扶桑はこうした政治的思惑も絡んでいるが、高度経済成長期を迎え、主要都市の再開発が始まった。のぞみが数年後に購入する邸宅も、その流れで造成された住宅地に建てられた。だが、防空本部の体たらくにより、のぞみがそこに入居するのは随分と後の事になる。
「たぶん、君の国の空母機動部隊は1950年代を迎えないと、まともに動かしてもらえないと思うよ。日本は過去、投機的な作戦で空母機動部隊を潰してるからね」
「あ号作戦か……」
「うん。あれの教訓とか言って、パイロットの飛行時間は800時間以上じゃないといけないとか宣ってるけど、大戦中のアメリカは300時間くらいで出してたからね。たぶん、600時間に妥協されるよ。魔女出身入れても、900以上の飛行時間があるパイロットなんて、扶桑には数える程度だから」
「あたしだって、覚醒した時点で500とちょっと。おまけに、実戦経験は数年なかった。先輩達を基準にされてもねぇ…ってのが本音。よく飛ぶようになったの、ダイアナザーデイ以降だし」
「実戦経験がある分、扶桑生え抜きのパイロット連中よりマシだよ」
「で、未来世界でガンダムXとダブルエックス、シャイニングブレイクに乗ったじゃん?」
「ああ。それだけど、ガンダムXに乗ったことが色んな意味で評判だよ。しかも、真価を発揮できる状態だし」
「偶然なんだけどなぁ。ビットモビルスーツ動かせたの」
と、地球連邦軍がガンダムXとその系列機を本当に(ファーストガンダムからの延長線の技術で)作った事は21世紀の日本のオタク達をざわつかせた。23世紀の地球連邦軍は(度重なるコロニーや隕石落としの教訓で)MSに『それを止められる火力』を与える事に血道を上げるようになり、アナザーガンダムの技術のスピンオフやキャプテンハーロック、クイーン・エメラルダスの技術供与がそれを可能にした。そのプロジェクトのフラッグシップが『ガンダムX』であった。のぞみはそのプロジェクトを指揮している、のび太の孫の孫の曾孫(のび太本人の遠い子孫)の『ノビ・ノビタダ』大尉(デザリアム戦役で昇進)の計らいで乗り込むことになり、デザリアム戦役以降はそれを愛機としている。
「ほら、アニメだと、君と腐れ縁になってた『ブンビー』と同じ声の少年が乗ってただろ?で、君がニルヴァージュじゃなくて、ガンダムに乗ったから……」
「そこかぁ……シャーリーも紅蓮聖天八極式に乗ってんじゃん」
「あの子の場合は予想つくだろ?」
「えぇ……」
「まぁ、今の君なら、素で並の聖闘士より強いし、機動兵器に乗っても強いから、食いっぱぐれないさ」
「まぁ、ねぇ……」
「上見るときりがないし、下見ても同じ。アムロさんなんて、グリプス戦役後半には型落ちになりつつあったリック・ディアスでバイアランを圧倒できるしさ……」
「……本当?」
「うん。キリマンジャロ攻略戦は長くかかったから、そういう日があったんだって。彼から、その時の記録映像も預かってる。参考にしな」
「とはいっても、あの人の動き、すごすぎで参考にならないんだよなぁ」
「一年戦争の時点で、ガンダムとカタログスペックが同クラスのゲルググを圧倒できるような人だしねぇ」
アムロ・レイの操縦技術はニュータイプ能力を抜きにしても、歴代トップクラスのものであるので、それに次ぐレベルの技能のカミーユやジュドーも『アムロさんの操縦技術はあまり参考にできない』と明言するほどである。アムロ本人曰く、『多少のスペックの差は技能で埋められる』とのことだが、ジェネレーター出力で勝るサザビーをνガンダムで倒したり、後期には型落ち気味のリック・ディアスでバイアランを圧倒するなど、スペックの差が大きいマシンを倒してきている『大物狩り』のパイロットでもある。そこそこの技能(と、言っても普通にエース級であるが)ののぞみからすれば、参考にできない動きをするらしい。
「君だって、ステゴロの時は後輩が『参考にならない』くらいにキレキレの動きじゃん」
「それは……」
「お互い様ってことだね」
「う~……」
「調ちゃんも、はーちゃんも留守にするのが増えたし、僕も表の仕事で昇進しちゃったから、家を空ける時間が長くなったからね。君のキャンパスがこっちになって助かるよ」
のぞみが通うことになった『日本連邦大学』とは何か。日本連邦の若年層の相互交流を促す目的などで設立された日本連邦組織の運営する大学であった。日本人にとって、大学は『普通に入り、普通に卒業するもの』という意識が定着していたが、扶桑皇国での大学は(特に農村部で)『富裕層や支配階層の子弟が通うもの』という認識であったので、第一期の学生は『軍人や実業家、政治家、華族の子弟なり、息女、あるいは皇族』であった。日本としては盛大な『肩透かし』であったが、時代的に仕方がなかったのである。当時、扶桑の平均的な学歴は(日本で言う)旧制中学がいいところ。農村から大学に行こうなどという者は『地主の息子』くらいなもの。女子が大学に行くには、社会的責任を果たしていると示すために『軍に所属する』必要があった。しかし、そこまでして通う者は少数派であった。
「でも、あたしも軍の仕事がいずれは忙しくなるよ?それまでに何か考えておかないと」
「そうなんだよねぇ。魔女達は太平洋戦線が近いからと、南洋に召集されちゃったからね。倅に寂しい思いはさせたくないんだが……」
と、のび太は自分も官僚として昇進してしまった故に、家を開けるようになってしまうと告白し、解決策に悩んでいるようである。艦娘たちに頼もうにも、彼女らも太平洋戦線が風雲急を告げつつあり、集結命令を受けているので、いくら要人でも、その子供の護衛に艦娘を割けないからだ。妻の本当の職業が公安警察と知られるわけにはいかないという事情もあり、のび太はこの問題にしばらく悩まされるのである。その解決には、ウマ娘達との偶然の出会いを待つ必要があった。ウマ娘達は当初、のび太らの抱える『戦争関連の事情』には関わらない方針であったが、ブライアン、タイシン、ゴルシらが『恩返し』という体裁で直接・間接的に協力したりしたため、のぞみもブライアンの『レースで勝てるように戻りたいから、アンタの体を借りて、心を鍛え直したい』という無茶な頼みに応じ、ここから数年後、ナリタブライアンと入れ代わり、『ウマ娘の世界』の出来事に『ナリタブライアン』として関わっていく事になる。
「どうしたものか……」
真剣に悩むのび太だが、意外に早く、問題の解決の時は訪れるのである。
(あたしも……ココと結婚したとして……どこに家買おう……)
と、のぞみも所帯持ち同然になった故の悩みがあった。この時はまだ『婚約』の段階だが、籍を入れてないだけで、『事実婚関係』にあった。小々田コージ(ココ)の転生体『野比コージ』は烈火の鎧を持つサムライトルーパーであり、高校教師。双方が『戦士』の顔を持つ事になったが故に、以前よりも打ち解けて話す場面が増えた。それと同時に、コージが普段いる時間軸は『2030年より後』である事は判明しているため、タイムマシンも用いての夫婦関係という凄い事になっているのである。だが、時間軸の違いは意味がない事だと、のび太はいう。既に、少年時代で自分の息子と玄孫に会っているからだろう。
「大学の授業は終わったんでしょ?倅に何か買ってってやりたいから、買い物、付き合ってくれる?」
「今日は午前中で授業終わったし、いいよ」
「勘定は僕がしとくよ」
のび太とは喫茶店の勘定をし、のぞみはクリームソーダを飲み干してから、店を出る。冬のクリームソーダというのも『オツなもの』。のぞみは前世での成人後は酒飲みであったが、それが原因で肝臓を病んでしまった教訓からか、転生した後はソフトドリンクにしている。不死身になったと言っても、『記憶』があると、『病院通い』は避けたいのが本音である。また、転生後の外見は14歳ほどであるので、魔女の世界以外では、多少の付き合いに口にする程度だ。
(ま、酒を飲まないでいい口実ができて良かった。前世じゃ、付き合いで飲みまくったからか、肝臓にガタが来たんだよなぁ)
前世の反省を活かし、現役時代の容姿の若々しい肉体での生活を満喫しつつも、のび太が口にした謎も気になるのぞみであった。