ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第四百二十五話「ナリタブライアンの涙と、その身の回りの状況」

――結局、地球圏が真に団結するには、異星人との戦争を経なければならなかった。ガミラス帝国、白色彗星帝国、ゼントラーディとの戦争は皮肉にも、地球連邦の権威を回復させ、イスカンダル、ガミラス、白色彗星帝国の遺した超テクノロジーは移民星の増加に寄与した。同時に、ある程度の力をつけた移民星が地球の影響下を脱しようと目論むと、途端にゲッターエンペラーが現れ、その星を滅ぼすという事例が頻発。移民星はその存在を恐れ、地球を滅ぼすことで、自らが代わりに盟主にならんとした者も多かったが、ゲッターエンペラーの力の前に為す術もなく、無慈悲に粉砕されていった。とはいえ、地球への反抗を諌めようとした者らへは慈悲を見せ、星を再生する行為も見せている。地球人が地球を完全に捨て去ることを許さないという説が浮上してきていた――

 

 

 

 

――地球人類は30世紀の記録によれば、23世紀からの150年ほどが星間文明としての最初の全盛期とされる。ハーロックはイルミダスへの敗戦を歴史から消すため、23世紀に介入し、地球連邦軍の技術レベルを底上げし、地球連邦が将来的に相対する敵の存在を教えていた。また、楽観論が消し飛ぶような異星人が連続的に襲来する時期に入ってしまったことも通告されたため、地球連邦軍は軍備の刷新を急ぐ事になり、メタ情報でもたらされた『ハイパー放射ミサイル』と呼ばれる兵器への対抗策も開発が進められた。艦艇用装甲板に用いられる『硬化テクタイト板』の世代交代も促されたため、ジオンMSの攻撃は急速に無力化されていった。20世紀型の大陸間弾道弾ほどの威力の核弾頭に耐えられるようになったからだ――

 

 

 

 

 

――ハーロックとクイーンエメラルダスのもたらした技術情報で技術革新が促された結果、ジオン残党軍のMSは急速に陳腐化した。デザリアム戦役はそれを決定づけた戦役と言えた。ネオ・ジオンはグラン・ジオングやネオジオングを持ち出したものの、そのどれもが地球連邦軍に打倒され、ジオン共和国も移民船団への改組に伴う解体が宣言された。だが、それを良しとしない派閥が結集し、生き返ったギレン・ザビを頭目とし、『ジオン公国』の復興を宣言すべく、アステロイドベルト帯に集結していた。その旗艦はマクロス級と同程度にまで巨大なMA『グロムリンⅢ』。ギレン・ザビがアステロイドベルトで再生された後に有志の持ち込んだ設計をもとに、最新技術で建造した、ジオン最後のモビルアーマー。艦艇型モビルアーマーという異例の代物だが、一年戦争のグロムリンの後継機に属する。ペーパープランであったⅡの改良型で、宇宙戦艦ヤマトなどと戦うのを前提に建造されていた。ところが、地球に残っていたジオン残党そのものがデザリアム帝国に蹴散らされ、少なからずが呉越同舟でデザリアムと戦い、散っていったため、デザリアム戦役後に残った残党には往年のエースパイロットはほとんどいない。それでも一年戦争以来の古参兵揃いなので、練度は極めて高い。それが正真正銘、最後となる『ジオン残党軍』である。連邦側からの彼らを示す識別コードネームは『オールズモビル』……――

 

 

 

 

 

 

 

 

――その情報は、残党のネットワークがデザリアム戦役で暴露された後に判明したが、ミネバ・ザビによるネオ・ジオンの解体宣言の後だったので、地球連邦は敢えて見逃したが、その派閥の首魁が誰であるのかは不明であった。ミネバ・ザビはオードリー・バーンという偽名を名乗っての隠棲生活に入り、自身の同位体のメイファ・ギルフォードが公の場に現れる『ミネバ・ザビ』として動き、地球圏の残党の解体に尽力している。つまり、ミネバは『宇宙大航海時代に至った以上、ジオンの歴史的役目は終わった』と考えていたが、ジオンの名が消えていくことを許さないスペースノイド達はミネバを見限り、自分たちの信ずる『過去の指導者達の蘇生』を敢行してしまうのである。それで最終的に蘇生させられた者がギレン・ザビであるあたり、ギレン・ザビがジオン公国の復興を望む者らの拠り所であったかがわかる――

 

 

 

――次点の候補は数名いた。例えば、グレミー・トトはジオン同士の衝突の混乱で、彼のメモリーが散逸していた事により、ハマーン・カーンはメモリーは完璧であったが、古参兵を抑えきれずにグレミーの反乱を許したという意見から、蘇生の候補から外れた。最終的に白羽の矢を立てられたのが、一年戦争の際に誅殺された、ジオン公国の国家指導者であった張本人たるギレン・ザビであった。だが、根本的に、ジオンのMS関連技術は第二次ネオ・ジオン戦争期で止まっていたため、未だにトレンドとなっていた『ビームシールド』を高級機でも持たない(とはいえ、ジオン系勢力はビームシールドを嫌っていたが)という旧態依然ぶりであった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――対する地球連邦は、一時は隆盛した小型MSが物理的制約や外宇宙運用での不備を理由に衰退し、その代わりに『ミドルMS』という規格が台頭したが、根本的な技術革新が促された結果、20m級MSが発展したカテゴライズ『マン・マシーン』が登場。MSからの根本的な世代交代となった。とはいえ、マン・マシーンも『MSが自力飛行能力を手に入れた』、『普通の人間でも扱えるサイコミュシステムを持つ』という以外の違いはないため、境界線は曖昧である。その時期に開発された最後の小型MS『V3ガンダム』がついに完成した。リガ・ミリティア最後の遺産であり、兼ねてから構想されていた、V2ガンダムの後継機。これこそが歴史上で最後となる小型(サナリィ系)ガンダムであった(無論、ミノフスキードライブ搭載)。――

 

 

 

 

 

――V3ガンダムは新規設計ではなく、V2アサルトから派生した強化型に属する。これはV2の強化装備で最も良好な結果を残したからである。政治的にも、物的にも大ダメージを負っていたサナリィがアナハイムのフォン・ブラウン工場で生み出したという点で、一時は『MS開発のリーダー』を気取っていた同公社の衰退の象徴となった。とはいえ、既存のV2との互換性は確保されたため、異例の速さでロールアウト。兼ねてから、V2の配備を要望していた黒江に『代替の新型』ということで回された。(要はテストパイロットをしろという事)――

 

 

 

 

 

――遠征軍はジオンやティターンズなどの残党も糾合し、配下としていたバダンとの戦闘を続けていた。撃退できればいいのだが、敵は近代兵器を続々と投入。連合軍は火力投射に制限があることもあり、苦戦が続いていた――

 

 

―「プリキュア5の世界」――

 

黒江は定時連絡の時刻になると、テイオーと話しこんだ。その内容とは…。

 

 

 

「なに?ジオン残党がそっちに?」

 

「うん。三人くらい入れ替わってもらって、ボク達で対応してる。証拠隠滅に警察まで動員できるんだね」

 

「俺の釣り仲間に、警察の歴代トップがいてな。その関係で協力させてる。公安は幹部が言う事聞かんから、のび太が消しに行ってる」

 

「わーお……」

 

「公安は俺のことで遺恨があるからな。俺がカミングアウトしたせいで目論見が崩れて、予算削減に遭ったんだよ。もう20年近くは前なんだがな」

 

公安警察は黒江のカミングアウトで政治的打撃を被り、20年近くは不遇をかこってきた。そのため、その時の捜査員が幹部となった時期には政権の汚れ仕事を引き受けていると思われる、のび太の排除を政治的意味も含めて目論んでいた。だが、その逆に自分達が政権の意思で排除されるのである。

 

「のび太を暗殺しようとしたんだろうが、逆に自分達が暴漢のレッテル張られて、ブタ箱行きだ。首謀者はズドンで地獄行き。公安警察はそいつらを切り捨てるだろうしな、独断専行とか言い訳して、な」

 

「君、本当はいくつなのさ」

 

「そっちから数えたら、本当は100歳超えるよ。戸籍上は。生年は1921年前後だからな。だから、カミングアウトした時に揉めたんだ、政治屋どもが。年齢的に定年だって。だけど、肉体年齢は10代そのもの。それで防衛省は広告塔に使いたいからってんで、肉体年齢のほうを採用して、そのまま雇用継続。後で、留学生扱いにもされたがな」

 

黒江は2000年代にカミングアウトし、扶桑との国交が確立された後も、雇用形態は正規の自衛官扱いのままだった。そもそも、異世界人を雇用してはいけないという法律はないし、既存の法律にも書かれていない。さらに、現地の時間軸で青年である以上は『その年代の人間』として扱うべき』というもっともな言い分もあり、2006年当時に『18歳』相当という扱いで落ち着き、2022年でも『30代の前半』と対外的に公表されている。(部内での扱いはともかく)

 

「で、部内じゃ留学生扱いにされたから、統幕入りはできなかった。だが、扶桑軍のトップエースの泊があったから、空自入りだけは成った。防大にいた時、扶桑軍の高官がそういう風に自衛隊に要請したからな」

 

「そういうの、やっていいの?」

 

「陸自が欲しがってそうだったと聞いてたからな。それで扶桑軍航空隊の高官が防衛省に要請を出したんだ。陸自は相当に渋ったが、戦前の日本軍のトップエースの同位体って伝わったら、折れたらしい。それ以降は好きにさせてもらったがね」

 

黒江は空自でもっとも若くして出世した。扶桑航空隊の佐官である『正体』も大きく関係していた。扶桑での内規が空自で出世したことで問題になったのは記憶に新しい。

 

「故郷の軍隊での内部規則がそれで問題になったんだ。故郷で大作戦が発令されたときにゃ、俺は空自で将官になってたんだ。だけど、故郷じゃ、その規則のせいで大佐のまま。空自で将官になったのが通達された時、故郷の参謀本部は大揺れになった。俺を代将扱いにする案も出たが、所属先の上官が不祥事起こしたんで、ダチが赴任して隊長が交代。俺もその流れで将官になれた…って流れだ」

 

「ややこしいね」

 

「で、前の上官がなんといおうか…百合の傾向があってな。それが問題の大元だったんだ」

 

「あ~……漫画でよく見るけど、公私混合じゃない?」

 

「俺の戦友を『盗る』とでも思ったんだろうよ。それで、俺とダチが扶桑の歴代最高級のエースってわかった後に、扶桑の書類の不備だと言い張れるように保身を図ったそうだ。気持ちは分からんでもないが、保身のためにやることが子供のようだったから、そいつの評判は地に落ちた」

 

「まぁ、百合を誤魔化すために、そっちの国に責任を押し付けちゃねぇ」

 

この頃になると、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの失脚劇は公にされており、(ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケは恋人の戦死後に、同性愛に傾倒した)ウィッチの軍生活の閉鎖性が問題視される端緒となった。テイオーは自身の寮生活でも、ウマ娘の間でそういう傾向はあるため、他人事とは思えないのか、苦笑交じりだ。

 

「ダチの計らいで、そいつは『激務で過労になった末の気の迷い』ってことで片付いた。外交問題になりかけてたが、そういう事にすれば、隊の中でのいざこざって事にできるからな」

 

「かなり強引じゃない?」

 

「国家元首の謝罪と賠償金の支払いがあった以上、こっちも手打ちにするほうが良かったのさ。あまりしつこく迫ると、欧州の他の国が横から口出してくるからな」

 

「歴史で習った三国干渉みたい」

 

「都会人から田舎者は低く見られるのさ。たとえ、戦国時代のうちに海外進出しても、アジアの辺境はな」

 

扶桑は田舎者と侮られる場合が多かったのだが、超大和型戦艦と超大型正規空母を難なく運用してみせた事、スーパーロボットの多くが『日本製である』という事実もあり、逆に畏怖の対象になりつつあった。戦争になれば、玉砕や特攻も辞さないという『狂気と紙一重の苛烈さ』を持つ一面が知れ渡ったためである。

 

「まぁ、最近は楽になったよ。怒らせたら、とことんやるところが知れ渡ったから。ドイツには、そのための人柱になってもらったがな」

 

カールスラントの軍事大国としての地位を失墜させ、技術大国としてのブランドも奪い去った日本連邦の行為は恐怖を呼んだ。カールスラントの誇ったMe262を一瞬で旧式の飛行機に変えてしまうF-86の量産がその象徴であった。カールスラントはMe262を少数生産しつつ、次世代の機体で技術を完成させるつもりであったが、日本連邦がF-86を大量生産したせいで、極初期の方式である『双発エンジンの翼下懸架式』でしかない同機は瞬く間に旧式化。胴体内蔵式の先進的な設計である次世代機たちに、同機が担うはずの立ち位置を見事に奪われる事になった。更に、ドイツがカールスラントで進行中の軍事開発プロジェクトを強引に停止させた弊害で、軍需品のほとんどの自主開発能力も失われた。この時に流出した人材は青天井の予算を得られる日本連邦に移っていき、以後の科学技術の発展を主導してゆく。そのため、カールスラントはそれまでの国家的アイデンティティを完全に喪失し、国そのものが迷走してしまう。国土奪還という国家規模の大目標も失われた事により、1940年代から数十年もの間、色々な側面からの困窮に喘ぐ事になった。

 

「君たちも、やること派手だね」

 

「飛行機の代金をぼったくられたんだ。その報いだよ」

 

 

Me262の古い設計を高い代金で売っただけで、最終的に国家そのものが傾くほどの打撃を被ったカールスラントは不幸であった。とはいえ、日本がその分の儲けを出せたかというと、否である。航空装備はアメリカ製だし、戦闘車両は扶桑に独自生産能力がある事から、ライセンス生産をさせるので精一杯。一部の需要は人型兵器に置き換えられていたし、船に至っては、扶桑独自に『宇宙戦艦』を揃える始末であった。そのため、予想より日本は軍需で儲けられはしなかった。しかし、その分は民需方面の技術の有償提供などで元を取るのだった。

 

 

「まぁ、日本もそれなりに火傷はした。その分、戦争は好きにやらせてもらっている。ジオン残党軍の対処だが、GフォースのTMS(可変MS)部隊に見回りをさせるようにする。出現の頻度が増したって事は、事を起こす前触れかもしれんからな」

 

「よく、そんな戦力があるね?」

 

「各時代の残党が細々といるんだよ。デザリアムに駆逐されたと思ったが…。火星や木星に逃げてた派閥が他を糾合してきたと見るべきか。街の護衛を増やさせるから、もうしばらくはがんばってくれ」

 

「わかった。ボクが次に出るレースの予定は聞いた?」

 

「ああ。エアグルーヴから連絡があった。それまでに大勢を決めたいもんだ」

 

黒江は早期に大勢を決したいと口にするが、そうは問屋が卸さないのである。

 

「んじゃ、仕事やってくる。お前らには苦労をかけるが、もうしばらく辛抱してくれ」

 

「そっちも幸運を祈るよ」

 

 

 

お互いに難儀な仕事をしている自覚があるのか、二人は通信越しにため息を漏らすのだった。黒江はこの後すぐに出撃。V2の代わりに受領した新型ガンダムの慣らし運転をするのだった。

 

 

 

 

 

 

――その日の夕方。ナリタブライアンはテイオーから『もうしばらくは続ける』事になりそうだと連絡を受け、意外な事に、それを容認する姿勢を見せた。ジオン残党軍を撃退し、目的地につくまで、与えられた個室(士官室)で休んでいた――

 

 

「ブライアンにしては珍しいね」

 

「個人トレーナーからも、レース以外の事を考える日くらい持てと言われていたからな。それに、ジオンの連中やころばし屋は放ってはおけんだろう。それに、悪くはないぞ」

 

「やっぱ、やりたかったんだね」

 

「なんとでも言え」

 

ブライアンにも、スーパーヒロインに憧れた時期はある。その証明のように、キュアドリームの姿でいる事に抵抗を見せず、むしろ楽しんでいる節があった。とはいえ、ブライアン自身、同室が史実での異母弟にあたるタニノギムレットであるので、量の部屋がとっ散らかっていたのも事実だ。

 

「そうだ。ギムレットの奴に言っとけ。部屋の破損物をこれ以上増やすな、と」

 

「それは無理だと思うよ?ギムレットだもの」

 

「……帰ったら、『兄』としてシメてやろうか」

 

ブライアンはギムレットと同父の関係である前世の記憶から、異母兄弟という認識が出来ているようであった。

 

「前世じゃ面識ないよね?」

 

「時代が違うからな。前世で血縁だった場合は不思議と縁を感じるというが……私の場合は記憶が蘇った上で、他の世界での記録を見たことで、自覚が生まれたって奴だ。そのおかげで、ウォッカを無下にも出来なくなったがな。知った時は目を疑ったぞ」

 

「姪御だもんね、ブライアンにとっては」

 

ブライアンは前世の記憶の覚醒などの結果、以前より遥かに人間味が増していた。子供の頃の弱気な自分が顔を覗かせていたとも言えるが、それを受け入れることで、前世を乗り越える決意の表れか、周囲への態度が軟化しており、テイオーやオグリのような復活を目指す(史実では、サクラローレルに引導を渡された)意思を公言していた。

 

「ああ。小遣いはやるか…。帰ったら、ローレルに借りを返してやるさ。奴の闘志には敬意は払うが、ぶっちぎってやるまでだ」

 

サクラローレルは知る由もないが、ブライアンは史実の記憶が蘇ったため、『借りを返す』という決意を固めている。そのため、柄ではないこともするようになっている。

 

「ん?他人の体なのに、鼻に貼ってんの?」

 

「癖なんだよ、ガキの頃からの」

 

「ハヤヒデの事、引きずってんの?」

 

「……私も人の子だ。当たり前だろ」

 

と、鼻テープをする理由ははぐらかすが、実は姉が幼少期におまじないとして、貼ってやったのが始まりであった。幼少期は表に出せていた姉への想いを、成長と共にうまく口にできなくなったことへの後悔があるからか、ハヤヒデの事になると、途端に表情が沈む。

 

「私が『いて欲しい』と思った奴は……離れていくんだ……。ガキの頃からな。飼ってた犬に始まって、好きだった母方のばーさま……。……やっとわかりあえたと思った『あいつ』(個人トレーナー。不振期に協会の意向で辞さざるを得なかった)……、それでもって、極めつけは姉貴だ……。私は!!サシで姉貴を抜きたかったんだ!!お互いに最高の状態で!!……だが、姉貴は史実に逆らわなかった。意図していないとしても……!!」

 

 

ブライアンは『大好き』であった何かがこぼれ落ちていくのと引き換えにするかのように、ウマ娘としての名声を得た。だが、自身の拠り所であった実姉が引退を決断した事による動揺は確かにあった。ブライアンがヒステリック気味に声を荒らげた事に、さしものテイオーも驚き、言葉もなかった。

 

「……ブライアン。ハヤヒデの事……、やっぱり堪えてたんだね」

 

「頭では理解している。姉貴がいなくなってても、戦う相手は掃いて捨てるほどいる。何事も落伍者は出るものだ。たとえ、有力と言われた連中でも……。だが……、感情が否定するんだ。それが姉貴であることを……!」

 

「でも、ハヤヒデだって、君との戦いを諦めたわけじゃないはずだよ?」

 

「事をお膳立てする段階になったんだ、もう遅い!!」

 

「落ち着きなよ、決めつけるのは早いって。ボクが聞いてみるから。生徒会長として、ね。ハヤヒデを挫折させたのはボクだからね、責任は取るよ。それに、ハヤヒデはブライアンのおねーちゃんでしょ?君が……」

 

「そんなの……決まってるだろ……っ!!」

 

ブライアンは自然と泣いていた。言葉は続かなかったが、テイオーはブライアンの言いたい事を察した。ブライアンは光と闇。双方の因果が大きすぎたがため、彼女の身の回りで『史実への揺り戻し』が起こっていたのだ。テイオーは図らずしも、その一因となってしまったわけだ。その責任を取るべく、テイオーはすぐさまタブレットを起動させ……。

 

 

 

 

 

――テイオーの生徒会長への正式な就任はまだであったが、新会長として最初の仕事を決める。その日のうちに、ブライアンが塞ぎ込んでいるという知らせはタイシンを通し、ハヤヒデに伝えられた。ウイニングチケットには知らせず、タイシンを通しての知らせであるので、正確に伝わった。ハヤヒデはその連絡に困惑するが、生徒会の次期会長に内定したテイオーからもメールが来たため、ハヤヒデは事の緊急性を理解。その日のうちに、テイオーにコンタクトを取るのだった――

 

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