――ダイ・アナザー・デイは地球連邦軍のスパイ映画好きの将校の発案で決まった作戦名で、他の候補に『ユア・アイズ・オンリー』、『ゴールドフィンガー』などがあったという。日本国の身勝手な横槍で防衛作戦に切り替えさせた結果、予想外の長期戦の様相となった。非難を浴びた日本であったが、防衛という名目さえ立てば良かったため、それさえできれば野となれ山となれな勢いの放言ぶりを見せ、各軍の首脳部を閉口させた。とはいえ、自衛隊の有志が引っ張り出した秘匿兵器は獅子奮迅の働きぶりを見せた――
――メーサータンクはスーパーロボットらの影に隠れてしまったが、陸戦兵器として、まごうことなき超兵器であった。M4中戦車を『ブリキのおもちゃ』同然に溶かし、一方的にアウトレンジできるからで、名目上は『バイオハザード対策機材』であったとは思えない戦闘能力であった。その源流は旧日本軍が起死回生を狙った『轟天計画』にあり、ラ號や鉄人28号、超人機メタルダーと同時期に計画された。だが、完成は戦後になり、安定使用が可能になったのは1960年代、高出力を発振できるようになったのは1980年代であった。とはいえ、近代化されたそれは第二次世界大戦型戦車のすべてを溶断するのに充分な出力を発揮。魔女のシールドも楽に突破し、ストライカーを溶かせるため、ダイ・アナザー・デイでの殊勲メカの一つであった――
――海底軍艦『ラ號』の実質の初陣もダイ・アナザー・デイであった。大和型戦艦の派生型が宇宙戦艦に改装され、実質的に旧軍の目論見を的中させた事は自衛隊にとっては青天の霹靂のような事実であった。当時の設計図は扶桑に流れており、それに『宇宙戦艦ヤマト』以降の世代の宇宙艦艇の技術を加えることで『準同型艦』が造られている事を通告されたのは、ダイ・アナザー・デイの終了後の事。扶桑内部でも相当に揉めたが、『宇宙艦艇』なためか、空軍の管轄とされた。太平洋戦争中に同級二番艦までが就役。三番艦も艤装を終え、試験段階にあった。主砲は51cm三連装砲が四基に増やされており、原型の大和型戦艦を更に上回る火力を誇る。これはバダンが持つとされる海底軍艦『フリードリヒ・デア・グローセ』を仮想敵にしたからで、現状の海底軍艦では最強クラスの実力を誇る――
――「プリキュア5の世界」 連合軍の秘密基地――
「これがXライダーの潜入した敵の拠点に格納されていた戦艦だ」
「本当にリットリオ級だな……主砲塔が四連装砲塔になってないか?」
「基数も増えてるぞ。ドリル以外はリットリオ級の改良型って感じのオーソドックスな海底軍艦だな」
ドリルが艦首にある以外はリットリオ級の発展型という艦容を捉えている写真。敵が持ち込んだものの中では最大の戦力であると推測される。
「リットリオ級は防御に問題があったが、全長が伸びてるのと、バイタルパートも改良されただろうから、侮るのは危険か」
「主砲は38cmのままだが、門数が十六門。投射重量も意外に高いだろうから、アウトレンジで先手を取るのが最善か?」
「近距離での撃ち合いは危険だろう。その前に打撃を与えておくのが得策だな」
「休暇中の連中は?」
「直に呼び戻せる。ライダーたちも偵察から戻るから、ここ二週間が勝負だな」
黒江と圭子が作戦会議を開いていた。インペロであろうと推測される『イタリアの海底軍艦』の回航が的中していたため、本格的に廻天が初陣を迎える事になった。ラ號の準同型艦の二番艦であり、轟天よりもスペースが機動兵器搭載に最適化されているため、実質的に『航空戦艦』ですらある。そんな戦艦でも、戦艦としての撃ち合いで『侮れない』という判定をもらったインペロは旧・イタリア王国海軍の誉だろう。
「制空権は新型のVタイプでやる。V2の後継なんだから、大型機までとはいかなくとも、V2以上の強度はあるだろう」
V3ガンダムはV2アサルト相当の能力を発揮できるように、V2アサルトの装備を素で備えた。だが、小型機そのものが『進化の袋小路』に入り、現状以上の高性能化は難しいと判断されていたため、ペーパープラン化していた。だが、各技術が進歩したことで製造に目処が立ち、『最後の小型ガンダムタイプ』として認可された。これは戦術的には『小回りの良さ』が武器になっても、質量を武器に出来ないくらいに軽量化された小型機が『本格的な外宇宙戦』では逆に難点を露呈した事による。
「お前、サイコミュシステムは?」
「武子ほどじゃないが、ファンネルは動かせるくらいの空間認識能力はある。サイコフレームも使われてるようだしな」
小型機は『モノコック構造に回帰した』という誤解があるが、実際はその中間の形態で落ち着いている。V系はモノコック構造に寄っている(小型な上、コアブロックシステム採用なため)が、それでも要所ではフレーム構造になっている。V3は製造技術の進歩でフレーム構造の箇所が前世代機より増やされており、整備の簡便性を増している。(セミモノコックとフレーム構造の中間と言える)また、V3は前任機と違い、サイコミュシステムを積んでおり、ヴェスバーをファンネルとして使用できるという特徴がある。有線端末にする案もあったが、インコムと大差ないという事で、ファンネルとヴェスバーを兼任させる事にした。
「さて、アッシマーやギャプランの数を減らさんことにゃ、制空権の維持は出来ねぇ。慣らし運転を兼ねて、出てくる」
連合軍の高射砲では、TMSは撃墜不能(損害は与えられるが、ガンダリウム合金製のTMSは180ミリ砲に耐えられるので、連合軍の既製の高射砲では歯が立たない)であるので、MSなどでの撃墜が望ましい。こうしたMSでの出撃で数を減らすのも、仕事であった。(V2などのミノフスキードライブ搭載機であれば、小型機でもその推進力だけで飛行可能)
「例によって、アッシマーか。さて……先手必勝っと」
すぐに出撃した黒江はメガビームライフル(V2のものの改良型。連射速度が向上している)で狙撃を敢行。アッシマー編隊の虚を突く形になった。
「さすがはメガビームライフルだ。アッシマーを二機もいっぺんに落とせるとは…」
アッシマーは重装甲を誇ったが、元々がグリプス戦役レベルのチタン合金セラミック複合材であったので、ビームの威力が向上した時代には、より強度のある『ガンダリウム合金』に外装を交換された機体が存在する。似たシルエットを持つ敵『円盤獣』の出現で運用が縮小され、アンクシャ(後継機)共々、配備は限定的である。これはVFの普及で、そのノウハウを用いられるZ系のほうが都合が良かったからだ。とはいえ、生産されたアッシマーの大半は装甲が旧世代の技術での『チタン合金セラミック複合材』製なので、最新型のメガビームライフルに耐えられるはずがない。ビームの光芒がかすっただけで外装が溶解し、次いで、機体から火を吹いて墜落するか、煙を出しながら、なんとか離脱する者に分かれた。高出力のビームのなせる業だ。
「おっと」
敵編隊が反撃に出てきたが、アッシマーの旋回半径は意外に大きい。戦闘機並みの機動力と言っても、それは『サイズの割に』という修飾語がつく。小型機かつ、ミノフスキードライブ搭載機であるV3ガンダムは『人型で飛行できる』上、MSとしては最速の機動力を誇る(フルサイコフレーム搭載機以上である)ため、アッシマーからは『Vの文字の残像を残して消えた』としか認識できないほどの急速回避を見せた。
「ミノフスキードライブ……。さすが、初代ガンダム以来の最高到達点の技術だ。Gを感じないぞ。紅蓮聖天八極式以上だな」
ミノフスキードライブによって、Gの慣性が大きく緩和されるため、ウッソ・エヴィンのような少年でも『常識を覆す機動』がこなせたわけだが、彼よりも高いG耐性を持つ者なら(機体強度限度の限り)それを連続してこなせる。ましてや、V2の改良機であるV3はそれを可能とし、より小型のナイトメアフレームである紅蓮聖天八極式をも上回る超高機動を見せる。(最速のガンダムの一角を担う機体の改良タイプなため)
「へっ。悪いが、落ちてもらうぞ!」
ビームソード(斬撃武装はV2から刷新されており、新式のビームソードになった)を円盤形態のアッシマーに乗っかった上で突き立てる。アッシマーの装甲を貫き、撃墜する。元々、身軽な機体での格闘を得意としていた扶桑軍の魔女であった黒江のもっとも得意とする格闘術の一つである。
「非可変機は久しぶりだが……悪くはないな」
元々、格闘至上主義な扶桑軍のエースであったので、格闘術に天性の才がある表れか、格闘に関しては、スーパーロボット乗り並の実力を持つ。通常のサーベルでさえ、旧来機の数倍の出力を出せたミノフスキードライブに最適化された新式のソードであれば、旧式のチタン合金セラミック複合材製のアッシマーを落とすのは容易な事である。
「これでも超合金は斬れんから、ジャパニウム系の合金はオカシイ」
と、ジャパニウムを精錬してできる『超合金』は他の素材より遥かに頑強な金属である事をぼやく。MSやVFの武器くらいでは傷一つつかず、Dr.ヘルの用いていた『超鋼鉄』(機械獣の装甲)の武器を防げるなどの特徴を元から備え、進化していくと、MSやVFを含めた『通常兵器』では歯が立たなくなる。やっと、グレートの超合金ニューZを破壊できるようになったと思えば、もっと強い合金が造られるのだから。とはいえ、ジャパニウムを純粋に精錬するだけでは限界があるため、他のエネルギーで強化する方法が取られた。そこまで行くと、並大抵の攻撃では堪えない。そのため、23世紀以降の技術で造られた金属は『常識の範疇か、そうでないか』に大別できるのだ。
「さて、俺は武子ほどの空間認識能力はないが……ハイパーファンネル!」
V2アサルトで言えば、ヴェスバーにあたる箇所が分離し、オールレンジ攻撃端末に早変わりする。(設計段階では有線端末が想定されていたが、それでは旧世代機の『インコム』となんら変わりがないということで、本式のファンネルの機能を持たされたヴェスバーとなった。技術的には、かのフィンファンネルの流れを汲み、ヴェスバーの『可変速機能』を備えた事から『ハイパー』の名がついたという)黒江も高い水準の空間認識能力を持っているため、サイコフレームなどの組み合わせで補助するマシーンであれば、ファンネルを扱えるようになる。得意ではないと言いつつも、ロンド・ベルでアムロのファンネル捌きを見ていたおかげか、水準以上の操作を見せる。(未来世界の『ファンネル』は本体と端末が別行動を取れるという利点があり、ハマーン・カーンやアムロ・レイ、シャア・アズナブルなどの熟練者になると、ファンネルの存在を揺動に使うことも多い)
「当たれっ!」
ハイパーファンネルのビームが逃げ惑うアッシマー(MA形態)を追い立て、蜂の巣にして粉砕する。アッシマーはファンネルを振り切ろうとするが、機敏な挙動で追い立てるファンネルから逃げられず、二機が空中爆発で消え去る。
「ふう。サイコミュの扱いは以前より楽になったとはいえ、俺は空間把握系じゃねぇからな…。これで、インペロを誘い出せればいいんだが、まずは陸軍を勝たさないといかんか」
制空権は問題なくなったものの、陸がメタメタな連合軍を奮起させるには『陸戦での勝利』が必要な事を痛感する黒江。
「敵のヤークトティーガーやヤークトパンターを撃ち抜くには、M60以降の戦車が必要だなぁ。配備の促進をさせるしかないか…」
黒江は戦意喪失のアッシマー編隊は深追いせず、予定空域のパトロールをしつつ、帰途につく。連合軍は攻勢の予定を立て始めているが、敵の全容が掴みきれていないので、不用意な動きは敗北の始まりになるということで、攻勢を控えていたが、新兵器の配備に目処が立ったので、連合軍は仮面ライダー達との協議で攻勢を計画し始めたわけだ。敵の海底軍艦は撃沈を避けて、鹵獲してほしいという要請がロマーニャから来ている。抑止力的な意味での保有をしたがっているのだろう。とはいえ、海底軍艦は日本も管理の事で揉めに揉めた挙句、『大日本帝国の解体までに、国へ納入されていないという理由で、影山コンツェルンからの接収に失敗している。海底軍艦は空を飛ぶため、どの部署が管轄するかは大問題である。
「アポロガイストの姿を見たって言うが、ヤツは暗殺が主な仕事だからな……。他の幹部も出てくるだろう。ゼネラルモンスターは殺ったから、魔神提督が来るか?」
作戦の障害は組織の歴代幹部である。しかし、のび太がゼネラルモンスター(ネオショッカーの初代大幹部)を地獄に送り返した事で、組織も戦略で躓いたらしく、捕虜の言い分では、『暗闇大使がその場でヒステリーを起こした』という。
「暗闇大使は地獄大使よりおツムが良いと言うが、村雨さんの言う通りに小心者らしいな……」
ショッカーの三代目大幹部の地獄大使は著名である。アジア系の両親のもとで米国に生まれ、ありとあらゆる犯罪に手を染めた後、南米に逃れていたナチ残党に見出され、とある小国の将軍になったが、その後に公には戦死。実際は改造手術で生き返り、従兄弟の暗闇大使共々に大幹部として遇された。地獄大使は1972年、一号ライダーとの決戦に敗れ、暗闇大使も、公には『1984年に10人ライダーとの決戦で敗死した』とされる。しかし、その暗闇大使は『自身の姿と機能を持たせた影武者の改造人間』であり、本物は生きていた。地獄大使は戦闘指揮に手腕を発揮する一方、策略面では『おっちょこちょい』(ゾル大佐の談)であったが、暗闇大使は正反対に『戦闘指揮は従兄に劣るが、知略に優れる』が、その実は小心者の一面がある。村雨良は彼の部下であった時期があるので、そのことをよく知っていた。そのことを教えていたのだ。
「もう一つの問題はインペロだな……。ラ號への抑止力として、ロマーニャ海軍が欲しがってるが、『地中海の番人』でしかないイタ公ごときに扱える代物とは思えん。空軍と海軍が揉めるだけだと思うが…」
何気に、欧州で有力な海軍とされたはずのロマーニャ海軍に辛辣な評価をする黒江。とはいえ、連合海軍の主力を担った時期もあるので、その評価は色眼鏡がかかっていると言わざるを得ない。ロマーニャ海軍も日本や米国から『地中海の門番』としか見なされず、実際にタラント空襲でボコボコに叩きのめされていたのは事実だが、本人達は必死に努力しており、連合海軍の一翼を担ったのも事実だ。技術的課題が大きすぎて、40cm以上の砲が造れなかったり、保有する精錬技術の限界で、300ミリ以上の一枚板の装甲が造れないという難点でネガティブに捉えられがちだが、地中海の守り手という観点からは充分な戦力であった。大和型戦艦の世代の新戦艦が驚異的な攻防性能を有したため、相対的に見劣りするのは否めないのは事実だ。元々、地中海の守りを是としていたイタリア海軍と、外洋海軍への脱皮をし始めた扶桑海軍とは存在意義が違うのだ。
「リットリオ級の取り扱いにも難儀しとるのに、ゼータクだぞ」
リットリオ級戦艦は抑止力として維持するには費用がかかるため、史実では、1950年にスクラップにされている。黒江からは散々な言われようなロマーニャ海軍だが、(ガリアとカールスラントの衰退により)相対的に欧州の有力な軍隊として台頭する。とはいえ、イタリアが大きい顔をしないようにと、ブリタニアが21世紀世界の欧州の支援で『大英帝国時代の海軍の陣容』の維持に成功するので、位置づけは特に変化しなかった。逆に、扶桑海軍が(日本の一部勢力の思惑と裏腹に)世界最大最強にならざるを得なくなっていくのだ。その象徴として、大和という名を継ぐ戦艦が時代ごとに生まれていくのは、大和民族の業というべき現象であった。
――こちらはナリタブライアン。姉のことになると、途端にナイーブな面を見せるのは幼少期の名残りであった。とはいえ、姉との誓いを守るために『強くあらんとした』という本当の理由は他人には言っていない。なんだかんだで姉に懐いていたのだ――
「……姉貴か。テイオーが言ったのか?」
「お前、他人の体を借りているのなら、もう少しは行儀よくしたらどうなんだ?」
「努力はしている。もうしばらくはこちらにいるつもりだ。協会から話は?」
「ああ。ハイセイコー氏から直接な。引退の話だが、テイオー君から話を聞いた。先延ばししたよ」
「本当か!?」
「サニーブライアン(二人の従姉妹)に協力してもらって、足の状態を確かめたからな。お前との約束を果たせそうだ。とはいえ、あまり先延ばしはできん。二年以内だ。協会が許してくれた時間はそれしかない」
「……二年もあれば充分だ。」
「お前はお前の責務を全うしろ。私も許された時間で『火を燃やし尽くす』つもりだ。それと、タケヒデ達は喜ぶだろうな?」
「クソ、テイオーめ……」
「いいじゃないか。久しぶりに童心に帰ったんだろうからな。来年にはタケヒデは入学できる。その前祝いに見せてやれ。先方には私が説明しよう」
「姉貴……」
「お前を傷つけてしまった事への詫びの代わりだと思ってくれ」
ビワタケヒデ(二人の妹の一人)がトレセン学園の入学試験に合格した事への祝いもあるので、ブライアンへの詫びを済ませておこうとしたハヤヒデ。競技者として残された時間は多くはないが、妹への『贖罪』の時間を与えられたことに感謝しているようだった。どことなく安堵しているようにも聞こえる。
「……分かった。姉貴……私たちは昔のように戻れるのか?」
「それは私達次第だ。……だが、お前が弱さを強さに変えられるようになったのなら……お前は……再び輝ける。三冠を得た者の責務は…強くある事だ。最後の時まで、な」
ハヤヒデは自身が強者であった故に、三冠の名誉の重さを理解していた。同時にそれは『呪い』でもある。例えば、牝馬三冠馬の少なからずは『達成後に勝てなくなる』というジンクスに苦しめられたし、三冠馬も苦難の道を辿る事がある。その一方で、華々しく去っていった者もいる。それを引っくるめての言葉だった。
「……ああ。そのつもりだ」
ブライアンはそう答えた。どことなく安堵の感情が見え隠れするものだった。ブライアンはこの日を境に、精神的に落ち着きを取り戻し、往年の闘志も徐々に復活。名実ともに『王者』へと立ち帰り始める。サクラローレルにとって、それは吉報であった。競馬で言うところの『古馬戦線』は既に、マヤノトップガン、マーベラスサンデー、サクラローレルの三強が台頭しており、その前の世代はナイスネイチャ、メジロライアン、メジロパーマーなどの強豪が次世代と鎬を削る場となっていた(当時、レースの顔ぶれは既に史実と顔ぶれが異なり、サイレンススズカの世代の多くはターフを去り、史実ではその前の世代にあたる者たちが現役で走る『逆転現象』が起こっている。これはオグリキャップの引退からそれほど経たないうちに、サイレンススズカやエアグルーヴが台頭したからだ)。ブライアンはそこにテイオー共々に殴り込みをかけるつもりである。だが、その前にやるべき事は分かっている。
「悪い、ゴルシの奴からのメールが来た。仕事だと思うから、切るぞ」
「ああ。セルフサービス……というには変な感じだが……スーパーヒロイン業を堪能してこい。子供の頃は夢中になっていたろ?」
「……ビコーやカワカミのやつには言うなよ?」
「ああ。分かっているさ。お前は彼女らと違い、『分別』がつくからな」
ハヤヒデはブライアンの言わんとする事の意図を理解している。ブライアンは『何をして、何を成せばいいのか』の分別のつく年頃だが、ヒロインにただ憧れているだけのあどけない二人は『歯止めがかからない』であろう事(ただし、ビコーペガサスは子供っぽいだけで、年齢はブライアンと同じなのだが)は容易に想像できる。ブライアンは『敵へ容赦しないが、自分なりの倫理観や美学を持つ』ので、無闇な事はしないと。ブライアンも『立ちふさがるのなら、狩り尽くすまでだ』という思考だが、自分なりに歯止めはかける。二人の姉妹だからこその信頼がそこにはあった。ブライアンはキュアドリームの体を借り、アルザス級戦艦を停泊予定地点への接岸まで護衛する仕事を遂行するのだった。