――日本は異世界との交流で世界の原初のルールを叩き込まれ、結果として、『キレたら徹底的に叩き潰す』気質が強まった。カールスラントはその最初の例となってしまい、文字通りに叩き潰される事になった。カールスラントは軍需部門の技術・思想が旧式化してしまい、民需分野も殆どが輸入を避けられるようになったため、アメリカ合衆国の援助なしには、国の体をなさない有様となった。カールスラント側の言い分としては、『扶桑皇国とは正式な同盟国ではないし、第三国に最新の技術をバカ正直に輸出する奴があるか!』だが、日本連邦は国際司法裁判所への提訴も辞さない構えであった。ドイツ連邦はそれを避けるため、カールスラントを『指導』し、以後の技術ライセンス料をタダにさせ、カールスラントに莫大な慰謝料を払わせた。だが、国際司法裁判所への提訴という文面が効いたカールスラントは『ラーテ計画の中止』に伴う莫大な慰謝料がのしかかり、ドイツ連邦は慰謝料を払わせるために軍縮をさせたが、それが内乱の原因となった。カールスラントは以後、人材派遣サービスを国家規模で推進する事で外貨を獲得し、長い年月をかけて、国家再建を行うこととなった。日本はその行為の代償として、扶桑皇国の超大国化を容認する事になり、『自衛隊ではできない活動を代行する』条件のもと、扶桑皇国を近代化させていく事になった――
――カールスラントは独自規格の弾薬も多かったが、本土奪還に備え、かなりの弾薬を備蓄していた。日本連邦は賠償の一環で、それらをラインごと入手。カールスラント製装甲車両や砲、銃用の弾薬は日本連邦の手で生産が継続され、NATO軍規格の次世代のものが普及する年代まで第一線で使用され続けた。これはダイ・アナザー・デイで購入し、終了後には南洋に置かれていた陸戦兵器と銃器の活用のためであった。扶桑皇国陸軍としては、カールスラントの装甲車両を研究する機会であったが、それよりも遥かに進歩した車両が矢継ぎ早に提供されたため、結局は処分された『国産の旧式の代わりに使う』ことで消耗していった。とはいえ、『当時最新の対戦車火器であったバズーカを食らっても、容易にスクラップにはならない』生存性は評価され、1949年には、かなりの台数のパンター戦車が扶桑皇国の手で運用されていた。これは本土にあった三式中戦車までの旧式戦車が処分され、砲戦車も五式砲戦車以外は退役させられた関係である。とはいえ、上層部は当時の最新鋭戦車『センチュリオン』と『コンカラー』に置き換えたい思惑がある。そこに国産閥が割って入ったため、扶桑は雑多な車両を運用する軍隊になっていった。そして、人型兵器に置き換えを一部進め、砲撃用にと、デストロイド・モンスターのVB型である『 ケーニッヒモンスター』も導入され、64Fや陸軍の砲兵部隊に回されたのも、1949年のこと――
――遠征軍の補充機材はVFが中心であった。これは敵の機材に反統合同盟の『SV-51』が確認されたからだ。64Fのエース達は元から専用機を有しているが、補給はそれ以外の隊員用である。機種は『VF-19』。地球連邦軍では型落ちになりつつあるモデルだが、純粋な地球系の航空技術の到達点であるため、必要十分であった――
――64Fでは既にVF-31とYF-29が使用されているが、Gフォースにも可変戦闘機の必要性が出た事から、VF-19の配備と至った――
「統括官、コネを使いましたね?」
「使う時は使わんとな。お前ら、これに乗れるのは幸運だぞ。公式記録には残せんがな」
「ブレイザーバルキリーですか」
「A型とE型は俺達のような超人でないと、まともに飛ばせんしな。ブレイザーバルキリーでも、事故が続いたから、一時はナイトメアプラスに押されてた。だが、移民船団の全滅でナイトメアプラスが不評を買ったから、地球本星で需要が戻った。で、メカトピア戦役、デザリアム戦役でナイトメアプラスが殆ど破壊されたんで、倉庫にあったブレイザーバルキリーを再整備したわけだ」
地球本星が直接の侵略を受ける事態の頻発で、可変戦闘機も『パイロットを機体に追いつかせる』方針に先祖返り。VF-171は損耗もあり、デザリアム戦役を最後に退役し、VF-19が再度、主力に返り咲いた。これは当時には、VF-11はすでに払い下げが済んでいたり、マニュアル操縦の余地が大きい19の生存率は171よりも良かったからだ。
「敵がSV-51を使うなら、こっちはAVFだ。世代の違いを見せてやれ」
「ハッ」
Gフォースの隊員用に配備されたブレイザーバルキリー。倉庫から持ち出した新古品であるが、内部の部材は最新のものに取り替えられており、完成当時よりも限界性能は高い。AVF(VF-19とVF-22)以降の時代においても、一般兵員用の可変戦闘機としては史上最高の贅沢品の一つだ。
「一般用としては最高峰のを選んだわね、ブレイザーバルキリーなんて」
「フォールドクォーツを必要にするほどの超高機動なんざ、普通の空中戦じゃ起きねぇからな」
武子と交代で、遠征軍の様子を見にきた智子に言う黒江。
「それはそうと、例の話、本当なの?」
「先方からの頼みだ、無下にはできんよ。三冠馬になったほどの逸材だが……現役の晩年が晩年だからな。三冠とっても、その後に落ち込んだ馬だっていたしな。どうだか見定めてみるよ」
黒江たちも、ブライアンがキュアドリームに『扮する』ことに不安がないわけではない。さらに、ブライアンは後世、全盛期の輝かしい実績よりも、現役後半期の凋落の悲劇が語られがちになった三冠馬であるのもあり、気力が萎えている(史実では臆病な性格であったため)ことを懸念していた。だが。その懸念はすぐに払拭された。
――戦場――
「悪いな。私はアンタと戯れるほど、暇じゃないんだ。失せろ」
『プリキュア5の敵』であった組織『エターナル』は後が無くなっていたわけで、その世界における『ブンビー』がタイミング悪く、ドリームが単独で行動しているところを襲ったのだが……。
「……散れっ!!」
キュアドリーム(ナリタブライアン)は全力の拳を地面にぶつける。すると、ブライアン本人の力が『プリキュアのスペック』にプラス補正されたのか、ミルキィローズ以上のパワーが発揮され。地面が大きく陥没する。ブンビーの使役している『ホシイナー』の数体が足場を崩され、大きくよろける。その間に、ドリームは『剛烈剣』で袈裟懸けに一体をたたっ斬る。
「何っ!?」
「こんなもので私を止められるとでも?それにだ。今日の私は機嫌が悪い」
そう言った瞬間、別のホシイナーが襲いかかるが、見事なカウンターで地面に叩きつける。そして、中核になっている球体を握り締め……。
「そのまま寝ていろ!!」
ホシイナーは中核部分が消えれば、自動的に消滅する。だが、この時のドリームは球体をそのパワーで強引に素体となっている物体から引き抜き、そのまま握りつぶしてみせる。
「は、は……は…」
ブンビーもあまりの光景に、開いた口が塞がらない。ふと見てみると、ドリームから紫色の闘気が溢れ出している。さしもの彼もこれには恐怖を感じ、後ずさりしてしまうほどであった。
「なんだ……なんだと言うんだ…今日のお前は……」
「……言ったろう?『機嫌が悪い』と。とっとっと失せるんだな。この炎で焼き尽くされなければ、な?」
広げた掌から蒼い炎を手品無しで出してみせ、脅してみせるドリーム。
「く、くそぉ~!覚えていろ~!!」
彼なりに虚勢を張り、なんとか『悪の組織の幹部』としての体裁を整えつつも、撤退するブンビー。
「大丈夫だった?心配だったから、様子を見に来たんだけど」
「問題はない。脅してやったから、当分はあんたらにちょっかいはださんだろう」
ドリーム(ブライアン)はのぞみ本人よりも口調が荒々しく、無頼的な雰囲気を感じさせる。また、A世界のプリキュア達は街の依頼で、進出してきた大手の暴力団の事務所を街公認のカチコミで潰し、極道の世界の人々を本気で震え上がらせたこともある。(ススキヶ原の街にホームレスはいても、極道がいない、あるいは寄り付かないのは、キュアフェリーチェを皮切りに、事務所が移転してくる度にカチコミで追い出していたからだ)
「あなた、三冠馬の割に、品行方正とは言いがたいのね」
「柄じゃないだけだ。私は三冠は取ったが、それが目的だったわけじゃない。周囲が勝手に先代の三冠馬超えを期待しただけだ」
様子を見にきたキュアルージュBに答えるブライアン。口には枝を咥え、鼻にテープを貼っている。プリキュアになっていても、そうしないと落ち着かないらしい。
「それに、私は元の世界じゃ高二相当なんだがな。まさか、仕事で中坊をやり直すとは思わんだ」
苦笑交じりに、ブライアンは漏らす。これはプリキュアの中心戦士はたいていの場合、中学二年生であるのに対し、ブライアンは(中高一貫校であるので)高校二年相当である(直に三年になるが)からだ。
「その割に、落ち着いてない?」
「キャピキャピしたギャルは他が担当してる(トーセンジョーダンやダイタクヘリオスなど)からな。この性格は、うちの親父が武道をやらせてたせいだと思う。」
ブライアンは幼少期は臆病で、甘えん坊であったが、成長後は正反対に無頼漢な性格となり、レースでは『獰猛な猛獣』と形容されるほどの迫力で名を馳せた。それに心酔したのが同期のサクラローレルであり、ウマ娘の世界では目上の立場(史実では単に同期だが、ウマ娘世界では寮長かつ、ブライアンより一期は先輩である)のヒシアマゾンである。
「あなたも日本刀を使うの?」
「心を入れ替えただけだから、『コイツ』の全能力を問題なく使える。私も、親父やおふくろに武道をやらされたのもあるが」
ブライアンは武道の経験者である。流鏑馬(ウマ娘世界では、ウマ娘自身が走るものである)などの経験があり、剣道と居合も心得があるため、ドリームがデザリアム戦役までに会得したすべてを問題なく扱える技能を持つ。そのため、帯刀している。
「ああ、そうだ。こっちのあんたから、よろしく頼むと伝言を預かってる」
「そっちのあたしは何してるの?」
「つい最近まで記憶喪失になってて、療養を終えて間もないから、戦いには出てないそうだ。こいつが心配するからだそうでな」
「どこでも、そこは同じ、か。まさか、のぞみがそっちの世界だと、後輩(キュアミラクル)と月が欠ける大喧嘩を起こすとはね」
「凄すぎて、他のプリキュアは止めようがなかったそうだ」
「…つか、大魔法を行使できる状態のあの子と真っ向からぶつかって、それで優勢気味で立ち回れるなんて」
「まぁ、最強のマジンガーとゲッターの力を奮えば、な」
アレキサンドライトスタイルのキュアミラクルは大魔法を存分に奮える状態なのだが、エターニティドリームの力は凄まじく、更にそれを上回る事が素人目にも明らかなパワーであった。アレキサンドライトスタイルの防御魔法を『ゴッドサンダー』の一発で打ち砕き、凍結魔法も『ファイヤーブラスター』と草薙流古武術の炎で逆に寄せ付けないなど、技の力は完全にアレキサンドライトスタイルを数段、上回っていた。故に、殴り合いに持ち込んだみらいの判断は正しかった。だが、真ゲッタートマホークでコスチュームを真っ向から斬られており、後で『アレキサンドライトスタイルだったのに、ガチで勝てないと思ったのは初めてだった』とぼやいている。
「エターニティドリームって、どういう状態なの?」
「浄化と破壊。双方の力を少なくとも、真ゲッターロボと同等レベルで併せ持ち、神聖衣を纏った聖闘士と同等以上の平均ポテンシャルを持つ状態だと。一言でいうなら、あんたらの後輩達の決戦形態相当だと。だから、魔法つかいのプリキュアが最強の姿を取ったのは当然の流れだとさ」
アレキサンドライトスタイルは相当にパワーアップする形態だが、それすら劣勢気味になっていたのは、ドリームはZEROと一つになった事で『魔神パワー・強化』がかかった状態であったこと、ZEROからの贈り物である『因果律兵器』の効能で『アレキサンドライトスタイルが苦戦した世界』の因果が具現化されたからである。
「だが、その姿に『負ける世界があった』ら、危なかったそうだ。苦戦する世界はあったから、その因果を具現化する力で、魔法攻撃が封じられて、ステゴロに起死回生をかけたらしいぞ」
「なんか、もう…。トンチ合戦みたいじゃないの」
「私もそう思った。因果律操作まで踏み込んだら、トンチが効いたほうが有利だからな」
朝日奈みらいは心の中のつっかえを無くすため、敢えて『タブー』を犯し、のぞみと戦った。だが、基礎ステータス自体に差が生じていたため、アレキサンドライトスタイルを以てしても『互角に持っていく』ので精一杯。更に因果律操作で『魔法砲撃が無効化される』という反則的な能力もあり、ステゴロで殴り合いになった。双方のパワーは既に黄金聖闘士レベルに到達していたため、月が余波で欠けるのは仕方がなかった。(なお、月の修復はアステロイドシップシステムの応用で行われている)
「で、その時の余波で月が欠けたのと、騒ぎを聞きつけて、駆けつけた仮面ライダーの一人の叱責で我に返ったんだとさ」
「スケールがとんでもない喧嘩ね」
「月を壊せるレベルのパワーをぶつけ合ったから、月面都市がよく無事でいられたもんだ。欠けたのは、無人地帯のあたりの外縁部らしいんだが」
ブライアンが聞いたのはそこまでだが、アステロイドベルトシップシステムの応用で月の修復が可能な幸運、ジオン残党を燻り出し、ついでに撃滅した事の功を鑑み、一週間の営倉入りとなったのである。(営倉入りはアムロ・レイやコウ・ウラキも経験している)また、スーパーロボット乗り達は多くが荒くれ者なので、経験者揃い。差し入れが彼らからあったという。二人はそれを経て、正式に和解している。
「だから、その後のことは聞いていないが、営倉入りにはなったと思うぞ。月を割ったからな」
「成果挙げてるから、大事にはならなかったのね?」
「違反は違反だが、ついでに手柄も立てたからな。それに、宇宙の他の星に行ける技術力の世界なら、月を直すのも簡単だろう?」
軍規違反はせねど、それを上回る成果があれば、それらは別々に処理される。宮藤芳佳がウォーロック事件で軍規違反を犯しても、却って昇進したのが、その証明である。軍隊では、そういう事が(特に戦時下では)ままあるのである。
「その割にエリートコースなのは、成果を上げてるから?」
「それと、正規の士官学校を出てるから、だそうだ。民間軍事会社がその時代には大きい顔をしてるが、要は現代型の傭兵だから、社会的には後ろめたい身分だ。そいつらを抑え込むために、政治屋曰く、英雄は必要なんだと」
未来世界では、巨大化しすぎた民間軍事会社への法的規制が厳しくなり、それらの抱えるエースパイロットへの世間の目も厳しくなったため、軍隊に籍だけでも戻す者が続出した。イサム・ダイソンなど、せっかく移籍したのに、政府の命令で無理矢理に再召集されている。これはエースパイロットが一人でも多く必要であった地球連邦軍の台所事情が大きい。また、世間も民間軍事会社を強く侮蔑したため、彼らは妥協策として、エースパイロットの属する部隊を『軍隊に譲渡する』という政治取引で会社を存続させた。クラン・クランが地球連邦軍の大尉という身分を持っているのも、オズマ・リーの公的立場が退役軍人ではなく、『予備役』に変わったのも、戦乱での人材不足の原因を民間軍事会社の引き抜きのせいにした主流派の政治家達が民間軍事会社の解体と公社化を進めようとし、民間軍事会社側が人材を軍に『返却』する代わりに、会社の別事業に影響を与えないように便宜を図ったためだ。異星人との戦争が普通に起こる時代になったこともあり、民間軍事会社の役目は自然と縮小され、逆に軍隊が復権したのである。ケイオスやS.M.Sなどの大手企業が軍事部門を縮小し始めたのは、民間軍事会社のモラルの精度などを懸念した世間の圧力によるものだ。(ジオン残党やティターンズ残党の隠れ蓑になっていた企業もあったので)政治的には、銀河連邦の加盟国の多くは民間軍事会社を持たなかったためでもある。
「英雄ねぇ……」
「世間からすれば、あんたらもそうだ。だから、疲れることも多いとぼやいてたぞ」
「うーん……、身バレしてる世界での苦労って奴ね」
キュアルージュBは、自分達が世間的にも『プリキュアだとバレている』世界での苦労をぼやいている別の自分達の苦労を考える。(例外的に、ハピネスチャージプリキュアは活動初期の段階で、世間的に認知されていたが)とはいえ、身バレしていることでの恩恵もあるにはある。
「知られてる事での恩恵もあるそうだから、微妙だと言ってた。商店街やスーパーマーケット、公共交通機関が自主的に値引きしてくれるんだと」
「そ、そうなの……」
キュアフェリーチェは学生時代、まさにその恩恵に預かっていたし、のぞみAもそれで食費を浮かしている。スーパージャイアンズ(ジャイアンの経営するスーパーマーケットチェーン)では、ジャイアンの計らいで、破格の値段で売ってくれるし、中のテナントの店も値引きしてくれるのだ。
「まぁ、地球を守ってんだから、それに報いようっていう、骨川コンツェルンの提唱してるキャンペーンのおかげでもあるが」
骨川スネ夫は父の貿易会社を成人後に継いだ。大震災を乗り切った後に正式に事業を継承。以後は事業拡大を進め、ニューヨークで実弟の興したベンチャー企業とも提携。それから10年近くが経過した2020年代には『現代日本の新興コンツェルン』として知られ、プリキュア達の立場の擁護キャンペーンを大々的に行っている。のぞみAの一件で文科省が責任を免れないように仕向けた企業戦略の成功で、世間的には『プリキュアの社会的バックボーン』として認知されている。
「スネ夫さんの実家、貿易会社って聞いたわよ?」
「彼が継いでから、事業拡大を進めたんそうだ」
スネ夫の実家は古くは士族、明治以降は貿易会社で名を成してきた家柄であるが、スネ夫の父は広告会社や玩具会社などに大学時代の友人や後輩が多く、テレビ局の重役とも付き合いのある人物であり、古い言い方で言うところの『名士』であった。その子であるスネ夫は小学校時代は『ジャイアンの威を借りる狐』という事で、幼馴染以外からの評判は良くなかった。だが、ジャイアンたちと別の中学校に進学した後に人間性が磨かれ、成人後には『余裕のある紳士』に変貌している。(事業拡大などで手腕を発揮しているので、意外に決断力も増している)ダイ・アナザー・デイ以降に社を挙げて、プリキュアの応援キャンペーンを展開(これは彼自身が小学・中学時代に、キュアフェリーチェに何度か助けてもらった事への恩返しでもあった)。その流れで、トレセン学園とも提携を結んでいる。
「あなたの世界って、どうなってるの?」
「他の世界でウマ類だった者の魂が人の肉体と結びついて、人型で生まれる種族がいる以外はごくありふれた世界だ。人の別種が社会に溶け込んでるという方がいいかもしれんな。私達の世界には、ウマ類は存在しないからな」
ブライアンはキュアドリームの体を借りていながらも、おなじみの腕組のポーズを見せる。枝も咥えているため、『本当のキュアドリーム』より番長じみている雰囲気だ。
「私達としても、先方を『利用した』と言っていいのが実状だからな」
「どういう事?」
「私達は先方の優れた医療技術を手に入れるために、彼らの話に敢えて乗ったからだ。私たちはサラブレッドの種としての欠点を引き継いでいるから、内面的衰えが外見の老いよりずっと早いんだ。私の何期か上の先輩には、18歳になった途端に能力が落ち始めて、競技から引退していった人もいるくらいに。先方には言えないが、私達には後ろめたい事情がある」
ブライアンはここで、ルドルフが表面上はテイオーの話を信じたように振る舞っていたが、実のところは『ウマ娘全体の宿命を変えたい』が故に、学園上層部を説得した背景がある事を明かす。
「どこも『裏』ってのはあるものね」
「生徒会長が理事長を説得したんだ。うちの学園の生徒会は自治の面で、かなり高度な権限があるし、私達の種としての宿命に泣いた者はいくらでもいる。さらに言えば、前世の記憶が蘇ったことで、『同じことになった』と気づく者も出始めた。これは施術を受けた者、異世界で情報を得た者に限るが、普通はそういうことに気づけば、運命に抗いたいって気持ちは持つだろう?私もそのクチだ。会長大好きな後輩のためにも、この事実は永久に伏せなくてはならんがな。もう一人の副会長も知らんことだ」
「あなたと会長さんだけの?」
「そういうことだ」
ルドルフは実のところ、テイオーをだしに使う形で未来世界との関係を構築した。その事は相当に後ろめたいため、エアグルーヴにも秘密にした。ブライアンはその場に居合わせたので、口止めと引き換えに知っているのだ。
「口外はせんでくれよ。後輩を傷つけたくはないからな」
ブライアンはルドルフがテイオーをだしに使った事をその場で咎めた。ルドルフは『テイオーを利用した事は……後でいくらでも償うさ…。だが、もう一度、全盛期に戻れると、シリウスと一緒に走れると言うのなら……私は悪魔とも契約するさ……!』と言い返し、現役時代のあっけない幕切れを悔いている事を告白した。ブライアンも流石にこれには驚愕した。冷静沈着で通るルドルフにも、人には言えない『悔い』があったのだ。
「ええ。でも、あなた達、良いの?この事は相当に危ない橋じゃないの?」
「何事も、タダというわけにはいかないだろう?『恩返し』はせねばならん。後で改めて説明するが、アンタの仲間の体を使わないとならん事情もあるんだ。最も、あんたらはコイツとは別の世界の住民らしいが…」
ブライアンはドリームの体を借りてはいるが、元の姿での『三冠ウマ娘』たる威風堂々たる雰囲気の片鱗を垣間見せるかっこよさを見せた。体は紛れもなく、キュアドリームAのものだが、細かい要素の違いだけで、ここまで違うものだろうか。キュアルージュBはそう思った。